幾原邦彦監督新作からももクロZ、angelaのライブまで! 「SPARK!」緊急レポ

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 5月17日、音楽/アニメレーベルのスターチャイルドが東京都内でコンベンション「SPARK!~STARCHILD PERFECT ANIMATION WORK!~」を開催した。夏期のテレビシリーズ新番組・劇場用作品・所属アーティストを一挙に紹介するもので、3時間の長丁場となった。  注目を集めたのは完全オリジナル新作テレビシリーズ『輪(まわ)るピングドラム』。あの『少女革命ウテナ』で一世を風靡した幾原邦彦監督の復活作だが、ストーリーは現段階では謎に包まれている。原案・シリーズ構成を担当する幾原監督は「久しぶりにテレビアニメーションをつくれることになり、緊張と興奮をしております」と、滔々と語りだした。 「ぼくらと、このドラマに登場する10代の少年少女とは断絶があるような気がする。その断絶をつなげる輪を作品化したい」 「ギャップが売りなのかなと思っています。表面的には土日の朝に放送するタイプの作品に見えるのかもしれませんが、完成した作品を見るとある種の毒がある。いまの日本のこの状態で、そんなに毒があるものをつくっていいのかなと、正直ためらいました。いささか葛藤はあったのですが、スタッフの中から"だからこそやるべきだ"という意見もあり、その言葉を胸にやらなければいけないと思いました。あまり軽いことは言えないですが、ある種のコメディー、ある種類のシリアスの中で、断絶してしまった何かを、ある種のキャラクターで、それをメタファーとしてつなげて表現できればと思います。誰しもが分かってくれることではないと思うんですが、数少ない人に届けることができれば、ぼくとしては本望かなと思っています。スタッフもそういう思いで制作しています」
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幾原邦彦監督と荒川美穂。
 また、ヒロインの高倉陽毬(たかくらひまり)は新人の荒川美穂が演ずることも発表され、幸運にも大役を射止めた意気込みを「作品とともに私自身も成長していきたい」と語った。  夏期の原作付きタイトルは『まよチキ!』『C3(シーキューブ)』の2作品。 『まよチキ!』は同名のライトノベル(あさのハジメ著、MF文庫J/メディアファクトリー刊)が原作。学園執事ラブコメと銘打つこの作品を、執事もの『ハヤテのごとく!』で指揮を執った川口敬一郎監督に任せるあたり周到な用意ができている印象がある。シリーズ構成は『けいおん!』の吉田玲子、アニメーション制作は『ヨスガノソラ』のfeel.が担っており、美少女キャラクターの萌えを前面に押し出すことになりそうだ。 『C3(シーキューブ)』はやはり同名のライトノベル(水瀬葉月著、電撃文庫/アスキー・メディアワークス刊)が原作。その著者である水瀬葉月は「基本、原作はシリアスとコメディーの両立で書かれています。それをアニメでもやってくださると。昨今厳しいエロとグロの2つをどう料理してくれるか楽しみです」と期待していた。  このほか、短編でおなじみDLE制作の『かよえ!チュー学』『ごはんかいじゅうパップ』の放映開始も発表されている。  劇場用作品は3タイトルを発表。ネット配信+パッケージ+劇場公開で同時展開する『APPLESEED XIII(アップルシード サーティーン)』は、6月3日のネット配信(マイシアター・ニコニコ動画・バンダイチャンネルほか)で口火を切る。Blu-rayとDVDは7月6日から全13話が順次発売されるが、この内容を前後編の2作にリミックスし、劇場公開する。  CGの描画は過去に映画化された『アップルシード』関連作に比較してトゥーン寄りの表現となり、士郎正宗の原作画への接近を試みているところが特徴だ。  昨年第1部『圧縮』が公開された『マルドゥック・スクランブル』は第2部『燃焼』が9月3日に公開決定。初期段階での公開館が11館+αと、前作に比べて増えた。  これに先立ち8月24日には『圧縮』のBlu-rayとDVDが発売される。収録されているのは完全版本編だ。アニメ業界初と言われる「R18+」指定を受け、劇場公開時には「PG12」に収まるよう整えた経緯があるだけに、貴重なパッケージ化となる。なおBlu-rayには劇場公開ver.も収録される。  8月27日には『魔法先生ネギま! ANIME FINAL』が公開されるが、なんと『ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH』と併映。講談社原作と小学館原作が同一の映画館でフュージョンするわけである。両作品に出演する白石涼子は「ラッキー! どちらの作品も観てもらえる、と楽しみにしていましたし、同時上映ということが一般に公開されたときにお客さんもびっくりするだろうなと、その反応をすごく楽しみにしています」とコメント。両作品のキャラクターソングカバーを収録したアルバムの発売もあり、『ネギま!』と『ハヤテ』のクロスオーバーは相当に計算し尽くされたもののようだ。  アーティストを紹介するセクションでは、キャラソンではなくこのたびアーティストとしてデビューする喜多村英梨、シングル「PRESENTER」の発売を控えた堀江由衣、蜷川実花の手になるジャケットアートが話題のデビュー20周年ベスト盤『VINTAGE White』を6月にリリースする林原めぐみがビデオメッセージで出演した。  林原めぐみはベスト盤に収録する新曲について「(東日本大震災で)被災した人たちにも頑張ってほしいという気持ちはありますが、そのためには元気で無事だった私たちが頑張って何かしなきゃいけないよという思いでつくった曲です。それが5年後10年後になって聴いたときに、いまの日本の悲しいことだけではなく、自分の身の回りの誰かを思っていられる自分になっているための曲にもなってくれたらいいなと、長い目で、長い思いでこの曲の詞を書きました」と背景を語った。  ラストを締めたのは、ももいろクローバーZとangelaのライブパフォーマンス。
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 ももクロZは、彼女らのライブを知らない、または知っていても立場上はしゃげない、そんな客席からの反応がない状態に苦笑しつつも、いつも通りの自己紹介MCを敢行。高城れには「流浪のアイドルだった私たちがスターチャイルドさんに拾っていただき......」という自虐的なMCで笑いを誘った。楽曲は、1stアルバム収録予定の新曲で正統派純アイドル色が強いナンバーの「コノウタ」、7月6日発売のワンコインシングルで新生Z宣言とも言える「Z伝説 ~終わりなき革命~」の2曲を熱唱。いずれも14日仙台でのフリーライブで発表されたばかりだ。キレのある躍動感でバランスのいい踊りを見るかぎり、新曲を得たももクロZの滑り出しは好調のようだ。
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 一方、貫禄のangelaは「私たちが年末ヒロイン! angelaでーす!」とあいさつ。ももクロZの後の共演者がみな影響を受けてしまうのはお約束なのか? 楽しげなMCを繰り出しつつ、劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』の主題歌「蒼穹」を熱演した。1年9カ月ぶりのニューアルバム『mirror☆ge』にも収録されるシアトリカルなこの壮大なナンバーは圧巻の一言。レーベル自体の意気込みを示すかのように大作の雰囲気を醸し出しコンベンションは終了した。 (取材・文・写真=後藤勝)
ももいろクリスマス in 日本青年館~脱皮:DAPPI~ まだまだ脱皮。 amazon_associate_logo.jpg
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人気シリーズに新メンバー追加決定 TENGA EGGが「オナタマゴ総選挙」を開催!

