「洗顔ブラシ」「ニキビパッチ」で逆に悪化!?  形成外科医・上原恵理医師が「ニキビケア」を斬る

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。

 自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第1回目は「育乳」、第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」、第3回目は「拭き取りメイク落とし」、第4回目は「ヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタなど保湿成分を配合したスキンケアコスメ」についてうかがった。最終回となる今回は、「ニキビ」に関する正しい知識についてお聞きする。

ニキビは病気でありケガ! 正しい治療法とは

――年齢が上がるにつれ、ニキビの発症する場所が変わってきた気がします。また、「10代は“ニキビ”、それ以降は“吹き出物”」と呼び名が違いますが、ニキビと吹き出物は別物なんですか?

上原恵理先生(以下、上原) 慣用句的に言っているだけで、何も違わない。そもそも、ニキビとは、おでこや鼻にかけてのTゾーン、口元や顎、フェイスラインのUゾーンにできる発疹のこと。思春期はTゾーン、大人になるとUゾーンを中心に発症することが多いので、発症部分は異なります。

 ニキビの直接的な原因は、皮脂の過剰分泌によって引き起こされる毛穴の詰まりです。Tゾーンは成長期のため皮脂が過剰分泌し、Uゾーンは男性ホルモンが優位な状態になり、皮脂が過剰分泌され、それぞれニキビの原因につながります。女性でもストレスや睡眠不足、不規則な生活などによって、ホルモンバランスが崩れると、男性ホルモンが普段より多く分泌されてしまいます。社会人として働く中で、いろいろな負担が肌に影響しているのかもしれません。

――ニキビ用のスキンケアコスメは、デパートやドラッグストアで販売されています。ニキビが発症すると、まずこのような商品を手に取る人が多いと思うのでが、いかがでしょうか。

上原 ニキビは病気! 医薬品でもない、市販のニキビ用スキンケアコスメは意味がありません。きちんと治したいなら、あれこれ市販の商品にお金を使う前に、保険診療が受けられる皮膚科医に行くことをオススメします。皮膚科では、ニキビ治療のガイドラインが決まっていて、さまざまな薬をニキビの状態から処方してくれます。過去のビッグデータをもとに、安全かつ早く治る方法を集めて作られたガイドラインに沿って「この薬がダメならこの薬」というように経過を見ながら、適切な治療を進めていくわけです。なので、ドラッグストアでひとりアレコレ悩むくらいなら、皮膚科に行った方が確実かつ安価に治療できる。日本人はニキビを“青春のシンボル”として捉えがちですが、“病気”であり“ケガ”であるということを認識してほしいですね。

――保険診療の皮膚科にニキビでかかると、「あまり話を聞いてくれない」「ちゃんと患部を診てくれない」という声も多いです。

上原 医者はプロなので、パッと見た瞬間に、ニキビの状態から最適な薬まで、すぐにきちんとした診断ができるんです。患者さんとしては、いろいろと患部の状態を説明したいのかもしれませんが、先生がぶっきらぼうでも、ちゃんとわかっていますから安心してください。

――某ニキビケアブランドでは、購入すると“洗顔ブラシ”がセットだったりします。このようなアイテムを使った方が早く治るんですか?

上原 ニキビ肌は非常に敏感なので、ブラシでの洗浄は絶対ダメ! 治るというより、傷口にさらなるダメージを加えているだけ。また、ニキビを潰すことも絶対にやめてください。そこから雑菌が入り、周囲の皮膚組織にまでダメージを与えたり、痕が残ったり、トラブルを大きくする可能性があります。

――ニキビ痕が残ってしまった場合、治すことはできないのでしょうか?

上原 ニキビ痕になってしまったら、美容皮膚科などの治療に頼るしかないです。内服薬やピーリングは効かないので、レーザー治療が必要になります。私も今、フラクショナルレーザーというニキビ痕の治療を繰り返し行っていますが、ダウンタイムを必要としますし、正直心が折れそうになります。ニキビ痕の治療はそれぐらい大変な上に保険適用外なので費用もかさむんです。早い段階で正しい治療を受けておかないと後悔しますよ!

マスクは雑巾と同じぐらい雑菌まみれ

――ニキビを悪化させないために、気を付けた方がいいことを教えてください。

上原 まずは食生活。脂っぽいものや、炭水化物など糖分が多いものは控えた方がいいです。あと、最近はほどよく皮脂を溶かす“ぬるま湯洗顔”も推奨されています。お湯が熱すぎると皮脂を取りすぎてしまい、かえって分泌量が増えてニキビの原因になるんです。また、「洗顔しすぎ、保湿しなすぎ」の人が多いので、ニキビが生じにくい製品である“ノンコメドジェニック製品”で保湿を適切に行いましょう。それから、ニキビがある時は、化粧をしないのがベスト。もし化粧するのであれば“ノンコメドジェニック製品” を薄く塗るぐらいに留めてほしいですね。また、患部にコンシーラーを塗ったり、韓国などではやっているニキビパッチを貼るというのは、毛穴をふさぐ原因になり、悪化させることもあるので控えてください。

――冬は風邪や乾燥対策のためにマスクをする機会が多くなります。マスクが原因でニキビが増えるってことはあるんですか?

上原 マスクが原因でニキビができやすくなるのは本当。マスクが擦れることによって肌に負担がかかりますし、ニキビ以外に肝斑の原因にも。また、マスクは時間がたつと、汚れた雑巾と同じぐらい雑菌まみれになるので、それがニキビの傷口に入り込むという危険性があります。マスクを着用するなら、こまめに取り換えることを心掛けてほしいですし、1度使った物を使い回すなんてもってのほかです! 職業柄、マスクを使用していますが、1日に5枚以上取り換えていますよ。

――ポリウレタン製のカラフルなマスクが流行していますが、こちらは繰り返し洗濯して使用できるようです。それでも不衛生なのでしょうか。

上原 我々が手術で使用する衣服や器具は、200度くらいで加熱し、特殊な機械を用いて殺菌、滅菌処理をします。そこまでやらないと殺菌できないので、洗濯したぐらいでは繊維の奥の菌は死にません。また石鹸カスもニキビの原因につながることがあるので、洗濯して再利用するのはやめた方がいいです。使い捨てマスクより高額だからもったいないと思う人もいるのかもしれませんが、肌のことを考えたらオススメできない商品。極論、パンツを顔に乗せるとしたら、新品と使い古しどっちがマシですか? と考えるといいかもしれませんね。

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
Twitter:@dr_uehara
Instagram:スキンケア・痩身専門 @eri.uehara
Instagram:外科専門 @aesthetic_surgeon_dr.uehara

原液100%美容液の99.8%は水!? コラーゲンは塗っても食べても効果ナシ! 上原恵理先生が斬る

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
 自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第1回目は「育乳」、第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」、第3回目は「拭き取りメイク落とし」についてうかがった。4回目となる今回は、ドラッグストアやデパートでもよく見かける、ヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタなど保湿成分を配合したスキンケアコスメにまつわる“真実”についてお聞きした。

ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタの違いとは

――化粧水などを購入する際、ヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタといった言葉をよく見かけます。美肌効果がありそうな成分ですが、実際の効果や違いがいまいちわかりません。

上原恵理先生(以下、上原) ヒアルロン酸もコラーゲンも、肌の張りや弾力を保つ効果がありますが、性質や構造はまったく違います。詳しく説明すると、ヒアルロン酸は水分を含み、水を加えるとゼリー状になる粉ゼラチンのような性質を持っていて、水分を保持して肌の保湿力を高めます。コラーゲンはタンパク質の一種で、細胞が鎖のように連なり、格子状に規則正しく立体的に張り巡らされることから、肌のハリをキープしてくれるんです。たとえるなら、ベッドのスプリングですね。また、プラセンタは動物の胎盤から抽出した成分で、細胞を活性化し代謝を高める効果があると言われています。特定の何かに効くというより、体全体を一段底上げしてくれるような効果があると考えてください。化粧品などに多い豚由来のプラセンタもありますが、一般的なクリニック(医療機関)では、ヒト由来の注射液(ラエンネックorメルスモン)を使用しています。安全性に関しては、厳格な検査を受けていますが、「生物由来製品」には感染症のリスクがあるので、絶対に安全とは言いきれません。

 また、どれも十分な量が存在していれば、赤ちゃんのようにハリのあるみずみずしい肌になりますが、加齢などでヒアルロン酸が減ると肌の水分量が減り、コラーゲンが減ると鎖状の立体構造が破綻して、張りが失われてしまいます。そして、プラセンタは抗酸化作用によって、そうしたコラーゲンのダメージを抑制したり、さまざまな作用があるんです。

――どの成分も美肌に重要ですね。手軽にスキンケアコスメやサプリで補えますか?

