
地デジ完全移行(東北3県は除く)から約1カ月、「テレビが生まれ変わる」といううたい文句も虚しく、Twitterに端を発した韓流ゴリ推し批判問題、不謹慎テロップ事件に対する大バッシングなど、テレビを取り巻く状況は日に日に厳しいものとなっている。テレビはこれからどうなってしまうのか――。それを一般視聴者とは異なる視点で危惧しているのが、他ならぬテレビ雑誌業界だ。テレビ、雑誌という2つの斜陽産業の十字架を背負いながら、テレビ雑誌はどんな未来を見据えているのか。他のテレビ誌とは一線を画す特集やコラムで根強い人気を誇る「TV Bros.」(以下、ブロス/隔週水曜日発売、東京ニュース通信社)、菅野大輔編集長に伺った。ぶっちゃけ、テレビとテレビ誌、大丈夫ですか?
――インタビューをお願いした絶好の(?)タイミングで、例の「フジ韓流偏向問題」が噴出するなど、何かとテレビ周辺が騒がしくなりまして。
菅野大輔氏(以下、菅野) みんなかわいそうですよ。あの問題、まさに「誰得」じゃないですか。愛情の裏返しなんでしょうかね......。他の局だって韓流推しが激しいですよ(笑)。
――番組編成を俯瞰している立場として、韓流ドラマを増やすというフジの選択は妥当だと思われますか?
菅野 ブロスに来る読者からのお手紙を見ていて思うんですが、最近、特にネタが細かくなってきているんですね。これはオンタイムで見ていないな、と。それ自体は悪いことではないのですが、ただ、テレビがかつて視聴者に与えていた"曜日感覚"みたいなものが、もはや必要とされていないんですね。月9とか朝ドラとか。そういった意味で、"24時間ゴールデンプライム"とも言えます。だから平日の14時からのあの時間帯、テレビの向こう側にいる人々に最大公約数の答えを出そうとしたら、韓国コンテンツが増えるとしても不思議じゃないと思いますよ。
――「韓国コンテンツ」というのは単なるきっかけで、テレビに対する積年の鬱々たる思いが爆発したのでしょうか。
菅野 僕はテレビが本当に大好きで、テレビは今でもエンタメ界の王様だと思ってます。どのチャンネルか知らない状態で番組を見ても、「これは日テレっぽい」「テレ朝の風味がする」と何となく分かる。だけど、特番に関してはまったく分からないんです、これが。出てるタレントさんもほとんど同じでしょう? 各局がローリスクなバラエティー番組に逃げた結果ですね。でもね、「どうしてそんなにテレビに文句言うの?」とも思う。だって、こんなに簡単でお金のかからないメディアはないでしょう? もちろん批評は大切だし、ネットがその役割を担っているところはあるけど、匿名者同士の連帯感は悪口に行き着くことの方が多い。ネットでテレビ業界の裏側を暴く、という段階は一段落していたところに今回の騒動が起こったわけですが、もっとドライに「嫌なら見ない」という選択をしている人もいると思います。その方がもっと怖いけど。
――テレビ雑誌にとって、視聴者のテレビ離れは是が非でも食い止めたいところですよね。
菅野 それは僕たちがもっと考えなければいけないところですね。地上波・BS・CS・ネット......と選択肢はものすごく増えている。それをどうまとめるのか、というところにテレビ誌の役割があると思います。EPGでは表現できないことをやらなければ意味がなくなりますから。
――5月28日号のブロスで、「福島」とアニメ『TIGER & BUNNY』を取り上げていたことには驚かされました。テレビ誌で福島の原発問題を取り上げるということ、そしてその後が『タイバニ』という......。
菅野 ブレているわけではありませんよ(笑)。ブロスの編集方針は「画面を通じて会える人やモノ、事象を取り上げる」。そして軸はやっぱり「テレビ」なんですよ。テレビがどのように福島を伝えているのかを知り、それをブロス流に料理する。「『タイバニ』に夢中になっている人に福島を知って欲しい」というメッセージもある。テレビはチャンネルを変えれば、ニュース・歌番組・お笑い・ドキュメンタリー......と瞬時に変化するでしょう? ブロスもテレビのように、見開きで刻々と変化する空間を作りたいと思っています。
――"サブカル"と表現されがちな御誌ですが、基本はやっぱりテレビ誌であると。
菅野 いやぁ、どんな呼び名でも呼んでもらえるだけありがたい(笑)。しかし、褒め言葉として認識してはおりますが、本当の意味でのサブカルなんてもう存在しないんじゃないですか。すべてが白日の下に晒されてしまって、本来"陰"であるサブカルの隠れるところがなくなっちゃった。ただひとつ残されているサブカルがあるとしたら、それは"個人"以外にない。
いまだにテレビはマスに向けて放送しようとしていますが、昨今のテレビに対する拒否反応の根源はそこにあるんだと思います。もはや「大衆」は存在しないんです。誰もが喜び、誰も文句を言わない番組を放送しようとすれば、おのずとつまらないものになっていく。個人や特定のグループに当て込んだ番組作りにシフトしなければ、チャンネルの個性はどんどん失われ、テレビは衰退していくんじゃないでしょうか。
――具体的にはどんな番組作りをすればいいと?
菅野 これはとっておきの秘策ですが......思い切って、全番組を生放送にしてしまうんです! 全部生ですよ。トラブル続出するでしょうね~(笑)。何が起きるか分からないと視聴者もドキドキ感を味わえます。何よりキャストが被らない(笑)。関係者に与えられる休息は、週一で放送される映画の間の3時間だけ。
――『8時だョ! 全員集合』の「志村後ろ!」の感覚ですね(笑)。
菅野 3.11以降、NHKが復権を果たしたのも、そういうライブ感じゃないでしょうか。例えば地震が起きて、「今揺れてる」という事実をライブで共有するのは、地上波最大の強みだったはずです。再放送では絶対に味わえない。もちろんNHKは情報の信頼度も高いし、コンテンツを自局で制作している強みもあります。地デジ化よりもむしろ震災を境目にして、テレビも、それを伝えるテレビ誌も本来の役割を問われているように思うんです。
――確かに、震災によって各局の底力のようなものが透けて見えた気がします。
菅野 一方で「テレビやテレビ雑誌が視聴者のそばにある」というのを痛感したのも震災でした。震災報道から通常の編成へ切り替わった時の、言い知れぬ安堵感。日常がテレビを求めていたこと。ブロスも震災後、史上最低の売り上げを記録したのですが(笑)、それでも待っていてくれる人がいた。交通が遮断され配本できなかった被災地の方から「今日ブロスが届きました!」というお便りをいただいた時、僕らは読者のためにずっと作り続けなければならないと思いました。震災でどん底も見ましたし、逆に底力も発揮されましたね。
――どうか、ブロスはずっとブロスのままでいて下さい(笑)。
菅野 ハハハ、これしかできないですからね。僕からもみなさんに「もっとテレビを見よう!」とお願いしたい。諦めず、テレビに期待しましょうよ。面白きゃいいじゃんと思える、広い心を持ちましょう。震災や地デジ化でリセットするチャンスをもらったんだと思います。見る側も作る側も。ブロスは......まぁ何とかやっていきます。愛憎半ばされがちな雑誌ではございますが、悪運だけは強いので(笑)。
(取材・文=西澤千央)
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カラダのキレがハンパない!! 生身のアクションが光るタイ映画
──節電で大変そうな今年の夏に、暑さを忘れられるDVDを、お化けメイクの小明ちゃんほか、本誌になじみの深いお歴々が、厳選レビュー!!
■『マッハ! ニュー・ジェネレーショント』
【小明の『マッハ! ニュー・ジェネレーション』レビュー】 実は私、アクション映画が大好きなんですよ。引きこもりだった中学生のときにジャッキー・チェンの映画に出会って、それ以来ハマっちゃって。(C)2011 SAHAMONGKOL FILM INTERNATIONAL ALL RIGHTS RESERVED.
で、タイ・アクションもジャッキー映画に通じる体を張った格闘モノなんで、『マッハ!』シリーズは全部観てます。この「ニュー・ジェネレーション」も、相変わらずCGなしの生身のアクションが満載。一応、主人公のポッド率いるスタント・チームが、少年マンガに出てくるようなわかりやすい悪の組織にダマされて、なおかつヒロインがさらわれて......っていうベタなストーリーはあるんですけど、ぶっちゃけ話の展開は重要じゃないんです。とにかく「オレの考えたカッコいいアクションを見てくれ!」っていう、勢いだけで突っ走る映画ですから。 出演者はみんな体のキレがハンパなくて、複雑な足技の応酬を何回も巻き戻して「え、今どういうふうに足が動いたの?」ってスロー再生しながら見ると、すっごい楽しいですよ。特に、『ストⅡ』のバルログみたいな敵と闘う金網デスマッチが最高。たぶんカポエイラ使いなんですけど、もうありえない身のこなしで、「人間の体でこんなことができるんだ!」って感動しました。あと、主人公チームはトドメを刺さないから、倒したと思った強敵が後でまた出てくるんですよ。相手を変えたりして延々と闘い続けて、ついには全員参加の大乱闘。そこで悪者を全滅させて大団円!......でもよかったはずなのに、その後さらにバイク・アクションに銃撃戦まで詰め込んできますから、もうひたすらアガりっ放しです。 タイ・アクションは、女の子はカワイイし、男の人は全員やたらと強い! 今後も目が離せませんよ。 (構成/須藤輝) (ヘア&メイク/梁取亜湖) (写真/田中まこと) 【宣伝担当者おすすめポイント】 最大の見どころはやはり、CGなしの"肉体を駆使した本物のアクション"! ムエタイはもちろん、功夫、カポエイラ、コマンド・サンボなどあらゆる格闘技のキレのある動きと、自動車やバイクを駆使した命懸けのスタントを「これでもか!」と見せてくれます。未来のタイ・アクション界を担う次世代スターが総出演している点も注目です!
『マッハ! ニュー・ジェネレーション』 ハリウッドでの仕事を懸けたオーディションに見事合格し、その夜の祝勝会で勝利の美酒に酔いしれるスタント・チーム"ファイト・クラブ"のメンバーたち。しかし、それは国際犯罪組織が仕掛けた罠で、翌朝目を覚ました彼らを待っていたのは「死の格闘ゲーム」だった!
小明(あかり) 1985年1月14日、栃木県生まれの千葉県育ち。エプロンアイドルとして華々しくデビューするも、今ではなぜかフリーのアイドルライターに。地デジ化にもついていけずにテレビはDVD専用なので、知らない間に映画通に。
■【DVD特集】この夏観るべき激ヤバ映画8本! ・女優として一皮むけた演技に注目!! 『軽蔑 ディレクターズ・カット』 ・ヤンキー嫌いも必見のリアルヤンキー映画 『BADBOYS』 ・ホラーマンガの巨匠3人の映画企画 "古潤茶"に岩井センセイが息子の売り込み!? ・原紗央莉ちゃんがやり切るすがすがしさよ!! 『牙狼〈GARO〉』&『呀〈KIBA〉』 ・陰鬱すぎる『不思議の国のアリス』その暗さがクセになりそう!! 『アリス』 ・"メンヘラビッチ"な妻をシャルロットが好演!! 『アンチクライスト』 ・ナタリー・ポートマンがサエないメガネ女を好演!! 『メタルヘッド』 ・生身のアクションが光るタイ映画 『マッハ! ニュー・ジェネレーション』
食いしん坊パンダが大暴れ! 超高速カンフーアクション映画『カンフー・パンダ2』

