今月の「GINGER」(幻冬舎)の表紙は、なんとなく全体的にボンヤリとした印象。アンニュイな表情をしたレギュラーモデル・宮田聡子が、ふわふわニットに身を包み、小指をくわえ、視点の定まらない目線でカメラの向こう側を見つめています。前号では、「モテ」や「愛され」に依存しない超現実主義だったアラサーの「GINGER」姉さんも、冬場だからやっぱり彼氏に甘えたいのかな? と思いきや、彼女の写真の上には、デカデカと「限られた予算を活かして、おしゃれに生きる! お値段以上の服とインテリア」という身も蓋もない欲望をさらけだしたキャッチが……。過不足なく情報が伝わってきて、大変わかりやすいですが、もっとオブラートに包んでもいいと思うよ? 一番目立つ場所に太字で書かれた「石井ゆかり開運手帳 120名プレゼント」にも商魂のたくましさを感じつつ、さっそく中身をチェックしていきましょう~。
<トピックス>
◎お値段以上の服とインテリア
◎12月だから欲しい服、したい着こなし
◎お気に入りのジュエリーと奏でる4つのWINTER STORY
■ときめきを全否定!?
まずは身も蓋もないメイン特集「お値段以上の服とインテリア」ですが、前号同様、「◯◯なのにお値段以上! おしゃれサプライズ36」「あのブランドのお値段以上な実力アイテム」「セレブのおしゃれテク、プチプラで完コピ!」「『あなたの私服HOW MUCH?』SNAP!」「大人の『モト取れ』傑作図鑑」……と期待を裏切らない「コスパ」重視のファッションページが淡々と続きます。それにしても、女性誌で「モトを取る」っていう言葉、あんまり聞かないですよね。
しかし、前号のレビューでも指摘したとおり、コスパ優先とはいえ「無難に見えて無難ではない」という絶妙ラインを保つプライドを持っている「GINGER」女子のこと。「私たちは単に安いモノばかり求めているワケじゃない。満足度に見合った価格であれば、納得がいくというもの。大事なのは『それなら買い!』と思える理由があるかどうか」だそうです。恐らく、「GINGER」女子にとって、“ときめきによる衝動買い”はタブーなのでしょう。
続くインテリアのページでも、「グッドプライスなインテリアガイド」「ニトリ&無印良品の知っ得情報大公開!」と堅実すぎる「GINGER」。別に夢見るくらいタダなんだから、カッシーナのソファとか載せてもいいのでは? せっかく「おしゃれ業界人の自宅を訪問!」しても、「まとめて見せてひとつの世界観に」「必要なものだけをディスプレイして効率よく生活する」「白8割・黒2割のモノトーン収納ですっきりと」「ボックスの中はタテ収納が基本」「プチプラ家具も色を揃えて空間に統一感を」などなど、夢を見るより先に、勉強熱心になってしまう真面目な「GINGER」女子。その生き方、息詰まっちゃうよ!?
【番外編】の「感動&号泣間違いなし!お値段以上のハピネス体験」に、「GINGER」読者の夢見る力を見いだそうと淡い希望を託したのですが、「東京ドーム貸し切りで草野球をする」「無人島をまるごと借りて、大規模鬼ごっこ大会」「宇宙旅行」など、金さえ積めば実現できるかな……という夢ばかり!! ご丁寧にもしっかり予約サイトまで紹介されているという、どこまでも現実主義な「GINGER」です。
■追い詰められた「GINGER」女子が行き着くスピリチュアル
ファッション特集「12月だから欲しい服、したい着こなし」においても、その超現実主義は徹底しています。「女子会にデートに忘年会にと、年末につれて増えていくイベントに今なら何を買ってどう着こなすべき?予定と場所にふさわしい華やかなおしゃれセンス」とうたい、「白のレースブラウスはカラーパンツでほどよくモードに」「こっくり色スカートは個性派ニットでキャッチーに」など、細かいルールびっしり! 何かの試験でも受けるつもり? おしゃれするって、こんなに細かな気配りが必要なんですね!
しかし、紹介されているコーディネートは、思わず目を引くようなスタイルではないことから、「GINGER」女子は別に、ズバ抜けてファッションセンスのある人になりたいわけではなさそう。周りと、“ちょっとだけ”差をつけたい……そのために努力とこだわりを発揮しているように感じるのです。そしてそこには、「他人から愛されたい」「よく見られたい」という欲望も、あまり見えません。
「GINGER」女子たちは、社会性を重んじる真面目なタイプなのではないでしょうか。誌面に登場する読者たちは、責任ある仕事を持って自立しているタイプが多いし、また、雑誌全体を通して、恋愛にまつわる企画が限りなく少ないことからも、男に依存するタイプではないように感じます。決して主体性なく流されているわけでもないし、ゆるふわな甘い夢を見て思考停止しているわけでもない。ちゃんと自分の力で、現実を真面目に生きている。そんな彼女たちのオシャレを楽しむ方法が、“周囲とちょっとの差をつける”なのかもしれません。
そんな「GINGER」女子像が如実に表れていたのが、働くアラサー女性の物語仕立てになっている、レギュラーモデルの香里奈とカルバン・クラインのタイアップ記事「お気に入りのジュエリーと奏でる4つのWINTER STORY」。
主人公女子のセリフを一部抜粋すると……「(彼氏と)会うのは3週間ぶり。お互い仕事が忙しくて、ここだけの話LINEのやり取りですら面倒に感じることもある」「予定のない休日に思うこと。携帯電話の電源をオフにして、今日は絶対のんびりするって決めた。でも……頭の中を空っぽにして何も考えないでいるのって、案外難しい。月曜に持ち越してしまった仕事、大丈夫かなぁ?彼とはこれからどうなるんだろう?(以下続くモヤモヤ。中略。)ゆっくりしたかったのに、ふだんよりもなんだかいろいろ考えてしまう」……なんてリアルすぎるストーリーなのでしょうか!? 女性誌の着回しストーリーって、もっと夢があるから! 「IT社長に突然見初められてプロポーズ!? 学生時代から6年付き合っている彼氏もいるのに……どうしよう(はぁと)」とか、そういう頭がお花畑のトンデモストーリーで全然いいから! と叫びそうになりました。服だって、インテリアだって、「自分には何が見合っているか」や「コスパは高いか」に固執せず、自分の心がときめくものを選べばいいのにと、思わずはいられません。
そんな「GINGER」女子の窮屈そうな生き方を思うと、表紙の宮田のうつろな目は、「男に甘えていた」のではなく「死んでいた」のかもしれません。そして本誌には特集ページが組まれていないにもかかわらずガッツリ宣伝されていた「石井ゆかり開運手帳」、謎のスピリチュアル企画「アストロビューティー活用術」、旅行企画「大島優子、京都で食べて、祈って、恋をして」……これら全ては、真面目がゆえにTPOをわきまえすぎて疲れ果てた「GINGER」女子たちを癒やすためにあった企画なんですね。
そんな彼女たちに朗報なのか、「GINGER エージェンシー」なる、夢あふれるオーディションが開催される模様。モデル、カメラマン、記者など「人生を変えるような新しいことに挑戦したい!」女性を大募集しているそうです。今後の展開が期待されます!
(橘まり子)