――K-POPとビッグメゾンの関係を考える上で、まず引き合いに出すべきはBLACKPINKである。メンバー4人は、それぞれ異なるハイブランドのグローバル・アンバサダーを務めている(続きを読む
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「ユニクロ参入で布マスクバブル崩壊」「人気アパレルでセクハラ辞任」2020年上半期ファッションニュースベスト3
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月から全国の百貨店やファッションビルが軒並み時短営業・休業となり、店舗売り上げが大激減……そんな危機的状況に陥っている現在のファッション業界。今年上半期には、コロナ禍関連以外にもさまざまなファッションニュースが報じられたが、今回はファッションライター・南充浩氏に、特に印象深かったトピックをベスト3形式で紹介してもらった。
第1位:不買運動も勃発! ストライプ社創業社長がセクハラ問題で辞任
「アース・ミュージック・アンド・エコロジー」などのブランドを展開するストライプインターナショナルの創業社長・石川康晴氏が、複数の女性社員にセクハラを行っていたと、3月上旬に「朝日新聞」ほかで報道されました。以前には、前身会社で過労死疑惑もありましたが、その後は福利厚生の充実に努めるとともに、石川氏の打ち出すエシカルなビジョンが社会的には評価されていたので、驚かれた人も多かったのではないかと思います。
しかし、衣料品業界においては、以前から石川氏のセクハラ問題は、割合に広く知られていましたから、個人的には「ついに」としか感じませんでした。石川氏本人は「疑惑」を否定していましたが、報道に対して法的措置を取るわけでもなく、突然社長を辞任。この直後に、新型コロナによる非常事態宣言が発令されたので、世間的にはやや忘れ去られた感がありますが、一部女性の間では不買運動が起こり、それがボディブローのようにジワジワと同社の経営に効いてきていると言われています。
同社は過去に二度、株式公開を延期しています。これはつまり、公開できないそれ相応の理由があるということで、その判断基準は業績の良し悪しだけではないのです。もう少し噛み砕いて言うと、株式公開は、その企業の公的要素が強まるということなので、違法行為はもちろん、倫理や道徳にもとることがある場合、公開はできなくなります。そう考えると、株式公開が二度も延期というのは、「ちょっとおかしい」と言わねばなりません。ちなみに、2回目の延期理由は「新規事業が軌道に乗るまで」「中国事業が軌道に乗るまで」というものでしたが、本当の理由の一つはこのセクハラ問題だったのではないかと、個人的に見ています。
老舗アパレルのレナウンが5月中旬、ついに経営破綻し、民事再生法の適用を申請しました。2013年に、経営難から中国のアパレル企業・山東如意科技集団の子会社になりましたが、ずっと業績は回復せず。昨年末には、山東如意の香港子会社から、売掛金53億円が回収できないという事態に陥っていたため、コロナ禍の影響がなくても、早晩、レナウンは破綻したと言えます。
特徴的なのは、親会社の山東如意も経営が行き詰っており、資金繰りがかなり悪化していることです。その理由は、ダボハゼ的に、レナウンをはじめとする国内外のブランドやアパレル企業を買いまくっていたから。この点は、昨今、大赤字に転落したライザップと非常に似ています。しかし、もともとは紡績などの繊維製造業からスタートした山東如意に、ブランドを運営する力はありませんでした。レナウンを買収した直後は、同社の持っている「シンプルライフ」というブランドを中国で直営店化しようとしましたが、結局売れないままに撤退しました。
またレナウンの構造的な問題として、所有しているブランドの知名度が低すぎたことと、顧客層が60代半ば以上の高齢層に偏っていたことも致命的でした。新しいスポンサーが決まらなければ、レナウンは会社清算ということになりますが、今のところ、新規スポンサー探しは難航。個人的には、ブランドごとに切り売りされることになると予想します。
新型コロナの感染拡大によって、マスクの需要が2月下旬頃から急増。また、これまでマスクの生産はほとんど中国まかせだったのですが、同国で新型コロナのオーバーショートが起こると、輸入がストップしてしまいました。この2つの要因によって、深刻なマスク不足となり、それまで50枚で700円前後だったマスクが、3月のピーク時には4,000円くらいにまで値上がりしたのです。
そこで、相次いで国内外のアパレルブランドがマスクの製造販売に参入しました。その理由は「マスク不足を解消するという社会貢献のため」「衣料品が売れない中、会社を存続するため」の2つです。
しかし、4月に入って、興和やシャープ、アイリスオーヤマといった大手企業が月産数千万枚単位でマスクを供給し始めると、あっという間にマスク不足は解消。値崩れを起こし、5月末にはほぼ元の価格に戻ってしまいました。大手企業がマスクの生産に乗り出すことは早くから発表されていましたから、近いうちにこのような事態になることはわかりきっていました。にもかかわらず、参入する企業があまりにも多いことに驚いたものです。それほどにひっ迫した状況だったのでしょうか。
6月19日には、ついに国民的ブランドとも言えるユニクロが「エアリズムマスク」の販売を開始。3枚990円という低価格で、発売後数時間で完売してしまうほどに注目を集めました。また無印良品も6月上旬に2枚990円の布マスクを発売しています。よほどデザインや色・柄にコダワリがなければ、布マスクが欲しい人は、ユニクロか無印良品で十分でしょう。そういう意味では「布マスクバブルははじけた」と言えます。継続して布マスクの販売を続けるブランドは「社会貢献」のことだけを考えるべきでしょう。
(南充浩)
「ユニクロ参入で布マスクバブル崩壊」「人気アパレルでセクハラ辞任」2020年上半期ファッションニュースベスト3
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月から全国の百貨店やファッションビルが軒並み時短営業・休業となり、店舗売り上げが大激減……そんな危機的状況に陥っている現在のファッション業界。今年上半期には、コロナ禍関連以外にもさまざまなファッションニュースが報じられたが、今回はファッションライター・南充浩氏に、特に印象深かったトピックをベスト3形式で紹介してもらった。
第1位:不買運動も勃発! ストライプ社創業社長がセクハラ問題で辞任
「アース・ミュージック・アンド・エコロジー」などのブランドを展開するストライプインターナショナルの創業社長・石川康晴氏が、複数の女性社員にセクハラを行っていたと、3月上旬に「朝日新聞」ほかで報道されました。以前には、前身会社で過労死疑惑もありましたが、その後は福利厚生の充実に努めるとともに、石川氏の打ち出すエシカルなビジョンが社会的には評価されていたので、驚かれた人も多かったのではないかと思います。
しかし、衣料品業界においては、以前から石川氏のセクハラ問題は、割合に広く知られていましたから、個人的には「ついに」としか感じませんでした。石川氏本人は「疑惑」を否定していましたが、報道に対して法的措置を取るわけでもなく、突然社長を辞任。この直後に、新型コロナによる非常事態宣言が発令されたので、世間的にはやや忘れ去られた感がありますが、一部女性の間では不買運動が起こり、それがボディブローのようにジワジワと同社の経営に効いてきていると言われています。