上原 残念ながら、無理です。スキンケアコスメに含まれるヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタが肌の奥に浸透することはありません。というのも、皮膚は人間の体を守るバリアの役目をしているので、ウイルスやバクテリアといった微生物や汚れを侵入させないよう、分子量が500~1000以上のものは通さないといわれています。ヒアルロン酸やコラーゲンは分子量が数十万~数百万、プラセンタは数万~数十万と大きいので、どんなに肌の表面から塗り込んでも、角層の奥までは浸透しないんです。

 また、口からこれらの成分を摂った場合ですが、小腸が吸収できる分子量は600、大腸は300くらいなので、せいぜい消化器官で吸収できる“小さい”アミノ酸やブドウ糖に分解されるだけ。ダイレクトに肌へ届くなんて都合のいいことは起こりません。また、コラーゲンの一種で、より分子が細かく、体への吸収性が高いと言われる「コラーゲンペプチド」という成分もありますが、吸収されたペプチドは肌以外にも血液や内臓、髪など全身に行き渡るので、これだけで“美肌”を実感することはまず無理でしょう。効果がほぼないのに、サプリメントや「コラーゲンたっぷり」などと言われるフカヒレに何万円も出すなら、同様に名前が挙がる手羽先など安い食材を食べた方がマシだと思います(笑)。

――では、低分子化させた「ナノヒアルロン酸」や「ナノコラーゲン」であれば、浸透するでしょうか?

上原 確かに、分子量的に通るかもしれませんが、通過したところで、小さいヒアルロン酸やコラーゲンが大きい分子と同様の働きをするかというと、疑わしいです。例えば、ベッド用マットレスのスプリングがへたった時、細かく裁断したスプリングを大量に入れても、弾力性は復活しませんよね。それと同じです。

――結局、スキンケアコスメにヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタが含まれていても無意味なのですか?

上原 蒸発してしまう水分をキープするという意味では、“保湿効果”はありますが、それだけ。「肌の奥に浸透して、肌に存在するコラーゲンやヒアルロン酸を本来の状態に再構築する」と思っている人が多いようですが、それは誤解なので覚えておいてください。また、美容皮膚科でも、肌にヒアルロン酸やコラーゲンを “肌に入れる”というアプローチはせず、医療機器や医薬品を用いて、生成を促進するという治療法を取ります。医療でも、“間接的”にヒアルロン酸やコラーゲンを増やしているのですから、市販の化粧水で効果を得られたとしたら、プラセボ効果でしょう。

――通販などで「原液100%」と書かれた、いかにも効果がありそうな美容液も、意味がないってことなんですね……。

上原 もちろん! 原液をボトルリングしたようなパッケージですが、クリニックが使用する医薬品とはまったくの別物です。

 スキンケア用品は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」により、全成分を配合量の多いものから記載するという決まりになっています。実際に「原液100%」を謳っている商品の成分を見てみると、最初に書かれているのが「水」で、美容成分は全体の“約0.2%”だけってことも。法律上、材料メーカーから出荷された美容成分に、化粧品メーカーや工場が手を加えなければ、比率関係なく「原液100%」と表記しても問題ではないんです。

 ただ、消費者はまさか0.2%しか入っていないなんて思わないでしょう? 「原液100%=プラセンタエキスだけ」と思い購入したとして、99.8%が水でできているって違和感を覚えませんか!? 「100%=効果が高い」というような消費者の思い込みを利用し、法律の網をかいくぐっている製品が許せないですし、私は怒り狂っています!

インフルエンサーは医学の知識がない素人

――最近はインフルエンサーや口コミサイトなど、一般人の感想を参考に商品を選ぶ人も少なくないですよね。今こそ、消費者一人ひとりが正しい知識を持たなければいけないと感じました。

上原 今は正しい情報を探すのが大変なくらい、誤った“美容の常識”で溢れています。例えば、化粧水にせよ乳液にせよ、「濃密な方が効果もある」と思い込んでいる“こってり信仰”も一概には良いとは言えません。実際、“こってり”させる成分が邪魔をして、有効成分が皮膚に浸透しないってこともあるんですよ。

 インフルエンサーは医学の知識がない素人です。彼女たちは、良い製品を見極める知識があるわけでもなく、“仕事”として商品をアピールしているだけなので、そのからくりや危険性に気付いてほしいです。私たち医者は医学部で6年学び、国家資格の医師免許を取得。そして現在でも新しい情報を得るために勉強し続けています。また、クリニックで新商品を導入する際は論文を読み、効果や安全性を確かめているので、インフルエンサーのように根拠のないものは勧めたりしません。ただ、最近はそのような、ステマドクターもいるので……信頼できる医師や正しい美容知識を、消費者自身が見極める力が必要です。

 美容皮膚科・外科に高額なイメージがあって、ハードルが高いと感じるのもわかりますが、カウンセリング時に予算を相談することもできます。月1~2万円代の施術もありますし、効果がわからないデパコスよりよっぽど安上がりなのでは。もうちょっと我々を信用、そして頼ってくれたらうれしいです(笑)。

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
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「温活」「冷え取り」は健康にいい? 内科医が「体温が上昇」「体調不良が治る」と言えないワケ

 寒い季節になると、毎年のように「温活」「冷え取り」が注目される。「冷えは万病のもと」と言われるだけに、靴下を重ね履きしたり、腹巻を着用するほか、体が温まるとされる食べ物や飲み物を積極的に摂るように心がけているという人も少なくないのではないだろうか。しかし、こうした「温活」「冷え取り」には懐疑的な声が聞かれることもある。

 1月9日、気象サイト「ウェザーニュース」が、「インフルエンザやノロウイルスを“腹巻”で防ぐ」という記事を配信したところ、一部ネット上で「あり得ない」との声が噴出。なんでも「腸内の温度が36℃を下回ると免疫細胞などの働きが低下して、感染症にかかりやすくなってしまいます」として、腹巻を推奨しているのだが、「腹巻を巻いていたけどインフルにかかったことがある」「腹巻で防げたら病院はいらない」などと反論が飛び交ったのだ。

 果たして、「温活」「冷え取り」をめぐる世間の反応は、医師の目にはどう映っているのだろうか。今回、日本医師会認定産業医/内科医・星野優氏にお話を聞いた。

リラックスはできるが、病気は治らない!?