KUNG FU PANDA 2(TM)&(C) 2011 DreamWorks Animation LLC.
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夏休み映画シーズンもそろそろ終盤とは言え、なおも個性的な作品たちが続々と封切られる8月下旬。今回は、3D映画の楽しさと可能性を改めて気づかせてくれる新作2本を紹介したい。
まずは、食いしん坊パンダが巻き起こす騒動と活躍をCGアニメで描くアクション・コメディー続編『カンフー・パンダ2』(公開中、2D/3D同時上映)。厳しいカンフー修行の末、"伝説の龍の戦士"となったパンダのポーは、相変わらず食い意地が張っており、お調子者の性格も変わらない。仲間の達人5人組と鍛錬に励む日々だったが、世界を征服してカンフーを絶滅させるという野望に燃える邪悪な孔雀、シェン大老とその一味との激闘が始まる。戦いのさなか、ポーの眼前にフラッシュバックする幼少時の記憶。封印された出生の秘密に、シェンとの戦いのカギが隠されていた。ポーは果たして過去の真実と向き合い、敵を倒して世界を救うことができるのか......。
メガホンをとったのは、これが初監督作となるジェニファー・ユー・ネルソン。3年前の前作はポーの成長が物語の軸となったが、続編では"親子の絆"が重要なテーマとなっており、より家族向きの内容に。アクションシーンでは特に3D映像の楽しさが発揮され、カット割りと視線誘導を巧みにコントロールすることで、超高速のカンフーアクションをリアルに体感できる娯楽作に仕上がった。
製作したドリームワークス・アニメーションは、ディズニー/ピクサーとは長年のライバル関係。だが、本作の回想シーンなどがディズニーの往年の名作アニメにオマージュを捧げるかのような2Dの絵柄で描かれている点は、両スタジオの過去の確執を知るファンには感慨深く映るだろう。
続いて紹介するのは、8月27日に公開される『ピラニア3D』(R15+指定、3D上映のみ)。1978年の『ピラニア』を3D映画としてリメイクしたモンスター・パニックだ。アメリカ南西部のビクトリア湖畔の町、スプリング・ブレイクではある日、湖での大がかりなイベントがあり、多数の若者たちが集まってきた。だがその朝、湖底で大規模な地割れが発生し、その裂け目から200万年前に絶滅したはずの凶暴な肉食ピラニアが群れをなして出現。「濡れたTシャツコンテスト」で若者たちの興奮が最高潮に達した時、ピラニア軍団が鋭利な歯で攻撃を開始し、湖はたちまち血の海に変わっていく......。
監督はフランス製スプラッターホラー『ハイテンション』(06)の成功でハリウッドに招かれ、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(07)『ミラーズ』(08)と過激なホラー映画を連発しているアレクサンドル・アジャ。今作でも、登場人物たちがピラニアに肉や内臓を食べられたり、アクシデントに見舞われ凄惨な死を遂げたりする様子を、アノ手コノ手の凝った描写で提示。さらに3D映画ということで、奇怪なピラニアはもちろんのこと、女性のボディー、ロープ、飲料、ゲロに至るまでさまざまなモノが画面から飛び出て、テーマパークのお化け屋敷に似たアトラクション感覚を楽しめる。
名優リチャード・ドレイファス、個性派俳優クリストファー・ロイド、ホラー問題作『ホステル』(06)などの監督としても知られるイーライ・ロスといった面々が、エログロ満載のB級ホラーで端役、脇役をノリノリで演じているのも楽しい。エロ要素でとりわけ印象的なのは、水中でゆっくりと泳ぐ全裸美女ふたり(正確にはフィンのみ着用)が、3D効果でぽっかりと浮かび上がるシーン。3D映画史に残る(?)この名場面は、特に男性諸氏に映画館の大スクリーンでじっくり鑑賞していただきたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『カンフー・パンダ2』作品情報
<http://eiga.com/movie/54261/>
『ピラニア3D』作品情報
<http://eiga.com/movie/53907/>
チェコセンター東京所長に聞く、鬼才・シュヴァンクマイエルの楽しみ方

(C)ATHANOR
「チェコアニメの鬼才」「チェコを代表するアニメーション作家」などといううたい文句で紹介されることの多い人物、ヤン・シュヴァンクマイエル。確かに、チェコ出身であることとアニメーション作品を作っていることで、そう呼ばれるのも間違いではないが、本人いわくそうではないと。では、彼をなんと呼ぶか。「"シュルレアリスト"がもっともふさわしいでしょうね」と、日本でヤン・シュヴァンクマイエルを最もよく知る人物であるチェコセンター東京のぺトル・ホリー氏は言う。
27日より渋谷のシアター・イメージフォーラム他で公開となる映画『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』をはじめ、展覧会や書籍の刊行等、ヤン・シュヴァンクマイエルの話題が相次いでいる。各作品ごとにさまざまなテーマがあるが、シュヴァンクマイエル作品には「夢」を扱ったものが非常に多い。今回の映画『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』も主題が「夢」。主人公のエフジェンは、夢の中で美しい女性エフジェニエに恋をする。そしてエフジェンは、夢の内容が気になり、精神分析医にかかり原因を探ったり、夢の操作法を勉強し夢の中に入っていく。その先にあるのは......。といった内容。夢はその人にとってどんな存在であるのかを考えさせられるテーマである。
......ということで、今回は残念ながらご本人の登場には至らなかったが、今年2月のライブストリーミング番組「DOMMUNE」出演時(ヤン・シュヴァンクマイエル本人と共に通訳として出演した)にも、ある意味で大きな存在感を示したチェコセンター東京のペトル・ホリー氏にご登場いただき、初めての方でも楽しめるヤン・シュヴァンクマイエルについて、また、新作『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』の楽しみ方について語っていただいた。
──まずは、読者の方たちがホリーさんのことをご存じないかもしれませんので、ヤン・シュヴァンクマイエル監督との関係を教えていただけますか?

