1月2日に放送された『クレイジージャーニー 正月SP』(TBS系)。その中で、滝沢秀明が意外な「クレイジー」ぶりを披露し、話題になっている。
2015年から始まったこの番組は毎回、その道にハマりすぎちゃった人、しかも地上波であまり取り上げられないような「本物」の“どうかしちゃってる人々”を紹介してきた。
世界のスラムを旅するジャーナリスト・丸山ゴンザレスや、世界の廃墟をカメラに収める写真家・佐藤健寿など強烈なキャラクターはもはやお馴染みだし、落下ルートがまともに取れないようなピンポイントな岩壁からのダイブを繰り返すベースジャンパー・久保安宏や、ブラジルの本気ギャングに銃口を突きつけられつつもシャッターを切り続け、あげくポーズの指示までしちゃう伊藤大輔も狂いに狂っていた。
ケロッピー前田が訪れた、皮膚にぶっといフックを突き刺しそのまま吊り下げられることを楽しむ、「ボディサスペンション」と呼ばれる行為の愛好家たちの映像などは、わけがわからなすぎて震えた。
そんな頭のおかしい人しか出ない番組の特番に「クレイジー」側として現れたのが、あのタッキーだ。正直、多くの視聴者が、「タレントのプロモーション映像」、大人の事情の「ハズレ回」ではないかと疑ったのではではないだろうか。なにせこの番組でタレントが取り上げられるのは、過去3年の中で初めてなのだ。藤岡弘、とか寺門ジモンなら、まだなんとなくわかる。変だから。しかし我々の知る滝沢は変ではない。それなのに出るらしい。それがもう変だ。
さて、何をしたのか。
■火山探検家
どうやら滝沢は、溶岩を見に行くことにハマっているらしい。溶岩と聞いて、最初に想像したのは箱根の大涌谷や群馬の鬼押出し園だ。どちらも観光地だし、大涌谷は、一時入場規制されていたものの、今や公開は再開され、観光客で賑わっている。イメージとしては「ロープウェーで行って、湯煙でも眺めながら温泉卵を食べるのんびりした場所」だ。そんな感じのとこに行くのかな? ……そう思っていた。
結論から言うと、全然違った。
滝沢の行く「溶岩湖」とは、煮えたぎる溶岩(マグマ)が現在進行形で沸き出し、渦を巻いている場所。そう聞くと、いわゆる「地獄」を想像するかもしれないが、我々がよくイメージするところの「地獄」程度では、とてもじゃないが地獄度が足りないくらいの「地獄」だ。しかも滝沢は世界に5つしかない溶岩湖のうち、探検許可が許されてる4カ所に、すでに足を運んでいるという。しかも何度も。植村直己の5大陸最高峰登山を思い出す。
紹介された肩書は「火山探検家」。「ジャニーズの」とか「タキツバの」とか「8時だJの」とかではない。
「アフリカのコンゴ、エチオピアのエルタ・アレ、そしてバヌアツのマルム火山、と、ベンボウ、この4つは行ってますね」
通訳すると、
・コンゴ共和国のニーラゴンゴ火山
・エチオピアのエルタ・アレ
・バヌアツ共和国のマルム火山
・同じくバヌアツ共和国のベンボウ火山
には、すでに溶岩湖を見に行っているらしい(おそらくもうひとつは、南極のエレバス火山だと思われる)。
「やっぱ火山って生きているんで」
「若い火山で」
と、火山やマグマについて語る滝沢から「クレイジー」な香りがたちこめる。イメージは硫黄臭。
今回番組が同行する探検先はバヌアツ共和国のベンボウ火山。かつて行っている場所だが、「2年経ってるんで、今どういう状況かっていうのを今回あらためて見に行きたい」と、何者だかわからない動機を語る滝沢。
その語り口だけでもクレイジーな片鱗はうかがえたが、実際にそこへ向かう行程がすごかった。
もともとハマったきっかけは、同局で過去に放送された番組(『テレビ未来遺産 奇跡の絶景ミステリー 地球46億年!大自然の神秘はこうして創られた』2013年7月17日放送)の企画で、同じバヌアツのマルム火山に行ったことらしいのだが、その後、カメラマンや専門ドクター、現地スタッフと自らチームを結成し、毎回集結するという本気さ。しかも旅のしおりは滝沢自らパワーポイントで自作。その内容は、できるビジネスマンが作った企画書のように見事な出来。
■同行
バヌアツはオーストラリアの東に位置する火山だらけの島国で、成人する男性が櫓の上からダイブしてみせる儀式がバンジージャンプの元となったことでも知られている。飛行機を乗り継ぎ、日本から13時間。
バヌアツの空港到着ロビーから普通に滝沢が出てくるだけの画を見て、思わず「登場の画がきれい」と呟くスタジオの小池栄子。それほど、普段むさ苦しい到着シーンばかりであることがわかる。
しかし、バヌアツには4回来ているというが「火山を見にしか来たことがない」と語る滝沢も、普段のゲストとなんら変わらない特異さを醸し出す。
そこからさらにセスナで別の島に移動、車で移動、そこからさらに8時間ほど登山をし、ようやくベースキャンプにたどり着くという。
車といってもトラックの荷台だし、登山といっても、まったく道のないジャングルや切り立った尾根やの稜線を突き進む。
あまりに険しいため、同行したディレクターがへばってしまい、カメラをバッグに入れて撮影を止めてしまうほどの道中。
しかし、滝沢は私物カメラで自撮りしながら進んでくれる。ヘタレでお馴染み久野ディレクターが何度も休憩を申し出、そのたびに休憩になるが、先を急ぎたいはずなのに、文句ひとつ言わない滝沢の株がどんどん上がる。
