ルミネ、キリンはなぜ炎上? ジェンダーと軋轢が起こる理由――「広告は、何も考えていないような人に訴求したい」

――女性を描いた広告や作品が、ネットを中心に炎上することが珍しくなくなった。マーケティングに基づいたコンテンツとジェンダーが軋轢を生む中で、その背景にあるものとは一体なんなのだろうか?

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絵本作家・のぶみ氏が作詞を担当した楽曲「あたしおかあさんだから」は、賛否両論を巻き起こした。(画像は、のぶみ氏のオフィシャルサイトより)

 近年、広告を中心としたコンテンツにおける“女性の描かれ方”が物議を醸し、炎上するといった事例が後を絶たない。左ページのコラムに挙げた代表的な事例のほかにも、壇蜜を起用して内容が「過剰に性的だ」と批判が起こった宮城県のPR動画や、「母親の自己献身を美化している」として絵本作家ののぶみ氏が作詞を手がけた楽曲「あたしおかあさんだから」など、「女性はこうあるべき」、あるいは「女性にはこうあってほしい」といったジェンダー(社会的に要求された性別役割)を押し付けるようなコンテンツに批判が集まっている。

 ジェンダーとマーケティングの関係性を見ることで、炎上の裏側にある構造について考えていこう。

 まず、コンテンツ内での“女性の描かれ方”について、制作者はどう感じているのか? 例えば、大手ゲーム会社で働く女性クリエイターのA氏は、次のように話す。

「自社で開発するゲームに登場する女性キャラクターの描き方には、違和感を持つことも多いです。みんな胸を強調しているし、『女の子は普通、こんなことしない』とか『女子力が高い』といった、ジェンダーを押し付けるようなセリフがあっても、制作者には男性が多いからか、誰もそんなことを気にしたりしません。

 女性から見ると、男性に都合の良い女性ばかり登場していると感じてしまいます」

 広告業界関係者のB氏が続ける。

「まず最初に、広告で『わざと炎上させたい』という話が来ることは、ほぼないと言っておきます。例えば、花王では出来上がった広告を大勢の女性モニターに見せて、表現に問題がないかをチェックするようにしていると聞きました。

 ただ、広告では『限られた時間の中でターゲットにわかりやすくメッセージを届けないといけない』という意識が強いので、女性を主人公として描いた結果、“過剰な女子”が描かれてしまう、ということはよくあります。女性をターゲットとしたクライアントから『もっとわかりやすくキャピキャピした女の子にしてください』などと言われることもざらです。特に、美容などのコンプレックス産業の場合、ターゲットとなる視聴者と広告で描かれる女性を同一化させて、『こうなりたい!』あるいは『こうはなりたくない!』と思わせることが購買意欲につながるので。そこで広告のターゲットとして想定していない人が見た時に、“女性の描き方”が偏っている、と思われてしまうのでしょう」

 こうした何気ないジェンダーの押し付けや“性の商品化”は、ターゲットとなる購買層が見た場合には問題化しにくいが、外部に届いた途端、表面化することも多い。

メディアや広告が植え付けたジェンダー

 広告やマーケティングの分野で根強い考えとしてあるのが、「M1層」「F1層」といった性別と年齢別の顧客区分。20代未満を2つに、20代以上の男女を3つに分け、計8つの集団としてターゲット顧客を捉える発想だ。「広告業界では広く使われている」(同)というこの区分だが、『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社)といった著書を持つ、大妻女子大学文学部の田中東子准教授は、次のように指摘する。

「私が調べたところ、『F1層』といった考え方は1970年代にテレビ業界や広告代理店で生まれた、日本独自の分類のようです。この頃はテレビが急速に普及する時代で、同時にマスメディアが“ジェンダー”を広く植え付けていった時代でもあります。例えば、ニュースを読むのは決まって男性アナウンサーでした。

 マーケティングでは、『20代の女性はこういうものが好き』という多数派の意見をもとに、商品やコンテンツを消費者に与えていきます。比較的数の多い部分だけが再生産されることで、ステレオタイプやジェンダー観は強固なものとなってしまいます。

 フェミニズムはこうしたステレオタイプ化された女性像に対して異議を唱え、90年代半ば頃からは、ネットなどを通じて女性自身が描く新しい女性像を発信する第三波フェミニズムが勃興してきます。この背景には、2000年代から女性のライフプランが多様化し、旧来の女性像とは違う生き方をする女性が増えてきたということもあるでしょう」

 こうした流れもあってか、海外を中心に「フェミニズム」と「アドバタイジング(広告)」を組み合わせた「フェムバタイジング」という言葉が生まれ、女性を力づけるような広告を打ち出す動きもある。田中氏はこうも話す。

「映像や写真というのはすごく複雑で、その読み取り方はひとつではありません。広告やメディアが一義的なメッセージを発信しようと思っても、受け取る側はさまざまな解釈を行います。これまで分断されていたマイノリティの意見も、SNSなどでつながることで、大きな力を持てるようになりました。その事実を踏まえ、今まで主流だと思われていた表現も、実は主流ではなかったのかもしれない、ということに思いをはせるきっかけとして、ある意味、炎上は良いことだと私は思っています」

 前出のB氏は「広告の現場では、よりわかりやすく、何も考えていないような人に訴求したい、という話は頻繁に出てくる」とも話した。しかし、現実は多義的で複雑だ。そう考えると、これらの炎上事例は、マーケティングのメソッドにのっとり、わかりやすさを追求した結果、生じてしまった軋轢といえるのではないだろうか。

(文/須賀原みち)