チェコセンター東京所長、
ぺトル・ホリー氏。
ペトル・ホリー氏(以下、ホリー) 私は現在、チェコ共和国大使館勤務で、チェコセンター東京の所長をしております。シュヴァンクマイエル監督はもちろん有名だったので昔から存じ上げていました。私は日本文化と日本語を勉強して、1998年から日本に住んでいます。最初は『シュヴァンクマイエルの博物館』(国書刊行会)の翻訳で彼の仕事をさせていただきまして、2001年に映画『オテサーネク』で来日した時から通訳としてご一緒させていただいております。それからは、来日されるたびに身の回りのお世話をしたり、日本でいろんなところにお連れしたり......。
──シュヴァンクマイエル監督の側には、いつも大きなホリーさんがいらっしゃる。ご自身もシュヴァンクマイエル映画のファンだったんですか?
ホリー 最初に見たのは大学生のときだったと思います。その時は正直びっくりしましたが、すぐにハマってしまいました。こうして仕事をご一緒させていただき、監督本人からいろいろお話が聞けるのは、すごく貴重なことだと思います。
──冒頭でも伝えましたが、シュヴァンクマイエル監督は映像作家やアニメーション作家ではなく、シュルレアリストであると?
ホリー そうです。シュルレアリストの人たちに言わせると、シュルレアリスムというのは活動、運動、生き方であって、アートではないんですね。だから、シュルレアリスムに勤しんでいるのではなくて、自らのこれまでの体験が形になっている。自分の経験、自らの世界観をアニメーションや彫刻、フロッタージュ、アッサンブラージュといった、いろんな手法を道具として使って表そうとしているんじゃないかと思います。アニメーションというのは単なる手法に過ぎません。

──もともとはチェコに古くから伝わる人形劇を学ばれていたと聞きました。
ホリー シュヴァンクマイエルが人形に目覚めたのは非常に早かったと聞きました。5、6歳のころに人形劇セットを親からもらったのがきっかけです。人形劇セットというのは、チェコの家庭では誰もがもらうものなのですが、そのまま遊んで忘れる人と、それを決定的な出会いと思い込んでしまって現在にいたるという人がいるんです。シュヴァンクマイエルはもちろん後者で、その後、54年にチェコ国立芸術アカデミーの人形劇学科に入学します。チェコの情勢を少しお話ししますと、50年代はスターリン主義の暗い時代、60年代は比較的自由な創作活動が許されていたそうですが、68年にチェコ事件が起こり、70年代には自由を失ってしまったんですね。その時に、ヴラチスラフ・エッフェンベルグルという思想家に出会い、妻のエヴァとともにシュルレアリスムのグループのメンバーとなり活動をスタートするんです。
──なるほど。アニメーションの手法については?
ホリー アニメーションは単なる手法ではあるのですが、「アニメーション=魔術的な何か」ということは常に言っていますね。チェコで言うところの、17世紀の錬金術師のような。普段動かないものを動くように見せる、まるでモノに魂が宿ったかのように。それはミステリアスなことでもあり、シュヴァンクマイエルにとって、アニメーションは自分の考えを表現するのに適した手法なのだと思います。
──では、新作『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』についてのお話をお聞きしたいのですが、本作はシュヴァンクマイエル作品の入門編としてはすごくいいと個人的に思います。監督が持つアイロニーとユーモアはたっぷり織り交ぜつつ、内容としてはテーマが「夢」なこともあり、共感できる部分も多い。見ていて楽しい作品でした。

ホリー そうですね。娯楽要素が多い作品かもしれません。この作品では、「夢」というのが私たちにとっていかに大事なものかということを考えさせられるのではないかと思います。映画の中に、夢をめぐる問答がありますよね。事務所の中で、エフジェンはすごく夢を大事に思っていて、もう一方の人はたまたま見たものといって軽く扱う。エフジェンはすごく深い世界を持とうとしていて、片方は朝起きて食べて寝るというありきたりの日常を過ごしている。もう片方は、今の文明の象徴ではないかと。シュヴァンクマイエルもすごく夢を大切にしていて、彼自身も夢日記をつけているんです。サブタイトルに「夢は第二の人生」とありますが、監督いわく「夢は第一の人生」かもしれないと。
──確かに。現代は「目を開けている世界が本当の世界だ」と言われていますけど、例えば原住民で夢を非常に大切にしている部族があったりしますしね。シュヴァンクマイエル作品に過度な発展による文明、消費社会への批判も強くみられます。
ホリー シュヴァンクマイエルもプリミティブアートが大好きで、チェコで2番目のコレクションを持っていると豪語しています(笑)。それは余談ですが。シュヴァンクマイエル作品を見る時のキーワードみたいなものがいくつかあって。「夢」「文明への反抗」「欲望」「食への恐怖」「音へのこだわり」あたりでしょうか。人間の貪欲さというか、欲望を満たすためには何でもやるという人間の欲深さですね。
──「食」は大きいですよね。今回の作品でも口元のアップが多かったり、食べ物が決しておいしそうに映らない。以前、記事で拝読しましたが、幼少時代に食べることが大嫌いだったそうで、そのトラウマが映像に反映されていると。
ホリー 強いトラウマがあると思います。子どものころに無理やり食べさせられたという記憶と、今の文明は全てを食べ尽くしてしまうという意味で、「食べる」行為についての表現もひとつの見どころかもしれません。

──ただモノを動かすだけではなく、ひとつひとつの造形へのこだわりもすごいですよね。だから展覧会等で原画や作品も楽しめるし、それが書籍になっても面白いのだと思います。
ホリー 今回は、「切り絵アニメ」という手法でやっています。映画の冒頭で本人も言っていますが、最初は製作費の節約のためにとった手法だったんですが、フタを開けてみたら、人の写真を24コマ用に撮って、現像し、プリントする。数万枚にも及ぶプリントを1枚1枚丁寧に切り抜く作業が発生してしまいました。結局は製作費も割高になってしまったそうです(笑)。ただでさえコマ撮りの撮影は時間がかかるんですが、だいたい1日で30秒程度、結局製作には3年かかりました。それだけ、映画としてのクオリティーは非常に高くなっていると思います。
──最後に観客の皆さんにひと言お願いします。
ホリー 作品を見て、純粋に楽しめるか? と聞かれたら、ちょっと難しいと答えます(笑)。やはりシュヴァンクマイエル作品は合うか合わないかが非常にわかれます。でも、1枚1枚の画の完成度の高さや、トラウマ・夢・食といったキーワード、哲学的なやりとり等、見方によっていろいろな解釈ができる作品です。シュヴァンクマイエル作品の中では、比較的分かりやすい部類なので、ぜひ注目してみてください。
(取材・文=上條桂子)
<映画>
『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』
8月27日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
<http://survivinglife.jp/>
<展覧会>
「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展~映画とその周辺~」
9月19日(月)まで
ラフォーレミュージアム原宿
11:00~20:00(最終日~18:00)
<http://www.svankmajerjp.com/>
「コンドルズは人間関係で成り立っている」"学ラン集団"が挑む、15周年の集大成公演

学ラン姿のアツイ男たちが舞台の上を縦横無尽に飛び回るダンスカンパニー。かと思いきや、突然ユルいコントが始まったり、映像が流れたり、歌を歌い出したり......。すべて「身体」を使った表現なので、ダンスには違いないのかもしれないが、これはダンスなのか? なんて考えている暇はない。山なりのボールが突然豪速球になったり、直球が来るかと思いきや大暴投だったり。と思っていたら、最後には超カッコいいダンスでビシッと決めてくれる。そんな男前集団コンドルズが、今年で15周年を迎える。その記念公演となる舞台『グランドスラム』が東京を皮切りに全国でスタート。コンドルズの立役者であり振付家の近藤良平さんに聞く、新作舞台の内容と、15周年を迎えるカンパニーについて。
──まずは、『グランドスラム』という舞台の内容についてお伺いしたいのですが。
近藤良平氏(以下、近藤) 非常に分かりやすく言うと、今回の舞台は15年間のベスト盤。オイシイとこ取りなので、この舞台がつまらなかったら、あなたが悪いっていう(笑)。
──(笑)。さすがです。そりゃそうですよね。15年間のエッセンスを凝縮して出しているわけですから。
近藤 まあ、そう言えるくらい、おいしい作品になってます(笑)。コンドルズの舞台では、5年に一度、海外公演も視野に入れた大作を作るんです。2000年の『ジュピター』という作品でNYやヨーロッパ、アジアに行ったり。06年は『エル ドラド』という作品。他の作品もいっぱい作っているんですが、大きく公演を打って、それを基本として5年かけて熟成させていくというか。なので今回の『グランドスラム』は、我々的には、5年かけてやる作品の初期バージョンになるわけです。第一歩ですね。この作品が、これからの5年のスタートを意味します。
──ベスト盤ということは、昔の作品の中からピックアップして再構成した作品になるということですよね?
近藤 そうですね。だいたい過去5年間くらいのものからになります。昔の舞台の映像からピックアップするんですけど、コンドルズの舞台ってむちゃくちゃシーンが多いんですよ。1本で20シーン以上あるので。1年で80シーンあるとして、5年で400本以上。もちろんすべてが違います。昔のVTRを見直してると、すっごい面白いんですよ。「俺達面白いじゃん!」って。そんなカンパニー、ないですよね(笑)。
──コンドルズの舞台って、すごい短いシーンというかスキットのようなものでつながれているので、編集の仕方でまた意味合いが全然違う舞台ができ上がるのかもしれませんね。今回の舞台の見どころやポイントはありますか?

