「放送1時間後には英語字幕付きでアップロード」現地のニーズに応える日本アニメの未来形は?

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カンファレンスの光景。
 今年9月に発行された、(財)デジタルコンテンツ協会の『デジタルコンテンツ白書2011』によれば、2010年の国内のコンテンツ産業の市場規模は12兆641億円とされており、前年比0.8%減だ。震災の余波を受け、今年の市場規模はさらに縮小していると予想される。いずれにせよ、国内のコンテンツ市場は07年の13兆2,450億円をピークに減少が続いている。こうした中、海外に新たな市場を求めるのは必然ともいえるだろう。  今回は、10月27日・28日の2日間にわたって東京・秋葉原UDXで開催された「東京国際アニメ祭2001秋」(主催:経済産業省/一般社団法人日本動画協会、後援:東京都)の「アニメ ビジネスマッチング&カンファレンス」を軸に、海外市場の展望について記していく。イベントの活況については、後藤勝氏が詳しくリポートしている(参照記事)ので、こちらも参照していただきたい。  27日に開催された「アニメーションのヨーロッパマーケット事情と、日本作品の世界市場におけるトレードギャップ」「海外のファン、マーケットの動向」の2つのカンファレンスでテーマとなったのは、日本のアニメ産業が海外で市場を獲得していくために必要な、市場となり得る国々の歴史と現状であった。  そもそも、このタイトルでカンファレンスが設定された背景には、2011年5月に経済産業省の「クール・ジャパン官民有識者会議」で提言が取りまとめられたことがある。ここでは、具体的な施策として国際共同製作の推進、国際事業展開をプロデュースできる人材の育成、必要な資金や人材の供給、海外情報収集体制の強化などが示されている。  近年ではヨーロッパ、特にフランスを中心に日本のアニメは大きな市場を獲得しているとされるが、その背景や現状は明らかではない。「アニメーションのヨーロッパマーケット事情と、日本作品の世界市場におけるトレードギャップ」では、モデレーターの江口美都絵氏(東京国際アニメフェア渉外担当プロデューサー)を除き、登壇者が外国人という顔ぶれで、ヨーロッパ各国のアニメ産業の現状が語られた。
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Alfio BASTIANCICH氏。
 結論からいえば、ヨーロッパにおいて日本のアニメ産業は、市場としてはいまだ開拓国あり、現地では日本側との共同製作に大きな可能性を見出しているといえる。登壇した、イタリアアニメーション協会プレジデントのAlfio BASTIANCICH氏によれば、ヨーロッパ全体では約300の制作会社があり、市場規模は7億ユーロあまり。製作数はテレビアニメが年間放映時間で750時間分、さらにアニメ映画が年間15本程度だという。  もとより、いくつもの国が近接しているヨーロッパではアニメの市場は国際色豊かなもので、アメリカで製作されたアニメも含めた市場を形成している。ところが、日本のアニメ市場はこの中には入っていない。ヨーロッパにはインターナショナル(ヨーロッパ各国とアメリカ)なマーケットと日本のマーケットの2つが存在する。日本のアニメだけを扱ったメディアに象徴されるように、「従来のアニメとか価値も市場もすべて別のもの」として捉えられているのだ。この市場の分断を国際共同製作の実現によって、解消していきたいという意図が登壇者たちには共通していた。  また、フランスのCedric Littardi氏(KAZE代表取締役社長)は、日本のアニメの長所としてストーリー性の強さを挙げる一方で、日本には外国人との共闘が難しい文化があるために市場を失っていると指摘。新たな市場を開拓するためにもヨーロッパでの共同製作を訴えた。 ■あの「クランチロール」がカンファレンスに登場  さて、昼休みもそこそこに始まった続くカンファレンス「海外のファン、マーケットの動向」は、モデレーターの豊永真美氏(ETRO 海外調査部主査)の言を借りれば「売り上げベースでは減少傾向にある海外のアニメ市場を、どう伸ばしていくか」がテーマだったが、なによりも注目すべきは「クランチロール」の日本代表であるビンセント・ショーティーノ氏が登壇したことだ。クランチロールは、サンフランシスコに本社を置く日本アニメ専門の動画共有サイトだ。当初は、違法アップロードされた字幕付きの日本アニメが多数投稿されている「ファンサブ」のひとつだったが、2008年にテレビ東京と提携したのを皮切りに、違法サイトから一転。ライセンスを得て、字幕付き日本アニメを配信するサービスへと転換した異色の企業である。
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ビンセント・ショーティーノ氏。
 クランチロールのサービスで際立っているのは、最短で日本放映の1時間後には英語字幕付きアニメを配信できることだ。日本で放映されたアニメを録画してサーバーにアップロードし、ファンが字幕をつけて違法に配信する「ファンサブ」は、海外のファンが日本アニメを視聴する大きなルートになっていた。もし、オフィシャルな形で視聴しようとすれば、日本で放映されてから長い間待たなくてはならないし、DVDも発売されないかもしれない。だから待っていられない。そのことが違法である「ファンサブ」を栄えさせる要因になっていた。ところが、クランチロールがライセンス契約を結び、そうしたファンサブよりも早く配信するサービスを始めたところ、違法アップロードは減ったとショーティーノ氏は語る。事実、09年に『NARUTOーナルトー』を配信したところ、違法アップロードは7割減したという。ショーティーノ氏は、コンテンツを1カ所にまとめて早く字幕をつけて配信することが、このサービスの成功の秘訣だとして、日本企業にさらなる協力を呼びかけた。  サービスとして際立っているクランチロールだが、当初が違法サイトとして出発したためか、多くの日本企業と契約した現在でも、そのビジネスに疑念を抱く人は絶えない。サイトの主な収入源は、有料会員と広告収入のみ。昨年からクランチロールは黒字化したと発表しているが、その収入だけで黒字になるのか疑問を呈する人もいる。それどころか、既にライセンス契約を結んでいる企業の中にも疑心暗鬼な人がいるそうだ。こうした疑念についてショーティーノ氏に指摘したところ、現在は違法な動画は一切ないと話す。その上で、さらに取材にも応じるとのことなので、改めて突っ込んだ質問をしてみたい。  日本のアニメにとって、海外が新たな市場であることは誰もが一致していることだが、同時に、「海外」のコアなファンは日本のアニメがリアルタイムで視聴できることを望んでいるのも確かだ。技術的には、十分に対応できるものだろう。そこから、さらに大衆化するには、もう一段上の戦略が必要になるだろう。 (取材・文=昼間たかし/写真=永山薫)
世界「文化力戦争」大図解 クール・ジャパンが世界を制す 今のところ、そうでもない。 amazon_associate_logo.jpg
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【東京国際アニメ祭2011秋】革命的アニメ『TIGER & BUNNY』大ブレークの種明かし

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 10月27日・28日の2日間にわたって開催された「東京国際アニメ祭2011秋」(主催:経済産業省/一般社団法人日本動画協会、後援:東京都)のレポート第2弾、28日の模様をお届けしよう。  午前中のシンポジウムは「『TIGER & BUNNY』に見るTVアニメの新たな取り組み」。語り手はサンライズの宮河恭夫専務取締役である。ガンダム関連の出版物に度々プロジェクトの仕掛け人として登場する宮河専務、『タイバニ』もグイグイ引っ張っていたが、前評判の低さには若干の不安を抱えていたようだ。大量宣伝をせず、ファンの口コミで拡がった今回のタイバニ人気から得られた知見を、今後の作品におけるファン獲得にも生かせるかと尋ねられると、こう答えた。 「放送前にほとんど宣伝もしていないし話題にもなっていなかったではないか、という質問だと思うんですが、まさにおっしゃる通りで、プレゼンをしたときに『これはイケる』と言ってくれた人はほとんどいませんでした」  MBSの単発深夜、TOKYO MXとBS11でどれだけカバーできるのかといった懐疑的な声が多かったと宮河専務は振り返る。 「原作もなく完全オリジナルということもあり、ネットなどでまったく話題にならなかったので、これはやばいかなと思っていました。