テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(11月10~16日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします
岡村隆史「当時のダウンタウンさんって、ホントに真剣振り回してはったんです」
もう2年近く前のことになる。2018年1月2日、最終回を目前に控えた『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)で、ナインティナインの2人と中居正広による最後の「日本一周の旅」が放送された。そこに、こんな会話のシーンがあった。
中居「それこそ20年後、何やってんだろうね」
矢部「いやぁ、ホンマやな。何歳?」
中居「65、66、67」
矢部「ちっちゃいおっさんが一番年上(笑)」
岡村「そん時また日本一周しようや。スタッフも半分ぐらい死んでるやろうけど」
定期的に放送されていたこの日本一周企画は、基本的にナイナイが全国各地へと中居を連れ回し、散々な目に遭わせるという流れで進行する。他方で、オープンカーに乗った3人が一緒に歌う姿など、仲の良さを印象付けるシーンも随所に盛り込まれていた。
上に引用した会話は、そんなオープンカーでのシーンだ。場所は沖縄。時間は夕暮れ時である。実は、同企画の第1回目が放送された1997年にも、当時まだ20代半ばの3人は夕日に染まる沖縄をオープンカーで走っている。「それこそ20年後」という中居の発言は、3人のこれまでの20年を回顧するとともに、これからの20年に思いをはせたものだ。
この会話からは、彼らの”特別な”関係も透けて見えるだろう。”特別な”というのは、フィクションとノンフィクションを行き来する『めちゃイケ』の演出も相まった、仕事上の関係とそれを離れた親友の関係、そのはざまにあるような間柄という意味だ。
そんな『めちゃイケ』の日本一周企画に関し、先週、ある事実が明かされた。岡村をゲストに迎えて放送された15日の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)。そこで当人らが語ったところによると、岡村と中居は一時期、「絶交」と呼べるほど最悪な状態でこの企画に参加していたというのだ。
話は30年前の99年にさかのぼる。いくつもの番組での共演を通じ、プライベートでも遊ぶほど仲の良かった岡村と中居。その2人の間に亀裂が走った。きっかけは松本人志だ。中居が岡村を誘って居酒屋を訪れたときのこと。偶然そこに先客としていたのが松本だった。
岡村は振り返る。今でこそダウンタウンの2人は優しいが、当時は違った。
「当時のダウンタウンさんって、ホントに真剣振り回してはったんです」
岡村は当時、ダウンタウンを恐れていた。番組では触れられなかったけれど、かつて松本は自身の著書で、ナイナイを引き合いに出し若手芸人を批判するということがあった。そんなあれこれが積み重なった上での、恐怖心である。
岡村は松本と酒席を共にした。しかし、極度の緊張は収まらない。たまらず「明日、朝早いんで」と早々に席を立った。そのとき岡村はこう思っていた。中居は一緒に帰ってくれるだろう。だが、その思いに反し、中居は「あ、そう。じゃあね」と飲み続けるのだった。
岡村は1人で店を出て帰宅する。その頭には疑念が芽生える。中居は、あの店に松本がいると知って、自分を連れて行ったのではないか。きっとそうだ。そうに違いない。一度そっちのチャンネルに入った思考は、もう後に戻らない。岡村の中で、中居への不信感が募っていく。
その結果、99年から約5年間にわたる絶交状態が続くことになったというのだ。そして、そんな絶交中にもかかわらず99年と02年の2度にわたり行われた企画が、『めちゃイケ』の日本一周だった。
先述のように、日本一周企画には3人の仲の良さを印象付けるシーンも随所に織り込まれる。また、収録は2週間と長期にわたる。当然、一緒にいなければならない時間も長い。そんな企画を、仕事とはいえ、仲がこじれている元親友とやらなければならない。中居は当時を「もう地獄だよね」と振り返る。
さらに、02年の日本一周のクライマックスは、大阪ドームで行われたSMAPのコンサートに岡村が乱入するシーンだった。当然、岡村には事前にダンスを教わる時間が必要だ。そのコーチ役を、中居がやらなければならなかったりもした。それがまたお互いにツラい。それぞれ周囲のスタッフに愚痴を漏らすものの、番組の総合演出は2人の事情を知りつつも「プロとしてできない?」の一点張りだった。中居はこの経験を次のように回顧する。
「(今は)アマチュアみたいなタレントだけど、(今後)プロとしてやっていくためには、っていう(総合演出からの)教えだったかもしれない」
冷戦状態にあった2人の仲はその後、元に戻る。きっかけは、ナイナイと中居が総合司会を務めた04年の『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)で、岡村が中居の仕事への取り組み方に感服したことだったという。絶交中の仕事を「プロとして」乗り切った彼らを再びつないだのは、やはり「プロとして」仕事に向き合う姿勢だったのだ。仕事上の関係と、それを離れた親友の関係、そのはざまにあるような間柄。そんな彼らの“特別な”関係が出来上がったのは、このときだったのかもしれない。
18年の日本一周の旅の最後、岡村は中居に長い長い手紙を書く。その手紙は、こんな一文で締めくくられる。
「中居さん、『めちゃイケ』と一緒に22年間走り続けてくれて、ありがとうございます。また、友だちの少ない僕の友だちになってくれて、ありがとうございます」
さて、上のエピソードのもうひとりの登場人物・松本も、当時から大きく変わった。他の芸人を相手に「真剣」を振るう場面も少なくなった。そんなことをあらためて印象付けたのが、10日の『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)だ。
この日、松本は『行列』に初めてゲスト出演した。で、松本に会わせたい人として番組が用意したのがフワちゃんだ。YouTubeで注目を浴びた芸人である彼女。スマホと自撮り棒を片手に、言動は常時ハイテンション、衣装はビビッドな色のスポブラだ。
この共演には既視感がある。90年代後半、『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)でのシノラーこと篠原ともえとの共演である。常時ハイテンションでダウンタウンに絡む篠原に対し、松本は彼女が持ってきた人形をセット裏に投げ捨てるなどといった塩対応をしていたと記憶する。
対して、今回のフワちゃんとの共演はどうだったか。フワちゃんは登場するなり松本に「人志松本~」と抱きつき、「Twitterフォローしてるよ」と声をかける。顔がぐにゃぐにゃに変形するアプリで一緒に写真を撮って「ダウンタウンの漫才ぐらい面白い」と言い放つ。そんな彼女に対し、松本は終始なすがままだった。
そしてフワちゃんは、ある提案する。松本には、もっと周囲がとっつきやすいと思われる存在になってもらいたい。だから、私とおそろいの格好になりませんか? で、松本はスポブラに着替えさせられるのだけれど、そういえば以前、長嶋一茂も別の番組で同じような目に遭っていた。
その流れの中で、フワちゃんは松本のとっつきにくさを次のように表現したのだ。
「松ちゃんって、基本的にトガってんじゃん」
岡村と中居は、「トガって」いた松本をきっかけに絶交した。そんな松本はいま、若手から「トガって」いることをイジられるまでになっている。時間は流れ、関係は変わる。そんなありふれたことを、一茂と同じ扱いを受けている松本を見ながら、しみじみと思った。
(文=飲用てれび)