結局、途中一泊したためベースキャンプに到着したのは登山開始から30時間以上後。しかも後半は、肌がかぶれるという有毒な雨の中、ガスマスクを装着し、ロープ一本で崖を下る過酷さ。
さらに、キャンプ地から200メートルの断崖絶壁をロープで垂直下降。しかも危険な箇所に行くときは全て滝沢が先陣を切り、続くメンバーにアドバイスしつつ誘導する。ロープを固定するための金具を突き刺す穴をドリルで掘削する姿に、もはやアイドルの面影はない。
もう十分沸き立つマグマが見えるのだが、まだまだチーム滝沢は下降する。
■久野の「活躍」
この探検に同行したディレクターの久野が、途中途中でいい具合に場を乱してくれる。
あまりのきつさにカメラ撮影を放棄し、登山に専念したにもかかわらず再度ダウン、今度はそのカメラを入れたリュックごと人に持ってもらい、一人手ぶらでお遍路さんみたいな杖をつき、お荷物そのものと化す久野。ロープで垂直に下降する際、ガスが吹き出す岩盤の真ん中で休憩しだし、「そこで休憩することはおすすめしないです」とやんわり注意される久野。
目的地直前で「緊張感を保つ」「中途ハンパな気持ちで行くと事故ってしまう」と真剣に決意を語る滝沢を撮影しながら「ゲホッ! ウエッ~」と嫌がらせのようなタイミングで突如えづき、台無しにする久野。
しかも体力がないだけならまだしも、溶岩湖目前の危険なエリアで再度雨に降られ、進むも戻るもできないピンチに「めっちゃ雨降ってきた~。最悪だし。最悪だしこれ」「最悪じゃないっすか?」と、滝沢に当たるような言い方をする様子は、目を見張るほどのクズっぷりだったが、そんな久野に一度たりとも言葉を荒らげたり嫌な顔をせず神対応し続ける滝沢の姿は、イラつく我々の目に菩薩に映った。
自身の不甲斐なさを詫びる久野に「大丈夫です、助け合いなんで」と滝沢はフォローしていたが、一度たりとも助け「合って」はいない。ただ一方的に滝沢が助け続けていた。
ナレーションでは、この久野の同行を「人選ミス」としていたが、これは意図的な「配役」だろう。彼のどうしようもなさが滝沢のエキスパートぶりをいい具合に際だたせつつ、同時にほとんどの笑いも生み出していた。
逆に、この番組は、ゲストのまともでないクレイジーぶりをみせるために揚げ足を取ることもある。普通ならカットするようなウンコを踏んでしまうシーンや(丸山ゴンザレス)、ホテルで必ず寝坊するシーンなど(佐藤健寿)を使うのもそれだ。
どちらにしろ、ただ対象者(ゲスト)だけを映す以上の化学反応をみせる場合があり、それが鬱陶しく感じたりあざとく感じる場合も時にあるものの、今回は見事に成功していたように感じる。
■いよいよ溶岩湖
いよいよ、ヒートスーツという消防士のような服に着替え、最後の断崖を下る。顔にはもちろんガスマスク。
ようやくたどりついた映像は想像の遥か上だった。
画面の9割が、煮えたぎり沸き立つマグマ。下方にほんのちょっとだけ影絵のような地面のラインが見え、そこをシルバーの米粒大の物質が蠢く。これが滝沢だ。
溶岩を見に行くとは聞いていたが、思ってたのと全然違う。マグマのうねりが巨大過ぎて、そのスピードがおかしく見えるのだ。松本人志も口にしていたが、スゴすぎて合成映像に見えてしまうほど。巨大な生物の体内のどこかに、滝沢が紛れ込んでしまったようにすら見える。
我々はさまざまなマグマのシーンを、フィクションで観てきた。
『スターウォーズ エピソード3/シスの復讐』(05)の最後で、アナキンとオビワンが戦う衛星ムスタファー。『インディジョーンズ 魔宮の伝説』(84)でケイト・キャプショーが生贄にされそうになる舞台。『ターミネーター2』(91)や『エイリアン3』(92)で主人公が身を投げる溶鉱炉的なもの。
そのどれよりもすごいし、比べ物にならない迫力。松本が目をまん丸く開き、興奮気味に「タッキーすごいすごい」と拍手していたのが印象的だ。
直前、散々弱音を吐く久野ディレクターに滝沢は、「あの淵に立った瞬間に疲れが全て吹っ飛ぶと思いますよ」と励ましていたが、映像を目にして感じたのは、疲れどころか、その身もろとも吹き飛んでしまうのでは? という懸念。
それくらい、他ではあり得ない圧倒的な映像。放送では遥か上からの撮影した映像だけだったが、その現場にいたら一体どんな光景なのか。これを目の前で見た滝沢が突然ハマってしまったのが、その答えなのだろう。
至近距離にいられるのはわずか5分で、それ以上は命の危険があるというのもすごい。この5分のためにだけに滝沢は来るのだ。
なぜ来るのかと聞かれ「それがわからないんすね、僕も。だからたぶん来ちゃうんでしょうね」と答えていたが、それは真っ当すぎるくらい真っ当な本音だろう。
最近、すぐ横にもう一つ穴ができたことに触れ、「新しいのがどんどんできちゃうので行かないといけない」と謎の義務感を語る滝沢は、ただの冒険家の顔をしていた。
ディナーショーなどでのトークからファンの間では有名だったらしい滝沢のクレイジーな趣味。研究者のために現地の石を持ち帰ったりとアカデミックな活動もしているらしい。今後もアイドル兼、火山探検家として是非とも活動し続けていただきたい。
(文=柿田太郎)