今月の「non・no」(集英社)のメイン特集は「今っぽ&モテ&コスパ最高の神着回し空前絶後の200連発!」と盛りに盛りまくっています。「『写真を撮る日』の盛れる冬コーデ」「会う人・コーデ別・時短別 秋コスメで盛る(ハート) #MOTD!(メイクアップ オブ ザ デイ)」といった“盛り企画”が目白押し! しかし中身を読み進めていくと、「女っぽ着回し30days」「モテ着回し15days×2」「ヒロイン姉妹着回し15days×2」で繰り広げられるキャンパスデイズは、「ゼミ」「バイト」「インターン」「サークル」と毎回代わり映えしないルーティーンな日々。それ先月号でも見たわ! そんな日常を送っているからこそ、ノンノ女子たちには“盛り企画”が響くのかもしれません。インスタ映えを意識したり、「TPPO(タイム パーソン プレイス オケージョン)」に合わせてオシャレやメイクを変えるくらいしていかないと、本当にただの“個性のない保守的女子大生”になってしまう……ということでしょうか。
<トピックス>
◎20歳の記念に手に入れたいスペシャルなもの
◎男子校育ちVS.共学育ちの恋愛あるある
◎キャリアウーマンも20歳だった!
■ほのぼのノンノ女子のルーツは仲良し家族にあり?
まずは「non・no」の対象読者ど真ん中に向けた企画「20歳の記念に手に入れたい スペシャルなもの」を見ていきましょう。「成人を迎えるタイミングで、一生大切にできる特別なアイテムを手に入れて。素敵な大人になるための第一歩を踏み出そう」というコピーの元、ノンノモデルとカワイイ選抜(ノンノの読者モデル。それにしてもすごいネーミングですね)が20歳の記念に手に入れた物を紹介していく企画です。「手に入れた」なんていうから、自分でアルバイトして買ったものの話かと思い、ノンノ女子も意外と野心があるんだなぁと感心しかけましたが、何てことはない、プレゼントを「もらった」話を披露してるだけの企画です。だったら最初から「20歳の記念にもらったプレゼント(ハート)」とかいうタイトルにしてほしいです。
TASAKIのパールネックレス、ティファニーのオープンハート、フルラのバッグ、ダニエル・ウェリントンの時計、カルティエのリング……あこがれの正統派ブランドのジュエリーや小物を、家族からプレゼントまたは母親から譲り受けた、というエピソードはよくある話ですし、この企画自体には、特に自慢の意図もないと思います。一般人には手の届かないレベルの超高級ブランドやプライベートジェットをプレゼントされたとかいうわけでもありませんしね。「20歳の記念にブランド物を家族にプレゼントしてもらう」という感覚は、読者にとっても当たり前のことなのかもしれません。
レギュラーモデルである本田翼や乃木坂46・西野七瀬が、自身の連載エッセイで家族とのエピソードをよく紹介していることからも、ノンノ女子は家族仲が良く、ある程度育ちの良いお嬢さんという印象を受けます。「保守的で平和主義」なノンノ女子像にもつながる気がします。もうね、ノンノを1冊読み通した時の毒気のなさたるや! ほのぼのしていて、癒やし効果すら感じるほどですよ!
お次は「男子校育ちVS.共学育ちの恋愛あるある」を見ていきましょう。皆さん、覚えていますでしょうか。実はこの企画、10月号に掲載されていた「女子校育ちVS.共学育ちの恋愛あるある」の男子編なんです! 「大反響の声」に応えて、「男子400人も徹底リサーチ!」ということで期待が高まります。
まずは「共学育ち」と「男子校育ち」のイメージがまとめられています。共学育ちのファッションはシンプル系で、黒髪でやや長めのヘアスタイル。男女問わず関わり合いがあるためコミュ力が高く、女子に対しても幻想は少なく現実主義。友情から恋愛に発展するパターンが多いとされています。一方、男子校育ちはというと、ブランドバッグやアクセサリーを身に着け、茶髪の短髪にアメカジファッション。基本イツメンとしかつるまず、女子に幻想を抱いているため、見た目で人を好きになりがち。カッコよさや筋肉を褒められるとうれしい、とされています。「男子校出身者ってちょっとガキっぽいよねー!」と男子校育ちをややバカにしている感は否めません。女子編に引き続き偏見が強い!