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 21世紀のオナニーシーンをリードするTENGA。なかでも革命的な使用感とチャーミングな造形で抜群の人気を誇るのが、"オナタマゴ"の愛称でも知られるTENGA EGGだ。  現在までにシーズン1、シーズン2を合わせて6種類が発売されているTENGA EGGに、今回さらに「シーズン3」として3種類が追加されることになったが、これは冬季限定で人気を博したハードゲルバージョンのレギュラー化となる。そのシーズン3発売記念キャンペーンとして10種類のエントリーモデルから、一般ユーザーが3種類を選出する「みんなでつくる EGG SEASON-3」――いわゆる"総選挙"が行われていることをご存知だろうか。 ●詳細はキャンペーンサイト→http://www.tenga.co.jp/egg3_campaign/  「みんなでつくる EGG SEASON-3」は、100名のモニターが全10種のモデルを実際に使用した上で「これだ!」と感じた上位3種のレビューを投稿。一般ユーザーはレビューを元にWEB上で投票を行い、その結果によって商品化されるモデルが決定されるという。  さらに一般投票者にはTENGAにまつわるムフフなプレゼントが進呈され、毎日投票すれば当選率が上がるシステムだというのだから、これは見逃すわけにはいかない。  10種類のエントリーモデルを実際に試すことができるモニター募集は5月22日(日)まで。その後、6月15日(水)~ 7月3日(日)の期間でWEB投票が行われ、7月上旬に結果発表、9月上旬には待望のTENGA EGG「シーズン3」がデビューする予定だ。  世の男性にとって最重要な生活習慣のひとつであるオナニー。その分野で革新的な進化を続けるTENGAから、今後も目が離せない。 ●「みんなでつくる EGG SEASON-3」 http://www.tenga.co.jp/egg3_campaign/
TENGA エッグシックスカラーズ パッケージ まるでくものうえにいるみたい。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 模倣品にご注意!? 革命的アダルトグッズ「TENGA」とその偽物を徹底検証! オナニーで社会を変える!? TENGAが目指す次なる革命とは? ケンコバも熱く語った!! みんなお世話になっている兄貴・TENGA製作の秘密とは!?

日本一の模型見本市「第50回静岡ホビーショー」レポート!

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 日本中のプラモデル・ラジコン・鉄道模型メーカーが一堂に会し、新製品を発表する「第50回 静岡ホビーショー」が、5月12日から15日にかけて静岡県・ツインメッセ静岡にて開催。模型大国日本ならではの練り上げられた技術とこだわりの職人技がキラリと光る最新アイテムが会場狭しと並び、新作アイテムを求める多くの来場者で会場はにぎわった。  国内有名メーカー75社が出展した今回の静岡ホビーショーは例年以上にバラエティー豊富なラインアップがズラリ。また、美少女キャラと既存のスケールキットのコラボレーションアイテム、いわば「痛キット」や大人気アニメ『マクロス』シリーズのキットが複数メーカーから発表され、アニメの勢いもあちらこちらから感じることができた。  なお例年通り開催期間前後には静岡市内各所で「静岡ホビーウィーク2011」が開催。タミヤ本社が見学できるオープンハウスや、日本最大級の鉄道イベント「グランシップトレインフェスタ2011」など、模型メーカーが多数集う静岡ならではの催しが多数行われた。  今年は3月に発生した東日本大震災の影響もあり、静岡ホビーショー開催期間中に2009年まで毎年行われていた航空自衛隊による静浜基地航空祭は残念ながら中止。施設工事によって中止した昨年に続き、2年連続でブルーインパルスの勇姿を拝むことはかなわなかったが、その分、技術大国日本の名に恥じないハイクオリティーな模型の数々が来場者の目を楽しませた。 ◆バンダイ
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最新作『機動戦士ガンダムUC』のキットが大集合。
ロートルなガンダムオタクの筆者はこれだけでもテンション上昇!
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ジオラマは男のロマン! 
アニメ第2話をほうふつとさせるバトルシーンをリアルに再現している。
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平成ガンダム三部作最大のヒット作、
『新機動世記ガンダムW』のアレンジ版キットが登場!
まだ発売されていないガンダムも参考出展されていた。
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プラモデル主導企画『模型戦士ガンプラビルダーズ』も。
思わず大人げないマジ改造で、「俺ガン」(俺だけのガンダム)を
作ってみたくなってしまうね!
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リアルスケールのザク・ヘッドも来場者を出迎えてくれる。
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ガンダムばかりではなく、『仮面ライダー』のプラモデルも。
思わずダブルライダーキックで飾りたくなるリアルな造形。
ちゃんと旧ライダーもいます。
◆東京マルイ
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日本最大のエアガンメーカー東京マルイのブースは、ほとんど銃砲店。
本物と見間違うほど精巧に作られたエアガンがズラリと陳列されていた。
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新商品となる次世代電動ガン、エアガンを
手に取る来場者が途絶えることはなかった。
やはりその注目度は高い。
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人気ゲーム『バイオハザード5』に登場した架空の銃・サムライエッジを商品化。
コンパクトなボディーの割にズッシリとした重さが特徴だ。
  ◆ハセガワ
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スケールモデルに定評のあるハセガワの最新キット「1/48 EA-18G グラウラー」。
アメリカ海軍最強の電子戦機。そして参考出展の「1/32 雷電21型」。
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Xbox 360用ゲームソフト『エースコンバット6』『アイドルマスター』が
コラボした萌えジェット!
パッケージの美少女も大人気の「たまごひこーき」シリーズもズラリ。
  ◆タミヤ
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この日、最大の面積でブース展開していたタミヤ。
ミニ四駆レースやRCカーの実演などのデモンストレーションに
多くの来場者が足を止めた。
◆やまと
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やまとのマクロスシリーズは今年も好調。
実際にガシガシ動かして遊ぶことができた。
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『ゾイド』のシールドライガー。
今にも飛び掛かりそうな躍動感がたまらない。
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クレイジーケンバンドの横山剣もフィギュアに!
リアルな造形とファンキーな雰囲気が「イーネッ!」
◆青島文化教材社
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「痛車」キットが大ヒットした青島文化教材社の最新アイテム。
『夢喰いメリー』『すーぱーそに子』など、なかなか通なチョイスです。
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ゴキブリ擬人化ハートフル同人誌『!!ごきチャ』『!!!ちゃば』が、禁断のキット化!
表面がちゃんとツルツルの光沢仕様になっているという、こだわりぶりに泣ける。
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リアルな作りのスケールモデルも健在。「H-Ⅱロケット」や、「はやぶさ」など
日本の技術力の象徴に注目が集まった。
また、『スタートレック』のエンタープライズ号にも
SFファンが群がった。
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グッズ商品も手掛ける青島文化教材社。
話題作『けいおん!!』『魔法少女まどか☆マギカ』などの最新グッズも展示。
◆その他の注目商品
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世界に名だたるラジコンのプロポ(操縦器)や
モーターなどのパーツ開発メーカー・双葉電子工業
のロボットには感嘆の声が上がった。
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日本で唯一の木製帆船模型メーカーのウッディジョー。
レーザーを駆使した加工技術と職人の熟練の
技が光る模型は圧巻。
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ジオラマ制作のDDFは、渋谷、横浜などの街並みをリアルに
再現したジオラマを展示。細かい!