しかし、なんとなく口コミで拡がっていくんだろうなという予感はありました。正直に言って、それは狙っていました」  しかし、だからといって露出を抑えたというわけではないと苦笑。これを次の作品でやるかというと、やはり話題になった方がいい、普通に認知されるようにしたい、という。  「離陸は難産だった」と宮河専務も認める出だし低調の『タイバニ』が、なぜ急上昇したのか。いわばその仕込んだ種の種明かしがこのシンポジウムだった。  『タイバニ』といえば、登場キャラクター「ロックバイソン」の実況における呼び方が「牛角さん」で固定されるほどの効果をもたらした番組内スポンサー広告が特徴のひとつだが、出稿希望が殺到したそのわけは、昨秋11月24日の日本経済新聞朝刊に掲出された全国15段カラー広告。「キャラクタープレイスメント協賛社、大募集!!」と銘打ち、派手に行った。現場担当者が上司のおじさんたちを説得しやすいだろう、という読みである。計42種類のパーツに掲出可能な枠が設けられ、個人から大企業まで数十件の問い合わせがあった。  最終的に17社が8人のヒーローに協賛、ペプシが登場キャラクター「ブルーローズ」を用いたCFを制作するに到ったのはご存じの通りである。F1やサッカーや花火と同じ感覚の掲出スタイルが、時代にフィットしたのかもしれない。  問題はこれにツッコミを入れる環境があるかどうか。その点で、Twitterのタイムラインが画面右に流れるUSTREAMをMBS最速で同時ネット配信の舞台に選んだ決断が大きかった。初回のUST総視聴者(ユニークユーザー)数は2,955人。宮河専務も「やはりこのくらいか」と思ったらしいが、第2話では7,903人と急増。第9話で4万人台に突入して4~5万人台と高値安定すると、最終25話では9万3,490人に達した。  東日本大震災後の絆を求める視聴者の心理とも重なり、ファンが一体感を獲得、高揚したのだろうという分析がなされている。  おそらくその通りで、今回の場合は「自分が見つけた、自分が支持する作品」を同じ感覚で共有することの愉悦があったはず。しかも、メジャーになったから離れるということではなく、UST視聴数の伸びを歓迎するTwitterのPostを見ても分かるように、作品の成功≒自分の勝利という、まさにサポーター心理があり、口コミで確かな人気を獲得、土台づくりがうまくいったことが、成功につながったのではないかと思われる。  途中からはTwitterのHOTワードを独占、ソーシャルネットワーク全盛時代にマッチした旬の作品となった。  現在はネットからライブに「共有」の舞台を移しつつある。最終回第25話のライブビューイングは本会場4,800円、ライブビューイング3,000円の有料制だったにもかかわらず、全国85スクリーンで2万3,000人を動員した。地上波3.8%の視聴率とUST配信の9万3,490人を足すと、ひと晩にどれだけ多くのファンが、しかも同時に『タイバニ』を注視していたのかがわかる。11月13日に神奈川県民ホールでおこなわれるライブイベントの動員は本会場4,400人、ライブビューイング3万人を見込んでいる。  普段アニメを見ないドラマ派の視聴者にまで裾野を拡げたいという企画意図は、十分に達成されたようだ。  午後のシンポジウムは「スマートフォンが変える動画の世界」。モバイル動画配信サービス大手、ビデオマーケットの高橋利樹代表取締役が、具体的なスマートフォンの定義から、順を追って動画再生環境の解説を行った。  同社はプレミアムエンコードという技術を有しており、不安定な無線ネットワーク、低ビットレート下でも鮮明な映像を出力する。厳しい環境でも低容量で動画を配信しうることで、モバイル動画配信を現実的なものにしていることになる。  実際に動画配信となる端末の中心はガラケーからスマートフォンに移っている。具体的にはiPhoneやAndroidか。予測では2011年のフィーチャーフォンとスマートフォンの出荷比率はほぼ半々とみられていたが(MM総研調べ)、NTT DoCoMo、au、SoftBank各社の冬春発売モデル内での比率はスマートフォン73%フィーチャーフォン27%となっており、今後はスマートフォンを前提として考えていかなくてはならない。  日本の全世帯のうち3割が単身世帯といわれている。しかし、非単身の複数世帯でも核家族化が進み、3人家族が増えているようだ(平均世帯人数3.12、平成22年国勢調査)。テレビと携帯電話の保有台数はともに概ねひとりにつき一台だという(内閣府消費動向調査、平成23年3月現在)。  では、購入サイクル、保有期間はどうか。テレビは家電化が進み、壊れるまでは買い換えないことから、9.3年という長期保有商品となっている。一方、携帯電話は3.6年。10年単位で考えた場合、テレビよりも携帯電話のほうが市場規模が大きい。テレビ向けの液晶をつくっていた工場が生産品目を携帯電話向けのちいさな液晶ディスプレーに切り替えるなど、フィーチャーフォンからスマートフォンという携帯電話内での変遷だけでなく、テレビから携帯電話という大きな変化があることもわかる。まさしくスマートフォンが動画再生端末の主流になろうとしているのだ(モバイルデータトラフィックは、2,010年の3,004TB/月から、2,015年には101,900TB/月に達すると予想されている、米シスコ社)。  さらに、携帯端末はCPUの集積度や処理能力が一年単位で大幅に向上、また通信環境が太くなり、タブレットも登場して転送容量や表示サイズそのものが大きくなってきていることもあって、いわばテレビの優位性を食い、今後はモバイル端末への移行がますます進んでいくのではないか──という論調だった。  樋口真嗣監督が「寝転がって動画を見るときはiPadで見る」と以前に発言していたが、就寝時にスマートフォンで動画を見ることが当たり前になりつつある現状では、つくり手もスマートフォンが作品を届けるためのチャネルであると自覚し、企画や制作に生かしていく必要があるのではないだろうか。  『TIGER & BUNNY』と合わせ、変わりつつある環境に適応して作品性や流通のスキームを考案するきっかけになる内容のシンポジウムだった。  午後から夕方にかけ、カンファレンス会場では「ご当地アニメの地域振興効果」「声優・音声製作の国際化」と題したカンファレンスが続けて行なわれた。  アニメによる地域振興、アニメの国際化または日本アニメの海外進出、音響・音楽・音声に対する理解は、今年の東京国際アニメ祭でクローズアップされているところ。  「ご当地アニメの地域振興効果」では『耳をすませば』の聖蹟桜ヶ丘、『サマーウォーズ』の上田、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の秩父が、各々町興しの具体例を紹介した。それらの紹介だけで時間を消化してしまい議論には至らなかったが、たまさか聖地に選ばれた側がどういうリアクションを起こすか、あるいはフィルムコミッションの類がどう誘致するかという点での話し合いがもう少し多いとよかったかもしれない。  「声優・音声製作の国際化」は、日本で声優をめざし、あるいは既にプロとしての活動を始めている日本周辺国家出身の声優または声優志望者によるトークセッション的なカンファレンス。ネイティブ並に日本語を操るロシア人、中国人、台湾系アメリカ人、韓国人のバイリンガル、トライリンガルは主に日本アニメへの情熱によって衝き動かされ、日本語を学んだ経緯の持ち主ばかり。日本代表として参加した山口理恵も関西圏出身とあって関東との言葉の違いに苦心した時期があり、共通の心的ベースで体験談を語る様子はトークとして面白かった。  前者の町興しと同じく紹介が大半を占め、異国出身の声優の力をどう生かしていくかという議論としては深まらなかったが、関心を喚起する効果はあったように思う。  今年も地味なシンポジウムやカンファレンスに見るべきものがある催しだった。 (取材・文・写真=後藤勝)
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警察まで巻き込み……『あの花』聖地巡礼で盛り上がる秩父市の"仕掛け"

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『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
アニメ公式サイトより
