M-1の裏で強さ見せた『陸王』と“リアルこはぜ屋”を特集した『ガイアの夜明け』を見比べる

 日曜劇場『陸王』(TBS系)第7話の視聴率は14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、前回より1.7ポイントの大幅ダウン。とはいえ、裏では言わずと知れた『M-1グランプリ2017』(テレビ朝日系)が平均15.4%も取ってますし、『陸王』が放送されていた21時台の『M-1』は、まさしく佳境でしたので、大健闘だと思います。

 というわけで、今回も振り返りです。

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■そして、ふりだしに戻る

 

 前回、ニューイヤー駅伝で陸王を履き、激走を見せた茂木くん(竹内涼真)でしたが、世間の反応は冷たいもの。ライバル・毛塚(佐野岳)の体調不良ばかりが取りざたされ、正当な評価を受けることができません。

 茂木くんの活躍で陸王のヒットを確信し、量産に入った「こはぜ屋」の宮沢社長(役所広司)の目算も大外れ。たいして売れない上に、大手メーカー・アトランティスの看板商品「RII(アール・ツー)」より圧倒的に性能がいいことがバレてしまい、アトランティスから妨害を受けてしまうことに。せっかく見つけたアッパー素材の提供元「タチバナラッセル」はアトランティスに札束で頬を叩かれ、こはぜ屋との契約を打ち切ると言い出しました。

 到底受け入れられない宮沢社長ですが、タチバナラッセル・橘社長(木村祐一)も創業3年の新興企業ゆえ背に腹は代えられず、こはぜ屋はアッパー素材をイチから探さなければならなくなりました。宮沢社長の長男・大地(山崎賢人)こそ「俺が探す!」と頼もしいことを言ってくれますが、難儀しそうです。

 そんな折、こはぜ屋の開発室が緊急事態に。陸王に絶対必要な革命的ソール材・シルクレイの製造機が火を噴いていました。幸い、ボヤで済んだものの、機械を持ち込んで顧問を務めていた飯山さん(寺尾聰)いわく「ダメだ、こいつはもうただの鉄くずだ」状態。試作段階の機械を騙し騙し使ってきたツケが、ここにきて出てしまったようです。製造機を作り直すには、1億円かかるとか。

 アッパーもない、ソールもない。つまり、何もない。当然、金もない。開発はふりだしに戻ってしまいました。宮沢社長に残されたのは、陸王への未練と、厳しい経営判断を下さなければならない状況だけ。もう陸王の開発はあきらめて、ただの足袋屋に戻るしかなさそうです。

 

■村野さん、ブチ切れる

 

 これに業を煮やしたのが、陸王企画に賛同し、こはぜ屋と運命を共にすることを決めたカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)。徹底的に選手に寄り添うことをモットーとする村野さんは、「陸王を、茂木を見捨てるのか」と宮沢社長に迫ります。

「あいつらは命をかけて走ってるんですよ」

「生きるか死ぬかの戦いをしているんだ」

「安易にシューズなんか提供すべきじゃない」

「陸上競技者への冒涜だ」

 厳しい言葉を残して、村野さんはこはぜ屋を去っていきます。

 そして、命をかけて走っている側の茂木くんにも屈辱が訪れます。以前、一度ドタキャンされた雑誌「月刊アスリート」からの取材依頼を、陸王の宣伝になるなら、と受けた茂木くん。「茂木特集」のつもりで、取材では必死に陸王の良さをアピールしますが、実際に掲載されたのは「毛塚とそのライバルたち」の1カコミ記事。言ってもいない、毛塚に都合のいいコメントだけが掲載され、もちろん陸王の宣伝もゼロ。それどころか、この企画全体が毛塚に「RII」を提供しているアトランティスのタイアップだったようです。

 茂木くんは猛然と、城戸監督(音尾琢真)に「抗議したい」と訴えますが、「気に食わないなら走りで見せるしかない」「死ぬ気で走れ」とたしなめられます。もう陸王は、二度と提供されないというのに! かわいそう!

 

■シルクレイ飯山には天啓が

 

 そんなこんなで、こはぜ屋と茂木くんが絶望的な状況に陥る中、シルクレイの特許を持っている飯山さんには天啓が訪れます。世界的な新興スポーツメーカー「Felix」から、特許の独占使用契約を結びたいとの申し入れがあったのです。条件は年間6,000万円。

 ここで、こはぜ屋を切れば、飯山さんには大金が転がり込むことに。もともと飯山さんは、こういう状況を見越して、自分の会社を潰してまでシルクレイの開発に打ち込んできた経緯があります。まさに、渡りに船。マリアナ海溝に豪華客船。乗らない理由はないはずですが、どうやら奥さんともども逡巡しているようです。嘘みたいに義理堅い男です。金に転んだタチバナラッセルの立場がありません。

 

■決められない男・宮沢

 

 金に転ぼうとしているのは、こはぜ屋の宮沢社長も同じです。陸王への未練は断ち切りがたいが、金策の手段は尽きた。1億円なんて銀行は貸してくれないし、そもそも借りたって返せるあてはない。経営者として、決断の時は迫っています。金に転んだタチバナラッセルを「裏切り者!」と断罪した宮沢社長もまた、経営者として村野さんや茂木くんを裏切ろうとしている。今回の役所広司、ほぼ全編にわたって半泣きです。

 しかし、銀行を辞めてベンチャーキャピタルに転職することにしたスーパー銀行マン・坂本っちゃん(風間俊介)にド正面から「あなたはどうしたいんですか?」と詰められ、この状況でも大地がアッパー素材探しに奔走していることを知ると、覚悟を決めることにしました。

「やれるだけやって、それでもどうしてもダメだったときは、自分の意志で、ちゃんと決断してあきらめたい」

 大見得を切った宮沢社長の言葉を受け、飯山さんはFelixとの契約を断ることにしました。

 前を向いた、宮沢社長と、こはぜ屋。今回はたっぷり時間をかけてこの葛藤だけが描かれましたが、最後の最後に一縷の望みがもたらされます。

 VCに転職した坂本っちゃんが持ってきたのは、こはぜ屋の買収話でした。

「会社を、売りませんか?」

 なんとその買収先は、飯山さんが契約を断ったFelixでした。特許の独占ができないなら、会社ごと買ってしまえという、いかにもグローバル企業らしいダイナミックなやり方です。ずんずんずんずんと空港に降り立ったFelixの社長・御園(松岡修造)が大写しになったところで、今回はここまで。「月刊TVガイド」(東京ニュース通信社)の情報によれば、最終回は12月24日の第10話になりそうです。

