「とにかく既存のファミコンの音を壊したかった」影山雅司"音のサンソフト"を支えた男

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 シンプルだけど無限の可能性に満ちていたレトロゲーム。  「一日一時間!」というお母さんの監視の目をかいくぐり、大冒険を繰り広げた僕らの傍らにはいつもゲームミュージックの存在があった!  そんなレトロゲームのサウンドを、21世紀に蘇らせようと今年から活動をスタートさせたレーベルが「クラリスディスク」だ。  同レーベルは、『アトランチスの謎』『東海道五十三次』『リップルアイランド』など、一度プレーしたら忘れられないサンソフト製ファミコンソフトのゲームミュージックを、何と200曲以上も収録した『Rom Cassette In SUNSOFT』を6月29日にリリースする。  そこで、今回から3回にわたってサンソフトに縁の深い人物へのインタビューを通じて、テレビゲームが熱かったあの時代を振り返ってみたいと思う。 ■「ゲームミュージックのおかげで、本当に必要な音が分かるようになった」  「音のサンソフト」とレトロゲームファンの間では言われる程、サウンドに対してこだわりを見せていたサンソフト。そんな同社のゲームミュージックの中でも、とりわけ高い評価を得ているのが、サンソフト最後のファミコンソフト『ギミック!』だ。  すでにスーパーファミコンやメガドライブが登場し、16ビットマシンの時代に移行しつつあった1992年。そんな時代に8ビットマシンのファミコンソフトとして、『ギミック!』は市場に登場。ポップなグラフィックと、やりごたえが十分すぎてクリアすらままならない程の高難易度で一部のゲームファンの間で話題になりつつも、残念ながらヒットには恵まれなかった不遇の名作アクションゲームである。そんな『ギミック!』は、音に並々ならぬこだわりを見せるサンソフトが独自に開発したチップをファミコンカセットに搭載。ハードの限界を超えたサウンドを実現した意欲作だ。  ジャズ、フュージョンテイストな、およそファミコンらしからぬサウンドで、今もゲームミュージックファンから支持を受ける本作のBGMを手掛けたのは、影山雅司氏。80年代末から90年代半ばにかけて多くのゲームミュージックを手掛け、およそ1000曲以上を発表した名コンポーザーである。 「たまたまサンソフト社内にMacに強いプログラマーがいてね。最初は一つ一つ教えてもらいながら作曲していたんだ」  そう影山氏は、よくライブを聴きに行くというジャズハウス「お茶の水ナル」にて、当時を懐かしむように語った。元々ジャズバンドなどでサックスを演奏していた彼は、ほとんどゲームカルチャーに接することなくゲームミュージックの世界に足を踏み入れたそうだ。 「当時のゲームミュージックは、ほとんどアルペジオでできている物ばかりだったんだよ。だから、これだけじゃあつまらないだろうって思ったんだよね」  ゲームミュージックの世界に入って、彼はまずこう感じたそうだ。そこでまず影山氏が挑戦したのは、「少ない音数で、いかに普通の音楽を作るか」というシンプルにしてハードルの高い命題であった。 「当時は同時に使える音が4つくらいだからとにかく音数との戦いだった。音色も(ROMの)メモリーがそんなにないからたくさんは使えない。だからパズルのように音楽を考えていた。和音って4つの音が出ないとかっこいいサウンドが出ないんだけど、そうすると後は音を鳴らす事ができない。だから2音だけでコードを表現してみたり......。とにかく色々と勉強になったよ。ゲームミュージックをやったおかげで、本当に必要な音っていうのが分かるようになった」  決して恵まれているとは言えない、制限された環境での楽曲制作。通常なら文句の一つもこぼしたくなるところだろうが、彼はこれを逆手にとり印象的なメロディ、当時の他のゲームではあまり耳にすることのないような複雑な構成の楽曲を次々と生み出していった。 「とにかく既存のファミコンの音を壊したかったんだ。一般的に思われている『これがファミコンの音だ』っていうものから、もっとレベルを上げたかった。実験場だったね。いかに少ない音数でかっこいい音楽を作るかって追求できた場だったよ。そして一番大きかったのは、当時の製作スタッフが皆音楽好きだったってこと。テクノやミニマルミュージックに詳しいデザイナー、クラシックに精通しているプログラマーなど本当に面白い人達がいたんだ。音楽以外にもたくさんの刺激をもらったし、影響を受けたよ。彼らに出逢えなければ自由にゲームミュージックを追求することは不可能だったと思う。機会があれば、もう一度彼らと仕事したいな」  サンソフトで音楽制作に没頭していた80年代から90年代は、ミュージシャン影山氏にとってかけがえのない時期だったそうだ。 ■「『ギミック!』は、俺にとってゲームミュージックの集大成なんだ」  それにしても『ギミック!』のサウンドトラックのクオリティの高さは、発表されて20年近く経過した今日でも全く色あせることはない。その理由はどこにあるのだろうか。そう尋ねた時、影山氏はとあるファンとのエピソードを語り始めた。 「一度、とある学校の先生が『弁慶外伝』(1989年に発売されたPCエンジン用RPG)のテーマ曲を、吹奏楽部で演奏したいから譜面を送ってくれって手紙をくれたことがあって、その時に「これはやばい。真面目に仕事をしないといけないな」と改めて思い直したの。「次世代の子供にいい音楽を聴いてもらわなければ」って。だってファミコンをやっている子供たちにとって、ゲームミュージックが初めの音楽体験になるかもしれないじゃない。そこから音楽自体に興味を持ってもらいたかったんだよね。そういう気持ちで最初から作った『ギミック!』は、俺にとってゲームミュージックの集大成なんだ」  その言葉を裏付けるように、『ギミック!』で使用されたゲームミュージックはフュージョン風なオシャレなサウンドから、聴いているだけでも心が躍るようなポップス。重低音をきかせたアシッドな曲。浮遊感たっぷりなファンタジーな曲。ドラマティックなハードロック風な曲。映画主題歌のような、美しいメロディがキラリと光るエンディングテーマ。果ては影山氏がノリノリでサックスをプレーしている姿が想像できるような、アドリブパートを盛り込んだ楽曲など、様々な方向性のサウンドがいずれも高いクオリティでまとめ上げられている。 「『ギミック!』のBGMにはアドリブが入っているんだけど、それってつまりジャズやフュージョンでやっていることなんだよ。でもそういう音楽って一般の人はあまり聴かないし、聴く機会がない。だから、あえてそういう要素を盛り込んだんだ。歌謡曲とか売れてる曲はどこに行っても聴くことができる。でもジャズとかフュージョンなんてのはなかなか聴く機会がないから、自分の曲の中にそのエッセンスを入れたのかもしれない」
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現在は写真家として活動する影山氏。
上/去年の4~10月まで銀座4丁目
交差点リコー三愛ビル、リングキューブ
の袖看板に採用されていた作品。下/
ドン・フリードマン。影山氏はここ数年、
国内外のジャズ・ミュージシャンを中心
に撮影しているそうだ。
 ミュージシャンとしての使命感とプライドによって紡がれた楽曲の数々は、当時ゲームをプレーした子供たちの心にしっかりと届き、今もなおゲームミュージックファンの間で高い評価を受けている。  そんな影山氏は1990年代後半に入ると作曲活動から身を引き、今はフォトグラファーに転身。国内外のジャズミュージシャンのライブフォトを多く手掛ける一方、2010年には銀座4丁目交差点にあるリコー三愛ビル、リングキューブ袖看板に作品が展示されるなど、気鋭のフォトグラファーとして活躍している。  なぜ彼はサックスからカメラに持ち替えるようになったのだろうか。そう尋ねられた影山氏は、ある人物の名を挙げた。 「『ギミック!』のプログラムやグラフィックを作った酒井智巳君が何でもできる人でね。彼が写真を初めてすぐに賞を取ったのを見て、あいつにできるなら......ってライバル心を出したのが始まり。(苦笑)。彼のモノクロ写真を見なければ写真をやってみようなんて思わなかったかも。それまで全然興味なかったから(笑)」  影山氏が親友であり、ライバルであり、そして尊敬する人物として挙げた酒井氏こそ、8ビットマシン全盛期のサンソフトを支えた名プログラマーである。 「俺、酒井君にものすごく影響を受けたんだよ」  影山氏をしてこう言わせる酒井智巳とはどんな人物なのだろうか。そして、彼がサンソフトで活躍した80年代から90年代はゲーム開発者にとってどんな時代だったのだろうか。次回は『ギミック!』を生んだもう一人の人物・酒井智巳氏に当時のエピソードを伺ってみよう。 【取材場所】ジャズハウス「NARU」お茶の水店 http://www.jazz-naru.com/ 国内外一流ジャズメンが毎日出演、エキサイトなライブが聴けるジャズクラブの老舗。 11:00~17:00まではランチ、カフェとしても営業しています。 ・影山雅司氏へのメッセージはこちらまで the845@excite.co.jp
Rom Cassette Disc In SUNSOFT(初回限定CD付3枚組) [Limited Edition] ●サントラ初収録音源+19タイトルの大ボリューム3枚組! 名曲が多く存在する「サンソフト」を代表する19タイトルからOP、ED曲はもちろん、名曲、名場面BGM、ボス戦BGMなどこれまでにないラインナップを実装した豪華版、しかも特大ボリュームの2枚組!『ギミック!』ももちろん収録! なんとサウンドテストでも聴くことのできなかった曲も完全収録しています。さらに毎月抽選でもらえた「お楽しみプレゼント」賞品のカセットテープに収録されたシンセサイザーアレンジ曲も完全収録した特典CDも付属。 今や貴重となったレトロゲームの名曲の数々をご堪能ください! amazon_associate_logo.jpg
ディスク:1 1. スーパーアラビアン 2. ルート16ターボ 3. いっき 4. アトランチスの謎 5. 東海道五十三次 6. マドゥーラの翼 7. 天下の御意見番 水戸黄門 8. 上海 9. リップルアイランド 10. 超惑星戦記メタファイト 11. マハラジャ 12. バットマン ディスク:2 1. ラフワールド 2. なんてったって!! ベースボール 3. グレムリン2 新・種・誕・生 4. へべれけ 5. バトルフォーミュラ 6. ダイナマイトバットマン 7. ギミック! ディスク:3 1. マドゥーラの翼(MUSIC BY ATOMIC WAVE、テープ音源) 2. デッドゾーン(MUSIC BY ATOMIC WAVE、テープ音源)

「出会い系からオナカップまで」合理化が加速する"セックスメディア"は今後どうなる!?

