「アイドル評論家アイドル」鎌田紘子が"リアル系アイドル"愛を語り尽くす!!

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 AKB48が"会いにいけるアイドル"を標榜し、見事に大ブレークを果たした今、アイドル業界において、ライブやイベントなどの"現場"の重要性は非常に高まっている。そんな現在のアイドル文化を象徴する書籍『リアル系アイドル図鑑』(リイド社)が、このたび発売されることとなった。  この本は、ファンとの距離が非常に近く、ライブや握手会といったイベントでリアルに会える現在活躍中のアイドルたちを取り上げ、図鑑という形式で全30組をポップにパッケージングした完全撮り下ろし写真集。  その発売を記念し、同書でもマルチプレーヤーとして紹介されている「アイドル評論家アイドル」(通称「ドルドル」)の鎌田紘子ちゃんに、そんなリアル系アイドルの魅力を語ってもらったぞ! ――本の出来上がりをご覧になるのは初めてなんですよね? 鎌田紘子(以下、鎌田) はい。この本はカオスですね(笑)。私も名前を知らない子が結構いたりして、すごく勉強になります。(アイドル図鑑をパラパラとめくる)......うわー、くるみちゃん、めっちゃかわいくないですか? ――くるみちゃん? 鎌田 6月1日に待望のファーストアルバム『whitism』(メディアファクトリー)が発売される、アフィリア・サーガ・イースト(以下、アフィリア)のくるみちゃんですよ! アフィリアはカフェ&レストランを運営する「アフィリア・グループ」の店員さんから選抜されたユニットで、ライブイベントをやりながらも、池袋や上野、六本木にある同店の店舗では、直接メンバーに接客をしてもらえるんです。 idolzukan_04.jpg ――な、なるほどー。ちなみに、アフィリアで鎌田さんの推しメン(好きなメンバー)は? 鎌田 カレン推しですね。病んでいる感じがいいです(笑)。最近の会えるアイドルって、「泣ける」っていうのがキーワードになっていると思うんです。Twitterやブログでもすべてをさらけ出している子が多くて、例えばその子がライブをやるとして、ライブに至るまでのその子の気持ちや歴史を理解した上でステージを見て、その子とファンとが一体感を得る......っていうのがひとつのカタルシスになっているんじゃないかなと。 ――ふ、深いですねー。でも一方で、もっとメジャーなアイドルを応援している普通のアイドルファンの中には、「アイドルと自分との間に絶対的な距離があるからこそ、アイドルは尊いんだ」というような考え方をする人もいますよね。 鎌田 私も、一番好きなアイドルである平野綾様は、神様的な存在ですから一生会いたくないですね。ただ、身近さがウリのリアル系アイドルというのは、言いづらいけど、そのアイドルとの疑似恋愛的な要素を楽しむっていう方が強いんだと思います。握手をして仲良くなった子が、ライブでは目の前で歌ったり踊ったりしているというアットホームな雰囲気が楽しいんですよ。そういう意味では、旧来型のアイドルの愛し方とは別モノなのかもしれませんね。
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オフショット/アフィリア
――なるほど。鎌田さんが特に雰囲気がいいなと思った現場はありますか? 鎌田 「アキバの女王」こと、ひめめ(桜川ひめこ)ですね。彼女は活動歴も長いので、ファンとの絆が強いんですよ。以前ライブで、ステージ上のひめめと手が触れた女の子が、感激のあまり泣き崩れていたのを見ました。彼女はブログなどでも徹底して「萌えキャラ」を崩さない、リアル系アイドルの中のカリスマだと思います。
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鎌田紘子
――リアル系アイドルには、グループではなくソロのアイドルも多いんですね。 鎌田 そうですね。まいにゃ(小桃音まい)も、すごく人気がありますよ。彼女の魅力はステージング。年間300回を超えるライブをこなしているので、自分の魅せ方がすごくうまい。彼女の現場では、まいにゃが右へ動くとファンも右へ、左へ動くと左へと移動する「民族大移動」というヲタ芸があるんですけど、客席とのそんな一体感が素晴らしいです。ただ、私が最初に彼女のライブを見た時、民族大移動を知らなくて押しつぶされそうになりましたけど(笑)。 ――鎌田さんは、アイドルの現場では、普段どんな感じでライブを見てるんですか? 鎌田 実は私、かなりの「DD」(アイドルなら「誰でも大好き」なファンを指すヲタク用語)なので、節操なく名前とか叫んじゃったりするんです。正直言って、現場ではうるさいからって周りのファンからは嫌われるタイプかも(笑)。
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桜川ひめこ
――そんな熱心なヲタ活動の甲斐あってか、このたび、アイドルユニットをプロデュースするそうですね。 鎌田 はい! 4月2日に、ロマンスターズという4人組ユニットを結成しました。なぜか、私もそのアイドルユニットの一員なんですけど(笑)。「星」がコンセプトのユニットで、メンバーごとに担当の色があって、ライブでお客さんと一緒になってひとつの星座を作るのが目標です!