 原作では、ここから先は松岡修造演じる御園が、物語を大きく左右することになります。役所広司と松岡修造の演技合戦が盛り上がりのカギになるということです。次回予告を見た限り、背が高くて顔がハンサムで、なんとなくカリスマ性を感じさせる松岡修造の立ち姿は、御園にぴったりだと思いました。それにしても、クライマックスへのキーマンを演技未経験の元テニス選手を、しかもお茶の間に浸透しているイメージとは真逆の冷徹で知的なキャラクターとしてブッキングする『陸王』のチャレンジ精神には感服します。おそらくは、勝算があってのことでしょう。ちょっと小難しい話にもなっていくので、松岡さんの熱演に期待したいです。

 

■もうひとつの“ただの足袋屋”の物語

 

 ところで、先月28日の『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)は、「“陸の王者”を目指せ!」と題して、マラソンシューズの開発に乗り出した老舗の足袋屋が特集されていました。番組内では『陸王』の名前も出ませんし、ドラマのモデルだと公言もしていませんが、原作執筆の際に池井戸潤さんが取材に訪れたことで知られる「きねや足袋」という会社です。

 今回の『陸王』で、宮沢社長は「シルクレイがなければただの足袋屋に逆戻りです」と言っていますが、シルクレイはご存じのように架空の素材。つまり、「シルクレイがない、ただの足袋屋」が、どのようにマラソンシューズ開発に取り組んでいるのかが丁寧な取材で語られました。

 シルクレイもない、特別なアッパー素材もない。あるのは技術と創意と情熱だけ。役所広司よりだいぶ若い40歳のイケメン社長が、あの「Nike」(これも実名で登場)に挑む姿も、それはそれで胸に迫るものがありましたよ。今回、ドラマの大半でうじうじしてた宮沢社長を見るにつけ、きねやみたいにしっかりせえ! と思いました。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

『陸王』が持つドラマとしての強さ──和田正人と吉木りさの結婚発表も“計算済み”か!?

 日曜劇場『陸王』(TBS系)は第6話も視聴率16.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調キープ。というわけで、さっさと振り返りましょうね。泣いてしまいましたよ。

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 前回、第5話の90分拡大版には数多くのエピソードが含まれていましたが、今回は大筋で2つ。はっきりと前後半に分かれる構成でした。

 前半では、ついに「陸王」を履いてレースに臨むことになった茂木くん(竹内涼真)が出場する「ニューイヤー駅伝」の様子が描かれます。茂木くんにとってこのレースはケガで途中リタイアした豊橋国際マラソン以来の復帰戦となります。茂木くんにとっても、茂木くんのケガを目の当たりにしたことで「陸王」の開発を決意した主人公・宮沢社長(役所広司)が率いる足袋業者・こはぜ屋にとっても、ひとつの“到達点”となるレースです。

 なので、ここまで登場してきた人物たちが「ニューイヤー駅伝」が行われた群馬に、一堂に会しています。まさに『陸王』オールスター状態。さらに、大観衆として7,000人のエキストラも。

 宮沢社長と息子・大地(山崎賢人)は、大手メーカー・アトランティスとケンカ別れしたカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)とともに巨大モニター前に陣取ります。事あるごとに助言してくれるスポーツショップの有村さん(光石研)が、陸王のソール材「シルクレイ」開発者で先週暴漢にボコられたばかりの飯山さん(寺尾聰)を連れてやってきました。

 実際に「陸王」を縫っていた縫製おばちゃんたちは、3時間も前から茂木くんが走る6区のスタート地点で、横断幕を用意して待っています。リーダー・あけみさん(阿川佐和子)は今日も元気でかわゆいです。

 憎まれ役がすっかり板についてきたアトランティスの小原(ピエール瀧)と佐山(小籔千豊)も、ご自慢の最新鋭シューズ「RII(アール・ツー)」を携えて憎たらしい顔をしています。今レースでRIIを履く主な選手は、茂木くんの同僚で「ダイワ食品」のエース格・立原(宇野けんたろう)と、茂木くんと同じ6区を走る永遠のライバル・毛塚(佐野岳)です。茂木くんがケガをしている間に、毛塚はすっかり日本中の注目を集めるランナーに成長。レース前、茂木くんが陸王を履いているのを見つけると、「ふっふふふっ、勝つ気あんの?」と小バカにしてくるなど、レースへの機運は自ずと高まってきました。

 

■茂木くん、チーターになる

 

 6区。8位でタスキを受け取る瞬間までの茂木くんの様子が、まずは丹念に描かれます。テンションを上げるでもなく、真摯で、覚悟を決めた男の顔。静かに燃えるアスリートの闘志。毛塚の挑発にも、心を乱されることはありません。その心中を、倒産経験者の飯山さんが代弁します。

「緊張もしてるだろうが、今のアイツには、それ以上に感じるものがあるはずだ。また走れる喜びだ。俺がそうだった──」

 この飯山さんのセリフによって、茂木くんとこはぜ屋一同の思いがひとつになります。こういうとこなんだろうなーと思うんですよね。視聴者が何に感動すればいいかを、ちゃんと丁寧にセリフで説明してくれるから、万人にとって見やすいドラマになってる。その丁寧さの際たるものがリトグリちゃんの「Jupiter」を流すタイミングで、「はい、今週はここですよ!」と教えてくれるわけです。まあ、この歌については賛否両論のようですけど、間口を広げようという作り手側の意図は、すごく理解できるところで。

 で、8位でタスキを受けた茂木くんは、快走を見せます。解説者も「神がかってますね」「魔法にかかった走りです」「チーターですよ」と興奮を隠せない走りで次々に先行ランナーをかわすと、いよいよ3位を走る毛塚との一騎打ちとなります。

 エキストラに囲まれたコーナーから、まずは毛塚が姿を見せます。その瞬間、映像はスローモーションに、アウトフォーカスの向こうに茂木が姿を見せる。毛塚も思わず振り返る。BGMがかき鳴らされ、7,000人のエキストラがエキサイトする中、強い風が吹いている。茂木は毛塚のスリップストリームに入り、毛塚が突風にバランスを失ったスキに、一気に抜き去っていきます。

 結果、茂木は6区の区間賞を獲得。完全復活を果たすとともに、陸王が優れたシューズであることを証明して見せました。こはぜ屋一同も、もちろん大喜び。でも、ここで「Jupiter」は鳴らないんです。

 

■オールスター戦なのに、主役は番手の低い2人でした

 

 ここまでの総決算となるニューイヤー駅伝で、中盤のクライマックスで、主役となったのは、陸王もアトランティスも履いていない、主人公たちにまったく関係のない2人の男でした。