近藤 今回は15人なんです。一時期、長塚圭史が居たころは12
、3人くらいの時もあったんだけど、去年から平原慎太郎(FA)と、ぎたろー(新人)の2人が入ってきたのと、今回初めて公演に参加するスズキ拓朗(NewFace)っていうのがいます。彼らが新しい風になっていますね。また、ピックアップした昔のシーンに、今だと絶対にできないような動きがあった時には、若いメンバーは役立ちます。
──古いネタを再演される際、演者は変えるんですか?
近藤 そこはいじってますね。オクダ(サトシ)さんとかデカイから変えられないとか、キャラ立ちしているところは変えないけれど、そこをわざと変えて実験してみたりして。すると、全然雰囲気が変わるんですよ。石渕(聡)さんとかは怖いから「この役は絶対俺がやる!」とかって譲らないこともあるしね(笑)。なーんでそんなところをこだわるのかな? というのがあったり。面白いよね。今までの舞台ではそういうのはなかったから。
──コンドルズの芝居の作り込みの度合いについてお聞きしたいんですが。舞台でのアドリブや偶発性みたいなものを大切にされているようなところと、ダンスでバシッと決める部分のバランスというか。
近藤 どう見ても作り込んでないでしょう?(笑) 僕は昔からそうなんですけど、作って、練習を重ねていくとうまくなりすぎるでしょ。ダンスでも芝居でも音楽でも。それによって調子に乗っちゃうヤツもいるし。その、うまくなるのがつまらんって思っていて。なので昔から、本番の6時間前くらいに振り付けを変えたりするんですよ(笑)。すると演者は混乱して、そのあたふたしているところも含めて舞台上で見られる。そういうこと自体がもともと好きなので。
──なるほど、舞台を見ていると納得できます。
近藤 メンバーみんなそれぞれ仕事を持っていたりもするし、実際にがっちり2カ月練習なんて不可能なんですよ。僕もメンバーも、そんなに辛抱強い方でもないしね。それがカンパニーの色になっているんだと思います。もし、2カ月間びっちり練習できる状況にあったとしても、多分やらないよね(笑)。そういう作り方をしている舞台で、以前やったネタをもう一度やるっていうのは、結構難しい。新しく作る方がよっぽど楽なんです。
──バラバラな人たちを同じ方向に持っていく、近藤さんならではのやり方というのは、何かコツが?
近藤 メンバーみんなが抜きどころを知ってるんですかね。僕たちは会議室でよく練習しているんですけど、出番がない時はみんな稽古場にいないんですよ。どっかでサッカーをやってるヤツもいるし、マンガ読んでるヤツもいるし......。で「やるぞ!」って言ったら、ムクムクいろんなところから出てきてやるわけですよ。それで僕がまた芝居を作り始めたり考えごとを始めたら、またわーっと散っていって、プロレス雑誌とかを見てる(笑)。そういう、縛らない、縛られないでやる「抜き方」がみんなすごくうまい。僕も楽だし本人たちも楽なんだよね。
──では、コンドルズが15年続いてきた理由を教えてください。
近藤 コンドルズって、東京もそうだし地方公演もそうだけど、人間関係で成り立っているんです。大阪、福岡とかってもう十数回も毎年毎年通っていて。現地にも友だちもたくさんできているし、みんな里帰りみたいな気分で、現地に行くのが楽しみになっている。そういう関係性ができていることが、続ける理由だよね。
──15年続けてきたということは、メンバーもお客さんも一緒に歳をとったということになりますよね?
近藤 確かに、今だと35歳くらいを中心にした年齢層の人が多いんだと思う。そう考えたら大人だよな(笑)。僕らとしては、40歳を超えるとやっぱり単純に、生命力とかやる気とか、いろんな問題に直面するんだと思うんですよ。僕なんかは立場的なこともあるけど、今の方が正直言って身体に向かう努力はしているし、それは20代の時には考えていなかったことですよね。「こんちくしょう、若者には負けない!」という気持ちも、もちろん持っているしね。舞台ではそれを全開で出したいとは常に思っている。それで、心意気のある若者の人たちに、「近藤さんまだ動けるんですね」って言われたらうれしい。心意気のない若者なんてどうでもいいんですけど(笑)。他のメンバーも、同年代の人間が多いからきっと同じことが起きているとは思う。
──年齢と身体って、特に舞踊なのですごく舞台に関係があると思います。でも、お歳を召した舞踊の方で、早くは動けないかもしれないし、高くは跳べないかも知れないけど、20代にはできない表現をする。若い表現者には絶対に見られないような部分があるとは思うんですよ。
近藤 もちろん、そこは探れると思う。でも、コンドルズはどっかでがむしゃらな部分があるから、それは続けていきたいよね。いつまでやんちゃできるかっていう。個人単位になると弱くなってくるかもしれないですけど、結局は我々はみんなが集まると発揮できるんです。今はフラットにやっていますよ。すごくいい舞台になっていると思う。15年った、今のコンドルズを皆さんに見てもらえたらうれしい。
(取材・文=上條桂子/写真=後藤匡人)
●コンドルズ日本縦断大連勝ツアー2011『グランドスラム』
東京 8/25-28 東京グローブ座
札幌 9/2 札幌市教育文化会館
静岡 9/4 焼津文化会館
大阪 9/9-10 松下IMPホール
広島 9/15 アステールプラザ
福岡 9/17-18 イムズホール
富山 10/30 高岡市民会館
埼玉 11/3 所沢市民文化センターMUSE
※全日程当日券あり
詳細は公式HPにて <http://www.condors.jp/01.html#summer>
ジョン・ウー最新作は、男女の絆! 武侠大作『レイン・オブ・アサシン』

ソード&ラブロマンス『レイン・オブ・アサシン』
の日本公開に先駆けて来日したジョン・ウー監督
(写真左)と脚本も手掛けたスー・チャオピン監督。
『男たちの挽歌』(86)、『ウィンドトーカーズ』(01)、『レッドクリフ』(08、09)と義に殉じる男たちの熱き絆を描き続けるアクション映画の巨匠ジョン・ウー監督。ジョン・ウー作品はやたらと爆破シーンが多い。渦巻く爆音と飛び交う銃声の中、男たちに言葉のやりとりはいらない。固い友情で結ばれた男たちはお互いにうなずきあって、後は敵陣に踊り込むだけだ。ジョン・ウー作品における爆発=男気の発露なのだ。ハリウッドで成功を収め、子どもの頃からの夢だった『レッドクリフ』でアジアに凱旋したジョン・ウー監督が最新作『レイン・オブ・アサシン』の日本公開にあたり来日した。3.11以降、映画界の大物が東京に来ることがなくなっているだけに、ジョン・ウー監督の男気をいっそう感じさせるではないか。
新作『レイン・オブ・アサシン』は男臭さが売りのジョン・ウー作品には珍しい、ヒロインが活躍する新感覚の武侠ラブロマンス。明の時代の中国、凄腕の女殺し屋(ミシェル・ヨー)は暗殺組織から足を洗うために顔を整形し、自分の過去を知らないマジメな亭主(チョン・ウソン)と静かに暮らし始める。だが、組織が放っておくはずがなく、かつての同僚だった殺し屋たちが次々と襲い掛かる。ヒロインは果たして平和な家庭を守り切れるか? アジア屈指のアクション女優ミシェル・ヨーが貫禄たっぷりなソードアクションを披露するのに加え、殺し屋たちが実に個性的。ヒロインが抜けた後の組織に後釜として入る若い女剣士(バービー・スー)は独占欲とお色気を武器にするなど山田風太郎の忍法帖シリーズばりの名キャラクターぞろい。幽霊譚に物理学的視点を交えたホラー映画『シルク』(06)で注目を集めた台湾出身のスー・チャオピン監督のオリジナル脚本にジョン・ウー監督が惚れ込み、プロデューサーを買って出た。アクションシーンが多いため、ジョン・ウー監督も演出を手伝い、共同監督というクレジットとなっている。

後進の育成にも力を注ぐジョン・
ウー監督。「スー監督は脚本の
オリジナル性が高く、ロマンティ
ックな場面の演出もうまい。嫉妬
を感じた(苦笑)」と評する。
7月27日、西新宿のパークハイアットのスイートルームを訪ねると、ジョン・ウー監督がニコニコと出迎えてくれた。記者、編集者、カメラマンとそれぞれ両手でがっちりと握手を交わす。なぜ、ジョン・ウー監督は両手で握手するのか? それは、もう片方の手に拳銃や刃物は隠し持っていないよという友好の証なのだ(と思う)。とにもかくにも、世界を股に掛ける巨匠のこのフレンドリーさに、ジョン・ウー信者はさらに心を鷲掴みされるわけですよ。
『レイン・オブ・アサシン』では、ジョン・ウー監督のハリウッドでの代表作『フェイス/オフ』(97)を彷彿させるヒロインの顔の整形手術シーンがある。脚本を書いたスー・チャオピン監督によると「意識したわけではありません。でも無意識のうちにジョン・ウー作品の影響が出たのかもしれませんね」とのこと。隣に座っていたジョン・ウー監督は「この作品のテーマは"人生のやり直し"。顔を変えることが重要なのではなく、新しい人と出会うことで新しい人生を切り開いていくことが大切なんです」と言葉を繋ぐ。ビンボーな少年時代にメゲず、香港映画界で名を挙げ、さらにハリウッドでヒットメーカーになったジョン・ウー大師の言葉だけに説得力あるなぁ。
人生のやり直しがテーマの本作。"人生のやり直し"願望があるのかという質問に対して、両監督はこう語った。 ジョン「今のままで大丈夫。自分の顔も性格も気に入っているので、変えなくていいと思います(笑)。今の自分は好きなことができ、良き仲間と出会えているから、不満はありません。でも、あまりにも映画が好きなもので、『あぁ、もし自分が日本人だったら、黒澤明監督に弟子入りしたのに』とか『あぁ、自分がフランス人だったら、ヌーベルバーグの巨匠たちの助監督に就いたのに』など考えたことはあります。ずっと若いころのことですよ(笑)」 スー「実は私は29歳までエンジニアの仕事をしていました。でも、どうしても映画の仕事がしたくて、30歳になる直前に仕事を辞め、映画界に飛び込んだんです。たまに以前の職場の同僚や先輩に会うことがありますが、『自分のやりたいことを若い頃にやっておけば良かった......』と愚痴っぽいことを聞くこともあります。とはいっても、新しい世界に飛び込むのは勇気がいること。たまたま自分はラッキーで、いい出会いが続いたように思いますね」台湾出身の俊英スー・チャオピン
監督。「ハリウッドで挑戦する
よりも、自分は手塚治虫さんのように
多彩な物語を作ること第一に考え
たい」と話す。