■男のエロ妄想に、斜に構えたカリカチュアライズ……どこがマズかった!? 女性を描いた広告炎上事件簿

――広告における女性の描き方をめぐって、近年では炎上が珍しくない。偏った女性像を描いて大手企業が“やらかして”しまった事例をおさらいしていこう。

【1】「ウルトラアタックNeo 広がっています篇」
花王

本文中で「女性の意見を取り入れるチェック体制がある」と言われていた花王だが、14年公開のCM「ウルトラアタックNeo 広がっています篇」では、「育休明けママ 会社員」「幼稚園ママ 主婦」「部活応援ママ 女優」と、“洗濯=ママ”と結びつけて描かれており、大炎上ではないものの、一部から違和感を表明する声が上がっていた。一方で、同社が13年に公開した「ウルトラアタックNeo 週末篇」では、男性タレント・土田晃之が洗濯をする場面も。(公開:2014年7月)

【2】「LUMINE Special Movie」第一話
ルミネ

「働く女性たちを応援するスペシャルムービー」と打ち出されたCMの第一話では、女性が仕事仲間とおぼしき男性から「(かわいい女の子とお前は)需要が違う」と言われ、「変わりたい? 変わらなきゃ」というテロップが大映しに。これに対し、女性が男性に迎合することを押し付けているとして、ネット上では「女性蔑視だ」「セクハラを受け入れるのか」と非難轟々。ちなみに第二話では、第一話と同じ女性が「美人」と言われ、自虐する光景が描かれている。(公開:2015年3月)

【3】「インテグレート」
資生堂

小松菜奈演じる、25歳を迎えた女性に対する「今日からあんたは女の子じゃない」というセリフが注目を集めた案件。第一弾では、男性上司の「がんばってるのが顔に出ているうちは、プロじゃない」という一言の後、“「がんばってる」を顔に出さない #いい女なろう♥”というテロップが挿入される。第二弾では、冒頭のセリフと共に、女子会で「かわいいをアップデートできる女になるか、このままステイか」という、“女性のリアル”とされるトークが飛び交う内容に。(公開:2016年10月)

【4】「ムーニーから、はじめて子育てするママヘ贈る歌。 「moms don’t cry」(song by 植村花菜)」
ユニ・チャーム

母親になった女性が初めての子育てに戸惑いながらも、最後は笑顔で前を向き、「その時間が、いつか宝物になる」というテロップで締めくくられるCM。父親の姿はほんの数秒しか映らず「ワンオペ育児を賛美している」との批判が殺到する一方で、ある意味現実を描いているとして、賛否両論の意見が出る事態となった。また、同社は2017年4月に「C CHANNEL」で発表した「ソフィ ソフトタンポン」の動画CMでも炎上。(公開:2016年12月)

【5】「絶頂うまい出張」シリーズ
サントリー

男性の欲望が過剰に盛り込まれたことで炎上したケース。「出張先で若い現地の女性と2人で食事をする」という設定で、男性の一人称視点で撮影された動画では、小籠包や春巻き、串カツなどを頬張った女性が「肉汁いっぱい出ました」「めっちゃふにゃふにゃ」などと発言。商品となる「頂」を飲むと、大きく「コックゥ~ん」の文字が。エロギャグを意識したのかもしれないが、これには男女問わず「下品」という声が殺到。(公開:2017年7月)

【6】「#午後ティー女子」
キリンビバレッジ

ツイッターでの企画として、同社公式アカウントがイラストレーターのつぼゆり氏による「午後ティー女子」というイラストを掲載。しかし、そこで描かれていたのは「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」など、消費者を揶揄するような表現が目立つものだった。これに対し「なぜ自社の購買層に喧嘩を売るのか?」という非難の大合唱が起こった。(公開:2018年4月)

ルミネ、キリンはなぜ炎上? ジェンダーと軋轢が起こる理由――「広告は、何も考えていないような人に訴求したい」

――女性を描いた広告や作品が、ネットを中心に炎上することが珍しくなくなった。マーケティングに基づいたコンテンツとジェンダーが軋轢を生む中で、その背景にあるものとは一体なんなのだろうか?

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絵本作家・のぶみ氏が作詞を担当した楽曲「あたしおかあさんだから」は、賛否両論を巻き起こした。(画像は、のぶみ氏のオフィシャルサイトより)

 近年、広告を中心としたコンテンツにおける“女性の描かれ方”が物議を醸し、炎上するといった事例が後を絶たない。左ページのコラムに挙げた代表的な事例のほかにも、壇蜜を起用して内容が「過剰に性的だ」と批判が起こった宮城県のPR動画や、「母親の自己献身を美化している」として絵本作家ののぶみ氏が作詞を手がけた楽曲「あたしおかあさんだから」など、「女性はこうあるべき」、あるいは「女性にはこうあってほしい」といったジェンダー(社会的に要求された性別役割)を押し付けるようなコンテンツに批判が集まっている。

 ジェンダーとマーケティングの関係性を見ることで、炎上の裏側にある構造について考えていこう。

 まず、コンテンツ内での“女性の描かれ方”について、制作者はどう感じているのか? 例えば、大手ゲーム会社で働く女性クリエイターのA氏は、次のように話す。

「自社で開発するゲームに登場する女性キャラクターの描き方には、違和感を持つことも多いです。みんな胸を強調しているし、『女の子は普通、こんなことしない』とか『女子力が高い』といった、ジェンダーを押し付けるようなセリフがあっても、制作者には男性が多いからか、誰もそんなことを気にしたりしません。

 女性から見ると、男性に都合の良い女性ばかり登場していると感じてしまいます」

 広告業界関係者のB氏が続ける。

「まず最初に、広告で『わざと炎上させたい』という話が来ることは、ほぼないと言っておきます。例えば、花王では出来上がった広告を大勢の女性モニターに見せて、表現に問題がないかをチェックするようにしていると聞きました。

