家庭内セックスは惰性なのか? 家族だからこその生々しい性愛を描いた『愛妻日記』

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『愛妻日記』/講談社

■今回の官能小説
『愛妻日記』重松清(講談社)

 どんなに激しく愛しあった恋人も、入籍して結婚をすれば“家族”になる。同じ家へ帰り、同じ食事を食べ、共に眠る生活――そこには、かつて恋人同士として過ごしたロマンチックな時間とは異なる、安住の時間が流れる。

 ではセックスはどうだろう? 家族同士のセックスは、「最上級の愛情表現」だったはずの恋人同士のそれとは質が違うのではないだろうか。家族同士のセックスは、セックスレスが立派な離婚の原因にもなってしまうことも考えると、惰性や義務の行為にもなりえてしまうのだ。「家族同士のセックス」という聞くと、反射的に目を背けたくなる人も多いだろう。真っ先に思い浮かぶのは、実の両親のその姿のはずだから。

『春を売る』から読み解く、男たちが求める“素人”っぽさの正体

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『禁書<色>』/徳間書店

■今回の官能小説
『春を売る』霧原一輝(『禁書<色>』/徳間書店より)

 官能小説でたびたび目にする売春モノ。“春を売る”女性は「美しく清楚な女性」であるのが、官能小説では定番だ。普通女は、「金を出して身体を買ってもらうならば、その金額相応の身体とテクニックを売らなければならない」と思いがちだが、男にとっては「素人の女性が売春をする」という設定がツボのようで、官能小説ではよく描かれるようだ。現実世界でも男が求めるといわれる、この“素人っぽさ”とは、一体どういったものなのだろうか?

 今回ご紹介する『禁書<色>』(徳間書店)は、8人の気鋭作家たちの“色”をテーマにした短編小説集。この中に収録されている短編『春を売る』(霧原一輝)は、8年前に付き合っていた女性との再会から物語が始まる。

都会暮らしの匿名性が快楽を加速させる、“隣人”の欲情ドラマ『となりの果実』

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『となりの果実』/幻冬舎

■今回の官能小説
『となりの果実』(黒沢美貴、幻冬舎)

 都会に住む人たちは、一体どれだけ隣人のことを知っているだろう? うっすらと顔形が判別できればいい方、ほとんどが「隣は何をする人ぞ」ではないだろうか? 薄い壁の向こう側には、想像もつかない他人の人生が繰り広げられている。穏やかな家族生活を営んでいる、夜な夜なAVを眺めて自慰行為に耽っている、あるいは、恋が叶わずに自暴自棄になっているかもしれない。
 
 今回ご紹介する『となりの果実』(幻冬舎)には、都会の喧噪にひっそりと寄り添う隣人たちの姿と、その交差が描かれている。舞台は都会のド真中、麻布十番のマンション。彼らは、その小さな一角で人生ドラマを繰り広げている。

ヤリマンと女友達の不思議な関係性を優しく掬う――短編集『からまる』

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『からまる』/角川書店

■今回の官能小説
『からまる』(千早茜、角川書店)

 人と人は、複雑にからまり合いながら関係している。誰かと強くつながりたい、深く関わりたいと欲望を抱きつつも、そうなれるのはほんの数人。心と心がつながり合うことはとても難しい――だから女は、心よりも先に、てっとり早く身体を開く。そして男はそんな女たちを容易く受け止め、あらゆる人ともつれ合ってゆく。

 今回ご紹介する『からまる』(角川書店)は、同僚や友人などの関係性でつながる男女7人が複雑にからみ合う、7つの短編集である。例えば、2作目に収録されている「ゆらゆらと」は、恋愛と失恋を繰り返すフリーターとその女友達の物語だ。

『透光の樹』が描く老いらくのセックス、無言の愛を“耳で聞く”という快感

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『透光の樹』/文藝春秋

■今回の官能小説
『透光の樹』(高樹のぶ子、文藝春秋)

 ただ欲望に身を預けて互いをむさぼることこそが「セックス」である――若い人はそう信じて疑わないだろう。セックスという行為を、初潮や声変わりなどの肉体的成長の一環としか捉えられないからかもしれない。若い頃のセックスは心がなくても楽しめる。まるで、あらゆる男たちと肌を重ねることこそ女としての勲章でも得られるかのように、若者たちは刹那な快感を求める。

 しかし、歳を重ねれば重ねるほど、そんな一瞬の快感に溺れていた当時の自分に問いかけたくなるはずだ。セックスとは、そんなものではない、と。年齢を重ねることと平行して、セックスに求める思いは次第に変化してくる。では、大人たちのセックスとは何なのか。そして、その先に存在するものは、一体何だろう。

痴漢ごっこに励む男女に「トゥエンティー・ミニッツ」が見出した理想のカップル像

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『10分間の官能小説集』/講談社文庫

■今回の官能小説
『トゥエンティー・ミニッツ』勝目梓(『10分間の官能小説集』/講談社文庫より)

 時々「男と女は、セックスなんてなくたって、愛があれば続くもの……」という男女観を語る人がいる。しかし、それは建前で、やはり男女にとっての “セックス”は重要なポジションを占めているのではないだろうか? 希望する年収や職業もクリアしていて、一緒にいても楽しいし、趣味も合う……けれどセックスがイマイチだと、どうだろう。結婚し、一生このつまらないセックスを強要されることになる――セックスの相性は、女の死活問題かもしれない。

