藤井フミヤ兄弟、亀梨和也…etc. 数々の男を渡り歩いた小泉今日子、その不倫宣言の狙いは?

小泉今日子、不倫宣言の狙い・2画像1

 小泉今日子(52)の恋愛遍歴は、1980年代に活躍したアイドルグループ「チェッカーズ」のボーカル・藤井フミヤ(55)から始まった。小泉の家にフミヤが泊まりに来て朝方に帰る現場を写真誌が捉えた。2人はすでに超人気アイドル。恋愛が認められるわけもなく、やがて別れることになった。

「2人は相思相愛。寸暇を惜しんでも会っていたが、アイドル同士の恋愛は御法度。外では目立つため、安全な自宅だったとはいえ、周囲の情報から2人の仲は公然でした。小泉はフミヤと結婚まで考えていたが、アイドル同士の結婚を事務所が許すはずもない。自然消滅のように別れた」(芸能関係者)

 涙の破局から5年。小泉は大胆な行動に出る。同じグループに所属していたフミヤの弟、藤井尚之(53)と半同棲しているのが発覚した。「芸能界でも兄弟と付き合うのは極めて珍しいケース。小泉は兄の面影をもとめて弟と付き合ったのでは」といった推測も流れた。

 大胆な恋愛はすでにこの時から垣間見られていたわけである。大胆な行動はさらに続く。尚之ともやがて破局した翌年、ドラマの共演をきっかけに、俳優の永瀬正敏(51)と交際。間髪を空けずに電撃結婚を発表した。人気ピーク時のアイドルの結婚はマイナスの要素しかないが、自ら命名した「友達婚」は若者の支持を受けた。逆に「アイドルらしからぬアイドル」と小泉の評価は上がるという社会現象になった。結婚と同時に家庭中心の生活に切り替えた小泉。順調なはずだった結婚生活だが9年で離婚してしまった。芸能関係者が振り返る。

「小泉は家庭的な子。普通の女の子のように結婚して子供を産んで、ごく平凡な家庭を築きたかった。それで一時、家庭中心にしたが、子供が出来ずにやがてすれ違い生活が続き、2人の生活に溝ができてしまった。お互いの将来を考え離婚を選択した。後に2人は映画で共演するなど、役者同士としての絆は続いている。この辺は同業者ならではのことです」(芸能関係者)

 悲恋にも小泉はめげなかった。仕事優先にシフトを切り替え、女優としてさらに成長していった。そんな余裕が新たな恋愛を生んだ。KAT-TUNの亀梨和也との熱愛である。すでに元アイドルだった小泉とジャニーズが売り出し中の人気絶頂のグループの人気者。21歳年下の男の子との恋は衝撃的だった。亀梨が空き時間に合鍵で部屋に出入りし、車も自由に乗り回していた。まるで「有閑マダムとツバメ」のような構図。小泉は一切、話すことはなかったが、「亀梨ファンの小泉バッシングが凄かった。このままでは亀梨の人気に影響する。当然のように別れさせられた」(元ジャニ担記者)

 その後は何事もなかったかのように小泉は女優業に専念。次々と話題作に出演。大人の女優として成長していく。NHK朝ドラ「あまちゃん」では能年玲奈(現・のん)演じるヒロインの母親役で人気はさらにアップ。仕事に生きる小泉は後輩たちからも慕われる「姉御」的な存在にまでなっていた。「これで恋愛も封印か」と思っていた矢先、無名俳優だった豊原功補(52)との熱愛が発覚した。当初、バーで肩を寄せ合いながら飲む2人に「大人同士の恋」とメディアは好意的な報道だった。

「所属する事務所の社長は芸能界のドンと呼ばれる人。不倫とわかっていても不倫と大々的に報じることはできない。その話はないことにしていた」(スポーツ紙記者)

 事務所は従来通り小泉を庇った。実はそれが小泉には不満だったという。すべてを正直に話したい。大人の決断がよぎった。

 その決意の裏には豊原の優柔不断さにあったという見方もされている。

 事実、豊原は会見で小泉との不倫を認めたが、内容には優柔不断さが見えていた。3年も別居しているのに、「妻とは離婚の話もしていなければ、小泉との間で結婚の話も出ていない」と平然と言ってのけた。さらに、小泉の唐突な不倫宣言は聞かされていなかったのか、戸惑いの表情が出ていた。

 状況から察するに、小泉の目的はむしろ豊原の本当の気持ちを知りたかった。結婚するのか家庭に戻るのか、それとも現状維持を続けるのか。その為には事務所の守りは逆に邪魔になる。独立することによって、すべて自分で責任を負う。その上で豊原と奥さんに対しての本当の気持ちを知りたいと見るのが自然。

「恋愛遍歴を見ても、常に恋してきた小泉。人生の折り返しとも言える年齢になり、最終的な伴侶が欲しくなったというのが本音では。その為にも豊原の気持ちを世間に問うことで聴き出したい。やはり、小泉も女なんです。女としての幸せが欲しいんです」(芸能関係者)

 果たして、豊原はどんな決断を下すのか。この不倫は早々に破局か、時間をかけて成就するか。どちらかの結論しかないだろう。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

小泉今日子の不倫宣言、その裏にある狙いとは? 「物言うアイドル」としてのキョンキョン論

1802_koizumi.jpg『小泉今日子写真集 デラックス近代映画』(近代映画社)

 小室哲哉が不倫報道で音楽活動から引退を発表した。さらに小室の不倫報道の是非まで取りざたされている最中、今度は小泉今日子(52)が俳優・豊原功補(52)と堂々の不倫宣言を発表した。前代未聞の発表に波紋が広がっているが、小泉の意図はどこにあるのか。

 小泉は森昌子、桜田淳子、山口百恵らを輩出したスター発掘番組「スター誕生」(日テレ系)から生まれたアイドルだった。

 番組を作ったプロデューサーの池田文雄(故人)と親交があり、当時の話をよく聞いていたが、小泉の話も印象的だった。

「たいして歌が上手いわけではなく、アイドルとしてどうかなあという不安もありましたが、彼女が合格したポイントは顎。普通、アイドルは目や唇、脚などを褒められるものですが、彼女の場合は顎のライン。可愛くてセクシーだったことが決め手になった」

 プロの見る目は素人とは違うと感心したものだった。今も顎のラインは昔のまま。確かにセクシーで綺麗。

 アイドルとして順調に売れた小泉だったが、プライベートではお酒が大好きというアイドルらしくない一面も見せていた。

「アイドルはアイドルらしく」と当時は私生活でも口うるさく指導されていたが、小泉は二十歳になると堂々とお酒を飲んでいた。タバコも吸っていた。同じ番組出身の中森と仲が良かったのも、「お酒が2人の仲を取り持った」と言われたほどだった。今も行きつけのバーなどで飲んでいる小泉は「様になっている」と業界内でも羨望の眼差しで見られている。大人になった小泉は姉御肌。小泉に憧れて慕う後輩タレントは多い。

 今のアイドルと違い、結婚どころか恋愛も御法度の時代。小泉は人気絶頂の最中に俳優の永瀬正敏(51)と電撃婚。世間を驚かせた。「アイドルとして終わり」との声も出たが、小泉は「友達婚」と称し、結婚してもなお若者から絶大な支持を得た。結婚した小泉は仕事をセーブした。

