書店にも読者にも作者にもうれしい!「本の予約・取り寄せ用フォーマット」は書店再生への大発明か

 もはや書店は時代に合わないビジネスのように見られている。昨年には、全国で書店のない自治体・行政区が、全国のうち2割に及ぶことも話題になった。

 もはや、読者の意識が従来の書店からネット書店に向いているだけが理由ではない。欲しいときに欲しい本が店頭にないことが問題だ。

 これに頭を悩ませているのは読者だけではない。著者の側も同様の悩みを抱えている。発行部数が少ない本の場合、一部の書店にしか配本されないケースがしばしば見られる。

 結果、マンガなどの連載作の場合、単行本の売り上げ不振で打ち切られる。書き下ろし単行本の場合、次作の出版の際にマイナスに判断される材料となってしまう……。

 ようは、流通のミスマッチによって読者の書店離れが引き起こされているのである。こうした中で、話題のなっているのがマンガ家・一二三氏(Twitter ID:@hifumix_0123)が公開した「本の予約・取り寄せ用フォーマット」だ。

 これは著者が、自作のタイトルやISBNコードを書き込んで配布すれば、読者は書店でスマホなどを用いて画像を表示するだけでスムーズに注文ができるようにしたもの。

 このフォーマットへの反響は大きく、書誌情報を入力するだけでフォーマットを生成できる「書籍予約・取寄せフォーマット用生成ツール」(http://monokakitools.net/bookinfo/)ツールも有志によって公開されている。

 このツールによって、取り寄せや事前予約も簡便になり、結果、書店を通じた新規読者の開拓も期待されている。

 全国100の書店をめぐり『「本を売る」という仕事: 書店を歩く』(潮出版社)を上梓した、フリー記者の長岡義幸氏は、ネット書店隆盛の中での、実書店の意義を次のように語る。

「多くの本と出会う機会が得られるのは実書店ならでは。自分が買いたい一点を探すのではなく、目当ての周辺の本や、まったく知らなかった本にも出会うことができるんです」

 ネット書店でも、自分の欲しい本を購入すると関連する本は表示される。それでも、得られる情報の量でいえば実書店のほうが、はるかに多いといえるだろう。話題のフォーマットには、そうした機会を与える期待もあるようだ。

 現在、主にマンガ家の間に広まっているこのツールだが、汎用性は高いので、マンガ家以外も使うことができる。筆者も以前、新聞に自著の書評が掲載されたのに、書店の「今週の書評掲載された本」コーナーで欠品していて、非常にイラついた記憶が……。これからは、ぜひ、このフォーマットを使わせてもらおうと思っている。
(文=昼間たかし)

児ポ販売で「湘南堂書店」摘発の神保町古書店街は“治外法権状態”だった? 警察官や政治家関係者も……

 古本愛好家や古書マニアに知られた東京・神田神保町の老舗古書店「湘南堂書店」が、児童ポルノの写真集や書籍の販売で摘発された。ただ、同書店での児童ポルノ販売はこのエリアで営業する同業者や常連客の間では知られていた様子で「摘発は時間の問題だった」という声もある。

「この界隈の古書店は、150店ぐらいのほとんどが神田古書店連盟に入ってるんです。違法な書籍なんかを扱っている店は入ってこれないんで、すぐわかるんですが、湘南堂がまさにそれ」と神保町で古書店を営む男性。

 地下鉄・神保町駅を中心とした古本屋街となっている同地域は、文豪・夏目漱石も縁の深い街だが、たくさんある古書店も、よく見れば特色があるという。

「古い文学書が得意な店や、歴史資料に精通した店、美術系やサブカルチャーなど、それぞれ強みがあるものです。ただ湘南堂は、パッと見は古書店でも、品揃えは半数ぐらいがエロ本で、他は量があるだけで一般書の特色があまり感じられなかったんです。お客さんから『あそこは違法なロリコン本を欲しがる人しか行かない』なんて話を耳にしたこともあります」(同)

 湘南堂は昭和46年に開店した老舗で、名物ストリートの神田すずらん通りにあるが、少し前に栗山千明が11歳のときに撮影したヌードが掲載されているプレミア写真集『神話少女』(新潮社)も陳列し、10万円で販売していた。同書が児童ポルノ法違反に該当したという話は聞かないが、そのあたり解釈に論争があることから、多くの古書店では店頭に並べてはいない。

「でも、そういうのを置いておけば、ロリコン客が察して『その手のあります?』って聞いてくるそうです。そこでさらに違法性が強い別の商品を紹介する流れがあるとか」(同)

 警視庁によると今回、湘南堂は5歳ぐらいの幼女を含む18歳未満の少女のヌード写真などが掲載された書籍を200冊以上も販売目的で所持していた疑いで、経営者の山田忠容疑者と長男の健雄容疑者は「経営が苦しかったから」と容疑を認め、従業員の織田健太郎容疑者は「知らなかった」と否認しているという。