 逆に、どんなダメ男でも肌の相性が良いと、なかなか別れられなかったりする。セックスは、唯一2人の“つながり”が目にはっきりと見える行為。愛する人の一部を受け入れるという愛おしい行為だからこそ、心は満たされなくても身体が満たされれば、これ以上に強く繋がれる絆はないとも言えるだろう。

崩壊する家庭で、兄との近親相姦――『悲恋』が描くタブーに踏み込む女の心理

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『悲恋』/幻冬舎アウトロー文庫

■今回の官能小説
『悲恋』(松崎詩織、幻冬舎アウトロー文庫)

 順風満帆な恋よりも、痛みを伴う恋の方がより燃え上がる。だからこそ今も昔も不倫にハマる男女がいるのだと思う。不倫以外にも、自分をどん底まで貶めるような歪んだ恋愛に身を投じている人も決して少なくはないだろう。

 決して報われることのない恋は、何よりも女を酔わせる美酒――そんなことを感じさせるのが、今回ご紹介する『悲恋』(幻冬舎アウトロー文庫)。6話の短編集である本作は、三十年以上も中学時代に憧れていた女教師への想いを抱えている男の話「さくらの夜」や、売れないバンドマンに尽くす女の日々を描いた「レイチェル」、過去に強姦から助けてくれたヒーローとのつらい再会をつづった「素直になれたら」など、あらゆる歪んだ恋を題材とした物語が収録されている。

ラブホテルという非日常で育った女の“節目”を描いた『ホテルローヤル』

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『ホテルローヤル』/集英社

■今回の官能小説
『ホテルローヤル』(桜木紫乃、集英社)

 「ラブホテル」という場所がある。それがどういう場所なのか知らなかった子どもの頃は、おもちゃのような原色のお城を指差して、「あのお城、なあに?」と、無邪気に両親に訊ねたりしたこともあった。今思い返すと、何ともばつの悪い空気が流れていたことだろう。

 「ラブホテル」とは、ふと冷静に考えると非常に不可思議な場所である。なぜなら、男と女が、ただセックスをするためだけに集結する場所だからだ。不倫カップルがたまの逢瀬をむさぼる部屋もあれば、性欲を満たすだけにホテトル嬢を呼んでいる部屋もある。目的とする行為は1つだけれど、それに至るまでの物語は、壁1枚を隔てて十人十色――それぞれの部屋で、わずか数時間ばかりの、男と女のさまざまなドラマが繰り広げられている。
 
 今回ご紹介する『ホテルローヤル』(集英社)は、北海道の片田舎にあるラブホテルが舞台となる連作短編集である。1年のほとんどが厚い雲で覆われ、寒さから身を守るように人々が身体を寄せ合って生きている――そんな人のぬくもりが人一倍恋しくなるような北海道の片隅に、ひっそりと「ホテルローヤル」は建っている。

ラブホテルという非日常で育った女の“節目”を描いた『ホテルローヤル』

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『ホテルローヤル』/集英社

■今回の官能小説
『ホテルローヤル』(桜木紫乃、集英社)

 「ラブホテル」という場所がある。それがどういう場所なのか知らなかった子どもの頃は、おもちゃのような原色のお城を指差して、「あのお城、なあに?」と、無邪気に両親に訊ねたりしたこともあった。今思い返すと、何ともばつの悪い空気が流れていたことだろう。

 「ラブホテル」とは、ふと冷静に考えると非常に不可思議な場所である。なぜなら、男と女が、ただセックスをするためだけに集結する場所だからだ。不倫カップルがたまの逢瀬をむさぼる部屋もあれば、性欲を満たすだけにホテトル嬢を呼んでいる部屋もある。目的とする行為は1つだけれど、それに至るまでの物語は、壁1枚を隔てて十人十色――それぞれの部屋で、わずか数時間ばかりの、男と女のさまざまなドラマが繰り広げられている。
 
 今回ご紹介する『ホテルローヤル』(集英社)は、北海道の片田舎にあるラブホテルが舞台となる連作短編集である。1年のほとんどが厚い雲で覆われ、寒さから身を守るように人々が身体を寄せ合って生きている――そんな人のぬくもりが人一倍恋しくなるような北海道の片隅に、ひっそりと「ホテルローヤル」は建っている。

発端は教授のセックステープ――京女たちのセックスの表裏を描いた『女の庭』

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『女の庭』/幻冬舎

■今回の官能小説
『女の庭』(花房観音、幻冬舎)

 女の欲望は、男の欲望とはまったく違うものである。セックスの時、男が女に欲しているものは快楽のみ。その裏に潜むものなど目もくれずに、ただひたすら無邪気に天国だけを目指す。けれど女はそこまで快楽に対して能天気ではいられない。「恋愛とセックスは天国と地獄が表裏一体」だと、女は知っているのだ。
 
 街全体を高い山々に囲まれた、箱庭のような古都・京都。今回ご紹介する『女の庭』(幻冬舎)は、外敵から守られ、ひっそりと独自の時間軸を持ちつづける京都に住む5人の女たちの物語だ。