長女の責務、失「女ともだち」、加齢でも逃れられない自意識……女の業をえぐり出す4冊を紹介

――本屋にあまたと並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

【単行本】

『女友だちの賞味期限<実話集>』(ジェニー・オフィル、エリッサ・シャッペル編著、川上弘美解説、プレジデント社)

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 『女友だちの賞味期限<実話集>』は、失恋ならぬ「失『女ともだち』」の思い出を書き起こした、「壊れた友情」の実話集(川上弘美の解説が加わった復刊版)。

 本作の語り手は誰もが、かつての親友の美点、親密だった時期の楽しさを語る。その一瞬の花火のような美しさは色褪せてはいない。けれどもそれと同じくらい鮮明に、相手の不用意な一言で傷つけられた瞬間が刻まれている。特に、一組の元親友同士が、それぞれの視点から失った友情について振り返るエピソード「絶交の理由<A面><B面>」で語られる、お互いの“絶交のきっかけ”は絶妙にずれている。私たちは傷つけられたことは覚えていても、自分の放った言葉・行動は忘れてしまっているのかもしれない。

 友情は、いったん失ってしまえば、恋愛以上にあやふやなものだ。恋愛関係のような告白や別れといったはっきりした区切りもほとんどない。かつては恋人も入れないほど親密な関係だったとしても、無造作な一言で、疎遠になることもある。私たちが当たり前のように扱っている友情も、実は危ういバランスで成り立っていることを思い出させてくれる。

『長女たち』(篠田節子、新潮社)

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 認知症を患って幻視・妄想を繰り返す母、重度の糖尿病なのに甘い物をやめようとしない母――。『長女たち』は、老いた母と向き合わざるを得ない、家を離れなかった(もしくは出戻ってきた)長女と母親の関係を描いた中篇集だ。本作では、愛情深く熱心に育てられ、その期待に実直に応えることで評価されてきた生真面目なタイプを「長女」という存在に託して、大人になった母娘関係の重さを正面から描いている。

 老いた母の「実の娘にそばにいてほしい」という期待に責任を持って応えようとする「長女たち」。全身で老いの重みをかけてくる母。母が娘に無防備になるのは、濃い関係を紡いできた信頼があるからだ。老いをわかっていても、助けを求めれば無条件に守ってくれたかつての“お母さん”をかすかに求めてしまう長女。一方で、十分に大人になった娘に対して、「母」という役割を徐々に降ろしていく母。関係を再構築しようとしてもがく母娘の姿には、はっきりした希望も美しい解答もないからこそ、多くの女性たちにとって、決して他人事とは思えない読み応えがある。

『死からの生還』(中村うさぎ、文藝春秋)

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 2010年~13年まで「週刊文春」(同)に連載されたエッセイをまとめた本作。「女として高いランクを維持したい」という欲望を忠実にかなえようとすることで好悪はっきり分かれる彼女だが、生死をさまよう重体から復帰しても、その基本姿勢は変わらない。

 閉経についてのエッセイを求められ、冒頭に「閉経した」と書いたら「インパクトが強すぎるから」と修正を求められた話、お互いにコンプレックスを抱え合っていた美人従妹の死に対しての複雑な感情、闘病で悟ったことと3.11後の日本……。あくまで軽い語り口でロジカルにつづられる、決して軽くはないテーマの数々。そこに貫かれているのは、「人生はそもそも辛く、他者は無理解なもの」という人生観を踏まえた上での、「汝の隣人を笑うように己を笑え」精神だ。

 私たちは、加齢によって、過剰な自意識や煩悩から楽になれると思っている。しかし、彼女のエッセイからうすうす感じられるのは、たとえ閉経しても体力が衰えても、年をとればとるほど、少ない体力でさらに戦わなければいけないかもしれない……という、うんざりする現実だ。でも、その全てを笑い飛ばしながら戦う“女王様”兼“ババァ”である中村氏。多かれ少なかれ女として生きればいつかぶち当たりそうな壁に、自ら率先してぶつかりに行く彼女の戦歴ともいえる本書が、これからも嫌でも戦い続けなければいけない私たちの気力を貯めてくれるのだ。

【文庫】
『ひとり上手な結婚』 (山本文緒、伊藤理佐、講談社)

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 共に2回目の結婚生活を送っている作家・山本文緒と、漫画家・伊藤理佐の2人が、「トイレの跳ねが耐えられない」「子どもがほしい?」「結婚の仕方も出会いもわからない」など、「結婚」をテーマとした一般読者からの悩みに答えるエッセイ&コミック。