 ダイワ食品のアンカーは、このレースでの引退を決めている平瀬(和田正人)。平瀬が、泣きながら激走を見せます。

 その様子を見ていたのが、ダイワの城戸監督(音尾琢真)でした。この人、登場からずっと必要以上に怖い、物わかりのよくない人物として描かれてきました。宮沢社長も、何度冷たくあしらわれたかわからない。

 その城戸が、平瀬の走りを見てブチ切れているんです。

「あんなオーバーペースで、バテるに決まっとろうが!」

 そして、涙を流しているのです。このギャップ! 一気に、城戸監督という人物の心の中が、爆発的に表現される瞬間。ここぞとばかりに「Jupiter」。泣いちゃうよねえ~。泣いちゃうよ。『水曜どうでしょう』(HTB)では、ろくに顔も出さず釣りだけしていた音尾くんの顔面に泣かされることになるとは……。

 それにしても、ここまで平瀬のエピソードに比重が置かれたことには意表を突かれました。「ひとりのランナーの引退レース」という設定が内包する訴求力を、加工せず生のまま投げつけられたような、筋を追うだけではない「ドラマとしての強さ」を意識した作劇だったと思います。

 和田正人と吉木りさの結婚発表も、おそらくは展開に配慮した(もしくはドラマが求めた)タイミングだったのではないでしょうか。第6話で最大の見せ場を和田さんに設定しておいて、その直前に芸能ニュースで和田さんの顔をお茶の間に浸透させた……というのは、ちょっとうがちすぎかな。

 

■後半ではアトランティスの逆襲が

 

 長くなったので後半はさくっといきましょう。

 茂木くんの快走で調子に乗った宮沢社長は「陸王」を製品化しますが、しょせんはマイナーブランドですので、売れ行きはよくありません。

 そんな中、いよいよ陸王がホンモノだと判断したアトランティス・小原は、そのアッパー素材の調達先であるベンチャー企業「タチバナラッセル」の橘社長(木村祐一)に大量ロットの発注をかけ、こはぜ屋との取引中止を迫りました。橘社長も、背に腹はかえられず、アトランティスと契約することに。

 こはぜ屋はアッパー素材の供給元を失い、またまたピンチです。来週から登場するという松岡修造は、果たして敵か味方か。というか、松岡さんが演じる御園って、けっこう難役だと思うんですが、大丈夫なのか。うーん、目が離せません。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

16.8%で過去最高の日曜劇場『陸王』感動の“手数”で攻める「まるでナイツの漫才みたい」!?

 マラソンシューズ開発に挑む老舗の足袋製造業者「こはぜ屋」の奮闘を描いた日曜劇場『陸王』(TBS系)も第5話。今回は30分拡大版でしたが、視聴率は16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最高を記録しました。これまで、プロ野球の日本シリーズやら『シン・ゴジラ』(テレビ朝日系)やら裏が強かったこともあって伸び悩んできましたが、いよいよ20%の大台が見えてきましたね。というわけで、今回も振り返りです。

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 今回は、いつにも増して「手数をまとめてきたなー」という印象です。感動シーンのオンパレード、テンコ盛りのお涙デコレーションケーキでした。

 

■茂木くんが満足するシューズを作れるのか

 

 こはぜ屋の宮沢社長(役所広司)は、ようやく開発中のマラソンシューズ「陸王」の試作品をダイワ食品の実業団ランナー・茂木くん(竹内涼真)に履いてもらうところまでこぎつけました。基本的には好感触なんですが、茂木くんいわく「アッパーが不安定で、フラつく感じがある」のが不満とのこと。軽くて丈夫なソール材「シルクレイ」こそ完成したものの、まだまだ課題は山積みです。

 シルクレイの開発者である飯山さん(寺尾聰)は「陸王はRII(アール・ツー=大手メーカー・アトランティスの製品)に勝てるのか」と不安気ですが、アトランティスを退職して「陸王」チームに加わったカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)は「それでも、私はここにいる!」と断言。自信満々ですが、問題のアッパー素材については、まったくめどが立っていません。これが、今回のメーンの課題。この解決までに、さまざまな「困難と解決」が挟み込まれます。

 

■出てきたそばから解決される問題たち

 

 まず、例によって、こはぜ屋にはお金がありません。銀行の担当者・大橋さん(馬場徹)も、全然融資してくれません。何しろ、陸王の開発ばかりで足袋の利益も怪しくなってきたのです。もとより「陸王」開発に乗り気じゃない経理のゲンさん(志賀廣太郎)の渋い顔も、ますます渋くなってきました。

 この問題提起から数分後、宮沢社長は新たな商品開発を思いつきました。マラソンシューズ用に開発した軽くて丈夫なソール材「シルクレイ」を、これまで天然ゴムを使用していた地下足袋に転用することにしたのです。

 このアイディアに、こはぜ屋のみんなは大喜び。ゲンさんも「ウチは足袋屋ですよ……やるべきです!」とドアップで賛成し、すぐに作ることに。

 こはぜ屋の新たな地下足袋「足軽大将」は、ゲンさんの進言で値段を高めに設定したにもかかわらず、大ヒットを飛ばします。

 しかし大量発注を受けてウキウキしていると、ハードワークが祟って、縫製部門のベテラン・冨久子さん(正司照枝)が病院送りに。しかし、冨久子さんの愛弟子で最年少の美咲ちゃん(吉谷彩子)が「あたし!やってみます!」と代役を買って出ます。

 すると今度は、飯山さんが暴漢に襲われて骨折&全身打撲で病院送りに。これには、飯山さんのアシスタントを務めていた宮沢社長の息子・大地(山崎賢人)が「オレがやるよ、やるしかないだろ!」と熱烈に立候補。直後に製造機がエラーを吐いて製造不能になりますが、今度は飯山さんが「俺の魂」だから「他人に見せるわけにはいかねえ」と語っていた設計図を大地に御開帳し、事なきを得ます。

 なんとか足軽大将の納品に間に合ったかと思えば、今度は100足くらいのソールに問題が。あわてて作り直そうとするものの、唯一製造機を動かせる大地は就職の面接に……。大ピンチですが、その大地が面接を放り出して駆けつけ、すべての納品を間に合わせました。

 もう、まるで振り子です。ピンチ→解決、ピンチ→解決、ピンチ→解決というシークエンスが、ほとんど間を置かずに次々と現れ、登場人物の顔面のアップと「~~!」という圧のかかったセリフによってクリアになっていく。これまで『陸王』というドラマは比較的、複数の問題をクロスカッティングを用いて並列で解決していくことが多かったような気がしますが、今回はフリからオチまでの時間がとにかく短かった。快感(=感動)が、矢継ぎ早で押し寄せてくる。何かに似てるなーと思ったんですが、アレですね。2010年くらいのナイツの“手数漫才”ですね。