 埼玉・秩父の町のあちこちに今、あるアニメのキャラクターグッズが溢れているのをご存じだろうか。  今年4月から6月まで放送され、再放送が10月初旬に4夜連続全話一挙放送されたフジテレビ・ノイタミナ枠のアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』だ。  西武秩父駅周辺の土産物売り場の店頭は今、通称『あの花』のグッズだらけ。駅周辺にはコスプレをしている人など、「聖地巡礼」者の姿が多数見られる。  この作品の異質なところは原作がなく、アニメオリジナルにもかかわらず、アニメ放送中から「聖地巡礼」する多数の人が町を訪れ、9月末からは西武秩父駅限定で記念切符発売と、いろいろ展開が早過ぎること。  西武秩父駅によると、第1弾の記念切符5,000セットはすでに完売し、第2弾も、5,000セットのうち西武秩父駅取扱い分3,000セットはすでに残り3セットとなっているという(10月26日現在)。  さらに放送中の5月には、『あの花』のキャラクター「めんま」が呼び掛けるポスターが、警察署の名前で貼り出されていた。  たとえば、『新世紀エヴァンゲリオン』グッズが大人気となっている箱根などは、放送終了後10年も経ってからのグッズ化&町おこしだったわけだが、『あの花』の異様な展開の早さはなぜなのか。  秩父アニメツーリズム実行委員会に聞いた。 「聖地巡礼の人は、早くはアニメ放送開始前から来始めてましたよ」  原作なしのオリジナルアニメなのに、放送前からとはどういうことなのだろうか。 「よく、『地域おこしのためにアニメを作ったのではないか』と言われるのですが、そうではなく、『放送が終わるまではアニメをじっくり楽しんでほしい』という制作会社の希望もあり、作品内で地名を出さなかったんですよ。我々は当然アニメに協力していますので秩父をPRするタイミングを見計らっていたのですが、放送が始まるなり、第1話でキービジュアルとなっている橋がどこなのかと話題になり、ファンの方の間で旧秩父橋と特定され、注目を集めたようです」  アニメ放送中に警察まで巻き込むPRとなった理由については? 「アニメのキャラクター『めんま』が橋の欄干に立つキービジュアルがあるのですが、ファンの人がもしマネをして事故が起こると放送ができなくなるので、注意喚起の貼り紙をしようということになりました。でも、単に『欄干に上るのはやめよう』ではファンの心をつかめないのでと、制作会社のOKをもらい、アニメキャラに呼びかけてもらう形にし、また、警察署長さんにもOKをもらって文言を入れたんです」  それにしても、一部で大人気のアニメとはいえ、一般知名度はそこまででもない気がするのに、こんなにも騒動になるとは......。 「我々も分からなかったんですよ。制作会社の方に『アニメが始まると、(作品内で溜まり場として登場する札所)17番というお寺はすごいことになるよ』と言われていたんですが、正直、ここまでは予想つきませんでした。監督が長井龍雪さん、脚本を岡田麿里さん、キャラクターデザインを田中将賀さんが務めており(テレビアニメ『とらドラ!』と同一スタッフ)、その3人だったら必ずヒットすると確信していたようです」  秩父アニメツーリズム実行委員会は、昨年、スタンプラリーなどを行った「銀河鉄道999in秩父」のために立ち上げたものだそう。 「来年どうしようかね、という話をしつつ、題材を探していたときに、ちょうど『あの花』の話がきたんです」  ちなみに埼玉といえば、最近では『らき☆すた』アニメ版の舞台が鷲宮町(現・久喜市)や幸手市、春日部市であることから、神社への聖地巡礼・町おこしイベントなどで盛り上がったこともあり、それがヒントになったところも大きいようだが、アニメ放送とほぼ同時進行に進んだ、早過ぎる町おこし&ブーム。  アニメ放送前からすでに聖地巡礼の人が来ていたという事実から考えても、背景には、広告代理店やテレビ局、制作会社などが一丸となった"仕掛け"があったのではないだろうか。
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人気漫画家が連載の合間にアニメを自主制作!? 少人数×3DCGアニメの可能性

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(c)松江名俊/小学館
 2006年にテレビアニメ化もされた人気コミック『史上最強の弟子ケンイチ』を「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載する漫画家・松江名俊。彼が執筆活動の合間に制作していた自主制作フル3DCGアニメ『技の旅人』が、実に3年の制作期間を経て完成した。  文明が崩壊した世界で武者修行の旅をする少女・てくにの活躍を描いた本作は、松江名氏が原作・脚本・制作総指揮・監督をひとりで担当した話題作だ。彼が何を思って自主制作アニメを作り上げたのか。作品にこめた熱い思いを聞いてみよう。 ■漫画週刊連載と二足のわらじで進めたアニメ制作 ――『技の旅人』はいつごろから制作をスタートさせたのでしょうか。 「およそ3年前です。最初は制作何年というようなノリではなく、もっとさっさと終わる予定だったんですが、予想以上に長引いてしまいました」 ――今回は原作、脚本、監督をひとりで担当されたそうですが、実際のところ、どの程度の規模で制作されたのですか。 「正確には3人くらいで作っています。まず、音楽は『ほしのこえ』『星を追う子ども』など新海誠さんの作品で音楽をやっていた天門さん。映像はゲームのグラフィックをやってる方。どちらも高校時代の先輩というよしみでお願いしました。あとはウェブで知り合った方ですね。ただ、基本的に全部のシーンを私が完成させています」 ――週刊連載をしながらの作業という過酷な制作だったわけですが......。 「わかってはいましたが『何でこんなことやってるんだろう』『取り返しのつかないことを始めてしまった』と思いながらやっていました(笑)。1週間のうち、だいたい半日くらいしか休みが取れなかったので、その時間をアニメ制作にあてるという感じで、ほぼ3年働き続けました。最後の方は『これは終わらせないと死ぬ』と命の危険まで感じました。DVDの発売日が決まったおかげで、終わらせるタイミングができたという感じです。それがなかったら、いつまでもズルズルと作っていたと思います」
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――自主制作アニメというと、動画枚数の多いアクションを描くことが難しいためか、文芸路線にいくことが多いですよね。しかし、『技の旅人』ではアクション活劇に挑戦しています。 「文芸路線でいけば、たぶん3カ月で完成したとは思います。でも、自分の取りたいアニメがアクションでしたので面倒なことに(笑)、それに私は格闘漫画を描いているのでカット割りに漫画的な手法を入れていったら面白いかもと思いました。あ、あとお色気も」 ――制作に使用したソフトもハイエンドのものではなく、安価なソフトを使っているそうですが。 「『Lightwave3D』という、比較的に手に入れやすい値段のソフトを使っています。なるべく一般的に手に入るものだけでやろうと決めていました。今回の作品にはひとつコンセプトがあって、30分の普通のアニメを個人制作しようと考えていたんです。そう考えると、3DCG以外では無理だと思ったんです」 ――3DCGが好きだから、というわけではなく、消去法で選んだ結果の3DCGだったんですね。 「ええ。それと、もともと日本のアニメって、ディズニーあたりが秒間30フレームで作っていたものを、手塚(治虫)先生が日本に輸入する際に予算や制作時間などの上で無理が生じ、結果的に少ない枚数での独特の表現方法が発展して、最後には海外に勝てるくらいの作品が生まれた。そういうことを考えると、そろそろ3DCGアニメにもそういう変化が起きるんじゃないかなと思っています。つまり、ピクサーが何百人もの人手もお金もかけて作っているのに対して、日本では作業を簡略化して少人数で、『テレビで毎週放送できるレベル』の『30分』のCGアニメを作ってみたらどうなるんだろうってことです。だから今回はテレビアニメ1本分の予算でやろう、と最初に決めました。その製作費で3、4人で作ればひとりあたりの報酬が増えて、収入が少ないとたびたび問題になっているアニメーターさんも、とりあえずの生活ができるくらいのお金が手に入るのではないか。その体制で作品を作れるかどうかの実験をしてみたかったところもあります。小さい志なんですけどね」 ――アニメの制作体制にまで踏み込んで作られたっていうのは驚きです。一般人でも手に入れやすいソフトを使ったというのも、そこに通じるわけですね。 「はい。例えば『ファイナルファンタジー』みたいな映像は、もう個人でも撮れる時代です。その代わり、3分が限界なんです。時間が長くなると制作する上で相当時間とスキルが必要になってくるので、あれで30分のアニメを個人制作するのはあまり現実的ではないと思います。でも、少しデータ量を落とせば、ずっと楽にストーリーがある作品が作れる。足りない部分をアイデアで補うあたり、日本らしいと思いませんか? それに仕事をやりながらでも3年でこのくらいのものができたということは、この仕事にのみ専念すればさらに素晴らしい作品になるはずです」 ■「業界が衰退する」その危機感がもたらした全編公開という選択 ――公式サイトでは進んで低解像度で全編公開していますね。普通はYouTubeなどの動画サイトに一部だけ公開した上で、違法に全編がアップされたらどんどん削除してDVDを売っていこうという感じになると思うのですが。 「その方法は正しいですがいたちごっこですよね。何か別の角度から切り込めないか考えました。今回この企画ではアニメ1本分のお金を回収できたら私としては一応成功だと考えています。それを前提とした上で、低解像度でアニメを見てくださった方が、お金を出してもいいなと思ってくれたらDVDを買って欲しいなという意思表示です。今回の作品はそうやって発表しても成り立つのかという実験でもあります。正規の方法でお金を集めアニメ制作会社に作って頂いた場合、こういう企画は通しにくいでしょうから自主制作でやってみました」 ――確かに、ネットで映像を見て満足されてしまう可能性もありますからね。