『グリーン・ディスティニー』(00)のミシェ
ル・ヨー姐さんが活躍するソードアクション
大作。中国、韓国、台湾、香港から豪華アジア
ンスターが集結!
お2人とも、出会いを大切にして人生を切り開き、運命をつかみ取ってきたということですな。
黒澤明の弟子になるという夢は果たせなかったジョン・ウー監督だが、「日本映画を撮るチャンスなら、これからありますよね?」と問い掛けると、大きくうなずいてみせた。
ジョン「今、2つの企画が進んでいます。今朝もスタッフとその打ち合わせをしていたんです。ひとつは武士道がテーマで、もうひとつは現代劇になりそうです。私は米国でも映画を撮ってきましたが、違う文化の国でその国の人たちと一緒に仕事をすることで、その国の文化や新しい仲間たちのことを理解するようにしているんです」

台湾版『花より男子』でヒロインを演じたバー
ビー・スーが妖艶な女殺し屋に。他人が持って
いるものは何でも欲しくなる困ったちゃんだ。
ジョン・ウー監督は『レッドクリフ』の前後にもハリウッドからカムバックコールが寄せられていたが、『レイン・オブ・アサシン』を優先させるためハリウッドのオファーは断ったそうだ。有望な後進のためにひと肌脱ぐとは、ジョン・ウー監督らしいではないか。今回、資金集めや撮影外のトラブル処理はすべてジョン・ウー監督が引き受けてくれたことに、24歳年下のスー・チャオピン監督は感謝しているのだった。両監督の間にも『男たちの挽歌』のマークとホーのような男の友情が芽生えているらしい。ジョン・ウー監督、ぜひ日本映画界にもその男気をもたらしてください!
今回はスー・チャオピン監督のアシストに回ったジョン・ウー監督だが、数少ない演出シーンは、娘のアンジェルス・ウーが登場する殺陣シーン。アンジェルスは映画監督になることを目指しており、そのために俳優体験を申し出たとのこと。
ジョン「本当は演出はやりたくなかったんですが、スー監督が3つの現場を同時に撮影しなくてはならなかったため、私も手伝うことになったんです。娘の前で私はひどく緊張してしまい、うまくそのシーンの演出を説明できませんでした(苦笑)。またワイヤーワークを使うため、娘が事故に遭わないか心配で心配でスタッフに『絶対に大丈夫か?』と何度も聞き直しながら、現場をウロウロしていました。娘は私に現場にいて欲しくなかったようです(笑)」

殺し屋たちとの戦いで重傷を負ったヒロイン
に代わって、年下の夫(チョン・ウソン)
が応戦。でも、殺し屋が現われてから刀を
磨ぎ始めるのんびり屋さん。
香港時代は仕事に追われて家庭にほとんど帰ることがなく、子どもたちに父親らしいことができなかったことをジョン・ウー監督は猛省しており、子どもの前では無条件で親バカになってしまうのだ。アクション映画の巨匠の人間臭い一面ですな。顔が父親似のアンジェルス・ウーは序盤にあっけなく殺される賞金稼ぎ役で登場するのでお見逃しなく。
最後は、スー・チャオピン監督がジョン・ウー監督の素顔をこのように評した。
スー「ジョン・ウー監督が現場でイライラしているところは見たことがありません。いつも笑顔で見守ってくれました。今回、彼と一緒に仕事をすることでいろいろと学ばせてもらいましたが、いちばんの収穫はテクニック的なことよりメンタル面についてです。ジョン・ウー作品には"義"を重んじる情の深い人物が描かれますが、実際の本人がそうなんです。映画には監督の人柄がそのまま現われるということを実感しました」

