石原さとみ主演ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)も今回で最終回。これまでで最高となる平均視聴率13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、有終の美を飾りました。
さて、まずは前回のあらすじを少し。8年前に恋人・糀谷夕希子(橋本真実)を殺されて以来、犯人を捜し続けていた不自然死究明研究所(通称・UDIラボ)の法医解剖医・中堂系(井浦新)は、その犯人が高瀬文人(尾上寛之)だと気づき、復讐のため高瀬のもとへ向かいます。
しかし、ちょうど同じ頃、身の危険を感じた高瀬は警察へ出頭。そして今回の冒頭で高瀬は、26名の女性の死体損壊および死体遺棄の罪は認めるものの、殺人については犯行を否認します。
中堂の無念を晴らすべく、三澄ミコト(石原さとみ)らUDIラボ・メンバーもサポート体制に入るのですが、これまでの被害者はすべて自殺とみなされ、すでに火葬されてしまったため、高瀬の殺人を立証する証拠はありません。
また、前回、スーツケースの中から見つかった遺体に関しては、ホルマリン投与が死因だったのですが、胃の中からボツリヌス菌が検出されたため、高瀬は「(被害者は)食中毒で死んだ」と卑怯な言い逃れをします。
ただ、この供述については、検視の鑑定書からボツリヌス菌検出に関する記述を削除してしまえば、高瀬を不利な立場へと追い込める。担当検事の烏田守(吹越満)からそう提案されたミコトは、中堂の復讐のため鑑定書の偽装に手を貸すか、解剖医としてのプライドやモラルを守るため削除を拒むか、悩みに悩みます。
結局、ミコトは偽装を拒否。そして、それを予測していた中堂は、高瀬の共犯者でフリージャーナリストの宍戸理一(北村有起哉)を襲い、高瀬の犯行を立証できる証拠を出せと脅します。
しかし、宍戸はこれを拒絶。怒り狂った中堂は宍戸を毒殺しようとするのですが、そこへ駆けつけたミコトに説得されたことで冷静になり、血を血で洗う惨事に至らずに済むのでした。
そんな折、ニュースによって事件を知った糀谷夕希子の父親・和有(国広富之)が、勤務地・アメリカから帰国。UDIラボを訪れ、夕希子の遺体を火葬ではなく土葬したという情報をもたらします。
そのことを知ったミコトは、すぐに遺体を掘り起こす手続きをおこない、8年前にはなかった最新の解析機器を用いて再解剖。その結果、夕希子の口の中から高瀬のDNAを検出。犯人だという動かぬ証拠を突き付けられた高瀬は犯行を自供し、中堂の無念が晴れたところで大団円となりました。
これまでハズレ回なしで大いに楽しませてくれた『アンナチュラル』ですが、最高のフィナーレとなりました。特に秀逸だったのは、単純な勧善懲悪ものの展開にせず、ミコトにきっちりと筋の通った正義感を示させたところ。鑑定書の偽装を拒否させた点ですね。
状況的には高瀬の犯行はほぼ100%クロ。しかも、ミコトは中堂の苦悩を痛いほど知っている。私情的には復讐に手を貸したいし、その方が手っ取り早い。また、刑事局長からは、鑑定書を書き換えなければUDIラボへの補助金を打ち切る、という脅しに近い通達もあったのです。
しかし、ミコトは解剖医としての正義を守った。そして、正攻法できっちりと高瀬に犯行を認めさせたのです。
また、この勝利には、ただ単に中堂の復讐の完遂や被害者たちの鎮魂ということ以外にも大きな意味がありました。
実はミコトは、中堂が宍戸を殺そうとした際、「不条理な事件に巻き込まれた人間が自分の人生を手放して、同じように不条理なことをしてしまったら、負けなんじゃないですか」と説得したんですね。
つまり、正々堂々と裁判に臨むことで、不条理の連鎖を見事に断ち切ってみせたのです。それだけに、高瀬が犯行を自供した際に見せたミコトのドヤ顔は爽快感に満ち、そして美しくもありました。
また、ミコト自身も、幼少期に母親の手によって一家心中に巻き込まれ、1人だけ生き残ったという不条理な事件の被害者でもあります。そのため、中堂への説得は、これまでの人生で自分に言い聞かせてきた言葉なのかもしれませんね。ミコトの心の闇とそれに抗う強さを、石原さとみが抑えた演技で見事に表現していました。
キャストの演技については、UDIラボのメンバー全員が素晴らしかった。週刊誌の潜入記者としてこれまで裏切り行為を重ねていたことを皆の前で懺悔したアルバイトの久部六郎(窪田正孝)。それに驚き、怒り、混乱した時の臨床検査技師・東海林夕子(市川実日子)の演技。ミコトの代わりに検察に鑑定書の偽装拒否を通達した際の、所長・神倉保夫(松重豊)の啖呵の切り方。挙げればキリがありません。
そして、8年越しに恋人の復讐を果たした中堂。不愛想ながらも実は純粋な男という役柄を、井浦新が絶妙に演じていました。
その中堂からのパワハラ被害により、UDIラボを去っていた臨床検査技師の坂本誠(ずん・飯尾和樹)がラストで復帰。さらに、六郎も新人アルバイトとして戻って来たため、これは続編への布石なのではと勘繰ってしまうのですが、どうなんでしょう。視聴率も良かったですし、ぜひともシリーズ化を期待してます。
(文=大羽鴨乃)