“セックスだけ”の女こそ男を翻弄する? 『黒い瞳の誘惑』に見る官能小説の王道的ヒロイン

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『私にすべてを、捧げなさい。』(祥伝社)

■今回の官能小説
『黒い瞳の誘惑』(渡辺やよい、祥伝社『私にすべてを、捧げなさい。』より)

 官能小説のヒロインでよく登場する、魅惑的で美しく、男性を翻弄して弄ぶエロい悪女たちは、現実ではなかなかいないキャラクターだからこそ、官能小説愛好家の間では常に人気があるのだと思う。では、彼女たちはなぜ男性に愛されるのだろうか?

 今回ご紹介する『私にすべてを、捧げなさい。』(祥伝社)は、8人の人気官能小説家によるアンソロジー。美人秘書、OL、妊娠中のキャリアウーマンなど、さまざまな職種の悪女たちが、男たちをセックスという武器で操っている。その中の一作、渡辺やよい氏の『黒い瞳の誘惑』は、美しい黒髪の女性がヒロインの物語だ。

平凡なOLが体現する“究極のセックス”とは? 『悪い女』に見る“禁断”の作用

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『悪い女』(実業之日本社文庫)

 人はなぜこんなにもセックスに翻弄されているのだろう? 言葉で説明できない快感を導く行為は、決して道徳的な思考だけで説明できるものではない。例えば恋人ではない相手とのセックスが気持ちよかったり、妻子ある男性との関係に溺れてしまったり……危険をはらんだセックスは、通常の行為以上に気持ち良く感じることが多く、“禁断”を突き詰めると究極の快楽に到達する場合もある。今回は、そんな“究極の快楽”に迫る作品を紹介する。

 今回ご紹介する『悪い女』(草凪優著、実業之日本社文庫)の主人公・佐代子は、24歳の派遣OLである。第一印象は清楚で、まるで就職活動中の学生のような風貌をしている。そんな地味な外見とは裏腹に、彼女は3人の妻帯者の男性とセックスフレンドとして関係を結んでいた。

江戸時代の女が夫の殺人計画を立てるまで――『真昼の心中』に感じた不倫する女の“絶頂”

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『真昼の心中』(集英社)

 女にとって、不倫の恋のつらさは今も昔も変わらない。現在では「婚外恋愛」という「不倫=恋愛」と位置付ける言葉もでき、不倫の敷居は低くなりつつあるが、女が不貞を働くことがご法度だった時代には「あの世で結ばれよう」と、心中を図る恋人たちも多くいた。現世で結ばれないのなら、来世で一緒になる――昔の男女は命懸けで相手を愛していたようにも感じられる。

 今回ご紹介する『真昼の心中』(集英社)は、江戸時代に実在した事件をベースに、著者自身の解釈を加え、執筆された物語だ。7話収録の本書で表題作になっている『真夏の心中』の主人公・熊は、日本橋に構える店「白子屋」の一人娘。街で評判の器量よしで、店に500両を融資してくれるという男・又四郎を婿にもらうことになる。

男に振り回された女は、別の男を振り回す――『夏の裁断』が描く連鎖する男女の快感

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『夏の裁断』(文藝春秋)

 好きな異性に傷つけられることで、快感を得る人がいる。SMというプレイにおいて「マゾヒスト」と呼ばれ、肉体的に痛みを得ることで興奮し感じる者もいれば、精神的な痛みを欲するという人もいるだろう。例えば、浮気を繰り返すダメな男にばかり惚れる女。男に何度も何度も裏切られ、傷つけられることで病んでいくが、その痛みが快感に変わってしまうのだ。

 今年、第153回芥川龍之介賞の候補になった本作『夏の裁断』(文藝春秋)は、そんな“病んでる”女流小説家・千紘が主人公の物語だ。

男を惹きつけるブスでデブのババア――女の醜い嫉妬や怒りを引きずり出す『黄泉醜女』

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『黄泉醜女 ヨモツシコメ』(扶桑社)

 自分の欲求を満たすためならば手段を選ばない女がいる。関係のあった男性から金銭援助を受けるも、お金がなくなったら殺害してしまう、しかも1人ではなく複数……そんなニュースが流れると、「ひと昔前の日本の女たちは、男の半歩後ろを歩き、男たちの支えになることに喜びを感じていたのに」と思う人もいるかもしれないが、日本神話の時代から女は恐い生き物であった。

 今回ご紹介する物語の表題になっている『黄泉醜女(ヨモツシコメ)』(扶桑社)は、日本神話に登場する、黄泉の国の鬼女である。約束を破り、腐敗したイザナミの姿を見て慄いた夫・イザナギは、激怒したイザナミに命じられた醜い黄泉醜女にどこまでも追いかけられる――その様子は、私利私欲のためならば手段を選ばぬ女の化身のようだ。

男と女のセックスをめぐる“負の感情”を描く官能小説家が“怪談”を書く理由

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『女之怪談』(角川春樹事務所)

 官能小説を書く女流作家が、官能小説以外のジャンルでよく書いているのが「怪談」だ。筆者も怪談小説の中に官能的な部分を見つけるたびに、その奇妙な類似を不思議に感じ、サイゾーウーマンの官能小説レビューでたびたび怪談小説を紹介してきたが、もしかすると、著者自身は官能と怪談というものの境界線がもっと曖昧なのかもしれない。

 今回ご紹介する『女之怪談―実話系ホラーアンソロジー』(角川春樹事務所)は、花房観音、川奈まり子、岩井志麻子の3人の女流作家による怪談アンソロジー。普段は官能小説などの媒体で生々しい女性の人生を綴る彼女たちの、実話の怪談話が収録されている。

田舎の少女が“性の特訓”で変貌――シンデレラストーリーとして読む官能小説『令嬢人形』

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『令嬢人形』(双葉文庫)

■今回の作品
『令嬢人形』(蒼井凜花、双葉社)

 冴えない主人公が1人の男性の手によって華麗に変貌してゆく“シンデレラストーリー”は、今も昔も健在だ。やはり女性は、自分の気づいていない魅力を誰かに開花させてもらいたいという思いが強いのだろうか、女性の手によって男性が変貌するという逆パターンの物語はほとんど存在しない。シンデレラストーリーが、常に世の女性から安定した人気があるのは「自分の中に秘めた何かがある」と密かに感じているからなのかもしれない。

 女としての魅力を開花させる最短手段は、セックスである。恋をすると女は美しくなると昔から言われているように、心も体も満たされるセックスを重ねると、女は自然と魅力を増す。女は男によってどんな形にも花開くことができるのだ。

官能小説読みの視点で考える、BL小説『美しいこと』の恋愛とセックスで満たされる女の願望

<p> 小説業界でも「ボーイズラブ」のジャンルが一般的になった。現在、電子書籍サイトのカテゴリに当然のように存在しており、書店でもライトノベルほか漫画なども多く見かける。</p>