「なぜ、ビートたけしがサッカーを語るのか? あなたずっと“野球ファン代表”でしたよね?」
そんな疑問を抱きながら見ていた番組草創期の『スーパーサッカー』(TBS系)がなんだか懐かしいが、1993年のJ開幕とともに産声を上げたこの番組も、今年で27年目。もう立派な長寿番組だ。
この間、メインMCは生島ヒロシから徳永英明へ。その徳永が病に倒れ、加藤浩次が緊急登板してから数えても、もう18年。コーナー企画だけでなく、放送時間や曜日も含め紆余曲折、流浪の旅を続けてきたこの番組が、今また面白い状況になっている。
今の『スーパーサッカー』の魅力について語る前におさらいしておきたいのは、今の時代におけるスポーツ番組の立ち位置の難しさについてだ。
開催中のコパ・アメリカもそうだし、普段のJリーグも含め、いまやスポーツコンテンツの多くは「ダ・ゾーン」をはじめ、ウェブ媒体を中心に楽しむ時代。リアルタイムで見られなくても、あとからでもフルタイム視聴ができる上に、ダイジェストもご丁寧にまとめてくれる状況だ。プロ野球に至っては、一球ごとの結果がネット速報でわかってしまう時代に、後追いのスポーツ番組ができることはあるのか? 意義はあるのか?
そんな置かれた状況をしっかり理解した上で打ち出しているであろう、『スーパーサッカー』の独自企画がどれも魅力的。「ここでしか見られません」という企画が多く、久しぶりに「今週もスパサカ楽しみだな」という回が続いているのだ。
そのひとつが、月1企画「MV−1」。番組自ら、「中継映像には映らない、スパサカ独自カメラ(その名も「俯瞰でスパサカメラ」)で、最もサッカーの面白さが伝わる映像に月イチで注目 」とコーナー趣旨を説明するところに、「今の時代、こうやってサッカーの魅力を伝えてやる!」という気概が感じられる。
16日深夜放送回では、コパ・アメリカにも出場する売り出し中のFW前田大然の魅力である「スピード」について、番組独自映像で紹介。中継映像ではボールを奪う直前の動きしかわからないが、俯瞰カメラだからこその“動き出しの一歩目からの速さ”がよくわかる仕掛けになっていた。これはまさにスタジアムで観ていなければ発見できない(というか、観ていてもなかなか気づけない)視点。マニアックでありつつ、サッカーの奥深さ、前田の異能なスピード感が一目瞭然になる好企画だったと思う。
この「俯瞰でスパサカメラ」以外にも、試合結果を伝える際には、随所に配置する「サポーターマークカメラ」「監督マークカメラ」、ときには「ジーコマークカメラ」といったオリジナル映像を差し込むとこで、スポーツニュースでは訴求しきれない臨場感を演出している。
そして、もうひとつの目玉企画が「ぜんぶ見る大作戦」。初回の「歴代アシストKING」から始まり、「歴代ヘディングKING」「歴代PKストップKING」「歴代ボレーKING」と、これまでに4回放送。Jリーグ27年の歴史から“公式記録には残りにくい記録と名場面”を振り返り、過去に番組で取り上げてきた膨大な映像を再編集することで、それぞれの部門KINGを発掘していこう、という企画だ。
四半世紀以上続く番組の過去素材から映像を集める、というのはなかなかの作業量のはず。こうした“スタッフの汗”を感じられるところは、とても好印象だ。また、「KING」といえば、番組初期の人気企画「水沼貴史のKINGは俺だ!!」を連想させる。こうした過去資産を生かすことも、ぽっと出のダ・ゾーンにはマネのできないことであり、老舗ならではの味わいだと思う。
また、番組公式サイトでは放送に収まりきらなかった加藤と解説陣のやりとりを紹介する「アディショナルタイム」を随時アップ。権利関係上、ランキングで紹介した映像は使えないわけだが、それ抜きにしても「次も見たい」と思わせるやりとりがたっぷり堪能できる。
たとえば、初回「歴代アシストKING」の「アディショナルタイム」では、解説の“元・得点王”福田正博の意外に多いアシスト数について取り上げ、福田が「俺の(数字) 、合ってんの? もうひとつ多ければ100位以内なんだけど。操作してよ! 忖度して!」とスタッフに詰め寄る場面が見ていておかしい。
かと思えば、加藤はパスという“裏方的職人芸”の魅力について、「人生と一緒ですよ。派手な人生じゃなくても、そういう人、いっぱいいるんですよ。僕はそういう人、最近、目の当たりにしてるんですよ。地味でもいい人、いるんですよねぇ。そういう人から、いろんなことを学ばなきゃいけない」と、しみじみ語ってみせた。
加藤といえば、『スッキリ』(日本テレビ系)での過激発言ばかりが注目を集めがち。でも、本当に好きなものだからこそにじみ出てくる言葉に、真の意味での魅力が詰まっているはず。そこには当然、ビートたけし時代に感じた違和感はない。そんな加藤の言葉とともに、老舗が提供する味わい深さを改めて堪能してはどうだろうか?
(文=オグマナオト)