『ゲーム・オブ・スローンズ』8つのトリビア! IKEA活用の衣装にブッシュの生首、あの人気ミュージシャンも登場

 5月に最終回を迎えた、人気ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。怒涛の展開を見せた最終話は賛否両論だったが、最終シーズンは1話約1,500万ドル(約16億2,000円)の制作費用をかけている作品だけに、見応えは十分。今なお余韻に浸り続けるファンは多い。

 超自然現象や魔法、巨大なドラゴンが登場する中世ヨーロッパのような暗黒の異世界を舞台に、7つの王国からなる統一王朝の支配者“鉄の玉座”をめぐってって死闘を繰り広げる諸名家の興亡を描いた同作。ジョージ・R・R・マーティン著の人気ファンタジー小説シリーズ『氷と炎の歌』が原作となっている。莫大な制作費を投入した迫力満点な映像のほか、グロテスクな暴力シーン/セックスシーンが多く、“大人が楽しめるファンタジードラマ”として世界的に大ヒットした。

 ヒットのもうひとつの要因は、登場人物たちのキャラクター。冷酷かつ残虐な王、小人症というハンディがあるものの頭脳明晰で情にも厚い男、壮絶な戦いの中で凛と強く生きていく女性たちなど、魅力たっぷりなキャラクターが登場し、「善人かと思ったけど、見方によっては悪者かもしれない」という展開も。

 動画ストリーミングサービスのAmazonプライム・ビデオやhuluなどで配信されており、最終回を見終え改めてシーズン1から見直すファンも多い。今回は『ゲーム・オブ・スローンズ』を、何倍も楽しめるトリビアを紹介したい。

衣装はIKEAのラグ

 莫大な制作費用をかけて異世界を描いている同作。登場人物たちが着ているものは、中世のヨーロッパのものに酷似しており、衣装代が高そうだ。しかし、番組の衣装デザイナー、ミッチェル・クラプトンは、2016年にロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館で行った講演で、「ナイツウォッチ」と呼ばれる守備隊が着用している毛皮の防寒ケープは、IKEAで売っているラグを使ったと告白。お手頃価格のラグを切り、縫い合わせ、皮のベルトを付け、温かく見せるように毛羽立たせたそう。これにIKEAは大喜びし、該当ラグを使った「ナイツウォッチ」の防寒服の作り方を簡易なイラストで公開し、話題となった。

最も高額な“死ぬシーン”は

 ストーリー上、とにかく死人が多い『ゲーム・オブ・スローンズ』。火あぶりや斬首などの衝撃的な死、あっけない死など、大人だけでなく子どもも容赦なく殺される。

 そんな作品の中で、撮影費用が最もかかった「死ぬシーン」は、シーズン5第10話。メイジー・ウィリアムズ演じるアリア・スタークが、イアン・ビーティー演じるマーリン・トラントを殺害するシーンだった。

 これは製作総指揮者のD・B・ワイスとデイヴィッド・ベニオフが2017年に明かしたもの。「復讐に燃える少女アリアが、小児性愛癖のある王の盾・マーリンを娼館で殺すシーン」を挙げ、「本当に目をぶっ刺すわけにはいかなかったわけだから」と説明。ナイフで両目を潰され、うめき苦しむマーリンの顔のアップがあるのだが、リアルを追求した特殊メイクにかなりの費用がかかったとのこと。

 ショッキングなシーンが多い『ゲーム・オブ・スローンズ』だが、シーズン1第10話に登場した「棒に刺され、一列に並んだ裏切り者のさらし首」には、別の意味でショックを受けた人が多かった。最後に映されたさらし首の横顔が、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の横顔に瓜二つだったからだ。

 問題の頭について、製作総指揮者のD・Bとデイヴィッドは、DVDの解説で「わざとじゃないし、政治的な意図もない」と述べた上で「最後の頭はジョージ・ブッシュ」と認めたことから、共和党は大激怒。「この番組では、たくさんの作り物のボディパーツを使用する。それをすべて我々が一から作るとコストがかかってしまうので、他の番組などで使われた小道具の使い回しをしているんだ。その中にブッシュの頭部があり、たまたま使っただけ」と苦しい弁解をしたが、共和党以外の人からも「悪趣味」と批判された。最終的に放送局の米HBOが、正式に謝罪。「趣味の悪い冗談で済まされるものではない」と陳謝し、今後DVDなどを制作する際には問題のシーンを削除するとの声明を出した。

最も多く出演している役者は?

 ドラマに最も多く出演した役者は、ティリオン・ラニスター役のピーター・ディンクレイジ。全73話のうち、67話に出演した。

 ティリオンというキャラクターは、小人症のため“小鬼”と呼ばれているが、頭脳明晰で情の厚い人気キャラクター。役をオファーされたピーターは当初、ファンタジー作品と聞いて「『白雪姫』に登場する7人の小人のような格好をさせられるのではないか」と乗り気ではなかった。しかし、クリエーターたちから作品の世界観や、ヒーローでも悪役でもない女ったらしの酔っ払いの役だと説明され、即決した。

 ちなみに、ほとんどのキャストは正式なオーディションを経たが、ピーターだけは原作著者で製作総指揮者のジョージ、脚本家で製作総指揮者のD・Bとデイヴィッドの3人の意見が一致し、オーディションは受けていない。

 ティリオン役でエミー賞やゴールデン・グローブ賞を獲得したピーターだが、実はベジタリアン。劇中で肉を食べるシーンは、豆腐や偽肉を食べている。

共演した犬を引き取ったソフィ・ターナー

 ソフィー・ターナーが演じた、スターク家の長女サンサ・スターク。シーズン1では、父が拾った6匹の大狼の中から、気性が穏やかな1匹を引き取り、レディと名付けて育てていた。その後、レディは殺されてしまい、ノーザン・イヌイット・ドッグ(狼に似せて作られた犬種)のZunniもお役御免となったのだが、ソフィーはZunniを引き取り、大切に育てた。17年にZunniが亡くなった後にも、似たような犬を家族に迎え入れるなど、Zunniへの思い入れは今なおとても強い。

 ちなみに大狼はスターク家の紋章にもなっており、ソフィーは昨年6月、最終シーズンに向けて、腕に紋章とサンサの父の言葉「群れは生き延びる(The pack survives)」というタトゥーを彫り、大きな話題となった。

 『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン7にカメオ出演したことが大々的に報じられ、注目を集めたエド・シーラン。実は、ほかにもカメオ出演しているミュージシャンがいる。

 世界的にファンが多いイギリスのロックバンド「コールドプレイ」のウィル・チャンピオンは、シーズン3で放送された結婚式のドラマーとして登場。暗殺に関わる重要な役どころを演じた。アイスランドのポストロックバンド「シガー・ロス」は、シーズン4で結婚式を盛り上げる音楽隊として出演し、不機嫌な新郎からコインを投げつけられるという仕打ちを受けた。

 シーズン4には、北アイルランド人とスコットランド人の混成ロックバンド「スノウ・パトロール」のフロントマン、ギャリー・ライトボディが登場。

 シーズン6には、アイルランドのフォークロック・バンド「オブ・モンスターズ・アンド・メン」のメンバーが登場。シーズン5には、米メタルバンド「マストドン」がゲスト出演。ドラマーのブラン・デイラーは、エドがゲスト出演した回にも登場した。

パパラッチ対策で偽シーンを撮影

 展開が読めないことで世界中のファンを惹きつけていた『ゲーム・オブ・スローンズ』。「続きが知りたい!」と躍起になる熱狂的なファンも多く、制作陣は撮影の盗撮や台本の流出を強く警戒していた。その対策として、実際には放送しない「偽のシーン」をいくつも撮影。1シーンにつき5時間もかけてまったく異なる3つのシーンを撮影したため、パパラッチたちは翻弄され、実際に使用するシーンを盗撮されることを防げたという。すでに殺されたキャラクターに衣装を着せてシーズン6の撮影をしているところをパパラッチされたこともあったが、放送ではそのキャラクターは登場せず。これも偽シーン撮影だったと見られている。

 また、ドローンによる盗撮を警戒して無線信号を妨害する装置も使用を使用し、最終話は役者たちにも内容を知らせず、台本は何パターンも用意。デジタル化された偽の台本は一定の時間が過ぎると自動消滅するなど、ハイテク機器を駆使した『ミッション:インポッシブル』さながらの“スパイ戦”だったようだ。

 一般視聴者はもとより、数多くのアーティストたちを魅了してきた『ゲーム・オブ・スローンズ』。ラッパーも、このドラマの大ファンが多い。そんな彼らがドラマにインスパイアされた曲を、放送局の米HBOが「公式アルバム」としてリリースしている。

 2014年に発売された『Catch the Throne』は『ゲーム・オブ・スローンズ』がテーマのミックステープとなっており、コモン、アウトキャストのビッグ・ボーイらがラップ。音楽共有サイト「SoundCloud」で無料配信された。

 15年には『Catch the Throne』ミックステープ Vol.2が発売され、スヌープ・ドッグ、メソッド・マンら大物ラッパーのほか、アンスラックスやキルスウィッチ・エンゲイジなどメタルバンドも参加。スヌープは、「『ゲーム・オブ・スローンズ』はヒップホップの世界観そのもの。ギャングやファミリーへの忠誠心、トップの座を狙いにいくさまがそっくりだ。(ミックステープには)何がなんでも参加しなくちゃと思ったね。おれがこのドラマをどう感じているのかを、みんなに伝えたい」と意欲を語った。

 19年には、ドラマ終了に合わせて豪華ラッパーが参加し、さらにパワーアップした公式アルバム『For The Throne』が発売。SZAとザ・ウィークエンド、トラビス・スコットという人気アーティストがコラボした「Power Is Power」が大きな話題となった。