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 荻上チキ氏と言えば『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『社会的な身体』(講談社現代新書)などでネット・カルチャーを主なフィールドとする気鋭の批評家だ。そんな彼が新たに目を向けたのが出会い系サイトなどアダルト産業。一見、これまでの仕事とはかけ離れた分野なようだが、これまで一貫して「メディア」に関心を寄せ続けてきた荻上氏だけに、新著『セックスメディア30年史』(ちくま新書)では、出会い系サイトからオナカップ・ラブドールといったものを遡上に乗せ、第一人者のインタビューを織り交ぜて、その興隆の秘密を解き明かしている。  同書では、第3章を『何がエロ本を「殺した」か?』というタイトルにしているが、ここで思い出されるのが、2006年に刊行された、安田理央氏・雨宮まみ氏による共著『エロの敵』(翔泳社)である。安田氏は、この本のあとがきで、「エロの最大の敵は、エロが『価値を失ってしまうことだ』」と綴っていた。  あれから5年を経て、エロの世界はどう変わったのか。そして、荻上氏の「セックスメディア」と安田氏の「エロ」の意味の違いは何か。荻上氏と安田氏に、じっくり膝を突き詰めて語って頂いた。 ――そもそも荻上さんがアダルト産業にご興味を持たれた理由は何でしょう? 荻上 「だって男の子だもん」というのが第一の理由ですが(笑)、メディアそのものの栄枯盛衰がクリアに見えるのが何より面白いですね。安田さんの本からもすごく勉強させて頂きました。この30年、安田さんが書かれたように、雑誌のようにエロが衰退していく面もあれば、動画サイトのように、注目を集めてより発展していく部分もあった。僕自身、高校生まではエロ本を見てましたが、インターネットをはじめるとエロ本はほとんど読まなくなりました。そうした自分が見てきた風景、アダルト産業の移り変わりを、まずは当事者に聞きつつ、その背景にある産業構造を解き明かしたいという動機で『セックスメディア30年史』を書きました。 ――安田さんは、荻上さんの本をお読みになられてどういう感想を持たれましたか? 安田 僕が不思議だったのは、何で雑誌を取り上げたのか、ということですね。他のものは発展途上なのに、雑誌だけ「終わった」話なので......。他の章は面白く読めたのですが、そこだけ悲しいんですよね。 荻上 確かに。ただ、「何が、何に変わったのか」という、機能の移り変わりを見るためには雑誌は欠かせなかったんです。今回の本では、意識的にコンテンツの話はせず、メディアやプラットフォームの話に特化しています。この本の構成は、第1章のテレクラと第2章の出会い系サイトが対応していて、第3章のエロ雑誌と第4章のアダルトサイトを対応させていて、プラットフォームとしてのエロ本だけに特化させていました。 安田 テレクラは出会い系サイトに発展しているからね。
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荻上チキ氏。
荻上 そうですね。しかも、同じ業者が業種替えしたケースが多い。一方で、雑誌はサイトを作らないじゃないですか。サイト経由でも売れないという話ですし、版元のサイトにも宣伝ページすらないものさえ多い。だから、ビフォアーとアフターでうまくジャンプできたケースと、そうでないケースとして、悲しいけれど歴史として雑誌のことを取り上げる必要がありました。ただ、元気のないものの代表として出したのではなく、雑誌が今後を模索することに対する希望が、個人的に込められていたりするんです。 安田 実は『エロの敵』を書いていた時に、エロ本のところを書いていたら、全然明るい話がなかったんですよ。本当に辛かったね。どう考えても光明が見えないんだよ。 荻上 それでは、エロで文章を書く、という仕事もかなり影響があったのではないでしょうか? 安田 僕も風俗ライターは5年くらい前に廃業しているんですね。風営法の改正で風俗がデリヘルばかりになって、お店のシステムもほぼ一緒だし、書くことがなくなっちゃったんです。女の子のことだけになるとカタログ記事だけでいいし。 荻上 松沢呉一さんも、随分まえに「廃業」を宣言しましたね。エロサイトのレビューでも、これまでのライターとは違う文脈の人が書いていますし、CGMで情報が共有されるようになっていますからね。 安田 DMMアダルトのレビューでも同じだよね。一つの動画にたくさんレビューが掲載されているから、自分に合った情報を見つければいいだけで。 荻上 DMMアダルトには映画と同じく、「ネタバレ注意」というのがあって、動画のどこで何をしてるのか全部フローが書いてあるものもありますね。風俗店やAVメーカーのサイトも、女の子にブログ書かせたり動画を載せたり、メルマガで情報発信するようになっている。自前でなんでも用意できちゃうんですよね。 安田 ライターの居場所がなくなっちゃったんだよね。 ――パソコン通信のころからネットの世界を知っていらっしゃって、ブログも人気の安田さんから見て、出会い系サイトやアダルトサイトはどう映っていらっしゃるのでしょう? 安田 さっき荻上さんがおっしゃっていたけれど、雑誌以外のところにはコンテンツがないんだよね。例えば「動画ファイルナビゲーター」の話も、メーカーが作ったものをもらってくるわけで。僕はエロコンテンツに興味があるんだよね。だから、出会い系も、どんなことがあったかという話が好きであって、データだけが欲しいわけじゃないんです。昔、松沢呉一さんと話していて、「風俗の仕事をやらなくなったら行かなくなるだろうな」と言われて「ええっ」と思ったけれど、実際に自分も仕事をやめたら行かなくなったんだよね。 荻上 なるほど。つまり、「抜き」より「語り」の方がウエイトが高かったんですね。 安田 そうなんだよね。結局、自腹で遊びに行ってもネタとして書きたいというのがあったので、ユーザーとはちょっと違ったんだな、と。僕の中でセックスメディアとして出会い系は入ってこないですね。セックスメディアとエロメディアでは全然違うじゃない? 荻上 実のところタイトルはずっと「アダルトメディア」と書いていたんですけれど、編集に「セックスと入れると売れますよ、と言われて変えたんですが(笑)。 安田 でも「セックスメディア」が正しいよね。 荻上 僕の本は、アダルトな隠微さを求めているひとの話ではたぶんないんですよね。快楽もさわやかな快楽で、TENGAも情報の透明化をしようという話がベースだったので、物語としても猥雑さをむしろ取っていく話でもありますね。 安田 言ってみれば、『エロの敵』は物語が死んでいく話で、荻上さんの本はエロから物語を切り離して軽やかになっていく話なんじゃないかな。荻上さんの本を読んで思ったんだけど、みんな「損したくない」というのがユーザーにありますよね。僕は古い世代の一番最後に属する人間だと思うんだけど、エロっていかがわしくて損をするのも含めてという意識がありますね。 荻上 例えば今では、「漫画実話ナックルズ」(ミリオン出版)などでは、こんな風俗嬢が出てきてがっかり、みたいな話がまだありますが、そういうのは少なくなりましたね。
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安田理央氏。