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「十分ありますね。ただ、小さい子どもはDVDを買えませんし。今のアニメは大半が深夜放送じゃないですか。おまけに高解像度で放送されているので録画したものに劣化がない。違法アップする人間のほとんどが本当は作品を面白いからもっと見てもらいたいと思ってしているのだと思います。おそらくアニメ会社を潰そうと思ってアップしている人はいないでしょう。ただ現状のシステムが、一番のファンと製作者のお互いを苦しめ合う悲劇的な構造になっているので、何か発想で構造を変える必要に迫られているのだと思います。見たい人は無料で見る。そして、よりきれいな画像で見たい人はDVDを買う。総叩きにあう可能性もありますけど、あえてこの方法を試してみました。私は基本的に暇さえあればなにか創作活動をしている人間なので」 ――漫画家が個人レベルで新たなビジネスモデルを作ろうとしたり、既存のシステムに異議を申し立てるような動きが、近年増えつつありますよね。それはなぜだと思いますか? 「漫画家は皆個人事業主でしがらみが少ないからでしょう。当然、企業サイドにも同じようなことを考えてる人はたくさんいると思います。いずれは何かいいカタチに落ち着くのでしょうが一刻も早く新しい仕組みが確立して欲しいところ・・・今回の企画は、その提案のひとつです」 ■「ノウハウを引き継いでほしい」松江名俊からのメッセージ ――今、自主制作アニメを作っている人に伝えるメッセージはありますか? 「何も言わないでも分かってると思うので、頑張ってくださいとだけ(笑)。ただプロのアニメーターさんがよく言っているのは、『ひとりで作るな』ってことですね。3人くらい集まらないと、作品じゃなくて実験アニメで終わっちゃうんです。ただ、天才的な才能を持つ方たちは人付き合いが苦手な方が多いんですよね。だから、そこをうまく繋げることができたら、日本のCGアニメ文化ももっと発展するんじゃないかなと思います。でも、その間に立つ人がなかなかいないんですけど。ニコニコ動画みたいな、作品を発表して評価される場所をもっと作らないと、海外に負け続けると思います」 ――今回は個人(レベルでの)制作という部分を強調されてはいますが、個人でアニメを作ることにそんなにこだわりはない。 「ええ。ただ普通のアニメのように人数が増えて、動画は海外に外注という形にすると、結局いまと同じで外国に発注しないと倒れてしまう文化になってしまう。だから少数精鋭で、国産でできるというスタンスでやらないとあまり意味がないと思います。すでに個人製作のFlashアニメがテレビで放送されたりしていますし、自主制作アニメの人同士でどんどん組んでほしいです。そろそろ時は満ちてると思います、ひとつ壁を越えたら、自主制作アニメの戦国時代が来るでしょう」 ――次回作の構想などはありますか? 「次やったらおそらく死にます(笑)。今回の件でアニメ制作のノウハウがたまったので、次はもっと進化したところから始められるだろうとは思うんですが・・・とりあえず今は思う存分漫画を描きます、漫画家ですからね(笑)」 (取材・文=有田シュン) ●『技の旅人』 <オリジナルDVD+天門オリジナルサウンドトラック付き> 近代文明が失われた世界。人々は"パティア"と呼ばれるエネルギー源を用い、他の集落との交易を行わずに生きていた。そんな世界に、"技人"と呼ばれ、武者修行の旅を続けるひとりの少女がいた。知恵フクロウのふっくんと共に旅を続ける少女の名は「てくに」。ある日、パティア発掘中に"オクシリク"と呼ばれる疑似生物兵器に襲われた少女「ルリ」を救い出し、彼女の村を訪れるが......。 原作・脚本・制作総指揮・監督/松江名俊 音楽/天門(『ほしのこえ』『星を追う子ども』) キャスト/釘宮理恵(てくに/『ハヤテのごとく!』三千人ナギ役)、関智一(シエント/『史上最強の弟子ケンイチ』白浜兼一役)、川上とも子(キャロト/『史上最強の弟子ケンイチ』風林寺美羽役 )、佐藤有世(ルリ/『機動戦士ガンダム00』クリスティナ・シエナ役)DVD本編32分+特典映像18分、CD28分、本体価格/3,150円(税込)、※全国の書店で11月18日発売  オフィシャルサイト <http://www.tekunichan.com/>
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"不良の格闘技大会"「THE OUTSIDER」にブラジリアン柔術が参戦!

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格闘技界の未来を語る前田日明
 アマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER」を主催するリングス・前田日明が31日、都内で会見を行い、11月13日に開催される「THE OUTSIDER 第19戦」(神奈川・横浜文化体育館)にブラジリアン柔術の選手を招へいすることを明らかにした。  この日発表された追加対戦カードは3試合。うち、2試合にブラジリアン柔術の選手が登場し、アウトサイダー常連の"柔術弁護士"堀鉄平と"神速"ソルジャーボーイ一樹が迎え撃つことになった。  出場する柔術選手について前田は、「群馬や浜松にブラジル人コミュニティがあって、柔術の愛好者が日本で練習していることは知っていた。実際にリサーチしてみると、世界選手権のチャンピオンが教えているようなところもあり、なるほど、と思えるようなレベルだった」と語り、「プロにしてみたい選手もいる」と明かした。  また、今回ブラジリアン柔術選手との対戦となった堀鉄平は会見で「格闘技を始めたのは強いブラジル人に憧れて始めたので、喜んで対戦を受けさせていただきました。ブラジル人から一本勝ちしたいと思いますのでよろしくお願いします」と強気な一面を見せた。  この日の追加カードの発表により、「THE OUTSIDER 第19戦」は3階級のタイトル戦、ロシア対抗戦、ブラジリアン柔術戦と、盛りだくさんの内容となった。 ◆再始動リングスは「パウンド有り」ルール  また、前田は来年3月9日に10年ぶりに復活する格闘技大会「リングス」について話が及ぶと、注目されていた大会ルールについて言及。「リングスはKOKルールを想起される方もあるかと思うが、今回3月9日に復活するリングスはパウンド有りです」とした。  これにより、KOKルールを採用していた10年前のリングス後期より過激な試合となるが、前田は「総合の選手で、若いのに驚くほど壊れている選手がいる。これからは大会主催者側が選手の引退後の生活を奪わないということも考えていかなければならない」とし、あくまで安全志向、スポーツ志向のルール設定であることを強調。「総合格闘技を一時のブームではなく、永遠に格闘技スポーツのひとつのジャンルとして、バイオレンス(暴力)を見せるのではなく、選手の技能、技術、スピリットを見せるためのルールを形成していく」と語り、ダウン時の踏みつけやサッカーボールキックについては禁止する方向であるとした。  その他、韓国の総合格闘技団体「ロードFC」との提携や、ZSTとの合同大会などアクティブな2012年を迎えようとしているリングス。格闘技界全体が斜陽を迎えるなか、前田日明が再び台風の目になろうとしている。
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【原田眞人】──"暴力"を描かないから日本映画界は生ぬるい!

