『HiGH&LOW THE MOVIE 3 FINAL MISSION』(以下、『FINAL MISSION』)の公開前、コブラが吊るされ、“生コン”を飲まされている場面写真が公開され、多くの人の度肝を抜いた。同時に、この場面が韓国映画『新しき世界』(2014/以下、すべて日本公開年)のワンシーンを思わせるというのも話題になった。これをきっかけに、同作を観たというハイローファンもいるのではないだろうか。
少し横道にそれるが、『HiGH&LOW THE MOVIE』には、『友は風の彼方に』を思い起こさせるシーンもある。『友は風の彼方に』は、チョウ・ユンファ演じる潜入捜査官が、ダニー・リー演じる裏組織の人間に、本来ならば感じてはいけない友情を抱いてしまうことが物語の肝になっているのだが、この二人が強盗決行前夜に隣り合ったベッドで横になりながら、語り合うシーンがある。このシチュエーションは、九十九と琥珀が共に入院して隣り合って寝ている回想シーンに重なって見える(カーテンは隔ててはいるが)。しかも、右側に寝ているチョウ・ユンファ演じる潜入捜査官は過去に大切な仲間を亡くした経験があり、そのことで苦しんでいる。そして今、絆を深めつつあるのが左で寝ているダニー・リー演じる裏組織の人間なのだ。『HiGH&LOW』では、回想シーンで右側に寝ていた琥珀が、現在は龍也という存在を失って苦しみ、左にいた九十九が相棒となりつつあるという点でも、このシーンは重なっているのだ。そもそも、『友は風の彼方に』は、その後の潜入捜査ものや男同士の絆を描いた作品のルーツになる映画でもあるから、『HiGH&LOW』に影響を与えていることは考えられなくもない。
また、ロッキー役の黒木啓司や琥珀役のAKIRAらが所属するEXILE THE SECONDのドキュメンタリーで、楽屋に『新しき世界』ほか多くの韓国映画のDVDが積まれているのが、ファンの間で話題になったこともある。ノボル役を演じる町田啓太はインタビューで『友へ チング』『アジョシ』『悪魔を見た』『猟奇的な彼女』『哭声 コクソン』『お嬢さん』など、多くの韓国映画を観ていることを明かしている(ウェブマガジン「FILMAGA」17年8月15日掲載)。“達磨ベイビーズ”の雷太を演じるBOYS AND MENの田中俊介も、ブログでソル・ギョング作品や韓国のアクション映画監督、リュ・スンワンの『ベテラン』や『生き残るための3つの取引』が好きだと語っていた。私自身『HiGH&LOW』出演者への取材の中で、今年の春に公開された『アシュラ』や『哭声/コクソン』の名前を聞いたこともある。
同作と『HiGH&LOW』にもまた、似たシーンが存在する。『END OF SKY』では、九龍の黒崎、カジノ推進法案担当大臣の篠原、警察官僚の波多野という3人が料亭で密談をしているシーンがあった。『インサイダーズ/内部者たち』では、腐敗した自動車会社社長や新聞記者の面々が料亭で密会するシーンがある。そこで行われるのは性接待であり、あの有名な“ちんゴル”(ビールなどを注いだコップの上に、強いお酒を入れたショットグラスを乗せ、男性器をゴルフクラブに見立ててショットしてショットグラスを下に落とし、混ぜて飲むことを一部のネットスラングでそう呼ぶようになった)が行われているのであるから、インパクトはデカい。
本作の舞台は1930年の満州ではあるが、さまざまな民族がまじりあった無政府的な街が描かれているし、また『マッドマックス』のように、砂漠の中を進む列車やジープや馬などが出てくる。韓国のガンちゃんことソン・ガンホが、達磨サーフィンよろしく、ジープに縄でつかまって滑走する姿も見られるのだ。砂漠の中に存在する荒廃した街は、リトル・アジアのようでもあり、無名街のようでもある。日本軍の指揮官として、『HiGH&LOW THE MOVIE』で張を演じた白竜も出演している。
こうした『古惑仔』シリーズの試みは、『HiGH&LOW』プロジェクトと重なって見える。正規のシリーズがあり、『HiGH&LOW THE RED RAIN』のようなスピンオフ映画があり、本編では悪役のMIGHTY WARRIORSを主役とした『HiGH & LOW THE MIGHTY WARRIORS』のようなスピンオフが作られていることとも重なる。今となっては、テレビシリーズもスピンアウト作品に思えるほどだ。まだ脚本家・平沼紀久とキャストの口約束の段階ではあるが、「鬼邪高校のスピンオフを作る」というやりとりもあった。前述の通り『古惑仔』シリーズには、女性だけで描かれるスピンオフもあったし、新人俳優だけで構成される作品も存在したわけで、こうした可能性は、『HiGH&LOW』に「も無限に広がっていると思っていいだろう。
