新型コロナウイルスの影響で同誌初の合併号となった「ar」(主婦と生活社)6・7月号。その特集は「FOR THE BEST DAY 今のうちにジブンを最高にしておこう」です。
巻頭には「次にお会いできる時まで、この号をいっぱい楽しんでもらえるよう“最高の自分になるため”のアレコレを詰め込みました。こんな時こそ、まず自分を愛してあげて」とのメッセージ。「ar」の“自分で自分を幸せにする”というポジティブマインドを感じます。
モデルではなくイラストを使ったり、過去の誌面を引用したり、また、ネットで買えるコスメや服だけを紹介する企画も。混乱の中でも読者に“ベスト”を届けようとしてくれていることが伝わってきます。早速、中身を見ていきましょう!
<トピックス>
◎最高の自分UP UP UP チューニングBOOK
◎心震わす私のカルチャー
◎夏のオンナのカラダと悩みのすべて!!
もはやファッション誌ではなく自己啓発書
最初に見ていくのは、この時期を乗り越えるための読み物中心の企画「最高の自分UP UP UP チューニングBOOK」です。「本当にいろんなことが起こる毎日だけど、自分の目標や生活リズム、美学を見失わないこと」と説き、おうちでできる「最高の自分にチューニングする方法」を紹介してくれています。
その中身はファッション&美容雑誌というよりは、ライトな自己啓発書1冊分ほどの充実っぷり。自粛生活で人と気軽に会えない時に、自分の未来や性格について一人で悩むのはNGと警告し、グループ通話やLINEで不安をシェアすることを提案。「ひとりで考え込まず、お家で(ハート)みんなで悩む!」ことを勧めています。ほかにも、“ムリせず当たり前にできていること”こそがその人の持つ才能だとして、「無理に目新しいスペックを自分につけ足そうとはせず、お家でだる~んとしながら今まで自分に投げかけられた言葉を思い出し(中略)『当たり前』に目を向けて」との教えも。
また、気持ちを切り替える「ジブンUP UP UP チューニング用語10」も紹介。「不安で頭がいっぱい」になったときは、「未来を考えすぎな時。“今”自分が何を感じるかを意識してみよう(ハート)」。「なんでもネガティブに考えちゃう」ときは、「“すべき!”が心にありすぎる時。『~したいかも』から考えてみよう」。など、心が弱っているときには染み入る言葉がたくさん。
この時期に「ar」世代がどんな不安を抱え、どんな精神状態になっているか、ものすごく分析したうえでの言葉が並んでいるように思え、多くの人に読んでほしいと感じました。
次に見ていくのは、編集部スタッフがおすすめするカルチャーを紹介するページ「心震わす私のカルチャー」。同誌を作っている方々を形成したカルチャーが知れるという、マニア垂涎の企画です。
編集長は「私が好きな山崎賢人出演作」「ビジネス書が苦手な私でも納得した20代にもおすすめのビジネス書」「人生を変えた小説のフレーズ」の、それぞれのベスト3を挙げています。編集長、山崎賢人推しだったんだ……という発見もありつつ(なお第1位は映画『キングダム』とのこと)、最も興味を引かれたのは「人生を変えた小説のフレーズ」でした。第1位はよしもとばななの短編『デッドエンドの恋人』(文藝春秋)の一節で、「今ならわかる。最低の設定の中で、その時私は最高の幸せの中にいたんだということが。」。この時期に共感を呼ぶフレーズかもしれません。また3位は、三浦しをんの小説『舟を編む』(光文社)の一節「だれかの情熱に、情熱で応えること」は、「ar」作りの心意気にそのままつながっているのだろうかと想像できました。
また「ドメス」「グジョつき」など、独特な「ar」語の生みの親である編集者が紹介していたのは、「光フェチなんで…心は晴れ写真集&本」ベスト3。謎のジャンル分けです。第1位はLA拠点の写真家ヘンリック・プリエンヌの作品集『Holiday』。「女性の濡れた肌や髪を楽しめる」写真集だそうで、「濡れ髪タオルの巻き方や部屋着の参考にもしてる」とのこと。日本では手に入りにくく、高値で取引されている(註:amazonでは約3万円~20万円の値が付いている)という同作が部屋着の参考書とは……さすが「ドメス」「グジョつき」を思いつく編集者です。
ほかにも編集者による「原稿がはかどるBGM」「辻仁成の小説」「ジョジョの名台詞」「まぶしすぎるスポーツ映画」「OVER30韓国俳優」などが次々と紹介されていきます。これらのコンテンツを消費していくだけで、「ar」マインドが身につき、お家時間はあっという間に過ぎ去りそうです。
最後は「夏のオンナのカラダと悩みのすべて!!」。こちらは、汗・ニオイ・ムダ毛という夏の三大お悩みについて、一般男性へのアンケートも紹介しながら対策方法を紹介する企画でした。
「彼女がアンダーの脱毛途中でジョリジョリしてても、頑張ってる過程だからまったくイヤじゃない」という心が広め(?)の男性もいれば、「手フェチは指毛も気になります」「背中の開いた服を着てるのに背中の毛が生えてる人。着るなら気にしなよ」という細かいケアを求める男性も。
個人的に「は?」と感じたのは、「キレイな女性でワキ汗がブラウスにちょっと染みてるのを見ると、人間らしくてドキッとする」という意見。「キレイな女性」にわざわざ限定しているのが、イラつきポイントです。また「料理を作りながら額の汗をぬぐってる姿は、頑張ってる感じが伝わってきてキュン」というコメントも。“料理というシチュエーションでの汗なら許してやるぜ=料理は女性が頑張るもの”という、この人の固定概念が透けて見えます。
今は、男性もケアを心掛ける時代のよう。ワキ汗軽減のために「ボトックス注射やってます」という男性、乳首の周りの毛を「自分でも気持ち悪いと思うから抜いてる」という男性、VIO脱毛をしている同性は「周りにも結構いる」という男性が誌面に登場していました。こういう部分の男女の差はなくなりつつあるのだから、指毛や背中の毛もお互い大目に見ようぜ……と感じます。
今号が合併号になったため、来月号はお休みですが、「ar」を読み込んで次の号を楽しみに待ちます。
5月7日に発売された「VERY」(光文社)は6月・7月合併号。分厚い雑誌で有名な「VERY」ですが、5月号よりページ数はやや少なく(それでも十分分厚い)、内容が変更になった企画もあるとか。一方で「変更できなかった」企画もあるとのことで、新型コロナウイルスの影響がファッション誌にも及んでいるわけですね。