――「冷えは万病のもと」という説は本当なのでしょうか。

星野優氏(以下、星野) 「おなかを冷やすと風邪をひきやすい」「冷え性は女性に多い」などは、昔からの言い伝えのようなもので、皆さん一度は聞いたことがあると思います。どちらかと言うと、これらの「冷え」は東洋医学的な考えによるものであり、病院などで測定した場合の「体温が低い」ということとは、別ものなのです。漢方医学では、体の冷えによって自律神経が乱れ、体調不良になるというふうに考えられています。

――では、「冷え取り」「温活」で体の不調が改善されるということはあるのでしょうか。

星野 西洋医学的な考えからすると、「温活」「冷え取り」などで体調が良くなるとは言えません。ただし、ストレッチやウォーキングなど、体を動かすことが健康に良いとされているように、寒い中動かない状態でいると代謝が落ち、肩こりなどが悪化することは考えられます。

――「冷え取り」「温活」で有名なのは、「靴下の重ね履きや腹巻」「入浴(岩盤浴)」「よもぎ蒸し」「運動」「食事」「漢方」などですが、これらを実践することにより、体温が上がり、それで体調不良が改善したり、中には病気が治ると思っている人は少なくないと思います。

星野 そもそも、西洋医学と東洋医学では、人間の臓器や病気への考えが非常に異なるのです。日本には「頭寒足熱(頭部を冷やし、足部を暖かくすること。健康に良いとされる)」という言葉がありますが、確かに半身浴や足浴などによって「リラックスできる」ことはあると思うものの、それで「病気が治る」ということではないですね。

――体温の数値が目に見えて上昇するのは、例えばインフルエンザにかかったときです。

星野 インフルエンザなどの感染症によって発熱する機序としては、体を守る免疫細胞などが刺激され、体全体に炎症を引き起こす指令が脳から下されるためと言われています。高温になることで、感染物質などの繁殖を抑えようとしているという説が有名ですね。しかし、通常の状態で着込んだり、入浴しただけでそこまで高熱になるわけもなく、やはりリラックスしやすくするだけではないかと感じます。

――腹巻を着用すると、インフルエンザやノロウイルス予防に効果的と言われているのですが、どう思われますか。

星野 冒頭でも述べた通り、「おなかを冷やすと風邪をひきやすい」というのは、多くの方が小さい時から言われていることでしょう。これは、日中と比べ、深い睡眠時は基本的に代謝が低下し体温も下がることから、「(おなかだけに限らず)夜間寒い状態が続くと、単純に風邪などをひきやすくなる」というだけの話ではないかと思われます。腹巻をすることで、夜間の体温低下は少し避けられるかもしれませんが、感染力の強いインフルエンザやノロウイルスを予防できるということは「ない」と考えます。

 インフルエンザ、ノロウイルスは、基本的にはウイルス感染症なので、通常の風邪と同様にきちんとした手洗い、うがいが有効です。インフルエンザは、やはりインフルエンザワクチンが予防としては最も効果的。もちろん100%防げるわけではないですが、インフルエンザ脳炎などの超重症化は有意に回避できると言われており、特に禁忌な理由がなければ、ワクチン接種はぜひお受けいただいた方が良いと思います。一方でノロウイルスについては、よく知られているように、カキなどの二枚貝を避けることくらいで、たまたま家族などから移ってしまった場合は、致し方ないとも言えますね。なお、どちらも脱水になりやすいので、もしかかってしまった場合は、スポーツ飲料など、適切に水分と塩分をとり、十分休息することが一番です。

「温活」「冷え取り」は健康にいい? 内科医が「体温が上昇」「体調不良が治る」と言えないワケ

 寒い季節になると、毎年のように「温活」「冷え取り」が注目される。「冷えは万病のもと」と言われるだけに、靴下を重ね履きしたり、腹巻を着用するほか、体が温まるとされる食べ物や飲み物を積極的に摂るように心がけているという人も少なくないのではないだろうか。しかし、こうした「温活」「冷え取り」には懐疑的な声が聞かれることもある。

 1月9日、気象サイト「ウェザーニュース」が、「インフルエンザやノロウイルスを“腹巻”で防ぐ」という記事を配信したところ、一部ネット上で「あり得ない」との声が噴出。なんでも「腸内の温度が36℃を下回ると免疫細胞などの働きが低下して、感染症にかかりやすくなってしまいます」として、腹巻を推奨しているのだが、「腹巻を巻いていたけどインフルにかかったことがある」「腹巻で防げたら病院はいらない」などと反論が飛び交ったのだ。

 果たして、「温活」「冷え取り」をめぐる世間の反応は、医師の目にはどう映っているのだろうか。今回、日本医師会認定産業医/内科医・星野優氏にお話を聞いた。

リラックスはできるが、病気は治らない!?

――「冷えは万病のもと」という説は本当なのでしょうか。

星野優氏(以下、星野) 「おなかを冷やすと風邪をひきやすい」「冷え性は女性に多い」などは、昔からの言い伝えのようなもので、皆さん一度は聞いたことがあると思います。どちらかと言うと、これらの「冷え」は東洋医学的な考えによるものであり、病院などで測定した場合の「体温が低い」ということとは、別ものなのです。漢方医学では、体の冷えによって自律神経が乱れ、体調不良になるというふうに考えられています。

――では、「冷え取り」「温活」で体の不調が改善されるということはあるのでしょうか。

星野 西洋医学的な考えからすると、「温活」「冷え取り」などで体調が良くなるとは言えません。ただし、ストレッチやウォーキングなど、体を動かすことが健康に良いとされているように、寒い中動かない状態でいると代謝が落ち、肩こりなどが悪化することは考えられます。

――「冷え取り」「温活」で有名なのは、「靴下の重ね履きや腹巻」「入浴(岩盤浴)」「よもぎ蒸し」「運動」「食事」「漢方」などですが、これらを実践することにより、体温が上がり、それで体調不良が改善したり、中には病気が治ると思っている人は少なくないと思います。

星野 そもそも、西洋医学と東洋医学では、人間の臓器や病気への考えが非常に異なるのです。日本には「頭寒足熱(頭部を冷やし、足部を暖かくすること。健康に良いとされる)」という言葉がありますが、確かに半身浴や足浴などによって「リラックスできる」ことはあると思うものの、それで「病気が治る」ということではないですね。

――体温の数値が目に見えて上昇するのは、例えばインフルエンザにかかったときです。

星野 インフルエンザなどの感染症によって発熱する機序としては、体を守る免疫細胞などが刺激され、体全体に炎症を引き起こす指令が脳から下されるためと言われています。高温になることで、感染物質などの繁殖を抑えようとしているという説が有名ですね。しかし、通常の状態で着込んだり、入浴しただけでそこまで高熱になるわけもなく、やはりリラックスしやすくするだけではないかと感じます。

――腹巻を着用すると、インフルエンザやノロウイルス予防に効果的と言われているのですが、どう思われますか。

星野 冒頭でも述べた通り、「おなかを冷やすと風邪をひきやすい」というのは、多くの方が小さい時から言われていることでしょう。これは、日中と比べ、深い睡眠時は基本的に代謝が低下し体温も下がることから、「(おなかだけに限らず)夜間寒い状態が続くと、単純に風邪などをひきやすくなる」というだけの話ではないかと思われます。腹巻をすることで、夜間の体温低下は少し避けられるかもしれませんが、感染力の強いインフルエンザやノロウイルスを予防できるということは「ない」と考えます。

 インフルエンザ、ノロウイルスは、基本的にはウイルス感染症なので、通常の風邪と同様にきちんとした手洗い、うがいが有効です。インフルエンザは、やはりインフルエンザワクチンが予防としては最も効果的。もちろん100%防げるわけではないですが、インフルエンザ脳炎などの超重症化は有意に回避できると言われており、特に禁忌な理由がなければ、ワクチン接種はぜひお受けいただいた方が良いと思います。一方でノロウイルスについては、よく知られているように、カキなどの二枚貝を避けることくらいで、たまたま家族などから移ってしまった場合は、致し方ないとも言えますね。なお、どちらも脱水になりやすいので、もしかかってしまった場合は、スポーツ飲料など、適切に水分と塩分をとり、十分休息することが一番です。

「拭き取りメイク落とし」は“たわし”で肌を擦っているも同然! 上原恵理先生がズバリ斬る

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第1回目は「育乳」、第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」についてうかがったが、第3回目となる今回は、忙しい女性の味方「拭き取りメイク落とし」について。一体、こちらのスキンケアに落とし穴はあるのか!?