 夫の帰りを家で待つ「献身的な妻」とまで言われたが、結婚後、俳優業にますます精力的に取り組む永瀬は海外ロケなどで家を空けることが多くなっていた。

「小泉は早く子供が欲しかった。だから仕事をセーブしていたが、子供はできず。もし子供ができていたら、小泉の人生は大きく変わっていたはず」(芸能関係者)

 当時、住んでいた家の付近を定点的に取材したことがある。確かに、1人で寂しく近所を散歩や買物する姿が目撃された。時には行きつけのお寿司屋で店主を相手に飲んでいる姿も目撃されていた。

 すれ違い生活が要因となり、2人は9年の結婚生活に終止符。離婚した。

 その後の小泉は精力的に芸能活動に取り組み、女優業だけでなく、執筆活動などもこなしていった。さらに小泉は「物言うアイドル」に変身。業界内への不平不満も口にするようになった。脱アイドルへと踏み出したのだった。小泉が所属するのは業界でも名立たる老舗事務所。社長は芸能界のドンと呼ばれているが、「社長が自分の娘のように可愛がっていたタレント。彼女の言い分にも耳を傾けていた。小泉もそんな社長を絶対的に信頼していた。だから、30年以上に渡り揉めることなく仕事をこなしてきた」(芸能関係者)

 行動もアイドルらしからぬものだった。

「KAT-TUN」の亀梨との熱愛が写真誌で発覚。世間を騒がせたこともあった。「当時、グループは売り出した直後で、人気が沸騰していた最中。特に亀梨人気は群を抜いていた。それが41歳の元アイドルでバツイチ女性との交際。亀梨は彼女の家に通い、小泉の車を好きに運転していた。ファンは騒然となった。当然、亀梨の所属するジャニーズ事務所は人気に響くと判断。やがて自然消滅のように別れた」(写真誌記者)

 亀梨ファンからバッシングを受けながらも、小泉人気に衰えはなし。まるで芸能界のキャリアウーマンのように小泉は年齢問わず幅広い層から支持を受けていた。

 2013年に放送されたNHK朝ドラ「あまちゃん」では主人公の母親役で女優としての価値を上げ、さらに存在感を増していった。それから3年。唐突な不倫宣言。小泉になにが起きているのかーー。
(以下、次回)

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

一連の卒業騒動は、「普通の女の子の生活」の第一歩?――愛のままにわがままに僕は【杏果】だけを傷つけない

『有安杏果』

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1月15日、ももいろクローバーZの有安杏果が、21日のライブをもってグループから卒業することを発表。芸能界からも距離をおく旨を明かした。あまりの急展開に「スキャンダルか?」とも噂されたが特に何もなく、一番焦ったのは「週刊文春」だったかもしれない。


 引退ではなく卒業。

 1月21日のライブをもって、ももいろクローバーZおよび芸能界から“卒業”した有安杏果。本人いわく、今後何かしらの表現活動をする機会があった場合、「引退」としてしまうと足かせになるということ、そして、芸能界から一旦距離を置いてみて、またやってみたくなったら戻ってくるという意味を込めての「卒業」ということらしい。

 ここに「卒業=戻ってくる可能性アリ」という新たな定義が誕生した。尾崎豊が生きていたら発狂しそうだが、良い表現だなとも思う。だいたいね、世の中そんなに割り切れる人間ばかりではないのである。ケジメというものに人一倍こだわりそうなプロレスラーでさえ、引退と復帰を繰り返しているわけで、0か100かで考えるから一回一回大ごとになるのだ。辞めようと戻ろうと、周りに迷惑をかけずにひっそりと……今回の「卒業」という言葉には、そんな謙虚さすら感じられる。

 この有安の「卒業」概念が、もう少し早く世間に伝わっていれば、小室哲哉も「引退」ではなく「卒業」でとどまったのではないかと思うと残念でならない。ただ、小室の場合「自発的な音楽活動からの引退」と言っているだけなので、「小室ちゃ~ん。一曲頼むよ~」と言えば作ってくれそうだ。ここへきて「引退」の定義を2種類に分けてしまうとは、さすが稀代のクリエイターである。

川崎で「中1男子殺害事件」が起きたのは必然か? 石井光太と磯部涼が見た地元の「不良カースト」

 2015年2月20日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で、中学1年生の少年の全裸遺体が発見された。カッターによる裂傷は43カ所に及ぶ。事件から1週間後、3人の少年が殺人の疑いで逮捕されたーー。

 いわゆる「川崎市中1男子生徒殺害事件」は、「川崎」という街を象徴する事件として、瞬く間に日本中に広まった。そこには、川崎が、そして日本が抱えるさまざまな問題が凝縮されていた。昨年12月、そんな事件の背景に迫った2冊のルポーー石井光太『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』(双葉社)、磯部涼『ルポ 川崎』(サイゾー)ーーが奇しくも同日に発売され、話題となっている。これらの著者たちが、現地で取材を重ねる中で見たものとは?

川崎は日本の未来の姿なのか?

『ルポ 川崎』より。2015年2月、中学1年生の少年が殺害され、遺体を遺棄された川崎区の多摩川河川敷。(写真/細倉真弓)

ーー今回、お2人は、偶然にも同じタイミングで「川崎」を舞台にした本を上梓されたわけですが、そこで大きな軸となっているのが「川崎中1男子生徒殺害事件」(以下、「中1男子殺害事件」「事件」など)です。取材と執筆を重ねる中で、事件や川崎という街について、どのようなものが見えてきたのか、お話を伺えればと思います。

磯部 石井さんの『43回の殺意』は、中1男子殺害事件を徹底的に掘り下げていましたが、僕の書いた『ルポ 川崎』は、事件はあくまで取っかかりであって、主題はその背景である川崎……中でも川崎区という街であり、そこで生きてきた人々の姿です。

石井 本の元になった「サイゾー」での連載は、やはり事件がきっかけで始められたのですか?

磯部 もちろん、大きなきっかけでしたが、簡易宿泊所火災事件や、老人ホーム連続殺人事件など、その後、同地で陰惨な事件が立て続けに起こったということに触発されたようなところがありました。

『ルポ 川崎』より。“ドヤ街”として知られる川崎区日進町の簡易宿泊所。(写真/細倉真弓)

ーー磯部さんは本の中で、川崎で中1男子殺害事件をはじめ「現在の日本が抱える問題を象徴していると思える事件が立て続けに起こった」と書かれています。川崎を、「日本の縮図」のようなものとしてご覧になられていたのでしょうか?