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京商ブースでは同社初のスロットカー「Dslot43」のレースや、
最新RCカーの展示が行われており、
多くのカーマシンファンでにぎわっていた。
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京商とアダルトゲームメーカー・アリスソフトがコラボレーションする
耐久レーシングチーム・KYOSHOアリスモータースのグッズも
続々登場。
PH.jpg (取材・文・写真=有田シュン)
80年代こども大全―なつかしのおもちゃ博覧会 素晴らしきかな。 amazon_associate_logo.jpg
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上半期公開作ベストワン!? ポートマンが華麗に舞う『ブラック・スワン』

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(c)2010 Twentieth Century Fox
 今週は、ハリウッドのスター女優の輝きを銀幕で堪能できる珠玉の映画2作品を紹介したい。まず1本目の『ブラック・スワン』(公開中、R15+)は、ナタリー・ポートマンが第83回米アカデミー賞で主演女優賞を獲得し、早くも今年上半期公開作ベストワンの声さえ聞かれる超話題作だ。  ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は、元ダンサーの母とアパートで暮らしながら、バレエ一筋で遊びや恋愛とは無縁の人生を送っていた。そんなニナに、長年の念願だった「白鳥の湖」の主役を踊るチャンスが訪れる。だが、演出家の高い要求とハードな練習、奔放な新人バレリーナ・リリー(ミラ・クニス)へのライバル意識と疑念、過干渉な母親との確執が重なって大きなプレッシャーに。やがてニナは、現実と妄想の境界を見失い、心の闇にとらわれていく。  少女時代にバレエを学び、撮影前の10カ月間に連日5時間の猛特訓をこなしたポートマンは、見事な舞踊シーンを披露。痛々しいほどの緊張感に満ちた稽古場面から、悪魔が乗り移ったかのような鬼気迫る「黒鳥」の舞まで、表情と身体表現が一体となった鮮烈なパフォーマンスはもはや芸術の域。端正な顔立ちが不安や苦悩に揺れ動くさまや、いくつかの官能的なシーンも含め、全身全霊で打ち込んだポートマンの存在感は見る者の脳裏に忘れ難い残像を残すことだろう。  監督のダーレン・アロノフスキーは、『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)で薬物依存により精神のバランスを失う人々を、『レスラー』(08)で肉体を唯一の武器として闘い自らを破滅へ追い込む男を描いてきた。同監督が過去に扱ってきたこれらのテーマの集大成という面もある今作は、単に美しいだけのバレエ映画では決してない。CGを駆使したホラー風味の演出も印象的で、そうした部分も含めじっくり味わっていただきたい。  2本目は趣を変えて、アマンダ・セイフライド主演の明るくさわやかな恋愛ドラマ『ジュリエットからの手紙』(5月14日公開)。結婚を控えた記者志望のアメリカ人女性ソフィは、シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」の舞台となったイタリア・ヴェローナを訪問し、ジュリエットに恋愛アドバイスを求める手紙に返信するボランティアグループと出会う。そこでソフィが偶然見つけた50年前の手紙に返信すると、手紙の主の老婦人クレアと孫のチャーリーがやって来る。ソフィとチャーリーは、クレアの初恋の男性を探す旅に同行するのだが......。  メリル・ストリープと共演した『マンマ・ミーア!』(08)の大ヒットで若手スターの筆頭格に躍り出たセイフライドは、ほかにも出演作の『クロエ』(5月28日公開)、『赤ずきん』(6月10日公開)が相次いで封切られるなど、まさに今が旬の女優。金髪に小顔、コンパクトにまとまった愛らしい目鼻立ちの彼女は、恋愛と仕事に悩みながらもポジティブに行動するソフィ役にぴったり。モデル出身でスタイル抜群、健康的な魅力を放つたたずまいが、イタリアの古風な街や美しい農村部の風景によく映える。  クレアが昔の恋人を見つけられるどうか、若い二人の恋の行方は、といった物語への興味もさることながら、手紙と言葉の持つ「力」を再認識させてくれる本作は、メール世代の若者には新鮮に、それ以上の世代には懐かしく受け止められるはず。優しさと切なさ、示唆と教訓に富むハートウォーミングな感動作だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ブラック・スワン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55751/> 「ジュリエットからの手紙」作品情報 <http://eiga.com/movie/55523/>
マンマ・ミーア! ミーア! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 "セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 ヒット間違いなし!? 2011年夏のイチオシ映画

硬派な監督が撮った恋愛サスペンス!『行きずりの街』は大人のドラマだ

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常にリスクを負う企画にチャレンジする阪本順治監督。
『行きずりの街』では初顔合わせのキャスト&スタッフを束ね、
見応えのある恋愛サスペンスに仕上げた。
 「このミステリーがすごい!」第1位を受賞した志水辰夫のハードボイルド小説を映画化した『行きずりの街』は、往年の東映アクション映画ファンにはたまらない作品となっている。黒澤満製作、丸山昇一脚本に加え、撮影・仙元誠三、照明・渡辺三雄といえば、松田優作主演作『最も危険な遊戯』(78)、『殺人遊戯』(78)、『処刑遊戯』(79)、『野獣死すべし』(80)、『ヨコハマBJブルース』(81)、『ア・ホーマンス』(86)などを手掛けた東映の黄金スタッフ。主演は『ビー・バップ・ハイスクール』(85)で俳優デビューし、東映作品でキャリアを磨いた仲村トオル。最近の仲村トオルは、WOWOWの社会派ドラマ『空飛ぶタイヤ』で中小企業の社長を大熱演するなど、大人の俳優としてかなりイイ感じ。そんな東映色の強いキャスト&スタッフを、がっちり束ねてみせたのが阪本順治監督だ。『どついたるねん』(89)で衝撃のデビューを飾って以来、『顔』(00)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)と濃厚な人間ドラマを描き続けている。阪本作品では珍しいベッドシーン、撮影期間中は食事をまったく摂らない理由、震災直前に書き上げていた脚本......、男気溢れる阪本監督にいろいろ聞きましたぞ。 ――『行きずりの街』、仲村トオルと小西真奈美のハードなラブシーンもあり、大人のドラマとして非常に見応えがありました。本作は仲村トオルの芸能生活25周年、映画出演50本の記念作になるそうですね。 阪本順治監督(以下、阪本) はい、でもボクに監督のオファーがあった時点では、そのことは知らなかったんです。志水さんの『行きずりの街』を映画化するなら、仲村トオルくんがいいなぁと思っていたところ、ちょうど仲村くんにとって、そういう節目のタイミングだったんです。仲村くんにとって節目の作品になるということは後で知ったんだけど、そういう作品の監督をボクにやらせてもらえるのは嬉しいことだなと思いましたね。 ――かつて松田優作、仲村トオルらが所属した東映系の芸能プロダクション「セントラル・アーツ」の代表・黒澤満プロデューサーの計らいなわけですね。
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元高校教師の波多野(仲村トオル)は愛する
雅子(小西真奈美)と別れた過去に悩み続けて
いた。(c)2010「行きずりの街」製作委員会