 ただ、広告では『限られた時間の中でターゲットにわかりやすくメッセージを届けないといけない』という意識が強いので、女性を主人公として描いた結果、“過剰な女子”が描かれてしまう、ということはよくあります。女性をターゲットとしたクライアントから『もっとわかりやすくキャピキャピした女の子にしてください』などと言われることもざらです。特に、美容などのコンプレックス産業の場合、ターゲットとなる視聴者と広告で描かれる女性を同一化させて、『こうなりたい!』あるいは『こうはなりたくない!』と思わせることが購買意欲につながるので。そこで広告のターゲットとして想定していない人が見た時に、“女性の描き方”が偏っている、と思われてしまうのでしょう」

 こうした何気ないジェンダーの押し付けや“性の商品化”は、ターゲットとなる購買層が見た場合には問題化しにくいが、外部に届いた途端、表面化することも多い。

メディアや広告が植え付けたジェンダー

 広告やマーケティングの分野で根強い考えとしてあるのが、「M1層」「F1層」といった性別と年齢別の顧客区分。20代未満を2つに、20代以上の男女を3つに分け、計8つの集団としてターゲット顧客を捉える発想だ。「広告業界では広く使われている」(同)というこの区分だが、『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社)といった著書を持つ、大妻女子大学文学部の田中東子准教授は、次のように指摘する。

「私が調べたところ、『F1層』といった考え方は1970年代にテレビ業界や広告代理店で生まれた、日本独自の分類のようです。この頃はテレビが急速に普及する時代で、同時にマスメディアが“ジェンダー”を広く植え付けていった時代でもあります。例えば、ニュースを読むのは決まって男性アナウンサーでした。

 マーケティングでは、『20代の女性はこういうものが好き』という多数派の意見をもとに、商品やコンテンツを消費者に与えていきます。比較的数の多い部分だけが再生産されることで、ステレオタイプやジェンダー観は強固なものとなってしまいます。

 フェミニズムはこうしたステレオタイプ化された女性像に対して異議を唱え、90年代半ば頃からは、ネットなどを通じて女性自身が描く新しい女性像を発信する第三波フェミニズムが勃興してきます。この背景には、2000年代から女性のライフプランが多様化し、旧来の女性像とは違う生き方をする女性が増えてきたということもあるでしょう」

 こうした流れもあってか、海外を中心に「フェミニズム」と「アドバタイジング(広告)」を組み合わせた「フェムバタイジング」という言葉が生まれ、女性を力づけるような広告を打ち出す動きもある。田中氏はこうも話す。

「映像や写真というのはすごく複雑で、その読み取り方はひとつではありません。広告やメディアが一義的なメッセージを発信しようと思っても、受け取る側はさまざまな解釈を行います。これまで分断されていたマイノリティの意見も、SNSなどでつながることで、大きな力を持てるようになりました。その事実を踏まえ、今まで主流だと思われていた表現も、実は主流ではなかったのかもしれない、ということに思いをはせるきっかけとして、ある意味、炎上は良いことだと私は思っています」

 前出のB氏は「広告の現場では、よりわかりやすく、何も考えていないような人に訴求したい、という話は頻繁に出てくる」とも話した。しかし、現実は多義的で複雑だ。そう考えると、これらの炎上事例は、マーケティングのメソッドにのっとり、わかりやすさを追求した結果、生じてしまった軋轢といえるのではないだろうか。

(文/須賀原みち)

■男のエロ妄想に、斜に構えたカリカチュアライズ……どこがマズかった!? 女性を描いた広告炎上事件簿

――広告における女性の描き方をめぐって、近年では炎上が珍しくない。偏った女性像を描いて大手企業が“やらかして”しまった事例をおさらいしていこう。

【1】「ウルトラアタックNeo 広がっています篇」
花王

本文中で「女性の意見を取り入れるチェック体制がある」と言われていた花王だが、14年公開のCM「ウルトラアタックNeo 広がっています篇」では、「育休明けママ 会社員」「幼稚園ママ 主婦」「部活応援ママ 女優」と、“洗濯=ママ”と結びつけて描かれており、大炎上ではないものの、一部から違和感を表明する声が上がっていた。一方で、同社が13年に公開した「ウルトラアタックNeo 週末篇」では、男性タレント・土田晃之が洗濯をする場面も。(公開:2014年7月)

【2】「LUMINE Special Movie」第一話
ルミネ

「働く女性たちを応援するスペシャルムービー」と打ち出されたCMの第一話では、女性が仕事仲間とおぼしき男性から「(かわいい女の子とお前は)需要が違う」と言われ、「変わりたい? 変わらなきゃ」というテロップが大映しに。これに対し、女性が男性に迎合することを押し付けているとして、ネット上では「女性蔑視だ」「セクハラを受け入れるのか」と非難轟々。ちなみに第二話では、第一話と同じ女性が「美人」と言われ、自虐する光景が描かれている。(公開:2015年3月)

【3】「インテグレート」
資生堂

小松菜奈演じる、25歳を迎えた女性に対する「今日からあんたは女の子じゃない」というセリフが注目を集めた案件。第一弾では、男性上司の「がんばってるのが顔に出ているうちは、プロじゃない」という一言の後、“「がんばってる」を顔に出さない #いい女なろう♥”というテロップが挿入される。第二弾では、冒頭のセリフと共に、女子会で「かわいいをアップデートできる女になるか、このままステイか」という、“女性のリアル”とされるトークが飛び交う内容に。(公開:2016年10月)