磯部 そうですね。あるいは、同時に「日本の未来」としても見ています。中1男子殺害事件は、犯人グループにフィリピンにルーツを持つ少年がいたことが排外主義を煽り、外国人市民の集住地域である川崎区桜本を狙ったヘイト・デモが繰り返されるようになりました。ただ、その桜本に代表されるように、川崎区には多文化共生の長い歴史があり、市民からデモへの抗議が起こったことを受けて、行政も全国に先駆けてヘイト・デモに対する事前規制ガイドラインを策定しました。日本は実質的には移民社会になっているわけですが、川崎区は様々な意味でモデルケースだといえます。だからこそ、川崎区について考えることは日本の未来について考えることにもつながるのではないかと。

石井 僕も川崎区を「近未来都市的なもの」として見ています。これから在日外国人が増え、格差が広がると、今の川崎区と同じような問題を抱える街がもっと増えていくことが予想されます。川崎区を、そうした「都市の未来予想図」として捉えることで、日本の未来を考えることにもつながるのではないか、そうした予感もありました。

『ルポ 川崎』より。川崎区池上町の路上で談笑するラップ・グループBAD HOPのメンバーたち。(写真/細倉真弓)

ーー『ルポ 川崎』は、事件が起点になりながらも、カルチャー方面からのアプローチを取っていることも特徴ですね。

磯部 昨今のラップ・ブームの火付け役となった「高校生RAP選手権」というテレビ番組の企画があるんですが、2012年7月の第1回大会の決勝戦が、T-PablowとLIL MANという川崎区出身の、当時15、6歳の若いラッパーの対決でした。その後、T-Pablowが率いるグループ「BAD HOP」は地元で人気になり、彼らにあこがれて小中高生がどっとラップを始めます。中1男子殺害事件発生当時、被害者の同級生がラップで追悼をする映像も話題になりました。BAD HOPは川崎区の荒れた環境で育ち、ラップによってそこから抜け出そうと、あるいは同じような環境にいる子どもたちの模範になろうとしていました。連発した事件の背景となるのが川崎の闇だとして、彼らをそこに灯った光だと捉えるというのが、取材開始当初に考えていた構想です。

石井 ということは、もともと土地勘もあったのですね。

磯崎 いえ、川崎駅前にある〈クラブチッタ〉というライヴ・ホールは日本のラップ・ミュージックにおける重要な場所で、高校生の頃から通っていましたが、その先は未知の世界でした。僕がBAD HOPを初めて取材したのが2014年5月。事件を挟んで2015年夏頃から彼らを水先人として、桜本や池上町のような多文化地区に足を運ぶようになります。そして、そこで出会った人々にまた案内してもらうということを繰り返して、土地の独自性みたいなものが見えるようになっていったんです。

不良コミュニティからはじかれた、不良的ないじめられっ子

ーー石井さんは、事件の報道を受けて、最初どのように感じましたか?

石井 事件の事実自体にさほど特徴がないのに、人々がものすごく注目するのが不思議でした。騒がれる少年事件というのは、「神戸連続児童殺傷事件」などのように、猟奇的な殺人というケースが多い。そして、そのことのインパクトが報道を加熱させるわけですが、今回の場合は、少年殺人事件としては決して珍しくない部類に入る事件だったにもかかわらず、なぜか多くの人の関心を集めました。そこに対する「なぜ?」が、最初の出発点だった。それと、犯人も被害者も、いわゆる「不良」ではなく、また加害者が「いじめられっ子」だったところにも関心を抱きました。

磯部 石井さんも『ルポ 川崎』から引用してくださっていましたが、BAD HOPのメンバーは主犯格について、「変わってるヤツという印象」「不良にあこがれがあるけど、輪には入ってこられない」「同い年にも不良がいるけど、そいつらには太刀打ちができないから、もっと下の子を引き連れるっていう」「事件のときも、暴力に慣れてないから、止めどころがわからなかったんだと思う」「あれは川崎の不良が起こした事件ではなくて、そこからはみだした子が起こした事件ですね」と語っていました。

石井 これが、いわゆる不良の起こした事件だったら、僕は普通に納得できたと思うんです。しかし、不登校で行き場のない子どもたちがイトーヨーカドーのゲームセンターでたまっているうちに知り合って、寂しさを紛らわせているうちに、誤解から暴走して起こした事件だった。

磯部 石井さんは少年事件の取材を数多くされていますが、今回の事件は特殊なケースなのでしょうか? あるいは、似たケースも多いのでしょうか?

石井 少年刑務所などで殺人事件を起こした子どもたちに会ったりしますが、彼らは重い罪を犯しながらも、筋金入りの不良というのが割合的に少ないんです。むしろ、虐待で人格が破壊されていたり、それに知的・精神的な部分で問題が重なっていたりするケースが非常に多い。感情的な部分や、コミュニケーション能力が欠損している子です。

磯部 まさに、今回の事件の加害少年たちもそうですね。

石井 特に感情が未分化な少年が多いですね。例えば、何か腹の立つことがあったりするとするじゃないですか。僕たちは普段、ムカつくにしてもいろいろな段階があって、グラデーションになっています。つまり、単に不愉快なのか、無視できるレベルなのか、それともブン殴らないと気が済まないレベルなのか……と、怒りの状態を分割することができる。人間は、さまざまなコミュニケーションを取る中で、感情を分化させることを覚えていくものなのですが、幼年期に虐待やネグレクトにさらされたことで、それができなくなってしまうケースがある。つまり、「ちょっと不愉快」と「殺したいほどムカついた」との境界がなくなってしまうわけです。

ーーちょっとした怒りが、すぐに殺意に直結してしまうようなことが起こり得る、と。

石井 これはあくまで一因ですが、彼らは自分たちでもなぜそんなことをしてしまったのかがわからないんです。だから、自分のしたことを説明できない。証言も二転三転してしまう。「ムカついたから殺した。でも殺したくなかった。なんで殺したかわからない」みたいな。一方、いわゆる筋金入りの不良は、彼らのようにはなることはありません。不良は上下関係を重んじるので、コミュニケーション・スキルが求められます。つまり、彼らにとって、相手への想像力は不可欠なんです。だからこそ、ラップや歌といった芸術表現をすることもできる。しかし、事件の犯人たちのようないじめられっ子は、日常的に虐げられていく中で、そうした回路がどんどん閉じていってしまうこともある。そうした不幸が、殺人にまで発展してしまったひとつの例として、この事件は位置づけられるのではないでしょうか。

「繋がる」ツールとしてのゲームと、その脆弱性

磯部 とはいえ、被害者と犯人グループがゲームセンターにたまって遊んでいたように、彼らの中でもコミュニケーションはあったわけですよね。

石井 いわゆるスクールカーストの底辺にいたり、行き場のなかったりする子たちが、そこに中学校を横断する形で集まってきて、複数のグループを形成しているんですよね。彼らの世界では、ゲームみたいなものが、人とつながるための重要なツールになっているという側面があります。今回取材した少年たちが共通して持っていたのが、「別に話はしたくないけど、ゲームをやるなら一緒にいてもいい」みたいな感覚です。それで、ひとつのグループがつくれてしまう。

磯部 一方、BAD HOPのメンバーたちはそのゲームセンターに行ったことがないと言っていたんですよ。彼らはもっと刺激的な遊びを知っていたからだろうし、そういった不良エリートが来ないからこそ、犯人グループみたいな子どもたちのたまり場として機能したんでしょうね。

石井 それなりに居心地もいいですしね。で、同じような境遇の子たちが集まってくる。誤解を招きたくないので詳しいことは『43回の殺意』を読んでいただきたいのですが、今回の犯人たちの間にはゲームやアニメでつながっていただけで、人間的なつながりがなかったので、ちょっとしたことでも仲間内で際限のない暴力沙汰になってしまったりしました。その延長線上で起きたのが今回の事件なんです。

ーー不良少年たちのコミュニティのあり方が、今と昔では、かなり変わってきているのでしょうか。

石井 昔の不良ーー例えば暴走族なら、ひとつの大きなピラミッドが形成され、仮に小さなコミュニティが生まれても、同じ地域であれば必ずその中に組み込まれていきました。一方、今のコミュニティはどんどん個別化し、それらがお互いにくっつくことがありません。規模が小さく、自閉していくので、援助する側もどこでどのような支援をすべきかが、すごくわかりにくくなっている。また、そうしたカーストからはじかれた者たちのグループ内で、また新たなカーストができ上がっていることも、問題を複雑にしている要因ではないでしょうか。

ーーこうした流れは、川崎という土地独自のものだと思いますか?