 ただ、古書店のこうした摘発はこれが初めてで、「ここだけは保護区というか、特区のようなものだと思っていた」と話す古書マニアもいる。

「この界隈には、いわゆるビニ本と呼ばれる昭和のエロ本で栄えた書店があって、古本文化の一端を支えてきたんですよ。それが年々規制が厳しくなって、店主が仕入れた貴重本を常連客だけにこっそり売るということも多くありました。実際のところ、区域の担当警察官にも愛好家がいて、エロ本を買いながら『あまり目立たないようにね』と助言したりすることもあったんです」(同)

 一説には、湘南堂の客には以前、有名政治家の秘書がいたことが一部でウワサになり、その政治家の使い走りではないかという疑いも浮上した。児童ポルノは、それ自体に児童の被害者が存在するものであるが、他の先進国と比較すれば、違反者の罪悪感が低いといわれる。同店の摘発にも、その罪の重さを感じるより、肩を落とす愛好家の方が多いのだろうか……?
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

大量の「アリス・クラブ」が販売されていたことも……湘南堂だけじゃない!? 古書店で売られる“児童ポルノ”

 神保町・すずらん通りにある古書店「湘南堂書店」が児童ポルノを販売していたとして、店主ら3名が逮捕された事件が話題になっている。

 新聞各紙の報道によれば、同書店では写真集などを“プレミア価格”で販売。これが、タレコミによって当局の知るところとなったという。

 実写の少女ヌードなどを扱う、いわゆる“児童ポルノ”を販売することが法律で禁じられてから、来年でいよいよ20年を迎えようとしている。それでも古書店の店頭やネット販売で、現在では“児童ポルノ”として販売を禁じられている写真集や雑誌を見つけるケースは多い。

 ただ、今回の事件のように、それがロリコンにとっては大金を払ってでも欲しいということがわかった上で、プレミア価格をつけて販売している古書店というものは、少ないように見受けられる。

 以前、サブカルチャーに強い馴染みの古書店で「『ヘイ!バディー』は、まだ在庫にあるんじゃないの?』と聞いてみたことがある。「ヘイ!バディー」とは、白夜書房が発行していた、グラビアは少女ヌード、モノクロページはサブカル文化人の原稿だらけという伝説的雑誌。そのほとんどの号のグラビアは、ワレメ無修正である。すると店主はあきれた顔で、こう言った。

「あっても売れないよ……『ビリー』ならあるけど……」

 古書店でも「児童ポルノが含まれるものは、売ってはいけない」というのは常識。それでも、古書店の店頭や市場に出回ることは、けっこうある。

「だいたいは無意識で陳列したり、ネットに登録したりするものだけど……まあ、これくらいならいいか……と、売ってしまう古書店も、ままあるものです」(ある古書店主)

 最近は、古書の販売もネットが主流になりつつある。大量に扱う中で、チェックしきれないのだろう。特定のキーワードで検索していると、ときどき“児童ポルノ”に該当する写真集や雑誌が浮上してくる機会は多いものだ。

 それとは別に、店頭で大量に「児童ポルノ」が並んでいるところを、過去何度も見たことはある。一度、店員に聞いて見たことがあったが「大量に持ち込まれたので……」と言う。どうも、マニアが死んだか何かで遺品を整理していた家族が処分に困って持ち込んだようだった。その時並んでいたのは、大量の「アリス・クラブ」と「小説アリス」だったが。引き取ったから売るのも、どうかと思う。でも、死後、これを見つけた家族の心中を察するに痛い。

 結局のところ、警察当局による取り締まりの主眼は、現在もリアルタイムで被写体となる児童が虐待されている可能性がある部分に当てられている。それらは、主にネットを通じて取引されており、大量の犯罪者の摘発も容易だからだ。

 今回のように、あまりに堂々と販売している事例は、むしろレアケースだと思いたい。
(文=昼間たかし)

出版ノルマに追われて……ライトノベルは「編集者の代筆が当たり前になっている」という惨劇

 毎月、多数のタイトルが出版されているライトノベル。その勢いとは裏腹に、崩壊の兆しが見え始めている。もはや、まともに書ける作家が“枯渇”しているのである。

 ここ数年、ライトノベルの世界を席巻しているのが、投稿サイト「小説家になろう」などのネット発の作品。売上の上位を占めているのも「なろう系」だ。

 だが「なろう系」の席巻が、かえってライトノベルの勢いにブレーキをかけようとしているのだ。

「新しい作家の発掘は、公募以外は完全にネットに依存しています。ランキング上位にいる作家は、たいてい電撃文庫などの大手がスカウト。中小のレーベルも、やはりネットで目を付けた作家をスカウトするのが、日常の業務に組み込まれています」