阪本 そういうことですね。仲村くんにとって、映画出演50作目ということより、新人時代の彼を育てた黒澤プロデューサーの元で節目となる作品を撮ることができたということのほうが大きいんじゃないかな。まぁ、俳優としての節目の喜びは、彼自身にしか分からないことだけどね。 ――ひとりの俳優のデビュー25周年&映画出演50作目を記念する作品が作られるなんて、まだ映画業界にそんな"粋"な部分が残っていたんですね。 阪本 そうだね。うん、そういうことにしておこうよ(笑)。 ――阪本監督にとって、東映作品は『新・仁義なき戦い』(00)、『カメレオン』(08)に続く3作目ですが、がっちりとスタッフワークが噛み合ったように感じました。今回の脚本・丸山昇一、撮影・仙元誠三、照明・渡辺三雄というベテランスタッフとの顔合わせは、特別な想いがあったんじゃないでしょうか? 阪本 丸山さんは『カメレオン』でもご一緒したんだけれど、仙元さん、渡辺さんに関しては、ボクからお願いしたんです。黒澤プロデューサーで、仲村トオル主演、丸山昇一脚本となれば、これは東映の、それもセントラル・アーツの座組でやるべきだろうと。俳優に関しても『新・仁義なき戦い』『カメレオン』に出てくれた菅田俊さん以外は、ほとんど初めての人ばかり。でも、初めて組むキャストやスタッフと、ある種の緊張感を感じながら取り組んだほうがいいように思ったんです。単身で、現場に乗り込むという怖さ半分、面白さ半分でやれたことがいいように働いたんじゃないかな。 ――阪本監督ほどのキャリアでも、現場は緊張するもの? 阪本 だって、仙元さんは50年以上のキャリアですよ。仙元さんから見れば、ボクなんかヒヨッ子同然(笑)。世界的に見ても、80歳で現役の映画監督は少なくないでしょ。そういうベテランに比べれば、ボクのキャリアなんて無いに等しいですよ。 ――仙元誠三&渡辺三雄コンビとは、阪本監督は映画業界に入って間もない頃に現場を共にしたそうですね。 阪本 仙元&渡辺コンビと初めて遭遇したのは、『汚れた英雄』(82)の撮影現場。あの作品のレースシーンの"製作進行"としてボクは参加していたんです。現場でお弁当を配ったり、お茶を淹れたりの雑用係ですよ。若かった頃の仙元さんの傍若無人ぶりを、そのときしっかり体験しましたね(笑)。その日の撮影が終わると、宿泊先の仙元さんの部屋で酒盛りになるわけだけど、ボクが部屋の片隅でついアクビをしたら、「そこのお前、アクビすんじゃねぇ!」と怒鳴られた(苦笑)。その後、ホテルで打ち上げがあって、トイレで渡辺さんと一緒になって、連れションしたんです。そのとき、渡辺さんが「君が淹れてくれたお茶、美味しかったよ」と声を掛けてくれた。その頃の渡辺さん、パンチパーマでゴッツイ人相だったけど、「なんてイイ人なんだ!」と感激した覚えがあります(笑)。
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東映のベテランスタッフが集結した『行きず
りの街』。照明技師の渡辺三雄氏は10年11月
に亡くなり、仙元&渡辺の名コンビは本作がラスト
に。
――仙元&渡辺コンビから、図らずも現場の厳しさと優しさを両方教わったんですねぇ。阪本作品というと、撮影=笠松則通という印象が強いんですが......。 阪本 笠松さんとは、ボクが助監督だったときに笠松さんが撮影助手を務めていたこともあって、"あうん"の呼吸で撮影することができるんですよ。ボクが何を撮ろうとしているのか、どんな芝居を欲しがっているのか、笠松さんは分かってくれる人。強い絆があるんです。でも、その絆に頼らずに、どこに絆を見出せばいいのかというチャレンジも、時に必要だと思うわけです。今回、仙元さんとは初めて本格的に組んだわけだけど、クランクイン前に仙元さんは「今回に限って、怒鳴ることと人を殴ることはやめる」と言ってました(笑)。「阪本のやりたいことをまず聞いて、そこで自分に何ができるかを考える」というスタンスでいてくれたようです。といっても、現場では物が飛んだりしていましたけどね(笑)。今回はボクに合わせてくれたけど、次は分からない(苦笑)。でも、そのほうが面白いですよ。自分の生理だけで作品をつくると、自己満足に陥りやすいもの。俳優も含めて、いろんな生理が作品の中に混在しているほうが、楽しいですよ。 ■男物パンツに主人公が激怒するシーンは出色! ――仲村トオルと小西真奈美が俳優としてのポテンシャルを存分に発揮。2人のベッドシーンは魅せますね。阪本作品でのラブシーンは珍しいのでは? 阪本 そうだね、実は、『王手』(91)という作品で赤井英和と広田レオナちゃんのベッドシーンを撮ったことがあるんだけど、ボクの演出がマズくて、赤井くんの表情がすごすぎて、彼女を強姦しているようにしか見えなかった(笑)。それで編集段階で仕方なくベッドシーンを丸ごとカットしたんです。広田レオナちゃんから、ひどく怒られた。それ以来、ベッドシーンはどこか苦手意識があったんです(苦笑)。今回は12年ぶりに出会った主人公の波多野(仲村トオル)と雅子(小西真奈美)がもう一度心を交わすことで、自然と体を交わすことになるのは避けては通れないシーン。それでチャレンジしたんだけど、役者以上にボクのほうが照れてしまった(笑)。 ――主要キャストには、事前にメモ書きを渡すと聞いています。 阪本 えぇ、仲村トオル、小西真奈美、窪塚洋介の3人には、クランクイン前に各人物の気質とか設定についてメモを渡しました。映画って、その人の人生の途中から始まるから、その前はどんなことをしていたのか、なんてことを書いたメモを渡して、撮影が始まる前に話し合うようにします。そうすれば、現場に入ってから、撮影を中断するような長時間のディスカッションをしなくても済むわけです。途中で道に迷っても、立ち戻れる場所を作っておくということです。まぁ、今回はラブシーンについてまで具体的なことはメモでは触れていませんが、雅子は波多野と別れた12年という経験を活かして前向きに生きているが、波多野は12年前の経験を活かさないまま田舎に引っ込んでしまった男だということ、雅子は昼も夜も働いているが、一人ぼっちになったときぽっかりと心に穴が空き、その穴を埋めてくれるのは波多野だった......みたいなことをメモ書きにして渡しました。
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窪塚洋介、佐藤江梨子ら脇役陣もイイ味を出し
ている。「観た人に"あの役者、いいね"と思って
もらいたい。俳優の気質と役が被るような配役
を考えますね」と語る。
――なるほど、演出ってキャラクターの内面を作っていく作業なんですね。シャワーを借りた波多野が、雅子の用意した男物パンツを見て、ブチ切れるシーンは大変な名場面。2人の間で焼けぼっくいに火が付く瞬間が実に鮮やか。 阪本 波多野は目の前にある男物のパンツを見て、自分の頭の中で勝手に妄想して怒り出すわけだよね。しかも、雅子にたしなめられた後、「あっ、コーヒー飲むようになったんだ。昔は飲む人じゃなかったよね」とか、物すごく場違いなことを口にする情けない男なんですよ。ボクも現場で観ていて「お前は一体、何をしゃべっとるんだ?」と吹き出しそうになりました(笑)。丸山さんが原作をうまく脚色してくれました。まぁ、観ている人は波多野にツッコミながら、感情移入してもらえればと思います。結局、男は別れた時から全然成長できていないんだけど、女はそんな男を受け止められるだけ成長しているわけなんですよ。 ■"太った監督"は俳優から信用されない? ――阪本作品というと男臭い印象が強いんですが、実は藤山直美主演『顔』(00)、風吹ジュン主演『魂萌え!』、観月ありさ主演『ぼくんち』(03)と女性キャラクターが生き生きとしている秀作が多いんですよね。 阪本 男が主人公の場合なら、「もし、オレが同じ男だったら」と立場を置き換えて、自分の願望を込めて考えるわけだけど、さすがに女性の場合は「もし、オレが同じ女だったら」とは考えない(笑)。女性キャラクターの場合は「もし、同じ人間だったら」というふうに考えますね。あと、『魂萌え!』のときに原作者の桐野夏生さんから「原作小説をどのように換骨奪胎してもらっても構わないが、女性を男の願望で描かないでほしい」と言われたことが、今でも演出する上で頭に残っているんです。 ――阪本作品に出て来る女性たちは男の理想像ではなく、生身の女なんですね。以前から一度、阪本監督に聞いてみたかったんですが、撮影期間中は食事を摂らないって噂を聞くんですが、本当ですか?
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失踪した少女・ゆかり(南沢奈央)の元同居
人役の谷村美月がトボケた演技で笑いを誘う。
衣装合わせ時に、阪本監督と同じ中学の32期
下の後輩であることが判明したそうだ。
