春の訪れを感じる今日このごろ、軽やかなファッションを楽しめる季節になったが、どうにも気になるのが自分の体形。K-POPアイドルのような美脚だったらいいのに……と考えてしまう季節でもある。そんな乙女心を知ってか知らずか、ふくらはぎを細くする“ふくらはぎ退縮法(NICR)”という美容整形手術があるのを、ご存じだろうか?
■ラジオ波で筋肉の神経を遮断
「ふくらはぎ退縮法の正式名称は『Non Incisional Calf Reduction(切らないふくらはぎ縮小法)』。2006年に美容整形大国である韓国の医師が考案し、アメリカ形成外科学会で論文発表した、比較的新しいふくらはぎ痩身手術です」
そう話すのは、美容医療に関連する消費者の相談を受けつけるサービス「美容医療相談室」の神谷和宏さん。日本国内では頭文字をとって「NICR」と呼ばれているそう。いったいどのような施術法なのだろうか?
「ラジオ波といわれる電波を利用し、ふくらはぎを細くする痩身手術です。専用機器から放出されたラジオ波によって、ふくらはぎの筋肉の神経伝達を遮断します。神経伝達を遮断され使われなくなった筋肉は徐々に衰えていき、萎縮していく(細くなる)というのが、この施術法の基本的なメカニズムです」
イメージとしては「事故や病気で寝たきりの状態が続くと、筋肉が衰え、細くなっていくのと同じ」とのこと。この「NICR」は国の認可が必要な手術ではなく、専用の医療機器を医師が購入すれば、すぐに施術を始めることができるという。
「NICRは、これまでふくらはぎの痩身で行われてきた『脂肪吸引』や『ボトックス注射』、『切開式神経遮断術式』に比べると、身体的な負担が少ないことや、術後の持続期間の長さなどから、優れた方法だといわれています。しかし、副作用のリスクや危険性を指摘する医師もいるので、現在のところ、主流のふくらはぎ痩身術とはいえません」
“優れている”とされている一方で、リスクがゼロというわけではない、と神谷さん。では、どのようなリスクが考えられるのだろうか?
「まず、神経麻痺による歩行障害(運動能力低下・機能障害など)が生じる可能性を指摘する声があります。実際、韓国では『術後の左右差』や『痛み』『ふくらはぎの陥没』などの副作用を訴える医療事故訴訟も起きていますね。ちなみに、これらの訴訟は、被害者団体側が勝訴しています」
確かに、意図的に神経を遮断させて「事故や病気で寝たきり同様の状態」にすることから、何かしらの支障が出てきそうなもの。NICRは体への負担が少ないとはいえ、将来的なリスクはついて回るようだ。
「国の認可は必要ありませんが、施術者の経験値や習熟度にも差があるため、どこのクリニック・医師でも同じレベルの施術ができるわけではありません。そのため、クリニックを選ぶ際は、時間をかけて慎重に検討する必要があります」
また、ほかにも、クリニックをじっくり選ばなければならない理由があるという。
「美容外科業界には医師側があまり施術のリスクを説明しない、という特徴があります。美容外科は、いわゆる一般的な医療よりも商売に近い面があるので、患者さんが手術をあきらめてしまうようなリスクは説明せず、メリット部分だけにフォーカスして伝える医師もいます。誠実にリスクの説明をきちんとしたうえで、よい医療を提供する医師もいますが、美容外科医は技術レベルだけでなく、医師としての倫理観にも非常にバラつきがあります。なかには、契約成立に持っていくのが得意な半面、技術的には疑問を感じる医師がいるのも事実です」
神谷さんは「もちろん、業界全体の課題ではあるが、手術を受ける側も注意を払わなければならない」と話す。NICRに限らず、どんな施術でも聞こえのいい言葉だけで手術を勧める医師には注意が必要。春だから脚を見せたい――なんて軽い気持ちで手術を受けたら、取り返しのつかないことになるかもしれない。
(真島加代/清談社)
・神谷和宏(かみや・かずひろ)
株式会社ととっぷ・代表取締役。「美容医療相談室」を運営し、電話やメールで美容整形・美容医療に不安を持つ人々からの相談を受ける。医師やクリニックと連携し、論文や訴訟問題などのエビデンスをもとに情報提供している。
女たちの悩みのタネである“むくみ”。「夕方になると脚がパンパンでつらい」「どんなに化粧を頑張っても、パンパンの顔せいで全て台無し」など、誰もがむくみに苦い思いをさせられた経験があるのではないだろうか。