しかし興味深かったのは、続く「LOVEデータ比較」です。「今現在彼女はいる?」との質問にYESと答えたのは、共学男子は49%なのに対し、男子校男子は61%と、男子校男子の方が彼女アリ率が高いという結果に。また「恋愛の悩みは?」という質問に、男子校男子は「女子と話が続かない」「デートで緊張する」「告白のタイミングがわからない」といった、まさに恋愛真っ最中の回答をするのに対し、共学育ちは「大学に入って出会いが減った」「ピンとくる人が見つからない」「無理めな人を好きになってしまう」とクールな回答。
男子心理の解説役として登場した恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田代表は「女子に幻想を抱いていない分、女子への評価もどんどんシビアに」「ライバルが多い環境で育ったため、自分のレベルを客観視できている。無理めな人を好きになると、挑戦するより諦めてしまう人が多いかも」と分析しています。女子校女子の方が恋愛に消極的とされた女子編とは逆の結果に意外性を感じつつ、今回も「あるある」が並べられただけの「VS」企画にオチは特にありませんでした。
にもかかわらず、なぜこの企画シリーズはノンノ女子の大反響を呼んだのでしょうか。「○○女子」「○○男子」などと他人にラベル付けし、カテゴライズする行為は、イメージを決めつけて視野を狭くしたり、時には無益な分断を生むことさえあります。しかし一方で、自分に、例えば「女子大生」といったラベルや肩書がつくことで、自身の立ち位置を理解できたように思い、安心するという側面もあります。
冒頭でも指摘したように、代わり映えのないルーティーンの日常を送るっているように思えるノンノ女子。皆が似たようなファッションを身にまとい、平和主義者で仲良くつるんでいる彼女たちにとって、本気の「VS」にならない程度のラベル付け遊びは、適度な刺激と自分の立ち位置を確かめる安心感を得るのにうってつけなのかもしれません。
最後に「キャリアウーマンも20歳だった!」を見ていきましょう。こちらのキャリアウーマン企画、アラサーからアラフォーまで「現在キラキラ働いている6人の女性」に、キャリアの変遷や学生時代についてのインタビューをしています。資生堂のブランドマネージャーにメルカリの執行役員、社長が2人と、確かにキラキラしたメンバーたちの紆余曲折な経歴に圧倒されてしまいます。
そんな、キャリアウーマンどころかスーパーウーマンとしか思えない6人が語る「20歳の頃の悩み」はというと、「やりたいことがわからない」「将来の自分のことなんて想像がつかない」「何も考えてない! 強いて言うなら東京23区に住みたい(笑)」など漠然としたものばかりだったようで、何がキッカケで自立した仕事人になったのかが気になります。
印象的だったのは、元アナウンサーで現在は話し方教室を経営している野村絵理奈さんの「海外留学で話していておもしろくないと言われちゃった」というエピソード。「自分を表現できない」という20歳の時のコンプレックスが今の仕事の原点になったそうで、「20歳の頃の経験や興味って人生の大きな存在になるもの。とにかくなんでも挑戦してみてください!」とノンノ女子たちにエールを送っています。
20歳そこそこの女子大生の話がつまらないなんて当たり前のようにも思えますが、ノンノ女子たちのように、家族に愛され、同質な友人たちに囲まれて過ごしていれば、自分のつまらなさと向き合う必要はないでしょうし、面と向かって指摘されることもないでしょう。もちろん自分を「盛る」ことでささやかな個性を演出するという方法もいいのですが、時には素の自分のままでキャンパスの外の世界へ冒険してみるのも悪くないかも……?
(橘まり子)