2007年にストリーミングサービスを開始したNetflix(ネットフリックス)。12年からは、巨額を投じてハリウッド映画顔負けのハイクオリティーなオリジナル映画・ドラマを製作し、加入者数を劇的に増やしてきた。
オリジナル映画は高く評価されるようになり、カンヌ国際映画祭など名誉ある映画祭に出品。アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネート・受賞するようにもなった。巨匠スティーブン・スピルバーグは「ストリーミング作品と劇場公開作品は分けるべきだ」と激怒しているが、ネット上では「良作は評価すべき」「受賞作品は劇場公開作より多くみられているのでは?」などといった意見が多数見受けられる。
19年、Netflix(ネットフリックス)はストリーミングサービス開始後初となる「1年間で最も視聴されたオリジナル映画とドラマ」(18年10月~19年9月)のランキングを発表し、視聴者数も公開した。オリジナル映画は、作品の70%以上を視聴したらカウントするというフェアな加算法で、それでもすさまじい数字をたたき出している。今回はそんな「19年最も見られたNetflix(ネットフリックス)オリジナル映画」トップ10をご紹介しよう。
『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』(2000万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画10位

若き起業家として持ち上げられていたビリー・マクファーランドが、2017年にオシャレな島を貸し切って開催した音楽フェス「ファイア・フェスティバル」。これがなぜ未曾有の惨事に終わったのかを、関係者や被害者へのインタビューをもとに制作されたドキュメンタリー番組。ビリーの病的なまでの詐欺師気質、詐欺の手口、どちらかというと信頼できないようなビリーの人間性が見て取れるのに、なぜ投資家たちが彼に騙されたのかを紹介しており、興味深い作品となっている。
運営に加わっていた有名ラッパーで俳優のジャ・ルール、人気モデルのケンダル・ジェンナー、ベラ・ハディドやヘイリー・ボールドウィンら多数のフォロワーを持つインフルエンサーたちがインスタグラムで配信した写真や動画を見て、高額なチケットや飛行機、宿泊費用を支払った若者がとても多かった。そのため、ミレニアル世代を蝕む「FOMO(SNSを常にチェックしていないと取り残されてしまうという不安症)」を巧みに利用したとも話題に。作品では、若者がいともたやすくSNSに踊らされ、なぜ簡単に詐欺にひっかかるのか、その危険性も伝えている。
このフェスをめぐりビリーとジャに1億ドルを求める集団訴訟など、多数の訴訟が起こされた。主犯であるビリーは罪を認め、2018年3月に有罪確定。6年の禁固刑に処され、現在連邦刑務所で服役中である。
あまりの悲惨な結末にあ然としてしまう作品だが、良いこともあった。この作品のインタビューに応じ、「フェス会場やテントの設置の仕事をしていた地元民やフェス参加者たちに食事提供をしていたものの、一円も支払ってもらえなかった」と涙していた地元レストランのオーナーを助けるオンライン募金サイトが設けられたのだ。たちまち目標額を超える募金が集まり、Netflix(ネットフリックス)も公式インウスタグラムのアカウントで視聴者たちに感謝の意を述べている。

イギリスの人気小説家ウィリアム・サトクリフの『Whatever Makes You Happy』が原作で、演技派女優としで名高いパトリシア・アークエット、フェリシティ・ハフマン、アンジェラ・バセットが主演するハートフルコメディ。
大都会ニューヨークで自立した生活を送っている“たのもしい”息子たちが、母の日なのに「おめでとう」の電話も、花束も贈ってくれない。怒ったママ友3人組は、息子たちに突撃をかけようと決意。意気揚々とマンハッタンに繰り出す。息子たちは、突然現れた母親にあ然。恋人チェックをされたり、口うるさくガーガー言われたりして、それぞれ親子ゲンカが勃発。子どもたちが幼いころからの付き合いでもあるママ友同士でもケンカが始まってしまう。
パトリシア、フェリシティ、アンジェラが演じる「めんどくさい」母親役は、とてもリアル。しかしこの作品は、驚くほど低評価されている。というのも19年、フェリシティが実生活で娘たちを名門大学に入学させるため、多額の賄賂を支払ったことが判明。有罪判決を受け、刑務所に入ったという大スキャンダルがあったからだ。この事件の影響を受け、配信開始日も4月から8月末へと延期。「そんな女が演じる母親なんて見たくない」と低評価を受けるはめとなった。
『いつかはマイ・ベイビー』(3200万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画8位

