5月に最終回を迎えた、人気ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。怒涛の展開を見せた最終話は賛否両論だったが、最終シーズンは1話約1,500万ドル(約16億2,000円)の制作費用をかけている作品だけに、見応えは十分。今なお余韻に浸り続けるファンは多い。
超自然現象や魔法、巨大なドラゴンが登場する中世ヨーロッパのような暗黒の異世界を舞台に、7つの王国からなる統一王朝の支配者“鉄の玉座”をめぐってって死闘を繰り広げる諸名家の興亡を描いた同作。ジョージ・R・R・マーティン著の人気ファンタジー小説シリーズ『氷と炎の歌』が原作となっている。莫大な制作費を投入した迫力満点な映像のほか、グロテスクな暴力シーン/セックスシーンが多く、“大人が楽しめるファンタジードラマ”として世界的に大ヒットした。
ヒットのもうひとつの要因は、登場人物たちのキャラクター。冷酷かつ残虐な王、小人症というハンディがあるものの頭脳明晰で情にも厚い男、壮絶な戦いの中で凛と強く生きていく女性たちなど、魅力たっぷりなキャラクターが登場し、「善人かと思ったけど、見方によっては悪者かもしれない」という展開も。
動画ストリーミングサービスのAmazonプライム・ビデオやhuluなどで配信されており、最終回を見終え改めてシーズン1から見直すファンも多い。今回は『ゲーム・オブ・スローンズ』を、何倍も楽しめるトリビアを紹介したい。
衣装はIKEAのラグ
莫大な制作費用をかけて異世界を描いている同作。登場人物たちが着ているものは、中世のヨーロッパのものに酷似しており、衣装代が高そうだ。しかし、番組の衣装デザイナー、ミッチェル・クラプトンは、2016年にロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館で行った講演で、「ナイツウォッチ」と呼ばれる守備隊が着用している毛皮の防寒ケープは、IKEAで売っているラグを使ったと告白。お手頃価格のラグを切り、縫い合わせ、皮のベルトを付け、温かく見せるように毛羽立たせたそう。これにIKEAは大喜びし、該当ラグを使った「ナイツウォッチ」の防寒服の作り方を簡易なイラストで公開し、話題となった。
最も高額な“死ぬシーン”は
ストーリー上、とにかく死人が多い『ゲーム・オブ・スローンズ』。火あぶりや斬首などの衝撃的な死、あっけない死など、大人だけでなく子どもも容赦なく殺される。
そんな作品の中で、撮影費用が最もかかった「死ぬシーン」は、シーズン5第10話。メイジー・ウィリアムズ演じるアリア・スタークが、イアン・ビーティー演じるマーリン・トラントを殺害するシーンだった。
これは製作総指揮者のD・B・ワイスとデイヴィッド・ベニオフが2017年に明かしたもの。「復讐に燃える少女アリアが、小児性愛癖のある王の盾・マーリンを娼館で殺すシーン」を挙げ、「本当に目をぶっ刺すわけにはいかなかったわけだから」と説明。ナイフで両目を潰され、うめき苦しむマーリンの顔のアップがあるのだが、リアルを追求した特殊メイクにかなりの費用がかかったとのこと。
ショッキングなシーンが多い『ゲーム・オブ・スローンズ』だが、シーズン1第10話に登場した「棒に刺され、一列に並んだ裏切り者のさらし首」には、別の意味でショックを受けた人が多かった。最後に映されたさらし首の横顔が、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の横顔に瓜二つだったからだ。
問題の頭について、製作総指揮者のD・Bとデイヴィッドは、DVDの解説で「わざとじゃないし、政治的な意図もない」と述べた上で「最後の頭はジョージ・ブッシュ」と認めたことから、共和党は大激怒。「この番組では、たくさんの作り物のボディパーツを使用する。それをすべて我々が一から作るとコストがかかってしまうので、他の番組などで使われた小道具の使い回しをしているんだ。その中にブッシュの頭部があり、たまたま使っただけ」と苦しい弁解をしたが、共和党以外の人からも「悪趣味」と批判された。最終的に放送局の米HBOが、正式に謝罪。「趣味の悪い冗談で済まされるものではない」と陳謝し、今後DVDなどを制作する際には問題のシーンを削除するとの声明を出した。
最も多く出演している役者は?