【4】「ムーニーから、はじめて子育てするママヘ贈る歌。 「moms don’t cry」(song by 植村花菜)」
ユニ・チャーム

母親になった女性が初めての子育てに戸惑いながらも、最後は笑顔で前を向き、「その時間が、いつか宝物になる」というテロップで締めくくられるCM。父親の姿はほんの数秒しか映らず「ワンオペ育児を賛美している」との批判が殺到する一方で、ある意味現実を描いているとして、賛否両論の意見が出る事態となった。また、同社は2017年4月に「C CHANNEL」で発表した「ソフィ ソフトタンポン」の動画CMでも炎上。(公開:2016年12月)

【5】「絶頂うまい出張」シリーズ
サントリー

男性の欲望が過剰に盛り込まれたことで炎上したケース。「出張先で若い現地の女性と2人で食事をする」という設定で、男性の一人称視点で撮影された動画では、小籠包や春巻き、串カツなどを頬張った女性が「肉汁いっぱい出ました」「めっちゃふにゃふにゃ」などと発言。商品となる「頂」を飲むと、大きく「コックゥ~ん」の文字が。エロギャグを意識したのかもしれないが、これには男女問わず「下品」という声が殺到。(公開:2017年7月)

【6】「#午後ティー女子」
キリンビバレッジ

ツイッターでの企画として、同社公式アカウントがイラストレーターのつぼゆり氏による「午後ティー女子」というイラストを掲載。しかし、そこで描かれていたのは「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」など、消費者を揶揄するような表現が目立つものだった。これに対し「なぜ自社の購買層に喧嘩を売るのか?」という非難の大合唱が起こった。(公開:2018年4月)

【野口 健】「死が常に身近にあると、生への執着も強くなるんですよ」死と隣合わせの山で森を再生する覚悟

――25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立し、現在は富士山のゴミ清掃などさまざまな社会貢献活動を行う、世界的なアルピニストの野口健。そんな彼は今、ヒマラヤ山脈の一角のマナスル峰の麓、サマ村に森を復活させる「ヒマラヤ森林再生プロジェクト」に取り組んでいる。

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(写真/尾藤能暢)

 植樹するための苗木を育てるまでに約3年、さらに森を復活させるために目標とする植樹の本数は、向こう3年間で3万本。なぜ彼はそこまでして、森を再生させようと考えるのだろうか?

〈本誌には掲載できなかった内容も含めた完全版を、「サイゾーpremium」限定で大公開!〉

――野口さんには2017年9月号の弊誌特集記事「文化保全か単なる村おこしか? 誰も望まぬ世界遺産乱立の真相」で、取材させていただきました。

野口健(以下、野口) ああ、そうそう。確か、富士山に向かう車の中で、電話で話したんだっけ? 「自然遺産はピュアだけど、文化遺産はそうじゃない」とか、言ったよね。

――今回は無事ヒマラヤ遠征を終えたばかりだということで、遠征中のお話を伺えればと思います。どれくらいの期間行かれていたんですか?

野口 1カ月くらい滞在したかな? 最初は山に登ってから、そのあと森林再生プロジェクトをやりました。

――ヒマラヤでの植樹活動は、どのような経緯で始められたんですか?

野口 2015年に起こったネパール大地震ですね。当時、僕はエベレスト付近にいたのですが、雪崩や土砂崩れでたくさんの人が亡くなったんです。その震災の支援をしたいと思って山間部を調査していると、土砂崩れが多いのは木を切ってしまったところだと気がついた。逆に木が残っているところは土砂崩れの被害を受けていない。だったら森を作ろう、と決意したわけです。そもそも、このマナスルは1956年に日本隊が初登頂したことから、現地では「ジャパニーズ・マウンテン」とも呼ばれている、日本と馴染み深い山ですしね。

 まず、住友林業さんに技術協力してもらって、まず1年かけて土壌の調査をしました。かつて、森があったときのわずかに残っている木から落ちた種を採取して土に撒き、今度はそれが苗木になるまで育てるんです。また、村の人たちを説得する必要もありますよね。現地の協力がないと絶対にできないし、そもそも納得してもらえていないと、木を植えても切られてしまう可能性があるからです。

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――それは、村の人たちが「勝手なことをするな!」と、怒って切ってしまうということですか?

【野口 健】「死が常に身近にあると、生への執着も強くなるんですよ」死と隣合わせの山で森を再生する覚悟

――25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立し、現在は富士山のゴミ清掃などさまざまな社会貢献活動を行う、世界的なアルピニストの野口健。そんな彼は今、ヒマラヤ山脈の一角のマナスル峰の麓、サマ村に森を復活させる「ヒマラヤ森林再生プロジェクト」に取り組んでいる。

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(写真/尾藤能暢)

 植樹するための苗木を育てるまでに約3年、さらに森を復活させるために目標とする植樹の本数は、向こう3年間で3万本。なぜ彼はそこまでして、森を再生させようと考えるのだろうか?

〈本誌には掲載できなかった内容も含めた完全版を、「サイゾーpremium」限定で大公開!〉

――野口さんには2017年9月号の弊誌特集記事「文化保全か単なる村おこしか? 誰も望まぬ世界遺産乱立の真相」で、取材させていただきました。

野口健(以下、野口) ああ、そうそう。確か、富士山に向かう車の中で、電話で話したんだっけ? 「自然遺産はピュアだけど、文化遺産はそうじゃない」とか、言ったよね。

――今回は無事ヒマラヤ遠征を終えたばかりだということで、遠征中のお話を伺えればと思います。どれくらいの期間行かれていたんですか?

野口 1カ月くらい滞在したかな? 最初は山に登ってから、そのあと森林再生プロジェクトをやりました。

――ヒマラヤでの植樹活動は、どのような経緯で始められたんですか?