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小桃音まい
 残念ながら、今回の『リアル系アイドル図鑑』にはソロアイドルとして参加、ロマンスターズとしての参加は間に合わなかった鎌田紘子ちゃんだが、"今後の"『リアル系アイドル図鑑』では、ユニットのライブが見られるかもしれない......。  というのも、この『リアル系アイドル図鑑』、掲載された全アイドルたちによるライブイベントがあったり、書籍に封入されたハガキを投票し、人気が上位になったアイドルをテレビ出演させることができたりと、メディアミックスな展開が用意されているのだ。つまり『リアル系アイドル図鑑』そのものが、ひとつのアイドルの現場として構築された、アイドルファン必見の新メディアなのである。リアル系アイドルファンよ、このビッグウェーブに乗り遅れるべからず! (構成=エリンギ) ●かまた・ひろこ 1989年9月18日、東京都生まれ。身長162cm、B80・W58・H80。04年から「ピチレモン」(学習研究社)のモデルとして活動開始。08~10年に『ランク王国』(TBS系)で8代目MCを担当。現在は、アイドル研究家の北川昌弘氏を師と仰ぎ、「アイドル評論家アイドル」としても活動。「黄金のGT」(晋遊舎)にてコラム「アイドル戦略会議」を、フリーペーパー「オタポケ」(アキバジャーナル)にて取材コラム「鎌田紘子の勝手にプロデュース大作戦」を好評連載中。公式ブログ「鎌田紘子オフィシャルブログ ひろぴょん王国」<http://ameblo.jp/hiroko-kamata/
リアル系アイドル図鑑 4月11日に発売される、秋葉原を中心に活動する今リアルに会えるアイドルたちによる完全撮りおろし図鑑型写真集。4月16日(土)には、東京・秋葉原の書泉ブックタワーにてインストアイベントを開催。5月下旬にはコンピレーションアルバムを発売、6月には出演アイドルが集う大イベントの開催も予定されている。詳細は公式ホームページへ< http://idolzukan.jp/ > 発売/リイド社 価格/1600円(税込) amazon_associate_logo.jpg
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ついにロリマンガ消滅へ 業界団体が示した「自粛案」の苛烈さ

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「LO」2011年5月号
 7月からの改定・東京都青少年健全育成条例(以下都条例)全面施行を前に、出版業界内部で成年向けエロマンガを含めたロリコンものの自粛に向けた取り組みが計画されていることが明らかになった。一部の出版社からは、反発の声も挙がっており対立は深刻になっている。  新たな自粛の取り組みは、業界団体・出版倫理協議会(以下協議会)が設けた「児童と表現のあり方検討委員会」の席上で示されたもの。自粛案は「出版倫理協議会と出版倫理懇話会の申し合せ(案)」のタイトルで 1:いわゆる第二次性徴期を迎える前の、13歳未満と想起させる子どもをモデルとした漫画(コミック)を出版する際には、性交又は性交類似行為を連想させる表現は自粛する。 2:いわゆる第二次性徴期を迎える前の、13歳未満と思われる子どもを大人が凌辱するような行為を描いた漫画(コミック)の出版は自粛する。  以上の二点を求めている。  委員会から示された自粛提案に、出版倫理懇話会(以下懇話会)側の加盟各社は反発を強めている。協議会は64年に設立された日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体からなる、いわば業界大手を中心とした組織。対して、懇話会は85年に設立された、茜新社・コアマガジン・辰巳出版などが加盟するアダルト系出版社の業界団体だ。 「都条例がターゲットとしているのは、秋田書店や白泉社、双葉社などから出版されている成年向けマークを付与していないにも関わらず、同等の性行為を描写をしている漫画。これまで、区分を徹底してきたアダルト系出版社が煽りを受けるのは納得できない。そもそも、この自粛案は都条例よりも厳しい規制案ではないのか」(懇話会加盟社社員)  昨年の都条例騒動は、あくまで「成年向けマーク」を表示していないにも関わらず「過激な」性描写が行われているものがターゲットで、アダルト系出版社にとっては、いわば「対岸の火事」だった。突然の自粛協力要請は寝耳に水ともいえる。 ■「有害コミック騒動」の再現か  アダルト系出版社が自社で発行する雑誌・書籍の表紙に自主的に表示する「成年向け」マーク。このマークの導入も協議会の提案で導入されたものだ。  発案されたのは91年のこと。前年から大手出版社が発行する青年向けマンガの性描写への批判をきっかけに、アダルトも含めて、あらゆるマンガで性描写の自粛が余儀なくされた「有害コミック騒動」への対応の一環であった。ところが、大手各社はマーク付き=有害と見られることから二の足を踏み、結果的に主にアダルト系出版社が利用するものになった。 「アダルト系出版社の間では"再び大手が自分たちのツケを懇話会加盟社に押しつけてきている"との声もある。構図は、90年代の騒動と似ている。もし、懇話会加盟社に(前出の)自粛要求を飲めというならば秋田書店の『チャンピオンREDいちご』は廃刊、双葉社はエロ系をすべてエンジェル出版(成年向けマーク付き出版物を発行する関連会社)に移行するくらいの措置を取って貰わないと納得できない」(アダルト誌編集者)  協議会が自粛案を示した背景には、東京都と出版界の対立構造に警察が介入することへの危機感が伺える。「有害コミック騒動」の最中の91年には、神保町の書泉ブックマートの店長らがワイセツなマンガを販売した容疑で逮捕されエロ同人誌約5,000冊が押収される事件も起こっている。 「東京都は、未だに強硬な姿勢を崩してはいない。7月からの改定都条例の全面施行に併せて成年向けや同人誌も含んだ、みせしめ的な摘発が行われる可能性も否定できない」(業界関係者)  昨年の都条例をめぐる騒動の中で、多数の名の知れたマンガ家や知識人の発言は立派だったが、肝心のエロ表現の是否は見過ごされていた。果たして既に自主規制が徹底され、書店でも18禁コーナーに置かれ、東京都も従来は「問題ない」としてきたマーク付きの雑誌・書籍も含めた「自粛」は必要なのか、感情的な対立も含めて出版社間の意見は簡単にはまとまりそうもない。この問題を扱う懇話会の会合は今月14日に予定されている。 (取材・文=昼間たかし)
LO (エルオー) 2011年 05月号 ずっと好きだったんだぜ~。 amazon_associate_logo.jpg
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巨匠クロード・シャブロルの遺作! 恋愛サスペンス『引き裂かれた女』

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 ゴダールやトリュフォーらと共にヌーベルバーグを代表する監督として活躍し、2010年に惜しまれつつ他界した巨匠クロード・シャブロル。同監督が最晩年期に手がけた恋愛サスペンス『引き裂かれた女』が4月9日より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開後、全国順次公開される。  テレビ局でお天気キャスターを務めるガブリエルは、快楽主義者の著名作家シャルルと出会い、肉体関係を持つようになる。一方、親の遺産を相続し遊び暮らす美青年のポールも、ガブリエルを見初めて言い寄るが、食事を共にする程度の仲から進展しない。  シャルルから快楽の手ほどきを受け、愛にのめり込むガブリエル。だが、シャルルに距離を置かれ落ち込んでいるところへ、ポールから旅行に誘われたガブリエルは、旅先でポールの求婚を受けてしまう......。  2人の男に愛され、引き裂かれるような恋愛に苦悩するヒロインを演じるのは、フランソワ・オゾン監督の『スイミング・プール』(03)で大胆なヌードとセックスシーンを披露したリュディヴィーヌ・サニエ。本作での性的な描写は上品で間接的なものにとどまるが、美しい顔立ちの中にも少女のようなあどけなさが残る彼女の魅力を存分に堪能できることには変わりない。  シャルル役には、『トランスポーター』シリーズのトボけた警部役でおなじみのフランソワ・ベルレアン。ポールを演じるのは、ミヒャエル・ハネケ監督『ピアニスト』(01)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したブノワ・マジメル。  物語は、20世紀初頭のアメリカで実際に起きたスキャンダラスな事件をもとに、主要人物3人の関係と出来事を現代のフランスを舞台に再構築したもの。ただし、愛憎入り乱れる三角関係の結末は知らない方が、"フランスのヒッチコック"の異名を持つシャブロル監督の意表を突く演出をより一層楽しめるだろう。あまりの唐突さにぼう然となるラストシーンには、タイトルにつながるユーモアが込められていて、哀しさとおかしさが相半ばする複雑な感慨が後に残る。  恋をしているときは誰でも不安定になり、2人の異性の間で気持ちが揺れ動くというのもよくあること。その点で、ヒロインの心情に女性のみならず男性も大いに共感できる物語であり、心を狂わせる愛の魔力をあらためて思い知らせてくれる作品でもある。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『引き裂かれた女』作品情報  <http://eiga.com/movie/55935/>
スイミング・プール 無修正版 無修正版!!! amazon_associate_logo.jpg
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あまりにリアルな"原発マンガ"『白竜~LEGEND~』突如休載の理由とは?