阪本 毎回ね、「今回はちゃんとみんなと一緒にお弁当を食べよう」と思って、最初の2~3日は食べるんだけど、段々と胃が受け付けなくなるんです。みんながお弁当を食べている間、ボクは片隅でカロリーメイトをぼそぼそと喰っています(笑)。1日の食事はカロリーメイトひと箱。撮影中にボクのお腹が鳴ってNGを出したこともあるんで、お腹が減りすぎて鳴ってしまいそうなときは、制作部が用意したお菓子をちょっとつまみますけどね。だいたい、ひとつの作品を撮り終わると6~7kg体重が減ります。でも撮影終わった後は酒を飲むんで、すぐにリバウンドするんです(笑)。 ――1カ月前後、まともに食事を摂らないわけですか。それは自分をギリギリの状態に追い込んで、感覚を研ぎ澄ますということですか? 阪本 単純に、食事をしないと内臓に負担が掛からないから疲れないんです。食事をした後で、頭がぼーっとすることもないしね。もともとは『どついたるねん』の撮影前、赤井くんに25kg減量させたんで、撮影中はボクも一緒に食事を摂らなかったことから始まったんです。ビタミン剤を1錠だけ手のひらに乗せて、「これが今日の食事な」とか赤井くんと言いながら撮影を続けたんです。その後、『鉄拳』(90)に出てもらった菅原文太さんに、『傷だらけの天使』(97)でまた出てもらったんですが、「阪本、お前太ったな」「オレは太った監督は信用しねえよ」と言われてね。『傷だらけの天使』の前、1年間作品が撮れなかったこともあり、暴飲暴食が続いて体重が増えていたんです。菅原文太さんに言われたこともあり、それからは撮影現場に臨む段階から体をぎゅーっと絞るように心掛けているんです。 ――身を削って映画を撮っているんですね。最後に"震災と映画"の関係について聞かせてください。3月に起きた東日本大震災は、クリエイティブな仕事に関わる人間に今後も多大な影響を及ぼしていくと思います。阪本監督はどのように考えているんでしょうか? 阪本 ボクも震災の直前に、脚本をひとつ、ちょうど書き終えたところでした。2013年の経済を予測するというテーマのものだったので、これは部分的に修正すればどうにかなるというものじゃない。根底から考え直さなくてはならないでしょう。もちろん、どのジャンルの映画でも、作り手はどんな時代にその作品を発表しようとしているのか、常に考えなくちゃいけない。でも、今は意識しなくても意識せざるを得ない状況ですよ。フィクションって何だ? 虚構って何だ? 映画に何ができるのか? あるいは、まったく無力なのか? 当然、映画業界にいる人間は、みんな考えていることだと思います。中には物理的な理由から製作をストップに追い込まれた企画もあるでしょう。生活が厳しくなる人も出てくるだろうけど、でも震災の直接被害に遭った方のことを思えば、そんなことは言ってられない。原発事故を含め、今後どんなことが起きるのか予測がつかない時代。どこに希望を見出せばいいのか、正直分からないよね。崔洋一監督が「映画は希望を与えるものだけど、絶望を与えるのも映画だ」と言っていますが、今はそのどちらでもないところに追いやられたように感じます。映画を作ることで現実に向き合うのか、それとも全然違うことに取り組むのか。今はそれぞれが考える時間が与えられたと思うしかないですね。 (取材・文=長野辰次) 『行きずりの街』 原作/志水辰夫 監督/阪本順治 脚本/丸山昇一 製作/黒澤満 撮影/仙元誠三 照明/渡辺三雄 出演/仲村トオル、小西真奈美、南沢奈央、菅田俊、うじきつよし、大林丈史、でんでん、宮下順子、佐藤江梨子、谷村美月、杉本哲太、ARATA、窪塚洋介、石橋蓮司、江波杏子 販売元/東映 発売元/東映ビデオ 5月13日よりレンタル開始、5月21日よりDVD発売(税込4,935円) <http://www.yukizuri.jp> ●さかもと・じゅんじ 1958年大阪府堺市出身。横浜国立大在学時から、石井聰亙、井筒和幸らの作品にスタッフとして参加。監督デビュー作『どついたるねん』(89)で第32回ブルーリボン賞最優秀作品賞を受賞。松山ホステス殺害事件をモデルにした『顔』(00)では第24回日本アカデミー賞最優秀監督賞、キネマ旬報ベストテン第1位など多くの映画賞を受賞。その他の監督作に、『新・仁義なき戦い』(00)、『KT』(02)、『ぼくんち』(03)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』『カメレオン』(08)、『座頭市 THE LAST』(10)など。7月には原田芳雄を主演に迎えた新作『大鹿村騒動記』が公開される。
行きずりの街 5月21日発売。 amazon_associate_logo.jpg
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心の叫びを聞いてくれ!? きゅうりや歯ブラシがブツブツつぶやく『つぶやき隊』

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真っ赤な唇や、鼻筋の影までリアルに描かれたキモカワな絵も魅力の一つ。
一目見たら最後、脳裏に焼き付いて忘れられない
。(『つぶやき隊』より/以下同)
 なんてドラマチックじゃないアニメなんだろう。アニメーションDVD『つぶやき隊』が、もうドラマチックじゃないのなんの。"クスッと笑えるツイッター的アニメーションなう!!"がうたい文句の『つぶやき隊』は、約5分間の1話あたり、1つのキャラクターが微動だにせず、心の内に秘めている思いの丈を、ただひたすら淡々と語るといった内容。至極個人的な事情をブツブツつぶやくあたりが"ツイッター的"なのだそう。キャラクターは、着ぐるみの中の人や、ハト、テレビのリモコン、きゅうり等、有機物・無機物問わず。動き回るシーンは一つもなく、最初から最後まで、動く個所といえば、しゃべりに合わせてパクパクする唇のみ。とにもかくにも、ドラマチックじゃない。  「あ、どうもこんにちはー。○○(テレビのリモコン等)です。△△県出身、血液型はホニャララ型です」とお決まりの自己紹介に始まり、仕事のやりがいや、やっていて辛いことなどを、とうとうと語る。しつこいようだが、そこにドラマはない。だが、「あのー」だの「うーん」だの、日常で無意識に発してしまうつなぎの言葉までしっかり入れてしゃべる『つぶやき隊』のキャラクターたち。彼らの"自分語り"を粛々と聞いていると、夜中、まどろみながら深夜ラジオを聴いているような気分にさせられる。  そんな具合に、グダグダと低テンションで続く"自分語り"の中から、筆者独断で秀逸なつぶやきを選んでみた。 ■収録キャラクター「つぶやき」傑作選(※ほぼ一字一句そのままで抜粋)
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【『ハッピーマウス』の着ぐるみを着る横山さん】(第1話)
埼玉県川口市出身、血液型A型
「ツラいことねー、うーん、この、着ぐるみが臭い。うーん、なんか、前の人、なに、どんな体臭してたんでしょうね。このなんか、変な、納豆みたいな変なね、なんていうんだろ、すんごいにおいするんですよね。嗅ぎます? これ嗅ぎます? 嗅ぎます? あ、いいスか? いいスかいいスか?」
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【携帯クリーナーさん】(第9話)
愛知県出身、血液型AB型
「ツラいこと......あのー僕ら、立ち位置が中途半端、なんですよね。(中略)あのー実際、汚れたら、携帯の画面とかが汚れたら、あのー洋服のすそとかでブェッブェッブェッてね、簡単にふいちゃうこと、ふいてることが多いみたいですよね。ま、だから、まーちょっとそのへんが、中途半端っていうのが、一番不安に思うことですよ」
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【きゅうりさん】(第10話)
長野県出身、血液型B型
「恥ずかしながらね、栄養価はわりと低い方なんですよねヘヘッ。あの、成分のほとんどが水、なんですよね、はい、すみませんヘヘヘヘッ」 「あ、ハイ、品種名ですね、あの、私は、『南極一号』と申します」 「ツラいことですかーなんだろうなーいろいろあるんですけどねー。まあ、僕の体っていうのがね、もともとイボイボが、いっぱい付いてるのでね、このイボイボをどうやって使えばいいのかっていうのが、ちょっと悩むところが、ちょっとありますね」  このような調子で、1キャラクターあたり約5分、全10キャラクターがダラダラと喋り倒すこと50分。ほかには、『歯ブラシさん』、『ハトさん』、『ニュースキャスターの知ったかブリ男さん』、『足指さん』、『電柱さん』、『パグさん』、『テレビのリモコンさん』が出演している。鳩さんやパグさんがおしゃべりするだけの、シュールながらもファンシーなキャラクターDVDかと思いきや、特典映像ではなんと、『アナルさん』と『コンドームさん』が登場する。  あらゆる身近な存在たちの思いがギュッと詰まったDVD『つぶやき隊』、いくばくかの母性と穏やかな気持ちで、彼らの小さな叫びを聞いてやってほしい。よそではめったに聞けないから。 (文=朝井麻由美)
つぶやき隊 グッズ発売&DVD第2弾も予定されてるそうで。 amazon_associate_logo.jpg
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ヒット間違いなし!? 2011年夏のイチオシ映画

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(C)Photo Credit: Robert Zuckerman
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HASBRO, TRANSFORMERS and all related characters are trademarks of Hasbro.