本当は「メレディスの新恋人」だった! 『グレイズ・アナトミー』脚本流出で生まれた、あのキャラクター

 救急病院を舞台に、そこで働く人の活躍や葛藤、恋模様を描いた、米ABC局の人気ドラマ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』。5月には、局が同作のシーズン16と17の継続を発表した。これにより、医療ドラマの最長作品として君臨していた『ER 緊急救命室』(シーズン15で終了)を超えることが確定し、大きな話題となった。

 2005年3月に放送開始された『グレイズ・アナトミー』だが、シーズン1から登場しているメインキャラクターは、主人公のメレディス・グレイ(演:エレン・ポンピオ)のほかは、アレックス・カレフ(ジャスティン・チェンバース)、ミランダ・ベイリー(チャンドラ・ウィルソン)、リチャード・ウェーバー(ジェームズ・ピケンズ・Jr)の3人だけ。これまで彼らを取り巻く実に多くのキャラクターが登場しては去っていった。

 メレディスと“くっついたり離れたり”していたデレク・シェパード(パトリック・デンプシー)はシーズン11でまさかの死亡。以来、「『グレイズ・アナトミー』はもうすぐ終わる」というウワサが何度も流れるが、シーズン15では新たな恋人が登場し、メレディスの恋物語は当面続きそうである。

 そんなメレディスの恋愛相手として、シーズン14にヨーロッパの科学者が登場する予定だったことを、番組の製作総指揮者の一人クリスタ・バーノフが明かした。

 米エンタメ誌「エンターテインメント・ウィークリー」は現地時間3日、「シーズン14でメレディスは新しい男性と恋愛する予定だった」というクリスタの話を紹介。

 しかし、米テレビ関連情報サイト「TVLine.com」の運営者で、テレビ業界ジャーナリストのマイケル・オーシエロに「メレディスの新しい恋愛相手である、科学者役のキャスティングを行っているという情報をつかまれてしまった」とのこと。情報が流出したことを知ったクリスタは、複数の脚本家たちが案を出し合ってストーリー展開を練る“ライターズルーム”へ行き、「ヨーロッパ人科学者という案には興味が失せたわ。別のキャラクターを考えてくれない?」と変更を命じたことを明かした。

 おかげで脚本は大幅な変更を余儀なくされたわけだが、クリスタは「結果的によかった」と回想。恋愛対象ではなく、メレディスに大きな影響を与えることになる、メレディスの母親(ケイト・バートン)の古い友人、マリー・セローン(レイチェル・ティコティン)を登場させることになったからだ。「一時的な恋愛よりも、断然おもしろいストーリーに仕上がったわ」と満足そうに語った。

 人気ドラマの新シーズンの脚本内容が流出するのはよくある話だが、内容をここまで大きく変更できるのは、優秀な脚本家を多数抱えている『グレイズ・アナトミー』だからこそ。今回の報道で「流出したら内容が変更する」と認識が広まったため、今後、脚本がスッパ抜きされることは少なくなっていきそうだ。

『THIS IS US』5つの魅力――“ドラマ疲れ”のアメリカで、一見地味なファミリー作品が愛されたワケ

 4月からNHKのBSプレミアムでシーズン2が放送される『THIS IS US 36歳、これから』。家族愛、人間のつながりがテーマの一見地味なファミリードラマだが、アメリカでは大ヒットしている。

 物語の主人公は、シーズン1で36歳の誕生日を迎える“三つ子”。ケヴィンとケイトは血のつながった兄妹、ランダルは捨て子でケヴィンとケイトが生まれた病院に保護されたのだが、三つ子の一人を死産で失い、悲しみに暮れるジャックとレベッカ夫婦に見いだされ、引き取られた。3人は男気のあるジャックと、家庭を平和にするための努力を惜しまないレベッカから、無償の愛を注がれ育つ。

 ドラマは、「3人が36歳になり、ミッドライフ・クライシス(中年の危機)に足を踏み入れた現在」と「36年前に3人がこの世に生を受け育った過去」、「3人が生まれる前の遠い昔」を何度も行き来しながら、家族、人生、幸せとは何なのかを視聴者に問いかけながら進んでいく。

 昨年2月に放送されたシーズン2第14話の視聴数は、昨年アメリカで放送されたドラマのエピソードの中で最多を記録。シビアな評価で知られるレビューサイト「Rotten Tomatoes」でも、シーズン1・2は91%、シーズン3は94%と、高く評価されている。なぜ『THIS IS US 36歳、これから』は、ここまで全米から愛されているのか? その魅力をひもといてみたい。

魅力1)「THIS IS US、これは私たち」と思えるキャラクター

 このドラマの最大の魅力は、キャラクターの苦悩がとてもリアルで、深く共感できるという点だ。

 肥満を克服しようと努力しているケイトは、体形コンプレックスから自信を持てずにいる。また、美しく、プロポーションも良い母親と自分を比べてしまい、大人になっても母親に八つ当たりしてしまう。優しい彼ができても、細見でファッショナブルな元カノと自分を比べるなど、どうしても自分に自信が持てない。そう、ケイトは私たちそのものなのだ。

 俳優のケヴィンは人気コメディに主演していたが、道化師扱いされることに嫌気が差し、撮影中にブチ切れて番組を降板。長身イケメンがゆえに、中身を見てもらえずにいると悩んでいる。さらに小さい頃から人の意見を気にしてしまう癖があるため、あらゆる場面で決断がなかなか下せない。おまけに、「両親は、自分より養子のランダルばかりを愛してきた」と思い込み、愛に飢えている。

 そのランダルは超エリートで、高級住宅街に住み、美しい妻・かわいい娘たちに恵まれているが、どこか満たされない。育ての両親からは実子と分け隔てなく愛され、才能を伸ばすべく私立の小学校にも通わせてもらってきた。そのため、「期待に応える」ことを美徳としている。その結果、異常なまでの完璧主義者へと成長。過剰なストレスから一時的に目が見えなくなることもあるが、人の力は借りずに自分で克服。白人コミュニティで育ってきた彼は、人種差別されても気に留めず、軽く流すすべを身につけており、もやもやした気持ちを自分一人で抱え込む。

 三つ子のキャラクターは、見た目も性格も見事なまでにバラバラ。決して視聴者の人生と重なりやすいわけではないが、彼らの悩みの種が丁寧に描かれ、どのキャラクターの気持ちにも寄り添うことができるのだ。

 三つ子と同じ誕生日の父親ジャックは、母親が父親から日常的に暴力やモラハラを受けるすさんだ家庭で育ったため、自分は温かい家庭を築き、良き夫、良き父親でありたいと努力する。深酒するという問題も抱えているが、アルコール依存症だった父親のようにはならないと、家族を第一に考えて断酒を決意する。

 母親レベッカも、過干渉の実母を反面教師にしている。専業主婦として大奮闘してきたが、子どもたちが10代になると「子どもから必要とされていない」と感じるようになり、自分の価値を見いだせなくなる。もう一度、歌手としての夢を追いかけたいと行動に移すが、ジャックに猛反対され、夫婦関係はぎくしゃくしてしまう。

 理想の夫婦/親であるジャックとレベッカだが、描かれているのはきれいごとだけではない。愛する人のために、仕事や親との関係においてどれだけ妥協をしなければならないのか、犠牲を払わなければならないのかもリアルに描かれており、深く共感できるのだ。

 ランダルが探偵を通して見つけ、交流を持つようになった実父ウィリアムは、耐えられない悲しみのせいで薬物に手を出し、人間関係も壊れ、後悔の多い日々を送ってきた。しかし、彼はそれもまた人生だと受け入れている。ウィリアムの物語にはホロリとさせられるとともに、人生における「後悔」をこれ以上増やさないためにはどうすればよいのか、考える機会を与えてくれる。

 ウィリアムはランダルと再開を果たした時点で末期の胃がんを患っており、ジャックも現在のパートでは故人となっている。長年「父親の死の悲しみ」を封印していたケヴィンが、夫を亡くしたばかりの未亡人の前で「こうすればよかった」と号泣し、悲しみを吐き出すシーンもある。愛する人の死には、少なからぬ後悔が付きまとうこと、トラウマになることも丁寧に描かれており、愛する人の死、身内の死を経験したことがある人なら、自分と重ね合わさずにはいられなくなる。

魅力3)チャーミングなトビーというキャラクター

 人生を描いた重厚な『THIS IS US』で、ギャグを飛ばしクスっとさせてくれるのが、人気キャラクターのトビーだ。彼は減量プログラムで一目惚れしたケイトに積極的にアプローチをかけ、閉ざされていたケイトの心を少しずつ開けていくのだが、その言動が最高だと視聴者から愛されるように。

 減量プログラムに入っていたくらいなので彼は肥満体形なものの、卑屈になることなく、人生をエンジョイしたいタイプ。美男子でもお金持ちでもないが、明るい性格と、ウィットに飛んだ話術、そしてブラックな笑いのセンスでケイトを笑顔にさせてくれる。

 パーティーを楽しめないケイトの手を引いてダンスを踊ったり、彼女の歌唱力に惚れ込み、歌うことを勧めたり。人前で歌うことを躊躇する彼女のために「叔母が住んでいる老人ホームでのミニリサイタルなら緊張しないだろう」とセッティングしたり。行動の裏に下心があることは認めるものの、無理強いはせず、紳士的であるため嫌な感じは全くしない。

 さりげなくケイトを力づけてくれるトビーは、まさしく「理想の恋人」。ケイトへのサプライズも過剰ではなく、彼女が本当に喜ぶことをするあたりも、女性視聴者をときめかせている。