磯部 むしろ、川崎区には旧来的な、大きなピラミッド型の不良コミュニティが残っているという意味で独特かもしれません。『ルポ 川崎』にも、BAD HOPの「川崎の個性っていうのは、例えば、東京はいっぱいありますよね……不良の勢力みたいなものが。それが、川崎の場合はひとつしかなくて。東京は各々の先輩がいると思うんですけど、川崎は上下関係を辿っていけば、たったひとつの団体に行き着く」という発言がありましたが、実際、街を押さえる役割はI会系の団体が一手に引き受けています。だから、ある意味で平和なんですよね。大きな抗争がないので。ただ、ピラミッド型のコミュニティが強固だということは、そこから弾かれるとキツいということでもある。

『ルポ 川崎』より。川崎区の仲見世通にあるバーで挑発的に踊るゴーゴー・ダンサーたち。(写真/細倉真弓)

分裂する「多様性の街」

ーーそんな川崎の筋金入りの不良たちは、今回の事件をどのように見ていたのでしょうか?

磯部 先ほど挙げた、BAD HOPの「あれは川崎の不良が起こした事件ではなくて、そこからはみだした子が起こした事件ですね」という発言と同じようなことを言う若者は少なくなかったです。あるいは、「もはや、懐かしいな」「ああいう事件も川崎ではよく起こるから」「そもそも、あの河川敷はリンチをやるときの定番の場所で。今までだって死んだヤツはいるし」「それより、この前、もっとヤバいことがあって――」みたいな感じで、事件を凡庸化するというか。もちろん、中1男子殺害事件は本当にひどい事件であって、決して忘れてはならないと思いますが、それすら「よく起こる」と言わしめてしまう川崎区という街の環境こそが、あの事件を読み解く鍵であるように考えています。

石井 川崎という街にはいくつかの顔があって、まず大きく言うと、東京のベッドタウンですね。比較的豊かな人たちの街という顔です。一方で工業地帯ですから、工場の幹部もいれば、期間工みたいな人たちもいる。それぞれかなり生活様式は違ってきます。また、高齢化も目立ちます。

ーー分裂している、と。

石井 また、川崎にはもともと朝鮮人部落と呼ばれていた地区があったことによって、外国人を受け入れる土壌や文化があった。そのことで、さらに違った生活様式の家庭が混在することになりました。ちゃんと言っておきたいのは、僕としては、川崎の中でもそれが「多様性の街」としてプラスの形で回っている部分はたくさんあると思っています。街としてはすごく豊かな文化を持っていますから。

磯部 川崎区の中でも特に桜本では多文化共生が進んでいて、同地で行われるその名も「日本のまつり」という、神輿も出ればプンムルノリのパレードもあり、フィリピン料理やペルー料理の屋台が並ぶ地域の祭は象徴的です。

『ルポ 川崎』より。池上町で生まれ育ったBAD HOPのBark。(写真/細倉真弓)
『ルポ 川崎』より。川崎区桜本で行われた「日本のまつり」には南米系の住民も参加。(写真/細倉真弓)

石井 しかし、同時に一部のコミュニティでは、それが貧困問題などと合わさって悪い方向に作用しているところもあります。うまくいかないコミュニティは、うまくいっているコミュニティからは分裂してしまう。それで孤立してますます悪い方向へ物事が進んでしまうケースがあるんです。事件の少年たちのコミュニティがそのひとつであることは確かでしょう。

磯部 地域コミュニティがしっかりしているというのは、良い面もあれば悪い面もあるんですよね。地元の人に話を聞いていても、みんな、「川崎は暖かい」と口を揃えて言う一方で、「しがらみがある」「成功すると足を引っ張られる」みたいな意見もよく耳にしました。

石井 そうした街のあり方が、そのまま子どもたちの世界にも連綿と続いてしまっているようにも見えますね。

*後編につづく

(取材・構成/辻本力)

石井光太(いしい・こうた)
1977年、東京都生まれ。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材、執筆活動を行う。著書に『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』(新潮文庫)、『感染宣告』(講談社文庫)、『物乞う仏陀』『アジアにこぼれた涙』(文春文庫)など多数。事件ルポとして虐待事件を扱った『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』(新潮社)がある。昨年12月に新著『43回の殺意 川崎中1男子殺害事件の深層』を発表。

磯部涼(いそべ・りょう)
1978年生まれ。音楽ライター。主にマイナー音楽やそれらと社会との関わりについて執筆。著書に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)、『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト)、共著に九龍ジョーとの『遊びつかれた朝に』(Pヴァイン)、大田和俊之、吉田雅史との『ラップは何を映しているのか』(毎日新聞出版)、編著に『踊ってはいけない国、日本』『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(共に河出書房新社)などがある。昨年12月に新著『ルポ 川崎』を刊行。

強姦疑惑に助成金詐欺――高齢“お友達官僚”と長き安倍政権のよどみ

政治的無風の18年、安倍総裁は3選か

森友学園騒動、加計学園騒動をものともせず、10月の衆院選もしっかり大勝してみせた安倍晋三首相。18年は9月に自民党総裁選を控えるも、これまた勝ちは確実視されている。しかし、5年の長きに渡るこの長期政権のよどみは、各所に垣間見られるようで……。そうした安倍政権の舞台裏を、現役新聞記者らが語り合う!

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『安倍三代』(朝日新聞出版)

A:全国紙ベテラン記者
B:全国紙中堅記者
C:全国紙中堅記者

A 2017年は、森友学園や加計学園をめぐる問題で安倍政権のもろさが見えた1年だったね。希望の党の自滅で衆院選は乗り切ったけど、今年も新たな疑惑が出たら支持率がまた急落しかねない。そんな中で野党が注目しているのが、「もり」「かけ」に続く「スパ」だ。

B スーパーコンピューターの開発を手がけるベンチャー企業「ぺジーコンピューティング」による助成金詐欺事件ですね。東京地検特捜部が逮捕・起訴した同社の齊藤元章社長は、安倍晋三首相と昵懇といわれる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と財団法人を立ち上げた仲。山口氏は同社の顧問のような存在で、彼が永田町の高級ホテルに事務所を構えるための月100万円以上の家賃を、同社が負担していたともいわれています。

C ぺジー社のスパコンについては、麻生太郎財務相も国会で先進例として持ち上げていた。問題発覚後、麻生氏は番記者たちに、ぺジー社のスパコンを「見に行ったくらい」と癒着を否定していますが、齊藤社長が山口氏を通して安倍首相や麻生氏の「ご威光」をちらつかせ国の外郭団体から助成金や融資金を引き出していた可能性は否定できず、次の通常国会で野党からの追及は必至です。

MEMO<>『強姦疑惑』
元TBS記者の山口敬之氏による、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のこと。山口氏は安倍首相と親しく、当時の警視庁幹部による“もみ消し”がささやかれている。

A 検察サイドは担当記者たちに「政治案件ではない」と言って、官邸関与の打ち消しに必死なようだ。ただ、山口氏が助成金詐取の現場にいたら共犯に問われる可能性はあるし、脱税などほかの容疑が引っかかる可能性もある。立件されなかったらされなかったで、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のときと同じく、「官邸から捜査当局への圧力」を疑う声は出るだろうし、尾を引きそうな案件だよね。