 そう話すのは、あるライトノベル編集者。ここ数年、プロとしてデビューを狙う作家の卵たちは「なろう系」に作品を投稿。そこで読者をつかみ、出版社から声がかかるのを待つというスタイルが定着してきた。

 最初から原稿はあるし、読者の数も見えるため、双方にとってメリットがあるものだった。しかし、ここに来て新たな問題が起こっているのだ。

「なろう系で人気を得ている作品でも、そのまま即、出版できるレベルに達しているものは限られています。そこで、出版の際には加筆、改稿をお願いするのですが、何度書き直しても、出版できるレベルに達する筆力のない人が増えているのです」(同ラノベ編集者)

 話を聞かせてくれた編集者は、こんな出来事に遭遇したという。

「私が赤入れをした上で改稿をお願いしたのですが……1カ月ほどたって戻ってきた原稿は、わずかに数行が変わっているだけだったのです。わかりますか? ネットに投稿した時点で力尽きて、もうどうしても書けないというのです」

 本来、編集者の仕事というのは、そうした作家の卵たちを叱咤してプロとして育てていくことにあるはず。けれども編集者には、そうした余裕がまったくないのだという。

「作家が書けなかったからといって、はいそうですかと刊行予定を延ばすことなんてできません。だから、編集者が書き直すのです。今、多くのラノベ編集者の仕事は、作家を見つけることと、作家の代わりに書き直すことになっているんです。育てる余裕なんて、とてもありませんよ」(同)

 とりわけ、刊行点数の多い某大手出版社では、実際には編集者が書いた作品が急増している惨状だ。この編集者が持参した某文庫。聞けば「作家がギブアップしたので200ページ近く代筆した」という。

「中には、ほぼすべてを編集者が書いている作品もあります。それでも印税は、まともに書けなかった作家にいくのですから、さすがに腹が立ちますよね」(同)

 もはや「なろう系」は、単なる作品の元ネタを見つける場になっているのか。これから先、代筆で疲弊して壊れていく編集者は増えていきそうだ。
(文=是枝了以)

出版ノルマに追われて……ライトノベルは「編集者の代筆が当たり前になっている」という惨劇

 毎月、多数のタイトルが出版されているライトノベル。その勢いとは裏腹に、崩壊の兆しが見え始めている。もはや、まともに書ける作家が“枯渇”しているのである。

 ここ数年、ライトノベルの世界を席巻しているのが、投稿サイト「小説家になろう」などのネット発の作品。売上の上位を占めているのも「なろう系」だ。

 だが「なろう系」の席巻が、かえってライトノベルの勢いにブレーキをかけようとしているのだ。

「新しい作家の発掘は、公募以外は完全にネットに依存しています。ランキング上位にいる作家は、たいてい電撃文庫などの大手がスカウト。中小のレーベルも、やはりネットで目を付けた作家をスカウトするのが、日常の業務に組み込まれています」

 そう話すのは、あるライトノベル編集者。ここ数年、プロとしてデビューを狙う作家の卵たちは「なろう系」に作品を投稿。そこで読者をつかみ、出版社から声がかかるのを待つというスタイルが定着してきた。

 最初から原稿はあるし、読者の数も見えるため、双方にとってメリットがあるものだった。しかし、ここに来て新たな問題が起こっているのだ。

「なろう系で人気を得ている作品でも、そのまま即、出版できるレベルに達しているものは限られています。そこで、出版の際には加筆、改稿をお願いするのですが、何度書き直しても、出版できるレベルに達する筆力のない人が増えているのです」(同ラノベ編集者)

 話を聞かせてくれた編集者は、こんな出来事に遭遇したという。

「私が赤入れをした上で改稿をお願いしたのですが……1カ月ほどたって戻ってきた原稿は、わずかに数行が変わっているだけだったのです。わかりますか? ネットに投稿した時点で力尽きて、もうどうしても書けないというのです」

 本来、編集者の仕事というのは、そうした作家の卵たちを叱咤してプロとして育てていくことにあるはず。けれども編集者には、そうした余裕がまったくないのだという。

「作家が書けなかったからといって、はいそうですかと刊行予定を延ばすことなんてできません。だから、編集者が書き直すのです。今、多くのラノベ編集者の仕事は、作家を見つけることと、作家の代わりに書き直すことになっているんです。育てる余裕なんて、とてもありませんよ」(同)

 とりわけ、刊行点数の多い某大手出版社では、実際には編集者が書いた作品が急増している惨状だ。この編集者が持参した某文庫。聞けば「作家がギブアップしたので200ページ近く代筆した」という。

「中には、ほぼすべてを編集者が書いている作品もあります。それでも印税は、まともに書けなかった作家にいくのですから、さすがに腹が立ちますよね」(同)

 もはや「なろう系」は、単なる作品の元ネタを見つける場になっているのか。これから先、代筆で疲弊して壊れていく編集者は増えていきそうだ。
(文=是枝了以)

「カネ無し生活」のマニュアル本『ゼロ円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』

 金、金、金。

 今の日本では、「世の中は、ほぼすべて金」が現状。食べるもの、住む場所、通信、移動、生きるためには金がいる。本当だろうか?