 このドラマは現在と過去を行き来しながら進んでいくが、そうすることではっきりと見えてくるものがある。人間は生まれた瞬間から、自分の周りにいる人間に影響を受けながら育つということ。育った環境、関わった人たちすべてがその人の未来へとつながること。そして、大人になってからわかる親の愛情、ありがたみだ。

 ジャックが子どもたちを団結させるために作った“かけ声”は、大人になった現代でもきょうだいの絆を確かめる時に使われている。プレッシャーに押しつぶされパニックに陥ったランダルの両頬を挟み、一緒に深呼吸することで落ち着かせる手法は、ジャックからケヴィンに自然に受け継がれている。ほかにもジャックが子どもたちを安心させるための仕草、言葉、一つ一つが大人になった子どもに引き継がれ、さらに次の世代にもつながっている。人は死んでもそこですべてが終わるわけではない。思い出はもちろんのこと、自分が影響を与えた人の中で生き続けることができると気づかせてくれるのだ。

魅力5)普遍的なテーマを丁寧に描いたテレビドラマの底力

 Netflix、Amazon、Huluの三大ストリーミングサービスの作品が次々エミー賞にノミネートされ、もはやテレビドラマはストリーミングサービスを無視できない時代に。そのため、両者ともに視聴者の興味を引くような刺激的で話題性の強い作品を次々と制作するようになった。しかし、ここにきて「ドラマが疲れる」と感じる視聴者が増えてきた。「内容や描写がショッキングすぎてしんどい」「選択肢は増えたが、感動を呼び起こされることはなく、印象にも残らない」というのだ。

 そんな中、『THIS IS US』はファミリードラマとして原点に戻り、脇役を含めた全キャラクターを丁寧に描き、家族、子育て、人との関わり合いという素朴なテーマを正直に描くことで、視聴者を「ほっとできるドラマ」「癒やされる」と、とりこにしたのだ。派手なシーンや刺激的なシーンはない。が、毎回小さなサプライズが用意されており、時系列がバラバラのため、謎解きのようなストーリー展開であることにハマる人が続出。ファミリードラマの枠を超えたと評されるようになった。

 現在アメリカで放送中のシーズン3は視聴者の思いもよらぬ展開になっているが、ファミリードラマという軸はぶれていない。それが人気維持の秘訣だともいわれている。

堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て、現在は2度目の台湾生活を満喫中。

『クリミナル・マインド』『13の理由』『フラーハウス』も!? アメリカで打ち切りが望まれているドラマ7本

 この冬、記録的な大寒波に見舞われたアメリカは、すでに多くの人が春を待ち望んでいる。しかし春はテレビ番組の放送継続/打ち切りが発表される時期のため、視聴率がイマイチだった番組関係者たちは春の到来にヒヤヒヤしていることだろう。

 昨年は、ジェニファー・ロペス主演の『シェイズ オブ ブルー ブルックリン警察』、マーベル・コミックの人気シリーズを原作とした『マーベル イン ヒューマンズ』、プリヤンカー・チョープラー主演の『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』、オタク系天才集団が難事件を解決する『SCORPION/スコーピオン』、ブリート版『X-ファイル』などが打ち切りとなった。架空の警察署を舞台にしたコメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』も放送終了が発表されたが、多くのファンの強い要望により復活。しかし、このようなケースはまれである。

 そんなシビアな米ドラマ業界において、長々と制作が続いている作品がある。視聴率も人気もあるという作品が多いが、中には「終わるタイミングを完全に逃している」「ずるずると放送しているだけで、おもしろくない」と思われている作品も。今回はそんな「アメリカで打ち切りが望まれているドラマ」を紹介したい。(参照:エンタメ情報サイト「FANSIDED」)

『スーパーナチュラル』

 米The CW(旧The WB)局で2005年9月から放送されているホラーサスペンスドラマ。幼少期に悪魔に母親を殺された兄ディーン(ジェンセン・アクレス)と4歳年下の弟サム(ジャレッド・パダレッキ)が、ハンターとして悪霊退治に奮闘する物語。魔王を封印しようと全米各地で悪魔たちと戦い、時には悪魔になり、天使になり、刺客に翻弄され、絶望するという、手に汗握る展開が続く。「悪魔」や「天使」などキリスト教にまつわる存在だけでなく、魔女、吸血鬼、狼男、ゾンビや妖怪などが登場。オカルト好きな視聴者に長年支えられてきた。

 実は番組クリエーターのエリック・クリプキはシーズン3で番組を完結させるつもりだったが、途中でシーズン5まで制作すると変更。プロット(物語)が一巡したシーズン5でエリックは降板した。その後、「主要キャラクターが死に、地獄に堕ちた後に蘇る」というパターンが何度も繰り返されるため、「また?」としらける視聴者が続出。それでもシーズン15の更新が決定したのは、熱狂的なファンのおかげだといわれている。18年のThe CWの高視聴率ドラマランキングでは3位と好位置につけたが、そろそろ幕を引く時機なのかもしれない。

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』

 米ABC局で2005年3月にスタートした医療恋愛ドラマ。外科インターンとして、シアトル・グレース病院で働くことになったメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)の医師としての成長、胸が締め付けられるような恋、同僚医師たちの恋模様、友情などが描かれている。ヒューマンドラマとしても質が高く、登場するキャラクターは多種多様。ショッキングなエピソードもあり、長年「飽きがこない」と人気を集めていた。

 スピンオフ作品『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(07~13)や『Station 19』(18~)、ウェブシリーズとして配信された『Grey’s Anatomy: B -Team』(18)と、関連作品も好評。売れっ子クリエーターでもある、製作総指揮者ションダ・ライムズの才能が感じられると業界からも高く評価されていた。

 しかし、この番組で名が売れた多くの役者が番組を降板。新しいキャラクターが入ってきたと思ったらすぐ去っていくというパターンが定着すると、キャストの入れ替わりの激さに戸惑う視聴者が続出。物語もどんどん非現実的になっていき、シーズン1からの視聴者も「また波乱?」「ひとつの病院で、これだけのことが起きるなんてあり得ない」「ついていけない」と脱落。視聴率は稼ぐものの、「もうそろそろハッピーエンドで幕を下ろしてほしい」という意見が強くなっている。

『Hawaii Five-0』

 米CBS局で2010年9月に始まった刑事ドラマ。1960年代後半~80年代に大ヒットした『ハワイ5-0』のリメイク版で、常夏の島ハワイを舞台に、同州で発生する犯罪に立ち向かう特別捜査チームの活躍を描く。凶悪犯罪をスピーディに解決していく刑事たちの姿が痛快で、11年に発表された「全米新作番組視聴率」では1位を獲得した。人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカ、人気セレブのケンダル・ジェンナーや日本の女優・すみれもちょい役で出演するなど、ゲストも多彩でファンを楽しませていた。

 しかし、昨今の「オリジナルに変更を加える」リメイク版ブームにうんざりしている人も多く、本作の人気も低迷。シーズン8で主演のアレックス・オローリンとスコット・カーンの契約が切れたため、このタイミングで終了かと思われたが、結局2人は契約を更新。オリジナルドラマのファンからは、「シーズンを更新するなら、せめてオリジナルに寄せた内容にしてくれ」という要望が上がった。安定した視聴率を維持しているのは、アメリカ本土に住む人にとって憧れのリゾートであるハワイを見たいからだとされ、ドラマ自体は酷評されている。

 米CBS局で、2005年9月より放送されている大ヒット・クライムサスペンスドラマ。残酷極まりないシリアルキラー(連続殺人鬼)の次なる犯行を先回りして防ぐため、プロファイリングで犯人像を推理するFBIの活躍を描く。

 この作品は実際に起こった事件をヒントにしたエピソードがあり、描写もとてもリアル。捜査官自身もシリアルキラーたちのターゲットとなって、危険な目に遭うことが多い。そんな彼らの苦悩が繊細に描かれており、キャラクター目当ての視聴者も獲得した。

 普段は軟派なイケメンながらも、事件になると熱血捜査官に変貌するデレク・モーガン役のシェマー・ムーアはシーズン11で番組を去り、冷静にチームを引っ張ってきたアーロン・ホッチナー役のトーマス・ギブソンはスキャンダルのためシーズン12で降板。「これは人気キャラになるかも!」とファンを期待させたケイト・キャラハン役のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、登場したシーズン10の1シーズンだけで降板。メインキャラクターを演じた俳優は降板後に復帰したり、ゲスト出演したりすることもあるが、「ここ数シーズンは昔のような一致団結が見られずにつまらない」との評価が聞かれる。モーガンやホッチナーに代わる人気キャラは出てこないため、「駄作になる前に終わらせた方がいい」とドラマの行く末を懸念するファンは非常に多い。

『モダン・ファミリー』

 米ABC局で2009年9月から放送されている、大ヒットコメディ番組。気難しい会社経営者ジェイの再婚相手は、年の離れたコロンビア出身のセクシー美女グロリア。彼女の連れ子はませた性格で、ジェイとグロリアの間に生まれた息子は愛されキャラ。また、ジェイと前妻との間の長男はゲイで、同性パートナーと迎えた養女の子育てに大わらわ。長女は男勝りな性格で、彼女の夫は性格は良いがどこかマヌケで、3人の子どもたちは「超イマドキ」な性格。そんな3家族が次々に降りかかる災難を家族の絆と愛で乗り越えていく姿が大ウケし、たちまち国民的コメディになった。

 地上波のプライムタイムでLGBTQや中南米移民、アジアからの養子などが普通のこととして描かれているのは、この作品が初ともいわれている。米ドラマ界の最高栄誉である「エミー賞」の常連となり、全米脚本家組合の「史上最高のテレビドラマ101」にも選ばれるなど、業界からも高く評価されている。