野口 2015年に起こったネパール大地震ですね。当時、僕はエベレスト付近にいたのですが、雪崩や土砂崩れでたくさんの人が亡くなったんです。その震災の支援をしたいと思って山間部を調査していると、土砂崩れが多いのは木を切ってしまったところだと気がついた。逆に木が残っているところは土砂崩れの被害を受けていない。だったら森を作ろう、と決意したわけです。そもそも、このマナスルは1956年に日本隊が初登頂したことから、現地では「ジャパニーズ・マウンテン」とも呼ばれている、日本と馴染み深い山ですしね。

 まず、住友林業さんに技術協力してもらって、まず1年かけて土壌の調査をしました。かつて、森があったときのわずかに残っている木から落ちた種を採取して土に撒き、今度はそれが苗木になるまで育てるんです。また、村の人たちを説得する必要もありますよね。現地の協力がないと絶対にできないし、そもそも納得してもらえていないと、木を植えても切られてしまう可能性があるからです。

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――それは、村の人たちが「勝手なことをするな!」と、怒って切ってしまうということですか?

【ましのみ】巷を騒がす現役女子大生シンガー・ソングライターを形成する“種”を探る旅

――一筋縄でいかない感性を持つ女性アーティストが、アッパー極まりない夏ソング「どうせ夏ならバテてみない?」をリリースするということで、いざ直撃!

 

 ステージドリンクとして2リットルのペットボトルを飲むことからタイトルが付けられたメジャー・デビュー・アルバム『ぺっとぼとリテラシー』を、今年2月にリリース。そこに詰まった愛くるしいメロディと、ポップなんだけどピリッとした本音をまぶした歌詞が注目を浴びている現役女子大生シンガー・ソングライター〈ましのみ〉。ステージではキーボードを弾きながら“ましらっぷ”なる自己紹介ラップを繰り出すなど、エキセントリックなところもウケている、そんなましのみを形成する“種”を探ってみた。

「ナンセンスに逆戻り」「プチョヘンザしちゃだめ」「エゴサーチで幸あれエブリデイ」。これはすべて曲のタイトル。こういうユニークな言語感覚を生み出す種は、大学の授業や日常会話に転がっているようだ。

「講義で教授が使う丁寧語や専門用語が面白いんですよね。教授が“リスクマネジメント”ってめっちゃ言うから、『リスクマネジメント失敗』って曲を作ったり。同世代に響くリアルな言葉を使いたいから、周りの人が使ってる言葉で『気持ちいいな』とか『なんか引っかかる』っていう言葉は普段からメモしてます。けど、“ヤバ谷園”とか“ムリ茶漬け”とか、そういう流行り言葉は使わないかな。あと、最近よく聞く“バイラル”っていうカタカナ語もイマイチ意味がわかってません(笑)」

 ちなみに、彼女のクローゼットで勝手に増えちゃっているのは3足1000円の靴下。1日3食、口にしても飽きないほど好きな食べ物は卵。食べることが大好きで、最後の晩餐には肉も魚も卵料理もスイーツも目いっぱい並べたいという。唯一苦手な食べ物は、パクチー。理由は「わざわざいてほしくないというか、すべての味に干渉してくるから」。では、この世から消えてなくなれと思うものは何か?

「“イタい”っていう概念。『変わってるね』と言われても『あなたにとっては変わってるかもしれないけど、私にとっては普通なの』で終わるんです。でも『うわ、イタッ……』っていうのは、引かれてるじゃないですか。そういう陰湿な感じが嫌い。同じフィールドに立ってないのに後ろ指を指してくる感じもイヤ。ネットはそういうところがあるから、そんな状況やそういう人たちのことは普段から曲でわりと揶揄してます」

 そんな彼女が初めて作ったサマーソングが「どうせ夏ならバテてみない?」だ。制作にあたっては「夏に向けてのワクワクを、私なりの角度で、“結果的にポジティブ”になるように書いた」という。

「恋愛は“好き”の感情が強いほどマイナスの要素も生まれるけど、好きだからこそ不安になるとか、期待を裏切られて怒るとか。でも、それが恋愛の醍醐味だと思うし、私はそこにグッとくるから、そこを表現したかったんです」

 とはいえ、この曲の舞台は夜。せっかくのお泊まりなのにそっけない態度を取られてしまって悶々とする女子が、バテたい!(=セックスしたい!)とおねだりするのを想像させる、ちょっとエッチな歌でもある。

「そこにフォーカスしたかったわけじゃなくて! ただ、同世代に共感してもらいたいからピュアすぎるのもどうかと思うし。きれいごとじゃなくて、生々しいものを書きたいなとは思ってました」

 歌詞で印象的なワードは「朝に残る倦怠感」「自発的な腕枕」などだが、最後に、ましのみの恋愛感を紐解く種として、腕枕されたい男性のタイプを聞いてみた。

「筋肉がなさそうな人。私、自分とかけ離れてる男性が苦手なんです。声がメチャメチャ低い人も『こわっ!』と思っちゃうし、自分に筋肉がないので、もう筋肉という物質自体が苦手なんです(笑)」

 本格的な夏の到来に向けて筋トレしていた男子諸君。ましのみと“夏バテ”したければ、その手を今すぐ休めてみない?

