お勉強頑張ってきた系ママの“はっちゃけ”が詰まった、『福田萌のママ1年生。』

<p> ママタレ本を購入する理由として、「もともとそのタレントが好き」「センスが参考になる」のほかに、「タレントとしてそれほど興味はなかったが、ママになってからのスタンスに共感する」というものがあるだろう。横浜国立大学卒という高学歴タレントとしても、キャラクターの面でも、中途半端なイメージが否めない福田萌。だからこそこの『福田萌のママ1年生日記。』は、オリエンタルラジオ・中田敦彦という配偶者とその子どもを得た彼女が、高らかにママタレ宣言をする最高のタイミングだったはず。</p>

楽しさ、孤独、不自由さ……疑似家族の繊細かつユニークな日々を丁寧に描いた3作品

<p> 家族、恋人、若さ、健康、財産……生きる上で、失いたくないものは人それぞれだ。そんな、失いたくない何かをなくしたところから始まる日々を、ユーモラスに描いた小説、『何度でも、おかえりを言おう』。</p>

「10年続く店は1割」の飲食業界で、豆腐メンタルの一人旅で。静かに道を拓いた人間に迫る

<p> 私たちは死んだら、どんな段階を踏んで棺に収められ、どのように焼かれ、弔われていくのか。誰もが関わる業界でありながら、その実際はあまりにも知られていない。『葬送の仕事師たち』は、そんな日本の葬送業に携わるさまざまな職種――葬儀社のスタッフや、遺体を生前の姿に近づける復元師、火葬場技術員――に取材したノンフィクションだ。</p> <p> 時に理解のない人々から心ない言葉を吐かれることもある葬送業という仕事。著者が冷静に描写する、事故や闘病で緑や黒色になった肌の色を元に近づけるエンバーマーの技や、火葬場で「ご遺体を綺麗に焼いてあげるための」手順は、どれも熟練した高度な技術と遺族の前で遺体と向き合う精神力が必要とされ、真剣に取り組まなければ決して長くは続けられないものだ。</p>

男・女らしさや恋愛のフォーマットから解き放たれることで得られる、生きやすさと強さ

<p> 40代・既婚・異性愛者の著者が、ふとしたきっかけで女装にのめり込んだ1年間をつづったノンフィクション。TV番組や映画のプロデューサーとして活躍し、妻との関係も良好だった著者が、“初めてのストッキング”から始まり、ブラジャー、化粧、女子会、婦人科検診……とさまざまな経験を経て、女性観、そして男性観を変えていく日々がコミカルに描かれている。</p> <p> 本書から伝わってくるのは、著者のように、社会から期待される「男性らしさ」に実直に応えようとするタイプの男性が、中年時に抱える“しんどさ”だ。仕事ができ、女性にもモテて、一見なんの問題も抱えていないような男性。まさにそんなタイプだった著者は、女装をすることで、今まで嫌っていたウインドーショッピングが大好きになったり、女性をあらゆる面でリード“しない”自分を許せるようになったり、これまで無意識に自身の「男らしくない」面を抑圧していたことに気づく。そして、周りからの「オカマ」「軟弱」という批判の声にシンプルに答える。「僕は好きな時に、好きなように、強くもなり、弱くもなりたいのだ」。</p>

「女はかわいい方が得」という刷り込みの、“かわいい”の曖昧さを探る

<p> 「もっとかわいかったら人生違うかなー」と考えたことのある女性は多いだろう。“容姿の美醜で人生はどのくらい変わるのか”という誰もが持つ疑問を、経済学から真面目に考察しているのが『美貌格差』だ。経済学者である著者は、さまざまな統計調査から「美形の方が生涯収入が高い」「容姿が重要な職業(モデルなど)以外でも、その収入差は現れる」「職業以外にも、結婚、就職、人間関係、融資などの面で美形の方が得」と、具体的な数字を出して考察する。<br /> </p>