B 特捜部の案件としては、年末に大騒ぎになったリニア談合事件も、同じく検察による「安倍おろし」の一環ではないかとささやかれています。リニア新幹線の発注者であるJR東海の葛西敬之名誉会長は、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長と並ぶ経済界の保守派の重鎮であり、安倍首相の後見人ともいわれるほど仲が良い。リニア事件で真っ先に家宅捜索された大林組の4代目、大林剛郎会長と安倍首相の関係の近さを指摘する声もあります。17年7月には安倍首相が、リニア新幹線の東京~大阪間の開業を8年前倒しする経済対策を発表し、国からの財政投融資として3兆円を投入することも決まりましたしね。

C ただ担当記者に聞くと、検察の捜査線上には政治家の名前は出てきていないようです。検察による安倍政権への揺さぶりという「陰謀論」的な見方がネットで広がっていますが、現状では「そういう見方もできなくはない」という程度では。

A 確かに、10年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件以来、特捜部はすっかり落ち目。ロッキード事件やリクルート事件などで現職閣僚たちの疑惑に切り込んでいった頃の元気などない。大手メディア側も、かつては特捜部担当に社会部のエース級を4~5人送り込み、わずか40人ほどの特捜部検事を集中的に回らせ、取材競争をなんとか勝ち抜こうとしていたけど……いまでは特捜部による事件の少なさに、担当記者の数を減らす新聞も出るほど。実際、紙面に記事を書ける機会も減っていて、若手がなかなかやりたがらないとも聞く。

B そういう意味で今回のリニア事件は、東京地検特捜部にとって久々の大型案件。12月8日に大林組に最初の家宅捜索に入る際には、気づいていないメディアの記者にわざわざ検察幹部がガサ入れを匂わせ、係官が捜索に入るところの絵を撮らせたようです。特捜部の存在をPRしたかったんでしょうね。でも現状では、民間企業同士の工事契約に関する不正事件にすぎない。政治部や経済部に影響を与えるところまでいかない、いわゆる「社会部マター」として終わりそうで、いまの政権を揺さぶる案件にまでは発展しそうな気がしませんねえ。

C 結局、検察当局も首相官邸に首根っこをつかまれている感じがします。安倍政権になってから内閣人事局ができて、法務省の検察幹部の人事にも官邸の意向が働くようになった。例えば、16年夏に林真琴刑事局長を事務次官に昇格させようとした法務省の人事案。これは官邸の注文でひっくり返り、どこかの高検検事長に転出予定だった黒川弘務官房長が事務次官に昇格したともっぱらです。黒川氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する訴訟や共謀罪の成立などを担当した人物で、菅義偉官房長官の覚えが非常にめでたかった。

A いまの首相官邸は結局、“お友達人事”なんだよね。信頼できるコワモテ官僚たちを引き留めて、政権運営の基軸にする。ただ、第2次安倍政権も5年を越える中で、主要官僚たちの高齢化【1】も目立つ。今年9月の自民党総裁選で安倍首相が3選されたら、戦前の桂太郎元首相を抜いて憲政史上最長の総理大臣となる見込みだけど、側近たちの刷新がうまくいかないと、足元をすくわれることにもなりかねないだろう。

B その総裁選は、岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが対抗馬とされていますが、「安倍一強」を揺るがすだけの勢力は作りきれておらず、首相の3選は間違いなさそう。18年は国政選挙もないし、政治的には「無風」の年になるかもしれない。

C だからこそマスコミ的には、新元号のスクープ合戦【2】が見どころです。平成の元号は毎日新聞が唯一、発表当日の夕刊早版にねじ込んでスクープしたとされています。ただ、実際は30分ほど早かっただけで、特ダネと認めてない社もあるみたい(笑)。

A 大手メディアの間ではすでに、「新元号だけは抜かれるな」と編集幹部から号令が飛んでいるみたいだね。各社とも宮内庁担当の記者を増強して、19年4月末の天皇陛下の退位に備えているようだ。ただ今回の新元号については、過去の安倍政権の重要事項の決定時と同じく、首相のお気に入りとされるNHK政治部の岩田明子記者が、発表直前にドヤ顔でスクープするのではとささやく記者が多いね。

B 安倍政権長期化の下で、いろんなところに“オリ”がたまっている気がしますね。メディアに潜む“お友達記者”もそうですし、大学もリニアもスパコンも利権のあるところにはすべて首相と仲のいい人物が居座っていて、それがペジー社の齊藤社長のように、その威を借りようとする人物がたまにひょっこり顔を出してメディアに叩かれはするけれど……という感じ。現職官僚と酒を飲むと、トップダウンで物事を決めようとするいまの官邸のやり方に辟易しているという声を本当によく聞きます。第2の前川喜平・前文科次官のような内部告発者が出てきて、加計学園問題のような騒動が再び起きないとも限りませんよね。

(構成/編集部)

【1】主要官僚たちの高齢化
安倍晋三首相が御年63歳なのに対し、元外務次官で国家安全保障局長の谷内正太郎氏は74歳。また、警察官僚出身で官房副長官の杉田和博氏も76歳と、70代も珍しくない。安倍首相と仲の良いことで知られる、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長に至っては、定年をすでに2回も延長しているのである。

【2】新元号のスクープ合戦
「平成」ではスクープをもぎ取った毎日新聞だが、逆に昭和に変わる際は、その毎日新聞の前身である東京日日新聞が、「光文」が新元号だとスクープ、したのだが……一部の社も追いかけたこの「光文」、結局ふたを開けてみたら「昭和」の間違いで、「光文事件」とも語り継がれる世紀の大誤報となってしまった。ちなみに「大正」は、当時朝日新聞の政治部記者であり、のちに政界入りする緒方竹虎が見事に抜いたと語り継がれている。

強姦疑惑に助成金詐欺――高齢“お友達官僚”と長き安倍政権のよどみ

政治的無風の18年、安倍総裁は3選か

森友学園騒動、加計学園騒動をものともせず、10月の衆院選もしっかり大勝してみせた安倍晋三首相。18年は9月に自民党総裁選を控えるも、これまた勝ちは確実視されている。しかし、5年の長きに渡るこの長期政権のよどみは、各所に垣間見られるようで……。そうした安倍政権の舞台裏を、現役新聞記者らが語り合う!