(文/猪又 孝)

ましのみ
1997年生まれ。現在、大学4年生の現役女子大生シンガー・ソングライター。今年2月に『ぺっとぼとリテラシー』でメジャー・デビューを飾る。来る9月8日には、ニュー・シングル「どうせ夏ならバテてみない?」のリリース・ワンマン・ライブを代官山UNITで行う。
https://mashinomi.com

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「どうせ夏ならバテてみない?」
販売元/ポニーキャニオン 価格:2160円(初回限定盤)、1296円(通常盤)

小室哲哉の介護・不倫疑惑の続報にもテレビは総スルー!芸能とメディアの微妙な力学

1807_komuro.jpg『小室哲哉インタビューズ Tetsuya Komuro Interviews Complete from 1984 to 2014』(リットーミュージック)

 今年1月、「週刊文春」で音楽プロデューサー・小室哲哉(59)と看護師A子の不倫疑惑が報じられた。そこには2011年にくも膜下出血を発症した妻・KEIKO(45)の介護中にも関わらず、不倫する夫という衝撃的な内容だった。小室は即座に弁明会見。

「信頼できる人」とA子さんとの不倫を否定しながらも、音楽活動からの「引退」を発表した。不倫を報じられたことにより、責任を取る形での引退は誰も予想しないことだった。希代の音楽家の引退に「文春が小室を潰した」と世間だけでなく、ワイドショーでも不倫報道のあり方について論じられた。不倫よりも引退の話のほうが大きくなる一方で、不倫→引退という流れに違和感を持つ人も少なくなかった。ビートたけしも自身の週刊誌の連載で「不倫が理由の引退なんて、単なる言い訳だよ」と綴っている。それも納得できる。

 スキャンダル報道は芸能人を潰す目的ではない。それでもファンからは猛烈な抗議があるのは昔も今も変わらない。ネットがない時代は電話やFAXで「あんな記事を書くから仕事がなくなったじゃない。どう責任取るのよ」とファンからよく抗議がきたものだ。1日中そんな電話が殺到。仕事に影響することも多々あった。しかし、抗議が来るからとスキャンダルを自重していれば、芸能ニュースは発表ものばかりになり、関心度は極端に薄れる。芸能プロ経営者の本音も違う。「スキャンダル程度で潰れるのは、芸能人としての力(芸)がないから。それでもスキャンダルから守らなければならないのが芸能プロの仕事です」

 実際、女性問題や講談社殴り込み事件まで起こしたくだんのたけしは潰れるどころか、むしろスキャンダル以降の活躍のほうが著しい。今や「世界のキタノ」と言われるまでになった。

「スキャンダルに対抗する新たな手」と小室のやり方を“奇策”と見る向きもあったが、「引退」という事実と世論の後押しのせいか、文春も静かになっていった。それから半年―。

「やられたらやり返す」と言わんばかりに、文春が報じた小室の現状はさらに衝撃的な内容だった。まずは半年前の小室の会見を振り返り、「嘘ばかり」と断罪した上で、「妻の介護は大分の実家に任せ、小室は今も看護師との関係が続いている」という親戚の話と、元気そうなKEIKO夫人の近影まであった。

 確かに、会見で自分の妻を「小学生レベルにまでなっている」などという話までする必要があったのか、違和感は禁じえなかったのも事実。実際、「不倫の話を引退にすり替えて、同情を買おうとしたのでは?」という声も当時から出ていたが、それを言えば世間からバッシング受けるのは必定。覆す材料を文春は時間をかけ取材していた。

「介護と不倫」。どちらも世間がもっとも関心を呼ぶ話。テレビも新聞も1月の一報のときは蜂の巣を叩くように報じた。

 が、今回は様子が違った。報じたのはテレ朝の「モーニングショー」だけ。それも「文春」が報じていると、単に紹介しただけで、論評はいっさいなし。散々騒いだ他のメディアは嘘のようにスルーした。

 最近のワイドショーやスポーツ紙の顕著な例である。政治の世界で広まった「忖度」。

 芸能界とメディアの間では当たり前のように罷り通っている。

 かつての芸能ニュースは一つの事実だけで報じるという無茶な部分もあったが、今はもう通じない。いくつもの事実を並べることで、真実に近づける作業。刑事が犯人を追いつめるためにいくつもの事実を見つける作業と同じである。最近のワイドショーでも紀州のドンファンの覚醒剤投与による殺人の疑いを連日のように報道していた。「独自取材」という新たな形容詞まで入れて、報じていたが、過去も含めた事実を積み重ねる作業だった。ならば、小室も同じように事実を探す作業をすれば、茶の間の関心度は増すのに、それをしない。文春など週刊誌はマメに事実を探し、裏付けを取る作業を根気よく続けた結果のスクープである。

 メディアが騒がなければ、小室があえて反論する必要もない。いくつもの事実の前に反論するのは苦しい。なまじ反論すればさらに追い打ちをかけられる。静かに文春の火種が消えていくのを待つだけだ。

 それでも小室とKEIKO夫人の間には大きなミゾが生まれていた可能性は大。今後の展開に注目度は増している。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

田中圭フィーバーに続け! 吉田鋼太郎、アノ話題ラブストーリーへの出演で新たなファン層を大開拓か!?