 

■最大の見せ場は銀行員・大橋さんの“デレ化”

 

 これまで厳しいことばかり言って、こはぜ屋経営陣を困らせてきた銀行員・大橋さんの“デレ化”が今回最大の見せ場となりました。

 こはぜ屋の仕事ぶりを初めて目の当たりにし、100年続くプライドに感化された大橋さんは、「陸王」のアッパー素材を開発する上で、めぼしい業者を探してきてくれました。

 相変わらず融資に厳しい条件を出すものの、今回は「私の力不足です。本当に、申し訳ありませんでした」と頭を下げて社長たちを驚かせると、いかにもクールに「タチバナラッセル」という新興織物業者のサンプルを手渡し、こう言うのです。

「新しい陸王、完成したら、私、買います」

 かあー! なんたるツンデレ! 推せる!!

 

■かくして、最強「陸王」は完成しました

 

 昨今、ますます人相の悪くなってきたアトランティスの佐山(小藪千豊)の謀略によって、一時は「陸王」から「RII」に心が動きかけていた茂木くんでしたが、大一番となるニューイヤー駅伝では、やっぱり「陸王」を履いてくれることに。こはぜ屋一同、大喜びで、今回もリトグリちゃんの「Jupiter」が鳴り響き、大団円です。

 まあ、ホントにゴージャスでボリューミーで、見どころ満載の回だったと思います。30分拡大でも、山場続きで全然飽きさせない。今回のように徹底的に手数を繰り出す作戦は、明らかに拡大版だから選択された手法だと思いますし、実に成功していたと思います。

 1時間枠ならこうすればいい、拡大枠ならこの方がいい──ドラマを作る上での「楽しませ方」「数字の取り方」を熟知している感がビシビシ感じられて、大変気持ちのいい鑑賞体験でした。なんかいろいろ書いてきましたけど、『陸王』は、やっぱり今期ドラマの中では最強だと思います。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

『シン・ゴジラ』の裏で14.5%の『陸王』リトグリの「Jupiter」は、うるさい? 効果的?

 エーブリデーアイリッスントゥーマイハー♪

 というわけで、毎度クライマックスに大音量で流れ出すLittle Glee Monsterの「Jupiter」にもだいぶ慣れてきた日曜劇場『陸王』(TBS系)は第4話。視聴率は14.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と安定水準です。しかも、裏ではテレビ朝日が『シン・ゴジラ』のテレビ初放送をぶつけてきてましたので、なおさら『陸王』の強さが際立ちます。

 というわけで、今回も振り返りです。

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 マラソン足袋のソールとして、前代未聞の最適素材「シルクール」の開発に成功した「こはぜ屋」の宮沢社長(役所広司)は、超ゴキゲン。開発チームを飲み会に集め「陸王を世界一のシューズにする」と夢を語ります。当然、みんなも大賛成。まずは、シューズを作るきっかけを与えてくれたダイワ食品の実業団ランナー・茂木くん(竹内涼真)に陸王を履いてもらうことを目標に掲げます。

 今回はそんな茂木くんが、陸王に足を入れてくれるまでのお話。

「半腱様筋の損傷」という、ランナーとしては致命的な故障を抱えている茂木くん。一流メーカー「アトランティス」とのサポート契約も打ち切られ、意気消沈しています。

 なんとか故障を克服し、チームドクターから“完治”のお墨付きをもらった茂木くんでしたが、アトランティスに「治ったらサポート再開」の約束を反故にされてしまいます。いわく「半腱様筋の損傷からトップランナーに復帰した例は、過去に0人」だからだそうです。所属する実業団から「若いうちに陸上部を辞めとけ」と迫られていたこともあって、心を痛めるばかりです。

 ある意味で、そんな茂木くん以上に心を痛めていたのが、アトランティスの社員シューフィッター・村野さん(市川右團次)でした。選手のことを第一に考え、長距離界では“カリスマ”とも呼ばれるほど選手たちの信頼も厚い村野さんは、「必ずアトランティスで茂木のシューズを作ってやる」と約束していたのです。しかし、しょせんは大企業の一社員ですので、上司・小原(ピエール瀧)の「サポート打ち切り」の指示に逆らうことはできません。そこで、信念の男・村野さんは、アトランティスを辞めることにしました。

 無職となったカリスマは、「大企業はもういい」と言います。そして、夢を語る宮沢社長にほだされ、こはぜ屋とアドバイザリー契約を結ぶことに。こはぜ屋にとっては、これ以上ない強力な味方となります。

 

■仕事は「人」であるという作品哲学の象徴

 

 宮沢社長は、何度もダイワ食品陸上部を訪れ、監督・城戸(音尾琢真)や茂木くん本人に「陸王を履いてくれ」「足型を採らせてくれ」とお願いしてきましたが、なしのつぶてでした。しかし、ここで村野さんの“村野力”が爆発。茂木くんの足型なんてとっくに持っていますし、宮沢社長と一緒に陸王の茂木モデルを抱えてダイワに乗りこめば、監督も顔パスでグラウンドに通すしかありません。茂木くんも茂木くんで、村野さんが持ってきたシューズなら履いてみたくなっちゃう。

 この作品で再三語られてきたのは、仕事とは「人」であるという哲学です。

 シューズメーカーの経営者として、宮沢社長は何も持っていません。資金もないし、ノウハウもないし、技術も実績も経験ない。あるのは夢と情熱だけ。その夢と情熱が、まずは縫製のエキスパートである足袋屋のおばちゃんたちを動かし、シルクレイの特許を持っていた飯山(寺尾聰)を動かし、カリスマシューフィッターも動かす。銀行員・坂本(風間俊介)は、次から次へとキーパーソンを呼び寄せる。みんながみんな、損得抜きで宮沢社長の力になろうと駆けずり回る。

 プロジェクトを前に進めるのは、いつだって宮沢社長以外の人物が持っている「ノウハウと技術と実績と経験」です。宮沢社長が、ものすごい顔面で夢を語ると、みんなが「ノウハウと技術と実績と経験」によって物事を解決していく。それは「人」を見つめ、「人」を大切に思う宮沢社長の性根のよさによるものでもありますが、そんなに都合よくみんながみんな足りないパーツを持ち寄って奇跡を起こすことなんてあるんかいな、と斜めに見てしまいそうになる。