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(写真/田中まこと)
 人を殺された怒りから組織に弓を引いたチンピラと、暗い過去を持つ日系ペルー人のタクシー運転手の邂逅を描いた、映画監督・原田眞人の"原点"ともいうべきロードムービー『KAMIKAZE TAXI』(1995年公開)が、11月にいよいよ国内初DVD化。その卓越した映像センスと軽妙なセリフ回しで、たちまち世界の度肝を抜いた傑作が、長い歳月を経てHDリマスターで新生する。 「続編を作ろうよって話は以前からあったし、僕の中でもずっと生き続けてきた作品だから、本来ならもっと早い段階で出したかったんだけどね。5~6年前に一度、ポニーキャニオンから出そうって話になったこともあったんけど、そのときは流れちゃって(笑)。  まぁでも、『わが母の記』が公開になる、このタイミングで出せるというのは自分にとってはよかったんじゃないかな。コアなファン以外にも観てもらえるという意味では、絶好の機会かな、と」  とはいえ、95年に世に出てから、今回のDVD化までに要した時間は実に16年。世界的に高く評価された作品でありながら、これまで放置され続けたその背景には、現在の日本映画に蔓延する、ビジネス至上主義が大きく影を落としていると言わざるをえない。 「これは今のアメリカにもいえることだけど、業界全体が低予算映画とイベントピクチャーとに二極化しちゃって、監督が最も作家性を、見せられるその中間的な作品が少なくなる一方なんだよね。そのうえ、日本では映画を本格的に学べるアメリカのフィルム・インスティテュートのようなアカデミックな場所が少ないから、カネのないところから出てくる連中を育てるやつも、その環境もない。  僕が、00年にPFF(ぴあフィルムフェスティバル)の審査員をやったときに準グランプリを獲った、上田大樹(『ワタシハコトバカズガスクナイ』)のような才能を持った若い世代が本編を撮れていない、この不幸。原作ありきの映画しか作れないってのは、やっぱり健全な状態ではないね」  すでに巨匠の原田ですら、オリジナル脚本は、97年の『バウンス ko GALS』を最後に15年近く実現していないという厳しき現実。DVDとなった自身の出世作を通じて原田が世に問うのは、そうした閉塞的な映画業界の現状だ。 「誤解を恐れずに言えば、こうなってしまったのはやっぱり日本映画がちゃんと暴力を扱わなくなった。その一点に尽きるよね。僕は映画祭なんかで演出姿勢を聞かれるといつも『コンバティブ(戦闘的な)』って答えるんだけど、映画監督の成長は"暴力"という言葉に含まれるエネルギッシュな自己表現の力や闘争心があってこそ。まさにこの作品で描いたような、エッジの効いた暴力の世界を全部拒否してしまう生ぬるい温室社会は、映画界の発展という意味ではマイナスでしかないんだよ。  実際、09年のカンヌ映画祭でグランプリを獲ったフランスの『A Prophet』や、その前年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞したブラジルの『The Elite Squad』なんかは本当に素晴らしいのに、こと日本ではリスクを忌避して公開のメドすら立ってない。良質な映画を配給してきた会社が潰れ続ける現状では、容易なことではないだろうけど、若い世代がもっと冒険心を発揮できるような土壌になんとか改善していけたらなとは思うよね」  数多の大作を手がける現在にあっても、そのスタートにあるのは常に、この作品だと原田は言う。映画でしか味わえない醍醐味。それを今一度思いださせてくれる"原点"がここにある。 (文/鈴木長月) 原田眞人 1949年、静岡県生まれ。映画監督、映画評論家のほか俳優としても活躍。特に『金融腐蝕列島 呪縛』、『突入せよ! あさま山荘事件』や『クライマーズ・ハイ』など、社会派作品に定評があり、数多くの映画賞を受賞している。2012年公開予定の『わが母の記』(井上靖原作)が、第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。 『KAMIKAZE TAXI』
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もともとは、オリジナルビデオとして企画され、その後に劇場映画として公開された同作。国内外の監督や俳優にも多くのファンを持つ。初公開から16年の時を経て、日本では初めてHDリマスターでDVDとなった。世界初公開カットを含む削除シーン集など貴重な特典コンテンツも多数収録している。 発売/デイライト 販売/ポニーキャニオン 価格/5040円(税込) 発売日/11月2日

「潮吹き過ぎて脱水症状に!?」着エロ界の女神・RYUがついにAVデビュー!

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 累計10万枚セールスを誇る着エロ界の女神・RYU(リュウ)が、『芸能人RYU AV DEBUT』(SODstar)でついにAVデビューする。  その透き通るような柔肌と、完璧なボディーラインで人気絶頂の彼女が、今、AVに転身する理由とは? さらに、気になる初めてのAV撮影から彼女の素顔まで探るべく、いざ彼女の元へ!  しかし「日刊サイゾー」取材班は、目の前に登場したRYUちゃんの妖艶なオーラにクラクラ......。大人の魅力にすっかりやられてしまいましたとさ。 ――今回、AVに挑戦してみようと思ったきっかけは? RYU 着エロを長くやってきて、露出の部分などで「もうやることなくなっちゃったなあ。あとは内臓見せるしかなくなっちゃったなあ(笑)」って思っていたときに今回のお話が来たので、やってみようかと。 ――初めてのAV撮影の感想は? RYU 着エロの撮影とは全然違うな、と思いました。やっぱり、セックスしてるところを人に真剣に見られるのはすごく恥ずかしくて......。スタッフさんの人数も多かったので、緊張しまくりで最初はガチガチでした。あと、「こんなに潮って出るんだ!」ってビックリしました。 ――どのくらい出たの? RYU え~、どのくらいだろう......マッコウクジラくらい!?(笑) ――吹き過ぎ! RYU 潮吹き過ぎて、撮影後に脱水症状で、のどがカラカラになってしまって。あと、イッちゃいそうなときに、「尺を長くした方がいいのかな」と思って我慢したんです。そしたらあとで、スタッフさんに「あ、もう全然普通にイッちゃっていいから」って言われました。 ――気遣っちゃったのね(笑)。プロの男優さんとのセックスはどうでした? RYU 普通の人とは違うなって思いました。長くエッチできるし、手マンのときにツボを知ってて「これはすごい!」と思いました。 ――『芸能人RYU AV DEBUT』のみどころを教えてください。 RYU イキまくってるシーンとハメ潮かなあ。あとジャケットがお気に入りなんです。AVっぽくない感じが好き♪ ――今後、撮影でやってみたいプレイは? RYU マジックミラー号! スリルを味わってみたいし、面白そう! あとレズとかも。 ――楽しみにしてます! ここでRYUさんご自身についても少しうかがいたいのですが、恋には積極的な方? RYU う~ん、そうだと思います。でも、自分からは告白できないです。 ――なんで? RYU フラれるのが怖いから、告白してもらうようにする......。「好き」とは言うけど、「付き合って」は言えないです。 ――ズルーイ! ちなみに初体験はいつ? RYU 15歳。同じ学校の1個年上の彼氏です。痛くもかゆくもないし、気持ちよくもなくて。AVとかだとめちゃくちゃ喘いでるから、「喘いだ方がいいのかなあ......」って本気で悩んだのを覚えてます。 ――気持ちよくなるまでにどのくらいかかった? RYU 半年くらいかなあ。 ――好きな男性のタイプは? RYU マジメで仕事を一生懸命頑張ってる人に惹かれます。あ! あと、胃とかお腹の調子が悪くない人! お腹をすぐに壊す人とか、あんまりイヤ。 ――お腹ピーピーは嫌い? RYU だって、例えばふたりきりで遊びに行ってるときに、急にお腹痛くなって「トイレ行きたい」って言われたら、なんかイヤだなあと思って(笑)。 ――男性はお腹弱い人多いですからね~。では最後に、「日刊サイゾー」読者へメッセージをお願いします! RYU AV始めました、RYUです。ジャケットはあんまりAVっぽくないですが、中身はいやらしくて、私がドスケベ女に豹変する瞬間が見られるので、是非見てください。そして、イジッてください(笑)。 (取材・文=林タモツ/撮影=後藤匡人)
芸能人RYU AV DEBUT 11月19日発売。 amazon_associate_logo.jpg