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『安倍三代』(朝日新聞出版)

A:全国紙ベテラン記者
B:全国紙中堅記者
C:全国紙中堅記者

A 2017年は、森友学園や加計学園をめぐる問題で安倍政権のもろさが見えた1年だったね。希望の党の自滅で衆院選は乗り切ったけど、今年も新たな疑惑が出たら支持率がまた急落しかねない。そんな中で野党が注目しているのが、「もり」「かけ」に続く「スパ」だ。

B スーパーコンピューターの開発を手がけるベンチャー企業「ぺジーコンピューティング」による助成金詐欺事件ですね。東京地検特捜部が逮捕・起訴した同社の齊藤元章社長は、安倍晋三首相と昵懇といわれる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と財団法人を立ち上げた仲。山口氏は同社の顧問のような存在で、彼が永田町の高級ホテルに事務所を構えるための月100万円以上の家賃を、同社が負担していたともいわれています。

C ぺジー社のスパコンについては、麻生太郎財務相も国会で先進例として持ち上げていた。問題発覚後、麻生氏は番記者たちに、ぺジー社のスパコンを「見に行ったくらい」と癒着を否定していますが、齊藤社長が山口氏を通して安倍首相や麻生氏の「ご威光」をちらつかせ国の外郭団体から助成金や融資金を引き出していた可能性は否定できず、次の通常国会で野党からの追及は必至です。

MEMO<>『強姦疑惑』
元TBS記者の山口敬之氏による、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のこと。山口氏は安倍首相と親しく、当時の警視庁幹部による“もみ消し”がささやかれている。

A 検察サイドは担当記者たちに「政治案件ではない」と言って、官邸関与の打ち消しに必死なようだ。ただ、山口氏が助成金詐取の現場にいたら共犯に問われる可能性はあるし、脱税などほかの容疑が引っかかる可能性もある。立件されなかったらされなかったで、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のときと同じく、「官邸から捜査当局への圧力」を疑う声は出るだろうし、尾を引きそうな案件だよね。

B 特捜部の案件としては、年末に大騒ぎになったリニア談合事件も、同じく検察による「安倍おろし」の一環ではないかとささやかれています。リニア新幹線の発注者であるJR東海の葛西敬之名誉会長は、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長と並ぶ経済界の保守派の重鎮であり、安倍首相の後見人ともいわれるほど仲が良い。リニア事件で真っ先に家宅捜索された大林組の4代目、大林剛郎会長と安倍首相の関係の近さを指摘する声もあります。17年7月には安倍首相が、リニア新幹線の東京~大阪間の開業を8年前倒しする経済対策を発表し、国からの財政投融資として3兆円を投入することも決まりましたしね。

C ただ担当記者に聞くと、検察の捜査線上には政治家の名前は出てきていないようです。検察による安倍政権への揺さぶりという「陰謀論」的な見方がネットで広がっていますが、現状では「そういう見方もできなくはない」という程度では。

A 確かに、10年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件以来、特捜部はすっかり落ち目。ロッキード事件やリクルート事件などで現職閣僚たちの疑惑に切り込んでいった頃の元気などない。大手メディア側も、かつては特捜部担当に社会部のエース級を4~5人送り込み、わずか40人ほどの特捜部検事を集中的に回らせ、取材競争をなんとか勝ち抜こうとしていたけど……いまでは特捜部による事件の少なさに、担当記者の数を減らす新聞も出るほど。実際、紙面に記事を書ける機会も減っていて、若手がなかなかやりたがらないとも聞く。

B そういう意味で今回のリニア事件は、東京地検特捜部にとって久々の大型案件。12月8日に大林組に最初の家宅捜索に入る際には、気づいていないメディアの記者にわざわざ検察幹部がガサ入れを匂わせ、係官が捜索に入るところの絵を撮らせたようです。特捜部の存在をPRしたかったんでしょうね。でも現状では、民間企業同士の工事契約に関する不正事件にすぎない。政治部や経済部に影響を与えるところまでいかない、いわゆる「社会部マター」として終わりそうで、いまの政権を揺さぶる案件にまでは発展しそうな気がしませんねえ。

C 結局、検察当局も首相官邸に首根っこをつかまれている感じがします。安倍政権になってから内閣人事局ができて、法務省の検察幹部の人事にも官邸の意向が働くようになった。例えば、16年夏に林真琴刑事局長を事務次官に昇格させようとした法務省の人事案。これは官邸の注文でひっくり返り、どこかの高検検事長に転出予定だった黒川弘務官房長が事務次官に昇格したともっぱらです。黒川氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する訴訟や共謀罪の成立などを担当した人物で、菅義偉官房長官の覚えが非常にめでたかった。

A いまの首相官邸は結局、“お友達人事”なんだよね。信頼できるコワモテ官僚たちを引き留めて、政権運営の基軸にする。ただ、第2次安倍政権も5年を越える中で、主要官僚たちの高齢化【1】も目立つ。今年9月の自民党総裁選で安倍首相が3選されたら、戦前の桂太郎元首相を抜いて憲政史上最長の総理大臣となる見込みだけど、側近たちの刷新がうまくいかないと、足元をすくわれることにもなりかねないだろう。

B その総裁選は、岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが対抗馬とされていますが、「安倍一強」を揺るがすだけの勢力は作りきれておらず、首相の3選は間違いなさそう。18年は国政選挙もないし、政治的には「無風」の年になるかもしれない。

C だからこそマスコミ的には、新元号のスクープ合戦【2】が見どころです。平成の元号は毎日新聞が唯一、発表当日の夕刊早版にねじ込んでスクープしたとされています。ただ、実際は30分ほど早かっただけで、特ダネと認めてない社もあるみたい(笑)。

A 大手メディアの間ではすでに、「新元号だけは抜かれるな」と編集幹部から号令が飛んでいるみたいだね。各社とも宮内庁担当の記者を増強して、19年4月末の天皇陛下の退位に備えているようだ。ただ今回の新元号については、過去の安倍政権の重要事項の決定時と同じく、首相のお気に入りとされるNHK政治部の岩田明子記者が、発表直前にドヤ顔でスクープするのではとささやく記者が多いね。

B 安倍政権長期化の下で、いろんなところに“オリ”がたまっている気がしますね。メディアに潜む“お友達記者”もそうですし、大学もリニアもスパコンも利権のあるところにはすべて首相と仲のいい人物が居座っていて、それがペジー社の齊藤社長のように、その威を借りようとする人物がたまにひょっこり顔を出してメディアに叩かれはするけれど……という感じ。現職官僚と酒を飲むと、トップダウンで物事を決めようとするいまの官邸のやり方に辟易しているという声を本当によく聞きます。第2の前川喜平・前文科次官のような内部告発者が出てきて、加計学園問題のような騒動が再び起きないとも限りませんよね。

(構成/編集部)

【1】主要官僚たちの高齢化
安倍晋三首相が御年63歳なのに対し、元外務次官で国家安全保障局長の谷内正太郎氏は74歳。また、警察官僚出身で官房副長官の杉田和博氏も76歳と、70代も珍しくない。安倍首相と仲の良いことで知られる、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長に至っては、定年をすでに2回も延長しているのである。

【2】新元号のスクープ合戦
「平成」ではスクープをもぎ取った毎日新聞だが、逆に昭和に変わる際は、その毎日新聞の前身である東京日日新聞が、「光文」が新元号だとスクープ、したのだが……一部の社も追いかけたこの「光文」、結局ふたを開けてみたら「昭和」の間違いで、「光文事件」とも語り継がれる世紀の大誤報となってしまった。ちなみに「大正」は、当時朝日新聞の政治部記者であり、のちに政界入りする緒方竹虎が見事に抜いたと語り継がれている。

キンプリ、デビューもすでに飽和状態? ジャニーズの野望とアキレス腱

ジャニーズの野望とアキレス腱の画像1

 2018年を迎えジャニーズの動きが活発化し、連日のようにスポーツ紙の芸能面を飾っている。

「スポーツ紙は野球や競馬好きの男が読む新聞。ジャニーズの話なんて興味ないのでは~」と言う素朴な疑問を聞くが、狙いは別なところにあるという。

「たくさんの芸能人を差し置いて記事になるのは、注目度が高いからとアピールできる。注目度が高いということはCMなどの仕事面で有利に働く。逆にスキャンダルはマイナスになるから、できるだけ抑える。ジャニーズの伝統的な戦略です。なかなかマネはできない」(広告関係者)