同社は過去に二度、株式公開を延期しています。これはつまり、公開できないそれ相応の理由があるということで、その判断基準は業績の良し悪しだけではないのです。もう少し噛み砕いて言うと、株式公開は、その企業の公的要素が強まるということなので、違法行為はもちろん、倫理や道徳にもとることがある場合、公開はできなくなります。そう考えると、株式公開が二度も延期というのは、「ちょっとおかしい」と言わねばなりません。ちなみに、2回目の延期理由は「新規事業が軌道に乗るまで」「中国事業が軌道に乗るまで」というものでしたが、本当の理由の一つはこのセクハラ問題だったのではないかと、個人的に見ています。
老舗アパレルのレナウンが5月中旬、ついに経営破綻し、民事再生法の適用を申請しました。2013年に、経営難から中国のアパレル企業・山東如意科技集団の子会社になりましたが、ずっと業績は回復せず。昨年末には、山東如意の香港子会社から、売掛金53億円が回収できないという事態に陥っていたため、コロナ禍の影響がなくても、早晩、レナウンは破綻したと言えます。
特徴的なのは、親会社の山東如意も経営が行き詰っており、資金繰りがかなり悪化していることです。その理由は、ダボハゼ的に、レナウンをはじめとする国内外のブランドやアパレル企業を買いまくっていたから。この点は、昨今、大赤字に転落したライザップと非常に似ています。しかし、もともとは紡績などの繊維製造業からスタートした山東如意に、ブランドを運営する力はありませんでした。レナウンを買収した直後は、同社の持っている「シンプルライフ」というブランドを中国で直営店化しようとしましたが、結局売れないままに撤退しました。
またレナウンの構造的な問題として、所有しているブランドの知名度が低すぎたことと、顧客層が60代半ば以上の高齢層に偏っていたことも致命的でした。新しいスポンサーが決まらなければ、レナウンは会社清算ということになりますが、今のところ、新規スポンサー探しは難航。個人的には、ブランドごとに切り売りされることになると予想します。
新型コロナの感染拡大によって、マスクの需要が2月下旬頃から急増。また、これまでマスクの生産はほとんど中国まかせだったのですが、同国で新型コロナのオーバーショートが起こると、輸入がストップしてしまいました。この2つの要因によって、深刻なマスク不足となり、それまで50枚で700円前後だったマスクが、3月のピーク時には4,000円くらいにまで値上がりしたのです。
そこで、相次いで国内外のアパレルブランドがマスクの製造販売に参入しました。その理由は「マスク不足を解消するという社会貢献のため」「衣料品が売れない中、会社を存続するため」の2つです。
しかし、4月に入って、興和やシャープ、アイリスオーヤマといった大手企業が月産数千万枚単位でマスクを供給し始めると、あっという間にマスク不足は解消。値崩れを起こし、5月末にはほぼ元の価格に戻ってしまいました。大手企業がマスクの生産に乗り出すことは早くから発表されていましたから、近いうちにこのような事態になることはわかりきっていました。にもかかわらず、参入する企業があまりにも多いことに驚いたものです。それほどにひっ迫した状況だったのでしょうか。
6月19日には、ついに国民的ブランドとも言えるユニクロが「エアリズムマスク」の販売を開始。3枚990円という低価格で、発売後数時間で完売してしまうほどに注目を集めました。また無印良品も6月上旬に2枚990円の布マスクを発売しています。よほどデザインや色・柄にコダワリがなければ、布マスクが欲しい人は、ユニクロか無印良品で十分でしょう。そういう意味では「布マスクバブルははじけた」と言えます。継続して布マスクの販売を続けるブランドは「社会貢献」のことだけを考えるべきでしょう。
(南充浩)
ユニクロ「エアリズム」だけじゃない? 「無印良品」「グンゼ」の夏用インナーが期待されるワケ
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が解除されると、直後から梅雨入りし、本格的な暑さが到来しました。アパレル業界では、3~5月、苦しい状況が続きました。3月、大型商業施設は営業していましたが、後半からは週末休業や営業時間短縮などが始まったばかりでなく、新型コロナに対する世間の不安が表面化しており、消費者の洋服の購買意欲が停滞。4月、5月は、施設の完全休業が相次ぎ、服を売ること自体ができなくなったのです。
そんなわけでアパレル業界では、春物商戦が完全にすっ飛んで、いきなり夏物商戦が始まったという印象です。とはいえ、先日まで報道や多くの人々の関心事が新型コロナ一辺倒だったため、各ブランドの夏の新商品や広告はあまり話題になっていない状況です。そもそも、メーカーの展示会や発表会も新型コロナの影響で中止になっていたので、どんな新商品があるのかも、あまり周知されていないのは致し方ないかもしれません。となると、自粛が終わったとはいえ、商品の売れ行きは伸びなさそうです。
そんな中、今回は夏用の肌着について考えてみたいと思います。マスクをしていると顔の周りに熱がこもるため、今までの夏よりも、いっそう暑さを感じることになるでしょう。注目の機能としては「接触冷感」ではないかと思います。肌に触れると一瞬「ヒヤッ」と感じる機能です。しかし、「接触冷感」とは、決して生地自体が冷たいとか、温度を下げるという「冷却」機能ではありません。あくまでも皮膚に触れたら「冷たい」と感じさせる機能で、言ってみればメンソールみたいなものなのです。
各社の保温肌着に見られる「発熱」機能の逆バージョンとなる本当の意味での「冷却」機能を持った繊維というのは、まだ一般的ではありません。本来、その機能を持った素材のアイテムを大々的に販売できれば、大ヒット間違いなしと言えるのですが、現状かなわないので、「接触冷感機能」を使用することになったのだと考えられます。
また、すでに夏向けの肌着では「吸水速乾機能」は当たり前、そこに消臭・防臭機能が付加された商品もだいぶ普及していますから、新しい機能を付け加えるとすれば「接触冷感」あたりが手頃だったという面もあるのでしょう。
さて、では夏用肌着の各社の動向を見ていきましょう。定価が1,000円以下の商品の場合、今夏は、新型コロナで各社の販促が出遅れざるを得なかったため、これまでの知名度や販売実績に鑑みて、ユニクロの「エアリズム」が圧倒的に優位ではないでしょうか。「エアリズム」は、男性用は、汗をすばやく吸収・拡散、女性用は湿気をすばやく吸い取り、ムレやべたつきを抑制する機能性素材が用いられていることで知られていますが、値段にも注目。6月11日から「ユニクロ誕生感謝祭」が開始され、一部トップス類は、定価990円(税抜き)から、790円(税抜き)に期間限定値下げされていますので、コスパも圧倒的に高くなっています。4月、5月とほとんど実店舗が稼働できなかったため、ユニクロは6月以降も頻繁に値下げ攻勢をかけ、在庫を消化しようとすると思われます。
また昨夏は、ゾゾが「エアリズム」と同価格帯のPB肌着「ゾゾエアー」を展開、「ベントクール」という機能性素材を使用して、話題になっていました。この素材は、水分を吸収すると、瞬時に生地の編み目が広がり通気性の良さがアップするという機能性があります。スポーツ向けのユニフォームなどにも使われているので、素材メーカーからは期待の声が聞こえましたが、それほど売れ行きは伸びず、ゾゾのPB自体が大幅縮小に。
一方、無印良品の夏用肌着は要注目。今夏、一度試してみたいと思っているのが「綿でさらっとインナー」です。吸水速乾の機能性肌着は通常、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維を使用しますが、無印は綿100%。というのも、綿の含有率が高い肌着はポリエステルやナイロンなどの合繊製機能性肌着に比べて、汗を吸うとベタッと張りつく不快感が長く続くものなのです。しかし無印は、生地を構成する綿糸の外側と中心部分の密度を変えることで、速乾性を高めたとのこと。果たしてこの肌着は通常の綿主体の肌着に比べるとどれだけ肌離れが良いのか興味をそそります。なお、今年3月から、同アイテムは、990円(税込み、以前は1,290円)に定価が下がったのも見逃せません。「エアリズム」の定価も990円ですがこちらは税別なので、税込み990円の無印良品のほうが少し安くてお得感があります。