安田 女の子の話はそんなに面白くない。ひっかかる男の話の方が好きなんだよね(笑)。それで、僕が風俗ライターやめようかな、と思ったのは、編集者に「もっと読者に得になることを書いて下さい」って言われたんですよ。僕らとしてはひどい目にあった方が面白いじゃん、と思っていたんだけれど、編集者や読者ニーズは変わっていて、06年や雑誌も得するとか損しないとかいうことばかりになっていた。 荻上 サイトでも雑誌でも、クーポンとかQRコードと連動とかが当たり前になっていますね。情報の透明化と、媒体のカタログ化が進んできた。 安田 どんどん合理化しているけれど、書く側からは面白くない。今、エロならエロのコアの部分だけでいい、と。これは、アダルト産業すべてに起こっていることで、そうするとライターはいらなくなる。まぁ、ライターだけで食べていくということは他の分野でも難しいことですけれどね。 荻上 しかしそれは、多くのユーザーにとってはいいことだった。自分にとってベストマッチされるニーズになっていったんだから、市場が求めていることですよね。これは悲しむこともできるし、肯定することもできる。年長のライターの方々はコンテンツに思い入れがあるけれど、僕はメディアそのものの便利さなどにも愛着があるため、本には、その両方の思いを乗せてみたかったんですよね。 ――市場のニーズが変わってメディアが追従していくのか、それともメディアの変化で市場が変化したのか、どちらなんでしょう? 安田 いいプラットフォームが出来るかという話だよね。受け入れられないとニーズがないということだから。それで消えていたプラットフォームがたくさんあるわけで......。 荻上 ニーズを上手く汲み取ったプラットフォームがさらに市場を拡大していく、という循環運動だけがあるんじゃないでしょうか。99年にできた「動ナビ」はサンプルサイトを紹介することが重大だった。そうした動ナビに多くの人が集まり、サンプル文化がますます成長していった。といっても、動ナビには実は雑誌文化的なところも内在されていて、雑多なニュースコーナーも人気でしたよね。情報が拾われることで数十万人に広がることがあった。 安田 自分のブログも取り上げられたことあるけれど、あそこで紹介されるとえらいことになるんだよね(笑)。 荻上 化け物サイトでしたからね(笑)。本の中で繰り返し書いたのは、一つの理由で産業が変わるということはないのだけど、必ず複数の理由でビジネスを継続していこうとする、ということですね。 安田 あと、エロは状況やメディアの形によって内容がすごく変わるんですよね。例えば、エロ本でもシール留めが義務付けられると表紙に本の内容を全部書いちゃうとか。あまり抵抗しないで、適応していこうというのがエロの業界の基本です。 荻上 まさに適応の好例と悪例の歴史ですよね。ここ20年は不況が続いていて、金がなくても出来るエロというものに最適化した産業がたまたまいくつかあった。廉価なオナカップだったり、無料サイトだったり、上手くいけばタダでできる出会い系サイトだったり。ユーザーマインドと市場の形が循環的にシフトしたんですよね。 ――それでは、最後にお二人の今後のセックスメディアに対する向き合い方をお聞かせ頂ければと思います。 荻上 今回は「利用する男側の歴史」、しかも主にマスターベーションに重きを置いたものでしたが、次は出会い系サイトなどでの売春婦調査を元に、性を売る女性の話を書くつもりです。いろいろな書き手の方がこの分野から撤退した今だから、「アフター」の話を書きつらねていきたい。 安田 僕はエロ本には最後までつきあって、死を看取ることになるのだと思いますけれど、そうじゃない方法を模索はしたいんですよね。本当はエロのフィールドから出たくないんだけども(笑)。でも、従来のエロライターみたいなことをやりたければ趣味でやるしかないとは思っています。 (構成=ふじい・りょう) ●おぎうえ・ちき 1981年生まれ。メディアから社会問題まで幅広く調査・分析する批評家。思想系メールマガジン「αシノドス」編集長。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『いじめの直し方』(共著/朝日新聞出版)、『ダメ情報の見分け方』(共著/NHK出版)など。 ●やすだ・りお 1967年、埼玉県生まれ。雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て、94年よりエロ系フリーライターとして独立。風俗、AVなどのアダルト系記事を中心に、一般週刊誌からマニア誌まで、幅広く執筆。その一方で、AV監督やハメ撮りカメラマンとしても活動する。主な著作に「デジハメ娘。」(マドンナ社、03年)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房、04年)、『エロの敵~今、アダルトメディアに起こりつつあること~』(翔泳社、06年)など。
セックスメディア30年史 人類の歴史。 amazon_associate_logo.jpg
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天才から天才へと受け継がれるハリウッドの映画作り『SUPER 8 スーパーエイト』

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(C) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 巨匠スティーブン・スピルバーグが製作、『スター・トレック』(2009)のJ・J・エイブラムスが監督を務めた話題の超大作、『SUPER 8 スーパーエイト』がいよいよ6月24日から日本公開となる。『未知との遭遇』(1977)『E.T.』(82)といったスピルバーグの名作SFにエイブラムスがオマージュを捧げ、謎をめぐるスリリングな展開、衝撃の映像、仲間や家族とのヒューマンドラマなど、たっぷりと魅力が詰まったぜいたくな娯楽作に仕上がっている。    79年夏、オハイオ州の小さな町。製鋼所の事故で母を亡くし、保安官の父と暮らす少年ジョーはある夜、仲間たち5人と8ミリ映画の撮影に出掛ける。その撮影中に米軍の貨物列車の大事故に遭遇し、貨車で運ばれていた"何か"をカメラが偶然撮影してしまう。事故現場に残された8ミリフィルムの空き箱を発見した米軍は、秘密の漏洩を防ぐためか、大掛かりな捜索を開始する。そのころ町では犬が一斉に消え、9人が行方不明になるなど、不可解な出来事が相次いで発生。映写したフィルムで"何か"を目撃した少年たちは、仲間のため、真実を求める危険な冒険を決断する......。  映画初出演となるジョー役のジョエル・コートニーをはじめ、映画作りに熱中する少年たちのいきいきとした表情と、大まじめなのにユーモラスな撮影現場でのやりとりがとてもいい。作品のリアリティーを高めると称して、列車事故の現場や捜索中の家など兵士たちが大勢いる場所を背景にロケを敢行する場面では、軍に見つかって拘束されるのではとハラハラしながらも、無邪気で大胆な行動に思わず笑ってしまう。ちなみに彼らが作っているのはゾンビ映画で、エイブラムス監督らは子役たちのアイデアから生まれたストーリーを採用したという。  この映画仲間に"女優"として参加するアリスを演じるのは、ダコタ・ファニングの妹エル・ファニング。現在13歳のエルは、今年4月に日本公開された『SOMEWHERE』に出演したころよりも少し大人びた表情を見せ、泥だらけの顔やゾンビメイクにも果敢に挑戦。彼女をめぐるボーイ・ミーツ・ガールの要素に加え、ジョーとアリスが共に父親との関係で問題を抱えており、そうした家族関係の変化も見どころだ。  少年たちが遭遇する列車事故や、後半の数々のアクションシーンは、実写とCGが巧みに組み合わされ、スケール感・リアリティー・衝撃度いずれも見応え十分。放り出された列車や自動車、破壊された街並みのほか、スリーマイル島原発事故のニュースなど「3.11」後の私たち日本人がおのずと被災地を想起してしまうシーンも含まれるが、困難や悲劇を乗り越えて成長する人々の姿がしっかり描かれており、勇気と感動を与えてくれる作品でもある。  エイブラムス監督は少年時代にスピルバーグ作品に刺激され、8ミリカメラで映画を作った実体験を基に脚本を書き、スピルバーグから助言を得ながら本作を完成させた。ハリウッドの映画作りの伝統が、天才から天才へと受け継がれる製作過程の空気感をも醸し出す『SUPER 8 スーパーエイト』は、映画好きを自認する人なら必見。そうでない場合も、ワクワクしながら気軽に楽しめる娯楽作として、幅広い世代にオススメしたい。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「SUPER 8 スーパーエイト」作品情報 <http://eiga.com/movie/55564/>
E.T. The Extra-Terrestrial 20周年アニバーサリー特別版 やっぱり宇宙人? amazon_associate_logo.jpg
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「世の中って狂ったモン勝ち!」注目のホラー作家・平山夢明が説く、奇人のススメ

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平山さんも十分、おかしな人でした!