拭き取りメイク落としは非常時以外使っちゃダメ!

――「拭き取りメイク落とし」は、忙しい女性にとって、手軽で人気のクレンジング方法ですよね。

上原恵理先生(以下、上原) 「拭き取り式メイク落とし」は、シートで擦ることになるので、肌に負担となります。肌への刺激はシミやたるみの原因になりますから、ひとつもいいことナシ。シートの繊維が肌への刺激になって、たわしやヘチマで擦っているようなものです。拭き取り式メイク落としは、水を使用できない時や、災害時など緊急時用ぐらいに考えてください。ちなみに、一番のおすすめのクレンジング方法は、泡タイプの商品。肌に乗せて、こすらずに済むという優れものです。肌への“刺激”や“摩擦”に気を使うなら、「拭き取り」なんてもってのほかですね。

 また、美肌を第一に考えるなら、一切“日光に当たらず”、“触れず”、“動かさない”。これで、生まれたての赤ちゃんの肌を保てますが、それは不可能なので、日焼け止めを塗り、肌を擦らないようにスキンケアやメイクをするしかないんです。食事や会話など、日常生活で顔面を動かすのは仕方がないけれど、マッサージなどダメージを蓄積させないようにすることが、美肌を維持する基本。

――メイク落としの成分に含まれる「界面活性剤」も気になるところです。こちらも肌への負担につながるのでしょうか。

上原 界面活性剤は水分と油分を混ざりやすくし、メイクの汚れを浮かせて落とす役割を担っているので一概に悪いとは言えません。詳しく説明すると、界面活性剤には水になじみやすい親水基と、油になじみやすい疎水基という部分があり、その疎水基が油分(皮脂やメイク)と結合して汚れが落ちるのです。ただ、必要以上に皮脂を落としすぎてしまう可能性もあるので、しっかりと保湿するなどケアを行ってください。

――スクラブタイプの角質を落とす洗顔料なども、多く販売されていますが。

上原 そういう商品も、顔に使うのはオススメしない。そもそも、肌は一定のサイクルで生まれ変わるもの。これをターンオーバーというのですが、通常の洗顔だけで、古い角質は自然にはがれ落ちていきます。反対に必要な角質まで落とすと、乾燥を招くことも。ただ、ニキビができやすい人や、肌がゴワゴワしている人は、“過角化”といって、角質が厚くなりすぎていることがあるので、その場合は、美容皮膚科・皮膚科などでピーリングなどを行い、角質のバランスを整えて、ほどよい薄さにしてあげることが必要です。

――一般的にコットンを使って化粧水を塗ること勧められています。こちらも肌への刺激になるのでしょうか。

上原 “擦らず”に、滑らす感じやプレスするのであれば、いいと思います。ただ、パッティングも刺激になるので、あくまでも優しく抑えるように。私は「コットンに化粧水を吸い取られるのは、もったいない!」って思ってしまうので、使いませんけど(笑)。

――肌をこすると、色素沈着のリスクが高いとよく聞きます。そんなことで色素沈着が起こるのでしょうか? また消すことはどれぐらい難しいのでしょうか。

上原 バリバリ起こります! 年単位、そして美容医療は自費なので万単位と、高額になったり大変です。

――とにかく“擦らない”ことが重要なんですね。化粧水の塗り方によって、効果が変わることはありますか?

上原 油分が多いものは、手のひらの熱で少し温めて塗ってみてください。バターは硬いままより溶かした方が馴染みますよね。それと同じで、溶かすことで均等に肌に塗ることができます。――基礎化粧品の使用方法で、肌は良くも悪くもなるんですね。ドラッグストアやデパート、皮膚科などさまざまな場所で、数多くの基礎化粧品が販売されていますが、違いがわかりません。

上原 まず、商品に記載されている分類表記を確認してください。一般的なスキンケア用品は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」により、「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」のどれかに分類されています。有効成分や効果・効能の強さが異なり、「化粧品」は効果効能が一番弱く、簡単に言えば乾燥を防げる程度。そこにちょっぴり有効成分が入ったものが「医薬部外品」です。最も効果の高い「医薬品」は医療機関でしか手に入りません。市販の商品で、効果がほしいのであれば、「医薬部外品」と表記されているものをオススメします。

 あとは、パッケージに書かれているヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタなど“肌に良さそうな成分”に騙されないこと。次回詳しくお話しますが、ヒアルロン酸などの分子量は大きいから、肌の奥深くまで浸透することはない。保湿効果はあるものの、ハリツヤが生まれることはありません。

 スキンケアはとにかく優しく、擦らずに医学的根拠が証明された化粧品を塗ること! マッサージ器具でコロコロしたりしちゃダメ! 擦るのはかかとだけにしてください(笑)。

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
Twitter:@dr_uehara
Instagram:スキンケア・痩身専門 @eri.uehara
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小顔、鼻が高くなるマッサージで肌ボロボロ!? 上原恵理先生が斬る【その美容法は意味がない!】

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」について。果たして、これらの美容法に意味はあるのか!?

第1回:形成外科医・上原恵理医師が「おっぱい」のウワサをジャッジ!【その美容法は意味がない!】)

軟骨矯正で鼻は本当に高くなる?

――鼻をつまんだり、マッサージやノーズクリップ、あるいは鼻の骨を叩くと、鼻が高くなるというウワサを雑誌やインターネットでよく見かけるのですが、この方法で本当に高くなりますか?

上原恵理先生(以下、上原) そんなんで、高くなるわけないでしょ(笑)! 私たち医師は手術をする時にノミをハンマーで叩いて削るくらい、鼻の骨は硬いんです。指で押したり叩いたりしたくらいで、どうにかなるはずがない。むしろ、マッサージなど刺激を与えることで、鼻が高くなるより前に、肌が摩擦や衝撃でボロボロになるでしょうね。

――「鼻の軟骨は、一生成長し続けるため、セルフケアによっては美容整形なしで高くなる」といったネットの記事は真っ赤なウソなんですね……。

上原 ウソなので、鵜呑みにしない方がいい。鼻の軟骨組織は、成長とともに完全な骨になっていきます。成長途中の赤ちゃんや小さな子どもであれば、まだ骨が固まりきっていないので、クリップなどで挟み続けることで“多少”形が変わることはあるかもしれませんね。ただ、大人になってから、鼻の形が変わるなんてことはあり得ない。

 少し話はそれますが、頭蓋骨っていくつもの骨がつなぎ合わさっていて、赤ちゃんのうち“だけ”は柔らかく隙間があるんです。なので、頭の形が“絶壁”の赤ちゃんを、ドーナツ型の枕で寝かせることや、ヘルメットをかぶらせて、頭の形を丸く整えるということは一般的に行われています。しかし、大人の頭蓋骨はもう完成されており、隙間はないので、そのような治療をしても、頭の形は変えられません。鼻もそれと同じです。

――では、鼻を高くしたい場合は、どうすればいいでしょうか?

上原 ヒアルロン酸を入れるとかぐらいですかね。高い理想を持ちすぎず、ある程度の高さで我慢してください。

――では「小顔」はどうなんでしょうか。「頭蓋骨の歪みを整えて小顔にする」と謳った美容サロンなどが、ちまたに溢れています。

上原 それも大ウソ。小顔にする施術は、骨をノコギリで切って取り出して、最後はネジで留めるという大掛かりな手術なんです。そこまでする必要があるのに、指で押したくらいで簡単に動いたらビックリ! 実際、2016年6月30日に頭蓋骨の矯正で小顔になり、効果が持続するかのような広告を掲載した9業者に対して、消費者庁が「根拠がない」とし、景品表示法違反(優良誤認表示)で措置命令を下しています。つまり、効果はないということです。

――小顔矯正にかけた時間とお金はムダっていうことですね……。そのほかに、マッサージで血流を良くし、顔のむくみを解消することで小顔になるといった方法もよく見かけますが。

上原 確かに、マッサージ直後から数時間は、むくみは取れるし、肌の張りが良くなることも。でも、そもそも肌をこするのがNG! こすること、つまり刺激を与えてしまうと、シミやくすみ、シワ、たるみの原因になるんです。「こすらない」はスキンケアの基本中の基本。洗顔もメイクも、とにかくこすっちゃダメ。だから、マッサージなんてもってのほか!