『ゼロ円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』(新潮社)は、もらったり、シェアしたり、ゴミをひろったり、行政サービスを利用したり、自然界から採ったりと、無料でできるさまざまな具体例を紹介している。著者で実践者は、かつて『完全自殺マニュアル』で大きな話題を呼んだ、ライターの鶴見済氏だ。

 本書には、お金への依存が高い社会になるほど、持っていないと生きていくことに、致命傷になる。そして、日本の社会はこの依存度が極めて高い、と書かれている。そういった現実を踏まえ、あえて提案するのは、お金に依存しすぎない暮らし。

 例えば、物を買うのではなく、無料で“もらう”。地元での出品が豊富で、手渡しで受け渡しができるアプリ「ジモティー」は、利用したことがある人も多いかもしれない。鶴見氏も、これまでにオーブンレンジ、棚、リュック、ホーロー鍋などたくさんの物をもらったそうだ。逆に提供側にもまわって、自宅で使っていた風呂の蓋、椅子、ベッドをはじめ、共同の畑で使った、使い古しの物置や動かなくなった草刈機など大量の粗大ゴミまで出品したら、もらい手がいたという。

 また、不用品を回す「店」も、世田谷区には存在しているという。約3坪の店内外のスペースにはぎっしりと服や家庭用品、雑貨が並べられ、もらうことも、持ち込むのも自由。店番はボランティア、家賃をはじめとする月7万円かかる維持費は、カンパによってまかなわれている、というから驚く。

 無料で何かを受け取ったり、やりとりをしようとすれば、どうしても手間が増えるし、人間関係も濃くなる。物をひとつ借りるのにも、仲のいい人がいないと、お願いしづらい。鶴見氏は自分でゼロ円生活の実践を続けることで、お金は「人間関係の省略」だと気づいたという。

 また、資本主義の反撃、とも。そもそも地球上にある物は、はるか昔からすべてが共有物だった。みんながそれを分け合い、人にあげたり、お返ししたりしてきた。けれど、ここ2世紀ほどで新しいものを次々と作り出し、それらを持つことが豊かさだと刷り込まれてきた。今ではあらゆる物がすっかり行き渡り、あふれすぎた。その結果、ひとりがひとつずつ持っている必要はないのでは? と気づく人が増えてきて、近年では、家にしろ、車にしろ、なんでもシェアすることが進んでいる。

 この本を読んだからといって、本当にゼロ円で生きていけるワケではない。けれど、お金の使い方について見つめ直すきっかけになる。老後には何千万円も貯めないと、生きていけないのか? 持っていないと、死ぬのか? 確かに今は、右肩上がりの時代は終わりを告げ、お金をバンバン稼いで、貯めることが難しい時代になってきている。

 お金とは何か? 付き合い方を考えるヒントが、この1冊に詰まっている。
(文=上浦未来)

●鶴見済(つるみ・わたる)
1964年東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。フリーライター。著書に『脱資本主義宣言グローバル経済が蝕む暮らし』(新潮社)、『完全自殺マニュアル』『無気力製造工場』『人格改造マニュアル』『檻の中のダンス』、編著に『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』(以上、太田出版)、共著に『レイヴ力』(筑摩書房)などがある。

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千葉市に続き、新たな“コンビニのエロ本規制”を要求……「新日本婦人の会」の正体とは

 コンビニのエロ本規制が、全国へと拡大していくことになるのだろうか。

 昨年、千葉市の主導で始まった、コンビニチェーン「ミニストップ」全店でのエロ本撤去は、新たな形での「言論/表現の自由」への介入として注目を集めた。これは「子どもへの配慮のほか、2020年東京オリンピック・パラリンピックで外国人旅行客が増える」ことを理由に計画されたもの。当初、千葉市では、大阪府堺市が実施している「有害図書を店頭に陳列する際に、市が独自に定めたフィルムで覆う」施策を計画。だが、計画を持ち込んだ市内のセブン-イレブンから断られたことで、計画を再考した結果が、このような形になったのである。

 あくまで「民間企業の判断」として、責任の所在を曖昧にする千葉市の姿勢に批判が殺到したことは記憶に新しい。だが、ミニストップを除くコンビニチェーンでは「あくまで、ミニストップの判断」として、追従する姿勢は見せず、自体は一段落しようとしていた。