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『白竜LEGEND 16巻』(日本文芸社)
 「どこからか圧力があったのかもしれない」「いや、作者がさすがに描く気がしなくなったのでは?」  突然の連載中断にファン騒然だ。  「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)に連載中だったマンガ『白竜~LEGEND~』(原作・天王寺大、画・渡辺みちお)が、3月18日発売号で休載。次号以降は過去のエピソードの再録などに替わっている。  このマンガ、内容がまさに今、世間で最も関心を集めている福島第一原発の事故と見事に合致しているのだ。いろいろな題材をルポ風につづったことで人気の同シリーズだが、ちょうど東日本大震災が起こった時に連載されていたのが「原子力マフィア編」というもの。  あくまでフィクションとしながらも、劇中には"東都電力"なる東京電力ソックリの電力会社が登場。原発の問題点を次々と浮き彫りにし、「主要配管が吹っ飛べばチェルノブイリ級の事故が起こる」など、原発の実態が生々しく描かれている。  原発の配管技術は化学プラントに比べると15年遅れているとしており、下請け孫請けに丸投げされた配管工事のずさんさも指摘。東都電力から支払われる7万円の人件費も、下請けに回されるたびにピンハネされ、現場作業員の日当は8,000円程度。登場人物が「ヤクザでもそこまではしねぇぞ」というセリフを吐く。溶接作業員のライセンスは偽造され、配管検査をごまかす手口にも異様なリアリティーがあるのだ。  これには原発に詳しい専門家も、「とても想像で描いたようなレベルではないですね。原作者がよほどこの問題に関心を持って勉強していたか、内部関係者からのリークを受けていたか、でしょう」(科学技術研究者・佐藤真一氏)と感心する。  さらに物語では、電力会社に頻発する事故を金と権力で覆い隠す体質があるとしている。描かれた内容がすべて現実と合致するかどうかは分からないが、実際の原発の現場作業員は日当9,000円、資格不要かつ年齢・学歴不問で求人されていたことが分かっており、見事にリンクする部分があることは否めない。  発行元の日本文芸社に問い合わせたところ、連載の中止理由は圧力でも作者の都合でもなく、「震災による被害状況を踏まえた出版社としての判断」だというが、最後の掲載となった号では「もっと深い闇を抱え込んでいるッ!!」と、次号での表紙・巻頭カラーを予告していた。お蔵入りになった残りの話が非常に気になるところだ。まさか「続きは現実で」というわけではないだろうが......。
白竜LEGEND 16巻 東電に読ませたい。 amazon_associate_logo.jpg
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夢は漫画家兼スナックのマスター!? "最後のマンガ職人"東陽片岡のダウナーな日常

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取材当日も二日酔いだったようですが......。
 異常にびっしりと描き込まれた超・特徴的な画風で、非常にビンボーくさい下町の人たちをシュールかつ変に現実感を伴った世界観で描き出す漫画家・東陽片岡。名前は知らない人でも、一度くらいはあの強烈な絵をどこかで見掛けたことがあるんじゃないだろうか(いや、オシャレ雑誌ばっかり読んでる人は見掛けたこともないか)。  そんな東陽片岡が初の活字本『シアワセのレモンサワー』(愛育社)を完成させた。スナック・風俗・バイク・温泉など、漫画作品にも頻繁に登場するテーマを、飲み屋で語っているがごとく話題があっちに飛びこっちに飛びと、気ままに書いているエッセ―集だ。今回のインタビューは、飲み屋が建ち並ぶ街にあるご自宅での取材だったのだが......。 ――いやー、イメージ通りスナックがたくさんある場所に住んでるんですね。 「はい。飲みにばっか行ってるもんで、もう飲み屋街に住んじまえば楽しいだろうなって。でも、近くにあり過ぎて逆にあんまり行かなくなりました。このマンションの一階にもおスナックが入ってるんですが、30秒くらいで行けちゃうんで楽しくないんですよ。......今、ちょっと酔っぱらってますけどね」 ――やっぱり、ちょいちょい飲んでるんじゃないですか。 「国民健康保険をずっと滞納してたもんで、貯金を差し押さえられましてね。お金がなくて最近おスナックにも行ってなかったんですけど、昨日は臨時収入があったんで久しぶりに行ってきました」 ――東陽さんの漫画や文章を読んでいるとスナック・風俗・バイクという三本柱がよく出てきますが、一番長くやっているのはどれなんですか。 「バイクですね、免許を取ったのが高校三年の時ですから。でもまあ、オナニーの方が長いですけど......。その次がお風俗です、初めて行ったのが27歳の時ですね」 ――あ、風俗に行き始めた年齢は遅いんですね。 「なぜかというと、それまで真性包茎だったんですよ。27の時に手術をして、すぐに大塚の駅前の"K"っていう60分1万4,000円のソープに行きました。そこのお姉さんの源氏名はみんな東京23区から取っていて、"杉並さん"っていう人に当たって。でも、手術の直後だったからプレイの最中にすり切れて出血しちゃってね」 ――処女でもないのに出血って! 杉並さんもびっくりしたでしょうね。 「まあ、とにかくそれで童貞を捨てましてね。そこから盛んにお風俗に通うようになって、まだ25年くらいですから歴史は短いですよ」 ――スナック初体験は何歳ごろですか。 「行き始めたのは30歳くらいですね。おスナックはやっぱり居酒屋なんかと違って料金が若干高いんで、若いころは行けませんでしたから。その当時、草野球をやっていたんですけど、他のメンバーは年配の人たちが多かったんで、それでおスナックに連れて行かれるようになったんです。初めはおスナックでカラオケをやってるヤツはバカだと思ってましたけどね。自分でやってみたら楽しいんですよ、コレが。『こりゃたまらんな』と思って、一人でも通うようになりました」 ――スナックでのカラオケって、どんな曲を歌ってるんでしょう。 「ムード歌謡ですね。ボクは世代的にはフォークの時代なんですけど、フォークの人たちってテレビに出ないという風潮があったんで、当時テレビに出てたぴんからトリオとかクールファイブ、殿様キングスなんかを聴いて育ちました。ボクがスナックに行き始めた20年ちょっと前は、まだカラオケはレーザーディスクの時代でねえ......。