ご神木に抱きついたり、聖水を浴びたり……妊娠・出産すら頑張り過すぎちゃう高島彩

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高島彩『彩日記―Birth―』(KADOKAWA)

【第3回】
高島彩『彩日記―Birth―』(KADOKAWA)

<総合評価(10点満点)>
ストイック度   ★★★★★★★★★
ナチュラル志向度 ★★★★★★★★
自分大好き度   ★★★★★★★★

【寸評

 高島彩は「努力の人」である。オリコンの「好きな女性アナウンサーランキング」では5連覇を達成し、殿堂入りも果たした“フジテレビのスーパーエース”。美しさと若さに溺れ、退社後に落ち目となる女子アナが少なくない中、磨き上げたアナウンス技術と進行能力、上司やタレントとのコミュニケーション能力で、エースの座に君臨し続けている。仕事も、結婚生活も、そして妊娠・出産も、「努力」で成し遂げられないものは何もない。そんな高島の気合と信念が詰まっているのが、『彩日記―Birth―』である。

 「嬉しいことも悲しいことも嘘なく素直に綴っていこう」というキャッチフレーズの通り、妊娠中の不安な気持ち、仕事との両立の厳しさ、多忙な夫・北川悠仁(ゆず)とのやり取りまで余すことなく網羅されたこの本。最初の子を流産した悲しみから立ち上がり、再び妊娠、妊娠を発表するまでの我慢の日々、切迫流産で絶対安静を言い渡され、家事ができないことの苛立ち、やり切った年末特番……全編まさに高島彩の“努力劇場”。

 さらに特筆すべきは、各方面への尋常ならざる「気づかい」である。日記の欄外にびっしり入った注釈は、妊娠になじみのない人への「気づかい」。また流産経験者として「悲しみへの配慮も大切にしようと思う」と必要以上に喜んだり浮かれたりしないように「気づかい」。日記の中では夫・北川悠仁を「Y」と事務的に表記することで彼のファンを「気づかい」。共感を集めることも容易だが、ふとした言動から一気に奈落の底に突き落とされもするのが、芸能人の妊娠・出産。老若男女から「人気者でありたい」高島、そして努力でその座を手に入れた高島だからこそ、ギャンブル性の高い「妊娠出産」に十分すぎる傾向と対策を練ってきたように感じる。それが日記という“自我のメディア”にズドンとハマり、頑張りたい症候群のニッポン女性にはさながら経典の如く映ることだろう。

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 自らの描く「理想の自分」に向かって、仕事も結婚も子育ても趣味も精一杯やらずにはいられない、頑張りすぎちゃう女子。高島彩はそんなニッポンの頑張り屋さん女子代表選手ではないでしょうか。本の中でも「幼いころから『つらい』というのが苦手な性格」だったと語る高島は、流産の悲しみもつわりのつらさも全てを呑みこみ、耐え忍びます。

 共働きで妊娠中、しかも「切迫流産」と「前置胎盤」と診断されたなら、家事ができないのもやむを得ないこと。しかし高島はこう自分を責めるのです。「Yはツアー中。倒れそうなほど忙しいのに、夕食を作ってくれたり、洗い物をしてくれたり、本当にありがたい。その優しさが身に沁みて、動けない自分が不甲斐なくて、また泣いてしまった。元気になったら恩返しするからね。ありがとう」。夫への深い愛情とともに“普段は外で働く男に家事をさせたりしない私”をしのばせるという高等テクとも言えましょうが……。

 そんな高島ですから、たとえ安静状態であっても「動けるときに常備菜を作っておけば、日持ちもするし、お鍋だけの手抜きごはんでも、それなりに体裁が整うのでとてもいい。しばらくこうしよう」と並々ならぬ根性を見せます。「お鍋だけの手抜きごはん」という衝撃のフレーズに、全国のお鍋教信者たち悶絶。お鍋って手抜きごはんだったのか! 妻であり母である自分に非常にキビし~、ということでストイック度は★9つ。