ドラマに最も多く出演した役者は、ティリオン・ラニスター役のピーター・ディンクレイジ。全73話のうち、67話に出演した。
ティリオンというキャラクターは、小人症のため“小鬼”と呼ばれているが、頭脳明晰で情の厚い人気キャラクター。役をオファーされたピーターは当初、ファンタジー作品と聞いて「『白雪姫』に登場する7人の小人のような格好をさせられるのではないか」と乗り気ではなかった。しかし、クリエーターたちから作品の世界観や、ヒーローでも悪役でもない女ったらしの酔っ払いの役だと説明され、即決した。
ちなみに、ほとんどのキャストは正式なオーディションを経たが、ピーターだけは原作著者で製作総指揮者のジョージ、脚本家で製作総指揮者のD・Bとデイヴィッドの3人の意見が一致し、オーディションは受けていない。
ティリオン役でエミー賞やゴールデン・グローブ賞を獲得したピーターだが、実はベジタリアン。劇中で肉を食べるシーンは、豆腐や偽肉を食べている。
共演した犬を引き取ったソフィ・ターナー
ソフィー・ターナーが演じた、スターク家の長女サンサ・スターク。シーズン1では、父が拾った6匹の大狼の中から、気性が穏やかな1匹を引き取り、レディと名付けて育てていた。その後、レディは殺されてしまい、ノーザン・イヌイット・ドッグ(狼に似せて作られた犬種)のZunniもお役御免となったのだが、ソフィーはZunniを引き取り、大切に育てた。17年にZunniが亡くなった後にも、似たような犬を家族に迎え入れるなど、Zunniへの思い入れは今なおとても強い。
ちなみに大狼はスターク家の紋章にもなっており、ソフィーは昨年6月、最終シーズンに向けて、腕に紋章とサンサの父の言葉「群れは生き延びる(The pack survives)」というタトゥーを彫り、大きな話題となった。
『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン7にカメオ出演したことが大々的に報じられ、注目を集めたエド・シーラン。実は、ほかにもカメオ出演しているミュージシャンがいる。
世界的にファンが多いイギリスのロックバンド「コールドプレイ」のウィル・チャンピオンは、シーズン3で放送された結婚式のドラマーとして登場。暗殺に関わる重要な役どころを演じた。アイスランドのポストロックバンド「シガー・ロス」は、シーズン4で結婚式を盛り上げる音楽隊として出演し、不機嫌な新郎からコインを投げつけられるという仕打ちを受けた。
シーズン4には、北アイルランド人とスコットランド人の混成ロックバンド「スノウ・パトロール」のフロントマン、ギャリー・ライトボディが登場。
シーズン6には、アイルランドのフォークロック・バンド「オブ・モンスターズ・アンド・メン」のメンバーが登場。シーズン5には、米メタルバンド「マストドン」がゲスト出演。ドラマーのブラン・デイラーは、エドがゲスト出演した回にも登場した。
パパラッチ対策で偽シーンを撮影
展開が読めないことで世界中のファンを惹きつけていた『ゲーム・オブ・スローンズ』。「続きが知りたい!」と躍起になる熱狂的なファンも多く、制作陣は撮影の盗撮や台本の流出を強く警戒していた。その対策として、実際には放送しない「偽のシーン」をいくつも撮影。1シーンにつき5時間もかけてまったく異なる3つのシーンを撮影したため、パパラッチたちは翻弄され、実際に使用するシーンを盗撮されることを防げたという。すでに殺されたキャラクターに衣装を着せてシーズン6の撮影をしているところをパパラッチされたこともあったが、放送ではそのキャラクターは登場せず。これも偽シーン撮影だったと見られている。
また、ドローンによる盗撮を警戒して無線信号を妨害する装置も使用を使用し、最終話は役者たちにも内容を知らせず、台本は何パターンも用意。デジタル化された偽の台本は一定の時間が過ぎると自動消滅するなど、ハイテク機器を駆使した『ミッション:インポッシブル』さながらの“スパイ戦”だったようだ。
一般視聴者はもとより、数多くのアーティストたちを魅了してきた『ゲーム・オブ・スローンズ』。ラッパーも、このドラマの大ファンが多い。そんな彼らがドラマにインスパイアされた曲を、放送局の米HBOが「公式アルバム」としてリリースしている。
2014年に発売された『Catch the Throne』は『ゲーム・オブ・スローンズ』がテーマのミックステープとなっており、コモン、アウトキャストのビッグ・ボーイらがラップ。音楽共有サイト「SoundCloud」で無料配信された。
15年には『Catch the Throne』ミックステープ Vol.2が発売され、スヌープ・ドッグ、メソッド・マンら大物ラッパーのほか、アンスラックスやキルスウィッチ・エンゲイジなどメタルバンドも参加。スヌープは、「『ゲーム・オブ・スローンズ』はヒップホップの世界観そのもの。ギャングやファミリーへの忠誠心、トップの座を狙いにいくさまがそっくりだ。(ミックステープには)何がなんでも参加しなくちゃと思ったね。おれがこのドラマをどう感じているのかを、みんなに伝えたい」と意欲を語った。
19年には、ドラマ終了に合わせて豪華ラッパーが参加し、さらにパワーアップした公式アルバム『For The Throne』が発売。SZAとザ・ウィークエンド、トラビス・スコットという人気アーティストがコラボした「Power Is Power」が大きな話題となった。