 山本文緒は文章で、伊藤理佐はマンガで、それぞれの回答を寄せているが、しばしば悩みから脱線し、時にほとんどノロケになる。それでも嫌みがないのは、回答の内容そのものより、質問に答える2人から「完璧に何もかも気が合わなくても、面白い結婚生活が送れる」という希望が自然と伝わってくるからかもしれない。

 深刻さとは程遠い明るいテンションだが、出産や結婚のタイミングに迷う質問者たちに2人が共通して「現状が楽しくて変えたくなくても、いずれ必ず変化は訪れる」と語るメッセージは真摯なもの。結婚していてもしていなくても、自分の未来に希望を持ちたくなる一冊だ。
(保田夏子)

“若手俳優好き”という一点だけで結ばれた、奇跡的なバランスの友情を描く『2DK』

――本屋にあまたと並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

【単行本】
『怒り( "nofollow"target="_blank"> "nofollow"target="_blank">)』(吉田修一、中央公論新社)

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 八王子で起きた夫婦殺人事件。犯人の若い男は、逃亡中。事件から約1年後に千葉の港町で暮らす父娘、新宿で一夜の相手を探していたゲイ、沖縄で暮らす女子高生、という3つの場所に、それぞれ別の事情を抱えた前歴不詳の男がふらりとやって来る。事件の犯人は、大阪で整形手術をしたところで行方が途絶えている――。

 千葉・東京・沖縄、それぞれの話が目まぐるしくスイッチされ、「3人の男のうち誰かが犯人かも?」と推理しているうちに、ハードカバー上下巻という長さを感じさせないで、引っ張られるように読み進めることができる。そんな純粋なエンタメ小説としての面白さを確保しつつ、タイトルとは逆の怒れない人々に焦点を当てた小説でもある。理不尽な目に遭って本気で怒って悲しんでも、声高に叫べずのみ込んでしまうのは、優しさであり、弱さだ。多かれ少なかれ誰もが持っている、怒りをあきらめてしまったことへの後悔に寄り添い、そして次の一歩へと背中を押してくれる。

【単行本】
"nofollow"target="_blank">『世界をひとりで歩いてみた』(眞鍋かをり、祥伝社)

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 インターネットとパスポートがあれば、1時間程度で海外旅行の手配ができる便利な世の中。旅慣れている人には当たり前かもしれないが、そうでない人にとって「海外旅行」は相当ハードルが高い。この本は、もともと旅行に行き慣れていない側にいたタレント・眞鍋かをりが、「旅行代理店にツアーの手配方法を尋ねる」という旅行以前の段階から始めた、海外一人旅エッセイだ。

 彼女の旅は、女性タレントっぽい美容やグルメに特化した旅でもなく、自分探しもしない、普通の旅だ。わからないことをスマホで検索したり、危険な目に遭ってダッシュでホテルに逃げ帰ったり。それでも単なる旅行記以上の読み応えがあるのは、子どもの時や新社会人の時に味わっていた、“未知の世界に飛び込む面白さ”が詰まっているからだ。不安と緊張が隣り合わせだからこそ、目の前のことに真剣になる。いい年した大人でも、1人でできることが増えれば、やっぱり子どもの時のように楽しい。

 あなたがもし今の生活に慣れてしまって、趣味でも増やそうと思っているなら、「1人で海外旅行」という選択肢もアリなのかもしれない。「タレントのオシャレ旅行記」と思って敬遠したらもったいなさ過ぎる、自分の世界を広げたくなる1冊だ。

【文庫】
『本日は大安なり』(辻村深月、角川書店)

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 大安の日に、地域で一番老舗の人気ホテルで結婚式を挙げる4組のカップル。式場スタッフやほかの3組から見れば、結婚情報誌に載っているような理想の2人だが、語り手が変わるたびに、それぞれのカップルの普通でない事情が明らかになってくる。ウエディングプランナーと気が合わない新婦、双子の姉に複雑な思いを捨てきれない新婦、既婚者であることを言えないまま式当日を迎えてしまった新郎――それぞれの事情が微妙に交錯しつつ、少しずつ「大安」の雲行きが怪しくなっていく。

 悪人ではないけど、単純にいい人とも言い切れない、ひと癖抱えた人々が織り成す長い特別な1日。一方で、仕事を愛するウエディングプランナーの、熱い仕事小説としての一面も。カップルもスタッフも全員、笑顔の裏に秘密やトラブルを抱えていて、読者の予想を少しずつ裏切るような形で明かされていく。そして、その不安やトラブルを解消して結婚するのではなく、抱えたまま幸せになると信じて進むたくましさに、最後には不思議と爽快感が残る。