では、1,000円オーバーの商品となると、グンゼの夏用肌着が期待大。メンズだと「ボディワイルド」の「エアーズ」、レディースだと「キレイラボ」の「クール」で採用されているのですが、これらはカットオフ(切りっぱなし)&完全無縫製が特徴です。首、袖口、裾がカットオフになった商品は、「エアリズムシームレス」をはじめ、各社から2~3年前から発売されていますが、この「エアーズ」「クール」はカットオフだけでなく、袖と胴体の取り付け部分も縫製ではなく圧着されており、縫い目がまったくありません。これにより着心地が良くなり、特に夏には快適なのです。
また素材についてですが、「エアーズ」のトップスの組成はポリエステル85%・ポリウレタン15%となっており、一度着用してみましたが、綿の含有率が高い肌着に比べると、汗を吸い込んでも肌に密着しないところが非常に良い点だと感じました。一方、「クール」でも、合繊主体の素材は、特に接触冷感/吸汗速乾性が高いことをアピールしています。ちなみに「エアーズ」「クール」ともにトップスは定価2,000円(税別)前後なので、「エアリズム」や「綿でさらっとインナー」に比べると価格は高め。値引きセールのときに買うのがオススメです。
しかし、繰り返しになりますが、今挙げた「綿でさらっとインナー」にせよ「エアーズ」にせよ「クール」にせよ、新型コロナの影響で販促や広告活動が不十分になってしまったまま夏商戦を迎えているので、売れ行きという点ではあまり期待できなさそう。ありきたりですが、今夏の機能性肌着は「エアリズム」一人勝ちになってしまうのではないかと思われますが、果たしてどうでしょうか。
(南充浩)
「春夏物が壊滅的に売れない」……新型コロナで大打撃のアパレル業界、「大量在庫」をどうする?
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
新型コロナウイルスの感染拡大によって、4月7日に政府から7都府県に非常事態宣言が出されました。これによって東京、大阪、神戸などの主要商業施設が一斉に休業。さらに16日には、非常事態宣言の対象地域が全都道府県に広がり、18日から地方の商業施設の多くも休業に入りました。
現在、多くの物販は大打撃を受けています。アパレルでは、3月から新型コロナ対策として、店舗の営業時間短縮や休業が増えていましたから、3月は売上に急ブレーキがかかり、4月に至っては実質的にほぼゼロ、つまり春物の実店舗売上高はほとんど見込めないと考えられます。また今のところ5月6日に非常事態宣言が解除されるということですが、これでゴールデンウィーク商戦も消えてしまいました。
アパレルの売れ行きというのは、3〜4月は比較的好調な月で、ゴールデンウィークに入ると、帰省や行楽地への観光が多くなるため、あまり伸びず、夏のセール開始までその状態が続きます。
つまり、今の状況だと、春物だけでなく夏物も壊滅的に売れないということになるのです。夏のセールで、どれだけ在庫が消化できるかという点が肝となりますが、毎年夏のセールは、冬のセールに比べてインパクトに欠けるものなので、高い消化率は望めそうにありません。
一斉休業が本格化した4月の業績はまだ出ていないものの、店舗の営業時間短縮が始まった3月の業績では、早くも苦戦が鮮明となっているようです。
帝国データバンクによると、集計対象23社のうち、2020年3月の月次売上高において、既存店ベース(出店から1年以上経過した店舗のみ)で前年同月を下回ったのは21社(構成比91.3%)、上回ったのは2社(同8.7%)。また、全店ベース(出店から1年未満の店舗も含む)で、前年同月を下回ったのは21社(同91.3%)、上回ったのは2社(同8.7%)で、既存店と同様の結果となったそうです。
3月でこの調子とあっては、4月はこれ以下の水準になることは間違いありません。アパレルはこの新型コロナ禍で、窮地に立たされている業界の一つと言えるでしょう。
今回の新型コロナ流行による物販の売上低下は、全国的に満遍なく店舗営業が止まっていること、日本も海外も同様ということで、逃げ道はありません。これまでの不況やアクシデント、災害なら、どこかの地域や国に限定されていたので、場所を移せば物販は可能でしたが、今回はそうもいかないのです。
そこであらためて注目されるのがネット通販。実店舗があまり稼働できない分、ネット通販の受注は増えています。日用生活品や食料品を中心に、またゲーム機器なども好調で、宅配業者の求人募集が急増しています。
アパレルに関して言えば、企業によって優勝劣敗がありますが、例えば、ユナイテッドアローズの3月度実績では、自社オンラインストアとゾゾタウン(ZOZOTOWN)での売上は23.8%増に伸長しています。4月度の実績はまだ出ていないものの、ネット通販の売上高が減ることは考えにくく、不調としても前年並みは維持するでしょう。やはり実店舗のほとんどが閉鎖されている今、そのブランドの商品が欲しければネット通販で買うしかないからです。
さて、アパレル各社は莫大な春夏物在庫を抱えることになりますが、今後どうなるのかを考えていきたいと思います。最初に言うと、現状、在庫を消化する手立ては二つしかありません。
・ネット通販で在庫処分販売をする
・「バッタ屋」と呼ばれる在庫処分業者に払い下げる
各社はすでにネット通販で割引を強化しており、在庫処分を進めているように見えます。例えば、アダストリアの自社通販サイト「ドットエスティ」ではタイムセール期間が延長されたり、それが終わると、レジにてさらに対象商品全品10%オフという割引施策が連続で行われている状況。またZOZOでは割引クーポンが連日発行されているばかりでなく、参加ブランドも増えています。これは取りも直さず、ZOZOで在庫処分を進めたいブランドが増えているということでしょう。
また、在庫処分業者にも在庫引き取り要請が急増しています。メディアへの露出が多い、在庫処分業者のショーイチは、2月の仕入れ(在庫引き取り)は通常の約3倍、3月も高水準だったとのこと。恐らく休業が本格化する4月はもっと増えることになると考えられます。
京阪神で10店以上の直営店を運営している在庫処分業者のラックドゥも、2月、3月と在庫引き取り要請が急増しているといい、「全部の要請には対応できない」状況にあるそうです。
しかし、現実的には在庫を消化するための施策としては、ネット通販も処分業者への払い下げも決め手に欠けます。
まずネット通販についてですが、いくら売上高が好調といっても、大手の実店舗販売金額の落ち込みを補填できるほどの規模ではありません。例えば、先ほど例に挙げたユナイテッドアローズだと、EC売上高が23.8%増にもかかわらず、実店舗との合計売上高は前年同月比74.7%と減少しています。これはすなわち実店舗の落ち込み分を、ネット通販の増加率程度ではカバーできないということを示しているのです。
確かに、小規模業者なら、ネットで何千万円か増収できれば業績は好転しますが、ユナイテッドアローズやそれ以上の大手になると、難しいというのが実情です。
一方、在庫処分業者への払い下げにも難点があります。主な在庫処分方法は、
・他社に卸売りする
・直営店舗で販売する
・ネット通販で販売する
・海外に売る
という4つですが、このうち、ネット通販以外、新型コロナの影響を受けて不振であることは正規アパレルと同じだからです。他社に売ると言っても、他社も同じく不調ですし、また直営店販売も同様で、街には人通り自体が減っている状況。私が個人的に手伝っている在庫処分業者の直営店は、4月の売上高がピーク時の半減以下で推移しています。さらに海外販売と言っても、海外も日本同様新型コロナで経済活動が止まっているわけです。