1807_yoshida.jpg『吉田鋼太郎 写真集』(ホリプロ)

 6月2日に最終回を迎えたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。深夜ドラマでありながら、ツイッターのトレンド1位を獲得するなど大きな話題を呼んだものだったが、放送終了後もその熱はいまだ冷めやらぬようだ。

「主演を務めた田中圭が特集されたテレビ誌『TV Bros.』8月号は、注文が殺到したことにより異例の増刷が決定。また、出演者の林遣都は2010年に刊行された写真集『Clear』がAmazonのタレント写真集ランキングで3位に返り咲くなど、ドラマ効果で人気はうなぎのぼりとなっています」(芸能ライター)

 そしてもう一人の立役者、同作で“乙女なゲイ”を演じた吉田鋼太郎の周辺にも“異変”が起きているという。

「役柄の影響でゲイのファンが急増しているそうです。とある仕事現場では、周囲に“それっぽい”男たちが大勢押しかけていたこともあったようで、本人も『アレは演技なんだが…』と当惑しきりだったとか。吉田といえば、2016年に22歳年下の銀座のママと4度目の結婚。ギョーカイでは女好きとして知られ、高嶋政宏の妻と知らずに、シルビア・グラブを飲み屋で延々と口説いていたり、以前の結婚生活の中で別の女性が自宅に来て修羅場を迎えたというエピソードもあるほど。新たなファン獲得は嬉しいことでしょうが、“ガチ”と思われることには複雑な胸中でしょうね(笑)」(前出・芸能ライター)

 こうした現象が起きるのもある意味、吉田の演技力の高さゆえだろう。

恋愛経験は無いよりあったほうが良い――【西野七瀬】ふたたび……?

『西野七瀬』

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5月19日、乃木坂46の西野七瀬とテレビディレクターとの熱愛が「週刊文春」(文藝春秋)によって報じられた。しかし、まったく話題になっておらず、ひょっとすると皆、西野が主演した『電影少女』(テレビ東京系)の話だと勘違いしている可能性が高い。

「トーシロは黙ってろや!」

 担当編集とLINEのやりとりをしている最中、私は思わず声を荒らげ、いしだ壱成のツイートばりの暴言を吐いた。今回のマイフレンドを誰にするか決めていたところである。ローラ、倉科カナ、思いきって松居一代とか? そんな時、担当から驚愕の返信がきたのだ。

「西野七瀬どうスか?」

 西野七瀬? 乃木坂46の? 何かした? これほどのタマなら、私レベルの一般人でもとっくに耳に入っているはずだ。知らないはずはない。そもそも私は、会社にいる時間の大半をヤフトピチェックに費やしている男である。窓際の西国分寺ちゃんをナメてもらっては困るのだ。

「西野七瀬が、あにしたっていうだよ!」

 怒りのあまり、もはや志村口調である。ただ「キレる時は、100%こちらに非がない時だけ」が信条の私だ。ここはひとつ、ちゃんと調べてから責めようではないか。かくして検索したところ、あっさりとひっかかったのである。西野七瀬とテレビディレクターとの熱愛報道が。どうやら文春砲のようだ。

 思うところはいろいろあるが、まずは私の無知からの非礼を担当に詫びた。ただ、先ほどからの私の暴言は心の声なので、担当には一切伝わっていない。よってキョトンとしていた。非難されているのに謝らないのは世間を騒がせるが、非難されていないのに謝るのは世間を困惑させるだけである。

玉木宏を育てたのは辞めジュだった!? ジャニーズ退所者の隠れた革命児

1807_tamaki.jpg『連続テレビ小説 『 あさが来た 』 玉木宏 白岡新次郎と生きた軌跡』(ワニブックス)

 イケメン俳優の1人、玉木宏(38)が女優の木南晴夏(32)との結婚を発表した。

一部のファンの間では「玉木ロス」と言われているが、結婚も芸能活動の一環との見方もできる。一概にイケメン俳優と一括りにしているが、玉木はジャニーズやコンテストなどから出てきた俳優とは違う。玉木は役者を夢見てオーディションを受けて落ち続ける日々を送っていたという。生活の為にコンビニでバイトするなど、まるで脇役のような苦労人だった。01年、映画「ウォーターボーイズ」に起用されて注目を浴び、ようやく頭角を表した。イケメンブームにも乗り玉木人気も急上昇したが、誤算もあった。テレビ関係者の話。

「若手のイケメン俳優と同じで、若い女性が好んで見るようなドラマばかりが増えた。玉木にアイドル意識は薄い。若い女性ファンだけが増えても俳優として成長がない。役者として成長するには幅広い層からの支持がないと将来的に不安になる」

 雨後の筍のように出て来るイケメン俳優の多くは「イケメンだから俳優になれた」。玉木は「俳優志望だった男がたまたまイケメンだけだった」と、意味合いは大きく違う。

 転機は3年前に出演したNHK朝ドラ「あさが来た」だった。波瑠演じる主人公の夫役を好演。「玉木っていいわねえ」と玉木をアイドルと思っていた朝ドラファンの中高年の主婦層から大きな支持を得て見直された。その後は、松本清張作品のドラマなど本格的な役者としての作品を選んで出演していた。今年の4月期のドラマ「あなたには帰る家がある」(TBS系)では不倫する夫役で注目度はさらにアップ。単なるイケメン俳優でないことを証明して見せた。女性人気に頼らなくてもいい。結婚にはもってこいのタイミングだった。結婚がも人気を左右することもない。結婚は実質、「脱・イケメン俳優」宣言だったとも言える。

 藤原竜也・小栗旬・妻夫木聡といった面々が結婚を機にイケメン俳優から本格的な俳優となったように、玉木も続いた。

「今後、映画界を背負う中堅どころの役者が手薄な状態になる。玉木らが年を重ねるうちにそうなりうるだけの資質はある。誰が将来のスター俳優になるかは、これからが本当の勝負です」(映画関係者)

 本格派の俳優としての新たな一歩を踏み出した玉木を支えてきた事務所社長にも注目したい。玉木が所属するのは「アオイコーポレーション」。本社は玉木の出身地である名古屋。東京本社が大半の芸能プロとしては珍しい存在。社長の名は葵てるよし氏(63)。葵氏はジャニーズ事務所の元アイドル。芸名は名古屋出身から「葵」とし、名のほうは「テルヨシ」とカタカナで表記した。73年に「かんじる10代」で歌手デビュー。ソロのアイドル歌手として売り出したが、さほど人気にはならず、76年にあっさりジャニーズ事務所を辞め引退していた。芸能関係者が振り返る。