 毎回、後半になって「そんな都合のいいことあるんかいなー」と思い始めたタイミングで、リトグリちゃんが大音量で歌い上げるわけですよ。

 エーブリデーアイリッスントゥーマイハー、ひとりじゃぁなぁーいー♪

 ここまでバッチリと歌詞を聞かせる劇伴には、当初から賛否があったようです。

 深いぃー胸の奥でぇえー、つながってぇるぅー♪

 補強してるな、と感じるんです。歌詞を聞かせることで、物語の哲学を補強してる。歌声によって、私たちの雑念(?)を、力ずくでねじ伏せようとするのが、このリトグリちゃんの歌に任された役割なのでしょう。だからこそ、物語にすんなり感動できている視聴者に対しては、うるさく感じられてしまうのかもしれません。

 

■“怖い人たち”が怖すぎた件について

 

 このドラマで、原作以上に怖い人として登場しているのが、アトランティスの小原と、ダイワの城戸監督です。特に城戸監督のエキセントリックともいえる激情芝居は、ちょっと過剰なんじゃないのかと思っていました。

 今回、この城戸監督の怖さが、村野がこはぜ屋を伴って現れたときに、非常に効果的に作用したと思いました。あんなにめっちゃ怖い城戸監督がすんなり道を開けてしまう、敬意を表してしまうほど、村野という人間の陸上界における実績が偉大なのだ、という意図が、より明確に伝わってきました。

 もうひとつ、陸王を履いて記録会に参加し、最後は脚がつって倒れてしまったものの快走を見せた茂木くんに対し「サポートを取り戻せ」と部下に命じた小原。常に会社の利益優先、効率優先な“悪役”として登場していましたが、選手の走りを見る能力は本物であることが示されました。これも、小原を悪役一辺倒に描いてきただけにギャップが利いて人物像が一気に広がったように思います。

 このへんは原作には描きこまれていない演出の妙で、上手いよなぁと素直に感じ入るところです。

 それと、第2話で城戸監督が茂木くんに「お前は終わりだ! ──ミッドフット着地を身につけなければ」と倒置で言ったり、今回、茂木くんが記録会の後、宮沢社長に「この靴のせいです。──走っていて、こんなに気持ちのいいシューズは初めてです」と倒置で言ったりするところは、原作には描きこまれていない脚本の妙で、上手いよなぁと素直に感じ入るところでした。

 あと、宮沢社長が息子・大地(山崎賢人)に「茂木選手のファンなんだべ?」と尋ねたシーンがありましたが、私は埼玉北部の出身なので、この「だべ?」には素直に感じ入りました。

 まだ4話で、ずいぶん原作を消化しているので後半のダレが心配ではありますが、次回以降も楽しみたいと思います。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

ガバガバSFを“圧”で飲み込ませるTBS日曜劇場『陸王』15.0%で過去最高視聴率を記録!

 5日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)第3話の視聴率は、15.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最高でした。内容的にも、まあ、文句のつけようがないです。説得力のあるセリフを説得力のある俳優が圧をかけてしゃべる、序盤からジャンジャンBGMを鳴らして盛り上げる、挫折と苦悩と反発をイヤというほど織り込んで、成功のカタルシスに導く。まさに盤石。振り返るまでもありませんが、そうもいかないので今回も振り返りましょう。

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 今回は、こはぜ屋のランニングシューズに必要不可欠な素材「シルクレイ」の生成についてのお話です。

 そもそも、こはぜ屋のランニングシューズ「陸王」には、欠点がありました。地下足袋の技術を応用した天然ゴムのソールでは耐久性に乏しく、シューズとして売り出すのは難しい。そこで、ゴムに代わる素材を探していた宮沢社長(役所広司)の前に、天啓のように現れたのが、飯山という男(寺尾聰)が開発したまま死蔵特許となっていたシルクレイでした。

 なんだかんだ駄々をこねる飯山を開発チームに引き入れることに成功した宮沢でしたが、シルクレイはそのままソールに使える素材ではありませんでした。軽くて丈夫なのはいいけど、硬すぎたのです。飯山はこれまで、シルクレイを硬くて丈夫な素材にすることしか考えていませんでしたが、シューズのソールに使用するためには、硬さをコントロールしなければならなくなりました。

 今回は、飯山と宮沢の息子・大地(山崎賢人)が、ソールに最適な硬度のシルクレイを生み出すまでが描かれました。

 

■架空の素材をドラマの中心に置くリスク

 

 ちなみに、この「シルクレイ」という素材は、現実には存在しない架空の素材です。繭を煮詰めたものを液体にして濾過し、それに圧縮冷却をかけて作るのだそうで、軽くて丈夫で、硬度がコントロールできればソールに“最適”である“奇跡の素材”。あの『下町ロケット』(同)でも、バルブシステムの開発に四苦八苦していましたが、シルクレイはドラマに登場する小道具として、バルブシステムよりずっと自由度が高いものです。

 まったく架空なので、シルクレイについてのルールは、すべてドラマ側が決めることになります。その設定に根拠がないんです。実録風企業ドラマの中に、ここだけSFが混入しているという構図です。

 SFであるからして、『陸王』は丁寧にその条件設定を積み重ねていきます。

 まずは、シルクレイが目指す硬度の基準を決めます。シューズのソールの資料を取り寄せ、「平均的な硬度は55~60の間」としました。この数値も架空なので、単位は特にありません。「硬度55~60」。そして、最初の実験では冷却温度-28℃で「73.2」という硬度が出ました。つまり、失敗です。

 次に具体的な数字が出てきたのは「73.0」。その次は「72.1」。その後、「飯山と大地は55~60に近づけるどころか、コントロールすることすらできずにいた」とナレーションで語られます。

 ここまで、冷却温度を変更して実験を繰り返していますが、飯山がある気付きを得て、冷却温度ではなく煮繭(しゃけん)温度、つまり繭を煮る温度を変えてみてはどうかと思いつき、85℃で煮てみると、硬度は「45.2」。柔らかすぎますが、冷却温度を変更するより、ずっと大きな変化が見られます。それならばと87℃で煮てみて、失敗。そして、95℃で煮てみることに。これで失敗すれば、また初めから別のアプローチを考えないといけませんが、見事「55.1」という硬度を達成することができました。ここまで、1カ月くらいかかったそうです。

 この過程だけ抽出してみると、SFとしては全然説得力がありません。ガバガバです。「95℃で55.1」という数値だって、ドラマが勝手に言ってるだけで、こっちは飲み込むしかない。そもそも「55~60」という基準値だって、知ったこっちゃないし、なんの根拠もない。恐るべき、いい加減さです。