ネット販売だけが活路ですが、残念ながら各在庫処分業者のネット通販は、そこまで強力ではありません。売上高はせいぜい大きく見積もっても数億円という程度で、とてもではないですが何十万枚の在庫をさばける規模ではない。つまり、正規アパレル企業にとって、「在庫処分業者に払い下げればとりあえず安心」という状況ではないと言えるでしょう。
そうなると、アパレルの在庫処分は、もはや“事態の終息後”、自社店舗ないし正規ネット通販でどれだけ投げ売りすることができるかが決め手となります。しかし、投げ売り処分は、想定していた売上高を大幅に下回るのは必至。それをカバーすべく、秋冬の商品は大幅に生産数量を減らすことになると思われます。アパレルは、新型コロナの影響によって、初めて業界を挙げての生産調整に突入することになりそうです。
(南充浩)
「ZOZOMAT」はサイズ計測精度向上? ”あの”スーツの悪評判を払拭し、靴専門モール「ZOZOSHOES」は成功なるか
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
2019年夏前に発表され、同年秋冬に送付を開始する予定だった足の計測器「ZOZOMAT(ゾゾマット)」が、当初の予定より約半年遅れで、先頃から配布が開始。これと連動して3月4日には、衣料通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」内に靴販売の専門モール「ZOZOSHOES(ゾゾシューズ)」がオープンしました。
昨年夏、ZOZOがYahoo!に買収されたことによって、立ち消えになったかと思われていたゾゾマットですが、開発は継続していたということになります。
今回発表されたゾゾマットは、マーカーが印刷された紙という形態です。紙を床に広げ、印刷された足型に自分の足を合わせて置き、その周りのドット柄のマーカーをスマホで読み取ることで、ミリ単位の3D計測ができます。
足のサイズというのは、縦の長さのことを指すと思われているかもしれませんが、それだけが重要ではありません。足の幅、甲の高さも重要で、全てが合った靴でなければ、フィット感は得られないのです。例えば、ナイキやアディダス、プーマといった欧米ブランドのスニーカーは、幅狭めかつ甲が低く作られている場合が多く、それは欧米人の足型の特徴に合わせているから。しかし、幅広で甲高という足型の特徴がある日本人は、これらのスニーカーを履く際、縦の長さのフィット感を求めると、足の幅と甲の高さに窮屈さを感じてしまいます。縦の長さが長くなるに従って幅は広くなり、甲は高くなるので、通常より0.5~2センチくらい大きなサイズの物を選ばなくてはなりません。
つまり完全にフィットする靴を見つけるためには、縦の長さだけでなく、幅の広さ、甲の高さを、3D計測でしっかり把握することが必要になるのです。
さて、そんなゾゾマットの計測精度を考察していきたいと思います。皆さんは以前発表され、不評の結果廃止となった採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を覚えているでしょうか。これは、スーツにプリントされた水玉柄のマーカーを読み取ることにより、体型サイズをミリ単位で正確に計測する技法が用いられていました。ゾゾマットは、ゾゾスーツと基本的な仕組みは同じだと言えますが、ゾゾマットの方が、計測精度は高いと思われます。
ゾゾスーツは、計測サイズに誤差が頻繁に起きたと言われており、その理由は、水玉柄のマーカーが着用時にズレたり伸びたりしてしまうからだと考えられます。もし、ゾゾマットが水玉柄のマーカーをプリントした「靴下タイプ」だったら、同じように計測ミスが頻発されたと推測できるのですが、実際のゾゾマットは、先述した通り、印刷された紙を床に置き、そこに足を乗せるタイプなので、マーカーの位置がズレる心配はほとんどありません。ですからサイズの計測ミスがスーツに比べて低くなると考えられるというわけです。
そもそも靴は、洋服以上にサイズが命。というのも、靴は5ミリでサイズピッチが刻まれていて、5ミリ小さいだけでも足入れさえできなくなるため、ミリ単位の正確な計測が求められるのです。思い返せば、ゾゾスーツも「ミリ単位の計測」を謳っていましたが、結果的に計測の誤差が多発。顧客の信用回復という意味でも、ゾゾマットではさらに高い計測精度を実現させなければいけなくなったとも言えます(ちなみにゾゾスーツに関してですが、はっきり言って、ほとんどの衣服にミリ単位の精度は必要ありません。なぜなら生地は伸びるから。1~2ミリの差なんて、服でいうなら許容範囲の誤差でしかなく、当初からその狙い自体がズレていたとしか言いようがありません)。
ZOZOサイドも、精度向上は必須という認識だったようで、同社の伊藤正裕取締役COOは、国内・海外の最新ファッションニュースを配信する「WWDジャパン」のインタビュー記事で、「技術検証は6万回、時間にして延べ5000時間と、時間も手間もかなりかけたことも遅れた原因だ」と語っています。見切り発車感の強かったゾゾスーツとは雲泥の差です。加えて、靴ではPB(プライベート)は作らないことも明言しているのですが、これもゾゾスーツと連動させたPB服が、まったく売れなかったことへの反省が生かされていると言えます。
そんなゾゾマットは、靴のネット通販にどのような影響を与えると考えられるのでしょう。
そもそも靴は、少々小さくても着用できることが多い服とは違って、少しサイズが小さいだけで、痛くて歩けないことすらあり得るもの。もちろん、「返品交換無料」という商品やサイトもありますが、それとて、その手続きが面倒くさく、やはり最初から実店舗で試着して購入するほうがはるかに楽ですから、ネット通販で靴を買うのは、従来「非常にハードルが高い」とされてきました。
もし躊躇なくネット通販で購入しようとすると、その靴や、そのブランドのサイズ感を完全に把握しなければなりません。例えば、昨年私は、5,000円前後に値下がりしたナイキの「エアマックスシリーズ」をAmazonで4足買いましたが、これは以前、ナイキのエアマックスインビガープリントというスニーカーを購入した経験があったからです。そのときは、27.5センチを購入し、着用はできたものの、どうも少し小さめだと感じました。我慢して何カ月か履いたのですが、長時間履くと足がすごく疲れてしまい、やっぱり「少し小さめ」という結論に至ったのです。ですから、エアマックスシリーズの商品を買う際は、0.5ミリ大きい28.0センチが自分の適正だということがわかりました。そこで念のため、28.0センチのエアマックスフレア50という商品を試しに買ってみたところ、想像通りのサイズだったため、確信を持って、ネットで買うようになりました。つまり、ここまでの経験と類推がないとネットで靴を買うのは至難の業なのです(まあ、足の痛みなど気にしないという人を除けばですが)。
そう考えると、ゾゾマットの登場は、試着なしのネット通販による靴の購入を大幅に促進できる可能性があります。多くの人が期待しているのも理解できます。
しかし、実は、ゾゾスーツよりは圧倒的に少ないものの、ゾゾマットの「計測ミス」がネット上で報告され始めているという実情もあります。「ゾゾシューズ」の成功、ひいては靴のネット購入の拡大に、ゾゾマット自体の改良修正は必要不可欠であり、急務だと言えます。それなしではゾゾスーツの二の舞となってしまう可能性も低くありません。ZOZOには真摯に課題点の修正に臨むことが期待されます。
(南充浩)
ワークマン、作業着チェーン店が躍進したワケーー「イージス」「靴」「パーカー」専門家を唸らせる3商品とは?