「順風満帆に来ているように見えるジャニーズ事務所ですが、葵がいた時代は氷河期といわれるほど落ち込んでいた。郷ひろみが移籍して人気になり、対抗するようにソロのアイドルを出した。川崎麻世、豊川譲と並び葵もその1人でした。ただ、ソロだとインパクトは弱く人気も一過性に終わった。その苦い経験からジャニーズにとってソロ歌手はトラウマとなり、歌って踊るのはグループだけにした」

 葵は未練を持つことなく地元の名古屋に戻り、今度は芸能の裏方についた。

「名古屋も芸能人にとっては大きなマーケットになる街。そこで名古屋に来る芸能人の営業などを手掛けた。地元に顔が広いことと、元々、怖いもの知らずで、バイタリティーのある男。たちまち“名古屋に行ったら葵に頼れ”と言われるほどになりました。営業の仕事が順調だったこともあり余裕ができたのか、市内で玉木を見つけ声を掛けてスカウト。役者にした。名古屋が本拠地でアイドルではなく、役者の仕事ですから、ジャニーズとバッティングすることもなかった」(葵と旧知の芸能関係者)

 ジャニーズを辞めたタレントは「ジャニーズの無言の圧力で伸び悩む」というジンクスがある。唯一の成功者は司会業に付いた薬丸裕英、俳優になった本木雅弘ぐらいしかいないが、葵も別の形でジャニーズ出身の成功者である。「玉木をここまでの俳優にしたのも葵の手腕が大きい。今は小さな事務所ですが、玉木を看板にさらに俳優を育てて売る可能性を秘めている」という声も業界内では上がっている。

 玉木の陰に葵あり、である。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

ファンの甘やかしがタレントを調子に乗らせるのか? ジャニーズのスキャンダル報道とファン

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 NEWSの小山慶一郎(34)・加藤シゲアキ(30)に続き手越祐也(30)も未成年女子を含む飲み会で大騒ぎしていたと、「週刊文春」が報じた。これでNEWSの現メンバー4人のうち3人のご乱行が発覚。グループの危機であるが、当然のようにジャニーズ事務所に忖度するテレビ局・スポーツ紙は報じない。

「暗黙の圧力です。“他の番組はやりませんよ。まさかお宅だけ放送することはないですよね”と念のための連絡がくるのが通例。宣伝の時は“大きく扱って”と言ってくるくせに、都合の悪い記事だと“やるな”ですからね。現場は不満でも、昔から培われたトップダウンシステムの指令。従うしかない」(ワイドショースタッフ)

 最近はせめてもの抵抗として、東京のワイドショーは「ジャニーズの話はドラマや映画の宣伝以外、いい話も悪い話もいっさい扱わない。主婦の視聴者が大半のワイドショーではジャニーズネタは受けない。スキャンダル以外は関心がないんです。なにも触れないことが一番。ジャニーズと余計な付き合いもなくなる」(前出)

 報道が拡散しなければ、スキャンダルは「なかったこと」かのように自然消滅してゆく。それでも名古屋、大阪、福岡など地方ローカルではジャニーズネタも必須ネタになっている。多少、中身を押さえながらも放送する。

「常にチェックしているファンがうるさい。年齢を間違えただけでもすぐにクレームの嵐。間違いは謝罪しますが、困るのが熱愛ネタ。週刊誌に報じられている通りにやっても、“事務所が否定しているのだから、熱愛ではない。訂正して”と文句を言ってくる。ネットでも大騒ぎされる」(地方局ディレクター)

 ネットのない時代は電話やFAXで抗議が来ていた。編集部に直接かかってくるので電話もFAXもパンク状態。通常の業務に支障を来す始末。一説には事務所から「抗議しましょう」という指令があったという話もあったが、「ファンが勝手にやっていること」と否定。その流れはネットに代わっても続いているのが現実。ファンを大切にすることで知られているジャニーズだが、私的な部分でもタレントを支えているのは熱烈なファンたちである。

 事務所とファンに守られているという背景が、タレントたちの無軌道な夜遊びに繋がっているのではないか。手越は文春報道の後、有料サイトのブログでこう綴っている。

『俺たちは不死鳥みたいなもんだし、最強のファンとスタッフがいるから何度でも立ち上がる』

 さらにこうも付け加えている。

『俺は俺のファンの子が大好きです。可愛くてしょうがない。誰か俺の将来の奥さんになる人がいるなら俺をよろしくお願いします!』

 冗談も加味されているとはいえ、ファンに対するメッセージとしては、これ以上の言葉はないだろう。仮にもし手越がファンの子との結婚を実現したなら、ジャニーズ史上、初の快挙となるが……。

 手越のこのファン向けのブログは違和感を覚えるが、最近になってジャニーズ事務所は緊急でコンプライアンス講義を始めたという。若手タレントを集めて、夜遊びやネットの対応などを講義しているという。暴力問題に揺れた大相撲協会が力士を集めて講義しているのと似ている。芸能関係者が話す。

「これまでだったらタレント本人に注意喚起したのに、タレントを一堂に集めての講義は異例。今さらという感じがしますが、相次ぐタレントの不祥事に事務所も、なんとかしなければならないという危機感を持ったのでしょう。どこまで効果があるかはわかりませんが」

 ファンに守られる一方で、アンチがいるのも芸能界。「この手の話が出ると、私や私の友達も、といったジャニーズのスキャンダルを情報提供する人も続くもの」と新たな話が流れ出すこともある。新たなグループも誕生してさらに増え続けるジャニーズタレント。火種は尽きない。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。