 ところが、ここにきて千葉市の規制に便乗する形で、全国レベルの規制を要求する新たな動きが始まっている。

「新日本婦人の会」による「『成人向け雑誌』を全店から撤去、販売を中止してください」という呼びかけがそれだ。同組織の発表によれば、すでに昨年末には、セブン-イレブン本社に対して「成人誌の撤去、販売中止を申し入れ」を実施。さらに、各地域の組織に、近くのコンビニに同様の申し入れを行うように呼びかけている。

 この新日本婦人の会は、日本共産党傘下の女性組織だ。近年では、東京都の青少年健全育成条例や児童ポルノ法をめぐる問題などで「言論/表現の自由」を擁護する意見を発することもある日本共産党だが、エロ本やオタク文化に対して真に理解する姿勢であるかは疑わしい。

 というのも、日本共産党は長らく「ポルノ」に対して時の政府以上に、弾圧する姿勢を見せ、マンガを「低俗な文化」として切り捨ててきた歴史がある。

 筆者の記憶でも、2010年以前は、マンガやポルノの「言論/表現の自由」に対して意見を求めると、拒否されている。それ以降でも、“中央”に近いメンバーに「いつから態度を改めたのか?」と問うと「いつからでしょうか……」と言葉を濁されたことがある。

 意見はさまざまあるだろうが、日本共産党が、この問題に対して日和見を貫いていることは、紛れもない事実である。昨年の衆院選での議席の激減を経て、再び旧来の姿勢へと移行したということであろうか。

 過去「言論/表現の自由」に強い関心を抱く人々の間では、日本共産党はこれを擁護する政党であるとして、投票の選択肢とすべきだという意見も多々見られた。しかし、事ここに及んで、その抑圧的な体質はなんら変化がないことが暴露されつつある。改めて、議会制民主主義に頼ることの空虚さを感じている人も多いのではなかろうか。
(文=昼間たかし)

現実生活でうまくいっていない人ほど、他人のコンプレックスを刺激する!

『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に、匂わせについて3回にわたり話を聞いてきた。最終回となる今回は、匂わせの正しい使い方、絶対してはいけないポイント、そして、こじらせた匂わせの行き着く先と、その予防法について伺う。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!
[3]伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

■SNSでしていい話題は天気の話題くらい?

――匂わせは悪いことばかりではないと初回(記事参照)でもお話伺いましたが、あらためて、匂わせのポイントについて教えてください。

榎本博明氏(以下、榎本) 自分たちの関わり、仕事でもプライベートでも、ここを先に知っておくとお互いに楽だ、ということを匂わせておけば、いい関係を築くために役に立ちますよね。付き合いの最初では背伸びしてしまうものです。有能そうに、寛大そうについ見せてしまう。でも、仕事でもプライベートでもある程度一緒にやっていくのなら、現実の自分を知ってもらった方がいいですよね。

 また、リアルではなくネットの場合「特定の一人に対して」、「特定のグループに対して」、「不特定多数に対して」と発信先の対象が変わってきますよね。

――人数が増えるほど、話題への配慮がより複雑化していきますね。

榎本 はい。一番してはいけないのは、他人のコンプレックスを刺激することです。コンプレックスを刺激したらものすごい攻撃性が向いてきますから。

「結婚を絶対したくない」考えを持つ人の前で「家庭はいい」「子供はいい」という話はするべきではないですよね。失業中の人に「大規模プロジェクトを終えてすがすがしい気持ちだ」と話すのも同じです。相手によって出せる話題は違います。不特定多数が見るネットで、全員が無難な、全員が安全なことを選ばないといけない。

――天気の話くらいしか手札が残らなそうです。

榎本 そうですね。誰の心にも刺さらないといいますか。傷にならない限り、無難な……、スポーツや芸能の、それも差しさわりのない話とか。 

――つくづく、「SNSをしない」で解決しますよね。

榎本 書かずにはいられない承認欲求がありますから、難しいんですよね。

 

■現実生活でうまくいったことのない人ほど他人のコンプレックスに配慮できない

榎本 これは反発されるかもしれませんが、現実生活でうまくいったことのない人ほど、他人のコンプレックスに配慮できないのです。人のコンプレックスを配慮できるまでの心の余裕がない。

 モテたり、勉強や仕事ができたり、現実でうまくいったことのある人や能力を発揮したことのある人は、人からねたまれたり、足を引っ張られたり、悪口や嫌味を言われたりなど他人から攻撃をされる経験があり、他人のコンプレックスに配慮する心の構えが自然とできるようになっています。

――難しい質問だと思いますが、一筋縄ではいかない承認欲求を抱え、それをSNSを通じに強化してしまった人が少しでも楽になるにはどうしたらいいのでしょうか?