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
大量閉店や大量リストラ、老舗企業の経営破綻など暗いニュースが多い現在の衣料品業界において、「ワークマン」の躍進は数少ない明るい話題の1つです。ワーキングユニフォーム専門のチェーン店だったワークマンが一躍注目を浴びたきっかけは、数年前に透湿防水ジャケット「イージス」がSNS上で話題となったことにありました。
低価格である上に、しっかりとした防水透湿機能が備わっていて、さらにデザインもワーキングユニフォームっぽくないことからデイリーカジュアルとしても使えるため、急速に支持者が増えました。
この「イージス」を始まりとして、ワークマンの商品は全てが「低価格高機能」であることが世間に浸透し、一躍人気店になったのです。
ワークマンは、どうして低価格高機能商品を揃え続けられているのでしょうか。それはずばり「ワーキングユニフォーム販売店」だから。作業着やワーキングユニフォームを着用する肉体労働者は、夏は暑く、冬は寒い中で作業をしなくてはなりません。また風の強い日や雨の降る日にも外で働かなければいけないのです。こうした過酷な自然環境下でも、肉体を傷めず、疲労を蓄積させないために、作業着やワーキングユニフォームには高機能性が求められます。また、オシャレ着ではなく仕事着なので、最初に“一式揃える”ことが必須となり、また作業によって必ず傷むため買い替えの必要もある……そうなると、“安さ”も重要視されるのです。
この“安さ”について、消費者目線でもう少し言及すると、例えば、自分の趣味で購入を決めるオシャレ着であれば、「3万円のジーンズ」でも「30万円のコート」でも、気に入れば高額品であっても手に取ると思います。しかし、作業着や制服、仕事着に、そこまで出しても構わないと考える人はほとんどいません。ましてや必ず買い替えが生じますから、「安くなくては困る」と言っても過言ではないでしょう。そのため、何もワークマンに限らず、ワーキングユニフォーム業界全体が、何十年も前から「低価格高機能商品」を企画生産し続けてきたわけです。しかし、長らく一般的に話題とならなかったのは、デザインが作業着然としていたから。いくら安くて機能性が高くても、デイリーカジュアルとして着用するには無理がありました。
それが近年、ワーキング各社の商品のデザイン性がマシになってきたのです。完全にとは言いませんが、デイリーカジュアルブランドと遜色のない商品が増えました。その中で、ワークマンが最も注目されたのは、全国800店舗以上の店舗数(大部分はフランチャイズ店ですが)があり、各地方で認知度が高かったこと、以前から歌手の吉幾三さんを起用したり、近年では有名ダンサーが作業着でブレイクダンスを披露するといったテレビCMを積極的に流し、販促に力を入れていたことが大きな理由だと考えられます。
なお、一般的にはワークマンが話題ですが、ワーキング業界では、バートルというメーカーが急速に売上高を伸ばしており、来期は売上高100億円を突破する見込みとなっています。社名をクロカメ被服からバートルへと変更し、ファン付き作業服が大当たりしましたが、商品デザインも今風に改めた結果、ワーキング店からの引き合いが増えて売上高を伸ばしているのです。
また、一方では、カジュアル業界やスポーツ業界が、ワーキング分野へ進出する動きも活発化しています。例えば、アシックスやプーマ、ディアドラなどのスポーツブランドが安全靴を相次いで発売。また、新興ジーンズカジュアルメーカーのブリッツワークスは、オリジナルブランド「ブルーモンスタークロージング(BMC)」をカジュアル店とワーキング店両方に卸していて、取り扱い店舗数は合計で400店に達しています。
このように、ワーキング業界・分野では、ワークマン躍進以外にも、注目すべき動向が目白押しなのです。
さて、そんなワークマンの中で個人的に注目しているレディース商品をいくつか取り上げてみます。デイリーカジュアルと遜色ないデザインの商品が増えたとは言え、全てがそうではありませんし、また、メンズ商品の構成比率が高く、レディース比率がまだまだ低いこともあるので、提示する商品は自ずと偏ってしまうことはご承知おきください。
1.レディース撥水マウンテンパーカー
レディース専用品が少ない中で、デザイン的にデイリーカジュアルに使いやすいことに注目しました。黙って着ていれば、ワークマンの商品だとは誰も気が付かないでしょう。2,900円という安値ですが、ポリエステルの裏地も付けられています。ただ一点気をつけてほしいのは、機能性の部分。この商品には、撥水加工が施されていますが、あくまでも水を弾く加工であって、完全に水の侵入を防ぐ防水機能はありません。そのため、激しい雨の中だと、水が浸入してしまうので、そのあたりはお間違えのないように。
2.Wクッション キャンバスシューズ
機能性で特筆すべきところは「クッション性」くらいしかありませんが、コンバースオールスターやジャックパーセルのようなテイストのベーシックなキャンバス地スニーカーで、使い勝手が抜群、加えて980円という安さにより、大人気商品となっています。ユニセックス商品ではあるものの、特にベージュがレディースに大好評で、25センチまでの小さいサイズに売り切れが多く出ています。無印良品のキャンバススニーカーよりも2,000円近く安いというコスパの良さが特徴です。
3.防寒レインジャケットPERFECT
ワークマンが注目されるきっかけとなった防水透湿の「イージス」シリーズの中でも、特に、3,900円というコスパに優れている点に注目しました。防寒対応のため、裏にフリースが貼られていて、この値段。ほかのイージスシリーズよりも1,000~3,000円も安く価格設定されています。それでいて、耐水圧10000mm、透湿度8000g/m2/24hという優れた防水透湿機能が備わっているのです。全部で6色展開、黒かネイビーを選べば、どこのブランドなのかまったくわからないベーシックなデザインも、またグッドでしょう。
今挙げた3点以外にも「これはカジュアルに使える」という商品はありますが、逆にやっぱり作業着然とした商品も数多くあります。ワークマンをカジュアル使いするなら、デザインやサイズもよく吟味する必要があると言えるでしょう。一歩間違えてしまうと、休憩中の作業現場の人みたいに見えてしまいますよ。
(南充浩)
ユニクロ「ヒートテック」以上に優秀な保温インナーはある? 専門家がおすすめする「無印」「イオン」の肌着とは
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
冬の保温肌着として一般的となったユニクロのヒートテック。2017年段階で、売上総数が10憶枚を突破した大ヒットアイテムですが、今回は、ヒートテックよりも安価で、かつ機能性が高い保温肌着はあるのか? について考えてみたいと思います。