 

■でも、泣けちゃうの

 

 でも、泣けちゃうんです。「55.1」が出た瞬間の山崎賢人と寺尾聰の芝居。喜ぶ、みんなの顔。ロジックを超えて、人間の顔面に感動してしまう。

 情報の出し入れの順番が上手いんです。

 実験が始まったとき、こはぜ屋は銀行に融資を断られて、金がない金がないと騒いでいます。

 また、宮沢の「ダイワ食品の茂木(竹内涼真)に陸王を履いてもらう」という願いも、叶えられずにいます。

 就活中の息子・大地も、実験にかまけていたせいで大切な面接をすっ飛ばしてしまいます。

 そうした紆余曲折を実験の間に手際よく挟み込み、すべてを「実験の成功」までの間に解決してしまう。そうしてボルテージを高めていくことで、このアンロジカルなSF実験について、「ホントに成功するのかよ?」と思っている視聴者の気持ちを「ここで成功してほしい!」という期待感に変えてしまう。

「成功してほしい」と思わせてしまえば、もうそれはドラマの勝ちですからね。「55.1」の数字を、胸のすく思いで眺めることができるわけです。

 前回のレビュー(http://www.cyzo.com/2017/10/post_141358.html)で、こうした決まり事に満ちた『陸王』を「物足りない」と書きましたし、そういう部分のおぼろげな不満は今回もあるにはあるんですが、ここまで圧をかけられると「乗っかっちゃったほうが楽しいな」と思えたことも事実なので、今後はどんなご都合主義が登場しても「よっ! こはぜ屋!」「待ってました!」という感じで追いかけていければと思います。なんか中途半端なアレですみません。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

ガバガバSFを“圧”で飲み込ませるTBS日曜劇場『陸王』15.0%で過去最高視聴率を記録!

 5日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)第3話の視聴率は、15.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最高でした。内容的にも、まあ、文句のつけようがないです。説得力のあるセリフを説得力のある俳優が圧をかけてしゃべる、序盤からジャンジャンBGMを鳴らして盛り上げる、挫折と苦悩と反発をイヤというほど織り込んで、成功のカタルシスに導く。まさに盤石。振り返るまでもありませんが、そうもいかないので今回も振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 今回は、こはぜ屋のランニングシューズに必要不可欠な素材「シルクレイ」の生成についてのお話です。

 そもそも、こはぜ屋のランニングシューズ「陸王」には、欠点がありました。地下足袋の技術を応用した天然ゴムのソールでは耐久性に乏しく、シューズとして売り出すのは難しい。そこで、ゴムに代わる素材を探していた宮沢社長(役所広司)の前に、天啓のように現れたのが、飯山という男(寺尾聰)が開発したまま死蔵特許となっていたシルクレイでした。

 なんだかんだ駄々をこねる飯山を開発チームに引き入れることに成功した宮沢でしたが、シルクレイはそのままソールに使える素材ではありませんでした。軽くて丈夫なのはいいけど、硬すぎたのです。飯山はこれまで、シルクレイを硬くて丈夫な素材にすることしか考えていませんでしたが、シューズのソールに使用するためには、硬さをコントロールしなければならなくなりました。

 今回は、飯山と宮沢の息子・大地(山崎賢人)が、ソールに最適な硬度のシルクレイを生み出すまでが描かれました。

 

■架空の素材をドラマの中心に置くリスク

 

 ちなみに、この「シルクレイ」という素材は、現実には存在しない架空の素材です。繭を煮詰めたものを液体にして濾過し、それに圧縮冷却をかけて作るのだそうで、軽くて丈夫で、硬度がコントロールできればソールに“最適”である“奇跡の素材”。あの『下町ロケット』(同)でも、バルブシステムの開発に四苦八苦していましたが、シルクレイはドラマに登場する小道具として、バルブシステムよりずっと自由度が高いものです。

 まったく架空なので、シルクレイについてのルールは、すべてドラマ側が決めることになります。その設定に根拠がないんです。実録風企業ドラマの中に、ここだけSFが混入しているという構図です。

 SFであるからして、『陸王』は丁寧にその条件設定を積み重ねていきます。

 まずは、シルクレイが目指す硬度の基準を決めます。シューズのソールの資料を取り寄せ、「平均的な硬度は55~60の間」としました。この数値も架空なので、単位は特にありません。「硬度55~60」。そして、最初の実験では冷却温度-28℃で「73.2」という硬度が出ました。つまり、失敗です。

 次に具体的な数字が出てきたのは「73.0」。その次は「72.1」。その後、「飯山と大地は55~60に近づけるどころか、コントロールすることすらできずにいた」とナレーションで語られます。

 ここまで、冷却温度を変更して実験を繰り返していますが、飯山がある気付きを得て、冷却温度ではなく煮繭(しゃけん)温度、つまり繭を煮る温度を変えてみてはどうかと思いつき、85℃で煮てみると、硬度は「45.2」。柔らかすぎますが、冷却温度を変更するより、ずっと大きな変化が見られます。それならばと87℃で煮てみて、失敗。そして、95℃で煮てみることに。これで失敗すれば、また初めから別のアプローチを考えないといけませんが、見事「55.1」という硬度を達成することができました。ここまで、1カ月くらいかかったそうです。

 この過程だけ抽出してみると、SFとしては全然説得力がありません。ガバガバです。「95℃で55.1」という数値だって、ドラマが勝手に言ってるだけで、こっちは飲み込むしかない。そもそも「55~60」という基準値だって、知ったこっちゃないし、なんの根拠もない。恐るべき、いい加減さです。

 

■でも、泣けちゃうの

 

 でも、泣けちゃうんです。「55.1」が出た瞬間の山崎賢人と寺尾聰の芝居。喜ぶ、みんなの顔。ロジックを超えて、人間の顔面に感動してしまう。

 情報の出し入れの順番が上手いんです。

 実験が始まったとき、こはぜ屋は銀行に融資を断られて、金がない金がないと騒いでいます。

 また、宮沢の「ダイワ食品の茂木(竹内涼真)に陸王を履いてもらう」という願いも、叶えられずにいます。

 就活中の息子・大地も、実験にかまけていたせいで大切な面接をすっ飛ばしてしまいます。

 そうした紆余曲折を実験の間に手際よく挟み込み、すべてを「実験の成功」までの間に解決してしまう。そうしてボルテージを高めていくことで、このアンロジカルなSF実験について、「ホントに成功するのかよ?」と思っている視聴者の気持ちを「ここで成功してほしい!」という期待感に変えてしまう。

