美容に関心の高い女性を中心に、長年ささやかれている、午後10時から午前2時の“シンデレラタイム”をご存じだろうか。それは、この時間帯に睡眠を取ると、成長ホルモンが分泌され、美肌などの美容効果が得られるという説である。しかし、青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹先生は、『仕事が冴える「眠活法」: 疲れを「リセット」する 脳を「活性化」する』(三笠書房)でこの説を完全否定。なぜそんなウソが世間に広まってしまったのか? 今回は、シンデレラタイムをはじめ、巷の睡眠にまつわる都市伝説の真偽を聞いた。
■シンデレラタイムはない! 美肌に効果的な睡眠とは?
――「シンデレラタイムに睡眠を取ると肌にいい」という話は、特に女性の間では“常識”として認識されていますが、本当にウソなのでしょうか?
中村真樹医師(以下、中村) はい、シンデレラタイム自体が存在しません。というのも、成長ホルモンは安眠できる状態で眠りに就いて30~90分後に分泌されるので、何時に寝るかは関係ないんです。実際に、シンデレラタイム以外の時間帯でも就寝後30~90分に成長ホルモンの分泌を認めるデータがあり、実証されています。
――なぜシンデレラタイムのようなウワサが広まったのでしょうか?
中村 眠りの研究を行う際は、午後9~10時くらいに消灯することが多いため、被験者の成長ホルモンの分泌のタイミングが、ちょうどそのあたりの時間帯で重なって、「成長ホルモンが分泌される時間」と勘違いされたようです。さらに、シンデレラタイムというキャッチーなコピーがついたことで、より世間に広まったのではないでしょうか。
――では、何時に寝ても成長ホルモンの効果は得られるということですね。
中村 率直に言ってしまえば、その通りです。ただ、睡眠と密接に関わるホルモンは、成長ホルモンだけではありません。例えば、ストレスホルモンといわれる「コルチゾール」は、体内時計に合わせて分泌されるため、眠りの時間がずれてしまうとさまざまな弊害が出てしまいます。美肌と直接は関係しませんが、美の基本ともなる健康を維持するためにも、規則正しい生活を送るのは大切なことです。
――美肌に効果的な睡眠方法などはあるのでしょうか?
中村 肌に直接いい影響を与える眠りというのはありませんが、強いて言えば、睡眠時間をきちんと確保することでしょうか。睡眠中はいわば体のメンテナンス時間。分断されるとメンテナンスが始めからやり直しになってしまうので、連続で7~8時間ほど眠ることが理想的です。眠りの質においては明確なデータがないものの、健康体で、規則正しい時間に、通常の寝具を使っていれば、ほぼ問題ないとされています。リラックスしていると寝つきが良くなるので、眠りに就く前の1~2時間、短くとも30分はゆったり過ごすようにしましょう。また、眠る前は体温が上がり、下がり始めるタイミングで眠気が出るので、ヨガやストレッチ、ぬるめのお湯での入浴もおすすめです。
――連続で7~8時間の睡眠が必要とのことですが、深く眠れていれば4~5時間でも問題ないとのウワサもあります。
中村 それはまったくのウソです。例えば、質のいいサプリメントを飲んでいたら食事を摂らなくてもいいかといえば、そうではありませんよね。眠りも同じで、トータル的なバランスが必要なんです。短時間睡眠が続くと、パフォーマンスが落ちたり、狭心症や心筋梗塞のリスクが上がったりするとのデータもあります。また、睡眠時間が短いほど、食欲増進作用のあるグレリンというホルモンの濃度は上がり、満腹感をもたらすレプチンというホルモンの濃度は下がって太りやすくもなるので、美容を気にする女性は特に注意が必要です。
――シンデレラタイムのほかにも、睡眠にまつわるウワサがいくつかあります。一つずつ真偽を教えてください。まず、「二度寝や三度寝は体に良くない」というのはいかがでしょうか?
中村 それは本当です。二度寝をすると睡眠慣性(眠っていた状態から覚醒状態に切り替えができず、ぼんやりしている状態)がおきて、ズルズル眠気を引きずってしまいます。
――「寝すぎも良くない」というのは本当ですか?
中村 半分本当で半分ウソです。よく「寝溜め」といいますが、きちんと眠れている人であれば、長く寝ても意味がありません。携帯を長時間充電しても、100%以上増えないのと同じですね。逆に寝不足の人であれば、平日より2〜3時間長く寝た方がいいです。ただ、日ごろ睡眠が足りていたのに、睡眠時間が急に長くなったという人は要注意。病気が隠れているサインの可能性があります。
――昼寝についてはどうでしょうか? 効率が上がるという理由で、休憩時間の昼寝を実践している人は多いようです。
中村 それは本当です。午前10時、午後2時と4時くらいは、体内時計の影響で眠気の出やすい時間になります。そこに疲れや満腹感が合わさると眠気が強くなってパフォーマンスが落ちるので、あらかじめ軽く寝ておけば、その後の眠気が和らいで効率はさほど落ちなくなります。ただ、30分以上寝てしまうと昼寝からの寝起きが悪くなって、かえってしんどくなったり、夜の眠りに影響したりするので、深い眠りに入る前である10分くらいがちょうどいいです。
――現代では、不眠に悩む人が少なくありません。睡眠薬を検討している人、実際に服用している人もいますが、「のちのち害が生じる」「認知症になる」「アルコールの方が安全」など、さまざまなウワサがあるようです。
中村 どれもウソですね。薬は本来、症状のある人が飲むものなので、服用しているのは不眠などに悩んでいる人が多い。不眠や眠りのことを過度に心配することで気が高ぶって眠れなくなる「不眠恐怖」が、不眠が長引く原因の1つなので、薬の害などを気にすることにより、かえって不眠の症状を悪化させる場合があります。認知症になるという説ですが、実は認知症の初期症状に「不眠」があるんですよ。その解消のために、睡眠薬を服用したことのある患者さんが、その後認知症を発症したという可能性もあります。また、睡眠薬は認知症を誘発するものではないことを示す研究報告もあります。
さらにアルコールに関しては、リラックス効果で寝つきは良くなるものの、お酒が抜けるときに眠りが不安定になって目覚めやすくなります。また、睡眠のリズムも乱れてしまうんです。飲酒後は、短時間寝ただけでスッキリしたように錯覚するのも、アルコールが抜けるタイミングで眠りが不安定になって目覚めただけですね。
――最近、“よく眠れる成分”として、トリプトファンが注目されています。「眠る前にトリプトファンの多い食材やサプリを摂るとよく眠れる」ともいわれていますが、いかがでしょうか?
中村 これもウソです。眠りのリズムをつくる体内時計に関わっているメラトニンという物質は、トリプトファンを原料にしています。それでトリプトファンに快眠の効果があるといわれているのですが、トリプトファンを飲んでからメラトニンが合成されるまでに10時間以上かかるんです。つまり、寝る前に飲んでも効果はないということ。そのため、最近は朝や毎日飲むことを推奨しているサプリメントがあるものの、実際のところ、普通に食事をしていれば、トリプトファンが不足することはまずないといわれています。
全ての人に関係がある「睡眠」の話題だけに、今後も真偽不明のウワサが世間を賑わせそう。しかし、そういったものに踊らされず、医師からの正しい情報を得ることを心がけていくべきだろう。
(取材・文=千葉こころ)

フランスではスーパーマーケットでも売られているほど一般的で、2017年には初の日本製カップも登場。生理用品を買えないケニアの貧困女子学生も、国際NPOから月経カップの寄付を受けて通学が可能になるなど、最新の生理用品として、国際的に支持を広げています。




