“クセの塊”寺門ジモンがこだわりの食の名店を紹介する『寺門ジモンの取材拒否の店』(フジテレビ系)シリーズ。
食レポは言うに及ばず、店のリサーチ、チョイスから、撮影交渉、場合によっては支払いまですべてジモンが行う。ジモンの、ジモンによる、ジモンのためのグルメ番組。
最近は「○○は取材拒否じゃないぞ」「前にテレビ出てた」と叩かれることも多くなっていて、今回も、最初に出た非公表のラーメン店(おそらく、というか絶対に三田の「ラーメン二郎」)も、テレビ出たことあるじゃねーか! 的な叩かれ方をしていたりするのだが(しかも10日ほど前のアウトデラックスに思いっきり出てた)、しかし、誤解を恐れず言わせてもらうならば、もはやこの番組の見所はそこではない。
取材OK、取材拒否問わず、ジモンが自慢の店を得意げに紹介するそのうれしそうなテンション、うまいでしょ? が伝わった時の満足げな顔、そして、それを邪魔したり茶化すスタッフとの本気の攻防が、どちらかと言えば見所だ。
だから「過去になんらかのしがらみで出たこともあるけど基本『取材拒否』してますけどね」くらいに考えていいと思う。
さて、なんのメリットもないフォローはこれくらいにして、そんな番組に今回ある「事件」が起きた。番組初となる地上波23時台、しかも初の全国放送ということもあって、初めてジモン以外の出演者が加わったのだ。しかも女子アナ。
しかし、男だけのむさ苦しいノリを尊ぶ『取材拒否』保守派はこれをよしとしなかった。「興ざめする」「女子アナいらない」「ずっと見てたが残念」……古参が往々にして変化を嫌がるのは、仕方がないことだ。
筆者も正直、最初に聞いた時は「いらないのでは?」と思った。いくら全国放送だからといって、せっかくの番組が普通のグルメ番組になっても仕方がないし、それならわざわざ御大が出るまでもないだろう、と。
しかし、演出とはいえ、ジモンを嬉々としていじりまくるスタッフ(主に遠藤ディレクター・マツコに番組内で嫌われてるあの人)のノリを心から嫌悪する人も一定数いるし、うまく機能しているからここまで続いているのかもしれないが(実際、ジモンが目で「いじり」を欲している様子も多々ある)、最近は強い信頼関係があるがゆえに、それを前提としすぎて、それが伝わっていない人に雑ないじめに見えてしまったり、ジモンを美味しくするためを通り越して、遠藤D自体が気持ちよくなってるように見えてしまうことも多々あった。それは出演者としてはプロでない遠藤Dの未熟さも原因かもしれないが、まったく顔を出さずに安全な場所から強く「いじり」続ける構図が、匿名での覚悟のないズルさと映ってしまうのかもしれない。
とにかく、それなりにジモンとスタッフの信頼関係は理解してるつもりでも、イラっとしてしまう時があるので、初の全国放送で初見の人が一気に増える中、その不本意な嫌悪感を減らそうとするリスクヘッジはわからなくもない。
そこで、久代萌美アナである。
結論から言うと、これが悪くなかったのだ。好印象の声も実に多かった。ジモンの活躍と共に振り返りたい。
まず、番組冒頭、女子アナ投入を「戦力にならないよ~?」と嫌がる(そぶりの)ジモンに対し、「嫌いでしょ女性のこと?」「上がっちゃうの?」「ドキドキしちゃうの?」とジモンの想定以上のいじりで過剰に追い込むスタッフ。さっそく、いつもの真骨頂。
久代アナ登場。まず、いきなり久代のコートのファーを「このふわふわボンボンダメ」といじるだけならまだしも「ヒルナンデス感覚ダメ」と、他局ごと否定する危なっかしいジモン。
最初こそ慣れない特殊な現場にギクシャクぎみだった久代アナだが、流れをつかんだのか、取材拒否の店とは何かとジモンに聞かれ「味に自信がない」と身もフタもない名回答。決してツッコミのうまくないジモンから、ナチュラルかつキレイな「バカヤロウ」を引き出す。すかさずそのツッコミに対し、スタッフから「初めて聞きましたよ、バカヤロウって」「(やれば)できるんですね」と背後から襲われるジモンの舐められっぷりも見事。久代アナの名アシストとも言える。
さらにジモンが「匂いチェック」と称し、久代アナの香水が過剰すぎないか背後からクンクン嗅ぎだした瞬間、スタッフがジモンの頭頂部をスパーンと叩く。
「セクハラだって怒られるよ!」
もはや、ジモンもスタッフもうれしそう。
むさい部室に突如現れた女子マネジャーの前で、それぞれ頑張っている、あの感じ。古参からしたらぬるいかもしれないが、健全な浮かれ方だ。
1件目のラーメン店で静止画のみ公開した後の2件目。その焼肉屋のレア度を伝えるため、ジモンが熱弁する。