榎本 難しいですね。特にネット上で間違った方向に「自己効力(自分の力)」感を持ってしまった人は相当難しいです。極端な例としては、自分の発言でネットが炎上したり、大企業やお店なりを自分の投稿ひとつで困らせたといったものです。

 私も自著を根拠のない内容で中傷されたことがあり、どうしてそんなことを書くのかと相手にメールをしたことがあったんです。そこまで悪意のある人ではなかったようで、ちゃんと返事が来ました。でも、タイトルだけ見て反応して、中身は読んでいなかったのです。なぜそんなことになるのか。自分の発信が自己効力感の源泉になっているからでしょう。その人は、フォロワーがとても多いんです。ネットで活躍している。

――中身も読まずに中傷する人に多くのフォロワーがついているところが一番怖いですね。

榎本 それでモノが売れなかったり、最悪、お店や会社がつぶれたりしますからね。先ほどお話しした個人的な例では、その人は現実でも実績を持っていました。一方で、現実で思うように輝けない、でも輝きたいという人の場合は、冷静に自己モニタリングする心の余裕がない。いい加減な情報を流しまわりに損害を与えることよりも、自分が影響力を持てたという自己効力に重みを置いてしまう。倫理的に考えてどうか、ということがブレーキにならない。

――何かいいブレーキはないものでしょうか。

榎本 ブレーキとなるのは「自分がダメージを被る人の存在」でしょうね。変な目で見られる、ぎこちない態度を取られる、どうも避けられている気がする、と、やはりそれに気づくことなんですよね。

――「変な目/ぎこちない/避けられている」これらすべてはリアルじゃないとなかなか気付けないですね。ネットばかりにいると気づくことも遅れてしまうか、もしくは気づかないままも十分ありうるでしょうね。

榎本 そのためにも、自分の発信に対しどのような反応が起こっているのか自己モニタリングを行うことですね。ネットもリアルも「モニタリングして修正」の繰り返しです。 

■ネット上で匂わせだしたら黄信号

――間違った方向の自己効力が倫理観を超えてしまうと、状況としてはかなり進んでしまったように思えます。それよりも前の「ここから先はまずい(このままでは間違った方向の自己効力に頼り出し、次第に倫理観も失う)」といった黄色信号はあるでしょうか。

榎本 立場によっていろいろですが、でも、自慢はやはりよくないですよね。ネット上の不特定の相手に匂わせをするのは危険なことだと思います。匂わせの時点で、すでに自分を見る目を失いかけているのです。

 知り合いが「高級ホテルの最上階のレストランで食事をしています」と投稿したら見苦しい、イライラする、と思う人が、自分も自慢げな投稿をしてしまう。自分のことだと気が付きにくいので人の姿から自分を顧みることですね。自慢するということは、①自慢したらイラっとする人がいるだけでなく、②自分で自慢しないといけないくらいちっぽけな人間であることをさらけ出しているのです。

 SNSへの不特定多数に向けた匂わせはとても難しいです。ですが、1:1の関係で、自慢ではなく仕事や交際のスタンスを表明する意味での匂わせはむしろ有効に使えばコミュニケーションを円滑に進められます。匂わせを上手に活用してもらえればと思います。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

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現実生活でうまくいっていない人ほど、他人のコンプレックスを刺激する!

『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に、匂わせについて3回にわたり話を聞いてきた。最終回となる今回は、匂わせの正しい使い方、絶対してはいけないポイント、そして、こじらせた匂わせの行き着く先と、その予防法について伺う。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!
[3]伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

■SNSでしていい話題は天気の話題くらい?

――匂わせは悪いことばかりではないと初回(記事参照)でもお話伺いましたが、あらためて、匂わせのポイントについて教えてください。

榎本博明氏(以下、榎本) 自分たちの関わり、仕事でもプライベートでも、ここを先に知っておくとお互いに楽だ、ということを匂わせておけば、いい関係を築くために役に立ちますよね。付き合いの最初では背伸びしてしまうものです。有能そうに、寛大そうについ見せてしまう。でも、仕事でもプライベートでもある程度一緒にやっていくのなら、現実の自分を知ってもらった方がいいですよね。

 また、リアルではなくネットの場合「特定の一人に対して」、「特定のグループに対して」、「不特定多数に対して」と発信先の対象が変わってきますよね。

――人数が増えるほど、話題への配慮がより複雑化していきますね。

榎本 はい。一番してはいけないのは、他人のコンプレックスを刺激することです。コンプレックスを刺激したらものすごい攻撃性が向いてきますから。

「結婚を絶対したくない」考えを持つ人の前で「家庭はいい」「子供はいい」という話はするべきではないですよね。失業中の人に「大規模プロジェクトを終えてすがすがしい気持ちだ」と話すのも同じです。相手によって出せる話題は違います。不特定多数が見るネットで、全員が無難な、全員が安全なことを選ばないといけない。