 しかし、ここ数年は放送開始時のような「目新しさ」に欠けているとの指摘も。シーズンを重ねるうちに長女夫婦の3人の子どもたちがすっかり成長したため、ドラマの要である彼らのジョークや引き合いに出す固有名詞が「古い」と感じられるようになったのだ。もはやモダンではない『モダン・ファミリー』を、人気のあるうちに終わらせたいと願う視聴者は決して少なくないのである。

(さらに…)

『クリミナル・マインド』『13の理由』『フラーハウス』も!? アメリカで打ち切りが望まれているドラマ7本

 この冬、記録的な大寒波に見舞われたアメリカは、すでに多くの人が春を待ち望んでいる。しかし春はテレビ番組の放送継続/打ち切りが発表される時期のため、視聴率がイマイチだった番組関係者たちは春の到来にヒヤヒヤしていることだろう。

 昨年は、ジェニファー・ロペス主演の『シェイズ オブ ブルー ブルックリン警察』、マーベル・コミックの人気シリーズを原作とした『マーベル イン ヒューマンズ』、プリヤンカー・チョープラー主演の『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』、オタク系天才集団が難事件を解決する『SCORPION/スコーピオン』、ブリート版『X-ファイル』などが打ち切りとなった。架空の警察署を舞台にしたコメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』も放送終了が発表されたが、多くのファンの強い要望により復活。しかし、このようなケースはまれである。

 そんなシビアな米ドラマ業界において、長々と制作が続いている作品がある。視聴率も人気もあるという作品が多いが、中には「終わるタイミングを完全に逃している」「ずるずると放送しているだけで、おもしろくない」と思われている作品も。今回はそんな「アメリカで打ち切りが望まれているドラマ」を紹介したい。(参照:エンタメ情報サイト「FANSIDED」)

『スーパーナチュラル』

 米The CW(旧The WB)局で2005年9月から放送されているホラーサスペンスドラマ。幼少期に悪魔に母親を殺された兄ディーン(ジェンセン・アクレス)と4歳年下の弟サム(ジャレッド・パダレッキ)が、ハンターとして悪霊退治に奮闘する物語。魔王を封印しようと全米各地で悪魔たちと戦い、時には悪魔になり、天使になり、刺客に翻弄され、絶望するという、手に汗握る展開が続く。「悪魔」や「天使」などキリスト教にまつわる存在だけでなく、魔女、吸血鬼、狼男、ゾンビや妖怪などが登場。オカルト好きな視聴者に長年支えられてきた。

 実は番組クリエーターのエリック・クリプキはシーズン3で番組を完結させるつもりだったが、途中でシーズン5まで制作すると変更。プロット(物語)が一巡したシーズン5でエリックは降板した。その後、「主要キャラクターが死に、地獄に堕ちた後に蘇る」というパターンが何度も繰り返されるため、「また?」としらける視聴者が続出。それでもシーズン15の更新が決定したのは、熱狂的なファンのおかげだといわれている。18年のThe CWの高視聴率ドラマランキングでは3位と好位置につけたが、そろそろ幕を引く時機なのかもしれない。

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』

 米ABC局で2005年3月にスタートした医療恋愛ドラマ。外科インターンとして、シアトル・グレース病院で働くことになったメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)の医師としての成長、胸が締め付けられるような恋、同僚医師たちの恋模様、友情などが描かれている。ヒューマンドラマとしても質が高く、登場するキャラクターは多種多様。ショッキングなエピソードもあり、長年「飽きがこない」と人気を集めていた。

 スピンオフ作品『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(07~13)や『Station 19』(18~)、ウェブシリーズとして配信された『Grey’s Anatomy: B -Team』(18)と、関連作品も好評。売れっ子クリエーターでもある、製作総指揮者ションダ・ライムズの才能が感じられると業界からも高く評価されていた。

 しかし、この番組で名が売れた多くの役者が番組を降板。新しいキャラクターが入ってきたと思ったらすぐ去っていくというパターンが定着すると、キャストの入れ替わりの激さに戸惑う視聴者が続出。物語もどんどん非現実的になっていき、シーズン1からの視聴者も「また波乱?」「ひとつの病院で、これだけのことが起きるなんてあり得ない」「ついていけない」と脱落。視聴率は稼ぐものの、「もうそろそろハッピーエンドで幕を下ろしてほしい」という意見が強くなっている。

『Hawaii Five-0』

 米CBS局で2010年9月に始まった刑事ドラマ。1960年代後半~80年代に大ヒットした『ハワイ5-0』のリメイク版で、常夏の島ハワイを舞台に、同州で発生する犯罪に立ち向かう特別捜査チームの活躍を描く。凶悪犯罪をスピーディに解決していく刑事たちの姿が痛快で、11年に発表された「全米新作番組視聴率」では1位を獲得した。人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカ、人気セレブのケンダル・ジェンナーや日本の女優・すみれもちょい役で出演するなど、ゲストも多彩でファンを楽しませていた。

 しかし、昨今の「オリジナルに変更を加える」リメイク版ブームにうんざりしている人も多く、本作の人気も低迷。シーズン8で主演のアレックス・オローリンとスコット・カーンの契約が切れたため、このタイミングで終了かと思われたが、結局2人は契約を更新。オリジナルドラマのファンからは、「シーズンを更新するなら、せめてオリジナルに寄せた内容にしてくれ」という要望が上がった。安定した視聴率を維持しているのは、アメリカ本土に住む人にとって憧れのリゾートであるハワイを見たいからだとされ、ドラマ自体は酷評されている。

 米CBS局で、2005年9月より放送されている大ヒット・クライムサスペンスドラマ。残酷極まりないシリアルキラー(連続殺人鬼)の次なる犯行を先回りして防ぐため、プロファイリングで犯人像を推理するFBIの活躍を描く。

 この作品は実際に起こった事件をヒントにしたエピソードがあり、描写もとてもリアル。捜査官自身もシリアルキラーたちのターゲットとなって、危険な目に遭うことが多い。そんな彼らの苦悩が繊細に描かれており、キャラクター目当ての視聴者も獲得した。

 普段は軟派なイケメンながらも、事件になると熱血捜査官に変貌するデレク・モーガン役のシェマー・ムーアはシーズン11で番組を去り、冷静にチームを引っ張ってきたアーロン・ホッチナー役のトーマス・ギブソンはスキャンダルのためシーズン12で降板。「これは人気キャラになるかも!」とファンを期待させたケイト・キャラハン役のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、登場したシーズン10の1シーズンだけで降板。メインキャラクターを演じた俳優は降板後に復帰したり、ゲスト出演したりすることもあるが、「ここ数シーズンは昔のような一致団結が見られずにつまらない」との評価が聞かれる。モーガンやホッチナーに代わる人気キャラは出てこないため、「駄作になる前に終わらせた方がいい」とドラマの行く末を懸念するファンは非常に多い。

『モダン・ファミリー』

 米ABC局で2009年9月から放送されている、大ヒットコメディ番組。気難しい会社経営者ジェイの再婚相手は、年の離れたコロンビア出身のセクシー美女グロリア。彼女の連れ子はませた性格で、ジェイとグロリアの間に生まれた息子は愛されキャラ。また、ジェイと前妻との間の長男はゲイで、同性パートナーと迎えた養女の子育てに大わらわ。長女は男勝りな性格で、彼女の夫は性格は良いがどこかマヌケで、3人の子どもたちは「超イマドキ」な性格。そんな3家族が次々に降りかかる災難を家族の絆と愛で乗り越えていく姿が大ウケし、たちまち国民的コメディになった。

 地上波のプライムタイムでLGBTQや中南米移民、アジアからの養子などが普通のこととして描かれているのは、この作品が初ともいわれている。米ドラマ界の最高栄誉である「エミー賞」の常連となり、全米脚本家組合の「史上最高のテレビドラマ101」にも選ばれるなど、業界からも高く評価されている。

 しかし、ここ数年は放送開始時のような「目新しさ」に欠けているとの指摘も。シーズンを重ねるうちに長女夫婦の3人の子どもたちがすっかり成長したため、ドラマの要である彼らのジョークや引き合いに出す固有名詞が「古い」と感じられるようになったのだ。もはやモダンではない『モダン・ファミリー』を、人気のあるうちに終わらせたいと願う視聴者は決して少なくないのである。

(さらに…)

『NCIS』『THIS IS US』がランクイン、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5

 2018年も、アメリカでは多くのテレビドラマが誕生した。「Netflix」「hulu」などの動画配信サービス(VOD)も台頭してきているが、シリーズを重ね、ファンを抱えているテレビドラマは、優秀なコンテンツともいえるだろう。世界的な情報調査会社ニールセンが発表した「2018年にアメリカで最も視聴されたテレビシリーズ トップ10」は、以下の通り。

■10位:『ザ・ヴォイス』(平均視聴者数1,250万人)
■9位:『NCIS: ニューオーリンズ』(1,270万人)
■8位:『ブルーブラッド~NYPD家族の絆』 (1,320万人)
■7位:『BULL/ブル 法廷を操る男』(1,470万人)
■6位:『グッド・ドクター』(1, 580万人)
■5位:『ヤング・シェルドン』(1,650万人)
■4位:『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』(1,790万人)
■3位:『THIS IS US 36歳、これから』(1,830万人)
■2位:『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』(1,870万人)
■1位:『ロザンヌ』(2,320万人)

 今回はこの中からトップ5に入ったドラマを紹介すると共に、その魅力を分析してみよう。

『NCIS』『THIS IS US』がランクインし、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5の画像1

 米CBS局で2017年9月から放送されている、『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』のスピンオフ番組。同作の人気キャラクター、シェルドン・リー・クーパー(ジム・パーソンズ)の子ども時代を描いたコメディで、ナレーションはジムが担当する。