「成功してほしい」と思わせてしまえば、もうそれはドラマの勝ちですからね。「55.1」の数字を、胸のすく思いで眺めることができるわけです。

 前回のレビュー(http://www.cyzo.com/2017/10/post_141358.html)で、こうした決まり事に満ちた『陸王』を「物足りない」と書きましたし、そういう部分のおぼろげな不満は今回もあるにはあるんですが、ここまで圧をかけられると「乗っかっちゃったほうが楽しいな」と思えたことも事実なので、今後はどんなご都合主義が登場しても「よっ! こはぜ屋!」「待ってました!」という感じで追いかけていければと思います。なんか中途半端なアレですみません。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

14.0%堅調のTBS日曜劇場『陸王』は、確信と正解に満たされすぎて「ちょっと物足りない」

 今やすっかりドラマ界の“テッパン”となった池井戸潤原作・福澤克雄演出の日曜劇場『陸王』(TBS系)。第2話も視聴率は14.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、実に堅調。しかも、裏ではフジテレビが気合いを入れまくってカメラ120台を導入したプロ野球・日本シリーズが放送されてましたので、その強さたるや。たるや。

 というわけで、今回も振り返りです。

前回のレビューはこちらから

 埼玉・行田市で100年続く足袋製造業「こはぜ屋」を営む宮沢(役所広司)は、銀行から融資と引き換えに提案されたリストラを拒否し、工場はまさに風前の灯。なんとしても、新規事業であるマラソンシューズ「陸王」の開発を成功させなければなりません。

 こはぜ屋は、足袋作りのノウハウを応用することで、履きやすくて軽いシューズの試作品を完成させるものの、どうしても今まで使っていた地下足袋用の天然ゴムでは、ソールの耐久性に問題が。そんな折、ひょんなことから手にした「シルクレイ」という繭に特殊加工を施した素材が、シューズのソールに最適であることがわかります。ランニングの専門家である有村(光石研)の直感でも、大学で解析した結果でも「これ以上の素材はない」と。宮沢は、「陸王」の完成には「シルクレイ」が必須であることを確信しますが、「シルクレイ」の特許を持っている飯山社長(寺尾聰)は、会社を潰して行方不明。今回は、その死蔵特許となっている「シルクレイ」をソールに使用するために、まずは飯山社長を探し出すところから始まります。

 もうひとつ、宮沢には願いがあります。それは、故障がちの実業団ランナー・茂木(竹内涼真)に、こはぜ屋のシューズを履いてもらうことです。宮沢は、茂木の復活には、ミッドフット着地と呼ばれる走法をマスターすることが必要だと確信しており、また、こはぜ屋のシューズが、この走法をマスターするための最適な矯正靴であることも確信していたので、茂木にシューズを届けていました。茂木は現在、大手メーカー・アトランティスの専属スポンサードを受けているので、足袋屋のペラいシューズなんかに興味はありませんが、その一方で1日でも早く新フォームを定着させようと、焦りが募るばかりです。

 そういうわけで、今回は「シルクレイを使うために飯山社長を探し出して説得する」「茂木に、こはぜ屋のシューズを履いてもらう」という宮沢の確信を実現させるまでが描かれました。

 で、結局、飯山社長はなんだかんだあって、シルクレイの使用を認めます。プロジェクトチームにも参加し、ソール開発に積極的に関わっていくことになりました。

 茂木のほうはといえば、ケガが治らないことからアトランティスのスポンサー契約を切られ、最初は薄汚れたミズノなどを履いていましたが、監督から「ミッドフット着地を身に着けなければ、お前は終わり」と怖い顔で迫られると、ロッカーに放置したままになっていた「こはぜ屋」を勝手に履いて走り出しました。

 その2つのエピソードを物語るシーンが、並列で現れながら終盤のカタルシスに向かって丁寧に積み上げられます。

 俳優部は、老若男女、揃いも揃って充実ぶりに目を瞠るしかありません。役所、寺尾、竹内はもちろん、ピエール瀧、音尾琢真、小藪千豊、市川右團次、上白石萌音……それぞれが持ち味を発揮しながら、作品世界を彩ります。無名塾、西部警察、ライダー、テクノエレクトロ、TEAM NACS、吉本新喜劇、スーパー歌舞伎、東宝シンデレラといった畑違いの面々が、ひとつの画面の中で融和していくダイナミズムは大バジェットが用意された日曜劇場ならではの魅力ですし、飛び道具として投入されたエッセイスト・阿川佐和子の天真爛漫なおばちゃんぶりも、おそらくは制作側の計算通り、確信通りといったところでしょう。

■かくして『陸王』は、確信に満ちている

 

 確信を実現する物語、その舞台裏もまた、確信に満ちていたことは間違いありません。やることなすこと、全部正解。どうあれ結果はフルマークの判定勝ちであります。危なげ、一切なし。

 もちろん、そうした作品を貶めるつもりは、まったくありません。この福澤組のクオリティは、長年の経験と、今なお精力的であり続ける情熱の賜物です。原作選びからキャスティング、演出、編集にいたるまで、当代一のプロフェッショナルな仕事が完遂されていると思います。じゅうぶんに面白いし、感動的です。

 だけどー。

 それがなんだか、ちょっと今回、物足りなく感じたことは確かなんです。だいたい池井戸さんの原作からして、同じく実在の企業をモチーフにした『空飛ぶタイヤ』のころの逼迫感や、その作品が“存在しているだけ”でヒヤヒヤしちゃうような切実感はありませんし、映像化された世界にも波乱や驚きを予感させるような綻びは見られません。波乱万丈な物語のはずが、原作の1段落目からドラマの最終回まで、完璧に塗り固められた舗装道路の上を走っているように見える。みんな挫折ばかりしているのに、作品に挫折の匂いがひとつもない。ドラマのどこを切っても、赤い血が流れそうな気がしない。

 実際には、そんなことないんでしょう。作り手の方々に対して、すごく失礼な物言いであることは自覚しています。

 それでも、この『陸王』という作品は、視聴者が自らの思いを乗せて羽ばたく翼ではなく、突き崩していくべき壁のように感じるのです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

14.0%堅調のTBS日曜劇場『陸王』は、確信と正解に満たされすぎて「ちょっと物足りない」

 今やすっかりドラマ界の“テッパン”となった池井戸潤原作・福澤克雄演出の日曜劇場『陸王』(TBS系)。第2話も視聴率は14.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、実に堅調。しかも、裏ではフジテレビが気合いを入れまくってカメラ120台を導入したプロ野球・日本シリーズが放送されてましたので、その強さたるや。たるや。