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【東京国際アニメ祭2011秋】「今後も大幅な品質向上は望めない?」中国アニメビジネスの現状

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 多くのアニメイベントが集中するこの季節、東京・秋葉原のUDXでは「東京国際アニメ祭2011秋」が10月27日・28日の2日間にわたって開催された(主催:経済産業省/一般社団法人日本動画協会、後援:東京都)。「アニメ ビジネスマッチング&カンファレンス」と銘打たれているように、現状を踏まえたアニメビジネスの展望や情報を発信していくことが狙いとなっている。  いくつかのカンファレンスとシンポジウムの内容を紹介しながらその傾向を探っていこう。    初日の午前中には「声優甲子園記者発表」と「キングランアニソン紅白2011記者発表会」があった。  前者に登壇した大崎徹哉SMN(NPO法人学校マルチメディアネットワーク支援センター)理事長によると、「声優甲子園」はコンテンツ制作の基盤を中高生に求めるべく、同NPOが主催する「音楽甲子園」「映画甲子園」「アニメ甲子園」に連なる企画であり、アニメ甲子園のボイスアクト部門を独立させた催しなのだという。今回の東京国際アニメ祭2011秋では28日夕方に「声優・音声製作の国際化」と題するカンファレンスもあった。声優という職業のステータスが上がってきていることの証だろう。  和田昌之X-Arts代表取締役によれば、ネットサービス「こえ部」(面白法人カヤック)を介してWebエントリーが可能。アニメシナリオ部門、朗読部門、歌唱部門いずれにも重複して応募できると、その敷居の低さと機会の多さを強調していた。参加資格は13歳から18歳。
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声優の江口拓也。
 ゲストに招かれた声優の江口拓也は、これから声優を目指す人々へのメッセージを求められ、「自分のときは声優になる方法が分からなかった。志望者にとってはいちばん分かりやすい」と、環境が整ってきている現在の状況が好ましいと語っていた。  昨年はアニソン100曲を旗印に掲げていた「アニソン紅白」は、方針を大きく変更。アーティストと楽曲の選考基準を2010年と11年のヒット曲に絞り、それぞれのアーティストが自身の持ち歌をフルコーラスで歌うことを原則として徹底するようだ。アーティスト数も紅白各8~10組と選りすぐりになる。ただし先行者をリスペクトする姿勢は変わらず、「特別コーナー」にてそれらの楽曲を放送する。  選考委員には作曲家の田中公平と畑亜貴が入る予定だ。また司会には鷲崎健が決定、そのMCぶりにも注目が集まる。   テレビ中継はBSスカパー!が担当。ノンスクランブル放送であり、加入者であれば誰でも視聴可能となっている。12月31日の22時から翌午前1時半までが放送枠だ。  東日本大震災の被災地となった東北各県ではパブリックビューイングが行われる。上映シアターは青森県1カ所、岩手県2カ所、山形県2カ所、宮城県2カ所、福島県1カ所の計8カ所で、トータルのキャパシティは3,000人に達するとのことだ。  現在のリスナーに合わせてイベントのコンセプトを修正してきた印象があるが、どの程度受け入れられるのか興味深い。いずれにしろ、アニメが音楽市場に活路を見出しているのは確かなことだろう。パッケージ販売でもライブイベントでも収益を上げられ、注目度も高い。夏にはアニサマという怪物的な規模のフェスまで存在する。アニソン紅白がブラッシュアップを図り、サバイブしようと眼の色を変える素地はある。  日本のアニメが海外でどのような評価を得ているか、どのように海外でマネタイズすればよいかということに関しては、非常に多くの時間が割かれている。27日午前には「アニメーションのヨーロッパマーケット事情と、日本作品の世界市場におけるトレードギャップ」、同日午後には「海外のファン、マーケットの動向」、明けて28日には「アニメーションの北米マーケットと、ワールドテレビネットワークでの日本作品の可能性」と題するカンファレンスが行われた。
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海外のファン、マーケットの動向。
日本アニメの海外販売は減少している。
 いわんとしていることは、ざっくりとは、日本のアニメは全世界で多くのファンに視聴されているが、ネットを通じてタダで観られているためにマネタイズできていない、ということである。いかにして日本の制作者に利益を還元させるか──対策として北米に於けるクランチロールのように日本以外でのネット配信拠点を設け、そこにアーカイブを集中させるという考えがあるようだが、はたしてうまくいくかどうか。27日のカンファレンスに関しては昼間たかし氏が詳しくレポートをする予定になっているのでそちらをご参照いただきたい。  国策としての日本アニメ輸出推進に関連したカンファレンスには前述した28日の「声優・音声製作の国際化」のほか、27日の「平成23年度クール・ジャパン戦略推進事業 日印アニメ共同製作・キャラクター開発プロジェクト」発表と「アニメ映画の国際共同製作支援作品」発表がある。  そうしたちょっとお固いタイトルのカンファレンスをよそに、27日夕方には「『80后』『90后』が変える中国のアニメビジネス」という活気あふれるシンポジウムが行なわれた。80后とは80年代生まれを指す中国語で、天安門事件以降の新世代のなかにアニメファンやヲタクが多く含まれ、この世代が中国のアニメビジネスを変えていくはずだという見方をベースに、中国と関わりの深い登壇者が語り合う趣旨のもの。  しかし実際には、発表のアテもなく規定時間数以上の作品をつくらなければお取りつぶしの目に遭う中国のアニメーション制作スタジオはどうしても粗製乱造になりがちで、今後も大幅な品質向上は望めず、ビジネスとしても大規模な展開は難しいのではないかという悲観的な見方が大勢を占めた。  コストがかかる手描きのアニメーションが減り、3DCGやフラッシュアニメが増える傾向からは、少なくとも日本の職人工芸的な作品づくりに対応できる制作スタジオは、そう多くないだろうことが推測できる。
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百元籠羊氏。
 2006年からはアニメの輸入を絞っているとのことだが、現在はどうなっているのか。シンポジウム終了後、登壇者のひとりであるブロガー、「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」管理人の百元籠羊に聞いた。 「身も蓋もない話なんですが、ニコニコ動画が中国のヲタクの視聴スタイルに与えた影響は非常に大きいんですね。みんなで動画サイトを見ながらバンバン投稿する。あるいは違法ダウンロードになりますが、それを見てネットの掲示板に書く。体験を共有する。そうやって見るのがほとんどになっています」 ──2006年以降は正規ルートで入るアニメの数は減っているとのことですが、そうすると実際には日本最新の今期アニメが視聴されているということですか。 「そうですね、たとえば『Fate/Zero』のどこが楽しかったとか、『ガンダムAGE』つまんねーとか。『ガンダムAGE』は本当に俺たちの望むガンダムだったのか?  と、おまえらは何を語っているんだ(笑)と言いたくなる事態が起こっているんです」 ──では、感覚は共有できているわけですね。 「ときどきポロっと分からないところが出てきたりしますね。今期だと『ベン・トー』は日本のスーパーのシステムを知っていなければ(※スーパーで売られている弁当が閉店間際になると値引きのシールを貼られて価格が数十%から半額オフになる)難しいというのと、セガ(のゲーム機)なりなんなりの前提知識が必要になってしまうので。  ただ、一度ハマると非常に面白い。今期、ディープ層にウケたのが『境界線上のホライゾン』(※設定厨とでも呼ぶべき設定の細かさが特徴)、あれは世界観などの知識を前提として持っていれば持っているほど面白いということで、マニアの間では設定一覧表ができている」 ──いわゆる萌えアニメを見て、ブヒブヒ言っている人もいるんですか。 「はい、バッチリいます。『まよチキ!』が素晴らしいと言っている人間もとても多いんですよ。いま日本のヲタクがこれをチェックしているという最先端にはついてきていますね。ただ女性のヲタクは二次創作がメーンになるのでちょっと独自ですね。TIGER & BUNNY』も台湾で一度ブレークしてからでないと弾けませんでしたから。