――天気の話くらいしか手札が残らなそうです。

榎本 そうですね。誰の心にも刺さらないといいますか。傷にならない限り、無難な……、スポーツや芸能の、それも差しさわりのない話とか。 

――つくづく、「SNSをしない」で解決しますよね。

榎本 書かずにはいられない承認欲求がありますから、難しいんですよね。

 

■現実生活でうまくいったことのない人ほど他人のコンプレックスに配慮できない

榎本 これは反発されるかもしれませんが、現実生活でうまくいったことのない人ほど、他人のコンプレックスに配慮できないのです。人のコンプレックスを配慮できるまでの心の余裕がない。

 モテたり、勉強や仕事ができたり、現実でうまくいったことのある人や能力を発揮したことのある人は、人からねたまれたり、足を引っ張られたり、悪口や嫌味を言われたりなど他人から攻撃をされる経験があり、他人のコンプレックスに配慮する心の構えが自然とできるようになっています。

――難しい質問だと思いますが、一筋縄ではいかない承認欲求を抱え、それをSNSを通じに強化してしまった人が少しでも楽になるにはどうしたらいいのでしょうか?

榎本 難しいですね。特にネット上で間違った方向に「自己効力(自分の力)」感を持ってしまった人は相当難しいです。極端な例としては、自分の発言でネットが炎上したり、大企業やお店なりを自分の投稿ひとつで困らせたといったものです。

 私も自著を根拠のない内容で中傷されたことがあり、どうしてそんなことを書くのかと相手にメールをしたことがあったんです。そこまで悪意のある人ではなかったようで、ちゃんと返事が来ました。でも、タイトルだけ見て反応して、中身は読んでいなかったのです。なぜそんなことになるのか。自分の発信が自己効力感の源泉になっているからでしょう。その人は、フォロワーがとても多いんです。ネットで活躍している。

――中身も読まずに中傷する人に多くのフォロワーがついているところが一番怖いですね。

榎本 それでモノが売れなかったり、最悪、お店や会社がつぶれたりしますからね。先ほどお話しした個人的な例では、その人は現実でも実績を持っていました。一方で、現実で思うように輝けない、でも輝きたいという人の場合は、冷静に自己モニタリングする心の余裕がない。いい加減な情報を流しまわりに損害を与えることよりも、自分が影響力を持てたという自己効力に重みを置いてしまう。倫理的に考えてどうか、ということがブレーキにならない。

――何かいいブレーキはないものでしょうか。

榎本 ブレーキとなるのは「自分がダメージを被る人の存在」でしょうね。変な目で見られる、ぎこちない態度を取られる、どうも避けられている気がする、と、やはりそれに気づくことなんですよね。

――「変な目/ぎこちない/避けられている」これらすべてはリアルじゃないとなかなか気付けないですね。ネットばかりにいると気づくことも遅れてしまうか、もしくは気づかないままも十分ありうるでしょうね。

榎本 そのためにも、自分の発信に対しどのような反応が起こっているのか自己モニタリングを行うことですね。ネットもリアルも「モニタリングして修正」の繰り返しです。 

■ネット上で匂わせだしたら黄信号

――間違った方向の自己効力が倫理観を超えてしまうと、状況としてはかなり進んでしまったように思えます。それよりも前の「ここから先はまずい(このままでは間違った方向の自己効力に頼り出し、次第に倫理観も失う)」といった黄色信号はあるでしょうか。

榎本 立場によっていろいろですが、でも、自慢はやはりよくないですよね。ネット上の不特定の相手に匂わせをするのは危険なことだと思います。匂わせの時点で、すでに自分を見る目を失いかけているのです。

 知り合いが「高級ホテルの最上階のレストランで食事をしています」と投稿したら見苦しい、イライラする、と思う人が、自分も自慢げな投稿をしてしまう。自分のことだと気が付きにくいので人の姿から自分を顧みることですね。自慢するということは、①自慢したらイラっとする人がいるだけでなく、②自分で自慢しないといけないくらいちっぽけな人間であることをさらけ出しているのです。

 SNSへの不特定多数に向けた匂わせはとても難しいです。ですが、1:1の関係で、自慢ではなく仕事や交際のスタンスを表明する意味での匂わせはむしろ有効に使えばコミュニケーションを円滑に進められます。匂わせを上手に活用してもらえればと思います。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

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伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

 嵐・二宮和也との交際を匂わせたアナウンサーの伊藤綾子、竹内涼真との交際を匂わせたアイドル「恥じらいレスキューJPN」里々佳……、ジャニーズアイドルや人気若手俳優との交際をSNSで匂わせ炎上した女性芸能人は後を絶たない。自身の芸能生命を絶たれるかもしれないリスキーな行為をなぜ彼女たちは我慢できなかったのか?『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に聞いた。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!