(C)2011 Hasbro. All Rights Reserved
 今回はゴールデンウィーク特別編として「ヒットが期待される、2011年夏のイチオシ映画」というお題で注目の超大作、話題作を4本厳選して紹介したい。  まずは全世界に幅広い世代のファンを抱える『ハリポタ』シリーズの完結編、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(7月15日公開)。言わずと知れたJ・K・ローリングによる超人気ファンタジー小説の映画化で、日本歴代興収3位の1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』(01年、203億円)から毎回大ヒットを続けてきたテッパンのシリーズも、8作目に当たる今回の最終章パート2で打ち止めとなる。死喰い人が魔法省やホグワーツ魔法魔術学校を支配下に置く中、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ヴォルデモート打倒に不可欠な「分霊箱」を探す旅を続けていた。ヴォルデモートが3つの「死の秘宝」を手に入れ不死身になるのを阻止できるのか......。シリーズ初となる全編3D上映も注目ポイントで、立体的に展開するハリーたちの魔法バトルが今から楽しみだ。  一方、邦画の夏休み一番人気になりそうなのは、スタジオジブリの『コクリコ坂から』(7月16日公開)。少女マンガのアニメ映画化で、企画・脚本が宮崎駿。その長男の宮崎吾朗が『ゲド戦記』から5年ぶり2作目の監督を務める。高度経済成長期の横浜を舞台に、父を海で亡くし仕事を持つ母親を助ける女子高生の海(うみ)が、新聞部部長や生徒会長の同級生とともに送る笑いと涙の日常が描かれる。日本歴代興収1位に輝く『千と千尋の神隠し』(01年、304億円)をはじめ、『ハウルの動く城』 )(『もののけ姫』(97)『崖の上のポニョ』(08)と駿監督の4作品が歴代ベスト10入りを果たしているが、吾朗監督が2度目の挑戦でどこまで父親に近づけるか。  夏らしい派手なアクション映画で外せないのは、マイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』(7月29日公開)。日本の人気玩具をもとに、CGを駆使して実写化したSFアクションシリーズの第3弾だ。1969年、アポロ11号の月面着陸成功により、月の裏側に不時着していた金属生命体「トランスフォーマー」の宇宙船が発見された。そして現代、トランスフォーマーたちによる地球侵略が再び始まり、米政府が長年隠ぺいしてきたトランスフォーマーをめぐる謎も明らかになる......。シャイア・ラブーフらメインキャストが続投する一方、ヒロインは前2作のミーガン・フォックスからモデル出身のロージー・ハンティントン=ホワイトレイに交代。こちらもシリーズ完結編にして初の3D映画で、興行成績でハリポタの好敵手となれるかどうか。  最後は、浅野忠信のハリウッド進出作となる『マイティ・ソー』(7月2日公開)。神話とスーパーヒーロー物を組み合わせた異色のアメコミ原作を、ケネス・ブラナーが実写映画化。神々の王の息子ソーは、ごう慢な性格が災いして追放され人間界へ。ある事件をきっかけに記憶を取り戻し、ソーに変身して人類の敵と戦う。主演の新鋭クリス・ヘムズワース、オスカー女優ナタリー・ポートマン、名優アンソニー・ホプキンスとともに、浅野は神の世界の戦士役で出演。4月に日本語版予告編が公開され、注目度もうなぎ上りだ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」作品情報  <http://eiga.com/movie/54734/> 「コクリコ坂から」作品情報 <http://eiga.com/movie/55911/> 「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55153/> 「マイティ・ソー」作品情報 <http://eiga.com/movie/54259/>
トランスフォーマー/リベンジ 今のうちに復習。 amazon_associate_logo.jpg
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帰ってきた最高級のおバカ映画 『ジャッカス3D』×『イッテQ!』を手掛ける人気放送作家 鮫肌文殊

──2000年以降、世界を阿鼻叫喚の渦に巻き込んできた超強力おバカムービーが、なぜか3D仕様でカムバック。本作を、数々のバラエティ番組を手掛ける気鋭の構成作家はどう観るのか?
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『jackass(ジャッカス)』とは、「バカ、アホ、間抜け」を意味するスラングだ。もともとは2000年からアメリカのMTVで放送が開始されたテレビ番組で、低俗で危険なパフォーマンスを、無目的かつ無差別に繰り広げ、全米から非難と喝采を浴びた。02年には、寿司屋でワサビを鼻からキメてゲロを吐き散らかしたり、ミニカーを肛門に突っ込んで病院にレントゲンを撮りにいったりと、バカっぷりに磨きがかかった劇場版が公開され大ヒット。そして06年の劇場版第2弾を経てこの春、『ジャッカス3D』と銘打ったシリーズ最新作が日本公開される。  いわば、「飛び出すバカ」。ウソかホントか知らないが、宣伝チラシにも「俺たちはジェームズ・キャメロンが『アバター』で使ったのと同じ3D技術を、スティーヴォー【註:メインキャストの1人】のケツにぶち込んだぜ!」なんて文句が躍っている。すでに全米では、本作公開初週、話題の映画『ソーシャル・ネットワーク』を興行成績1位の座から引きずり降ろすほどの好調ぶりなのだ。  そこでこの『ジャッカス3D』を、『進め!電波少年』や『世界の果てまでイッテQ!』(共に日本テレビ)など、『ジャッカス3D』と似ているといえなくもない数々の突撃系バラエティ番組を手掛けてきた放送作家・鮫肌文殊氏に観ていただくこととした。その第一印象は、「ノリが懐かしかった」。まだ鮫肌氏が駆け出しの頃、80年代後半~90年代初頭のテレビ界は、「バカをやってる奴が一番偉い」「誰が最もキチガイかをみんなで競っていた」時代で、自身もどれだけトチ狂った企画を出せるか、そればかり考えていたという。当時のバカ番組の代表格といえば、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(同)だろう。 「あの頃はゲラゲラ笑って観てましたけど、例えば、同番組の伝説的なシーンである、バスを水没させるクイズとか、今観てるとただの水難事故ですからね。バラエティでもなんでもない(笑)」  突き抜けたバカは強烈に記憶に残る。同番組からいわゆる「リアクション芸人」も生まれたわけで、バカを貫き通した功績は大きい。 ■日本のテレビでは絶対にマネできないことを平然と  しかし一方で『ジャッカス3D』は、基本的には日本のテレビ番組とはまったくの「別モノ」だという。日本のバラエティ番組では、出演者にケガさせることなど今や完全にご法度。よって、どれだけ危険な映像が流れていても、実際は絶対に安全な空間で収録が行われている。  また、日本のバラエティにおける定番企画には、「テングになってる芸人を懲らしめる」といった大義名分が必ず存在する。かつてあのテリー伊藤氏は、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)の放送作家に「企画には正義がなければいけない。正義がない企画は楽しめない」と語ったことがあるそうだ。つまり、大義があるからこそ、無茶苦茶やっても許されるし、笑えるのだと。  これに対して『ジャッカス』には大義もクソもないし、ガチで体を張り、病院送りになることもしばしばだ。 「あそこまで徹底してバカをやられると、すがすがしいですよね。と同時に彼らがプロなのは、ほとんど血を見せないところ。日本におけるリアクション芸人もそうなんですけど、出血したら負けなんです。どんなに面白くても、視聴者は血を見たら引いちゃうから」
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 過去には鮫肌氏も、深夜番組の生放送で、電撃ネットワーク・南部虎弾氏の金タマとAV女優の鼻フックを紐で結んで綱引き勝負をさせるなど、バカバカしい企画を連発したが、今はそうはいかないという。不況下でスポンサーもつきにくいし、世間の目も厳しい。放送作家には上から「コンプライアンスを重視せよ」との通達が来る。細かい制約がどんどん進化および深化して、針の穴に糸を通すようにして企画を考えなければならない。 「そういう身からすると、『ジャッカス3D』はすごいうらやましいですね」  確かに同作は、小学生が考えるようなくだらないネタを、いい大人がのびのび、かつ真剣にやっているし、日本のテレビではタブーなスカトロネタも全開だ。そういう意味では、日本のバラエティ番組とは完全に別モノといえるだろう。  かといって、参考になる部分がないわけでもないらしい。同作に、巨大なバルーンを用いてトランポリンの要領で人間を空高く放り上げ、それを下からペイント弾で撃つというネタがあるのだが、この仕掛けと同じものが、実際に『イッテQ!』で使われたそうだ。 「ああいうふうに人間が信じられない動きをする、面白いリアクションを生む装置は、なかなか発明されないんですよ。さすがに日本では飛んでる人間を撃ちはしないですけど。『革新的な罰ゲームはないか?』みたいな目線で見てはいましたね。それ以外は、怖すぎて参考にできない(笑)」 ■『ジャッカス3D』に見る3Dの正しい使い方