一回一回、ママに曲の番号を伝えてディスクを入れ替えてもらってましたよ」 ――スナックへは一人で行ってるんですか。 「最近はお金がないから編集さんとかに連れてってもらってますが、普段は一人です。昔は友達に合わせてみんなで安いチェーン店の居酒屋とかに行ってましたけど、基本的に一人が好きなんでしょうね。お風俗も一人で行ってますし......。お風俗のルポ漫画を描いてるんで、お風俗に行った後に毎回その足で飲みに行って、先ほどまでのプレイを回想してニヤニヤしながらシアワセのレモンサワーを飲むのが好きなんですよ。これはたまらないです!」 ――風俗に行くのも仕事になっちゃうと、純粋に楽しめないんじゃないですか。 「でもルポだと考えると、ハズレのお姉さんが出てきてもそんなに腹が立たないんですよ。『あ、いいネタもらった』みたいな。純粋に自腹で行って、すさまじい地雷に当たったときは悲惨です。カナシミのレモンサワーですよ!」 ――ボクも最近スナックに行くようになったんですが、新しい店に入るとき、どんなことに気をつければいいでしょうか。 「ボクの場合は熟女好きだから、看板が新しくて、文字が丸い感じのかわいい書体を使ってるところは避けるようにしていますね。どっちかというと明朝体が好きです。外観はボロくてもいいんですけど、そこそこ清潔な感じで。入り口に観葉植物の鉢植えとかが置いてあると、よりいいですね。で、入ってくときはとりあえず笑顔が大事。むこうも客商売なんで、どんな客が来るのか楽しみな反面、ちょっと怖いと思ってるんですよ、だからニコニコしながら『一人ですけどいいですか?』って入っていけばいいんです。金がないときは『3,000円で大丈夫ですか?』とか」 ――スナックって帰るタイミングも分からないんですけど、どういうきっかけで切り上げればいいんですかね。 「基本的には、新しいお客さんが入ってきたタイミングで『じゃ、ボクはそろそろ......』みたいな感じで帰りますね。逆に全然お客さんが来なくて一人だと、ずっとママさんのグチを聞かされて閉店までいなくちゃいけない......みたいなこともありますけど」 ――東陽さん、月にいくらくらい飲み代を使ってるんですか。 「景気が良かったころは月に10万円くらい......。そんなことしているからお金がまったく貯まらなくてね。ボトルも、もう分からないくらいいろんな店に入れてますから。おかげで健康保険も住民税も滞納しちゃってねえ。年金はもうあきらめました、年金を払うのが義務だって分かってなかったんで」 ――最後にお仕事の話を......今後、漫画などで描きたいと思っていることってありますか。 「経費をバッチシ頂いてバイクで温泉街を回って、夜はおスナックに行って、できたらコンパニオンさんと一発できるっていうルポ漫画がやりたいですね」 ――それ、すごい経費が掛かりそうですね。 「だからまったく依頼が来ないです。やりたいことっていったら仕事じゃなくって欲望に即したものでしかなくてね、前向きなことは全然浮かんでこないですよ......今、二日酔いなもんで。そうだ、昭和ブームみたいなのがあるんで、昭和40年代前半くらいを舞台に下町のセコイ人間が出てくる漫画を描いてみたいなとは前々から思っていますね」 ――昭和30年代を描いた『三丁目の夕日』(西岸良平/小学館)があれだけ売れたんだから、昭和40年代ブームも来るかもしれませんね。 「それと、おスナックを自分で始めたいと思ってて。今、52歳なんですけど、それくらいの年齢のママやマスターってほとんどいないんですよ、高齢化しちゃってるから。だから、漫画家兼スナックのマスターっていうのもアリじゃないかなと。昼過ぎに起きて、ちょっと漫画描いて店開けて。カウンターの中で描いたりしてもいいし。いい物件があって、マジメにやろうかなって思ってた時があったんですけどね。ちょうどその時期に漫画の仕事がどっと減っちゃったんでできなかったんですけど。おスナックを始めるにしても、まったくの初心者だからしばらくは赤字が出ると思うので、その分を漫画で補てんすればいいやって考えてたんですけど、その漫画の仕事が減っちゃったんで」 ――漫画家としての展望よりも、スナック開店計画の方を大いに語っていただきまして......。 「そのうち本当にやりたいと思ってるんでね。家具屋さんとかに行っても『店にこんなインテリア置きたいな』......とか思ってますから!」 (取材・文・写真=北村ヂン) ●とうよう・かたおか 東京都出身。多摩美術大学デザイン科卒。青林堂の創業者であり、「月刊漫画ガロ」の初代編集長である故・長井勝一氏にその才能を見初められ、漫画家デビュー。ビンボーくさい下町の人々とその生活をテーマとし、下品とシュールを織り交ぜた独自の世界を描いている。「畳の目を描かせたら日本一」との呼び声も高い。
シアワセのレモンサワー 1575円/愛育社刊/好評発売中 amazon_associate_logo.jpg
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「日本人よ、声をあげろ!」直言居士・嵐山光三郎が吠える

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「週刊朝日」4月15日増大号
第1位 「コンセント抜いたか 嵐山光三郎」(「週刊朝日」4月15日号) 第2位 「スクープ 4号機内で社員2人の遺体を発見」(同上) 第3位 「東日本大震災ノンフィクション 遺されて 石井光太」(「週刊ポスト」4月15日号) 次点 「日本ユニセフ協会『被災者に渡らない募金』が暴かれた」(同上)   今週、一番笑ったのは「現代」のタイトル「『使用済み菅燃料』と官邸で嘲笑される総理大臣の不甲斐なさ」である。短い記事だが、使用済み菅燃料とはうまい!  自粛、自粛の大合唱だ。花見まで自粛せよと、私の住んでいる街の駅前商店街も花祭りの看板とちょうちんを取り外してしまった。おかげで酔客の胴間声を聞かないで花見がユックリできそうだからいいが、花見ぐらい少し騒いでもいいではないか。  「文春」の立花隆氏との対談で堺屋太一氏が、「私が危惧するのは、大震災と原発事故に過剰反応して『自粛不況』が起きることです。世の中が暗くなると、復興はさらに遅れる」と言っているが、その通りである。  最近よく、「日本人は敗戦後、焦土の中から立ち上がり、見事に復興してきたのだから今度も大丈夫だ」と"無責任"に語る人がいることも気になる。  これほど見当違いな考えはない。戦争が終わり、みな貧しくとも光が見えた時代と今では、心の底から湧きたってくる何かが決定的に違うのだ。  本田靖春氏は『「戦後」――美空ひばりとその時代』(旬報社)で、その時代の雰囲気をこう書いている。 