――「小顔マッサージ」は女性誌のテッパンネタですよね。「マッサージで血行を良くしてからメイク」なんて言葉がかなりの頻度で出てきますし、「美肌=マッサージ」というイメージを持っている女性も多いかもしれません。

上原 「マッサージはダメ」「こすらない」などSNSに投稿するたびに、全国から絶望の声が寄せられるのですが、そのような雑誌のせいでしょうね。まぁ、花嫁さんが結婚式の“その時だけ”キレイな姿を求めるといった場合には、血行を良くするマッサージぐらいは良いと思います。ただ、毎日続けていたら、刺激がどんどん蓄積されて、10年20年あとにはシミとたるみだらけになってしまいます。雑誌は“今”が良くなる方法を取り上げているだけで、“未来”のことには触れていない。シミやたるみがなく、そんな悩みを抱えていないティーン向けの雑誌であれば、「ほら、むくみが取れて小顔になった!」というアドバイスを伝えるのもありなんでしょうけど、「その方法は間違ってる! 将来、困るわよ」って指摘したい(笑)。

――それにしても、モデルやテレビに出ている芸能人って本当に小顔です。少しでも近づく方法はないのでしょうか。

上原 芸能人の顔の小ささは生まれつき。先日、テレビ番組の収録にお呼びいただいて、芸能人を生で拝見したのですが「この方たちは人種が違う……」って思いました。それぐらい小顔なので、一般人が頑張って目指せるレベルじゃない。目指す方が失礼という感じなので、あきらめろと言いたいです。自分の目指せる範囲の小顔で満足してください。

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)をはじめ多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
Twitter:@dr_uehara
Instagram:スキンケア・痩身専門 @eri.uehara
Instagram:外科専門 @aesthetic_surgeon_dr.uehara

生理前だけ“うつ病”に!?  PMSより強いイライラや情緒不安定を招く“PMDD”とは

 生理前に、心身の不調に悩む女性は少なくない。胸が張る、過度の眠気、肌荒れ、食欲が増す、便秘、集中力低下、イライラする、無気力感といった症状をもたらす「PMS(月経前症候群)」はよく知られているが、PMSより精神的症状の深刻度合いが大きいとされる「PMDD(月経前不快気分障害)」という疾患をご存じだろうか。 PMSと比較して認知度が低く、またPMSと勘違いされることもよくあるというPMDD。そこで今回、その実態を探るべく『月経の前だけうつ病になってしまう女性たち―PMDD(月経前不快気分障害)を治す』(講談社)『月経前不快気分障害(PMDD)』(星和書店)などの著者である東北医科薬科大学・山田和男病院教授に、PMDDの症状や治療法についてうかがった。

PMDDは“うつ病”の一種!? PMSとの違い

――「PMDD(月経前不快気分障害)」とは一体なんでしょうか。

山田和男医師(以下、山田) 一言で表すと「月経の前ごとに(非定型)うつ病を呈する疾患」です。医学的にうつ病の一種だと考えられており、具体的には生理前の7~10日間程度、過食と過眠、全ての物事がつまらなく感じる、絶望的な気持ちになる、自己卑下、強度の不安やイライラ、情緒不安定といった抑うつ症状が続きます。また、否定的なことを言われると涙を流してしまったり、些細なことでもカッとなって、職場や家庭で口論をしてしまうことも。さらに、疲れやすく集中力がないといったうつ病によくある病状が出る方もいますね。

――PMSにも精神症状がありますが、PMDDと明確な違いはあるのですか。

山田 確かに、PMSとPMDD は似た症状ですが、精神医学の診断上、別の疾患なんです。PMSは体の不調が中心で、PMDDは精神的な症状が強く現れます。PMDDはすでに、アメリカなどの海外で、うつ病の一種として認知度が上昇しているものの、日本ではあまりなじみがないため、PMSとPMDDを混同する臨床医が多いのが実情です。

 PMSにはないPMDDの特徴を見ていくと、PMDDは生理前の7~10日間ぐらい“だけ”、抑うつ気分がうつ病に匹敵するほど重症化し、“社会的機能”がガクッと落ちます。具体的には「学校や仕事を欠席せざるを得ない精神状態になる」「仕事の効率が著しく下がる」「周囲の人間と口論になる」「子どもを言葉の暴力で傷つけてしまう」など、つまり日常生活に支障を来すほどの症状であれば、PMDDの疑いがあります。自身でコントロールできる程度のイライラであればPMSだと考えられるでしょう。

 また、うつ病と比較すると、うつ病の場合は、上記のような症状などが2週間以上続きますが、PMDDの場合は生理が来ると必ず消えます。ほとんどの患者が月経の1~2日目に精神症状がなくなりますね。そして、また生理の7~10日前ぐらいに病的な不安や抑うつ気分になり、それが月経周期に沿って繰り返されるわけです。

――PMDDを発症する誘因はわかっているんですか。

山田 何らかのライフイベントを契機に発症することが多いと言われています。実際に診察していると、20代以降の人に多く、就職や転勤、結婚、出産、介護など大きなライフイベントと密接に関係していることがわかっています。

――PMDDをセルフケアする方法があったら教えてください。

山田 精神疾患なので、自身でケアするのはちょっと難しいですね。強いて言えば、エアロビクスのような有酸素運動などをすると症状が少し軽くなる人もいますが、PMDDを専門とする精神科医を受診することが最善策と言えます。

 実際に、「PMDDなのでは?」と来院する人のうち、1~2割程度はPMSで、PMDDの診断基準を満たす人は3~4割ほど。残りの4~5割は2年以上軽いうつ状態がダラダラと続く「持続性抑うつ障害」など何かしら別の精神疾患を抱えているんです。生理が終わった後も精神症状が残っていれば、PMDDではなく持続性抑うつ障害や何らかの精神疾患かもしれません。

――PMSとPMDD、持続性抑うつ障害の治療法は違うのでしょうか。

山田 そうですね。それぞれの疾患に適した治療法があるので、まずは根底に精神疾患がないかをきちんと調べることが重要。PMSの場合は、生活のリズムを整え、漢方薬を用いることで改善する人が多いです。PMSに対して、PMDDの治療薬を使うのは過剰医療になりますし、持続性抑うつ障害とPMDDの治療法も異なるので、正しい診断をしないと明後日の方向の治療になってしまいます。

 ただ、持続性抑うつ障害は「病院で診てもらおうかな……」と思うほど、ひどい症状が出ないことが多いので、自覚している人が少ない。そのような精神状態にPMSが加わると、「生理前にだけ症状が悪化している」と錯覚し、それをPMDDのように感じることもあります。反対にうつ病の治療中、うつ病自体は良くなっているものの、PMSだけ残っていると生理前だけ悪化しているように感じて、それをPMDDだと勘違いする人も。最善の治療法を見つけるためにも、その人がどのような精神疾患を抱えているかを見抜く必要があるんです。

――PMDDを専門に扱う病院は少ないと思います。どのような病院に行けばいいのですか。

山田 産婦人科よりも精神科や心療内科をおすすめします。もちろん、産婦人科の先生でPMDDについてよく知っている人はいますが、精神疾患を見抜けなかったら大問題ですから。先ほどもお話しましたが、自称PMDDの方の半数近くが、ほかの精神疾患にかかっています。まずは精神科や心療内科に「PMDDの“治療経験”はありますか」と聞いてみてください。冒頭でもお伝えしましたが、「PMDDの名前は知っているけど、実際に診たことはない」というように臨床経験がなかったり、PMDDを正しく理解せずPMSと混同している医師が多いので。