 人間の持つ狂気を描き出し続けている人気ホラー小説作家・平山夢明。そんな彼が日常の中で見つけた奇人、変人、キチガイについてユーモアたっぷりに綴った「週刊SPA!」(扶桑社)連載中のコラム『どうかと思うが、面白い』(同)が単行本化された。狂気から生み出される恐怖が一回りして大爆笑エピソードになってしまっている本作の発売を記念して、平山氏のキチガイ観をたっぷり語ってもらった。おそらく日刊サイゾー史上最高に「キチガイ」っていう単語が出てきますよ。(取材・文=北村ヂン) ――新刊『どうかと思うが、面白い』にもキチガイな人の話がたくさん出てきますが、ボクもそういう人とかかわることが多いんで、キチガイとの上手い付き合い方を教えてもらいたいのですが。 「キチガイと付き合う時は、常に心の中に"檻"を入れておくっていうのが大事だね。コレ以上は近づけないぞって。その点、この本の挿絵を描いてくれた清野とおるくん(漫画『東京都北区赤羽』の作者/参照記事)なんか見てるとハラハラするわけ。だってキチガイから『カレーを作ったから食いに来い』って言われて家まで食いに行ったりしてるんだぜ。カレーって味が強いから何を入れられてても分からないじゃん? イヤだよー。俺の場合、自分からはキチガイに近寄っていかないからね。ただ、キチガイの方から勝手に寄って来ちゃうんだけど......」 ――普通に暮らしてたらそうそうキチガイなんて寄ってこないですよ。平山さんからそういうオーラが出てるんでしょうね。 「小さいころからキチガイに選ばれるタイプだったんだよね。友達5人で遊んでても、絶対に俺の方に寄ってくるみたいな。しかも俺が会ったことあるキチガイって、いきなり殴ったりとか、鼻噛みちぎったりするバイオレントなキチガイが多かったから。見ず知らずの人にいきなりボコられるって、傷付くもんだよ。だからあんまり密に、ダチみたいにはなりたくないよね」 ――とはいえ、キチガイを見つけたら「いいネタだ!」みたいな意識はあるんですよね。 「あるね。でも面白いキチガイならば、だよ。出オチみたいなキチガイって多いじゃん。見た瞬間『ああー、あのタイプのキチガイね』みたいな」 ――ホラー小説で人間の狂気を描くことに定評のある平山さんですが、やはりリアルにキチガイとかかわっている影響もあるんですかね。 「やっぱり影響してるんだろうな。あと、俺は小説の中でわざと引きというか、アイキャッチとしてキチガイを登場させることがよくあるね。どんな小説でも"ダレ場"ってあるでしょ。そこでダレられるのが怖いからキチガイの話で引き付けておくんだよ。キチガイって目が離せないじゃん」 ――平山さんの中ではキチガイはキャッチーな存在だと。 「うん、キチガイも俺たちもホントに紙一重で中身はそんなに変わらないと思ってるからね。誰でも日々暮らしている中で、うっすらとおかしな行動をしてしまうことってあるでしょ。だから、一時的にキチガイみたいになってる人ってのはよくいるわけ。でも普通は、一日とか一週間とかするとリセット出来るんだよ。でも、突き抜けたキチガイってのは、そのキチガイ要素がリセットされないまま少しずつミルフィーユみたいに積み重なった結果、エライことになっちゃってる人なんだ」 ――ああ、継続しておかしなことをやってるヤツが突き抜けたキチガイだと。歌舞伎町で変な格好してる人って時々見かけますけど、新宿タイガーマスク(歌舞伎町近辺でタイガーマスクをかぶって新聞配達しているキチガイ)は30年くらい毎日あの格好だから別格って感じがしますもんね。 「ところで、アナタもかなりおかしなことをやってそうな顔してるけど......」 ――いやー、そんなおかしなことはやってませんよ。学生時代、いろんなところでウンコしてたくらいで。 「えー何それ、十分おかしいよ! どういうこと!?」 ――もともとは飲み会で酔っぱらうとすぐに全裸になってたんですけど、しばらくしたらみんな脱ぐようになっちゃって笑いも取れなくなって。じゃあどうしようって考えた時に、「ここでウンコしたらウケるかな」って。それで、嫌いなヤツの家の前とか、居酒屋の皿とかにウンコしてた時期があるんですけど......。 「キミ、狂ってるよ! 完全に狂ってるよ!」 ――いやいや、でもさすがに今はそんなことしてないですからね。コレは継続してないから大丈夫ってことですよね!? 「まあ、そういうことだよ。誰だって酔っぱらったり、性欲が高まったりした時はおかしくなっちゃうもんだけど、それを継続しちゃう人ってのは、俺たちには見えない世界が見えてるんだよ。キチガイの恍惚っていうかな。キチガイって脳が停止してるから気持ちいいんだと思うんだ」 ――平山さんがおかしくなっちゃう瞬間ってどんな時ですか。 「俺の場合は眠い、腹減った、ヤリたい......とかでおかしくなるね。昔、給食に出てくるビーフンが大好きでさ、吐くほど食いたいと思ってて、友達の内田と、給食係になった時にビーフンを強奪して腹いっぱい食おうっていう話になったのね。それで給食の容器丸ごと学校の屋上に持って行ってガンガン食ったんだけど、やっぱり半分くらいしか食えないんだよ」 ――そりゃ食えないでしょう。 「こんなに腹減ってて、しかも美味しいんだからクラス40人分のビーフンくらい空っぽに出来ると思ってたのに......。給食泥棒までやってんのに、コレしか食えない自分が情けないやら悲しいやらで。いまさら半分になったビーフンを教室に持って行ったって、どうせ文句言われるんだから、もうヤケクソになってビーフンの容器に小便したんだよ。そしたら先生が後ろに先生が立っててさぁ、すっごい殴られたね。『この人、大人なのに本気じゃん!』って。ひどいよね、体罰だよ!」 ――うーん、この件に関しては先生に同情しちゃいますね。でも、そこでホントに丸ごと食えちゃうような突き抜けた人に対する憧れっていうのがあるんですよね。 「あるよー。結局、世の中って狂ったモン勝ちだからね。ちょこちょこ真面目にやってるヤツが一番ワリを食うの。だってさ、政治家ってみんなキチガイじゃん。日本がこんな大変なことになってるのに、選挙やろうとか言い出してんだもん。日本って今、家にたとえるならば火事になってるような状態でしょ。じゃあ、どうやって火を消そうかって時に、まずはじっくり家族会議をやろうって言い出してるわけだから......ありゃあキチガイだね。小沢一郎なんて犯罪者で刑事被告人だぜ、そんなヤツの言いなりになって動いてる部下がいるなんて、完全にキチガイでしょ。でも、キチガイってものすごい引力があるんだよね。小沢とかも星でいえば木星級の引力を持ってるよ。織田信長とかシーザーだってみんなキチガイだったんだと思うけど、すごいパワーだから誰も文句言えないんだよね」 ――信長に「やめなよ、比叡山焼き討ちなんて」とか言えないですよね。 「ただ、ある面ではキチガイの妄想が人類の進歩を支えてきたっていう面もあるんだよ。『海の果てまで行ったらどうなってるんだろう?』って思ってホントに行ってみるヤツなんてキチガイでしょ。でも、そいつが行ったおかげで地球が丸いっていうのが分かったんだもん。だから狂うっていうのは必ずしも悪いことではないんだよね。ただ、ある程度コントロールしなくちゃいけない。『狂う』って、性欲とか食欲みたいな欲求のひとつだと思うんだ。みんな狂いたいと思ってるんだよ。だからディスコとか行って踊り狂ったりしてるわけでしょ。テレビゲームやってるヤツだってみんな狂ってるよ、寝ないで延々やってたりするんでしょ。アレは完全に狂人だよね。でもああいう時って自分のエネルギーを全解放出来てるから気持ちいいんだよ」 ――ああ、狂ったように何かに没入している時の気持ちよさっていうのは分かりますね。 「だから厚労省とかもシャブとかマリファナとかを解禁して、みんな適度に狂えるようにすればいいのにね。みんなマリファナとか吸ってたら、絶対に自殺者減ると思うよ。世の中にある悩みの九割九分って答えなんかないんですよ。結局、自分がどう思うかしかないんだから、暗く考えてたら変なことになっちゃうよ」 ――そんな時はガンジャでもキメてハッピーになった方がいいと。 「そうだね。みんなもっと狂った方がいいよ。狂った方が幸せだなって人、世の中に多いもん」 ――ただ、自分が上手く狂うためには、平山さんのように身の回りにいるガチなキチガイも楽しく観察できるような余裕っていうのも必要ですよね。今の日本だと、キチガイを見かけても「あんな人、見ちゃダメよ!」とかになっちゃいますもんね。 「そうそう。