「人々は飢えていた。私の場合は住む家がなく、納屋の暮らしから戦後の生活が始まった。着る物がなく、履く靴がなく、鞄がなく、教科書がなく、エンピツがなく、ノートもなかった。しかし、人々は桎梏から解放されて自由であった。新しい社会を建設する希望に満ちていた」  「小沢一郎よ、平成の後藤新平になれ」という"小沢待望論"もやかましい。だが、震災から2週間以上も地元岩手に行かなかった小沢氏が、被災者に希望を与えられるわけがないではないか。  さて、今週は力作ぞろいであったが、まずは「ポスト」の日本ユニセフ(以下、日ユニ)の記事から取り上げよう。  発端は、日ユニが震災3日後に「東日本大震災緊急募金」を告知したが、ただし書きに、必要な資金を上回る金が集まったら、他国・他の地域への復興支援に活用させてもらうと書いたことだった。  これでは「ユ偽フではないか」と募金者から批判が殺到し、慌てて集まった金は全額被災者に渡すことを表明したのだが、後の祭り。  そもそも、日ユニは国連ユニセフの日本支部ではない。その活動を支援する財団法人なのだが、寄付しているボランティア団体でさえ、誤解しているところが多い。  また、日ユニは職員36名で、集めた募金の最大25%が運営経費と認められ、2009年度の事業活動収入は約190億円で、そのうちの27億円を自由に使え、法人税はなし。  01年に東京・高輪に5階建てのユニセフハウスを建設し、大新聞にたびたび広告を掲載して、評議員には朝日や毎日の社長らが名前を連ね、政治界とも密だという。  芸能人の抱き込みにも力を入れ、中でも「日本ユニセフ協会大使」として有名なのがアグネス・チャンである。  震災以降、募金をかたる詐欺行為が続発している。日ユニがそうだとは言わないが、「ポスト」が言うように「もう少し疑惑をもたれないための改革が必要なのではないか」。  被災地ルポは数多くあり、有名人を起用したものも多い。「AERA」の写真家・藤原新也氏もそうであるが、私は、「ポスト」の石井光太氏のルポを写真(一部共同通信)共々、興味深く読んだ。中にこういうくだりがある。  宮城県奥松島の海辺で出会った初老の夫婦。40歳になる娘と孫の遺体を探しているという。  夫は、「せめて、遺体がひどく傷まないうちに見つけ出してあげたいのですが、うまくいきません」と言うが、妻は、「そんなに簡単にあきらめないでください。(中略)まだ、どこかで生きていたらどうするんですか。私、そう思うとあの子たちに申し訳なくて......」と小声で言う。  彼女が、生まれたばかりの孫が生きていると信じる理由は、娘の優しさだった。娘はきっと、自分を犠牲にしても孫を助けたはずだ。きっと避難所か病院で行方不明になっているから早く見つけ出したいのに、夫は娘ばかりでなく孫まで死んでいると耳を傾けてくれないと嘆く。  そして「せめてあなただけは孫が生きていることを信じてください」と、行きずりの石井氏に懇願するのだ。  今度の大震災で、こうした悲劇は数多くあったに違いない。その中の一組の夫婦の物語だが、読み終わった後、いつまでも波の音が心に聞こえていた。やや感傷に流されすぎたきらいはあるが、こういうルポが私は好きだ。  2位は、スクープとはあるが、遺体発見の情報はごくわずかである。だが、ここにあるように、地震発生以来行方が分からなくなっていた東電の社員2人が、3月30日午後3時頃、懸命の復旧作業が続く福島第一原発で見つかったが、「東電は2人が見つかった事実を、発見から3日が過ぎた2日夜の時点でも明らかにしていない」のだ。  ようやく3日になって、「東京電力は3日、福島第一原発で行方不明になっていた社員2人が4号機タービン建屋の地下で遺体で見つかった、と発表した」(asahi.comより)。  2人は当日、勤務中に地震と津波に襲われ、3週間近くも高い放射線量が懸念される「爆心地」に閉じこめられていたのだ。  「朝日」が書いているように、「2人はどのような状態で見つかったのか。放射線量はどのぐらいだったのか。また遺体はどのようにして安置されたのかといった情報はなんの手がかりも得られず、祈る思いで近親者を捜す周辺住民にとっても貴重な情報だ」。事実を速やかに公開しない東電の姿勢には、「朝日」ならずとも疑問が残る。  こうした不透明な東電や政府の在り方に不満を持っている日本人は多いと思う。それなのに、Twitterや掲示板に誹謗中傷して、腹膨るる思いを吐き出して事足れりとする人間のいかに多いことか。  今怒らずして、いつ怒るのか。そんな思いを軽妙な筆遣いながら、痛烈に批判してくれたのが、今週の第1位、嵐山光三郎さんの連載コラムである。  嵐山さんは、彼が敬愛する作家・山口瞳さんがそうだったように、言うときははっきり言う直言居士である。山口さんの、他国に征服されてもいいから武力は持たないと言い切った『卑怯者の弁』や『私の根本思想』(ともに新潮社)が好きな人である。  嵐山流は、「どこかで春が」という童謡を口ずさむところから始まる。まずは、テレビでやたら流れているACのCM批判。「『電気を節約しよう』といっているから、あのCMが出るたびにテレビの電源を切った。ACのCMにいら立つのはやたらと親切だとか思いやりとかの道徳をふりかざすからだ。公共広告機構というのは、道徳おしつけ協会で、この非常時に及んで大きなお世話である」とバッサリ。  さらに、「東日本大震災は『千年に一度』の大震災だというから千年前にはなにがあったかと調べると『源氏物語』が書かれた時代だった。ははあ、源氏は原子のことで、『原子物語』ってわけか。光るウランが数多の女たちを被曝させていった。桐壺が一号炉で、帚木が二号炉、空蝉が三号炉、夕顔が四号炉、以下五十四帖あるから、いまある原子炉と奇しくも同じである。紫式部が千年後の日本を予知して原子を源氏とおきかえて書いたとすれば、超能力のなせる技だ」と展開していく。匠の筆である。  身の安全を脅かされているのに日本人はパニックを起こさないし、略奪行為も起こさないことが美談として外国メディアに報じられているが、「ようするにバカにされているわけです。悲惨な状況に必死で耐えることを賞賛されるのは、声をあげて叫ばない民族だと見なされている次第で、危険事態を外国メディアが代弁すると『風評被害』として片づける。(中略)政府の対応の遅さが原発被害の拡大を招いているのに、日本人は『仕方がない』とあきらめている」のはおかしい! そしてこう結ぶ。  「強者に対して弱すぎる。原爆を落とされて、『ああ許すまじ原爆を』と謳っても、平和利用という名目を与えられると『ああ許すまじ原発を』とは謳わない。原爆の恐ろしさを知ったから、平和利用ということで、逆に『原発』を信仰してしまった。(中略)値の安い原発のおかげで電気をジャブジャブと水道水のように使って安逸な生活をしてきた。そのしっぺ返しがきた」のだから、ネオンを消し、通販やACのCMは中止し、居酒屋はランプで営業しようと説く。まったくその通りである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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新聞・テレビが伝えない 週刊誌"震災特集"の底力 「正しいパニックを起こそう」 未曾有の原発危機に広瀬隆氏が提言 元「FRIDAY」「週刊現代」編集長が提言「いま週刊誌がやるべきこと」とは