霊験あらたかな達磨大師のミイラを巡って、
殺し屋たちは争奪戦を繰り広げる。ジョン
・ウー作品に付き物の白い鳩の代わりに、白い
小鳥が出てきます。
最後の写真撮影もジョン・ウー監督はサービス精神旺盛に応えてくれたことは言うまでもない。巨匠との接見時間は、あっという間に過ぎていった。
『レイン・オブ・アサシン』の魅力は、ハリウッド的な軽快なストーリー展開と洗練されたアクションシーンに加え、主人公の夫婦が過去のわだかまりを捨てて、新しい絆を築いていくというアジア的な"和の心"が根底に据えてある点だ。殺し屋たちが戦いの中で、武力だけでは自分の求めているものは手に入らないことに次第に気づいていく、繊細な内面描写もハリウッド娯楽大作ではお目にかかれないもの。ハリウッド帰りのジョン・ウー監督が、手塚治虫の伝奇アクション『三つ目が通る』などを愛読していたというスー・チャオピン監督のユニークな発想力をうまく生かした作品といえそうだ。また、ジョン・ウー監督による日本映画の行方も気になるところ。国境を越えて活躍する"男気の伝道師"ジョン・ウーの行くところ、男気の花が咲く!
(取材・文=長野辰次)
『レイン・オブ・アサシン』
監督/スー・チャオピン、ジョン・ウー 製作/ジョン・ウー、テレンス・チャン 脚本/スー・チャオピン 衣装/ワダ・エミ 出演/ミシェル・ヨー、チョン・ウソン、ワン・シュエチー、バービー・スー、ショーン・ユー、ケリー・リン、レオン・ダイ、グオ・チャオドン、ジャン・イーイェン、パオ・ヘイチン、ペース・ウー、リー・ゾンファン、アンジェルス・ウー 配給/ブロードメディア・スタジオ、カルチュア・パブリッシャーズ 8月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
<http://www.reignassassins.com>
●ジョン・ウー
1946年中国・広州生まれ、香港出身。ジャッキー・チェン出演作『カラテ愚連隊』(73)で監督デビューする一方、コメディ映画『Mr.BOO!』シリーズのスタッフとしてキャリアを重ねる。チョウ・ユンファ主演『男たちの挽歌』(86)が大ヒット。『男たちの挽歌II』(87)、『狼 男たちの挽歌・最終章』(89)、『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』(91)と連発し、香港ノワールなるジャンルを築く。ハリウッドに進出し、『ハード・ターゲット』(93)、『ブロークン・アロー』(96)を発表。さらにニコラス・ケイジ主演『フェイス/オフ』(97)、トム・クルーズ主演『M:I-2』(00)も大ヒットさせる。『レッドクリフPartI』(08)、『レッドクリフPartII 未来への最終決戦』(09)も関係者の予想を遥かに上回る興収結果を残した。二丁拳銃(武侠ものの場合は二刀流)をはじめとするスタイリッシュなアクションシーンから、"バイオレンスの詩人"と呼ばれる。早乙女愛が出演した『南京1937』(95)では製作を手掛けた。
●スー・チャオピン
1970年台湾生まれ。水野美紀主演『現実の続き 夢の終わり』(00)、宮沢りえ主演『運転手の恋』(00)、ホラーオムニバス『THREE/臨死』(02)の最終話『GOING HOME』などの脚本を担当。江口洋介主演のホラーサスペンス『シルク』(06)では脚本&監督を手掛け、台湾金馬賞の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞にノミネート、最優秀視覚効果賞を受賞し、注目を集めた。映像作家として、『ブラック・ジャック』をはじめとする手塚治虫の漫画から大きな影響を受けたと語る。
カーラジオからメタリカが!! 全編に通底する"音楽の魔法"
──節電で大変そうな今年の夏に、暑さを忘れられるDVDを、お化けメイクの小明ちゃんほか、本誌になじみの深いお歴々が、厳選レビュー!!
■『メタルヘッド』
心に深い傷を負った親子のもとに、ロン毛のメタル野郎が現れる。好き放題暴れまくる彼に、しかしむしろ親子は癒やされていき──。メタル男が出てくる映画ならば、この人が語るしかないでしょう! 元メガデスのマーティ・フリードマン、よろしくお願いします! 交通事故で母親を亡くし、心に深い傷を負った13歳の少年・TJと、同じく妻を失った悲しみから腑抜けてしまったTJの父親・ポール。2人はTJの祖母・マデリンが独りで暮らす実家に戻り、精気のない毎日を送っていた。そこへ、自らを「ヘッシャー」と名乗るロン毛で半裸のメタル野郎が現れる。 彼はマデリンの家のガレージに住み着き、大音量でヘヴィメタルを流したり、違法にケーブルテレビ回線を引いてポルノ番組を見たりとやりたい放題。さらに、TJが淡い恋心を抱くスーパーのレジ係・ニコールをも巻き込みながら、彼らの日常をめちゃくちゃにしていく。しかし、そんなヘッシャーの行動は、暗く沈んでいたTJたちの人生に光を灯し......。 そんな荒くれ者のメタル野郎が主役の『メタルヘッド』を、元メガデスのギタリストであるマーティ・フリードマンさんは果たしてどう観たのか!? ──こちら、邦題がずばり『メタルヘッド』という......。 マーティ・フリードマン(以下、マ) これ全然メタル映画じゃないじゃん!(笑) ──ですよね(笑)。 マ 『グローバル・メタル』(メタル界の重鎮が多数登場するドキュメンタリー『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』の続編)みたいなのを期待すると、ガッカリしちゃうかも。タイトルロゴまでメタリカのパロディだし。 ──原題は『HESHER』で、主人公の名前がタイトルになってますね。こちらもメタリカのロゴはパロってはいますが。(C)2010 Hesher Productions, LLC.
マ 「ヘッシャー」っていうのは、今ではもう死語なんだけど、長髪でボロい格好してハッパ吸ってるような、メタラーっぽい人たちを指す俗語なんです。「ヒッピー」とか「ギーク」みたいに、特定の人をカテゴライズする言葉。だから、人の名前として使われてるのはちょっと変というか、面白いんですね。 ──なるほど。まあ、意味合いとしては「メタルヘッド」(=メタル好き)とほぼ同じなんですね。映画ではこのヘッシャーが、交通事故で母親を亡くしてふさぎ込んでいる少年にまとわりついて乱暴狼藉をはたらくわけですが、実際に、マーティさんの周りにそういう荒くれ者はいましたか? マ メタラーは意外とオタクに近いんで、周りに被害を及ぼすようなイメージはないです。どちらかというと、ハッパ吸いすぎてヘロヘロになっちゃってる感じ。悪いことする人もいたけど、映画のヘッシャーみたいに、車を燃やしたりよその家で暴れたりはしないです(笑)。 ■全編を彩る陰鬱な雰囲気が作品に特別な力を与える ──で、本作は、劇中でメタリカの楽曲が使われているのがセールスポイントになっているわけですが。 マ ぶっちゃけ、ストーリーには関係ないですよね。たまにヘッシャーのカーステレオから流れてきたりするだけだから。でも、それでキャラ付けができて、映画の宣伝にもなっちゃう。それは、メタリカの魔法ですね。 ──かつてマーティさんの在籍したメガデスは、デビュー直前のメタリカをクビになったデイヴ・ムステインが作ったバンドですが、マーティさん個人はメタリカお好きなんですか? マ 大好き! メガデスに入る前から超ファンです。僕はいろんな理由があってメガデスを脱退しましたけど、ひとつは、B級のメタリカでいたくなかったんですね。メタリカはジャケ写も曲もイメージも何もかも理想的。彼らのライブに行くと、ほんとにトランス状態で「ヘイ! ヘイ!」ってなっちゃう。でも、メガデスはプログレみたいなとこがあるから、たまにメタリカの魔法に近づいても、急に変拍子になってヘッドバンギングしにくかったりする。メガデスは、永遠に彼らよりカッコイイ音楽は作れない。顔は僕らのほうがイケメンだったかもしれないけど(笑)。 ──メガデスのダークでテクニカルな部分が好きっていう人も、大勢いますよ。 マ 僕らもメガデスに誇りを持ってたけど、やっぱりメタリカは王道じゃん。メタリカがマクドナルドだとしたら、メガデスはバーガーキング(※マーティさんは大のマック好きでもある)。同じ音楽をやってる限り、ずっと比較されるし、自分でも比較しちゃう。 ──ちょっと脱線しちゃいましたが、映画の内容については? マ はっきり言って、悲しくなりました(笑)。ヘッシャーが陰気くさい少年の家庭を引っかき回して、家族を再生していくっていうコンセプトは素晴らしいんだけど、とにかく鬱なシーンの連続で......。 ──マーティさんて、基本的にキラキラしたものがお好きですもんね。 マ それは、ハッピーな感情が伝わってくるから。AKB48とか、聴いた瞬間にテンション上がるじゃん(笑)。でも逆に、ザ・キュアー(英国のポスト・パンク~オルタナティヴ・ロックバンド)みたいな、暗い気分になれる音楽も好き。そういう意味では、『メタルヘッド』も、ザ・キュアーのアルバムと同じように、人を落ち込ませる力のある、特別な作品ですね。 ──役者さんの演技については? マ 最高! 低予算のインディーズっぽい作風だから、俳優の演技力がよけいに際立ってます。あのナタリー・ポートマンが、スーパーで働くさえないメガネ女を完璧に演じてましたし。あんなに輝かないポートマンは初めて見ました。あと、映画の舞台になってる町が、僕が育った場所によく似てたんですね。アメリカの、郊外の寂しげな町。そこにはあまり幸福でない家庭もあって、そういう家を覗くことは、アメリカの一部を覗くことでもあるんです。監督は、そのあたりをすごく丁寧に描いていたと思います。タイトルはメタルメタルしてるけど、中身は非常にアーティスティックですね。 (文・構成/須藤 輝)マーティ・フリードマン氏。
マーティ・フリードマン アメリカの世界的ヘビメタバンド、メガデスの元ギタリスト。アイドルソングから浜崎あゆみ、果ては八代亜紀までを愛する、極度のJ-POP&演歌ヲタク。9月14日にJ-POPカバーアルバム第2弾『TOKYO JUKEBOX2』を発売。 【宣伝担当者おすすめポイント】 メタリカの楽曲にファン狂喜!? CM、MTV、短編映画で数多くの賞に輝いたスペンサー・サッサー監督の長編デビュー作であり、ナタリー・ポートマンが自らプロデューサーを兼任しサンダンス映画祭で絶賛された注目作です。ジョセフ・ゴードン=レヴィットのワルな演技にも脱帽で、メタルに詳しくない人でも十分楽しめます!
『メタルヘッド』 発売/ポニーキャニオン 監督/スペンサー・サッサー 出演/ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ナタリー・ポートマンほか ブルーレイ版が4930円、DVD版が3990円(共に税込)にて9月21日に発売 母親の死から立ち直れないでいる13歳の少年・TJの前に突如現れた、ロン毛&半裸の傍若無人なメタル野郎・ヘッシャー。彼は下品で暴力的な言動によって次々とトラブルを巻き起こすが、その過激なバイタリティに影響され、いつしかTJは生きる力を取り戻していく。 ■【DVD特集】この夏観るべき激ヤバ映画8本! ・女優として一皮むけた演技に注目!! 『軽蔑 ディレクターズ・カット』 ・ヤンキー嫌いも必見のリアルヤンキー映画 『BADBOYS』 ・ホラーマンガの巨匠3人の映画企画 "古潤茶"に岩井センセイが息子の売り込み!? ・原紗央莉ちゃんがやり切るすがすがしさよ!! 『牙狼〈GARO〉』&『呀〈KIBA〉』 ・陰鬱すぎる『不思議の国のアリス』その暗さがクセになりそう!! 『アリス』 ・"メンヘラビッチ"な妻をシャルロットが好演!! 『アンチクライスト』 ・ナタリー・ポートマンがサエないメガネ女を好演!! 『メタルヘッド』 ・生身のアクションが光るタイ映画 『マッハ! ニュー・ジェネレーション』
芸能界屈指のパンダマニア・藤岡みなみが語る「パンダの魅力」

2011年4月、待ちに待たれた2頭のパンダの一般公開が上野動物園で開始された。この波を受けてかどうかは分からないが、芸能界にも地味~にパンダブームが押し寄せ、かねてより「パンダ好き」を主張していたタレントたちにもスポットライトが当たりつつある。
今年7月、アドベンチャーワールド(和歌山県)のパンダの魅力をPRする「パンダ大使」に任命された岡本玲や、スターダストプロモーションが"ももいろクローバーの妹分的存在"として手掛けているグループ・私立恵比寿中学の廣田あいか、アキバの"メイド系アイドルユニット"アフィリア・サーガ・イーストのコヒメ・リト・プッチなど、パンダの魅力に取りつかれ、「パンダ好き」をアピールする女性タレントは増えている。
そんな中、芸能界屈指とウワサされるほど年季の入った「ガチパンダマニア」がいるという。その名も藤岡みなみ、23歳。上智大学を今春卒業したばかりの才媛だが、常にパンダグッズを持ち歩き、部屋の中もパンダグッズだらけ(その数約500点!)。大学ではパンダをテーマとした卒論を書き上げ、さらに「人間とパンダによる音楽ユニット」を称する「PANDA 1/2」なるバンドのボーカルとしても活動しているというのだ。
幼少のころから13年に渡ってパンダに愛情を注ぎ続け、最近ではアニメ映画『カンフー・パンダ2』をPRする「webオピニオン」に就任するなど、何もかもパンダ尽くしの人生を送っているという彼女に、一体パンダの魅力とはなんなのか? 彼女にとってパンダとはいかなる存在なのか? そして、もともとは子役として芸能活動をスタートさせた彼女が、パンダマニアのタレントとしてこれからどういった方向に向かうのか? 根掘り葉掘り聞いてみた。
──今年4月、上野動物園でのパンダ一般公開日に、一番乗りで列に並んでメディアで取り上げられていましたね。公開は朝の10時からなのに、前日の午後2時から、しかも一般客として並んでいたそうですが、藤岡さんにそこまでさせるパンダの魅力って、一体なんなのでしょうか?

