2カ月に1度やってくるママたちのオシャレ確定申告、「nina’s」(祥伝社)のお時間です。特集は「家族が笑顔になるおうちづくり」。「nina’s」では定番の“オシャレは家から”企画。今号も自然あふれる広い庭、古民家リノベーション、パパのお手製ブランコ、標準装備の落書き用黒板など、期待を裏切らないお宅が大集合。なにより素晴らしいのが、それぞれの家につけられたキャッチフレーズで「築50年の鎌倉古民家を再生。家族の笑顔で命を吹き込む」「前オーナーの思い出も継いだ、英国風な葉山のリノベハウス」「森の中に建てた、DIY好きパパの遊びが詰まった木の家」……。しみじみ思いました。オシャレ民、葉山と鎌倉に吸い寄せられすぎ。オシャレパパ、家づくりで遊び心発動させすぎ。
<トピックス>
◎特集 家族が笑顔になるおうちづくり
◎のびのび賢く育つ「北欧の子育て」って?
◎車でおでかけday スナップ
■「北欧」と「nina’s」の危険なコラボ
他人である前オーナーの思い出を引き継ぐのはかなり勇気がいることだと思うのですが、特集のキャッチフレーズは「素敵な家にはストーリーがある!」。「nina’s」では高いブランド物より、祖母、母と受け継がれたアンティークのワンピースにこそ価値がある。「前オーナーの思い出」が「念」に思えて「なんか怖ぇ~」などとのたまう輩(※筆者)に、オシャレな家を語る資格はありません。
さて、家づくり特集でもオシャレママパパたちの口からしばし語られる、「子どもをのびのびと育てたい」という思い。「nina’s」お家特集名物・大人が先回りして作る「子どもの秘密基地」もその思いが結晶化したものでしょう。そんな「nina’s」読者が大好きな「のびのび」を冠するページが、「のびのび賢く育つ『北欧の子育て』って?」。「のびのび」に加えて、個性派オシャレママたちの昇天ワード「北欧」が入ってるんだから奥様、どうかご覚悟を。
「実際に北欧で子育てされている方や、北欧人と結婚されご家庭に北欧流の子育て術を取り入れている方の生の声」と「専門家のお話」で構成されているこの企画。「平日の朝食は夫が担当。夕食はほぼ私が作りますが、夫は食事の片付けや皿を洗浄機に入れたり子どもをお風呂に入れて、ベッドで絵本を読んだりしてくれます」「休日は夫がいつもより豪華な朝食を用意してくれ、掃除機もかけてくれます」「スウェーデンはほとんどの家庭が共働きなので、『主婦』という言葉がありません。男性も家事や育児をするのが当然なので、『イクメン』という概念もあり得ないです。『育児を手伝う』って日本独特な言い方だと思いますね(笑)」……事実をありのままに、しかしどこかうっとりと勝ち組の風を漂わせながら語るジャパニーズママin北欧。
「特にスウェーデン流の子育てを取り入れているつもりはない」と言いながらも、「絵を描くのが私も子どもたちもすごく好きなので、花を見ながら写生をしたり、落ち葉を拾ったらコラージュをしたり、旅行に行った思い出を描いてみたり。『このキレイな夕日をパパに見せたいから描く!』って娘たちが言い出すこともあるんですよ」と、読者ママたちが興奮のあまり卒倒しそうなクリエイティビティあふれた子育てエピソードを披露するのです。
よくできた夫、広い家、自然あふれる環境、整った制度、子育て家庭に優しい周囲の眼差し……読めば読むほどため息しか出てこない北欧子育て記事。そりゃ子どもたちものびのび育ちますわな。これはもう一生行かないであろう「世界の三ツ星レストラン特集」と同じ気持ちで読んだほうが良さそう。精神衛生上。
ここジャパンで問答無用に北欧を振りかざすのはもはや暴力に近いと感じると同時に、海外に赴いた日本女性が突如欧米的なものに開眼したときの「日本(笑)」といった嘲笑に、実は一番深い闇があるなと思いました。週末IKEAに行ってかりそめのスウェディッシュに浸るというのが、正しい北欧との距離感なのかも。
■3世代リンクコーデは幸せ地獄の象徴
さて続いてご紹介するのは、みんな大好き「nina’s」街角スナップ。今号はこれがなきゃ不便な立地のIKEAに行けやしない、「車でおでかけday スナップ」。リードには「車移動だからこそできる親子ファッションや便利なアイテムなど、ママ達のおでかけの工夫が目白押し!」とあります。親子スナップもくるところまできた感ありますね。
「四駆ファミリー」「コンパクト&軽派ママ」「ファミリーカー&セダン派」……自慢のマイカーをバッグに、微笑むオシャレ親子たち。どのママも「車移動だと防寒を気にせず思いっきりオシャレを楽しめる」と満足そう。
通常の3倍の濃度でリンクコーデにも気合が入っています。「白ニット×キャメルで三世代リンク!」「今日は4世代でショッピングモールにお出かけ!(中略)大人は黒を基調にコーデ」など、パパはもちろん、ばあちゃんたちもリンクコーデの標的に。ばあちゃんたちは出かける前に娘(オシャレママ)から「今日は黒で」「白ニットにキャメル縛り」など本日のドレスコーデが送られてくる、まさに幸せ地獄……。
こんな方もいらっしゃいます。車に対するこだわりは割と実用的なものが並ぶ中、こちら古着店のオーナーパパ。車種は古いメルセデスベンツ。「カセットしか聴けないのも味があって◎」なんだそうです。ドライブの強制リンクコーデを喜べるか、カセットしか聴けないことに「◎」できるか。それがこの雑誌を楽しめるかどうかのわかれ道だと痛感しました。
家と車。幸せな家族の象徴たるアイテムをドドーンと披露した今号の「nina’s」。昭和の価値観にオシャレのガワを着せてポップに見せるのが天才的にうまい「nina’s」の真骨頂がいかんなく発揮されておりました。オシャレなママと呼ばれるためには、ファッションも家も車も子どもも夫もばあちゃんもオシャレでなければいけない。やっぱりたまにIKEAでミートボールにジャムつけて食べるくらいがちょうどいいかな……。
(西澤千央)