 作品に登場するシェルドンは9歳。飛び級進学し、高校生活を送っている。超天才児だと自覚している彼の性格は、9歳にしてすでに横柄で傲慢でナルシスト。上から目線で人の間違えをズバズバ指摘するため、クラスメイトからも先生からも疎まれるが、本人はあまり気にしない。南部のド田舎の家庭に生まれた超天才児シェルドンは、家族にも「変わり者」扱いされているが、母親からたくさんの愛情を注がれ、メンタルは強いのだ。とはいえ、9歳の子ども。体は小さく、心も繊細なので、落ち込むこともまれにある。

 『ヤング・シェルドン』でシェルドンを演じるのはイアン・アーミテージ。『ビッグ・リトル・ライズ~セレブママたちの憂うつ~』などのヒット作にも出演している天才子役で、ズバ抜けた演技力と長く難しい台詞も難なく覚えられる記憶力の良さで知られる。父親はミュージカル『Taboo』での演技が高く評価されたユアン・モートン、祖父は第13代米国務副長官リチャード・アーミテージで、祖父譲りの鋭い眼力で観客を惹きつける。

 同作が大ヒットとなったのは、『ビッグバン★セオリー』でシェルドンがよく子どもの頃の話をするため、「どんな子どもだったのか見たい」と思っていた人が非常に多かったからだろう。また、イメージ通りの生意気な子どもなのに、見た目が想像以上に愛らしいため、そのギャップに視聴者は惹きつけられていくのだ。

 アメリカではシーズン2まで放送されているが、シーズン3の更新はまだ発表されていない。『ビッグバン★セオリー』が今年でシーズン終了となるため、「『ヤング・シェルドン』もキャンセルになるのでは」という臆測も流れているが、高視聴率のため、しばらく続くとみられている。

『NCIS』『THIS IS US』がランクインし、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5の画像2

 米CBS局で2003年9月から放送されている、クライムサスペンスドラマ。同局で1995~05年に放送されていた『犯罪捜査官ネイビーファイル』のスピンオフで、アメリカ海軍やアメリカ海兵隊の将兵が関わる事件を扱う海軍犯罪捜査局の活躍を描いた作品。基本的に1話完結型だが、テロなど実際にあった事件をヒントにしたビッグスケール・ストーリーは数話にわたって描かれることもある。

 シーズンを重ねるごとに視聴率がうなぎ上りとなり、12年~13年に放送されたシーズン10では平均視聴者数2,100万人以上を記録。その後も安定した高視聴率を維持している。09年から『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』が、14年から『NCIS:ニューオーリンズ』がスピンオフとして放送開始されており、こちらも好調だ。

 犯罪系のドラマの中でも本作が長期間トップの座に君臨しているのは、マーク・ハーモン演じる主人公・ギブス捜査官の人間性が魅力的だから。硬派だが部下への愛情は強く、機械に弱いというチャーミングな一面も持っている。そんな彼が個性豊かな部下/仕事仲間と力を合わせて事件を解決していく過程は、見応えたっぷり。ショーン・マーレイ演じる頭脳迷彩でオタクっぽいマクギー捜査官、マイケル・ウェザリーが演じた口達者なディノッゾ捜査官、ポーリー・ペレットが演じた個性的で奇抜な科学捜査分析官のアビーなど、数多くの人気キャラクターも視聴者獲得に貢献している。長寿番組であるため役者の入れ替わりは多々あるものの、ギブスの人気が絶大であるため、視聴率にはさほど影響なし。2018年も難なくトップ5入りを果たした。

『NCIS』『THIS IS US』がランクインし、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5の画像3

 米NBC局で2016年9月から放送されている、ファミリードラマ。親世代を中心とした過去の話、3人の子どもたちの今(シーズン1では36歳)を混ぜ合わせながらストーリーが展開していく。シリアスなシーンもあればコミカルなシーン、涙なしでは見られない感動的なシーンもあり、ぐいぐいと視聴者を引き寄せていく。

 本作が人気となったのは、1980年代をリアルに再現した親世代の映像も一因だが、徐々に変化していく夫婦の愛情や子育ての難しさなどの普遍的なテーマがリアルに描かれたから。親は亡くなっても子どもたちの心の中で生き続け、子どもたちの人生に多大な影響を与えていることや、メインキャラクターの性格を表と裏、両方細かく描いている。養子や肥満、鎮痛剤依存など、アメリカが抱える問題も組み込まれ、多くの人々の興味を引き、共感を得た。

 また、シーズン1とシーズン2では雰囲気もがらりと変わり、視聴者を飽きさせずに視聴率を伸ばした。昨年9月に放送されたシーズン3の視聴率は下がったものの、評論家からは高く評価されている。日本ではNHKで19年4月からシーズン2が放送される予定だ。

『NCIS』『THIS IS US』がランクインし、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5の画像4

 米CBS局で2007年9月から放送されている長寿コメディ。IQ173を持つ物理学者のレナード(ジョニー・ガレッキ)と、同じくIQ187の天才シェルドン(ジム・パーソンズ)、彼らの友人である高学歴のオタク仲間、向かいの部屋に暮らす、ごく普通のブロンド美女の友人との日常をコミカルに描いた作品。

 天才であるがゆえの生きづらさや、一般人は思いもつかないような言動、オタクであるがゆえ滑稽になりがちな恋愛事情が大ウケし、放送開始直後から大きな話題に。一般人をバカにするのかと思いきや、素直で柔軟な彼らの思考がうまく表現されており、とりわけシェルドンのシニカルでコミカルな性格が爆発的な人気となった。このシェルドンの幼少期を題材にしたのが、今回第5位に入っているスピンオフの『ヤング・シェルドン』である。

 シーズン5以降、1,500万人を超える平均視聴者数を維持してきた『ビッグバン☆セオリー』は、現在アメリカで放送されているシーズン12をもって終了することが決定しており、最終回は記録的な数字をマークするのではないかと目されている。

『NCIS』『THIS IS US』がランクインし、1位はあの過激作! 2018年に最も視聴された米ドラマのトップ5の画像5

 米ABC局で1988~97年まで放送されていた国民的コメディ。アメリカのやや貧しいワーキングクラスの日常をコミカルかつ過激に描き、リアルすぎると爆発的な人気を得た作品が、オリジナルキャストで復活。18年3月から復活版の放送が始まった。

 主人公のロザンヌを演じるロザンヌ・バー、夫のダンを演じるジョン・グッドマンは、オリジナル版ではでっぷりと太っており、それが「リアルな一般的アメリカ人の姿」と視聴者は親しみを覚えていた。そんな2人は、復活版で「関節炎やらの持病」から鎮痛剤依存に陥っており、今度は「現代の超リアルなアメリカ人の姿だ」と共感を集めた。

 また、女優ロザンヌ自身が保守派でトランプ支持者であることから、復活版では番組の中のロザンヌもトランプ支持者として描かれている。反トランプである出戻り娘とのやりとりや、ジェンダーレスな孫に対する扱いも偏見とジョークと正論が入り混じった絶妙なものに。代理母やイスラム系移民などの社会問題や時事ネタを取り上げたエピソードを次々と放送し、視聴者は「さすが『ロザンヌ』!」と大絶賛。復活版も爆発的なヒットとなった。

 しかし、5月にロザンヌが人種差別ツイートをしたことが大問題となり、番組はあっけなく終了。シーズン2の制作はすでに決定していたため、他の役者やスタッフのために、タイトルを『コナーズ』に変更して継続。ロザンヌは鎮痛剤の過剰摂取で死んだことにされてしまった。多くの人々に支援されスタートした『コナーズ』だが、初回エピソードの平均視聴者数は1,050万人で『ロザンヌ』に比べて激減、皮肉にもロザンヌの絶大な人気を証明する形となった。

ネトフリ・Huluなど配信ドラマ、年末年始に見るべき5作品! DVD化不可作やエミー賞受賞作も

 ここ数年、ネット環境の整備とともに定着した感のある、動画ストリーミングサービス。24時間、見たい時に見たい映画やドラマが視聴できるとあって、加入者数も年々上がっている。大手各社は、映画やドラマ、アニメなど幅広いジャンルの作品を取りそろえているほか、オリジナル作品にも力を入れている。このオリジナル作品のクオリティーが非常に高く、米ドラマ界の栄誉である「エミー賞」や「ゴールデン・グローブ賞」といったビッグタイトルを受賞するほど。もはや良作が生まれるのは映画やテレビだけではないということを証明し、米エンタメ界に革命を起こしているのだ。今回は、日本でサービスを展開している主要5社ごとに見るべき作品を紹介しよう。

Netflix『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』

DVD化不可作品やエミー賞受賞作も! ネトフリやHuluなどストリーミングサービス主要5社で年末年始に見るべき作品はコレの画像1

 世界中で展開して大成功を収めている、動画配信サービス大手のNetflix(以下、ネトフリ)。同社の最大の魅力は、オリジナル作品を多く配信しているということ。そのオリジナル作品のほとんどが、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に代表されるように、ハリウッド映画並みのクオリティなのだ。それもそのはず。ネトフリの今年のオリジナルコンテンツ制作の予算は、なんと130億ドル(約1.4兆円)にも上る。

 ネトフリオリジナル作品の中で最もおススメなのが、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』。過去に起こった残酷な事件のため、怪奇現象が頻発する“幽霊屋敷”となった「ヒルハウス」が舞台。そこに引っ越してきた家族全員が、幽霊に取り憑かれる。一家は引っ越しをするが、幽霊屋敷を離れても凄惨な記憶は消えることなく、心身ともにむしばまれていくという物語。主人公家族は、子だくさんの7人家族なのだが、当時幼かった子どもたちが恐ろしい霊体験をし、大人になってもそのトラウマに悩まされているという設定。そのため、家族の絆が試されるような描写も多い。