子どものころに使ってた手袋を縫い合わせた
というTシャツ。
藤岡みなみ(以下、藤岡) まず、完璧なデザイン性ですね。白と黒の2色しか使ってないのに、なぜあんなにポップなのか、と。「あんなに洗練されたデザインの野生動物がいていいわけない!」と思うほどです。パンダって「猛獣」扱いで、飼育員でも2歳以上のパンダは直接は触っちゃいけないんですよ。基本的にはかわいいのに、実は強くてカッコイイ。白と黒のデザインが、その二面性をそのまま表現しているところにもしびれます!
しかもあんなに大きい体をしているのに、笹しか食べないんですよ? 雑食なので出されればリンゴなんかも食べるんですけど、99%は笹や竹なんです。それに昔々は肉食獣だったから、いまだに肉食獣の腸をしていて、食べた分の栄養の17%しか吸収できないんですよ。カロリーが足りないからたくさん笹を食べるし、よく寝てるんです。そういう不器用なところもめちゃくちゃかわいいです! だって、肉食獣から「笹しか食べない生き物」に進化するなんて、もっと上手い進化があると思いません?(笑) 笹も人間みたいに手に持って食べるし、生態にいちいちユーモアを感じるんです。
──でもパンダって、「よく見ると目が怖い」とも言われますよね。
藤岡 怖くないです! それは、ちゃんとパンダのことを見てない人の意見だと思います。確かに目の回りの黒ぶちの奥の瞳は吊り目っぽく見えるけれど、実はまつ毛もあって、すっごくかわいらしいんですよ? もっとちゃんと近くで生のパンダを見てほしいです。やっぱり、実物のパンダが一番かわいいので。
特に最強なのは、子どものパンダです。一頭でもかわいいのに、子パンダが2頭いるだけで「絶対狙ってるだろ」みたいな、じゃれ合って追いかけ合って、ディズニーアニメみたいな動きをするんです。絡まり合ってもつれて、どっちがどっちか分からなくなって、なんかでっかいおにぎりみたいになるのが最高にかわいいです! ああ、パンダにまざりたい。もう、憧れの生き物ですね。パンダになりたいです!!
──そんな「パンダになりたい」藤岡さんが、パンダを好きになったきっかけとはなんだったんでしょう?
藤岡 小3の時に上野動物園で初めて見て、衝撃を受けたんです。お母さんに「かわいい! ぬいぐるみみたい! 動いてる! 生きてるよ! あんなファンシーなものが!」って訴えて。さらに決定的だったのは、小5の時に神戸に転校したんですけど、同じタイミングで神戸市立王子動物園にパンダがやって来たことですね。自宅から徒歩10分くらいのところにあって、運命を感じたんです。「私が来たからパンダも来たんだ!」って。

子どものころからパンダに夢中!
──そこからどんなパンダマニア活動を?
藤岡 グッズをひたすら集めました。鉛筆、消しゴム、筆箱......なんでもパンダグッズにして、図工の時間も全部パンダばかり描いたり作ったり。小・中・高・大と、ずっと周りから「パンダちゃん」って呼ばれ続けて。小学生のころの一番のお気に入りグッズは、お年玉で買ったパンダのかぶり物です。パンダの着ぐるみの頭の部分だけ、みたいなやつで、顔がすっぽり隠れるんですけど、それをかぶって友達の家に行ったり、エレベーターに隠れて乗ってきた友達をびっくりさせるっていういたずらをよくやってました。
手作りもしましたね。パンダの耳を作ってカバンに縫い付けたり。今日着てるシャツには、子どものころに使ってた手袋を縫い合わせてます。パンダイヤリングも付けてますよ。でも昔は、パンダキャラに便乗しているところもあったんですよ。転校生だから周りにいち早く覚えてもらいたくて、っていう気持ちもありました。
今、自分の部屋はパンダグッズでパンパンになってます。ぬいぐるみとか、モコモコしたものが多くて暑苦しい(笑)。早く自分の部屋から移して、パンダミュージアムを作りたいですね。
──パンダを好きになったのと同時期、小学3年生から子役としてのタレント活動も始めています。
藤岡 『ガラスの仮面』(白泉社)と『こどものおもちゃ』(集英社)というふたつのマンガ作品に影響されて、子役や女優になりたいって思ったんです。小6の時には、昼ドラ『君のままで』(TBS系、00年12月~01年2月)に重要な役でレギュラー出演させていただきました。仕事は楽しかったんですが、月曜から木曜まで収録、金曜日にしか学校に行けないということが辛くもあって......。
──当時、子役ファンの間では、「すごい演技力のある子が現れた!」と話題になっていました。当時の公式サイト「Go!Go!みなみパンダ」では、自筆のパンダイラストを大量にアップされたりもしてましたね。
藤岡 え? あんなサイトまでご存じなんですか!?(笑) サイトは母親の影響で始めたんです。もうネット上にはアーカイブも残ってないですけどね。
──パンダ尽くしのサイトで、本当にパンダが好きなことが伝わって来るサイトでした。ただ、その後中学生になって芸能界を引退。大学2年で復帰されるまで、芸能界から遠のくことになります。とても才能のあるタレントさんだと思っていたので、正直、当時はかなり残念でした。
藤岡 学校にちゃんと通って、行事にも参加したいという気持ちがやっぱり強くなったんですね。それと、当時はまだ子どもで思春期だったし、写真集のお仕事なんかについても悩んじゃって。それで一度引退して、その後すごく学校生活を頑張るようになりました。学級委員や体育祭委員も積極的に務めたりして。
高校の3年間は、部活でチアリーディングをやっていました。全国で準優勝したり、ヨーロッパ選手権に出場するためにモスクワに遠征もしましたね。本当、チア漬けの3年間を送っていました。もちろん、並行してパンダマニア活動は続けてましたよ。大学(上智大学総合人間科学部社会学科)ではパンダに関する研究を行い、卒論のテーマにも選びました。とてもいい経験をしたし、自分を成長させてくれた学生生活でしたね。