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 では、本作のウリである「3D」という部分に関してはどう見るのか? 「飛び出してきてほしくないものが飛び出してくるっていう、ものすごく悪意のある使い方をしてるじゃないですか。お笑いとしては大正解ですよね」  そう、本作でスクリーンから飛び出してくるのは、大量のディルドやリアルなチンポ【もちろん日本版ではボカシあり】、ウンコにゲロ、屁でつくったシャボン玉など、思わず手で払いのけたくなってしまうようなものばかり。ある意味、3Dでの"遊び方"を心得ているといえるかもしれない。当然、新しい遊び方が生まれれば新しい企画も生まれる。その点では鮫肌氏も、今後の3Dの可能性には注目しているようだ。 「例えば、カメラの小型化って実は革新的なことで、あれのおかげでドキュメントバラエティが成立してるんですよ。CCDカメラで24時間撮り続けられると、撮られる対象はカメラを意識しなくなってくる。だからこそ素が出て面白くなるっていうのが、ドキュバラの基本なんです。3Dも同じで、こういうものを撮影可能なカメラが出てくることで、新しいタイプのバラエティ番組も生まれるんじゃないかな」  実際に3Dがお茶の間にまで降りてくるのはまだ先の話かもしれないが、鮫肌氏としては、「飛び出す」というよりも「空間的な奥行きを生かす」方向で3Dを使ってみたいという。 「『ジャッカス3D』みたいな使い方もアリですけど、3Dは旅番組とも相性がいいと思うんです。例えば『ちい散歩』(テレビ朝日)を3D化したら、実際に地井武男さんと歩いてる気分になれますよ。目の前に下町のおじさんがいたり、職人さんの蝋細工か何かを地井さんと一緒に覗き込んだり(笑)」  現在は主に壮大なファンタジーや派手なアクションに用いられがちな3Dだが、「空間の共有」という意味では、より身近な、日常的な風景に応用しても面白いのではないか、というわけだ。3Dの技術がさらに向上し、3D対応型テレビが一般家庭にも普及するようになれば、ほのぼのとした空間に視聴者を引き込むような方向でも、番組制作が進んでいくのかもしれない。  と、やや『ジャッカス3D』からは話が逸れたが、最後に、鮫肌氏なりの同作オススメポイントを。 「言葉がわからなくても笑えるっていうのは、バラエティの基本なんです。人がバナナの皮で転ぶとか落とし穴に落ちるとか、そういう原初的な笑いを極めたのが『ジャッカス3D』だと思うんですよ。3Dも正しく使われてるし、みんなでゲラゲラ笑うには最適な映画ではないでしょうか。あと、後半は下ネタ連発なので、鑑賞前の食事は控えたほうがいいかも(笑)」 (構成・文/須藤 輝) 鮫肌文殊(さめはだ・もんぢゅ) 1965年、神戸生まれ。10代の頃より放送作家活動を開始し、現在では『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)や『さんまのSUPERからくりTV』(TBS)など数多くのバラエティ番組を担当。本誌に「鮫肌文殊と山名宏和の だから直接聞いてみた」を連載中。 『ジャッカス 3D』 伝説のバカ映画が、まさかの3D仕様でカムバック。チンコもディルドも、そしてウンコも飛び出す、体当たりアクション・エンタテインメント。刺激120%の映像の数々に、映画館は阿鼻叫喚必至!? 製作/スパイク・ジョーンズほか 監督/ジェフ・トレメイン 出演/ジョニー・ノックスヴィル、バム・マージェラ、スティーヴォーほか 配給/パラマウント・ピクチャーズ 公開/震災の影響により公開延期となりました。今後の公開予定に関しては以下の公式サイトをご参照ください。 公式サイト〈http://www.jackass-3d.jp/

「ラジオは都落ちだと思ってた」"ラジオの女王"小島慶子、今だから語れるホンネ(後編)

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前編はこちらから ――そこで「局アナとしての役割を演じるのが職責だ」と理解しつつも、疑問を感じていたわけですね。 「"何かを伝えたい"と思ってアナウンサーという職業を選んだはずだったのに、実際にやってみたら全然違ったんですよ。『オマエの考えていること、言いたいことは封印して、言われたことだけを伝えろ』っていう仕事なんだって、入ってから気付きました。これはどうも私が素人頭で考えていた、"何かを伝える"っていうのとは違うぞと。だから結局、テレビでいくらしゃべっても、どんな人が見てくれていて、見た結果なにを思ったのかなんてほとんど分からないわけですよ。ホント、視聴率くらいしか手掛かりがない。そういう「伝わった、伝えたつもり」で、堂々と高いお給料をもらって『私たちは情報の伝え手である』とか言うアナウンサーの立場が気持ち悪かったですね。もちろん、キレイな若いお姉さんがキレイな日本語で、誰からも好かれるようなしゃべり方でモノを伝えるっていう役割はマスメディアにおいて、特にテレビにおいては絶対に必要な役割だと思っているので、局アナが必要ないなんてことはまったく思いませんよ。ただ、それと私のやりたいことは違ったんですよ」 ――そのころは「ラジオだったら"何かを伝える"ことができるんじゃないか」とは思っていなかったんですか。 「アナウンサーになってからもラジオは大好きで聴いていましたけど、自分がラジオでしゃべるなんて本当に考えてもいませんでしたね。そもそも、テレビの局アナとして入社したつもりだったので、そのキャリアにおいてラジオに行くのは負けだなって。都落ちだって言われるんじゃないかっていう強迫観念がありました」 ――そんな、ラジオが都落ちだと思ってた時にいきなり帯のレギュラーでラジオ番組(『アクセス』)の話が来たわけですよね。 「ラジオは都落ちだと思ってた上に、政治や社会問題を扱う番組なんて無理だよ、私まだ25ちゃいだもん......って思いましたね」 ――でも実際にやってみたら、しっくりきたと。 keiko_k02.jpg 「私が思っていた"何かを伝える"ということをやるためにラジオ番組が、しかも時事問題を扱う番組がふさわしいかどうかは分からなかったけど、信頼していた先輩からのアドバイスもあり、とりあえずやってみることにしました。そのころの私は『局アナっていう機能を果たすことが自分の仕事である』ということが分かれば分かるほど息苦しくなっていたんですけど、『アクセス』の現場では『聴いている人はしゃべり手が局アナだろうがなんだろうが関係がない、ひとりの人間としてどう話すかだけだ』って言ってもらえて、すごく楽になれましたね。こんなことを言ってもらえる現場はなかったんですよ」 ――少なくともテレビではなかった。 「逆です、ずっと『局アナらしくやれ』『局アナっぽくしゃべれ』って言われ続けていましたから」 ――その後、コンスタントにラジオの仕事を続けてきていますが、『久米宏 ラジオなんですけど』や『小島慶子 キラ☆キラ』など、それぞれ番組のタイプは違いますよね。 「私としては、番組の形態は違っても伝えているテーマは同じなんですけどね。『私はコレがやりたいんです』『コレをやるのにふさわしい場が来るまではやりません』って言っててもしょうがないわけですよ。それだったら、自分に振られた環境の中でやりたいことをやった方がいいじゃないですか」 ――結局、小島さんが伝えたい"何か"って何なんですか。 「世の中って死んじゃいたいって思うような悪いことやイヤなことだらけに思えることもあるけど、そうじゃない面もあるんだよ、世の中そんなに捨てたもんじゃないよ......っていうことですね」 ――そんなに死んじゃいたいことってあったんですか。 「正直、ありましたよ。中学生の時も、高校、大学でもそう思っていましたし。まあ、他人からしたら『そんなの死にたくなるような苦しみじゃないよ』って思うようなことかもしれないけど、本人にとっては大問題なわけですから。そんなつらい気持ちを持っている人が、ラジオを聴いて思わず笑ったりとか、『いい話あるじゃん』って思ったりして、かつての私がラジオに救われたように『世の中も捨てたものではないなぁ』って思ってもらえたらいいなって。もちろん、そんなことを思ってくれるのは何百万人が聴いてくれて数人とかだと思いますけど、でもそれって数値化できない価値ですよね。どんな番組をやる時でも、そういうことが伝えられたらなって思っています」 ――それが時事問題を討論する番組であっても、バカ話をする番組であっても。 「はい。ただ、局アナっていう職責を背負っていると、それが非常に制限されていたんですよ。だから会社を辞めたんです」 ――退職を決心した背景には『キラ☆キラ』の評判がすごく良かったというのもあるんじゃいないですか。 「そうかもしれませんね。『キラ☆キラ』では日常の中でのたわいない喜びとか、どうでもいいような失敗談とか、そういう非常にパーソナルな、他人から見たら価値が感じられないような話からも、ドラマや文学と同じように愛とか喜びとか悲しみを伝えられたらいいなと思っているんですが、そういう番組の背骨の部分をいちいち説明しないで、リスナーの方たちからのメールを淡々と読んでいくだけで『私の日常も捨てたもんじゃないなって思いました』とか『世の中って面白いことがあるんですね』っていう反響がとってもとってもいっぱい来たんですよ。