映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に脳を焼かれてから1年数カ月。夏の『END OF SKY』公開時にも開催したハイロー対談@サイゾーが、再び帰ってきた。毎度おなじみ映画ライターの加藤よしきさんとヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライター藤谷千明さんが、『FINAL MISSION』について徹底討論! これが俺たちの最後の祭りじゃ!!(なお、今後新作が公開された場合にはこれが最後とは限らない場合がございます/今回も同席している編集者は重度のLDHオタクです)
※本記事は映画『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』のネタバレを含みます。
加藤:ただ、切ったわりに、死んだところは映すんかいって。そこの取捨選択でちょっと疑問は残りつつも、やっぱり「Break into the Dark」が流れるあのシーンは、本編で一番の見所と言っても過言ではないです。劇場で観たとき、ちょっと泣きました。
藤谷:生コンが「サビ」なら、あそこは「大サビ」ですね。
編集部:「Break into the Dark」はザム2からの挿入歌ですけど、歌詞を読むと完全にルードボーイズの曲ですね。「I’ve gonna never give up」って繰り返してて、「俺達は生きることを決して諦めない」の姿勢ですよ。この起用、LDHウォッチャー的には、“アフロジャック接待”にしか思えなかったんです。でもザム3で流れてきたときに、「うがった見方をしてしまいすみませんでした。素敵です」って思いました。
加藤:「HiGH&LOW THE DTC」を挟んだからか、DTCの3人も、演技力は格段に上昇してましたね。あの爆弾のシーン、おもしろすぎました。語弊がありますけど、「バカしかいない空間」ができていた。九十九さんの「とりあえず1本いっとくか」とか。あれが大好きなんですよ。変な話、あのテンションで全編やってくれてもよかった。
※本記事は映画『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』のネタバレを含みます。
たくさんの夢をありがとう、HIROさん…
映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に脳を焼かれてから1年数カ月。夏の『END OF SKY』公開時にも開催したハイロー対談@サイゾーが、再び帰ってきた。毎度おなじみ映画ライターの加藤よしきさんとヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライター藤谷千明さんが、『FINAL MISSION』について徹底討論! これが俺たちの最後の祭りじゃ!!(なお、今後新作が公開された場合にはこれが最後とは限らない場合がございます/今回も同席している編集者は重度のLDHオタクです)
生コンはサビ! 音楽組織ならではの大胆な構成
藤谷:前回の対談「ごめんなさい」から始まったわけですけど、今回は「ありがとうございます」から始めたい。変に引き伸ばしを図るわけでもなく『HiGH&LOW』は『HiGH&LOW』として畳んでくれた。ドラマ版から脈々と続いていたSWORD地区のカジノ問題に一段落つきました。そしてやっぱり今回も冒頭から度肝を抜いてくる。これぞハイローでした。だって、予告で我々に衝撃を与えた生コン祭りがまさか冒頭に来るとは思わなかった。そして中盤でももう一回同じシーンが流れる。つまり、このシーンが「サビ」なんですよ! 三代目J Soul Brothersでいうところの「Welcome to TOKYO」【1】みたいな頭サビで始まる展開です。
【1】16年11月リリースの、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE通算20枚目のシングル。名曲。トキオ…トキオ…トキオ…
加藤:確か『新しき世界』も冒頭に生コン(セメント)シーンがありましたね。
藤谷:でもあれは「サビ」ではなくて、死体が浮かび上がってこないように、海に沈めるための処置としてのセメント描写をもって「この韓国ノアールはエグイやり方で死体を隠蔽するヤクザが出てきますよ」という宣言をするイントロでした。『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』(以下ザム3)の場合は、これをサビに持ってきた。音楽組織であるLDHならではの大胆な構成なんですよ!