イヤリングもパンダ!
でも、芸能界を辞めてしまったことに対して、ずっと心残りではあったんです。なので、大学2年の時に芸能界に復帰しました。3年の時には深夜のバラエティー番組『キャンパスナイトフジ』(フジテレビ系、09年4月から10年3月放送)にレギュラー出演が決まって、バラエティー番組の楽しさと厳しさを学びました。
──今は「PANDA1/2」なるユニットでアーティスト活動も行っています。8月24日には配信限定の最新シングル「夏をぶっとばせ -WILD SUMMER 2012- 」がリリースされました。フリッパーズ・ギターや小沢健二など、渋谷系のパロディー的な要素が随所にちりばめられていますね。
藤岡 90年代の音楽が大好きなんですよ。高校生の時に川本真琴さんや岡村靖幸さん、スチャダラパーさんにすごくハマって。明確に「渋谷系」ってものを認識したのは、PANDA1/2の今のプロデューサーであるJames Panda Jr.に会ってからですね。
──それ以外の趣味も含めて、サブカルチャーっぽいものが多いですよね。サブカルチャーが好きなんですか?
藤岡 人に「これ面白いよ、これ知らなかったでしょ、読んでみて」って言うのがすごい好きなんですよ。だから必然的に、サブカルっぽかったりインディーズっぽいものを好きになるのかも。みんなが好きなら私が教える必要もないから。感性でピンとくる感じが好きなんです。でも「みんなが好きなものは好きじゃない」みたいな態度はよくないし、いいものはいいって言わないと、とは思ってます。
──パンダの話に戻りますが、最も好きなパンダは?
藤岡 神戸市立王子動物園の「旦旦(タンタン)」です。00年に私の転校と同時にやって来たパンダで、顔が好きなんです。口角が上がってて、笑ってるみたいで。「震災のあった神戸でも、もうパンダを呼ぶことができるんだ」っていう、復興の象徴なんですよね。神戸のチアリーダーだなって思ってます。タンタンになりたいです。
──パンダマニアとしての夢はありますか?
藤岡 まずは、パンダの里親になりたいです。パンダに触ることができるのは中国のパンダ保護研究センターだけなんですが、そこでは、寄付のような形で10万円程支払うと、名前を付けることができて、会いに行ける「里親制度」が設けられているんです。
それと、パンダについての情報をもっと広めていきたいです。パンダって絶滅危惧種なんですね。そうなった主な原因は、人間による森林伐採。かわいいということだけじゃなくて、パンダや園周辺にあるさまざまな側面に注目してほしいと思います。また、実は日本は、中国に次いでパンダの繁殖に成功している国なんです。これは素晴らしいことだと思います。
タレントとしては、日本パンダ保護協会名誉会長であり、60年間パンダの研究をされている黒柳徹子さんと、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出て、パンダ対談をすることですね!
──では最後に。藤岡さんにとってパンダとはなんですか
藤岡 ロマンですね。パンダになら食べられてもいい......かな?
(取材・文=岡島紳士)
●ふじおか・みなみ
1988年8月9日、兵庫県生まれ。小学校3年生の時に上野動物園で生で初めてパンダを見て以来、その魅力のトリコに。以降現在に至るまで13年間、パンダの知識を深め、パンダグッズを収集するなど、パンダマニアとしての活動を続けている。また小3から子役としても活動するも、中学で一時引退。08年に芸能活動を再開した。人間とパンダによる音楽ユニット・PANDA 1/2の5thシングル「夏をぶっとばせ ~WILD SUMMER 2012~」が、iTunesほかにて好評配信中。
藤岡みなみオフィシャルブログ「パンダGo!Fight!Win!」<http://ameblo.jp/373panda/>
Twitter<http://twitter.com/fujiokaminami>
PANDA 1/2オフィシャルサイト <http://www.panda2bunno1.com/>
「夏をぶっとばせ ~WILD SUMMER 2012~」<http://itunes.apple.com/jp/album/id454698344?i=454698350>
"メンヘラビッチ"な妻をシャルロットが好演!!『アンチクライスト』
──節電で大変そうな今年の夏に、暑さを忘れられるDVDを、お化けメイクの小明ちゃんほか、本誌になじみの深いお歴々が、厳選レビュー!!
■『アンチクライスト』
"【小明の『アンチクライスト』レビュー】 メンヘラの女子って、エロいんですよ! 「メンヘラビッチ」なんて言葉もありますけど、心を病んでる女は他人に依存したいんで、やたらと求めちゃうって、知り合いのプレイボーイが言ってました。(C)Zentropa Entertainments 2009
『アンチクライスト』のシャルロット・ゲンズブールもそう。夫とのセックス中に息子が窓から落ちて死んでしまって、それを引きずって思い詰めちゃう妻の役なんですけど、ほんと、病んだ人間の生活感が体からしみ出てる。セラピストでもある旦那さんは、彼女の精神異常の原因は夫婦が「エデン」って呼んでる森にあると診断して、そこへ連れてって治療するんだけども、どんどん悪いほうへ転がっちゃうわけですよ。 もうね、私も鬱持ちだった時期があるんで、自分に向けられた発言をすべてマイナスにとらえてしまったりとか、よくわかります。あのとき私の周りにいた人たちは迷惑だったろうな~。あ、でも私はビッチじゃなかったよ! それはさておき、ここからのシャルロット・ゲンズブールのメンヘラビッチぶりがハンパない。旦那の乳首をかみ切ったり、馬乗りになって「ぶって! ぶって!」って叫んだり、森の中で全裸オナニーしたり(すげー!)、もうセックス中毒ですよ。でも、ほんとはそんなふうに肉欲に溺れる自分がイヤで、女としての自分がイヤで、汚らわしい女性性から解き放たれたくて、彼女は自分のアソコを......キャー! 痛い、痛いよ! よく男の人が「タマが縮み上がる」みたいなこと言いますけど、その感覚がわかりました。「キュッ!」ってなります。 監督のラース・フォン・トリアーは、自身の鬱病のリハビリでこの映画を撮ったらしいけど、観てるこっちが病むわ! (構成/須藤輝) (ヘア&メイク/梁取亜湖) (写真/田中まこと) 【宣伝担当者おすすめポイント】 カンヌ映画祭で賛否両論を巻き起こした問題作。難しいテーマの映画と思いきや、サスペンス要素もたっぷりなので最後まで飽きさせません! 節電の夏、部屋を暗くして観ることをお勧めします。ブルーレイにはR15版本編を、さらにブルーレイ・DVD共通で日本語吹き替え版を収録と、特典も充実。何度でも楽しめる稀有な一枚です。
『アンチクライスト』 激しいセックスの最中に、息子を転落事故で亡くしてしまった夫婦。妻はショックと自責の念から心を病んでしまい、セラピストの夫は、2人が「エデン」と呼ぶ森の山小屋で精神療法を試みる。しかし、楽園であるはずのエデンは彼らに恐怖を与え、妻の精神状態はさらに悪化していく。 発売/キングレコード 監督/ラース・フォン・トリアー 出演/ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブールほか ブルーレイ版が5040円、DVD版が3990円(共に税込)にて9月7日に発売
小明(あかり) 1985年1月14日、栃木県生まれの千葉県育ち。エプロンアイドルとして華々しくデビューするも、今ではなぜかフリーのアイドルライターに。地デジ化にもついていけずにテレビはDVD専用なので、知らない間に映画通に。
■【DVD特集】この夏観るべき激ヤバ映画8本! ・女優として一皮むけた演技に注目!! 『軽蔑 ディレクターズ・カット』 ・ヤンキー嫌いも必見のリアルヤンキー映画 『BADBOYS』 ・ホラーマンガの巨匠3人の映画企画 "古潤茶"に岩井センセイが息子の売り込み!? ・原紗央莉ちゃんがやり切るすがすがしさよ!! 『牙狼〈GARO〉』&『呀〈KIBA〉』 ・陰鬱すぎる『不思議の国のアリス』その暗さがクセになりそう!! 『アリス』 ・"メンヘラビッチ"な妻をシャルロットが好演!! 『アンチクライスト』 ・ナタリー・ポートマンがサエないメガネ女を好演!! 『メタルヘッド』 ・生身のアクションが光るタイ映画 『マッハ! ニュー・ジェネレーション』
「うしじまいい肉は氷山の一角!?」破廉恥すぎるエロコスプレーヤーたちの実情

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年2回の巨大同人誌即売会・コミックマーケット(以下、コミケ)80。今回もイベントは無事終了したが、その影ではルール無用のエロコスプレーヤーによる騒動が起こっていた。
イベント直後からささやかれているのが、有名コスプレーヤー・うしじまいい肉(以下、うしじま)がコミケを出入り禁止になったというウワサだ。コミケでは法人の発行物を販売することは禁止されているが、うしじまは自分のサークルのスペース内で法人発行のDVDを販売していたというのだ。商業利用されているJANコードが彼女が販売していたDVDに記載されており、実際そのJANコードを逆引きしてみると「Predator Rat」という名称が表示される。これは彼女の運営するサークル名ではあるものの、法人か否かははっきりしないため、「法人の発行物を販売」というのはあくまでウワサに過ぎない。しかし、一方では、別の指摘もある。
「JANコードは法人格を持たない個人でも取得できるので、コードが記載されているからといって即法人、と判断することはできません。むしろ問題視すべきは、昨年冬のコミケで彼女が企業ブースで自身のDVDを委託販売したことです。たとえ法人が発行したものでなくても企業ブースで販売したのであれば、もはや同人とは言えません」(ある事情通)
1日に十数万人が参加する会場で特定の人物を監視することは困難で、サークル参加を拒否しようとしてもサークル名や住所を変更してしまえばすり抜けられてしまうため、公式には「出入り禁止」は存在しない。しかし、うしじまは限りなく黒に近いグレーな存在だと言えるだろう。
■「発禁」にも反省せず開き直り
しかし、うしじまのような存在は氷山の一角に過ぎない。
「エロコスROM」とは、コスプレーヤーが自身のエロいコスプレ姿を撮影したDVDや写真集のジャンルだが、被写体であるコスプレーヤー本人がDVDや写真集を手売りしている光景は、さまざまなテーマの同人誌が乱立するコミケの中でも一種異様だ。
しかし、この「エロコスROM」、コミケのたびに販売停止となる事例が非常に多い。コミケでは、主催者であるコミックマーケット準備会が販売物を「見本誌」として提出させチェックするが、「性器の消し」などで問題のあるものは販売停止の指示を受ける。一般にコミケでの「性器の消し」の要求は商業販売物よりも厳しいとされているのだが、「エロコスROM」は消しの薄さが目立っている。
「マンガを参考に『性器の消し』をしても、小陰唇は消えても大陰唇は見えてしまう。あるいはモザイクが薄いと『消しを入れているフリをしている』とあらぬ疑いをかけられることも。当局にワイセツ物の疑いがあると逮捕される恐れもあります」(前出・同)
今回のコミケで販売停止処分を受けたあるレイヤーは、ブログで「要するにモザイク物は漫画では良くても実写ではもうNGだそうなんです」と記している(http://karinnonone.blog61.fc2.com/blog-entry-421.html)。
中にはわざと販売停止になることで「コミケで発禁」をうたい文句にして売り上げを伸ばすことを考えるコスプレーヤーもいるのだとか。前出のうしじまは自身のTwitterで、
「今や18禁販売停止になったくらいじゃ箔なんかつかないっすよ」
と、ツイートしている(http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/102410496187183104)。この発言は、これまでそのように考えている者が(彼女も含めて)多数いることを裏付けしている。
エロコスプレーヤーたちの目的は目立つことかなのか、はたまたカネなのか。いずれにせよ、破廉恥すぎる彼女たちの行動から目が離せない。


















