今号の「婦人公論」(中央公論新社)の特集は、「かっこよく年を重ねたい」です。久しぶりにやってきた、全編ギャグ&コントのようなインタビューや対談が並ぶ、超お気楽特集。まずは表紙の真矢ミキ。元宝塚トップスターというより、「“あきらめないで”の人」の方が伝わりやすい真矢ですが、インタビュー「人には無限の色がある。ひとつじゃないから面白い」でも、そのサバっとしてポジっとしたパブリックイメージをいかんなく発揮しております。
「目指したいのは、質のいいニットみたいな人。着ている自分も楽で気持ちいいけれど、まわりの人もほっとするといった感じでしょうか」。なぜ女優という生き物は、なにかをニットとかカシミアとかワインとかにたとえたがるの……。萬田久子の罪は重い。
<トピックス>
◎特集 かっこよく年を重ねたい
◎奈良橋陽子×桃井かおり「経験が支えてくれるから勇気出していい年頃なのよ」
◎松岡修造「『かっこよさ』とは一所懸命から生まれる輝きのこと」
■本当に相槌で「オーマイゴッド」って言ってます
そんな特集ですので、今号は介護も年金もニートな子どももイヤなご近所も捨てたい夫のことも全て忘れて、サバっとポジっと「年を取るって、素晴らしくない?」と鏡の中の自分に微笑みかけるような気持ちで読みましょう。
必読はこちら、キャスティングディレクター・奈良橋陽子×女優・桃井かおり「経験が支えてくれるから勇気出していい年頃なのよ」。リードには「54歳でアメリカへ移住、仕事の拠点も移した桃井かおりさん。そのきっかけとなる仕事で、彼女を後押ししたのが奈良橋陽子さんだった。以来、仕事を超えた付き合いだという二人の、“かっこよさ”の基準とは何でしょうか」とあります。60を過ぎても現役バリバリ、海外を拠点に活動する“THEかっこいい女”がお互いを褒めながら、時に軽くディスって仲の良さを匂わせながら、女の生き方を語ります。
この対談、ものすごくざっくり言うと「LAって最高」「映画も生き方もナチュラルが最高」「この年になってそれ実現している私たちって最高」。2月28日号で、THEかっこいい女界の西の正横綱・夏木マリが「自分の肩書きは『プレイヤー』だと考えています。遊ぶ人です! これからも本気で遊びたいと思います」と高らかに宣言していて無言になりましたが、今号はTHEかっこいいが互いを煽り合っているので、アーティスト的“うっとり”が天井知らず。
桃井「結婚もして、この辺で静かに遊んで老後ってやつを迎えればいいと思ったりもする。やってみた~いって。でも、まだまだ仕事もやれそう(笑)。映画を撮ったり、文章を書いたり、絵を描いたりしている最中に、『創造の神』が降りて来なくなったらおしまいじゃない?」
奈良橋「この年になってもバンバン変化球が飛んでくるというか、たいへんな目に遭うのはいいことですよ。年を重ねると、安全や居心地の良さを好みたくなるけど、変化球を好んだほうがいいと思う」
大半の読者が受け入れるしかない「老後ってやつ」を、「やってみた~い」と言いながら、“だけど創造の神降りてきちゃうから無理~”とアーティストの宿命を説く。加齢とは衰えばかりではないという企画趣旨でしょうが、加齢で自我はますます濃度を上げていくということはよくわかりました。
さて、続いては今日本の芸能界で最もセルフプロデュースが成功しているであろう2人の男性。偶然にも同特集内にインタビューが並んでいるので、その人気の秘訣を探ってみたいと思います。
1人は読者モデル・タレントのりゅうちぇる。「好きな服を着続けてかわいいおばあちゃんとおじいちゃんになろうね」で、妻でブランドプロデューサーのぺこと新婚対談しています。もう1人は元プロテニスプレイヤーの松岡修造。インタビュー記事のタイトルは「『かっこよさ』とは一所懸命から生まれる輝きのこと」。2人のインタビューに共通しているのは、隙のなさ。タレントとしては亜流扱いされがちな2人ですが、骨の髄までTHEタレントですよ。
隙のなさその1は「弱さ」。ハッピーでポジティブなイメージの裏にある苦労や悩みをさらけ出し、読者に「あの人にもそんな部分が……」と思わせる巧さです。りゅうちぇるは「僕は中学まで、自分の見られ方をすごく気にしてたの。しゃべり方がなんか女の子っぽいし、お茶を飲むときに小指立っちゃうし(笑)。だから“ちぇるちぇるランド”の幼稚園や小学校では、からかわれたこともあったの」。中学時代は「普通の男の子っぽく演技して」乗り切っていたようですが、「毎日がものすごくつまらなかったな。自分が好きじゃなかったし」。一方の松岡は「実際の僕はといえば、弱く、消極的な人間です。著書やホームページを通し、悩める子どもたちにアドバイスをしたり、みなさんを励ますメッセージを送ったりしていますが、それらは、僕自身が必要としていたもの」。松岡修造日めくりカレンダーは、彼自身が必要としていたものだったんですね……。
隙のなさその2は「気遣い」。りゅうちぇるはとにかくぺこを褒めちぎる。最近ダイエットに成功したぺこについて、「あの頃ぺこりんは、急にお仕事が増えたストレスで太っちゃったんだよね。僕をみんなに知ってもらうためにって言ってくれて、ふたりでたくさんお仕事してたから」「ぺこりんが太っていくとき、どんどん外国人みたいになっていってかわいい! と思ってたよ」「ぺこりんは痩せてもかわいい」と、太った理由・過程・ダイエット後まであらゆる方面を完全防備。アンチ虫一匹侵入させまじ。
松岡の「気遣い」はこれにつきます。若い頃は洋服が好きで、イタリアのものなどをよく買っていたと語りつつ、「今、わが家の洋服ダンスには、僕がイメージキャラクターをしているメーカー2社のものしかありません。(中略)今やそれを着ているのが『自分そのもの』と言えるくらい、両社の服は僕にピタッとなじんでいる」。スポンサーが泣いて喜ぶフレーズを自然と挟み込んでサービスエース。芸能界で生き残るって、大変……。
「自分らしく生きる」「好きなことをする」、それが「かっこよく年を重ねること」という今号の「婦人公論」。しかし芸能界で「自分らしく生きる」こととは、その本来の意味からは大きく離れ、重大なイメージ管理を課せられるものなのだと、桃井、りゅうちぇる、修造というキャラ芸人たちから学んだ次第です。
(西澤千央)