 事実、ジャニーズのゴシップは伏せられ、「CD売り上げ1位」といった良い話は取り上げられる。今年は年明けからスポーツ紙の紙面を圧倒するジャニーズ。1月17日には新たな6人組のグループ「King&Prince」(通称キンプリ)のCDデビューが決定した記事が紙面を飾った。「目指すは世界一」などこれ以上ない賛辞の記事が目に付いたが、実は、ジャニーズの新人グループのCDデビューは4年ぶりのことになる。

 そこにはジャニーズならではの贅沢な悩みが隠されている。かつてはジャニー喜多川社長自ら街に出るなどして金の卵となる少年をスカウトしてきた。東山紀之が渋谷駅前の交差点で声を掛けられ、ジャニーズに入ったことは有名な話である。しかし、時代は移り、ネットが発達した今、スカウトせずとも、自ら応募してくる少年は絶えない。本人よりも母親が「うちの子は可愛い。絶対に木村拓哉ぐらいになれる」と応募してくるケースも珍しくない。スカウトに出ずともネットなどで選べる時代に変わっている。

「大手事務所はビジュアルと履歴でとりあえずいい子をセレクトして入れて、自社でレッスンさせている。そこでふるいにかけてデビューさせるか、落とすか決める。入る側もレッスン代が無料なので、落ちたところで文句は言えない。ジャニーズはすでに300人ぐらいジュニアと呼ばれるレッスン生がいると聞きます」(芸能プロ関係者)

 ジュニアもデビューに向けて熾烈な内部競争があり、デビューするのは狭き門となっている。ビジュアル、レッスンともに認められても、デビューとなるとさらなる難関がある。それは、現役で活躍中の先輩タレントたちの存在である。ジャニーズはテレビを中心に活動するが、先輩がテレビ枠を独占している。下からきた後輩が入る余地などない。

「いくらジャニーズの力をもってしても、出演できる番組枠は決まっている。上がいなくなれば下が入れるが、上の人気が衰えないから、なかなか空かない。嵐の人気が落ちれば、下の者がその枠に入れるのですが、人気が落ちないうちは無理」(テレビ関係者)

 昔は「アイドルの人気は長くて5年ぐらい」と言われていたが、近年、ジャニーズタレントとしての活動期間は10年が当たり前。20年近くアイドルの座を維持しているのもザラになった。男性アイドルはジャニーズの独占状態。まだまだ売れている同じ事務所の先輩をわざわざ降ろして後輩を入れるわけにはいかない。なのに、ジュニアたちは溢れかえり、デビューを心待ちにしている。アイドルを作り過ぎて飽和状態になっているようなもの。

 そんな中、キンプリは選ばれし期待の精鋭部隊という。「事務所も大プッシュ。今年の一押しグループ」と言われ、実際、グループ活動だけでなく、すでにソロとしてドラマや映画出演をしている子もいるという。

「実績がなくてもいきなり主演クラスのドラマに出演できるのがジャニーズの力。ジャニーズには今ではNHKも忖度しますから、ドラマなんか簡単に入れる。これが今のテレビドラマの作り方」(テレビ関係者)

 ジャニーズタレント主演のドラマが増えるわけである。今年はキンプリだけでなく、
関西でも「関ジャニ∞」に続くジュニアが関西ローカルで活動を開始している。勢力をさらに拡大するジャニーズ軍団。その狙いを元ジャニーズ担当記者が話す。

「ジャニー社長は東京の一角をニューヨークのブロードウェーのようにしたいのが長年の夢。そこでジャニー氏がプロデュースした舞台で自身が育て上げたタレントがショーをする。今も日比谷の帝劇や新橋演舞場でショーをやり続けるのは、そんな拘りからです。ただ、時間的に難しくなっているが、2020年に東京五輪が開催される。狙いは五輪のイベント。特に全世界が注目する新国立競技場の開幕式。オープニングのイベントにジャニーズタレント総出のショーをやるのが目標と言われています。プロデュースはもちろんジャニー氏。その時に中心になるのがキンプリら若手だと言われています。ジャニーズタレントが総出でパフォーマンスをすれば、世界にその名を轟かせることができる」

 ジュニアが溢れる悩みを抱えながら、壮大な野望に向けてジャニーズは本格的に動き出している。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

キンプリ、デビューもすでに飽和状態? ジャニーズの野望とアキレス腱

ジャニーズの野望とアキレス腱の画像1

 2018年を迎えジャニーズの動きが活発化し、連日のようにスポーツ紙の芸能面を飾っている。

「スポーツ紙は野球や競馬好きの男が読む新聞。ジャニーズの話なんて興味ないのでは~」と言う素朴な疑問を聞くが、狙いは別なところにあるという。

「たくさんの芸能人を差し置いて記事になるのは、注目度が高いからとアピールできる。注目度が高いということはCMなどの仕事面で有利に働く。逆にスキャンダルはマイナスになるから、できるだけ抑える。ジャニーズの伝統的な戦略です。なかなかマネはできない」(広告関係者)

 事実、ジャニーズのゴシップは伏せられ、「CD売り上げ1位」といった良い話は取り上げられる。今年は年明けからスポーツ紙の紙面を圧倒するジャニーズ。1月17日には新たな6人組のグループ「King&Prince」(通称キンプリ)のCDデビューが決定した記事が紙面を飾った。「目指すは世界一」などこれ以上ない賛辞の記事が目に付いたが、実は、ジャニーズの新人グループのCDデビューは4年ぶりのことになる。

 そこにはジャニーズならではの贅沢な悩みが隠されている。かつてはジャニー喜多川社長自ら街に出るなどして金の卵となる少年をスカウトしてきた。東山紀之が渋谷駅前の交差点で声を掛けられ、ジャニーズに入ったことは有名な話である。しかし、時代は移り、ネットが発達した今、スカウトせずとも、自ら応募してくる少年は絶えない。本人よりも母親が「うちの子は可愛い。絶対に木村拓哉ぐらいになれる」と応募してくるケースも珍しくない。スカウトに出ずともネットなどで選べる時代に変わっている。

「大手事務所はビジュアルと履歴でとりあえずいい子をセレクトして入れて、自社でレッスンさせている。そこでふるいにかけてデビューさせるか、落とすか決める。入る側もレッスン代が無料なので、落ちたところで文句は言えない。ジャニーズはすでに300人ぐらいジュニアと呼ばれるレッスン生がいると聞きます」(芸能プロ関係者)

 ジュニアもデビューに向けて熾烈な内部競争があり、デビューするのは狭き門となっている。ビジュアル、レッスンともに認められても、デビューとなるとさらなる難関がある。それは、現役で活躍中の先輩タレントたちの存在である。ジャニーズはテレビを中心に活動するが、先輩がテレビ枠を独占している。下からきた後輩が入る余地などない。

「いくらジャニーズの力をもってしても、出演できる番組枠は決まっている。上がいなくなれば下が入れるが、上の人気が衰えないから、なかなか空かない。嵐の人気が落ちれば、下の者がその枠に入れるのですが、人気が落ちないうちは無理」(テレビ関係者)