本題に入る前に、私は暑がりで汗っかきなので、大阪や東京の寒さはそれほど苦にならないため、真冬でも保温肌着を着用しません。とはいうものの、試しにユニクロのヒートテック、グンゼのホットマジックを買って、着用してみたことがあります。その体感でいうなら、「うーん。普通の綿100%の肌着と変わらん。何が違うのかわからん」というのが正直なところです。そのため、今回は、「着用感」に基づいてではなく、あくまで素材の観点から、論評をしてみたいと思います。
ユニクロのヒートテック以外にも「保温肌着(インナー)」は数多く販売されている
ここ最近、春夏は吸水速乾肌着、秋冬は保温肌着を着用するというのが、すっかり一般生活に浸透しました。保温肌着といえば、ユニクロのヒートテックが最も有名ですが、各肌着メーカーや大手スーパー、各種量販店もオリジナルで保温肌着を発売しています。これらの肌着は、基本的に素材の機能性によるところが大きいアイテムなので、ブランドによって、デザインやパターンでの差別化は一部を除いてはほとんどありません。実際にはあるのでしょうが、消費者には区別できないほどの微細な差にしかなっていないのです。つまりどのような機能性素材が使用されているかで、肌着の優劣はほぼ決定されると言っても過言ではありません。
機能性素材の開発というのは、合繊メーカーと紡績がほとんど一手に担っているのが現状です。合繊メーカーというのは、ポリエステルやナイロン、レーヨンなどの「合成繊維」を製造するメーカーのことで、東レ、帝人、旭化成、クラレなどが代表的な企業になります。一方の紡績はもともと、「天然繊維」をつむぎ、綿糸にする工場の出自で、東洋紡、日清紡、クラボウ、シキボウ、ダイワボウなどが代表的な企業になります(実質の倒産により、化粧品と食品だけが何とか残ったカネボウも元は紡績です)。
現在、アパレルブランドは、保温肌着も吸水速乾肌着も合繊メーカーや紡績とのタイアップが不可欠となっています。ユニクロが東レと中長期提携していることはよく知られていますが、ほかの機能性肌着も同様に、合繊メーカーや紡績の協力を得ているというわけです。
さて、今回の趣旨は、「ユニクロのヒートテックより安価で、かつ機能性が高い保温肌着はあるのか?」ということなのですが、今秋冬のヒートテックは、レディースの半袖・8分袖・長袖シャツが990円(税別)、「ヒートテックの1.5倍暖かい」とされる「極暖ヒートテック」は、8分袖・長袖シャツが1,500円(税別)となっています。これらは、平均的な価格なのではないでしょうか。そして、ヒートテックの素材組成は、ポリエステル38%、アクリル32%、レーヨン21%、ポリウレタン9%で、合繊の塊とも言えます。21%混じっているレーヨンが、汗や体表の水分を吸収して発熱するというのがヒートテックの仕組みで、汗をかけばかくほど暖かくなるというシステムです。
そのため、乾燥しやすい肌の人や、合繊の服だと肌が荒れやすい人は、ヒートテックは「合わない」とも考えられます。そういう人におすすめで、かつ今、密かに売れていると言われているのが、無印良品の「綿であったかインナー」シリーズです。素材の組成は半袖シャツで綿93%、ポリウレタン7%となっていて、オーガニックコットン使用と謳われています。水分を吸収して発熱するという特性は、レーヨンだけのものではなく、実は綿にもあるのです。無印のインナーは、特殊な加工を施すことで、その性質をさらに高めたとされており、合繊だと肌荒れしやすいという人にとっては、ユニクロのヒートテックより優れた商品だと言えます。
また価格についてですが、レディースではタンクトップ、8分袖シャツ、はらまきショーツ、レギンスの4種類があり、価格はどれも990円。ユニクロのヒートテックと同じ価格と思いきや、ユニクロは税抜き価格である一方、無印良品は税込み価格のため、単純に価格だけで言うなら、無印良品の方が消費税分の99円お得ということになります(ちなみに昨年秋時点の「綿であったかインナー」は、価格が1,290円だったものの、今秋から990円に値下げされました)。
ただ、オーガニックコットンをこれほど安く仕入れて売ることは至難の業なので、繊維・アパレル業界からは、実は「本当にオーガニックコットンなのか? オーガニックじゃない普通の綿じゃないのか?」と、不信の目で見られているという裏話もあるのですが、とはいえ、ほぼ綿というのは間違いないでしょうから、合繊が苦手な人は一度試してみてもいいかもしれません。なお、某素材メーカーからの情報によると、9月と10月、「綿であったかインナー」は昨年の倍近い売れ行きだったそうです。
また、知名度の低さの割に、素材メーカーからの評価が高いのが、イオンのプライベートブランド「TOPVALU」が展開するウェア「セリアント」。商品名の「セリアント」というのが、まさに素材名なのですが、これは、アメリカのホロジェニックス社が開発した、チタン・アルミ・ケイ素など13種類もの微細な鉱石を練りこんだ特殊な繊維です。その効能は「血行が良くなること」だとされており、通常の衣類ではなく、一般医療機器に分類されています。そのため、価格は少し高めで、レディースの8分袖インナーが1,880円(税別)。
同商品はその効能から、秋冬にも適していると言えますが、消費者はもとより業界でも、まだあまり認知されていません。価格で言うと、ユニクロのヒートテックの倍になりますから、なかなか手を出しにくいだろうなと思う半面、この手の健康商材の多くは科学的根拠に乏しいことが多いのに対して、セリアントには根拠があるので、効能としては非常に優れていると考えられます。
「良い物は必ず売れる」と多くの人は思いがちですが、実際はそうではありません。イオンのセリアントがまったくと言っていいほど消費者はもとより業界からも知られていないのは、その一例だと言えます。
1,000円前後の保温肌着ではユニクロのヒートテックがほぼ一強と言える中、世に知られていない「自分にとって良い物」がないか、積極的に探してみてもいいかもしれません。
(南充浩)
ユニクロ「ヒートテック」以上に優秀な保温インナーはある? 専門家がおすすめする「無印」「イオン」の肌着とは
――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
冬の保温肌着として一般的となったユニクロのヒートテック。2017年段階で、売上総数が10憶枚を突破した大ヒットアイテムですが、今回は、ヒートテックよりも安価で、かつ機能性が高い保温肌着はあるのか? について考えてみたいと思います。