【コミック】
『2DK 2013 WINTER』(竹内佐千子、講談社)

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 職業も性格もファッションも全然違うけど、「イケメンミュージカルや特撮俳優好き」という一点で意気投合している女性2人が、ルームシェアを始める。『2DK』は、2人の生活を通して、アイドルオタクの日常あるあるが描かれたコミックだ(WEB連載中)。

 ファミレスで、劇場で、2DKの部屋で、ほとんど全編にわたっていい意味でダラダラと続く2人のやり取り。日常会話から自然とオタクトークになっていたり、握手会シミュレーションを始めたり。ドラマチックな展開はないけれど、好きなものを分かち合い、会話自体を楽しんでいる人の幸福感にあふれていて、ついつい何度も読み直したくなる。

 なにかを過剰に好きになるのは、適度に趣味を楽しめる人には理解し難いし、はたから見るとちょっと滑稽だ。だからこそ、その滑稽さを共有できる相手とは、ほかのさまざまな違いを超えて距離を縮めることもできる。大人になればなるほど、友達になる前に、仕事や年齢、彼氏の有無やファッションのカテゴリーまで無意識にチェックして、相手のタイプを決めつけてしまいがちだ。『2DK』は、そんな“格付け”を取り払ったところから生まれる、女同士の関係の楽しさが描かれた一冊だ。
(保田夏子)

『親を、どうする?』――老いる親と絡み合う、自分の人生の不安も「それでいい」

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『親を、どうする?』(実業之日本社)

 この年末年始、実家に帰省した人は多かっただろう。久しぶりに見る親が、予想以上に年老いていて驚いた人もいるのではないだろうか。これから年老いていく一方の親を、どうする? そんな不安をズバリタイトルにしたのが、このコミック『親を、どうする?』(実業之日本社)だ。

 そんなこと、今は考えたくない。何かあった時に考えればいい。そう思って先送りしている人もいると思う。コミックとはいえ、わざわざ不安と向き合うような本なんて読みたくない。そう思う気持ちもよくわかる。ただ「所詮マンガ」と思っているなら、それは大間違い。いい意味で期待を裏切られる。正直なところ、「所詮マンガ」と見くびっていたのはこの私だ。それが読み始めるやいなや、そんな先入観は消え去った。降参だ。

モノを捨てる=自分の面倒臭さを愛しむこと! 捨て暮らしの真髄に迫る『捨てる女』

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『捨てる女』(内澤旬子、本の雑誌社)

 モノを捨てられない。家に帰れば、大して必要ないモノがたくさんあって「いつかは何とかしよう」と思っているけど、捨てていない。「どうしても時間がない」とか「ポリシーがあって、あえて捨てていない」ということではなく、ただなんとなく捨て切れない――そんな適当で面倒くさがりなタイプにとって、「断捨離」はかなり耳が痛いものだ。筆者も、捨てた方がいいのはわかっているだけに、わざわざ負け戦に挑む気がして、ブームだった時期も断捨離に近づかなかった。

 年末年始は、書店に入れば嫌でも片づけテクニック本や断捨離本が目につく時期でもある。そんな中“断捨離本”の代表のようなタイトルを掲げている『捨てる女』(内澤旬子、本の雑誌社)は、イメージに反して、むしろ断捨離と一歩距離を置いたスタンスのままモノを捨て続ける、異色のエッセイだ。

異世界に飛び込むことで劣等感を乗り越えた、『ブス魂!』のすがすがしさよ!

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『たたかえ!ブス魂』(ペヤンヌマキ、KKベストセラーズ)

 女同士に限らず、人は、自分が属していないグループに偏った目線を向けがちだ。美人/ブス、モテ/非モテ、既婚者/未婚者、子持ち/子なし。正解は1つじゃないとわかっているのに、自分が属する方が下だと思いたくない。そのために理論武装したり、自虐に走ったり揶揄したりして、自分とは違う人々を自分から遠ざける。でも、もしかしたら、そんな“傍観者”然とした態度で相手と向き合うことが、かえって自分自身の首を絞めているのかもしれない。

 ブス、女が怖い、モテない、三十路になって独身・子なし……『たたかえ!ブス魂』(KKベストセラーズ)は、女が抱えがちなコンプレックスを“ブス魂”と呼ぶ女性AV監督・ペヤンヌマキ氏が、どのようにコンプレックスを乗り越えてきたかをつづった半自伝的エッセイだ。

コンプレックス織り込み済みの処世術と年齢によるズレ=痛い女を吹き飛ばせ!