 というわけで、今回も振り返りです。

前回のレビューはこちらから

 埼玉・行田市で100年続く足袋製造業「こはぜ屋」を営む宮沢(役所広司)は、銀行から融資と引き換えに提案されたリストラを拒否し、工場はまさに風前の灯。なんとしても、新規事業であるマラソンシューズ「陸王」の開発を成功させなければなりません。

 こはぜ屋は、足袋作りのノウハウを応用することで、履きやすくて軽いシューズの試作品を完成させるものの、どうしても今まで使っていた地下足袋用の天然ゴムでは、ソールの耐久性に問題が。そんな折、ひょんなことから手にした「シルクレイ」という繭に特殊加工を施した素材が、シューズのソールに最適であることがわかります。ランニングの専門家である有村(光石研)の直感でも、大学で解析した結果でも「これ以上の素材はない」と。宮沢は、「陸王」の完成には「シルクレイ」が必須であることを確信しますが、「シルクレイ」の特許を持っている飯山社長(寺尾聰)は、会社を潰して行方不明。今回は、その死蔵特許となっている「シルクレイ」をソールに使用するために、まずは飯山社長を探し出すところから始まります。

 もうひとつ、宮沢には願いがあります。それは、故障がちの実業団ランナー・茂木(竹内涼真)に、こはぜ屋のシューズを履いてもらうことです。宮沢は、茂木の復活には、ミッドフット着地と呼ばれる走法をマスターすることが必要だと確信しており、また、こはぜ屋のシューズが、この走法をマスターするための最適な矯正靴であることも確信していたので、茂木にシューズを届けていました。茂木は現在、大手メーカー・アトランティスの専属スポンサードを受けているので、足袋屋のペラいシューズなんかに興味はありませんが、その一方で1日でも早く新フォームを定着させようと、焦りが募るばかりです。

 そういうわけで、今回は「シルクレイを使うために飯山社長を探し出して説得する」「茂木に、こはぜ屋のシューズを履いてもらう」という宮沢の確信を実現させるまでが描かれました。

 で、結局、飯山社長はなんだかんだあって、シルクレイの使用を認めます。プロジェクトチームにも参加し、ソール開発に積極的に関わっていくことになりました。

 茂木のほうはといえば、ケガが治らないことからアトランティスのスポンサー契約を切られ、最初は薄汚れたミズノなどを履いていましたが、監督から「ミッドフット着地を身に着けなければ、お前は終わり」と怖い顔で迫られると、ロッカーに放置したままになっていた「こはぜ屋」を勝手に履いて走り出しました。

 その2つのエピソードを物語るシーンが、並列で現れながら終盤のカタルシスに向かって丁寧に積み上げられます。

 俳優部は、老若男女、揃いも揃って充実ぶりに目を瞠るしかありません。役所、寺尾、竹内はもちろん、ピエール瀧、音尾琢真、小藪千豊、市川右團次、上白石萌音……それぞれが持ち味を発揮しながら、作品世界を彩ります。無名塾、西部警察、ライダー、テクノエレクトロ、TEAM NACS、吉本新喜劇、スーパー歌舞伎、東宝シンデレラといった畑違いの面々が、ひとつの画面の中で融和していくダイナミズムは大バジェットが用意された日曜劇場ならではの魅力ですし、飛び道具として投入されたエッセイスト・阿川佐和子の天真爛漫なおばちゃんぶりも、おそらくは制作側の計算通り、確信通りといったところでしょう。

■かくして『陸王』は、確信に満ちている

 

 確信を実現する物語、その舞台裏もまた、確信に満ちていたことは間違いありません。やることなすこと、全部正解。どうあれ結果はフルマークの判定勝ちであります。危なげ、一切なし。

 もちろん、そうした作品を貶めるつもりは、まったくありません。この福澤組のクオリティは、長年の経験と、今なお精力的であり続ける情熱の賜物です。原作選びからキャスティング、演出、編集にいたるまで、当代一のプロフェッショナルな仕事が完遂されていると思います。じゅうぶんに面白いし、感動的です。

 だけどー。

 それがなんだか、ちょっと今回、物足りなく感じたことは確かなんです。だいたい池井戸さんの原作からして、同じく実在の企業をモチーフにした『空飛ぶタイヤ』のころの逼迫感や、その作品が“存在しているだけ”でヒヤヒヤしちゃうような切実感はありませんし、映像化された世界にも波乱や驚きを予感させるような綻びは見られません。波乱万丈な物語のはずが、原作の1段落目からドラマの最終回まで、完璧に塗り固められた舗装道路の上を走っているように見える。みんな挫折ばかりしているのに、作品に挫折の匂いがひとつもない。ドラマのどこを切っても、赤い血が流れそうな気がしない。

 実際には、そんなことないんでしょう。作り手の方々に対して、すごく失礼な物言いであることは自覚しています。

 それでも、この『陸王』という作品は、視聴者が自らの思いを乗せて羽ばたく翼ではなく、突き崩していくべき壁のように感じるのです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

V6・岡田准一、暴走ファンに苦笑い! 映画舞台挨拶の“事件”で会場ピリリ

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マナーの良さで知られるV6ファンに新展開

 現在放送中のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で主演を務めるなど、俳優として順調な活動を続けているV6・岡田准一。10月4日には出演映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』も公開されたが、公開当日の舞台挨拶では、会場のファンが凍りついた、とある“事件”が発生したという。

 役所広司と岡田が初共演したことでも話題の映画『蜩ノ記』。直木賞を受賞した葉室麟のベストセラー小説をもとにした時代劇で、黒澤明監督に師事した小泉堯史が監督を務めた作品だ。この日、東京・TOHOシネマズ日劇では午前9時45分の回の上映終了後と、午後1時40分の回の上映終了前に舞台挨拶が行われ、岡田をはじめ主演の役所、原田美枝子、堀北真希が登壇したが、2部の舞台挨拶中に事件は起こったという。

稲垣吾郎、「早く死んでほしいくらいにひどい役」を怪演! 共演者から絶賛の声

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普段謙虚な人こそ本気出すと怖いよ~

 「斬って、斬って、斬りまくれ!」

 罪のない庶民を虫ケラのように扱い、残虐非道な行いを繰り返す暴君を暗殺するため、13人の刺客たちが命を賭けた戦いに挑む――。1963年に公開された同名映画を、三池崇史監督によりリメイクした『十三人の刺客』(公開中)。世代を超えて集結した豪華キャスト陣らの迫力ある演技は、ベネチア国際映画祭において7分間ものスタンディングオベーションで讃えられたほどだ。