――PMDDと診断された場合、具体的にどのように治療していくのでしょうか。

山田 「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(通称SSRI)の間欠療法」というのが一般的な治療になります。詳しく説明すると、SSRIという抗うつ薬を黄体期のみ服用し、生理が来たら薬をストップするという治療法。PMDDの治療経験がない医師は、漢方薬しか出さなかったり、「毎日薬剤を服用(継続療法)してください」という治療をしがちですが、それはあまり良くないですね。

人によって効果が出る薬の量や期間は異なるものの、薬がその人にピタリとハマれば、飲み始めたサイクルから、すぐに月経前のうつ病の症状は消えます。しばらく間欠療法を続けてもらいますが、寛解状態(症状が落ち着いて安定すること)に入ってからおよそ1年間、症状が出なければ、その後は薬を減らしてゼロにしていく。ただ、大きなライフイベントがあると再発してしまう人もいるので、ゆっくり治療していくことが大切です。時間はかかるように見えますが、一般的なうつ病と比べて治療成績は高いので慌てず付き合っていきましょう。

山田和男(やまだ・かずお)
1967年東京都生まれ。91年、慶應義塾大学医学部卒業。2002年、慶應義塾大学医学部東洋医学講座講師。03年に山梨大学医学部精神神経医学・臨床倫理学講座講師。05年、東京女子医科大学東医療センター精神科講師を経て、11年同教授。17年より東北医科薬科大学医学部病院教授に着任し現在に至る。著書に『月経の前だけうつ病になってしまう女性たち―PMDD(月経前不快気分障害)を治す』(講談社)『月経前不快気分障害(PMDD)』(星和書店)『パニック障害の治し方がわかる本』(主婦と生活社)などがある。

形成外科医・上原恵理医師が「おっぱい」のウワサをジャッジ!【その美容法は意味がない!】

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
 自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく「その美容法は意味がない!」シリーズ。第1回目となる今回は「胸」にまつわるアレコレを聞いてみた。

育乳マッサージは垂れ乳促進マッサージ

――バストアップに効果的な方法として、「背中などの肉を胸に持ってくる」というものを聞いたことがあります。そのようなことは可能なのでしょうか?

上原恵理先生(以下、上原) 背中の脂肪をバストに持ってくるなんて絶対にできません。まず、バストの構造をご説明しますね。バストは皮膚の下に脂肪組織があり、その下に乳腺があります。それらはクーパーじん帯や線維で“ガチガチ”にくっついていて、手術のときは、メスや電気メスで切り離さないと動かないほどの強固な組織です。なので、手で寄せた程度では、背中やおなかなどのぜい肉が胸に移動し、がっちりとした組織でできた胸に定着するなんてことはあり得ません。

――マッサージで太ももの肉を寄せ続けたら、脚が細くなり巨乳になったという話を聞いたこともあるのですが……。

上原 もし、マッサージによって脂肪が動く説が本当であれば、重力がある地球で生活していたら、年齢を重ねるごとに全身の脂肪が下がって足に溜まっていくはずです。そんな老人、見たことないでしょ? 「マッサージで太ももの肉が胸まできた」という人には、「その逆は見たことある?」って聞きたいですね。

――揉むと大きくなるという説はいかがでしょうか?

上原 揉んで大きくなるのは、単にバストが腫れているだけです。顔を往復ビンタすると腫れますよね。バストも同じで、痛いくらいマッサージすれば当然腫れます。通常、腫れは2週間ほどすれば治まるので、美胸マッサージなどを行っているお店は「また2~3週間後、定期的に来てくださいね」と言うわけ。毎日のようにマッサージをしていると、常に腫れている状態になるので、大きくなったように見えますが、ずっと炎症を起こし続けているわけですから、やめた方がいいですよ。後々どんな弊害が起こるかは、元の顔に戻らないくらい毎日往復ビンタされ続ければわかると思います。それに、揉めば揉むほどに垂れやすくもなりますしね。

――揉むと垂れやすくなるんですか!?

上原 揉むことで、じん帯が伸びたりブチブチ切れたりして、バストがどんどん下がっていってしまうんです。美乳マッサージは、自分で「努力して」垂れ乳を作っていることになります。

――自ら垂れさせていたとは驚愕です。睡眠時にバストアップや胸の形を整える「ナイトブラ」もありますが、そのようなものを着けていれば少しは違うでしょうか? 育乳効果を謳っている商品もありますが……。

上原 バストの大きい人は、胸の重さでクーパーじん帯が伸びたり切れたりして垂れる原因になるので、ナイトブラなどで支えて、垂れを予防するということは考えられます。でも、バストを大きくしたい人が、ナイトブラを着用しても意味はありません。着けて寝るだけで大きくなるなら、私だって今頃巨乳になっていますよ(笑)。

――何もしなくても、加齢とともに垂れていきますよね。どうにか防ぐ方法はないのでしょうか?

上原 乳腺は、若いうちはムチっとしていて密度も高いのですが、残念ながら加齢とともに委縮して、小さくスカスカになっていき、それによりバストが下垂するのです。あとは、出産の有無も関係がありますね。出産・授乳によって、バストは一時大きくなる。つまり、乳腺が授乳のために発達するのですが、その後しぼむことによって、バストはより下垂します。もし垂れてしまったら、今のところは手術するしか戻す方法はないですね。どうしても自力でどうにかしたいなら、宇宙空間に行けばいいでしょう。無重力になれば、垂れたバストも上がりますから。

――「合掌のように、手のひらを合わせて力を入れる」と大胸筋が鍛えられてバストアップにつながると雑誌に書いてあったのですが、こちらはどうでしょう?

上原 筋トレ自体に効果がまったくないとは言いませんが、合掌ポーズの筋トレでは、絶対にバストアップはできないですね。それぐらいの筋トレで、小さなバストを巨乳に見せるほどの厚みになるなんてことはありません。日本人女性の平均的な大胸筋の厚みは1センチにも満たないほどで、一般的な筋トレ程度で劇的に胸の大きさは変わらない。ボディービルダーレベルのトレーニングをしないと、大胸筋の厚みを実感できませんし、それほどのトレーニングをすると、今度は脂肪が減っていくので、大胸筋が張ったボディービルダーのような胸になってしまいます。

自力でバストを大きくする方法は存在する!?

――豊胸手術とかではなく、自力でバストを大きくする方法はないのでしょうか?

上原 バストが大きくなる要素は2つあります。1つは太ること。脂肪が増えれば、脂肪で構成されているバストも大きくなります。2つ目は、乳腺が大きくなること。乳腺は女性ホルモンによって発達するので、そのような作用が働けば、バストは大きくなります。妊娠中バストアップするのも、そのためです。

――1つ目の「太ること」についてですが、テレビ番組でグラビアアイドルが「太っちゃって、バストだけを残してダイエットをした」と話していました。そんなことはできるんですか?

上原 人間の体は平等に痩せるので、バストだけを残して痩せるなんてことはできません。必然的に、全身が痩せればバストも小さくなる。医療器具や手術をすれば、特定の場所だけ脂肪を減らすことはできますが、ダイエットでは無理です。

――2つ目の「乳腺を大きくすること」は、女性ホルモン含有の育乳サプリメントやクリームを塗れば大きくできるでしょうか?

上原 インターネットを介して個人輸入できる、女性ホルモンが含まれたサプリやクリームなどの商品の中には、サイズアップしたケースもあるようです。ただ、命に関わる危険性や、死亡例が出ている商品もあるので、安易に使うことは“絶対”に避けてほしい。また、健康障害を起こすような成分が入っていない、つまり“合法”なサプリメントには効果がないです。飲むだけ、塗るだけで大きくなるなら、みんな巨乳になっていますよ。

――では、いわゆる「痩せの巨乳」はあり得ないのでしょうか?