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『こんなわたしで、ごめんなさい』(平安寿子、実業之日本社)

 結婚や子育てが女にとって唯一のゴールではないことは、ほとんどの人が知っている。知っているから、迷う。まず結婚したいかしたくないのか、結婚すれば、この相手でいいのか、結婚しただけで安心していいのか、子どもを産むのか、産まないならなぜ産まないのか、社会人としての成功は望まなくていいのか、家族の介護はどうするのか……その選択肢は無数にある。

 『こんなわたしで、ごめんなさい』(平安寿子、実業之日本社)は、自分の進む道に惑いつつ、普通に働いて普通に生きる7人の女たちの人生観が、ふとしたきっかけで変わる瞬間が収められた短編集だ。

潔癖症な現代人に恋愛のみっともない美しさを提示する『美しい心臓』

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『美しい心臓』(小手鞠るい、新潮社)

 終電間際の駅の改札口で別れを惜しみ合っているカップルや、今が幸せの絶頂とばかりに戯れる学生カップル――。恋愛に溺れきっている人を視界の端に捉えた時の、言い得ぬ感情の正体はいったいなんなのだろう。恋愛小説や映画を見れば溺れるような恋愛に憧れるのに、現実の恋愛に浸って幸せそうな人々は非難めいた目で見てしまう。『美しい心臓』(小手鞠るい、新潮社)は、おそらく、そんな人にとっての“美しくない恋愛”が描かれた小説だ。

 主人公は、暴力を振るう夫から離れ、不動産の事務をしながら妻子ある男の愛人として、静かに暮らす女。恐らく30すぎだが、名前も与えられず、美しいのかブスなのかもいまいちわからない。本作は、主人公が既に終わった恋愛を思い出すような筆致で描かれていく。

 主人公の恋人は、仕事の関係で出会った40代の小さな企業の社長。口はうまいが、大事なことは関西弁でうまくはぐらかす中年男に、なぜ主人公が強く惹かれたのか、具体的には描かれない。その男が主人公を求めた理由もはっきりとはわからず、恋愛ドラマによくあるような、2人が付き合う前の駆け引きや葛藤の描写もほとんど見られない。

瀧波ユカリ『女もたけなわ』に潜む、女を不自由にする「オヤジ的価値観」の正体

<p> 2005年に「アフタヌーン」(講談社)で連載開始された4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』。汚部屋に全裸で暮らす24歳独身、派遣社員の女性主人公・江古田ちゃんによる鋭い人間洞察が幅広い読者の支持を集め、一大ムーブメントを巻き起こしました。</p>

妊娠を機に明るみになる、「わかり合えない」という夫婦の現実

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『わたしは妊婦』(大森兄弟、河出書房新社)、『憧れの女の子』(朝比奈あすか、双葉社)

 妊娠について語るのは、難しい。「円満な夫婦間の妊娠」でくくっても、そこには人それぞれの事情があって、「妊婦=幸せ者」とは限らない。多くの女性はホルモンバランスの乱れで、ハイになったり鬱になったりする中で、体調管理や仕事の引き継ぎをしながら、分娩方法や産院選びなど、想像以上に多くの選択をせかされる。周りから「大変だけど、幸せなんだよね」というイメージを悪気なく押し付けられても、愚痴を言う相手は慎重に選ばないといけない。妊娠を機に、夫や家族、友人との人間関係が崩れることもある。

家が津波で全壊! 再建と母娘三代の大黒柱交代劇『ナガサレール イエタテール』

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『ナガサレール イエタテール』(太田出版)

「私自身のこれからがわからないんです」

 東日本大震災では、たくさんの人が、自分や家族の「これから」がまったくわからなくなった。これまでの生活(=ビフォー)すべてが津波で根こそぎ持ち去られて、これからの生活(=アフター)なんてまったく見えなくなった。『ナガサレール イエタテール』(太田出版)は、そんないくつものビフォーアフターが詰まったコミックエッセイだ。

 宮城県の東南端、海沿いの山元町の実家で、著者ニコ・ニコルソンの母ルソン(母ル)とプチ認知症の婆ルソン(婆ル)が2人で暮らしている。東日本大震災による津波で、母ルと婆ルは流されかけたが、奇跡的に2階に逃げることができ、九死に一生を得る。しかし、実家は全壊。その後、婆ルの認知症の進行、母ルのがん手術、抗がん剤治療、そして大工不足、資金難など数々の困難を乗り越えて家を再建する(正確には、リフォーム)までを描いている。