そういう風にキチガイから遠ざけられ続けて上手くキチガイになれないヤツって、じゃあまっとうなヤツになるのかというとそうでもなくて、だいたい変態になっちゃうんだよ。変態はダメだよ......弱々しいし、気持ち悪いでしょ」 ――「キチガイってどうかと思うけど、いいもんだよ」ってことですよね。新刊のタイトル『どうかと思うが、面白い』っていうのは、平山さん自身のテーマなのかなって思います。 「あの言葉は、東えりかさんっていう書評家が『夢ちゃんの小説って面白いんだけど、普通に友達に勧めると人格を疑われちゃうから、この本どうかと思うけど面白いよって勧めるようにしてる』って言ってたんだよ。確かに俺が好きなものとか納得する表現って、世間的に見ると『どうかと思うけどね』っていう表現なんだよ。だから、キチガイってのもどうかと思うけど、せっかく神様が『キチガイ力』っていうのを人間に与えてくれてるんだから上手く使った方がいいよね」 ――自然に脳内麻薬が出るようになってるくらいですからね。 「キチガイな部分が自分にはないと思い込んで封じ込めたりするのはつまんないからね。みんな、キチガイ上手になった方がいいよ!」 ●ひらやま・ゆめあき 1961年神奈川県生まれ。94年『異常快楽殺人』(角川ホラー文庫)で作家デビュー。『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で日本推理作家協会賞受賞、『このミステリーがすごい!』2007年版国内編第1位を獲得。2010年『ダイナー』(ポプラ社)で第28回日本冒険小説大賞、第13回大藪春彦賞を受賞。人間の狂気と恐怖を描く第一人者として活躍中。
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『世界侵略:ロサンゼルス決戦』いよいよ公開決定! 君は「UFO記念日」を知っているか

WIBLA_2nd_0315.jpg  今日、6月24日が「UFO記念日」であることはご存じだろうか。1947年の今日、アメリカで、初めてUFOが目撃されたのだ。  アメリカの実業家ケネス・アーノルドが、飛行機で移動中に時速2,700キロものスピードで急降下や急上昇を行う9機の飛行物体を発見。アーノルド氏はこの物体を「空飛ぶ円盤(flying saucer)」と呼び、この目撃談が全米で報道されるやいなや、同様の目撃証言が相次いだのだ。  当時、事態を重視した米空軍はこれを「UFO(Unidentified Flying Object:未確認飛行物体)」と名付けて調査に乗り出したが、結局正体はつかめず、22年後の69年に「目の錯覚の類」との報告を出した。  これを受けて、世界中のUFOマニアたちは6月24日を「UFO記念日」と制定し、一斉にUFO観測を行うなどのイベントが開催されているのだ。  エンターテインメントの世界でも、UFOはさまざまに描かれてきた。古くは『E.T.』、最近でも『第9地区』などUFOやエイリアンとの交流を描く作品も多々あるが、今回ご紹介する『世界侵略:ロサンゼルス決戦』は、エイリアンと人間との徹底的なガチバトルを描きながら、人間ドラマの感動も味わえる、今までになかった全く新しいタイプのSF大作だ。  SF超大作映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』は、日本では公開が延期となっていたが、3月の公開とともに大きな話題を呼び、世界25カ国で興収No.1の座をかっさらっている。  現代のロサンゼルス上空に突如現れたエイリアンと、それを迎え撃つ米軍兵士との熾烈な市街戦を描く本作。監督は『悪魔のいけにえ』リメイクの『テキサス・チェーンソー ビギニング』(06)で名を上げ、『実験室KR-13』(08)でも知られるサスペンスホラーの旗手・ジョナサン・リーベスマンだ。だが本作は、リーベスマン監督の前作までの"密室ホラー"のイメージとは正反対とも言える大スペクタクル作品となっている。  作品の舞台はロサンゼルス全体。突如現れたエイリアンは大気圏外から沖合に着水すると、人間を相手に問答無用の殺戮劇を開始する。同時期、米LAだけでなく、世界中で同様の事件が発生。通信網は遮断され、地球規模のパニックが勃発する。  そんなエイリアンをLA市街で迎え撃つ海兵隊員たちは、世界60億人口のすべてがそうであるように、やはりそれぞれに個人的な事情を抱えて生き、ている。体力の限界を感じ、上司に退役届けを出したばかりの者。恋人との結婚を間近に控えた者。先の戦争で兄を亡くし、自らの「兵士」という仕事そのものに疑念を抱き始めている者......。軍はLA内陸に防衛線を敷き、沿岸部を一斉空爆することでエイリアンの殲滅を目論むが、防衛線外の警察署に民間人の生存者が確認され、兵士たちは若く優秀な指揮官の下で民間人の救出に向かうことになる。  特筆すべきは、その臨場感あふれるカメラワークだ。どこからエイリアンが現れるのか、いつ襲撃されてもおかしくない状況のなかを、小隊は警察署を目指してじりじりと進む。カメラは徹底的に小隊に寄り添い、まるで観客である自分自身もその作戦に参加しているような錯覚に陥ってしまう。廃墟と化したLAの街は瓦礫に煙り、視界は数メートルもない。"密室ホラー"マスターであるリーベスマン監督の演出は、街全体を息が詰まるような閉塞感で包み込むことに成功している。  脚本はクリストファー・バートリニー。聞き慣れない名前だが、99年にサイモン・ウェスト監督と組んで『将軍の娘 エリザベス・キャンベル』をスマッシュヒットさせたクリストファー・ベルトリーニその人である。本作は前半からクライマックスが訪れ、その緊張感を保ったままラストまでなだれ込む展開力に優れた作品だが、限られたプロローグ部分で兵士同士の人間関係、また小隊内の上下関係を手際よく定める手腕はやはり一級品。そして何より、兵士や市民の家族愛を丁寧に描き出しているのだ。同作を、単なる「優れたアクションバトル映画」より、深みのある「人間ドラマ」に仕立て上げたのは、間違いなくこの脚本家の功績といえるだろう。  キャストには、退役を控えたナンツ曹長に『ダークナイト』の「2-FACE」役でその狂気と悲哀を演じきったアーロン・エッカート。救出作戦中に小隊に合流し、後にキーマンとなるサントス曹長には『アバター』のパイロット役や『マチェーテ』の革命戦士役で、いまやハリウッド屈指の"戦う女"女優となったミシェル・ロドリゲスが扮している。また、本作が音楽映画以外では始めての映画出演となるミュージシャンのNe-Yoが、経験豊かな俳優陣を向こうに回して情感豊かな演技を見せていることにも注目したい。  とにもかくにも、本作に登場するエイリアンは徹頭徹尾、無慈悲に殺戮に励む。人間を容赦なく包囲し、効率よく殺す。本作はそうしたエイリアンと人間との"ガチバトル"を描くことに特化しつつ、絆や人とのつながりの大切さも思い出させてくれる、貴重な作品といえるだろう。 ●試写会プレゼントのお知らせ 日刊サイゾーでは、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』の特別試写会に各5組10名様をご招待します。下記応募フォームよりご応募ください。 【会場】 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 虎の門オフィス試写室 〒105-8415 東京都港区虎ノ門4丁目1番28号 虎ノ門タワーズ オフィス 2階 【日程】 7月21日(木)、28日(木)、29日(金) 【時間】 18:30開場/19:00開映 ★応募フォームはこちらから★ ご応募の〆切は6月30日(木)23時59分となります。 ●『世界侵略:ロサンゼルス決戦』 監督:ジョナサン・リーベスマン(『テキサス・チェーンソー ビギニング』) 出演:アーロン・エッカート(『ダークナイト』)、ミシェル・ロドリゲス(『アバター』、『マチェーテ』) ブリジット・モイナハン(『アイ,ロボット』)、マイケル・ペーニャ(『ワールド・トレード・センター』)、Ne-Yo 他 全米公開:3月11日/原題:World Invasion:Battle Los Angeles 上映時間:1時間56分/映倫レイティング:PG-12 facebookページ http://www.facebook.com/sekaishinryaku twitter http://twitter.com/sekaishinryaku

豪華声優陣が集結した初日舞台あいさつに歓声が爆発!!