上原 少数ですが、真の“痩せの巨乳”は存在します。そのような人は、バストを触ればわかりますよ。脂肪は水のように柔らかく、乳腺は硬いのですが、痩せている人は脂肪が少ないため、触るとゴリッとした乳腺の硬い感触があるんです。そういう人は、たまたま乳腺が大きい家系に生まれた人。遺伝なので、巨乳になる努力はするだけムダ。以上!

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
Twitter:@dr_uehara
Instagram:スキンケア・痩身専門 @eri.uehara
Instagram:外科専門 @aesthetic_surgeon_dr.uehara

 

形成外科医・上原恵理医師が「おっぱい」のウワサをジャッジ!【その美容法は意味がない!】

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
 自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく「その美容法は意味がない!」シリーズ。第1回目となる今回は「胸」にまつわるアレコレを聞いてみた。

育乳マッサージは垂れ乳促進マッサージ

――バストアップに効果的な方法として、「背中などの肉を胸に持ってくる」というものを聞いたことがあります。そのようなことは可能なのでしょうか?

上原恵理先生(以下、上原) 背中の脂肪をバストに持ってくるなんて絶対にできません。まず、バストの構造をご説明しますね。バストは皮膚の下に脂肪組織があり、その下に乳腺があります。それらはクーパーじん帯や線維で“ガチガチ”にくっついていて、手術のときは、メスや電気メスで切り離さないと動かないほどの強固な組織です。なので、手で寄せた程度では、背中やおなかなどのぜい肉が胸に移動し、がっちりとした組織でできた胸に定着するなんてことはあり得ません。

――マッサージで太ももの肉を寄せ続けたら、脚が細くなり巨乳になったという話を聞いたこともあるのですが……。

上原 もし、マッサージによって脂肪が動く説が本当であれば、重力がある地球で生活していたら、年齢を重ねるごとに全身の脂肪が下がって足に溜まっていくはずです。そんな老人、見たことないでしょ? 「マッサージで太ももの肉が胸まできた」という人には、「その逆は見たことある?」って聞きたいですね。

――揉むと大きくなるという説はいかがでしょうか?

上原 揉んで大きくなるのは、単にバストが腫れているだけです。顔を往復ビンタすると腫れますよね。バストも同じで、痛いくらいマッサージすれば当然腫れます。通常、腫れは2週間ほどすれば治まるので、美胸マッサージなどを行っているお店は「また2~3週間後、定期的に来てくださいね」と言うわけ。毎日のようにマッサージをしていると、常に腫れている状態になるので、大きくなったように見えますが、ずっと炎症を起こし続けているわけですから、やめた方がいいですよ。後々どんな弊害が起こるかは、元の顔に戻らないくらい毎日往復ビンタされ続ければわかると思います。それに、揉めば揉むほどに垂れやすくもなりますしね。

――揉むと垂れやすくなるんですか!?

上原 揉むことで、じん帯が伸びたりブチブチ切れたりして、バストがどんどん下がっていってしまうんです。美乳マッサージは、自分で「努力して」垂れ乳を作っていることになります。

――自ら垂れさせていたとは驚愕です。睡眠時にバストアップや胸の形を整える「ナイトブラ」もありますが、そのようなものを着けていれば少しは違うでしょうか? 育乳効果を謳っている商品もありますが……。

上原 バストの大きい人は、胸の重さでクーパーじん帯が伸びたり切れたりして垂れる原因になるので、ナイトブラなどで支えて、垂れを予防するということは考えられます。でも、バストを大きくしたい人が、ナイトブラを着用しても意味はありません。着けて寝るだけで大きくなるなら、私だって今頃巨乳になっていますよ(笑)。

――何もしなくても、加齢とともに垂れていきますよね。どうにか防ぐ方法はないのでしょうか?

上原 乳腺は、若いうちはムチっとしていて密度も高いのですが、残念ながら加齢とともに委縮して、小さくスカスカになっていき、それによりバストが下垂するのです。あとは、出産の有無も関係がありますね。出産・授乳によって、バストは一時大きくなる。つまり、乳腺が授乳のために発達するのですが、その後しぼむことによって、バストはより下垂します。もし垂れてしまったら、今のところは手術するしか戻す方法はないですね。どうしても自力でどうにかしたいなら、宇宙空間に行けばいいでしょう。無重力になれば、垂れたバストも上がりますから。

――「合掌のように、手のひらを合わせて力を入れる」と大胸筋が鍛えられてバストアップにつながると雑誌に書いてあったのですが、こちらはどうでしょう?

上原 筋トレ自体に効果がまったくないとは言いませんが、合掌ポーズの筋トレでは、絶対にバストアップはできないですね。それぐらいの筋トレで、小さなバストを巨乳に見せるほどの厚みになるなんてことはありません。日本人女性の平均的な大胸筋の厚みは1センチにも満たないほどで、一般的な筋トレ程度で劇的に胸の大きさは変わらない。ボディービルダーレベルのトレーニングをしないと、大胸筋の厚みを実感できませんし、それほどのトレーニングをすると、今度は脂肪が減っていくので、大胸筋が張ったボディービルダーのような胸になってしまいます。

自力でバストを大きくする方法は存在する!?

――豊胸手術とかではなく、自力でバストを大きくする方法はないのでしょうか?

上原 バストが大きくなる要素は2つあります。1つは太ること。脂肪が増えれば、脂肪で構成されているバストも大きくなります。2つ目は、乳腺が大きくなること。乳腺は女性ホルモンによって発達するので、そのような作用が働けば、バストは大きくなります。妊娠中バストアップするのも、そのためです。

――1つ目の「太ること」についてですが、テレビ番組でグラビアアイドルが「太っちゃって、バストだけを残してダイエットをした」と話していました。そんなことはできるんですか?

上原 人間の体は平等に痩せるので、バストだけを残して痩せるなんてことはできません。必然的に、全身が痩せればバストも小さくなる。医療器具や手術をすれば、特定の場所だけ脂肪を減らすことはできますが、ダイエットでは無理です。

――2つ目の「乳腺を大きくすること」は、女性ホルモン含有の育乳サプリメントやクリームを塗れば大きくできるでしょうか?

上原 インターネットを介して個人輸入できる、女性ホルモンが含まれたサプリやクリームなどの商品の中には、サイズアップしたケースもあるようです。ただ、命に関わる危険性や、死亡例が出ている商品もあるので、安易に使うことは“絶対”に避けてほしい。また、健康障害を起こすような成分が入っていない、つまり“合法”なサプリメントには効果がないです。飲むだけ、塗るだけで大きくなるなら、みんな巨乳になっていますよ。

――では、いわゆる「痩せの巨乳」はあり得ないのでしょうか?

上原 少数ですが、真の“痩せの巨乳”は存在します。そのような人は、バストを触ればわかりますよ。脂肪は水のように柔らかく、乳腺は硬いのですが、痩せている人は脂肪が少ないため、触るとゴリッとした乳腺の硬い感触があるんです。そういう人は、たまたま乳腺が大きい家系に生まれた人。遺伝なので、巨乳になる努力はするだけムダ。以上!

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
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傷んだ髪をサラサラに……「ドライヤー」「洗い流さないトリートメント」の使い方をプロに聞く!