ああ、これでよかったんだと。これだったら局アナじゃなくても伝えていけるのかなって思いましたね」 ――TBSを辞めた後は「ラジオパーソナリティ」という肩書を名乗っていますよね。それだけラジオに力を入れていきたいということなんでしょうか。 「会社を辞める=アナウンサーを辞めることだと思っていたので、『フリーアナウンサー』っていう肩書というのはあり得なかったわけです。その上で、ラジオが好きだし、仕事に占める割合も多いので『ラジオパーソナリティ』と名乗ることにしただけで、別にラジオ専業を宣言したわけではないですけどね。今の時代、媒体の違いってそこまで意味があるのかなって思っているので。『キラ☆キラ』ではポッドキャストも非常にたくさんの人たちに聴いていただいていますが、それをラジオだって意識せずに聴かれていることも多いと思うんですよ。今はradikoやインターネットのストリーミング放送もやっているので、今まで接していた場所ではどうもしっくりこなかったという人が、ラジオっていう場に触れてもらえればと思っています」 ――今回の本『ラジオの魂』も媒体関係なく、という活動の一環ということですかね。 「そうですねぇ。この本は、私がしゃべった内容をライターさんにまとめていただいたんですが、あれだけ支離滅裂にしゃべり散らかしたことを理解してくれて、自分で読んでいても『もしかして、私は10代のころからそんなに変わっていなかったのかな......』とかいろいろ発見がありました。ラジオで小島という人間に興味を持ってくれた人にはもちろん、仕事とやりたいこととの間で悩んでいる人や、子どもを産もうか仕事を続けようか悩んでいるような女性にも読んでもらいたいですね。ラジオ以外の切り口で、そういうことを伝えるのもアリなんじゃないかなと。別にこの本を出したことで『だから私を愛して!』とか『こういう私を理解して!』なんていう年齢は過ぎましたからね!」 (取材・文=北村ヂン/撮影=後藤匡人) ●こじま・けいこ 1972年オーストラリア生まれ。商社に勤務する父のもと幼少期を海外で過ごす。95年TBSにアナウンサーとして入社し、2010年6月に退社。現在はラジオパーソナリティとして、TBSラジオ『小島慶子 キラ☆キラ』のメインパーソナリティをはじめ、多方面で活躍中。 ●『小島慶子 キラ☆キラ』 「みんなで世間話を楽しもう!」をキャッチフレーズに、個性豊かなパートナーたちと日替わりのテーマで送るトーク番組。毎週月~金13:00~。 公式サイト <http://www.tbsradio.jp/kirakira/index.html
ラジオの魂 第三次ラジオブーム到来? amazon_associate_logo.jpg
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「ラジオは都落ちだと思ってた」"ラジオの女王"小島慶子、今だから語れるホンネ(前編)

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今やラジオ界を背負っている人物
と言っても過言ではない小島慶子氏。
 TBSラジオお昼の人気番組『小島慶子 キラ☆キラ』。 ビビる大木、神足裕司、宇多丸、ピエール瀧、水道橋博士といったキャラの濃いパートナーたちを相手に一歩も引かないどころか、自由すぎかつ暴走気味なトークでパートナーやリスナーを翻弄しまくり、ラジオ界のみならず各所で評判となっている小島慶子。そんな彼女がラジオへの思いや自分の来歴を語り下ろした本『ラジオの魂』(河出書房新社)についてのインタビューをしようとTBSラジオのスタジオへ伺ったのだが、その会社の中だっつうのにTBSに対する手キビシイ意見がバシバシ飛び出し、聞いているこっちがハラハラしてしまった。 ――ラジオを聴いたり、今回の本『ラジオの魂』を読むと「小島さんって変わった人だなぁ......」という印象が強くてですね。こうなった原点、どんな子ども時代を送っていたのかをまず聞きたいんですが。 「父親の仕事の都合で海外にいたこともありましたけど、日本人学校の日本人社会の中で暮らしていましたし、わりとありふれた子どもだったと思いますよ」 ――え、ホントですか!? 「まあ、屈託なく人の輪に交ざるのが苦手で身構えてしまったり、転校生に対して通過儀礼的に行われる"いじめ"なんかをサラッとかわすというのができなかったりっていうのはありましたけど。......そういえば、私のことを際立って扱いにくいと思っていた先生もいたみたいですけどねぇ」 ――先生に何かやったんですか? 「特に何かやったわけではないですけど、小学校6年生の時の先生が『小島さんは、ものすごく大人びた面と幼稚な面が両極端で中間がないからとても扱いにくい。小島さんのことを考えると胃が痛くなりますよ』って母に言ってたらしいです」 keiko_k04.jpg ――直接本人には言わないというのがリアルですね。そして、中学生のころからラジオを聴き始めたそうですが、年代的に同級生でラジオを聴いてる人なんてほとんどいなかったんじゃないですか。 「MTV世代ですからね。みんなマドンナのミュージックビデオを見て踊ってる、みたいな時代でしたもん。深夜ラジオがブームだったのは一世代前ですよね。私の場合は姉の影響で『中学生になったらラジカセを買ってラジオを聴きながら勉強するのが格好いい』って思い込んでいたんですけど、学校で『昨日のヤンパラ(『三宅裕司のヤングパラダイス』ニッポン放送)聴いた?』って言っても話が通じるのは数人でした。しかも漫研の子とか、野球選手のおっかけをしている子とか、学校内で地味とかダサイとされている子たちばっかりで......。でも、私は一度もラジオを聴くことが格好悪いなんて思ったことはありませんでしたけどね」 ――それだけ中学時代の小島さんにとってはラジオがしっくりきていたと。 「思春期のころって、自分と向き合うのがしんどいじゃないですか。自分自身が『あんまり好きになれないな』と思っている自分と二人っきりになることほど、うっとうしいことってないわけで」 ――部屋で一人、無音でいるとどうしても自分と向き合っちゃいますからね。 「『もっとこういう自分だったらいいのに......』とか悶々と考えていると逃げ場がなくなっちゃいますし。そんな時に『こんな面白いことを言って笑わせてくれる人がいる』『同じ番組を愛して同じ時間にラジオの前に座ってる人たちがいっぱいいる』って知れたのは、うれしかったですね。身近にいる家族や友達、先生たちとの関係性が必ずしも快適ではなくて、たまたま今は私の周りにある環境と折り合いが悪いけど、世の中そのものが絶望的なわけじゃなさそうだぞと」 ――心を許せる人がどこかにいるだろうと。 「そう思えたのは救いでしたね」 ――その当時、自分のどんな点を「好きになれない」と思っていたんですか。 「友達がすごく欲しい、誰かに受け入れてもらいたいと思っているのに、他人との適切な距離の取り方が分からなくて、少しでも近い関係になった人にものすごく期待をしてしまっていたんですよ。それで、ほんのちょっとしたことで裏切られたような気分になったり。そういうのでいちいち傷ついている自分が嫌いでしたね」 ――ただ、そんな学生時代を経ていても、TBSのアナウンサーっていう花形の職業に就いたら大成功じゃないですか。そこで野球選手でもつかまえて結婚......みたいな浮かれた生活を送ってもおかしくないのに、小島さんは「局アナとしての職責を全うしなくちゃいけない」「でも自分のやりたいことは......」と、まだ悩んでいたんですよね。 「それは、私が労働組合をやっていたことと、1995年入社だということが影響しているかもしれませんね」 ――1995年? 「1995年って、1月に阪神淡路大震災、3月にオウム真理教の地下鉄サリン事件があったんですよ。それで4月にTBSに入社したんですけど、これから自分が出ていこうとしていた社会が、直前になって劇的に変わってしまったわけですね。それまでは、そうそうひどいことなんて起こらないだろうと思っていたのに、そうじゃなかった。ちょっと離れた街では大震災が起こり、自分が生きていかなくちゃいけない街で、誰かが自分を殺そうとしている。これが現実なんだ......って思いながら社会に出たんですね。こんな世の中に住み続けたくはないから、アナウンサーっていう、世の中を変える立場の端くれとして『職業とはなんだ』『職責とはなんだ』っていうのを社会人スタートの段階で考えざるを得なかったわけです」 (後編に続く/取材・文=北村ヂン/撮影=後藤匡人) ●こじま・けいこ 1972年オーストラリア生まれ。商社に勤務する父のもと幼少期を海外で過ごす。95年TBSにアナウンサーとして入社し、2010年6月に退社。現在はラジオパーソナリティとして、TBSラジオ『小島慶子 キラ☆キラ』のメインパーソナリティをはじめ、多方面で活躍中。 ●『小島慶子 キラ☆キラ』 「みんなで世間話を楽しもう!」をキャッチフレーズに、個性豊かなパートナーたちと日替わりのテーマで送るトーク番組。毎週月~金13:00~。 公式サイト <http://www.tbsradio.jp/kirakira/index.html
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