男性ファンに関しては日本のヲタクに近くなってきていると同時に、女性に関しては独自の市場が形成されつつあるというところです」  この「『80后』『90后』が変える中国のアニメビジネス」の前の時間帯には「アニメ音楽のマニア的分析」と題するシンポジウムがあった。  タイトルからすると、一見、商用メジャーアニメのサントラに対するウンチクかとも思ってしまうが、実際には、CHAGE and ASKAのキーボーディストでありアレンジャーの長池秀明が『セピアいろのとけい』(きのしたがく)の映像に合わせ、鍵盤で音を出しながら作曲者と映像作家の狙いを解読していくという非常に意欲的な取り組みだった。  スケール(音階)やコード(和音)にそれぞれ明るい(メジャー)、暗い(マイナー)などのキャラクターの違いがあることはよく知られているが、演出意図や映像のタイミングに合わせて丹念に音を織り込む劇伴音楽の作業はかなり精緻なものであることが分かる内容だった。  登場人物にピアノやチェロなど象徴的な音楽が割り振られる。シーンの冒頭にはそのくくりを表す、たとえば終礼の「キンコンカンコン」的な基本フレーズが奏でられ、そのバリエーションが展開していくことで同一性を保つ。登場人物の心情描写を音楽でつづけたあと、フレーズのおしりに「~何?」と言うような注意を喚起する音を付加して登場人物にこれから起きるドラマに視聴者の意識を引きつける。日本の昼メロだとディミニッシュコード一発で安直に「ガガーン」という雰囲気を出すところを、コードの下に半音をぶつけて不安定感を表現するなど、全篇にわたる作業をきめ細かく解きほぐしていく。  企画した清野一道(財団法人デジタルコンテンツ協会)は「大学の講義としても通用するレベルのもの。映像のクオリティーは上がってきたが、音(の演出)のクオリティーを上げないとトータルとしては上がっていかない。絵に潜んだ何かを音で表せるということを知らしめていかなければ」と、その使命感を語っていた。  アニソンが隆盛する一方で、細かな音響演出を必要とする繊細なアニメーション作品が少ないのも確か。CGツールの普及で映像制作そのものは高度化していても、音に理解がなければ音楽家に適切な注文ができず、作品総体としての質に影響する。  この日は映像をつくる側のクリエイターが質問をしていたが、そうした質疑応答の一つひとつ、あるいはこうしたシンポジウムを重ねて啓蒙していく必要があるのかもしれない。 <28日のレポートに続く> (取材・文・写真=後藤勝)
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姜尚中の耐えられない軽さ!? 在日をウリにする進歩的文化人の功罪とは

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鄭大均氏。
 『在日の耐えられない軽さ』(中公新書)などの著書で知られる鄭大均(ていたいきん)首都大学東京教授が、政治学者・姜尚中(かんさんじゅん)氏の批判本『姜尚中を批判する―「在日」の犠牲者性を売り物にする進歩的文化人の功罪』(飛鳥新社)を上梓した。岩手県で在日二世として生まれ育った鄭教授は、2004年に日本に帰化。その立場から、犠牲者性を軸にした多くの「在日論」に一貫して批判的なメッセージを発信してきたひとりだ。在日外国人地方参政権に批判的なことでも知られる。一方、姜氏といえば、東京大学教授にして『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)などの人気メディアにも多く露出し、在日コリアンの被害者性を強調した『在日』(講談社)などの著書でも知られる著名文化人のひとりだ。岩手県出身の在日二世・鄭教授が、熊本出身の二世・姜氏を批判する理由はどこにあるのか。鄭教授に執筆の背景と「姜批判」のポイントを聞いた。(聞き手/浮島さとし) ――鄭大均教授も在日二世であるわけですが、この手の批判本を書くと「在日同士のけんか」という好奇の目で見られることも多いと思います。 鄭氏(以下、鄭) 当然それは考えました。この歳になって他人の批判なんて本当はしたくない。そういうことは誰か他の人がやってくれたらいいと思ってました。しかし、どうやらそういうことをきちんとやれそうな人はいない。ならば自分でやるしかない。やらなかったら、後で後悔するだろうと考えたわけです。本でも記していますが、「在日犠牲者論」というのはけっこう、影響力が強いんです。在日の犠牲者性を同語反復する愚直さが、韓国や北朝鮮の発信する反日論とコラボレートして、実は世界的な影響力を発揮している。パリに行ったって、ニューヨークに行ったって、在日だというと、強制連行について言及する人間がいる。もう少し情報通になると、姜尚中という名前を語り始める。その発信地は日本なわけで、それを野放しにしていいのかという問題です。 ――鄭教授も、若かりしころは韓国民族自主統一青年同盟のメンバーとして民族運動に携わっていたとお聞きしています。在日として、姜尚中さん的な被害者意識にのめり込まなかった理由は何でしょうか。  わたしにも、被害者意識に憑依してものを語る、そういう時期がありました。我々は日本で生まれた二世であって、文化的にも社会的にも日本人と変わるところは何もないんだとか、韓国に帰属意識があるわけでもないのに韓国籍を持ち続けるのはおかしいんだとか、そういうことが明瞭になるまでには、けっこう時間がかかりました。比較的若いころにアメリカを体験したことと、韓国で長く暮らしたのがよかったんでしょうね。あとは嗜好の問題でしょう。自分の被害者性を語ることのおこがましさに慣れることができるかどうかの問題ですね。わたしはそんな気持ち悪い役割は担いたくないと思った(笑)。 ――1965年に朴慶植が記した『朝鮮人強制連行の記録』(未来社)という書物が当時の在日のバイブル的な存在になり、今の「在日論」を形成したとされています。  いや、あれは日本人のバイブルになったんでしょう。コリアンに歴史道徳的な負い目意識を持つ日本人の中に、あの本に出会って啓示を受け、それから「強制連行」の調査なんかを始める人間が出てくる。在日の場合は少し違うでしょう。もしあの本を当の在日一世が読んだら、それが自分たちのことを記した本だとは信じられないでしょう。一世の多くは、この国で一旗あげるためにとか、半島での貧しさから逃れるために故郷を離れ、日本にやってきたことを承知しているわけで、彼らの立場からすれば、自分らが日本にいることを「強制連行」のせいにするようなお話が、作りものであることは明らかですからね。 ――今回の『姜尚中を批判する』では、姜氏の自伝的作品『在日』などをサンプルとして読み進めながら人間像を浮かび上がらせる形をとられています。例えば『在日』の中の次の一文。<わたしは、一世たちの思いを後世に伝えねば、と思う。わたし自身の半生を振り返ることによって、その思いを少しでも感じてほしい。在日二世、姜尚中を知ることによって......>  ずいぶん奇怪な文ですね。一世といったって、いろんな一世がいますし、「思い」といったって多様でしょう。どう考えても一元化できるはずのない多様な「思い」を自分の半生を振り返ることで後世に伝えるというんですから、これはでたらめか妄想か。さもなくば、ある種の戦略ということになるのでしょうが、わたしの見るところ、これはなかなか戦略的に書かれた本で、怖い本だと思います。バカにはできません。 ――姜尚中氏はテレビで見る限りソフトな語り口が印象的ですが、こうして本を読み解くと、強引なことが書かれていることに気づかされます。  『在日』にはこういう記述があります。姜氏にはナイーブな部分とふてぶてしい部分が同居していて、こうした「分裂質的なわたしの性格が、父母とわたしを取り巻いてきた『在日』の環境からなにがしかの影響をこうむったことは間違いない」と。自分の「分裂質的」な性格を「在日」との因果関係で語るのですが、これはずいぶん強引な文章ですね。にもかかわらず「なにがしかの影響」などという婉曲話法が用いられているためにソフトな印象を与えてしまう。だから彼の文章は、疑念をもって何度も読み直さないとだまされやすい。 ――ちなみに、その後の記述でも「分裂質的」な性格は母親にもあり、なぜかそれも「在日」という環境が原因だと書いています。  お母さんが突然ヒステリックになるところがあると記した上で、<母もまた、明らかに分裂質的な正確な持ち主なのかもしれない。わたしの勝手な解釈かもしれないが、母がそうなったのは、先天的な要因というよりも、やはり「在日」という環境の影響が大きいと思わざるをえない」>と続ける。