下ネタ満載なスタンドアップ・コメディアンヌとして人気沸騰中のアリ・ウォンと、数多くのドラマ/映画に出演し、現在『フアン家のアメリカ開拓記』に主演しているランドール・パークが繰り広げる、爆笑ラブコメディ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校出身のアリとランドールは長年の知り合いであり、息の合った演技を見せてくれる。
子どもの頃、隣に暮らすマーカスの家で過ごす時間が多かった鍵っ子サシャ。彼女はマーカスに恋心を抱いていたが、彼との初体験が失敗に終わったことで気まずくなり、2人は疎遠に。15年後、サシャは人気セレブシェフになり、電気工事士の家業を継ぎながら売れないバンドマンをしていたマーカスと再会。恋愛関係になりそうでならない、じれったい関係に陥ってしまう。
サシャの恋人役としてキアヌ・リーブスが出演し、コミカルな演技を見せたことでも大きな話題となった。最後にマーカスが歌う「I Punched Keanu Reeves 」の内容も劇中シーンと関係あり、最後の最後まで爆笑できる作品となっている。「ロッテン・トマト」でも批評家支持率90%という高いスコアを獲得。観客支持率も82%で、アジア人が主人公というコメディとしては記録的な大ヒット作となっている。
『密かな企み』(4000万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画7位

米ディズニー・チャンネルの人気青春ドラマ『スイートライフ』シリーズにレギュラー出演したことで人気を博し、現在はマコーレ・カルキンとの熱愛で注目されているブレンダ・ソング主演のサスペンス映画。
何者かに襲われ、逃げ出そうと道路に飛び出たところを車に跳ねられて大ケガを負ったジェニファー。手術を受け一命は取り止めたが、頭を強く打ったせいで、数年分の記憶を失っていた。ベッドのそばには献身的な夫がいるものの、彼のことも思い出せない。夫とともに家に帰るものの、彼の不可解な行動に戸惑うことになる。ジェニファーの事件を担当した初老の刑事は、長年の勘から夫が怪しいとにらむ。
最初からどのような展開になのか明確にわかる物語だが、「夫」が想像以上に異常な性格であることから、ストーリーが進むにつれ背筋が寒くなってくる。約1時間半と長くないことから、手軽にみられる作品としてもオススメ。

伝説の強盗犯ボニー&クライドを追う2人のテキサスレンジャーの奮闘を、実話に基づき忠実に描いたクライムサスペンス映画。レンジャーは、ケビン・コスナーとウッディ・ハレルソンの大御所俳優が演じる。
舞台は1934年のテキサス。強盗や警官殺しを繰り返す悪名高き犯罪者カップル、ボニー&クライドの足取りを全く掴むことができず、ほとほと手を焼いていた警察。困り果てた彼らは、腕が良いと評判の2人の元テキサス・レンジャーに捜査を依頼する。
テキサス・レンジャーとは、テキサス州独特の法執行官のこと。州公安局の捜査官として長年のキャリアを誇るエリートのみ就けるため、年齢層は比較的高い。警察官のような制服はなく、カウボーイハットにブーツ、ジャケットにジーンズという姿が多く、彼らを題材にしたドラマ、映画が数多く制作されている。今作は、大手映画批評サイト『ロッテン・トマト』でも観客支持率74%とまあまあのスコアを得ており、西部劇好きにオススメの作品でもある。
『トール・ガール』(4100万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画5位

2000年代に映画化された『チャーリーズ・エンジェル』シリーズや、『ターミネーター4』(09)などを手がけた大物監督マックGの、ネットフリックス4作目となるオリジナル映画。軽快なティーン青春ラブコメディで、9月に公開されたばかりだが短期間で視聴回数を稼ぎ、5位にランクインした。
物心ついた頃から長身で、16歳にして身長187cmのジョディ。長身をからかわれる度に傷ついてきた彼女に、幼なじみのジャックは好きだとアプローチを繰り返しているが、彼とは身長差がありすぎるため、「付き合ったらこれまで以上にからかわれる」と相手にせず。親友止まりの付き合いをしていた。うつうつとした日常を過ごしていたジョディだが、スウェーデンから長身なイケメン交換留学生がやってきたことにより、すべてがバラ色に変わる。彼となら身長も釣り合いがとれるとときめいたジョディだが、いじめっ子のキミーが彼と強引に付き合ってしまう。
米大手メディアのレビューは「エンディングがイマイチ」と辛口評価が多いが、ティーン映画としてはきれいにまとまっており、ヒットした。普遍的なテーマゆえ、中年世代も十分に楽しめる作品となっている。
『パーフェクト・デート』(4800万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画4位

スティーヴ・グルームの『The Stand-In』が原作で、今時のハイティーンの恋愛事情を描いたコメディ。アメリカの格差社会や、名門大学の不正入学といったダークな現状も取り入れられており、見応えのある作品に仕上がっている。
生まれ育った田舎町を出て、名門イエール大学に進学し、輝かしい人生を歩みたいと切望するブルックス。さえない作家の父親は、金銭的にも楽な地元の大学に進学してくれと説得するが、ブルックは「絶対にイエールに行く」と頑なだ。そんなブルックに、金持ちの女の子を「紳士的にエスコートする」という報酬のよいバイトが舞い込む。難なくこなし楽勝だと感じた彼は、プロミラミングの天才である親友マーフに、「時間制で理想の彼氏を演じる」というアプリを作ってもらう。それが大ヒットし、金持ち女子のコネで念願のイエール大学学部長に面会できる機会も得て、舞い上がる。しかし調子に乗りすぎてしまい、大事な友人が離れていってしまう……。
米ディズニー・チャンネルの人気青春ドラマ『オースティン&アリー』のアリー役でブレイクしたローラ・マラノと、同作シーズン3にダラス役で出演していたノア・センティネオが再共演するとあって若い層から大きな注目を集め、堂々の4位にランクイン。ちなみに、ノアは昨年もNetflixの『好きだった君へのラブレター』『シエラ・バージェスはルーザー』というオリジナル映画に出演しており、米誌「Vanity Fair」は、ノアのことを「Netflixのお気に入り若手俳優」と表現。今後もノア主演のコメディ映画を制作するだろうと注目されている。