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左から鳥海浩輔、白石涼子、神谷浩史、ボンズ・南雅彦社長。
 独特のテイストとクオリティーで一定の認知を得ているアニメーション制作会社ボンズ。最新作は昨年急逝した飯田馬之介監督の遺作となったSFバトルアクション『トワノクオン』である。協力監督にもりたけしが名を連ね、残されたスタッフが月に1作のペースで仕上げている。かつて、飯田監督が急逝した神田武幸監督の後を継いで『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』を作ったことにもつながるのか。遺志は受け継がれ、濃密な情報量、緻密な映像に、送り手の気合がとばしっている。  その『トワノクオン』の第1章「泡沫の花弁」が劇場公開の日を迎えた(新宿バルト9、梅田ブルク7、ワーナー・マイカル・シネマズ大高、T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ札幌)。初日と2日目には東京、大阪、名古屋、福岡の各地で舞台あいさつを実施。新宿バルト9では6月18日朝、主人公クオン役の神谷浩史、イプシロン役の鳥海浩輔、ユリ役の白石涼子、ボンズの南雅彦社長が登壇した。  『トワノクオン』は劇場公開ののち、Blu-rayとDVDでパッケージを販売する約50分×全6話のシリーズ作品。これは最近増えてきた発表形態だが、『トワノクオン』の場合は毎月1話、6カ月連続のハイペースで供給される点が特徴。制作現場はてんてこ舞いのようで、南社長も「毎月2、3日寝られない日がある。それが6カ月続くと......。スタッフはいま2話を作っていますので、絵を描かない私が代表で来ました」と言うほどだ。  物語の舞台は近未来の東京。不安定な感情が引き金となり特殊な能力を暴走させる少年少女、その能力者を狩ろうとするサイボーグ部隊と、助けようとするアトラクターの抗争を軸に物語は進んでいく。クオンとユリはアトラクター、イプシロン(風見瞬)はサイボーグ部隊の主要人物。両陣営のメインキャストが舞台あいさつに顔を揃えたことになる。ただイプシロンは第1章の時点ではまだ活躍の場面がそれほど多くなく、しかし今後のことを話すとネタバレになるということで、鳥海浩輔も自重気味(「瞬(イプシロン)はエライことになるんで......」)、ボケ役に徹して神谷浩史のツッコミを待つのがこの日のスタイルだった。  難解なテクニカルタームが飛び交う複雑な設定の『トワノクオン』。その筋立てを紹介するのにも少々文字数が必要な作品だが、最初に白石が読んだ部分のセリフには、そうした類の専門用語は一切見当たらなかったのだという。 「まだ出演するかしないか分からない段階で企画書をいただいたんですが、すごく面白い、ぜひユリを演じたいと思って。マネジャーから『やってもらうことになっているよ』と聞いて、『やったー!』と思いましたね。セリフもいわゆる難しい専門用語が書いていなかったんですよ、その時は。普通の会話しかなかったんですよ、"こらクオン!"とか。私、難しいのが苦手だから、よかったと思って、正直(笑)。そうしたら、結構難しい世界観だったので、ちょっと思ってたのと違う......(笑い崩れ)。面白いのは変わっていないんですが」
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 そんな、難解な用語に四苦八苦という意味では一般観客目線に近い白石演じるユリは、ボンズ史上始まって以来という、お尻が画面のほとんどを占有するセクシーショットありのヒロイン。「貴重な尻のドアップということで、嫌でもこの大画面の8割お尻でしたよね? テレビとか劇場でも(試写で)一度見たんですけど、ドーンとお尻になるので、びっくりしましたね」と、演じている本人も戸惑い気味だ。  そのユリのアプローチにも微動だにしないクオンを演じる神谷は、長尺作品の収録現場の過酷さについて語った。 「アニメ2本分なんですよ。『トワノクオン』もアバン、Aパート、Bパートと分かれているんですが、アバンとAを一緒に録るんですよ。 20分強の映像を一気に録るんです。時間的には、30分(枠)のアニメーションを一気に録っているのと同じくらいなんです。尋常じゃない集中力が要求されるんですよね。ご覧いただいて分かると思うんですけど、バトルシーンとかはキャストの人たちが"いっせーのせ"で録るので、どこのマイクに入っているのかが混乱するんですが、その辺の交通整理も考えながら、どのマイクが空いているかを瞬時に察知して入って、声を入れていくという作業になってくる」  なお、サイボーグ部隊はバトルシーンでほとんど声を発しないが、「サイボーグ部隊も全力でやってらっしゃるんですよね?」と司会に問われた鳥海は、「全力ですよ。全力でしゃべらないんです! アドリブを入れている"気持ち"はあります」と、回答。第2章以降、活躍の場面がさらに増えることを祈りたい。  南社長は「ウチのキャラクターデザインの川元(利浩)と飯田監督が一緒に何かを作り出したいという話を聞いていまして。具体的にというか、この『クオン』の企画になってきたときに、飯田監督は同い年なんですけど、見てきたものや考え方に近いものがあって、具体的な内容というよりは、どういう作品を作りたい、ということがきっかけです。5年がかりで上映にこぎつけられてうれしいですね。飯田さんは昨年お亡くなりになられたんですが、この作品を作り上げるためにスタッフ一同頑張ってきたものがこういうことになり、大変うれしいです」と感慨深げ。  オリジナルアニメーションで、その作品が発するメッセージを世に問う機会はあまりない。『トワノクオン』がどういう反響を呼ぶか興味深い。Blu-rayとDVDの第1章発売は8月26日。 (取材・文・舞台あいさつ写真=後藤勝)
トワノクオン 第3章 [Blu-ray] 発売は当分先ですが......。 amazon_associate_logo.jpg
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まるで宗教!?  インストバンド→ Pia-no-jaC ←が生み出す恐るべき一体感の理由

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(撮影/市村岬)
 ステージ上にはピアノと、なんだかよく分からない箱型の打楽器(カホンというらしい)。渋谷の駅前かなんかで演奏していそうなバンドが、そのままステージ上で豪快にロックするのが、HAYATO(ピアノ)とHIRO(カホン)の2人からなるインストゥルメンタルバンド・→ Pia-no-jaC ←(ピアノジャック、以下PJ)だ。  2008年のデビュー以来、7枚のアルバムを発表し、嵐・二宮和也からのラブコールでアルバム『僕の見ている風景』のニノのソロ曲にも参加。またライブハウスからインストアイベント・夏フェス出演など、年間200本以上のライブをこなし、全国各地でじわじわと人気を得ている。  そんな彼らが、全国22カ所24公演を回り、延べ1万4,000人を動員した「Travellin' Band Tour 2011」のファイナルを、6月18日、東京・渋谷C.C.Lemonホールで開催した。  リズミカルで力強いカホンのリズムと、疾走感あふれるピアノを駆使したオリジナル曲に加え、ヴェートーベン「第9」やドヴォルザーク「新世界より」などのクラッシクの名曲を、ジャズに、ファンクに、時にはデスメタル調(!?)にアレンジした楽曲も人気の彼ら。この日も、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」やヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」などを次々と演奏し観客を引き込んでいく。さらにリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」では、会場の照明を消して真っ暗な中、蛍光塗料を塗った2人の手の部分だけが光るという演出も。加えて演奏の合間には、この演出を生かしたパントマイムも披露。HAYATOは電子ピアノを立てて弾くという荒業まで繰り出した。 kumahachi01.jpg kumahavhi02.jpg  「ライブというよりショーに近いと思います」(HAYATO)と自ら語る通り、毎回多彩なパフォーマンスで観客を巻き込むPJのライブ。こうした演奏以外の演出をふんだんに取り入れたライブはどうやって生まれたのだろう? pant01.jpg 「まだ路上でやっていた時に、ピアノとカホンでやってるだけでは全然人々が立ち止まってくれなかったんです。歌がない分、どっかで惹きつけないとと思って、そういういろんな巻き込み方を勉強しました」(HAYATO)
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HAYATO
「駅前で演奏してると、酔っ払いが乱入してくるわ、外人が横でいきなりセッションし始めるわで、何が起きるかわからない。音楽はできて当たり前なんで、おもろいことを思いついたら、どんどんやっていこうっていうのがありますね」(HIRO)
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HIRO
 その他にもツアーファイナル当日は、風船パントマイムやタオル回しなど数々の"ネタ"を繰り広げ、そのたびに観客は拍手喝采、ライブ終盤には会場がものすごい熱気と一体感に包まれていた。  今回のライブを終え、直後のインタビューで「震災で暗くなってる人たちに笑顔を届けたかった」と語るPJの2人に対し、「では、自分たちのライブが人に元気を与えられてると思うのか?」と、少しいじわるな質問をぶつけた。するとHIROは「そうですね。被災地に行きたくてもいけないアーティストがいる中で、俺たちはZEPP仙台でもやりましたし、そうした自覚はもちろんあります。今回は、とにかくお客さんを楽しませるというところを突き詰めました」と、即答。2人の目指す道に揺るぎはない。 pant02.jpg pant03.jpg  9月7日にはベスト盤を発売し、それを引っさげ全都道府県を巡るコンサートツアーも開催が決定。他にも「SETSTOCK'11」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2011 in EZO」などの夏フェス、さらにはインストアライブなど、これからもドサ回りさながらの全国行脚を繰り広げていくだろうピアノジャック。ますます自信をつけて突き進む彼らが放つエンタテイメントを、必ずどこかで体感してほしい。 pijk02.jpg
●→Pia-no-jaC←(ピアノジャック) ピアノのHAYATO、カホンのHIROにより2005年4月に結成されたインストゥルメンタルユニット。08年の1stアルバム『First Contact』から7枚のアルバムを立て続けに発表。その後、数々のアーティストとのコラボや、企画盤への参加、国内外のフェス出演を含む、年間200本以上のライブ行うなど、精力的に活動している。11年1月からは、CMクリエイター箭内道彦が手掛けるシューズブランド「ピーエフフライヤーズ」のCMソングに楽曲提供。9月からは、初の全47都道府県ツアー"→Pia-no-jaC←「EAT A JAPAN TOUR 2011」"も開催予定。なおユニット名は、左からピアノ、右からカホンと読むことができる。公式サイト<http://pia-no-jac.net/>
First Best 2008年9月『First Contact』のリリースから、3年間で7枚のアルバムと6枚のDVD、数々のコラボレーション楽曲を制作。ライブ本数年間200本以上を誇る→Pia-no-jaC←が満を持してベストアルバムをリリース! オリジナルアルバム、クラシックカバー「EAT A CLASSIC」シリーズは勿論のこと、ディズニー、ゲーム音楽(スクエア)、DJ DAISHI DANCEなどとの超絶コラボレーション楽曲も収録された豪華2枚組。 amazon_associate_logo.jpg
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「リスナーを裏切っていきたい」サブカル系バンド・アーバンギャルドが目指す次のステージとは?