 「心理的にじわじわくる」タイプのホラー作品である同作。過去と現在を交互に行ったり来たりしながら物語が進むため、夢中になって一気に見てしまう人が続出。辛口批評サイトで有名な「Rotten Tomatoes」でも、好意的な批評をした人が90%を超えた傑作である。

DVD化不可作品やエミー賞受賞作も! ネトフリやHuluなどストリーミングサービス主要5社で年末年始に見るべき作品はコレの画像2

 Huluは、米「CNNニュース」や英「BBCワールドニュース」などのリアルタイム配信もあり、海外ドラマや洋画だけでなく、英語でニュースをチェックしたいという人にもオススメ。エミー賞やゴールデン・グローブ賞を総なめした『ハンドメイズ・テイル/待女の物語』など、ストーリーに深みのあるオリジナルドラマを配信していることでも評価されている。

 Huluのオリジナル作品『マーベル ランナウェイズ』は、アメコミレーベル「マーベル」の人気コミックをもとにした実写ドラマ。主人公は、マーベルのヒーロー作品に登場するスーパーヴィラン(悪役)を親に持つ10代の子どもたち6人。幼なじみである彼らは、ある日、親が悪の組織に属していると知り、大きな葛藤を抱えつつも、親たちの野望を阻止するために歯向かっていく。

 「ヴィランを親に持つティーンの青春ドラマ」といえば、米ディズニー・チャンネルのテレビ映画シリーズ『ディセンダント』が有名だが、ディズニーの方はミュージカル要素が強く、恋愛や友情に焦点が絞られている。一方、この『マーベル ランナウェズ』は、『The O.C.』『ゴシップガール』という人気青春ドラマを手がけてきたジョシュ・シュワルツとステファニー・サヴェージが製作総指揮を務めているため、ティーンが直面する現実や彼らが抱える問題など、青春ドラマの要素が強く、丁寧に描かれている。ちなみにニコ役を演じているのは、日系女優の岡野りりか。ほかにも期待の若手役者がメインキャラクターを演じている。

DVD化不可作品やエミー賞受賞作も! ネトフリやHuluなどストリーミングサービス主要5社で年末年始に見るべき作品はコレの画像3

 通販サイト大手・Amazonが提供している動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」。オリジナル作品はドラマだけでなく、バラエティー番組も多い。幅広いジャンルで豊富なラインアップを誇っているのが特徴だ。

 オリジナル作品はどれも脚本がしっかりしているが、その中でもエミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞した『トランスペアレント』は、ずば抜けて素晴らしいと絶賛されている。ドラマの主人公は、とある家族。大学教授を引退し、長年の夢だった女装をして生きていく決心をした父、夫との不仲にイラ立っていたところ大学時代に交際していた女性と再会して肉体関係を持つようになった長女、女好きだが真の愛に飢えている長男、将来のビジョンを持っていない自由奔放な次女の4人。彼らを取り巻くキャラクターも丁寧に描かれており、とても見やすい。

 年老いてからカミングアウトするLGBTQが増えているという現代のアメリカ社会を反映しており、ドラマチックで心ときめくような展開はない。しかし、すべてが「リアル」に描かれており、主人公の考えや行動に共感できるのが同作の最大の魅力だ。

DVD化不可作品やエミー賞受賞作も! ネトフリやHuluなどストリーミングサービス主要5社で年末年始に見るべき作品はコレの画像4

 「洋画」や「韓流・華流」「教養」「フィットネス」など、16ジャンル・約12万作品を配信しているというdTV。しかし、海外セレブ好きな人にとっては、海外リアリティ番組の最新エピソードがいち早く配信されることが魅力だ。

 dTVのリアリティ番組で特にチェックすべきは、『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』。セックス動画で一躍有名人となったキム・カーダシアンと個性的な姉妹(カーダシアン姉妹、異父妹のケンダル姉妹)とのドラマチックすぎる日常をカメラが追ったリアリティ番組。アメリカでは現在シーズン15が放送中だが、「dTV」でも10月に最新シーズンを日本初配信している。

 また同作のスピンオフで、カイリー・ジェンナーのありのままの姿に迫る『LIFE of KYLIE』、離婚を乗り越え、ストイックなエクササイズで史上最高のボディを手に入れた『クロエ・カーダシアンのリベンジボディ』、カーダシアン三姉妹の弟ロブと元婚約者ブラック・チャイナとの波瀾万丈な交際を追った『ロブ・カーダシアン&チャイナのドラマチックな生活』なども配信されており、海外セレブの私生活に興味のある人にはたまらないラインアップとなっている。

DVD化不可作品やエミー賞受賞作も! ネトフリやHuluなどストリーミングサービス主要5社で年末年始に見るべき作品はコレの画像5

 海外ドラマをいち早く配信することで知られているU-NEXT。海外ドラマというジャンルでのオリジナル作品は制作されていないが、U-NEXTでぜひ見てほしいのが、米「CBS」局で2003~10年に放送されていた人気犯罪ドラマ『コールドケース』。

 「コールドケース」とは未解決のまま迷宮入りしている凶悪犯罪。アメリカでは殺人事件については「時効」がないため、事情を抱えた関係者が長い年月を経て新たな証言をしたり、真相を語ったりして再び捜査が行われるケースが少なくない。現代の最新科学技術を駆使して、事件解決の糸口を発見することもあるのだ。

 この作品は、フィラデルフィア市警殺人課の未解決事件専従捜査班が、「解明不可能」と思われていたコールドケースを解決に導いていく物語。1話完結ストーリーで、「被害者が誰ひとりとして忘れ去られぬように」という使命感を持つ女刑事リリー・ラッシュの活躍を描いた。同作では、まず事件前や事件発生時のシーンが出てくるのだが、その際、当時のヒット曲を多数流す。事件当時の時代背景を鮮明に浮かび上がらせることを狙ったもので、これが視聴者に大ウケした。しかし、ヒット曲をあまりにもたくさん使用しているため、著作権の問題でDVD化が困難になってしまった。そのため、大ヒットドラマであるにもかかわらず、いまだにソフト化されていない。

 U-NEXTでは、この『コールドケース』全シーズンを2019年8月末まで配信している。時間の余裕がある年末年始ならば、“一気見”が可能かも!?

 

消えたアビーのタトゥー、親族だらけの現場……あなたが知らないドラマ『NCIS』の7つのトリビア

 アメリカ海軍や海兵隊将兵が関わった犯罪を捜査する、海軍犯罪捜査局(NCIS)。彼らの活躍を描いた大人気ドラマ『NCIS~ネイビー犯罪捜査班(以下、NCIS)』は、日本でも高い人気を誇っている。アメリカでは5月にシーズン15の放送が終わったばかりだが、相変わらず安定した視聴率を維持。シーズン16の制作・放映も決まっており、2作あるスピンオフドラマ『NCIS:LA 〜極秘潜入捜査班』『NCIS:ニューオーリンズ』も好調。放送局の米「CBS」の社長は「『NCIS』は、これからも世界中で高い人気をキープし続けるだろう」と自信満々だ。

 『NCIS』の最大の魅力は、なんといっても主役と製作総指揮者を務めるマーク・ハーモンが率いる個性的な登場人物たち。長寿ドラマの宿命ともいえる、キャストの入れ替わりはあるが、マークが演じるギブス捜査官は15年間健在で、ファンの心をがっちりつかんで離さない。シーズン15では、多くのファンを持つアビー役のポーリー・ペレットが惜しまれながら降板したが、アビーのファイナル・エピソード(第22話)はすさまじい展開で、見応え満点。脚本家チームが有能であることを改めて感じさせられた。

 今回は、そんな世界中のドラマファンから愛される『NCIS』の7つのトリビアを紹介しよう。

1.本物のNCIS職員がカメオ出演

 細部までしっかりと作られていることから、現役NCIS職員からも大人気の同作。実は本物の捜査官がカメオ出演しているエピソードがある。

 シーズン3の第9話に登場したデヴィッド・ブラント捜査官は、1977年~2005年まで働いていた元捜査官。このエピソードは退官する1カ月前にオンエアされ、劇中でギブス捜査官から「引退するんだって?」と聞かれ、「レクリエーショナル(休養)部署への横滑りって感じだけどね」と返していた。

 シーズン5の第4話に登場した、ギブス捜査官にコーヒーを勧める男性も、NCISの職員。トーマス・ベトロという名前で、撮影当時はなんとNCIS長官だった。また、本物の米海軍長官がカメオ出演したこともある。オバマ政権の09年5月から17年1月まで同職を務めたレイ・メイバスが、シーズン7第9話とシーズン12第8話にNCIS捜査官として登場。「さすが人気ドラマ!」だと大きな話題になった。

2.アビーのタトゥーが消えた!?