しかし、分裂質的な性格を説明したいなら、「在日」などというわけの分からない環境因子に触れるより、母の兄弟に似たような事例はないのかとか、姜家の遺伝因子でも調べた方が科学的でしょう。在日に分裂質的な人間が多いなどという証拠があるわけではないんですから。しかしそうした点には一切触れず、「わたしの勝手な解釈もしれないが」とか「思わざるをえない」などという婉曲話法を用いて、結局は在日の犠牲者性や被害者性を語ってしまう。 ――お行儀よく丁寧な文章に見えますが、どう客観的に読んでも、言っていることは身勝手で恣意的であるとの印象を強く受けます。  上辺は丁寧でソフトだけど中身は極めて身勝手。彼は中学生のころに友人の吃音を真似ているうちに自分も吃音になってしまったというが、これも「在日」のせいだというわけです。 ――その記述があります。<小林秀雄は日本人とは日本語という母胎にくるまれた存在で、その母胎を通じて日本的な美意識の世界を形づくってきた(略)わたしはある意味でその母胎となる共同体から拒絶されている感覚を持ち続けざるを得なかったのである。そのはじき出されるような違和感が、身体化され、吃音となって表出したのではないか>。......こうなると、オカルトですね。  自らの吃音を語るのに小林秀雄を持ち出すのは知的なセンスですね(笑)。しかし、「在日」という言葉をなんの定義もないまま使い続けるのは知的というより魔術的です。「在日(コリアン)」という場合、わたしなら戦前から日本に住み続ける朝鮮半島出身者およびその子孫のうち、現在でも韓国・朝鮮籍を有する特別永住者を指して原則的には使う。ということは、その多くが二世や三世によって構成される40万人弱の特別永住者を指すもので、これは法的なカテゴリーです。そこに文化的ないしは社会的性格なぞ何もない。ところが、彼に言わせると「在日」という集団には、どうやら犠牲者性という性格が共有されているらしい。 ――最後にお伺いします。先に批判された『朝鮮人強制連行の記録』と姜氏の『在日』を、同じ「在日論」というカテゴリーにおいてどう比較されていますか?  荒唐無稽という点では甲乙つけがたいですが、姜氏の『在日』は読者を魅了する仕掛けにおいては、大きな進化を見せています。武骨で読みにくいジャンルであった「在日論」に、情緒性やロマンチシズムの魅力を加味し、在日論の大衆化に大きく寄与したといえるでしょう。在日論は、日本人の心に歴史的負い目を植えつけるとともに、国際社会では日本を否定的に語るときに手軽に使えるアイテムとなっています。姜氏の『在日』は、数ある在日論の中でも、その犠牲者性がほとんど究極まで高められたような作品で、しかも氏は時代の寵児ですから影響力もある。黙っているわけにはいきませんね。 ●ていたいきん 1948年、岩手県にて韓国人の父と日本人の母の間に二世として生まれる。アメリカや韓国、日本で多角的に学びながら、2000年代に入り「在日論」に取り組む。首都大学東京・人文科学研究科教授。専攻:東アジアのナショナル・アイデンティティー、エスニシティー。著書に『増補版 韓国のイメージ』『在日の耐えられない軽さ』(いずれも中公新書)、『在日韓国人の終焉』『在日・強制連行の神話』(いずれも文春新書)『韓国のナショナリズム』(岩波現代文庫)など。
姜尚中を批判する 「在日」の犠牲者性を売り物にする進歩的文化人の功罪 "カン様"はどう反論する? amazon_associate_logo.jpg
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「日常を離れ冒険の旅へ」主人公とともに世界を旅する映画3作品

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『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』
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 映画鑑賞の醍醐味は、実現困難な冒険旅行や、時空を超えた空想世界への旅を疑似体験できること。今週はジャンルこそ異なるが、主人公とともに"世界"を旅する気分を堪能できる3作品を紹介したい。  10月28日公開の『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(2D/3D上映)は、17世紀のヨーロッパを舞台にしたデュマの冒険活劇『三銃士』をベースに、ダ・ヴィンチが設計したという飛行船を登場させるなど大胆な翻案を加えて映画化したアクション超大作。フランスの田舎で元銃士の父から剣術を習った青年ダルタニアンは、立身出世を夢見てパリへ。到着早々に騒動を巻き起こし、国王の護衛隊との大立ち回りを経て、世に名高い三銃士の仲間に。そのころ、英仏を開戦させて実権を握ろうと企む枢機卿リシュリューと謎の美女ミレディにより、王妃の首飾りが盗まれる。密命を受けた三銃士とダルタニアンは、首飾りを取り戻すためイギリスへ渡る。  監督は『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン。同シリーズのヒロインでアンダーソン監督の妻でもあるミラ・ジョヴォヴィッチが、本作では二重スパイのミレディ役で華麗なアクションを披露。ミラに加え、英バッキンガム公爵役にオーランド・ブルーム、リシュリュー役にクリストフ・ヴァルツと、悪役側に有名スターを配したキャスティングも憎いし、ダルタニアンが思いを寄せる侍女役ガブリエラ・ワイルドの清楚な美しさもいい。空飛ぶ戦艦2隻が空中で繰り広げるバトルは、従来の歴史冒険活劇にはない壮大なスケール感、躍動感が魅力。『パイレーツ・オブ・カリビアン』に肩を並べる人気シリーズに成長することも大いに期待できる娯楽作だ。  同じく10月28日に封切られる『ミッション:8ミニッツ』は、デビュー作『月に囚われた男』(09)に続きダンカン・ジョーンズ監督が手掛けた個性的なSFサスペンス。シカゴの列車爆破事件で乗客全員が死亡し、犯人は次の爆破テロを予告した。犯人を検挙し次のテロを未然に防ぐため、政府の極秘ミッションが始動。選ばれた米兵コルターは、爆破8分前の犠牲者の意識に入り込み、列車内にいるはずの犯人を捜索するよう命じられる。爆死するまでの8分間で手がかりを増やし、繰り返し爆破8分前の世界に送り込まれるコルターは、果たして犯人にたどり着くことができるのか。  主演は、『ドニー・ダーコ』(01)『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(10)など"タイムトラベル"を扱う映画に不思議と縁のあるジェイク・ギレンホール。何度も「死」を体験するミッションに疑念を抱き苦悩しながらも、人生を見つめ直し人間的に成長する難役を演じきった。繰り返す8分間の中にヒントが巧妙に散りばめられ、リピート中の微妙な変化の積み重ねが、予想を覆すラストへとつながっていく。ジョーンズ監督が最後に提示する"世界"に、大きな衝撃と深い感動を覚えることだろう。  最後に紹介する『僕たちのバイシクル・ロード 7大陸900日』(11月3日公開)は、壮大な自転車旅行に挑戦した英国の若者ふたりが自ら制作したドキュメンタリー。大学を卒業した従兄弟同士のベンとジェイミーは、飛行機に乗らず自転車だけで7大陸を走破するという、無謀にも思える旅を計画。英国の港からフェリーで英仏海峡を渡り、フランスから走り出す。危険な思いや怪我、自転車の故障を経験しながらも、ふたりは持ち前の明るさで困難を乗り越えていく。  大学卒業後、人と同じ生き方でいいのかと悩み、「自分探し」の旅に出たふたり。数々の試練に遭遇しながらも、克服するたび精神的に成長していく様子が映像からうかがえる。船主に頼み込んで貨物船に無賃で乗せてもらったり、資金調達のため旅の記録をプリントした小冊子を1万部売ったりといったエピソードには、彼らの交渉力や行動力に感心させられると同時に、若者の夢を応援したいという人々の思いも伝わり、ほのぼのと温かい気持ちになれる。「日常を離れ冒険の旅へ」と憧れてもなかなか実行できるものではないが、せめて映画に描かれる世界で、しばしのロマンスと解放感を味わってみてはいかがだろうか。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」作品情報 <http://eiga.com/movie/55968/> 「ミッション:8ミニッツ」作品情報 <http://eiga.com/movie/56216/> 「僕たちのバイシクル・ロード 7大陸900日」作品情報 <http://eiga.com/movie/56902/>
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