「表に出さず、誰にも教えず、テレビなんか絶対断ってるわけです。出てないんです、すべて」
すかさず久代アナが「じゃあ、そっとしといた方がいいですよ」と、番組コンセプトごと否定する。
「君は味方か敵かどっちかわかんない」とジモンのツッコミがまた冴える(この久代アナが「じゃあ取材やめとこう」とするパターンは何度もみられた)。
さらにジモンは、店に入る「前フリ」に緊張感が足りないと指摘、久代アナに「死にかけたことある?」と、入店間際とは思えない詰問を投げかける。なおかつ「大体、お前フエ持ってないだろ?」と謎の飛躍。地震で瓦礫に埋もれた際に使うという緊急用のホイッスルのことらしいのだが、それを「ピー」と得意気に吹いてみせる。ゼンジー北京や村西とおるでも、普段から笛を持ち歩きはしないだろうに、この流れで入店するという、見たことのないグルメ番組。
まずは入店後、ジモンが店主に撮影交渉。
「常連さんがいっぱい入れなくなっちゃったから~いろんな番組断ってるんでしょ?」というジモンの問いに「全然断ってますよ」と店主が答えた瞬間、「じゃあもう(取材)ダメじゃないですか」とキレイにジモンの腰を折る久代アナ。
それでも撮影を許可してくれた店主に、「もし放送したら、すっごいたくさんお客さん来ちゃいますよ?」と店主の決心をぐらつかせるようなことを言う久代アナも久代アナだが、「お前さ、マイナスなこと言うなよ」と自分の目的以外は害(マイナス)として語るジモンもジモンだ。久代アナはさらに「電話鳴り止まないかも」と追い討ちをかけていた。
ヒレ肉の最上の部分(シャトーブリアン)を焼いている際、的を射ないジモンの説明を「何言ってるか全然わかんない」と笑顔で切り捨てだした頃には、かなり噛み合ってきた。
久代アナがいいのは、トークだけでなく分厚い肉塊に躊躇なく噛り付くなど、食べっぷりがいいことだ。
分厚いヒレ肉の上に、ウニとキャビアが乗った「お遊び(命名ジモン)」を口に入れた際には「ウニ・キャビア・ニク! ウニ・キャビア・ニク!」と浮かれて連呼、さながら「U・S・A! U・S・A!」と熱狂するスタジアムの米国人のようだった。
3軒目のコロッケ店。「すごい有名な割烹や凄い料理を勉強してる人に持って行くと『何このコロッケ』って言われるコロッケなの(ハート)」とうれしそうなジモンにおかまいなしに「コロッケって味の違い出ますか?」と容赦ない持論を吐き捨てる久代アナ。「全然食べ物わかってないでしょ?」とイラつくジモンに「わりと最後の(ウスターとか中濃)ソースで決まる」と決めつけ、「ぜんっぜん!(違う)」と、ジモンをいつも以上に般若みたいな顔にさせた。
ジモンがいい年して独身という話の流れで、スタッフの「ジモンさん外国の人が好きなんです」といういじりに、ジモンはあわあわするだけだったが、すかさず久代アナが「だから『ジモン』ってカタカナなんですか?」とすぐさまカブせ、キレイな「違うわ!」へとジモンを導いた。
普段は、このあわあわするジモンが苦しまぎれに吐き出す言葉が面白かったりもするのだが、そのままあわあわで終わってしまう場合も多々あるのを考えると、この助け舟は見事だ。
その後の伝説の食パン店でも、ジモンと久代アナはいいコンビネーションを見せていた。
・「取材拒否度は何パーセントでしょう?」というフリを局アナっぽいと言われ、すかさず「え~じゃあ拒否度何パ~ですかあ~?」と拗ねたような声で言ってのける久代アナと「キャバクラの女じゃないんだから」と返すジモン。
・「パンを愛して早40年だから」といきがるジモンに「でもさっきパン屋さんは気まずくて面倒臭いっておっしゃってましたよね?」と店主に向けてバラし、ジモンを慌てさせる大胆な久代アナ。
・公園の石垣に腰掛け、焼きたてのパンを食べようとするジモンを「仕事を失ったサラリーマンみたい」と笑い、パンに目のくらんだジモンを「は?」と冷静にさせる久代アナ。
クライマックスは、ジモンが買った(生)コロッケを油で揚げながら、時折、箸で持ち上げ要らない油を落とすというコツをレクチャーしていた時。スタッフが「ダチョウ倶楽部で要らないものを出すなら誰?」と仕掛け「俺だろうな、バカヤロウ!」と従来のコンビネーションがキレイに決まった時でも、すかさず久代アナは「自覚はあるんですね」と付け足し、笑いをさらに倍にしていた。見事。
賛否あるとは思うが、深夜では今まで通りジモンのみで、全国放送の時は久代アナを交えて、という両軸での稼働はいかがだろうか。
(文=柿田太郎)