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 ポップでエレクトロニカで「病的にポップ。痛いほどガーリー」な音楽を目指し、日本の音楽シーンのアンダーグラウンドで活躍してきたトラウマテクノポップバンド・アーバンギャルド。「水玉」「少女性」「処女」をテーマに、音楽・映像・詩の朗読などを駆使した立体的なライブパフォーマンスにも定評のある彼らだが、7月20日にユニバーサルJからシングル「スカート革命」でメジャーデビューすることが発表された。  キッチュで、時に暴力的ですらあるポップな世界観でファンを魅了し続けてきた彼らが、自由な表現を可能とするインディーズではなく、なぜメジャーシーンを目指すのか。そして、彼らが一貫して描き続けてきた物とは一体何なのか。次のステージに向かう今だからこそ、あらためて聞いておきたい質問をバンドのフロントマンであるヴォーカル・松永天馬と浜崎容子にぶつけてみた。 ■メジャーに切り込む新曲「スカート革命」! ──いきなり新曲「スカート革命」を聴かせていただいて、PVも拝見したわけですが、メジャーに行っても全力で攻めてますね! 松永天馬(以下、松永) そうですね。今回はボーダーラインをユニバーサルJさんといろいろやりとりしまして、この形に落ち着きました。 ──ユニバーサルJさんから「これはやめてくれ」とか「あれはダメ」とか制限はかからなかったんですか? 松永 それは意外に言われてないですね。野放しです。放牧されています 浜崎容子(以下、浜崎) ユニバーサルJさんからは「出してきたものがダメだったら、ダメって言うから」って言われています。今のところセーフみたいです(笑)。今は泳がせておいて、どういう所に入れたらいいのかなって探っているのかも。 松永 気が付いたら、だんだんユニバーサルJさんの年間許容量が増えていってるかもしれませんが。 ──もし「この表現がダメだ」と言われたら、それは受け入れますか? 松永 ダメだと言われても、その枠の中で表現するのが面白いと思うんですよ。浜崎さんはゲンズブール(※1)が好きなんですが、彼はフランス・ギャル(※2)に「アニーとボンボン」っていう一見アイドルソングなんだけど、実はフェラチオを意識したような曲を歌わせているんです。ここで「フェラチオしたいぜ!」って言ってしまったら面白くもなんともない。隠ぺいし、ぼやかすことで出てくる面白みがあると思うんです。隠すことで燃える、みたいなものがあるので、我々もそういう方法で一番いい物を作りたい。 浜崎 「スカート革命」のPVでも、パンチラを全部イチゴで隠してるんです。「あー! もうイチゴ邪魔だよ!」っていうのがいいんですよ。それをコマ送りで見ちゃったり。 松永 あれも別にイチゴで隠せって言われたわけじゃないです。僕がそういうフェチなだけなんです。だから、たとえ制限されたとしても、僕らはそういう所を楽しむと思いますよ。 ■アーバンギャルド的POP論 ──ここ最近の芸能というと、どちらかというと安定したもの、変化しないものが市場に氾濫していますよね。テレビのバラエティー番組だと、ひな壇芸人が並んで身内ネタで盛り上がる。音楽だと「共感」を歌う。ある程度、予定調和に則った娯楽が世にあふれている中、アーバンギャルドはもともと芸能が持っていたアングラさ、何をやるのか分からない怪しさを持っていると思います。
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松永 そうですね。POPっていう言葉は「爆発する」とか「弾ける」という言葉なんです。つまり我々はPOP「される」んじゃなく、我々がPOP「しないといけない」んですよ。受け手の脳みそをPOP「する」ということだと思うんです。だから、自分たちがPOPされてやんわりしたもの、ゆるふわなものを作っていればいいということは全然ないんですよ。本来ポップスっていうものは、表現者がPOPするものだったんですよ。でも気が付いたら表現者がPOPされている。だから共感なんてねえ......。共感はしなくていいですね(笑)。 浜崎 共感っていうか、「痛いところを突かれた」っていうのがアーバンギャルドの歌詞にはある気がしますね。「言われたくなかった」「できれば隠したかった」ものをズバっと言っちゃってる。そういうところを嫌だと思ってもらっても構わないし、反対にドキッとして聴いてみよう思ってくれても構わない。ただ、この歌はこういう風に思ってくださいと投げかけるのは絶対にNGだと思っています。そう言ってしまったら、もうそういう風にしか世界観が広がらないから。受け取った人がどう受け取ろうと自由というスタンスでやっています。でも、それって無防備な状態ということでもあるので、攻撃される時はすごくされるんですけどね(笑)。 松永 自分たちはマイノリティーな人間というよりも、誰もが持っているマイノリティーな感情を歌っているだけなんです。僕らは奇をてらっているという意識はなくて、まっとうに作品を作っているという意識が強いです。 ──一見してアーバンギャルドの作品は「病んでいる」側のものにも見えますが、実は普遍的なテーマを歌っていたと。 松永 僕には描かなければいけないものとして病や傷があって、それは自分の中にもある感情なんです。つまり自分の中にあるマイノリティーな感情を描いているだけなんです。だからアーバンギャルドってある意味硬派だし、汗臭いと思いますよ。 ■目標は西野カナとの対バン!? ──アーバンギャルドはさまざまな音楽ジャンルを横断しているバンドですよね。 松永 パンクバンドがずっとパンクをやっていた所で、突然アニメソングみたいなのを歌い始めたらそれこそパンクじゃないですか。そういう意味ではアーバンギャルドはパンクだと思います。歌っている曲は全然違うけど、やっていることはパンクだと思います。 ──精神的には反体制のような。 松永 元々、テクノポップというもの自体が資本主義に溶け込みつつ、資本主義に皮肉をぶつけるっていうパンクな存在だと思うんですよ。だからテクノポップっていう風に自分たちで名乗っているのは、その精神性──一見資本主義に則っていながらも、アイロニカル、シニカルであるというテクノポップの政治性にすごく意識的だからだと思います。 ──そんなアーバンギャルドもメジャーデビューすることで、「今までと変わってしまうのではないか?」と心配するファンもいると思うんですが。 松永 自分たちのやるものが、「制限されるか否か」という意味で変わったりはしません。段階の移行としてメジャーデビューなんです。これまでに出してきた3枚のアルバムの延長線上にある通過点として、メジャーデビューがあると思っています。そして、自分たちがやっていることがマニアックだという意識もないです。自分たちがやっていることは普遍的だと思うので。
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──アーバンギャルドは、いわゆる「病んでいる」状態やそういう子達の心情を扱った、ややアングラな題材を歌ったりもしていますが......? 松永 現代人は誰もが病んでいると思うので、「病んでいる」という事実はメジャーなものだと思います。だから、それをより広いところに訴えかけていくための方便として、メジャーデビューを選んだんです。それに、うちはどんどんリスナーを心配させていきたいんです。だってバンドなんていつ解散するかわからない。今、バンドが続いていること自体が奇跡だと思うので、僕らの一瞬その一瞬を見てほしいからこそ変えていかないといけないんですよ。 浜崎 だから、「メジャーに行っても変わらないから安心してね」とは言わないです。メジャーに行っても表現のやり方っていうのが自分たちの中で、やりたいことが突然変わるかもしれない。今までのインディーズでの活動の間でも変わる時は変わっていたと思うので、危機感はずっと持っていてほしいです。 松永 誰もが成長して考え方が変わるように、アーバンギャルドも常に常に変わり続ける。でも、今のこの瞬間は大事にしたい。だから、皆さんもそのバンドが好きだったら好きなうちにCDを買うべきだし、ライブに行くべきですよ。一期一会です。いつその気持ちが変わるか分からないし、いつそのバンドが活動休止しちゃうかもわからないので、そこはけちけちするところじゃないと思います。だからぜひとも会いに行くべきですよ。AKB48みたいに。 ──なるほど。それでは、今後どういう活動をしていきたいと思いますか? 浜崎 もう絶対にありえないイベントとか打ちたいですね(笑)。 松永 西野カナや青山テルマと対バンしたいですね。彼女達のファンのギャルとアーバンギャル(アーバンギャルドのファンのこと)が一緒にいるライブ会場って見たくないですか? 浜崎 それは見たい! 一緒にアンコールで歌ったりして、「なんで一緒にいるんだろう」って(笑)。 ──わはははは! それ、すごく見てみたいです(笑)。そういえば「小悪魔ageha」(インフォレスト)でも、「病特集」とかやってましたよね。 松永 だから、僕らって意外とギャル受けすると思うんですよ。僕らのファンの中にもギャルの子とかもいるし。 浜崎 いるいる。ギャルの子も意外と手首を切ってますからね(笑)。 ──いや~。本当にそんなイベントが実現したら、絶対に見に行きます(笑)。では最後にサイゾー読者に向けてのコメントをお願いします。 浜崎 我々みたいな人間がメジャーシーンに行こうとしているので、その姿を見ながら私達を笑ってくれてもいいし、勇気づけられてもいいですよ。 ──ありがとうございました! (取材・文=有田シュン) ※1 セルジュ・ゲンズブール 1960年代後半から1970年代にかけてフランスのポピュラー音楽において中心的役割を果たしたミュージシャン。『夢見るシャンソン人形』をはじめ、数え切れないほど女性アーティストに楽曲を提供した。 ※2 フランス・ギャル 1960年代中期にフランス本国のみならず、日本でも『夢見るフランス人形』で大ブレイクした歌手。 ●アーバンギャルド 21世紀東京生まれの「トラウマテクノポップ」バンド。狂った電子音に濃厚なアンサンブル、女性・男性ツインボーカルがはじける唯一無二のサウンド病的にポップ。痛いほどガーリー。童貞処女、オタク、サブカルチャーといったマイノリティへの愛と叱咤激励を込めた詞は現代日本の病理とシンクロし、ネットを中心に熱狂的なファンを生んでいる。 <http://urbangarde.net/
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AKB48より実際、気持ちイイ!「使ってみたいEGGを選ぶ」TENGA総選挙開催中!