行動力あふれるバカを見習え!? 新しい日本をつくる「バカサミット」

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「青春!バカサミット2011」公式サイトより
 4月2日、東京・秋葉原の東京都産業労働局秋葉原庁舎にて、日本の"先進バカ企業"が集う「青春!バカサミット2011春 ~四月バカの集い~」が開催された。室内は参加対象者の「ヒマな人」200人で満杯となり、熱気ムンムン。変態企業カメレオンが主催し、カリスマ離婚式プランナー寺井広樹、マグロ船式職場活性プロデューサー齊藤正明、有限会社ザリガニワークス武笠太郎・坂本嘉種、日本唐揚協会専務理事・カラアゲニスト八木宏一郎、株式会社パーティーカンパニー家入一真、面白法人カヤック代表取締役柳澤大輔の各氏が登壇。自らのバカっぷりと、そのバカさ加減を活かした成功譚? を披露した。  家入氏が「逆転の発想」を強調していたように、"常識では計り知れない分野を開拓できるのはバカゆえ"という思想は、各スピーカーに共通のものだった。  寺井氏は、結婚式の真逆に位置する「離婚式」をプロデュース。式では結婚指輪をたたき割るなど、一般的に後ろ向きなイメージがある離婚に、新しい意味を与えている。齊藤氏はマグロ漁船が「魚が獲れるかどうかはマグロ次第だから計画を立てない」という点から、景気は予期しない事象に左右されると悟り、一歩先を確実に当てる仕事の仕方を提案。武笠氏と坂本氏は、人生にはガッカリすることもあるという現実を学ぶ道具として、本来は喜ばれるはずの子どもへのプレゼントを悲惨なものにするべく「コレジャナイロボ」を開発。絶望的なトラウマを与えるというコンセプトが世の中に受けた。
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日本唐揚協会専務理事・八木宏一郎氏。
 八木氏はイベントの中身も決まっていなければお金もまったくないという状況でありながら、ひたすら完成図を示し、そこに必要な人員やスポンサーを充てていくという「絵に書いたもち」方式で「からあげカーニバル」を実現、10万人を動員した。家入氏は当たり判定をつけるのが面倒くさいという理由で、ひたすらブロックが画面の下に吸い込まれていく、まったく積むことがない「落ちゲー」を制作。柳澤氏は、チャックをいつも閉め忘れていたことから「チャック全開防止ボタン」を発明。これが現在に至る創作動機になっているという。
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マグロ船式職場活性プロデューサー・齊藤正明氏。
 常識が通用しない事態の最たるものは、齊藤氏が体験したマグロ漁かもしれない。マグロの群れは時速60キロで移動しているため、漁獲することが難しい。そこで多数のマグロ船が群れの所在を報告し合い、現在地を類推して集まり、共に漁獲するのだという。常識で考えるなら企業機密は独占するものだが、自分だけの情報で漁をしているよりも、共同で事に当たったほうが、通年では漁獲高が多くなるというのだ。漁獲高を分かち合うというこで、一時的にはそれぞれ漁獲高を減らすことになっても、ライバルを信用したほうが最終的な利益は大きくなる。なんとなく囚人のジレンマに似た話だ。
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ザリガニワークスの武笠太郎氏(左)と坂本嘉種氏(右)。
 ザリガニワークスのコレジャナイロボは前述の通り、本来の目的は、アニメや特撮に登場するロボットの意義をまったく理解しない父親が木で作ったいいかげんなロボットをプレゼントし、子どもに「僕の欲しかったモノはこれじゃない!」と憤まんや涙を流させる、あの感覚を再現させるものだった。しかし、その「あるある感」を面白いと思った人々によってウェブサイト上でのストーリー展開や水木一郎氏を迎えての音楽CD化といった広がりを見せた。発売から最初の2年は2個ずつしか売れなかったが、商品の特異性に気づいたライブドアのバイヤーが2人を熱心に口説き、プロモーションに力を入れた結果だった。世の中、逆転の発想が意外な結果を生むこともある。
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カヤックの柳澤大輔氏。うんこの被り物を
かぶった観客が静かに見守る。
 最近話題になっているカヤックの「うんこ演算」は、子どもの大好きなうんこネタ満載の数式問題を解くアプリだ。当初はアップル製品向けに開発したが、お題がうんこであるために認可が下りず、アップル本社との協議に発展。結局、許諾は得られなかったがあきらめずに製品化を進め、Android Marketでの発売に成功した。  内部の企画段階で却下になりそうな下ネタのコンテンツを、実際に流通にはねのけられても貫き通すなど、普通の企業にはなかなかできない。というか、しようとしないことだろう。  東日本大震災発生後の対応がことごとくマズイお上を見るにつけ「ダメだな」と思う、その意識を共有できている今こそ、行動力あふれるバカの前向きさに見習うべきではないか。というのはただの錯覚かもしれないが、聞いてすがすがしくなる講演であったことは確か。真面目に受け止めるかどうかは別にして、新しい日本をつくっていこうと思うたぐいの人々にとって有用な時間であったことは間違いない。 (取材・文・写真=後藤勝)
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完結作で、出血のドバドバ感、 内臓飛び散りのビチビチ感が倍増!! 『ソウ ザ・ファイナル』

──これでもかと人が殺されまくる残酷描写と謎が謎を呼ぶストーリー展開で、アメリカ本国のみならず日本でも人気のシチュエーション・スリラー・ムービー完結版が、無修正&ノーカットでパッケージ化!!