 昔は「アイドルの人気は長くて5年ぐらい」と言われていたが、近年、ジャニーズタレントとしての活動期間は10年が当たり前。20年近くアイドルの座を維持しているのもザラになった。男性アイドルはジャニーズの独占状態。まだまだ売れている同じ事務所の先輩をわざわざ降ろして後輩を入れるわけにはいかない。なのに、ジュニアたちは溢れかえり、デビューを心待ちにしている。アイドルを作り過ぎて飽和状態になっているようなもの。

 そんな中、キンプリは選ばれし期待の精鋭部隊という。「事務所も大プッシュ。今年の一押しグループ」と言われ、実際、グループ活動だけでなく、すでにソロとしてドラマや映画出演をしている子もいるという。

「実績がなくてもいきなり主演クラスのドラマに出演できるのがジャニーズの力。ジャニーズには今ではNHKも忖度しますから、ドラマなんか簡単に入れる。これが今のテレビドラマの作り方」(テレビ関係者)

 ジャニーズタレント主演のドラマが増えるわけである。今年はキンプリだけでなく、
関西でも「関ジャニ∞」に続くジュニアが関西ローカルで活動を開始している。勢力をさらに拡大するジャニーズ軍団。その狙いを元ジャニーズ担当記者が話す。

「ジャニー社長は東京の一角をニューヨークのブロードウェーのようにしたいのが長年の夢。そこでジャニー氏がプロデュースした舞台で自身が育て上げたタレントがショーをする。今も日比谷の帝劇や新橋演舞場でショーをやり続けるのは、そんな拘りからです。ただ、時間的に難しくなっているが、2020年に東京五輪が開催される。狙いは五輪のイベント。特に全世界が注目する新国立競技場の開幕式。オープニングのイベントにジャニーズタレント総出のショーをやるのが目標と言われています。プロデュースはもちろんジャニー氏。その時に中心になるのがキンプリら若手だと言われています。ジャニーズタレントが総出でパフォーマンスをすれば、世界にその名を轟かせることができる」

 ジュニアが溢れる悩みを抱えながら、壮大な野望に向けてジャニーズは本格的に動き出している。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

普遍性の裏に隠れたイデオロギーと時代性――サイゾー的視点から読み解く『漫画 君たちはどう生きるか』

出版界のヒットメーカーが編集を手がけ、瞬く間に100万部を突破した『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。糸井重里ら著名人も称賛のコメントを寄せ、メディアにも絶賛の記事が並んでいる。本稿では、そんな同書の裏にあるイデオロギーや時代性を、“サイゾー的”に批評、レビューしてみると……。

『君たちはどう生きるか』

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原作・吉野源三郎
漫画・羽賀翔一

主人公は旧制中学に通う15歳の少年・コペル君。彼は叔父さんと対話を重ねながら、いじめへの対処法について悩む。友だちの家の貧しさに触れては、貧困問題を考える。そして「友だちを裏切る」という辛く厳しい経験も経て、勇気や友情のあり方を考え、成長していく……。ヒューマニズムの精神に根ざした成長譚が感動を誘う、2017年の話題作。


 8月24日の発売から4カ月あまりで100万部を突破と、2017年を代表するベストセラーとなった『漫画 君たちはどう生きるか』。原作本の発行は1937年で、著者は岩波少年文庫の創設にも尽力した編集者・児童文学者の吉野源三郎。近年までは岩波文庫版が広く流通しており、80年にわたって読み継がれてきた名著だ。

 本書が大ヒットしたのは、子ども向けの啓蒙書、道徳の書の色合いも濃かった原作本を、より自己啓発色を強く打ち出し漫画化した点にあるだろう。担当編集者は、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『嫌われる勇気』の編集者として知られる柿内芳文氏と、『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を手がけた佐渡島庸平氏(コルク代表)という大ヒットメーカーだ。

 また、旧制中学に通う15歳の少年・コペル君と叔父さんとの対話を通じ、いじめ、友情、勇気といったテーマを掘り下げていく内容には、時代に左右されない普遍性がある。一方で物語には、家の貧しさを理由に学校に通えない同級生も登場。彼と接するなかで貧困問題について考える部分は、格差の拡大する現代日本には特に切実に響くテーマとなっており、それもヒットの要因と言えるだろう。

 本稿では、そんな『漫画 君たちはどう生きるか』を、サイゾーにゆかりのある有識者たちが分析。それぞれの専門分野の視点から、ヒットの背景や、本書の裏にある時代性、イデオロギーまで読み解いていく。

(協力/古澤誠一郎)

【お笑い芸人・おたけ】かわいい女子とどう生きるか
【イスラーム研究家・中田考】これは呪縛の書だ
【辛酸なめ子】無職おじさんの共産主義
【精神科医・岩波明】ピュアな革命思想
【クロサカタツヤ】学びと発見のヒント
【音楽ライター・磯部涼】川崎の不良にも届くのか
【音楽ジャーナリスト・小林雅明】これがヒップホップならば
【更科修一郎】あからさまな自己啓発書

普遍性の裏に隠れたイデオロギーと時代性――サイゾー的視点から読み解く『漫画 君たちはどう生きるか』

出版界のヒットメーカーが編集を手がけ、瞬く間に100万部を突破した『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。糸井重里ら著名人も称賛のコメントを寄せ、メディアにも絶賛の記事が並んでいる。本稿では、そんな同書の裏にあるイデオロギーや時代性を、“サイゾー的”に批評、レビューしてみると……。

『君たちはどう生きるか』

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原作・吉野源三郎
漫画・羽賀翔一

主人公は旧制中学に通う15歳の少年・コペル君。彼は叔父さんと対話を重ねながら、いじめへの対処法について悩む。友だちの家の貧しさに触れては、貧困問題を考える。そして「友だちを裏切る」という辛く厳しい経験も経て、勇気や友情のあり方を考え、成長していく……。ヒューマニズムの精神に根ざした成長譚が感動を誘う、2017年の話題作。


 8月24日の発売から4カ月あまりで100万部を突破と、2017年を代表するベストセラーとなった『漫画 君たちはどう生きるか』。原作本の発行は1937年で、著者は岩波少年文庫の創設にも尽力した編集者・児童文学者の吉野源三郎。近年までは岩波文庫版が広く流通しており、80年にわたって読み継がれてきた名著だ。

 本書が大ヒットしたのは、子ども向けの啓蒙書、道徳の書の色合いも濃かった原作本を、より自己啓発色を強く打ち出し漫画化した点にあるだろう。担当編集者は、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『嫌われる勇気』の編集者として知られる柿内芳文氏と、『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を手がけた佐渡島庸平氏(コルク代表)という大ヒットメーカーだ。

 また、旧制中学に通う15歳の少年・コペル君と叔父さんとの対話を通じ、いじめ、友情、勇気といったテーマを掘り下げていく内容には、時代に左右されない普遍性がある。一方で物語には、家の貧しさを理由に学校に通えない同級生も登場。彼と接するなかで貧困問題について考える部分は、格差の拡大する現代日本には特に切実に響くテーマとなっており、それもヒットの要因と言えるだろう。

 本稿では、そんな『漫画 君たちはどう生きるか』を、サイゾーにゆかりのある有識者たちが分析。それぞれの専門分野の視点から、ヒットの背景や、本書の裏にある時代性、イデオロギーまで読み解いていく。

(協力/古澤誠一郎)

【お笑い芸人・おたけ】かわいい女子とどう生きるか
【イスラーム研究家・中田考】これは呪縛の書だ
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