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 俺の右手より、気持ちイイ奴に会いにいく──  開けてビックリ! 使ってウットリ! のオナタマゴ「TENGA EGG」シリーズ。2008年11月に衝撃デビューを飾った「シーズン1」で世界中のオナニストから精力を搾り取り、翌09年7月の「シーズン2」では、オナニーにおける無限の可能性を示して見せた。  そして今夏、ついに「シーズン3」として新たな3種のラインナップが登場することが決定! 冬季限定「Winter Limited」モデルで好評だったハードゲル仕様となる「シーズン3」の内部ディテール&パッケージデザインは、なんと今回、10種のエントリーモデルから"総選挙"で選出されるという。 ●TENGA 「みんなでつくる EGGシーズン3」 http://www.tenga.co.jp/egg3_campaign/  6月9日に日本武道館を揺るがせたAKB48第3回総選挙より、もっと激しく何かを揺るがせてしまいそうな「TENGA総選挙」、さっそくその詳細を見てみよう。 ■エントリーモデルは10種! モニターレビューとディテール動画で選べ!  今回の総選挙にエントリーされたモデルは10種。いずれも精緻な設計によって究極の快楽を生み出す、TENGA EGGの名に恥じない名作ぞろいだ。  すでにそのすべてを試用した100名のモニターが、レビューを投稿済。われわれはそのレビューとディテール動画を参考にして、「どうしても使ってみたい!」と思うモデルに投票することになる。投票は1人1日3票。1種に3票を突っ込むのもOKだ。もちろん投票券つきの何かを購入する必要はない。 tengacha.gif  そして、もっとも票の集まった3種のモデルが、実際に商品化されることになる。 ■投票者にはプレゼントも!  投票者には抽選で100名様に、新商品に決定したEGGをセットでプレゼント! さらに、1名様限定で、EGGガチャマシーンもプレゼントされるという。EGGガチャマシーン......なんと魅惑的な響きだろうか。  WEB投票の〆切は7月3日(日)24時。7月7日には結果発表が行われ、秋には実際に選出された3種のEGG「シーズン3」が発売されることになる。  いま、TENGA EGGから、伝説が生まれる──。 ●TENGA 「みんなでつくる EGGシーズン3」 http://www.tenga.co.jp/egg3_campaign/
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"ガンオタ"騒然! ガンダム新シリーズは低年齢層がターゲット!?

機動戦士ガンダムAGE 公式サイトより
 先日、『機動戦士ガンダム』シリーズのテレビでの最新作『機動戦士ガンダムAGE』(TBS系)が今秋から放送されることが発表された。テレビでは2年半ぶりの新作ということで話題を集めているようだが、 「キャラクターデザインや商品展開など、今回は児童層、低年齢層を対象にした色合いが強いそうです。そこにガンダムの濃いファン、"ガンオタ"、"ガノタ"などと呼ばれるような層が衝撃を受けているようですね」  と言うのは、あるアニメ業界の関係者。  現段階で発表されている本作の内容は、成長型のコンピューターを搭載したガンダムが、宇宙からやってくる正体不明の敵と戦っていくというもので、最初の主人公の孫の世代まで、3代にわたって展開するのだとか。 「『もうガンダムじゃなくてもいいんじゃないか』と言われているみたいですが、実はガンダムの新作のストーリーやデザインが発表されるたびにこういった声は出てくるので、ある意味、お約束ですね。仮面ライダーのシリーズも同じような感じです。それと、平成に入ってからはテレビでの新作に関しては、むしろ新規のファンを開拓するための作品として展開し、ファーストガンダムやゼータ時代からの熱心なファンに対してはOVAで新作を、という両軸で動いてきていた面もあります。ですから、今回は子どもたちの新規ガンダムファンを獲得したいというところなんでしょうね」(同関係者)  今回ストーリーとシリーズ構成を担当するのは、ゲームの『レイトン教授』シリーズや、『イナズマイレブン』シリーズを手掛けるゲーム会社・レベルファイブ代表の日野晃博氏。 「『イナズマイレブン』は、ゲームとアニメのメディアミックスが功を奏し、男子小学生にかなり人気があります。今放送している『ダンボール戦記』(テレビ東京系)というアニメも同じようにレベルファイブがかかわっているんですが、ゲーム、アニメ、そしてバンダイから出ているプラモデルをからめた展開をしていて、売れ行きも好調のようです。子ども層の食い付きを作るのがうまいところが、起用の理由のひとつなんじゃないでしょうか」(ゲーム誌編集者)  今回のガンダムでは、初めて児童向けコミック誌「コロコロコミック」(小学館)でもメディア展開を行うほか、ゲームセンターやショッピングセンターのゲームコーナーなどで展開予定の同作品のゲーム機に、発売される新ガンダムのフィギュアに埋め込まれたチップと連動して遊ぶことができるシステムを導入するなど、確かに明確に低年齢層を意識した展開が目立つ。前出のアニメ関係者は言う。 「メインスポンサーのバンダイが、ガンダムを本格的に世代を超えたコンテンツとして根付かせたいというところが一番の狙いでしょう。20年ほど前のSDガンダムのブームのころには子どもたちにガンダムブームが来ていましたが、近年はロボットアニメのジャンル自体が子どもにあまりアピールしないことや、メインの商材であるプラモ自体に触れる子どもが減っていることなどもあって、今までとは違うアプローチを試みたいところはあると思います」  他にバンダイがスポンサーをつとめる人気のロングランシリーズとして、ウルトラマンや仮面ライダー、戦隊シリーズ、プリキュアシリーズなどがあるが、確かにガンダムシリーズに関しては児童層よりはハイエイジ層のファンが多い印象がある。前出のゲーム誌編集者が言う。 「そこで、今回稼働するゲーセンなんかでのゲームなんだと思います。ウルトラマンやライダーのカードゲームが大ヒットしましたからね。このゲームでの利益は相当大きいんです。ガンダムもここに参入しない理由はないでしょう。また、近年は歴代戦隊、歴代ライダーを集結させるストーリーや商品展開が人気を集めているので、ガンダムも低年齢層向けのゲームで過去のガンダムを登場させたりして、あらためてその層に過去のガンダムを刷り込んでいくということも十分考えられますね」  放送開始までまだ3カ月以上もあるが、テレビでの新作の制作が発表されただけでここまで話題になるガンダムシリーズだけに、その仕上がりにも期待したいところだ。
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