編集部:SWORD地区がいつ燃やされてるのかも分からなかったです。善信の「逃げねえよ」の後なのか、彼が「いや、もう始まってるか」って言うからには『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』(以下ザム2)のクライマックスの裏で同時進行で起こってることなのか。おそらく映像の順番的には後者ですかね。その間にダンさんたちは山王街で九龍と戦い、尾沢は骨折した。
加藤:最初の『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下ザム)のときも、すごいお気持ちがあふれてました。ただザムでは一応脚本上の時間の流れをしっかり設定してて、具体的に日にちを上げたりしていた。「2日後、マイティ、ダウト、総勢500人を連れて、琥珀さんがSWORDを潰しに来る」とかセリフで入れて。いや、それも冷静に考えたらおかしい事態なんですけど、とにかく時間の流れを区切って、キャラの動きもそれに合わせて整理していた。
※本記事は映画『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』のネタバレを含みます。
たくさんの夢をありがとう、HIROさん…
映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に脳を焼かれてから1年数カ月。夏の『END OF SKY』公開時にも開催したハイロー対談@サイゾーが、再び帰ってきた。毎度おなじみ映画ライターの加藤よしきさんとヤンキーマンガとEXILE史学に詳しいライター藤谷千明さんが、『FINAL MISSION』について徹底討論! これが俺たちの最後の祭りじゃ!!(なお、今後新作が公開された場合にはこれが最後とは限らない場合がございます/今回も同席している編集者は重度のLDHオタクです)
生コンはサビ! 音楽組織ならではの大胆な構成
藤谷:前回の対談「ごめんなさい」から始まったわけですけど、今回は「ありがとうございます」から始めたい。変に引き伸ばしを図るわけでもなく『HiGH&LOW』は『HiGH&LOW』として畳んでくれた。ドラマ版から脈々と続いていたSWORD地区のカジノ問題に一段落つきました。そしてやっぱり今回も冒頭から度肝を抜いてくる。これぞハイローでした。だって、予告で我々に衝撃を与えた生コン祭りがまさか冒頭に来るとは思わなかった。そして中盤でももう一回同じシーンが流れる。つまり、このシーンが「サビ」なんですよ! 三代目J Soul Brothersでいうところの「Welcome to TOKYO」【1】みたいな頭サビで始まる展開です。
【1】16年11月リリースの、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE通算20枚目のシングル。名曲。トキオ…トキオ…トキオ…
加藤:確か『新しき世界』も冒頭に生コン(セメント)シーンがありましたね。
藤谷:でもあれは「サビ」ではなくて、死体が浮かび上がってこないように、海に沈めるための処置としてのセメント描写をもって「この韓国ノアールはエグイやり方で死体を隠蔽するヤクザが出てきますよ」という宣言をするイントロでした。『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』(以下ザム3)の場合は、これをサビに持ってきた。音楽組織であるLDHならではの大胆な構成なんですよ!
編集部:SWORD地区がいつ燃やされてるのかも分からなかったです。善信の「逃げねえよ」の後なのか、彼が「いや、もう始まってるか」って言うからには『HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY』(以下ザム2)のクライマックスの裏で同時進行で起こってることなのか。おそらく映像の順番的には後者ですかね。その間にダンさんたちは山王街で九龍と戦い、尾沢は骨折した。
加藤:最初の『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下ザム)のときも、すごいお気持ちがあふれてました。ただザムでは一応脚本上の時間の流れをしっかり設定してて、具体的に日にちを上げたりしていた。「2日後、マイティ、ダウト、総勢500人を連れて、琥珀さんがSWORDを潰しに来る」とかセリフで入れて。いや、それも冷静に考えたらおかしい事態なんですけど、とにかく時間の流れを区切って、キャラの動きもそれに合わせて整理していた。
一応、Rockson Film Productionという、プロダクション製作の本作は、衝撃的なスパイダーマンの造形と、チープなSFXに目を奪われがちだが“スパイダーマンを自国の文化とつなぎ合わせた現象は興味深い”と、北部ナイジェリアで製作された忍者映画を研究する文化人類学者・中村博一文教大学教授は語る。
『3 Dev Adam』(トルコ/73年)
イスタンブールを舞台に、スパイダーマンが「ヘマをやらかした部下をモルモットに喰わせる」「トルコの国宝をアメリカに売り飛ばす」「女性を絞殺して仏像を盗む」「入浴中のカップルを刺殺して高笑い」という、とんでもない悪役として登場。そんな凶悪なスパイダーマン相手に、キャプテン・アメリカとエル・サントが立ち向かうというアクションあり、コメディあり、ストリップシーンありの完全オリジナル作品。『アベンジャーズ』(12年)のような、複数のヒーローが登場するクロスオーバー作品の元祖ともいえよう。どこからも、キャラクターの使用許可は取っていないが……。ちなみに、この映画ではヒーロー同士が戦うといっても、スパイダーマンは蜘蛛の糸を使わず、キャプテン・アメリカもシールドを使わない肉弾戦がメイン。また、スパイダーマンはショッカーと同じシステムなのか複数人いるので、倒しても倒しても、たくさん出てくる。
『Ananse 1&2』(ガーナ/11年)
『ターミネーター』、『プレデター』、『バットマン』などハリウッド映画の焼き直しを、大量に制作しているRockson Film Productionによるスパイダーマン。スパイダーマンだけでなく、どの作品も初期の『モータル・コンバット』に影響を受けたかのようなチープなCGと、人体破損描写が特徴的。スパイダーマンを、黒魔術によって召喚された神の使いなのか、アナンシのようにトリックスターとして描きたいのかは不明だが、CGのスパイダーマンが登場するとき「うぅぅぅぅ」と、不気味なうめき声のような音が入るのは、もはやホラー。ちなみに、この映画の監督、本作を勝手にYouTubeに違法アップロードされたことに激怒。著作権侵害だから削除するようにコメント欄に書き込んだところ「お前も、そもそもマーベルからなんの許可も取ってないだろう」と、逆に突っ込まれていた。