 ツインテールとゴシック・ファッションがトレードマークの科学捜査分析官・アビーは、同作屈指の人気キャラ。16年、そんなアビーについてのスレッドが、米ネット掲示板「reddit」に立った。それは「アビーの首のタトゥーが消えてるんだけど!」というものだ。

 スレッド主は「今、15年の『NCIS』を見てるんだけど、アビーの首のタトゥーがないんだよ。『Troll』(シーズン12第22話)ってエピソードで、サイバー犯罪班に所属している(特別捜査官の)ネッド・ドーニゲットが出てくる回なんだけど」「なんでタトゥーが消えちゃったの? 消えた説明とかあったっけ?」とビックリ。これに対して「最新のエピソードでは、ちゃんとあるけど」「メイクさんが描くのを忘れたのでは?」というレスがついていた。

 アビーは首の左側に大きなクモの巣のタトゥーを入れており、それがトレードマークとなっている。しかし、シーズン14のプロモーションで米情報番組『extra』に出演したポーリーは、「手首のタトゥーは本物だけど、首のクモの巣は偽物なの。実際には彫っていないわ」と発言。米芸能サイト「USウィークリー」でも、「本物のタトゥーは20個ほどあるけど、首と背中のタトゥーはアビーを演じるための偽物」と明かしている。以前、「撮影のたびにフェイクタトゥーを決まった位置に入れるのは、結構大変。トラブルもある」と明かしていたポーリー。前述のスレッドを読んだファンは、「首が隠れる服を着ているシーンでは首のタトゥーシールを貼っておらず、うっかり首が映ってしまったのでは?」と推測していた。

3.「最重要指名手リスト」はアップデートされている

 世界情勢をリアルタイムに反映した『NCIS』。引退したNCIS捜査官がアドバイザーとして参加しており、一瞬だけしか映らないようなところにも細かいこだわりが見られる。

 その代表例が、NCIS本部の「N.C.I.S.」というロゴの周りに貼られている「最重要指名手配犯」の顔写真。劇中で追っている架空の人物が多いのだが、実際にNCISから「最重要指名手配」されている者の顔写真も貼られている。オサマ・ビンラディンもその1人だったが、11年5月に米海軍特殊部隊員によって暗殺された後、すぐに「解決済み」の印である赤いテープが斜めに貼られた。遠目に、しかもぼやけてしか見えない壁のリストも、きちんとアップデートされているのである。

 ちなみに、このリストの中には、“おふざけ”で製作総指揮のドナルド・P・ベリサリオの写真が貼られていたこともあり、「これはコアなファンじゃないとわからないだろう」と熱狂的なファンを大喜びさせたものだった。

4.若かりし頃のギブス役として、マークの息子が出演

 NCISの黒いキャップが似合う、ドラマの主人公・ギブス捜査官。演じるマークは、ドラマの製作総指揮も務めており、米経済紙「フォーブス」が昨年9月に発表した「高額俳優リスト」によると、1年間で1900万ドル(約21億円)の報酬を受け取ったとのこと。放送局の米「CBS」にとって『NCIS』は看板ドラマであり、番組の象徴的存在なマークには、いくら払っても惜しくないよう。大成功を収めた父に触発されたのか、女優パム・ドーバーとの間にもうけた2人の息子たちも同じ業界で働くようになった。長男ショーン・ハーモンは父親と同じ役者の道を歩みだし、次男は脚本家に。

 ショーンはマークに顔がそっくりなことから、『NCIS』でマークが演じるギブスの若かりし頃の役に抜てきされる。シーズン6~シーズン9で放送されたギブスの回想シーンに6度出演。同作のスピンオフである『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』のシーズン6第20話には、また別の役でゲスト出演している。

5.アビーのミドルネームはベートーベン

 ラボで音楽を聞いている姿が印象的な、科学捜分析官のアビー。ドラマの公式サントラ『NCIS: The Official TV Soundtrack Vol.1』は2枚組で、うち1枚は丸ごと「アビーがラボで聞いている曲」が収録されているほど、『NCIS』におけるアビーの音楽は重要なポイント。

 そんなアビーだが、実はミドルネームを持っている。ポーリーが15年にTwitterでファンから質問されて明かしたことなのだが、なんと、あの名作曲家と同じ「ベートーヴェン」がミドルネームなのだ。これを知ったファンは大喜び。「音楽が似合うアビーは、現代のベートーヴェンだ!」という声が多数上がった。

6.マーク、自分の工具を持参し、ボート製作シーンを撮影

 自宅の地下室を工房にし、趣味は日曜大工という設定のギブス捜査官。ボートを造っているシーンでは手慣れた腕前を見せていたが、それもそのはず。演じるマーク・ハーモンは大工仕事が大の得意なのだ。

 豪大衆紙「ヘラルド・サン」によると、マークは高校生のときの大工のバイトで技術を身につけたのこと。『NCIS』のプロデューサーにその話をしたところ、「ぜひ脚本に入れよう!」と話が進み、「ギブスのボート造りシーン」が誕生したのだった。マークは、「ボート造りに関しては素人なんだ。飛行機とはまったく違うからね」と謙遜しつつ、「でも、同じ木材だからねぇ。質感や感触、匂いとは一緒だ」と楽しみながら撮影したよう。

 そのボート造りシーンには、しっくりくる自前の工具を持参したのだとか。ちなみに彼は、72年製のキャンピングカー「エアストリーム」を自身の手でトレーラーに大改造。控え室として大切に使用している。

7.撮影現場では番組クリエーターの親族が大勢働いている

 キャストや撮影スタッフに愛されている『NCIS』製作総指揮のドナルド・P・ベリサリオ。名字でわかる通り、イタリア系の彼は親族を大切にする男としても有名である。

 最初の妻との間にもうけた4人の子のうち、デヴィッド・ベリサリオはドナルドが手掛けた『犯罪捜査官ネイビーファイル』『NCIS』のプロデューサーを経て、現在は『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』のプロデューサーを務めている。娘のジュリー・B・ワトソンも『犯罪捜査官~』時代からプロデューサーとして父を支え、現在も『NCIS』のプロデューサーを務めている。

 2番目の妻との間にもうけた息子マイケル・ベリサリオは、『犯罪捜査官~』と『NCIS』に出演。3番目の妻との間にもうけた娘トローヤン・ベリサリオは、『犯罪捜査官~』でエリン役を演じ、『NCIS』には別キャラのサラ・マクギー役として出演した。現在の妻(4人目)である女優のヴィヴィアン・ベリサリオの連れ子ショーン・マーレイも『犯罪捜査官~』ではダニー役を演じていたが、『NCIS』ではメインキャラのティモシー・マクギーとして活躍。ショーンの弟であるチャッドは、『NCIS』のプロデューサーを経て、現在は『NCIS:LA ~極』のプロデューサーを務めている。

 また、ヴィヴィアンは、『NCIS』シーズン1~3まで「ミステリアスで赤毛が印象的な、ギブス捜査官の恋人らしき女性」を演じていた。

 ちなみに『NCIS』の主人公ギブス捜査官のフルネームは、「リロイ・ジェスロ・ギブス」だが、リロイは兄弟の名前、ジェスロは父親のミドルネーム。ドラマのあちこちからドナルドの家族愛が感じられる。

降板時にデス・パーティーを開催!? 『ウォーキング・デッド』の興味深いトリビア10選(後編)

(前編はこちら)

6.キャストのマグショットが存在する

 シーズン2から登場した農場のオーナー兼獣医師で、頑固だがなにかと頼れる、善人キャラクターのハーシェル・グリーン。髪も眉毛もひげも白い穏やかな風貌だが、彼のマグショットが流出する騒ぎがあった。ハーシェル役を演じるスコット・ウィルソンが、飲酒運転で逮捕されてしまったのだ。

 スコットは2012年8月18日午前2時、スピード超過で警官に車を停止させられた際、飲酒運転だったことが発覚。シーズン3を撮影しているジョージア州セノアのレストランバーでスコッチやワインをしこたま飲んでおり、警官に「道路が傾いている」「ヨガをしたい」と意味不明なことを訴えていたそう。マグショットは、撮影の最中ということもあり、ハーシェルそのまま。

 シーズン5から登場する神父のゲイブリエル・ストークス。演じるのはセス・ギリアムだが、彼も飲酒運転で逮捕されており、マグショットがネットに出回っている。15年5月3日深夜にスピード違反で警官に止められ、飲酒運転がバレた上にマリファナ所持容疑で逮捕。スコット同様、「神父ゲイブリエルのマグショット!」だとネットをにぎわせた。

 ちなみにウォーカー役のエキストラ、シャノン・リチャードソンという女優は、13年5月に当時のオバマ大統領やブルームバーグ・ニューヨーク市長に猛毒リシンを入れた封書を郵送したことで逮捕。禁錮18年の刑に処されている。

7.シーズン3で死ぬはずだったキャロル

 ウォーカーがはびこる壮絶な世界でサバイブしていく『ウォーキング・デッド』のキャラクターたちは、シーズンが進むにつれ、みんな強くなっていく。中でも最も強く変化したのは、キャロル(メリッサ・マクブライド)だろう。

 キャロルは最初、DV夫に共依存していた弱々しい女性だったが、夫が死に、ウォーカー化した一人娘も倒され、シーズンを重ねるにつれて精神的に強くなった。誰よりも現実的に物事を考えられ、実行力もあるため、番組にはなくてはならない重要なキャラクターとして人気を集めているのだが、当初はシーズン3でウォーカーにかまれて死ぬという設定だった。同シーズンで、Tドッグ(アイアン・シングルトン)が己を犠牲にしキャロルを逃すシーンがあるが、もともとはキャロルがウォーカーの餌食となり、Tドッグが助かる予定だった。脚本家たちは「これ以上、キャロルを生かしてもうまく使えない」と思ったからだ。

 しかし、現場で指揮を執るスコット・ギンプルは、「番組にとって彼女は使える存在になる」と確信し、キャロルを生かすと書き換えた。その確信通り、キャロルは大きく成長し、「使える」キャラクターとなったのだった。

8.ジュディス役を演じるのは複数の子役たち

 主人公であるリックの妻ローリが命を懸けて出産したジュディス。自分の子どもではない可能性が高いものの、リックは娘のために崩壊する心を必死に立て直し、前に進む。まだまだ小さな幼児だが、番組にはなくてはならない「希望」を象徴するキャラクターでもある。

 通常テレビドラマにメインキャラクターとして登場する子役には、双子がキャスティングされ、交互に撮影を行う。しかし、『ウォーキング・デッド』は一定に時間が進んでいくわけではないため、子役の成長が追いつかない。そのため、エピソードごとに合う月齢/年齢の子役を用意し、18年4月までに16人の子役がジュディス役を演じてきた。人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』で愛らしいホリー役を演じている双子の子役アニストン&ティンズリー・プライスもジュディスを演じていた。

9.『ブレイキング・バッド』後の世界が舞台!?

