
『浪漫的恋愛』/新潮文庫
■今回の官能小説
『浪漫的恋愛』(小池真理子、新潮文庫)
携帯電話とインターネットの普及により、ひと昔前とは比べものにならないほど、不倫人口が増えているという。出会い系サイトを駆使して、確実に夫が不在中の時間帯に会うことのできる相手を見つけることもできるし、SNSで学生時代の恋人の名を入力すれば、簡単に再会でき、消化不良に終わってしまった昔の恋をもう一度始めることだってできる。固定電話でこそこそと連絡を取り合っていた時代は、今は昔。今では夫と同じリビングにいても、携帯電話で女友達にメールを出すフリして、愛の言葉をささやける時代になったのだ。
本来ならば、ワケありの大人同士の恋愛だったはずの「不倫」という呼称が、今や「婚外恋愛」なんてポップに呼ばれることもある。不倫がまるで、若者たちの気軽な恋愛のようにカジュアル化して来ている。その裏には、一歩間違えれば訴訟問題、相手の人生も破綻させてしまうほどの危険性が潜んでいるにもかかわらず。
今回紹介する『浪漫的恋愛』(新潮文庫)は、お気軽なばかりの「婚外恋愛」という呼び方はふさわしくない、大人同士の「不倫」を題材にした小説である。主人公は、出版社の編集部に勤める千津、46歳。不倫相手は、建築会社を営む柊介は49歳。この2人の恋愛を俯瞰していると、ぼんやりとしていた“大人の恋愛”が、次第にくっきりと形成されてゆく。