■相手の立場より「自分が輝きたい!」が勝ってしまう

――アナウンサーの伊藤綾子さんは嵐・二宮和也さんとの交際匂わせをして大炎上しました。因果関係は不明ですが、担当していたニュース番組も降板になっています。ジャニーズやジャニーズファンを怒らせたらまずいのは明らかで、一般人の女性が「一般人の彼氏いる匂わせ」をSNS投稿するのとはレベルが違います。なぜこんなことをしてしまったのでしょうか。

榎本博明氏(以下、榎本) 伊藤さんがどういうつもりで行動されたかはわかりませんが、やはりこれも「想像力」が働かなかったのでしょう。「こんなことをしたらどうなるのか」という想像力よりも自慢したい気持ちが勝ってしまったのでしょう。

 また、芸能人になりたいという人は目立ちたいという気持ち、承認欲求が強いでしょうから、その衝動に負けてしまうのもあるでしょうね。さらに芸能人の場合、叩かれようがが目立った方がいいという価値観もありますから。それをチャンスに這い上がっていった紗栄子さんのような方もいますし。

――伊藤綾子さんにかぎらず芸能人と交際匂わせをして炎上する女性芸能人は後を絶ちませんが、共通点はありますか?

榎本  やはり承認欲求と自己愛ですね。芸能人同士なら、相手を思えば本来交際は隠すはずです。それを隠すどころか匂わすというのは、相手のことを考えていないんです。自分が目立てばいい。恋愛感情じゃなく、自己愛なんです。

――交際匂わせは女性が多いですよね。

榎本 男性は自分を輝かせるのは仕事、能力で輝かせるのが一般的で「こんないい女とつきあっている」で自分を輝かせるのはあまり手段として取られないですよね。

――むしろ引いてしまいますね。

榎本 女性の場合仕事、能力以外に「こんな活躍している男とつきあっている」というPRもありますからね。ネットとリアルも同じで、匂わすジャンルが男女で違うんですね。

――「このジャンルでやっても匂わせとして効果がない」ということには鼻が利くのに、一方で、投稿した内容が人からどう思われるかについて想像力が働かないというのは不思議ですね。

■リアルよりもネットがメインになっている人ほど日常生活をさらす

――匂わせとは違いますが、SNSで日常生活を高頻度で投稿する人がいますよね。

榎本 寂しさなんでしょう。誰かと一緒に飢えている。この人と密に生きているという人がいないと、ネットのつながりで「一緒」を感じたがる。

 寂しさが基本的にあり、あと「日常生活」をさらす人は2タイプに分けられます。

 まず、リアルなところで深くかかわるのが苦手で、単独行動が好きで集団が嫌いな人です。「距離を置いてネット上でつながっているくらいがちょうどいい」のでしょう。でも人は何かの瞬間に寂しくなります。そんなときはSNSでつながっている仲間と共有したい。

――その気持ちはとてもよく分かりますし、こういう人は多いでしょうね。SNSが寂しい時に誰かしらかまってくれる、スナック的な場所になっている。居心地がよくて離れられないでしょうね。

榎本 もう一つ考えられる「日常を高頻度で報告する」タイプは、現実がうまくいっていない人ですね。ネットの世界では人とうまくいっている自分を保ちたい。それで孤独を癒しているのです。

■匂わせる人はニュータイプ? 日本人のスタンダードはむしろ「対人不安」

――インタビュー1回目(リンク)で、学生に承認欲求の話をすると反響が大きかった、とお話しがありました。ほか、学生はどのようなことで悩んでいるのでしょうか。

榎本 対人不安ですね。人とうまく関わっていけるかです。

 日本人はもともと対人不安の強い人が多いんです。「嫌われると思って何も言えない」「断りたいのに断れない」「もう帰りたいのに帰りたいといえない」「相手が自分のせいで退屈しているのではないか?」「自分は集団から浮いているのではないか」ですね。

――これらの感覚に、身に覚えがまったくない人の方が少ないのではないかと思います。

榎本 対人不安は日本人に多い、と学校で話すと「自分だけじゃなかった、安心した」と学生からの反響がとても強いんです。普段あまり授業に熱心ではない学生もこの時はとても真剣に話を聞いています。SNSは監視社会ですから、余計人の目が気になって対人不安が強くなってしまうのでしょう。

――学生は世間が大人よりは狭くて少ないですから、そこで居場所を失う恐怖は大人よりずっと強いでしょうし、さらにその中でSNSの監視があるのですから、今の学生は気の毒ですね。

* * *

 対人不安の強い人が本来日本は多いはずなのに、「ニュータイプ」である匂わせな人たちを見て、対人不安の強い人はますます「みんなきらきらしているのに、自分だけがどこかおかしいのではないか」とさらに不安を強めていく構図はあるだろう。一方で匂わせの人が幸福かと言えばそうではなく、承認欲求の虜なのだ。次回、最終回では改めて匂わせとどう付き合っていけばいいか、引き続き榎本氏に聞く。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

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