 米3大ネットワークの1つNBC、『Sex and the City』などの大ヒットドラマで知られる人気ケーブルチャンネルのHBOから放送を断られ、『マッドメン』と『ブレイキング・バッド』で知名度を上げたケーブルテレビAMCに拾われた『ウォーキング・デッド』。クリエーターやプロデューサーたちは、AMCへ感謝の気持ちを込めて『ブレイキング・バッド』が前日譚だと匂わすような演出を細かくちりばめられている。『ブレイキング・バッド』は、余命わずかな高校教師が家族に財産を残すため、麻薬精製という危険な副業に手を出すという内容。

 『ウォーキング・デッド』シーズン2で、ダリル・ディクソン(ノーマン・リーダス)が負傷して苦しむTドッグに、兄メルル(マイケル・ルーカー)の荷物の中から鎮痛剤をあげるというシーンがあるのだが、その袋の底に青いクリスタルのようなものが入っている。『ブレイキング・バッド』視聴者ならこのクリスタルを見て、「主人公ウォルター(ブライアン・クランストン)が密造していた麻薬ブルーメスだ!」と、ピンときたことだろう。

 また『ウォーキング・デッド』シーズン4では、メルルがブルーメスの売人について、「誰のことも“ビッチ!”と呼ぶ男だった」と説明。『ブレイキング・バッド』に出てくるジェシー(アーロン・ポール)の口癖は、ズバリ「ビッチ」。そのことから「メルルはジェシーからブルーメスを購入していたに違いない」と話題になった。

 ほかにも、『ブレイキング・バッド』で登場した車を『ウォーキング・デッド』シーズン1で登場させるなど、『ブレイキング・バッド』を思い出させるシーンが多いことから、ファンの間で「ブルーメスが人々をゾンビ化させたのでは?」という説が流れるように。米カルチャーイベント「コミコン」で、ファンが『ウォーキング・デッド』の原作マンガの作者ロバート・カークマンにこの説の真偽を問いかけたところ、彼はすごくうれしそうな顔になり「あぁ、そうなんだよ」と冗談めかして答え、ファンを大喜びさせた。

10.「さよならパーティー」ではなく「デス・パーティー」

 放送年数が長い海外ドラマでは、降板するキャストの収録最終日に、撮影現場でちょっとした「さよならパーティー」を開くことがお決まりとなっている。キャストのためにケーキを用意して、食べながら最後の会話を楽しむのが定番だ。キャスト仲が悪い場合には開かれないこともあり、流出した「さよならパーティー」の写真を見て「仲良くてよかった」と安堵するファンもいる。

 『ウォーキング・デッド』ではキャストが降板する時に、「さよならパーティー」ではなく「デス・パーティー(死のパーティー)」を開くとのこと。同番組では、「降板=死ぬ」ことなので、こう呼ばれるようになったという。番組プロデューサーは、「うちはキャストもクルーも、みんな仲が良いからね。毎回、誰かが降板する時は、心の底から悲しむのさ」と明かし、みんなでテーブルに着き、料理を食べながらこれまでの撮影を振り返り、「もう一緒に働けないだなんて、本当に寂しいな」「これからも絶対に連絡を取り合おうな」などと約束するのだと語っている。

 ちなみにこの「デス・パーティー」では、降板するキャストのための特注ケーキを食べるそうだが、ケーキ屋の店員が情報をリークしてしまうことを警戒し、「バースデーパーティーだといって、大きなケーキを発注する」とのことだ。

ウォーカー役のギャラはいくら? 『ウォーキング・デッド』の興味深いトリビア10選(前編)

 5月になって、シーズン9の撮影がスタートしたと報じられた米ドラマ『ウォーキング・デッド』。スピンオフの『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』は悲しいほど不評だが、本家を「見飽きた」という人は少ない。毎回「おぞましいゾンビが見たい」という欲求を満足させてくれるのはもちろんのこと、ゾンビ(今作ではウォーカーと呼ばれる)によって荒廃した世界で、「極限まで追い込まれた人間たち」が繰り広げる物語が壮絶すぎて目が離せないからだ。

 主要キャラクターであるリック(アンドリュー・リンカーン)はもちろん、ほかのキャラクターたちも個性が際立っている。シーズンを重ねるごとに見るに堪えないようなグロいシーンも増えていくのだが、中毒性が高く、世界中にファンも持っている。今回は、そんな人気ゾンビドラマ『ウォーキング・デッド』の興味深いトリビアを紹介しよう。

1.腐敗メイクのプロたちが大活躍

 本作になくてはならない存在が、リアルなビジュアルを持つウォーカー。これは、特殊効果クリエイターのグレッグ・ニコテロが、4人の番組専属メイクアップアーティストたちとチームを組み、1体につき平均1時間~1時間半かけて創り上げていくもの。「死人のような濁った瞳を演出するコンタクトレンズを入れ、腐ったように見える義歯/マウスピースをはめる」のだとか。

 限られた数のウォーカーで撮影する日は至近距離でも腐敗して見えるように、細かなメイクを。60~70体の大群が登場するエピソードでは、遠距離からの撮影に合わせて、ハイライトとシャドーを強調した死に顔メイクを中心に施していくとのこと。ピンクの舌や口内が映ると死体に見えないので、ケーキなどに使うアイシングで黒くするなど、細部にまでこだわってメイクをしていくそうだ。

 また、シーズンが進むごとにウォーカーがどんどん腐敗していくという点を意識し、肌色の調合についても探求を怠らないとのこと。ウォーカーだけでなく、オープニングで流れる『THE WALKING DEAD』のロゴもシーズンを重ねるごとに少しずつ腐敗が進行していくので、ぜひ注目してもらいたい。

2.ウォーカー役に適した人材

 毎シーズン撮影を行う前に、前述の特殊効果クリエイター・グレッグが、「ゾンビ・スクール」なるものを開催。まず、ウォーカー役のために集まった150~200人のエキストラのオーディションを行い、外見とパフォーマンスでグレード分けをして、リアルにゾンビを演じる方法を伝授する。グレッグいわく、「脳と体の動きが一致していない」ような、泥酔した人間の動きを参考にしているとのこと。

 ウォーカー役に適している人は、厚みの出る特殊メイクを施しても違和感のない痩せ型。もちろん、感情ゼロのゾンビをリアルに、ナチュラルに演じられることも重要だ。

 ちなみに、ウォーカーが食い散らかす人間や動物の臓器は、酢漬けのハムを使用。臓器を食べているシーンはハイエナをイメージし、極力口で肉をかみ切るように指導しているという。CGでは、ゾンビが撃たれた時の血しぶきを加えるだけでなく、寒い時期に撮影した場合は口から出る白い息を消し(死人であるゾンビは息をしていないため)、まばたきを消して目が開けっ放しになるように修整。撮影時にはゾンビ役のエキストラは一切声を出しておらず、「おぞましい声」は編集で重ねていく。そのため、撮影中は不気味なほど静かだそうだ。

3. ウォーカー役のギャラ

 2011年、ウォーカー(エキストラ)を演じた人物がネット掲示板に、出演料として2日間で600ドル(約6万5,000円)、年末にはボーナスも支払われたと書き込んだ。数年後、別のエキストラ男性が掲示板に「1時間64ドル(約7,000円)で拘束時間は8時間。スタントをするとボーナスが支払われた」と告白。1日8時間労働と考えると、シーズンが進むにつれてゾンビ役のギャラも上がっている。とはいえ、特殊メイクをしたまま長時間出番を待つこと、撮影は一瞬だけで自分の顔は見えないため、放送されても役者として顔は売れないこと。また、撮影は外がメインなので体力を消耗することを考えると、もうちょっと高くてもよいのではないかという意見が多い。

4.ウォーカー役は休憩時間も隔離されている

 前述のエキストラの男性は、「グレン・リー役のスティーヴン・ユァンは、とってもいい人」「リック役のアンドリューは、典型的なイギリス人」と明かしていたが、撮影の休憩時間、人間であるメインキャストたちとウォーカー役のエキストラは離れた場所で待機しているため、基本的には交流する機会はない。これは「面識のない役者が、ウォーカーとの戦いのシーンを思いっきり演じられるように」と、番組プロデューサーがあえて設けたルール。ちなみに、メインキャストたちには休憩時につまめるように豪華なビュッフェが用意されているが、ゾンビ役のエキストラにはスパゲッティとサラダしか用意されていないと伝えられている。

5.ミショーン初登場シーンを演じたのは“名無し”だった

 「男前な性格でかっこいい!」とファンが多い女剣士ミショーン(ダナイ・グリラ)。日本刀で華麗にゾンビを斬る姿には見惚れてしまうが、最初の頃は「両腕と顎を切り落とした気味の悪い2体のゾンビをチェーンにつないで従えている、口数少ない異様なキャラクター」だった。ミショーンが初登場したのは、シーズン2第13話だったが、フードをかぶっており、顔は見えなかった。実はこのシーンでミショーンを演じたのは、ダナイではない別人だった。ダナイがキャスティングされたのは、シーズン3の制作/放送決定後。スタッフ側もまだミショーン役を誰に演じさせるのか、決めていなかったのだ。そのため、初回のミショーンを演じた役者はクレジットもされていない。まさしく名無しの権兵衛だったのだ。

(後編に続く)