 メイクやファッションと同じくらい、ビジュアルに影響を与える「髪」。スタイルはもとより、髪の毛自体の美しさでも、見た目の印象が大きく変わるだけに、さまざまなヘアケアグッズを揃え、毎日のケアを欠かさないという人も少なくないだろう。特に今の季節、夏の強い日差しにさらされ、ダメージを受けた髪に、大慌てでヘアケアを始めようとしている人もいるはずだ。そんな中、着目したいのが「髪の乾かし方」。どれだけ効果が高いと言われる高価なシャンプーやトリートメントなどを使っていたとしても、「間違った髪の乾かし方をすると、髪を傷めてしまう」と、毛髪診断士で「スキンケアサロンティナロッサ」代表のパーソナルビューティープロデューサー・齊藤あきさんは言う。果たして、ボロボロの髪を整える「正しい髪の乾かし方」とは?

秋口の髪トラブルは夏のダメージが原因

――夏の終わりから秋にかけて、髪がきしんだりパサついたり、抜けやすかったりするのは、やはり夏の強い紫外線のせいでしょうか?

齊藤あきさん(以下、齊藤) 髪の傷みや抜け毛の原因には、栄養バランスの乱れや疲れといった内的ダメージ、そして紫外線などの外的ダメージも大きく影響します。夏場は、紫外線や冷房による外的ダメージに加え、暑さで疲れが溜まったり、冷たいものを摂りすぎて体の中が冷えたり、食欲が落ちて栄養バランスが乱れたりしやすいので、蓄積したダメージが、秋口になって大きく出てしまうんです。

――夏に紫外線だけ予防してもダメなんですね。

齊藤 髪の毛はいわゆる“死んだ細胞”なので、自力で修復ができないんです。傷んだら補うしかありません。美髪を維持するには、紫外線予防やダメージにつながらない過ごし方を意識するとともに、トリートメントでのケアや髪の乾かし方にもきちんと気を配り、夏のうちから傷まないようにするのがベストです。

――夏場は暑いので、ドライヤーを使わず、自然乾燥で済ませてしまうという人もいると思うのですが、あまりよくないのでしょうか?

齊藤 自然乾燥だと、髪が乾燥してパサついたり、頭皮が蒸れてベタつきの原因になったりするので、夏でもきちんとドライヤーで乾かしてほしいですね。また、髪の毛の表面には、コーティングのような役割をするキューティクルがあるのですが、髪が濡れていると、そのキューティクルが開いてダメージを受けやすくなってしまいます。そのため、洗髪後は「20分以内」に乾かすようにしてください。

――では、髪の毛を傷ませない乾かし方を教えてください。

齊藤 基本は「洗髪後、時間をかけずに完全に乾かすこと」。キューティクルが開いた状態でドライヤーをあてると熱のダメージを受けやすいので、ダラダラ時間をかけて乾かすのはNGなんです。そのために何をすべきかと言うと、タオルドライで髪の水分をしっかり取り除くこと。水滴が落ちなくなるくらいまで、念入りにしてほしいですね。このタオルドライをあまりしていない人が結構いるようなんですが、ドライヤーの時短にもつながるので、ぜひやってほしいと思います。髪の長い人は、タオルで押さえるようにしながら、毛先の水分までしっかり吸い取ってくださいね。

――まだ暑い日が続いてるので、できるだけドライヤーをあてる時間を短くしたいという人も多いと思います。そのためにも、タオルドライは大切なんですね。

齊藤 時短という点では、タオル2枚を使ってのタオルドライもオススメ。1枚目は浴室に置いておき、髪を洗い終わってすぐに、水気を切った髪に巻きます。そのまま湯船に浸かったり体を洗ったりして、お風呂から上がったら、2枚目のタオルで巻き直します。そうすると、5分ほどで結構水分を吸い取ってくれるので、最後にワシャワシャっと拭いてからドライヤーをすると、早く乾かせるんです。洗髪後に巻くタオルを吸水性の高いものにするのもいいですね。

――ドライヤーの正しいあて方もあるのでしょうか?

齊藤 タオルドライ後の20分以内に、ドライヤーで頭皮、髪の毛、毛先の順に乾かしていきます。頭皮は髪の密度が高いので、かき分けるようにして、ドライヤーの風をまんべんなくあてて乾かしてください。頭皮がきちんと乾いたら、髪を浮かせながら風をあて、頭頂部の方から順に髪全体をしっかり乾かしていきます。髪の毛を動かすのではなく、ドライヤー自体を揺らしながらあてると、早く乾きますよ。傷みやすい毛先は最後に、キューティクルを毛羽立てないよう、斜め上側45度から風を送って乾かします。短い時間で全体をきちんと乾かすためにも、ドライヤーの風量は最強に。ただ、温度が高いと髪が傷みやすいので、ドライヤーの熱は70度くらいの低温に設定しておきましょう。

――温度設定ができないドライヤーで、熱が高い場合はどうしたらいいですか?

齊藤 ドライヤーを髪から離すと、風が届くまでのあいだに温度が下がるので、10~15センチくらい離してあててみてください。

――髪をしっかり乾かすことの大切さはわかりましたが、朝に髪を洗ったときなどは時間がなく、ととりあえず毛先だけ乾かして出てしまうことも多いです。

齊藤 それは最悪ですね……。洗髪後、皮脂が出るまでに約5時間かかるのですが、この皮脂は頭皮や髪を紫外線からガードする働きがあるもの。朝洗ってすぐ外に出ると、ノーガードで紫外線を浴びてしまい、頭皮も髪も傷めてしまいますよ。なので、朝シャンは良くないんです。さらに、きちんと乾いていない状態だと余計に紫外線の影響を受けやすくなってしまうので、毛先を乾かすくらいなら、頭皮だけでもしっかり乾かす方がまだいいですよ。

――なぜ毛先より頭皮なのでしょうか?

齊藤 紫外線予防というのもありますが、根本が乾いていないと、たとえきちんとスタイリングしても、時間がたつにつれて髪がうねってきてしまいます。何事も、土台からきちんと作っていかないと、崩れやすいということです。

――最近では、ドライヤーをかける前に、「洗い流さないトリートメント」を髪に塗るという人も多いですが、種類がたくさんあるので、いつも迷ってしまいます。選び方のポイントを教えてください。

齊藤 ポイントは、主に2つです。1つは、ダメージに合わせた選び方。髪の毛は、外側が親油性で、内部は親水性になっているので、内側から修復したいときはウォータータイプやミルクタイプなど水分が多いもの、表面を保護したいときは油分の多いクリームタイプやオイルタイプがいいと思います。もう1つは髪質による使い分けで、髪が細い人はペタッとしづらい水っぽいタイプがおすすめで、ハイダメージで髪が広がってしまう人は、オイリーなタイプの方がボリュームを抑えられます。

――正しい塗り方などはあるのでしょうか?

齊藤 髪は毛先が一番傷んでいるので、まずは毛先にしっかり塗り込んでください。上側は、毛先に塗り込んだ余りを馴染ませるくらいで十分です。なお、頭皮につくと、かゆくなったりベタついたりするので、根元から5センチくらいはつかないように気を付けてくださいね。髪全体を「3つくらいの束」に分けると塗りやすいと思います。使用量はタイプや商品によってそれぞれですが、どれも塗り過ぎは良くありません。

――おすすめの使い方があれば教えてください。

齊藤 ミルクタイプは油分と水分のバランスがよく、内側まで浸透しやすいため、髪の修復に向いています。一方オイルタイプは、油分が多いほどコーティング力が強いので、ドライヤーの熱からの保護や、紫外線予防に適しています。なので、タオルドライの直後にミルクタイプを塗り、その上からオイルタイプを重ね塗りしてドライヤーをするとベスト。また、外出前にオイルタイプを塗って紫外線をガードするなど、何種類かの洗い流さないトリートメントを用意して、うまく使い分けるといいと思います。
(取材・文=千葉こころ)

齊藤あき(さいとう・あき)
パーソナルビューティープロデューサー。美容師・毛髪診断士・美養研究家。「スキンケアサロンティナロッサ」代表。5万人以上ものあらゆる肌と髪に向き合ってきた美肌・美髪作りのスペシャリストとして、多くの人たちから支持を集めている。
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