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 流産のショックから半年、「『やれることはやってみよう』精神で、冷えないからだつくりも実践。靴下、レギンス、レッグウォーマーを身に着け、時間があると半身浴や足湯をしてとにかく下半身を温めるように心がけていたし、毛細血管を強くするポリフェノールが豊富なアズキ茶を飲んだり、お料理にショウガを使ったり。妊娠初期の女性に勧められている葉酸も、このころからサプリで飲んでいました」と、“妊娠によいと言われているもの”を片っ端から試したという高島。

 それでもダメだったときは「気分をリフレッシュするために旅行にも行きました」。しかしここでも「頑張る高島」が顔をのぞかせます。「せっかく行くなら、とその土地のパワースポットを調べて子宝祈願へ」。高島が妊活中に訪れたパワースポットが写真つきで紹介されているのですが、これがスゴイ。ご神木を拝んだり、抱きついたり、聖水を浴びたり……パワーの受け取り方が“エモーショナル”。ご神木に抱きついたら「原因不明の41度の高熱を出した」というので、おそらくご神木パワーと高島パワーが激しく交差したのでしょう。「ご来光は地球を温める太陽のエネルギーを一身に感じることができる圧倒的なもの」「空気も薄く厳しい状況の中、体の内側から不思議な力が湧き出てきて、『もっともっと』と登り進んでいけた」など、この連載おなじみ“地球規模のなにかを感じる”発言もしっかりと飛び出していました。パワースポットをしのぐ高島パワーにナチュラル志向度は★8つ。

 そして、本書で地味にズッシリときたのは「女/母なるものへの過度な信頼」でした。これはもう「信仰」と呼んでもいいのかもしれません。お墓参りに行けば「女性のご先祖様と私のこの子宮は、つながっているんだなぁ」と思い、バースプランも「出産の痛みは全て経験したい」「(夫が)仕事で来られない間に一人頑張るのも大和撫子らしくていいな、と思っています」と、“女なら~耐えられる~痛み(痛み~)なのでしょう”を語る、マイネイームイズウーマン高島。実際の出産でも「出産という戦いに一人で挑んでこそ私は母になるのだ。そんな思いが強くなり、主人には早く到着しても生まれる瞬間までは分娩室に入らないようにお願いした」のだそうです。立ち会う気マンマンだった北川の立場……。

 「子どもを育てるのは母性的なこと」という思想もそう、夫に家事をさせることへの謝罪もそう、手作り味噌、あずきを煮るところから作る水ようかんなど、さりげなく香らせる“ていねいな暮らし”もそう、高島の中にある「女/母なるもの」という思い込みに近い理想像の大きさたるや。「仕事、どうする?」というコラムでの「私が思い描く理想の女性は今も昔もやっぱり母だから」「“お母さん”は代えがききませんものね」、こんな言葉にも、壮大な母性信仰を感じます。ご先祖様と子宮で会話し、「女の戦場」である出産において「一人で挑んでこそ私は母になるのだ」と自分を奮い立たせる。女である自分への底知れぬ期待が、ちょっぴり恐ろしいほど。というわけで、自分大好き度は★8つ。

 全ての人に好かれることを宿命づけられた人気アナ“アヤパン”という生き方。持ち前の努力と根性でその像を築き上げてきた高島だからこそ、妊活も頑張り、各方面への配慮も頑張り、誰もが羨むようなオシャレでナチュラルなライフスタイルも頑張り、夫を立てつつ女の尊厳を高めることも頑張ることができるのではないでしょうか。頑張りすぎて「茶オリ」に「茶色っぽいおりもの」という注釈まで入れたり、ご神木抱いて風邪ひいたりもしていましたが、これこそ“頑張りーズハイ”。

 ただ、これらは「頑張っている自分」を栄養素としてさらに頑張れる高島ならではの自主トレ法であり、普通の人間がマネをしたら大変危険なことになりそう。母という“教祖誕生”に共感できる人にはオススメの1冊かも。
(西澤千央)