評論家から大絶賛された映画『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(15)のJ・C・チャンダー監督と俳優オスカー・アイザックが、再びタッグを組んだハードボイルド映画。
民間軍事に所属するポープは、ブラジル警察と共に麻薬王を追っていた。麻薬王が邸宅に多額の金を隠していることに気づき、米陸軍特殊部隊時代の仲間と共に強奪することを計画。金を奪い、麻薬王を殺害することにも成功するが、その後の逃亡で予想していなかった事態に次々と見舞われ、仲間うちの雰囲気がギスギスし始める。しかし、彼らの結束は固く、力を合わせ危険な状況をサバイブしていく。
特殊部隊の元リーダー・レッドフライとしてベン・アフレックが主演。一度は降板したと伝えられていたベンの出演に、ファンは大喜びした。制作費は1億1,500万ドル(約120億円)。銀幕映画に劣らぬ高いクオリティの作品に仕上がったが、大手映画批評サイト「ロッテン・トマト」の批評家支持率は72%と手厳しかった。
この作品があまり評価されなかったことを受け、Netflixは今後制作費を抑える方向に転換するようだと一部メディアが報じた。しかし、11月末に配信開始されたマーティン・スコセッシ監督の新作『アイリッシュマン』の制作費は、破格の1億5,900万ドル(約172億円)であることから、今後も可能性を感じた作品には莫大な制作費を投入するものと見られている。
『マーダー・ミステリー』(7300万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画2位

50歳になった今も「アメリカン・スイートハート」として絶大な人気を誇る女優ジェニファー・アニストンと、国民的コメディアンとして名高いアダム・サンドラー主演のサスペンスコメディ。
刑事昇格試験を落ち続けている冴えない中年警察官ニックと、彼にときめきをなくして久しい妻で美容師のオードリー。結婚15年目にして妻念願のヨーロッパ・ハネームーンに繰り出した2人は、ひょんなことから大富豪と知り合いになり、一族の超豪華パーティーに招かれることになる。パーティーでは不穏な空気が流れており、なんと遺産目当ての殺人事件が勃発。ニューヨークの刑事だと偽ったニックと、推理小説好きのオードリーは事件を解決しようと頭をフル回転。とんでもないハネムーン旅行となってしまう。
超人気役者の2人が夫婦を演じるとあり、配信前から注目された本作は、開始から3日間で3,000万回以上が再生されネットフリックス最多記録と話題になった。映画評論家たちは「あまりにもドタバタしすぎ」と酷評したが、ファンはジェニファーとアダムが繰り広げるコミカルな演技に大喜び。視聴者数はぐんぐん伸び、7,000万回を軽く突破した。視聴者受けが抜群なことから、続編の話が進んでおり、再びジェニファーとアダムが主演するか注目されている。
『バード・ボックス』(8000万回)|Netflix(ネットフリックス)オリジナル映画1位

ジョシュ・マラーマンの同名小説が原作。脚本は、『メッセージ』(16)でアカデミー賞最優秀脚本賞にノミネートされたエリック・ハイセラーが執筆。14年に、“映画化されていないホラー系小説ランキング”「Blood List」で第1位を獲得しており、制作される前から注目されていた。
主演は演技派女優サンドラ・ブロック。近未来に突如人類が正体不明の“それ”に襲われ、世界終焉・人類滅亡へと向かっていく。“それ”を見た者は目が黒く変化し、ほとんどの人が自殺してしまう。“それ”を見なければ無事でいられるのだが、“それ”を見ても自殺をせず悪魔へと豹変する人がおり、彼らが“それ”を見せようと襲いかかってくる。もともと精神的に余裕のない、男に捨てられた臨月妊婦だった主人公は、神経をすり減らしながら子どもたちを死なせないように育て、安全な楽園へ向かうため、子どもたちと共に目隠しして壮絶な逃避行に出る……。
主人公は目隠しして生き延びたため、“それ”の姿を見ることはできない。しかし、“それ”がどんな姿をしているのかは、見た人々たちの表情やおぞましい音で表現されている。また、“それ”に魅了され、悪魔と化した人間の方が何倍も恐ろしい存在であることが描かれている。
配信開始後1週間で4,500万人が視聴した本作は、その後もどんどんと視聴者数を増やし、メガヒットドラマシリーズとして有名な『ストレンジャー・シングス』の6,400万人を超える快挙となった。