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『ソウ』といえば、スリラー映画ファンにはお馴染みの人気シリーズだ。2004年に第1作目が公開されるや、残酷描写と意表を付くストーリー展開が話題となり、年に1作ペースで続編が製作されてきた。10年には、シリーズ7作目『ソウ ザ・ファイナル3D』でついに完結。そしてこのたび、そのDVD&ブルーレイ版が発売されるはこびとなった。ただし、タイトルの通り同作は本来3D作品なのだが、パッケージ版は通常の2Dとなっている。 「『ソウ』シリーズのヒットは、謎解きの面白さに負うところも大きいので、ファンの方々にとっては、3Dか否かはさほど重要ではなかったようです」  そう語るのは、配給元であるアスミック・エースのDVD&ブルーレイ宣伝担当・川瀬陽子氏。確かに、シリーズの基本構造は、猟奇殺人鬼「ジグソウ」によって密室に監禁された人々が、さまざまな「ゲーム」を攻略しながらジグソウの正体に近づいていくというもの。映像的にはとにかくエグいわけだが、話のキモはあくまで、推理小説的な問題解決の過程にある。また、ちょっとしたネタバレになるが、ジグソウはシリーズ序盤で退場し、以降はそこへ彼の後継者争いという新たなミステリ要素が加わってくる。 「事実、劇場公開時の調査でも『3Dだから観にきた』という人はほんのわずかで、やはり『最後だから』という理由が大半でした。ちなみに『ソウ』シリーズは"最も成功したホラー映画シリーズ"として、ギネス認定されてもいるんですよ」(川瀬氏)  また、ユーザー側に3D対応型テレビがどれだけ普及しているのか、という問題もある。メガネをかければ3Dを体験できる劇場版とは違い、パッケージ化においてはまだ越えるべきハードルが残っている、という判断が下されたようだ。  しかし、製作の現場では当然「3D」が意識されていたわけで、その点では「見せ方」にも変化が見られる。すなわち従来よりも殺し方が残虐で、ドバドバ血が出て肉片や内臓もビチビチ飛び散り、大規模な爆破シーンもある。最終作にして、過去最高の"犠牲者数"を記録したそうだ。  そんなスプラッター成分増量の『ソウ ザ・ファイナル』ゆえ、劇場公開時はR15指定を受けていた。しかし、このDVD&ブルーレイ版は「アンレイテッド・エディション」、つまり無修正&ノーカットであり、特典映像としてシリーズの「ソウ集編」なども収録。さらに完結記念として、劇中で使用された「豚マスク」をはじめ、『ソウ』のマスコット的キャラクター「ビリー」のミニ・ドールなどが抽選で70名に当たる。 「実は『ソウ』シリーズ関連のグッズはあまり出ていなかったので、ファンの方々にはうれしいキャンペーンになっていると思います」(同) (構成・文/須藤 輝) 『ソウ ザ・ファイナル アンレイテッド・エディション』
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ジグソウのゲームを生き残ったボビー・デイゲンのもとに、ゲームのサヴァイヴァーたちが群れ集う。ギネス認定もされた大ヒットシリーズがついに完結。最後に「ゲームオーバー」を言うのは、いったい誰なのか!? 特典として、ソウ集編、未公開シーン集なども収録し、好評発売中。公開/2010年アメリカ 発売/アスミック 時間/本編90分 価格/DVD3990円、ブルーレイ4935円(共に税込) 公式サイト<http://saw3d.asmik-ace.co.jp/

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〈シリーズ完結記念プレゼント〉 『ソウ』シリーズの完結を記念して、Dr.ゴードンを演じたケアリー・エルウェズと、ホフマン刑事を演じたコスタス・マンディロアのサイン入り"豚マスク"ほか、オリジナル・ソウ・グッズが当たるプレゼント・キャンペーンを実施中。詳細は、製品内のチラシにて。応募締め切り/2011年4月30日

はかない青春の残酷さと切なさ 『わたしを離さないで』

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『わたしを離さないで』(c)2010 Twentieth Century Fox
 わが国を襲った未曾有の天災によって多くの命が奪われ、日常生活への無条件の信頼も大きく損なわれた。こんな時、自分の暮らしぶりや生きることの意味を、映画を通じて異なる視点から見つめ直すことも気持ちの助けになるのではないだろうか。  現在公開中の『わたしを離さないで』は、カズオ・イシグロの同名小説を、『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドの共演で映画化した作品だ。  外界から隔絶され豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。仲良しのキャシー(マリガン)、ルース(ナイトレイ)、トミー(ガーフィールド)は、絵や詩の創作活動に励みながら、「特別な子ども」として育てられた。18歳で学校を出て農場のコテージで共同生活を始めるが、恋愛感情から彼らの関係も変化していく。3人はヘールシャムの秘密に迫り、定められた運命に立ち向かおうとするが......。  作品の世界には、あるSF的な設定があり、それがヘールシャムの謎と寄宿生たちの運命に関係している。美しいイギリスの田園地帯を背景に、切ないラブストーリー・衝撃のミステリー・命の意味への問いかけという要素が絡み合いながら展開する本作。ストーリーが進むにつれて、隠された真実が少しずつ明かされていく。三者三様の生き様の中で、悲しみを抑えながら過酷な運命に静かに向き合うキャシーの姿が特に印象に残る。  趣は異なるが、ソフィア・コッポラ監督の新作『SOMEWHERE』(4月2日公開)も、自分の生き方を見つめ直すための気づきをもたらしてくれる一本だ。  ハリウッドにあるスター御用達の伝説的ホテル「シャトー・マーモント」で、華やかなセレブライフを送りながらも、むなしさを感じている映画俳優のジョニー・マルコ。前妻から預けられた11歳の娘クレオと穏やかな日々を過ごすうち、心境に変化が訪れる。  監督自身が父フランシス・フォード・コッポラと過ごしたシャトー・マーモントでの思い出や、2児の母となった実感を投影したという本作。