本題に入る前に、私は暑がりで汗っかきなので、大阪や東京の寒さはそれほど苦にならないため、真冬でも保温肌着を着用しません。とはいうものの、試しにユニクロのヒートテック、グンゼのホットマジックを買って、着用してみたことがあります。その体感でいうなら、「うーん。普通の綿100%の肌着と変わらん。何が違うのかわからん」というのが正直なところです。そのため、今回は、「着用感」に基づいてではなく、あくまで素材の観点から、論評をしてみたいと思います。
ユニクロのヒートテック以外にも「保温肌着(インナー)」は数多く販売されている
ここ最近、春夏は吸水速乾肌着、秋冬は保温肌着を着用するというのが、すっかり一般生活に浸透しました。保温肌着といえば、ユニクロのヒートテックが最も有名ですが、各肌着メーカーや大手スーパー、各種量販店もオリジナルで保温肌着を発売しています。これらの肌着は、基本的に素材の機能性によるところが大きいアイテムなので、ブランドによって、デザインやパターンでの差別化は一部を除いてはほとんどありません。実際にはあるのでしょうが、消費者には区別できないほどの微細な差にしかなっていないのです。つまりどのような機能性素材が使用されているかで、肌着の優劣はほぼ決定されると言っても過言ではありません。
機能性素材の開発というのは、合繊メーカーと紡績がほとんど一手に担っているのが現状です。合繊メーカーというのは、ポリエステルやナイロン、レーヨンなどの「合成繊維」を製造するメーカーのことで、東レ、帝人、旭化成、クラレなどが代表的な企業になります。一方の紡績はもともと、「天然繊維」をつむぎ、綿糸にする工場の出自で、東洋紡、日清紡、クラボウ、シキボウ、ダイワボウなどが代表的な企業になります(実質の倒産により、化粧品と食品だけが何とか残ったカネボウも元は紡績です)。
現在、アパレルブランドは、保温肌着も吸水速乾肌着も合繊メーカーや紡績とのタイアップが不可欠となっています。ユニクロが東レと中長期提携していることはよく知られていますが、ほかの機能性肌着も同様に、合繊メーカーや紡績の協力を得ているというわけです。
さて、今回の趣旨は、「ユニクロのヒートテックより安価で、かつ機能性が高い保温肌着はあるのか?」ということなのですが、今秋冬のヒートテックは、レディースの半袖・8分袖・長袖シャツが990円(税別)、「ヒートテックの1.5倍暖かい」とされる「極暖ヒートテック」は、8分袖・長袖シャツが1,500円(税別)となっています。これらは、平均的な価格なのではないでしょうか。そして、ヒートテックの素材組成は、ポリエステル38%、アクリル32%、レーヨン21%、ポリウレタン9%で、合繊の塊とも言えます。21%混じっているレーヨンが、汗や体表の水分を吸収して発熱するというのがヒートテックの仕組みで、汗をかけばかくほど暖かくなるというシステムです。
そのため、乾燥しやすい肌の人や、合繊の服だと肌が荒れやすい人は、ヒートテックは「合わない」とも考えられます。そういう人におすすめで、かつ今、密かに売れていると言われているのが、無印良品の「綿であったかインナー」シリーズです。素材の組成は半袖シャツで綿93%、ポリウレタン7%となっていて、オーガニックコットン使用と謳われています。水分を吸収して発熱するという特性は、レーヨンだけのものではなく、実は綿にもあるのです。無印のインナーは、特殊な加工を施すことで、その性質をさらに高めたとされており、合繊だと肌荒れしやすいという人にとっては、ユニクロのヒートテックより優れた商品だと言えます。
また価格についてですが、レディースではタンクトップ、8分袖シャツ、はらまきショーツ、レギンスの4種類があり、価格はどれも990円。ユニクロのヒートテックと同じ価格と思いきや、ユニクロは税抜き価格である一方、無印良品は税込み価格のため、単純に価格だけで言うなら、無印良品の方が消費税分の99円お得ということになります(ちなみに昨年秋時点の「綿であったかインナー」は、価格が1,290円だったものの、今秋から990円に値下げされました)。
ただ、オーガニックコットンをこれほど安く仕入れて売ることは至難の業なので、繊維・アパレル業界からは、実は「本当にオーガニックコットンなのか? オーガニックじゃない普通の綿じゃないのか?」と、不信の目で見られているという裏話もあるのですが、とはいえ、ほぼ綿というのは間違いないでしょうから、合繊が苦手な人は一度試してみてもいいかもしれません。なお、某素材メーカーからの情報によると、9月と10月、「綿であったかインナー」は昨年の倍近い売れ行きだったそうです。
また、知名度の低さの割に、素材メーカーからの評価が高いのが、イオンのプライベートブランド「TOPVALU」が展開するウェア「セリアント」。商品名の「セリアント」というのが、まさに素材名なのですが、これは、アメリカのホロジェニックス社が開発した、チタン・アルミ・ケイ素など13種類もの微細な鉱石を練りこんだ特殊な繊維です。その効能は「血行が良くなること」だとされており、通常の衣類ではなく、一般医療機器に分類されています。そのため、価格は少し高めで、レディースの8分袖インナーが1,880円(税別)。
同商品はその効能から、秋冬にも適していると言えますが、消費者はもとより業界でも、まだあまり認知されていません。価格で言うと、ユニクロのヒートテックの倍になりますから、なかなか手を出しにくいだろうなと思う半面、この手の健康商材の多くは科学的根拠に乏しいことが多いのに対して、セリアントには根拠があるので、効能としては非常に優れていると考えられます。
「良い物は必ず売れる」と多くの人は思いがちですが、実際はそうではありません。イオンのセリアントがまったくと言っていいほど消費者はもとより業界からも知られていないのは、その一例だと言えます。
1,000円前後の保温肌着ではユニクロのヒートテックがほぼ一強と言える中、世に知られていない「自分にとって良い物」がないか、積極的に探してみてもいいかもしれません。
(南充浩)
世界が注目する上海ファッションウィークとは? ドルガバ炎上後もブランド進出!中国ファッション界の急成長とリスク
――近年、上海ファッションウィークに出展するブランドは中国国内/国外問わず増え続け、世界的に通用し得るハイセンスな国産ブランドが頭角を現している。しかし一方で、ドルチェ&ガッバーナのPR動画が大炎上し、中国市場を一瞬にして失うという出来事もあった。そんなこの国のファッション界の実態を見ていこう。
一瞬にして巨大な中国市場を失ったD&G
