幸せにはなりえない“不倫”という恋愛に『浪漫的恋愛』が見出した微かな光

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『浪漫的恋愛』/新潮文庫

■今回の官能小説
『浪漫的恋愛』(小池真理子、新潮文庫)

 携帯電話とインターネットの普及により、ひと昔前とは比べものにならないほど、不倫人口が増えているという。出会い系サイトを駆使して、確実に夫が不在中の時間帯に会うことのできる相手を見つけることもできるし、SNSで学生時代の恋人の名を入力すれば、簡単に再会でき、消化不良に終わってしまった昔の恋をもう一度始めることだってできる。固定電話でこそこそと連絡を取り合っていた時代は、今は昔。今では夫と同じリビングにいても、携帯電話で女友達にメールを出すフリして、愛の言葉をささやける時代になったのだ。

 本来ならば、ワケありの大人同士の恋愛だったはずの「不倫」という呼称が、今や「婚外恋愛」なんてポップに呼ばれることもある。不倫がまるで、若者たちの気軽な恋愛のようにカジュアル化して来ている。その裏には、一歩間違えれば訴訟問題、相手の人生も破綻させてしまうほどの危険性が潜んでいるにもかかわらず。

 今回紹介する『浪漫的恋愛』(新潮文庫)は、お気軽なばかりの「婚外恋愛」という呼び方はふさわしくない、大人同士の「不倫」を題材にした小説である。主人公は、出版社の編集部に勤める千津、46歳。不倫相手は、建築会社を営む柊介は49歳。この2人の恋愛を俯瞰していると、ぼんやりとしていた“大人の恋愛”が、次第にくっきりと形成されてゆく。

「結婚すれば、出産すれば……」リセット願望に現実を突きつける『愛されすぎた女』

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『愛されすぎた女』/徳間文庫

■今回の官能小説
『愛されすぎた女』(大石圭、徳間文庫)

 オンナにとって一番の過渡期は、30歳だと思う。“若いオンナ”という値札をぶらさげているだけで、周囲が高値を付けてくれた20代は終わり、自分そのものを値踏みされる30代に突入する。女性誌などで使い古された“自分磨き”なんて言葉を鼻で笑い、若さゆえに恵まれた表層部分にあぐらをかいていると取り返しのつかないことになってしまう……中身がからっぽの30オンナなんて、誰も相手にしてくれなくなるのだから。たとえ、どんなに外見が美しくても。

 将来に展望のない三十路独身女が最終的に狙うのは、“結婚”。彼女たちが求めるのは、自らの力で築けなかった空白部分を埋めてくれるような、地位も名声も持ち合わせ、なおかつルックスも合格点の、すべてを備えた王子様。

 冷静に考えれば、そんな完璧な男性なんて、とうに自分に見合った女性を選んでいると見当がつく。けれど崖っぷちに立たされた三十路婚活女は、年甲斐もなく自分主導な夢を思い描いてしまう――。

いつまでも若く、キレイで従順……男性が描く「イイ女」の限界

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『不倫純愛』(新堂冬樹、新潮社)

 ちょっと前に車のCMで「私たち、主婦で、ママで、女です」なんてキャッチコピーがあった。「VERY」「STORY」(いずれも光文社)を愛読し、バッチリメークに、デカサングラスかけた巻き髪、白のクロップドパンツにハイヒールで、片手にコーチのバッグ、もう片手に子どもをぶら下げているオサレ妻。ひと昔前は「いねーよ!」って思っていたけど、ふと子連れママを見かけると、きちんとオンナしてる奥さまが意外と多い。

いつまでも若く、キレイで従順……男性が描く「イイ女」の限界

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『不倫純愛』(新堂冬樹、新潮社)

 ちょっと前に車のCMで「私たち、主婦で、ママで、女です」なんてキャッチコピーがあった。「VERY」「STORY」(いずれも光文社)を愛読し、バッチリメークに、デカサングラスかけた巻き髪、白のクロップドパンツにハイヒールで、片手にコーチのバッグ、もう片手に子どもをぶら下げているオサレ妻。ひと昔前は「いねーよ!」って思っていたけど、ふと子連れママを見かけると、きちんとオンナしてる奥さまが意外と多い。

ありえないセックスが続く、官能"ファンタジー"小説『蜜色の秘書室』

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『蜜色の秘書室』(幻冬舎)

 官能小説を読む楽しさって何だろう? それはたぶん、一冊の本のなかには「何でもアリ」の世界が広がっているからだと思う。二股三股は当たり前、3Pに人妻、近所のお姉さん......。リアルだったら決して体験できないような相手やシチュエーション、はたまた人には言えない性癖や道徳的にNGな関係も、官能小説の世界だったらアリ。

 ただひとつ、絶対に外せないお約束は、「お互いが気持ち良くなる」こと。気持ちも身体も一方通行じゃダメ。お互いが、同じくらい気持ちよくなることが大前提。そんな、ただ愛欲に没頭できるセックス、リアルで経験している人っていったいどのくらいいるだろう?

「港」系オンナからの脱皮!? セックスの要望にノーと言えるか

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『I LOVE』(講談社)

――オンナ嫌いのイラストレーターが、官能小説からオンナの甘えやエロさ、したたかさを嗅ぎ取り、生々しいオンナの性を読み解いていく。

 最近、セックス=恋人、というセオリーは通用しなくなってきた。まずは試し打ち、コレ男の性(さが)。セックスの相性って、付き合う上でもっとも大事な事柄だと思う。そして、もっとも個性が出るのもセックスだと思う。毎晩のオナニーが日課の友人には淡白な女じゃ一週間も持たないだろうし、晴れて恋人同士になっても、今度はフェチの問題が出てくる。

仕事と女の幸せ……セックスに後押ししてもらう人生の岐路

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『みせてあげる』(祥伝社)

――オンナ嫌いのイラストレーターが、官能小説からオンナの甘えやエロさ、したたかさを嗅ぎ取り、生々しいオンナの性を読み解いていく。

 30歳って、オンナとしての大事な節目だと思う。20代のころのように主人公体質じゃいられない。白馬の王子様なんて存在しないことくらい理解できてくる。だから、守りを固めたくなる。その守りは、女として固めるか、仕事で固めるか。

「子どものために」という枕詞を利用しまくる、『ママなのに』

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『ママなのに』(無双舎)

――オンナ嫌いのイラストレーターが、官能小説からオンナの甘えやエロさ、したたかさを嗅ぎ取り、生々しいオンナの性を読み解いていく。

 「SM」「調教」「時代モノ」などがあるなか、官能小説界の中でもっともハイブランドなカテゴリのひとつが"人妻"。いや、これってもしかしたら官能小説界だけじゃなくて、男性全般にも言えるのかも。ママってモテるらしいし。独身時代はサエない恋愛事情を送っていた友達が、結婚、出産していくうちに、モテ率がぐんぐん上向きになったらしい。結婚して、手に入らない女性になったところでワンステップ。出産して、子どもという守るべきものを持つ女性になって、さらにワンステップ。独身女とはフィールドが違う気がする。