享楽的なホテル暮らしを惰性で続けながら、どこか居場所のなさを感じているジョニーを、『バック・ビート』『パブリック・エネミーズ』のスティーヴン・ドーフが好演している。  クレオ役のエル・ファニングは、言わずと知れたダコタ・ファニングの妹。かつて天才子役として名をはせたダコタが新作『ランナウェイズ』で大人の女性に変ぼうしてみせたのに対し、エルは今がまさに旬の美少女。フィギュアスケートのシーンで発揮されるスラリと伸びやかな肢体、会話の中やプールの水中で見せる天使のように愛くるしい表情など、彼女の魅力を心ゆくまで鑑賞できる作品でもある。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「わたしを離さないで」作品情報 <http://eiga.com/movie/55678/> 「SOMEWHERE」作品情報 <http://eiga.com/movie/55730/>
わたしを離さないで お願い。 amazon_associate_logo.jpg
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『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波

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アニメ『魔法少女まどかマギカ』公式サイトより
 3月11日に発生した東日本大震災から早くも3週間。いまだ多くの被災者が眠れぬ夜を過ごす中、日本が世界に誇る文化を発信するオタク業界にも大きな影響が出始めている。  3月に開催される予定であった東京都主催の「東京国際アニメフェア2011」、及び都の表現規制の取り組みに反発する出版社が中心となって同日に開催を予定していた「アニメ コンテンツ エキスポ」の中止に始まり、大小問わず続々とアニメ・漫画関連のイベント・ライブは中止。また、ゲーム業界も人気シリーズ最新作『龍が如く OF THE END』(セガ)の発売が延期。災害脱出ゲーム『絶体絶命都市4』(アイレム)は発売中止。「東京ゲームショウ2011」の開催も危ぶまれるなど、見通しの立たない今後の展開に各業界は頭を抱えているようだ。 「角川書店は5月25日発売予定の『涼宮ハルヒの驚愕』が刷れないかもしれない、と戦々恐々としています」  と語るのはオタク業界に詳しい関係者だ。  3月25日に印刷インキ工業連合会が東日本大震災の影響から、「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況について」という声明文を発表。日本国内の出版業界に大きな衝撃を与えたが、早くもその影響が出始めている模様だ。  『涼宮ハルヒの驚愕』は、2003年に刊行スタートした角川書店のドル箱ライトノベルシリーズの最新刊である。これまでに9巻が刊行され、累計発行部数650万部を記録。さらに小説とそれを元にしたコミック版も大ヒット。同作は06・09年にはTVアニメが放送され、10年には劇場用アニメも公開されるなどゼロ年代後半のオタクシーンに多大な影響を与えた作品だが、原作の新刊は07年に刊行された『涼宮ハルヒの分裂』以来、4年ぶりの発売となる予定だった。 「『涼宮ハルヒの驚愕』は上下巻で計600ページという大作になっています。さらに初回特典としてオールカラー64ページの冊子も付きます。発行部数もこれまでの実績から考えて数十万部レベルだと考えられるので、当然必要となるインクや紙の量も莫大なものになるでしょう。角川は相当、危機感を持っているようです」(同業界関係者)  その一方で、震災後に発売された「週刊少年ジャンプ」(集英社)15号がネットで無料配信されたのに続き、講談社は「週刊少年マガジン」をはじめとする漫画雑誌の一部を期間限定で無料公開。この一連の流れを、電子書籍市場普及への大きな一歩だと見る向きも存在する。  また、アニメ業界でも、ちょっとした地殻変動が起こり始めている。  『フラクタル』(フジテレビ系)を手掛ける山本寛監督が、Twitter上で第9話の中に災害の影響でカットされてしまったシーンがあることをカミングアウトしたほか、3月19日公開の『映画プリキュアオールスターズDX3 未来に届け! 世界をつなぐ☆虹色の花』は津波シーンをカットして上映されるなど、表現のあり方が問われる事態となっている。さらに、報道特番などによって放送スケジュールが大きく変更され、番組改編期の4月まで放送が食い込んでしまうタイトルも出てくるなど、少なからず影響を受けているアニメ業界。  その中でも特に大きな話題を呼んだのが、2010年代最初にして最大のヒット作との呼び声も高い『魔法少女まどか☆マギカ』(TBS系)第10話の、関東圏での放送が震災の影響で流れてしまった一件だろう。  視聴難民となったアニメファンは、同番組がネット配信されている「ニコニコ動画」に殺到。第9話の倍近い視聴者がネットでアニメを視聴した。 「もともと、アニメのネット配信は少しずつ増えてきてはいたのですが、まだ地上波放送のおまけ程度の存在という感は否めませんでした。しかし今回の震災を通じて、多くのアニメファンはネット配信をテレビに並ぶチャンネルのひとつとして認識するようになったのではないでしょうか」  と、アニメ雑誌記者もコメントする。  偶然にも、この4月よりスタートする新作アニメ47タイトルのうち、4分の1以上にあたる12タイトルが地上波と同時に無料でネット配信も行うことが決定している。  昨年の同時期に比べて、放送タイトルの総数もさることながら、ネット配信作品数も急増している。  地上波では放送自粛傾向が強まる上に、7月に予定される地上波アナログ停波を経てますます進行するであろうテレビ離れの影響もあって、今後さらにアニメの視聴スタイルが変わっていくことが予想される。  インターネットの台頭とテレビ視聴スタイルの移り変わりに加え、突然の東日本大震災により大打撃を受けたオタク業界は、大きな変革の時代を迎えつつあるようだ。 (文=マーブル吉田)
魔法少女まどか☆マギカ 1 オタクもテレビ離れ。 amazon_associate_logo.jpg
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