何かを食べたら味がする……その当たり前の感覚が得られなくなる疾患「味覚障害」をご存じだろうか? これまで、中高年や高齢者に多いとされてきたが、最近では若年層にも増えつつあるといい、特に料理などで味覚を使う機会が多い女性は、症状に気がつきやすいといわれている。味覚障害の症状や発症の原因、そしてそのリスクについて、専門医に聞いた。
■味がしない、甘い物を苦く感じる……味覚障害の症状とは
「味覚障害の代表的な症状は、食べたものの味がわからない、薄味に感じてしまうなどの『量的障害』と、本来甘いはずのものを苦く感じてしまう、何も食べていないのに口の中が苦いなどの『質的障害』の2つに分けられます」
そう話すのは、兵庫医科大学病院で味覚外来を担当する任智美医師。そのほかにも、塩味や甘味など、ひとつの味を強く感じてしまう「味覚過敏」や、何を食べても嫌な味に感じる「悪味症」など、さまざまな症状があるとのこと。
「味覚障害になると、食事の内容や日常生活にも悪影響が表れます。味がわからなくなる量的障害の人は、鈍くなった味覚を補うために塩分や糖分を余計に加えて、味を濃くする傾向があります。それによって、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす恐れがあるんです」
一方、何を食べてもまずいと感じる質的障害の人は、食事を苦痛に感じてしまい、食欲が減退することでうつ症状につながることもあるそう。味覚だけの問題でなく、心身の健康に深くかかわってしまうようだ。
「味覚障害は、これまで中高年から高齢者の女性に多い病気でした。しかし、この数年で、20〜30代の味覚障害患者も増加しているんです。中には、自分の味覚障害に気がついていない人も多くいると考えられています」
女性に多い理由は、料理をする機会が多く、味の変化を感じやすい環境にあるから、とのこと。実際には、性差はあまり関係なく、誰しも発症する可能性があるが、その原因は多岐にわたるという。
発症の原因の多くは、舌の表面にある「味蕾(みらい)」という器官に関係している、と任先生。
「私たちは、舌にある味蕾を介して大脳の味覚野に味物質を伝えることで、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味という5つの味を認識します。しかし、何らかの原因によって、味が伝わるプロセスが妨げられると、味覚が異常を来してしまうのです」
味覚障害発症の原因はさまざま。そのひとつとして挙げられるのが、血液中の亜鉛不足だ。
「『亜鉛』は、味蕾の中にある味細胞が、正常に働くために必要な栄養素です。偏った食生活を送り、血液中の亜鉛が不足すると、味を感じることができなくなります。亜鉛はカキなどの魚介類に多く含まれているのですが、食生活の欧米化によって肉を食べる量が増えたり、魚介類を食べる機会が減ったことも原因のひとつとして考えられています」
また、30〜40代の女性に多いのが、ダイエットによって引き起こされる味覚障害。肉類に含まれる動物性タンパク質には、亜鉛の吸収をサポートする働きがあるにもかかわらず、ダイエットと称して肉を食べなくなると、結果的に亜鉛が不足する原因になるとのこと。また加工食品ばかりを摂るなどの偏った食生活も、亜鉛を含めた栄養バランスを崩す原因となり、味覚障害を引き起こすこともあるという。
「そのほかにも、服用している薬の副作用で亜鉛が体外に出やすくなったり、加齢によって消化吸収の機能が衰えて亜鉛が体に吸収されにくくなるなど、亜鉛が不足する理由もさまざまです。鉄やビタミン不足による貧血や胃腸炎などの消化器疾患の症状のひとつとして味覚障害が表れることもあるので注意が必要です」
そして、正常な味が感じられない場合は、ストレスやうつ病などの心因性の味覚障害である可能性も。一口に味覚障害といっても、原因の特定が難しい病なのだ。
■まずは亜鉛の摂取から! 味覚障害の治療法
味覚の低下や変化は、徐々に進行していくケースが多く、自覚しにくいのも特徴だ。そのため、任先生のもとを訪れる患者の中には、家族に“料理の味の変化”を指摘されて発覚するケースが多々あるという。そこで「ひょっとして、自分も味覚障害かも?」と感じている人は、まず以下の項目を確認してみよう。
1:水1リットルに対し小さじ1/2の割合で食塩を入れた塩水10ccを口に含んだときに、塩味をまったく感じない
2:水1リットルに対し小さじ1杯の割合でグラニュー糖を入れた砂糖水10ccを口に含んだときに、甘味をまったく感じない
3:本来の味とは違う味がしてしまう(甘味→苦味など)
4:何も食べていないのに口の中が苦い
5:塩味だけがきつく感じる
「この項目にどれかひとつでも当てはまったら、味覚障害の可能性があります。まずは亜鉛を摂ることを心がけ、牡蠣、うなぎ、牛肉、ごま、大豆やアーモンドなどの食品を積極的に食べたり、サプリメントで亜鉛を補うことをお勧めします」
ただし、サプリメントの場合は、摂りすぎには注意が必要。亜鉛を過剰に摂ると、貧血や免疫力の低下などの“過剰症”に陥ることもあるので、用量を守って飲むように心がけよう。
「原因が亜鉛不足の場合は、若い人であれば食生活を変えるだけでも味覚機能が改善されます。しかし、1カ月ほど意識的に亜鉛を摂っていても味覚に異常を感じるようであれば、ほかの原因が考えられます。その際は、味覚外来を掲げている耳鼻咽喉科や歯科などの医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けてください」
味覚障害は生活習慣病の原因となるなど、さまざまなリスクも抱えているが、何より食事をおいしくないと感じるのはツラいこと。普段、あまり“味”を意識していない人も、健康を維持するために自分の味覚を見直してみるといいかもしれない。
(真島加代/清談社)
任智美(にん・ともみ)
兵庫医科大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師。現在の日本では数少ない味覚外来を担当し、年間約200人の味覚障害患者を診察。味覚障害に関する論文も多数発表している。

「便秘を解消したい」「少しでも痩せたい」――こう願って“下剤”を服用する女性は、少なくないのかもしれない。中には毎日大量の下剤を服用する“下剤依存”の女性もいるというが、医療関係者などからは、危険性を指摘する声が上がり、依存状態の当事者からも「できればやめたい」といった悲痛な声が漏れているようだ。下剤依存の女性の実態、また下剤に頼らず生きることはできるのか? 『自律神経を整える最高の食事術』(宝島社)の著者で、大学病院として日本で初めて便秘外来を開設した、順天堂大学医学部付属 順天堂医院の教授・小林弘幸先生に話を伺った。
「月2回は髪を洗って下さい」「夏の髪洗いは5日に1度!」――先日、ネット上で昔のシャンプー広告に記載された洗髪頻度が話題となった。その広告によると、約90年前(昭和初期)の洗髪頻度は月に1回、約50年前でも5日に1回程度で、“毎日シャンプー”が浸透し始めたのはたかだか40年前らしいのだ。