2018年11月、ドルチェ&ガッバーナ(以下、D&G)が上海で開催を予定していた大型ファッションショーが中止となった。原因は公式インスタグラムで公開されたショーのPR動画。アジア系女性が箸を使い、ぎこちない様子でピザやスパゲッティなどを食するという内容で、箸を「棒」と表現するなど「アジア文化を冒涜している」としてすぐさま炎上。さらに、D&Gのデザイナーであるステファノ・ガッバーナ氏が、抗議に対して公式インスタグラムで「君は僕が炎上を恐れていると思っているのかい」などと挑発し、ショーに出演予定だった女優チャン・ツィイーなど多くの有名人が続々と不参加を表明した(ガッバーナ氏は後に「アカウントが乗っ取られた。現在、弁護士が対応中だ。私は中国と中国文化を愛している。このようなことが起き、非常に残念だ」と釈明)。結果、ショーが中止となっただけでなく、同ブランドの商品が中国のECサイトや百貨店などから撤去される――つまり、D&Gは中国市場を失ったのである。
なお、報道によると、D&Gの本国イタリアにおける17年度の売上高はたった24%。一方で、「日本を除いたアジア地域」は30%にのぼる。その大部分は、現在44店舗を展開している中国が占めているという。『ラグジュアリーブランディングの実際』(海文堂出版)などの著書がある早稲田大学ビジネススクールの長沢伸也教授は、D&Gの騒動について次のように解説する。
「イタリアのブランドであるD&Gは、これまでもたびたびシチリアピザを食べる女性モデルなどの広告を展開してきました。その流れもあって、軽いジョークのつもりでPR動画を制作したのでしょう。それが思いがけず炎上してしまった。慌ててしまったのか対応が遅く、不適切だったため、さらに炎上。ジョークのつもりでも、ブランド全体の3割の売り上げが一瞬で吹っ飛んだのだから代償は大きい。現在も中国国内の店舗は閑散としているそうです。政治的・文化的な文脈が絡む炎上なので、立ち直るには早くても人々が騒動を忘れてしまう3年、長ければ世代が入れ替わる10年はかかると思われます」
ほかのラグジュアリーブランドも、そんなD&Gの騒動を見て気を引き締めたのではないだろうか。というのも、「ラグジュアリーブランド全体においても、売り上げのおよそ3割を中国人による購買(購買地は中国国内外を問いません)が占めている」(長沢氏)からだ。
「なかでも1992年にいち早く中国に進出したルイ・ヴィトンは、北京、上海、深セン、広州といったいわゆる一級都市はもとより、それに次ぐ二級都市や、さらに小さな都市にも店舗を展開しています。あるいは、プラダは11年に香港証券取引所に上場し、生産も中国で進めて、中国シフトをアピールしました。ただ、“メイド・イン・チャイナ”の商品がブランディング的に裏目に出たため、ここ4~5年は顧客が離れてしまい、ようやく下げ止まった印象です。また、07年にはフェンディが万里の長城でショーを行い、19年にはカルティエと北京の故宮博物院が共同で特別展を開催するなど、各ブランドとも中国マーケットを重視し、中国文化に敬意を表するイベントを開催しています」(同)
ちなみに、二級都市と呼ばれる杭州は日本人にはマイナーな都市かもしれないが、同地の高級百貨店「杭州大厦购物城」は、17年時点における中国のデパートの中で「北京SKP」に次ぐ2位の売り上げを誇る。もちろんこの建物には、ルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエ、ディオール、フェンディなどが出店している。
ただし、中国国内でのラグジュアリーブランド品の価格は関税や消費税、さらに贅沢税がかかっているため、日本に比べて20%程度も割高である。それゆえに、日本の銀座をはじめ国外のあちこちで、中国人観光客がブランド品を爆買いする様子が見られるわけだ。
ともあれ、ブランド品消費の中心となっているのが、“80后”と呼ばれる80年代生まれの層である。しかし、36年間にわたる一人っ子政策を取ってきた結果、中国は日本以上に深刻な少子高齢化が予想されている。中国社会科学院によると、17年に約10億人いた15歳から64歳までの生産年齢人口が、50年には約8億人に減少し、60歳以上の高齢者に関しては50年までに総人口の3分の1=約5億人にのぼると見られているのである。
「そのため今後、消費が落ち込むことは予測できます。そこでブランド側は、少子高齢化と消費の成熟化が進む日本でいかに対応するか、今のうちにノウハウを身につけておくことが求められます」(同)
当然ながら、日本のアパレル企業も中国市場を無視しているわけではない。だが、ここ数年、中国に進出した企業の多くは競争の激化で苦戦しているようだ。ピーク時に300店を展開し、上海の繁華街である南京東路にファッションビルを開業していたイトキンは、16年に完全撤退。13年のピーク時に589店あったハニーズホールディングスも、18年に撤退した。好調なのは、進出は02年と後発ながら、20年度には中国全土に1000店体制を構築するというユニクロくらいである。
こうした状況も確かにあるが、ファッション感度の高い一部の中国のバイヤーから、日本の先端をいくインディーズブランドに注目が集まっている。このきっかけとなったのが、ファッションショーや見本市、ショールームが開催され、中国全土から毎回約5万人のファッション業界関係者が訪れる「上海ファッションウィーク」(03年に初開催)だ。
「3~4年前は数えるほどしか出展していなかった日本のブランドですが、今年3月末~4月頭に開催された『上海ファッションウィーク2019AW』には120以上が出展したと報じられています。それだけ日本のブランドが中国で評価されているということもありますし、日本の市場がファストファッション中心で、プロダクトアウト(消費者のニーズよりもデザイナーの理念や創造性を優先する方法)のブランドにとってツラい状況になっているため、上海ファッションウィークへの期待が高まっているということでもある。すぐに大きなビジネスにつながらなくても、毎回新しい中国各地のバイヤーと出会えるので、2回、3回と続けて出展するブランドが多いですね」
こう語るのは、上海を拠点に日本のブランドの中国進出を支援するKMT inc.代表の兒玉キミト氏。特に地方都市の需要が伸びているという。
「一級都市はブランドやセレクトショップが増えすぎて飽和状態ですし、東京やニューヨークへの直行便も多く、バイヤーは東京コレクションやニューヨークファッションウィークに直接行ってしまう。そうした環境ではない重慶、成都、西安、烏魯木斉などのバイヤーのエネルギーを強く感じます。情報や物量が多い一級都市とはファッションに対するリテラシーも違うので、それほど知名度が高くないインディペンデントブランドでも、バイヤーが気に入りさえすれば受け入れられる可能性が高い。しかも、中国は人口が多いので、一部の人に受け入れられるだけでも十分商売になる点が魅力となっています」(兒玉氏)
また、日本からの出展ブランドが急激に増加した背景には、通信速度の向上とインターネット利用者の増加が関係しているのではないかと兒玉氏は分析する。中国で4G回線のサービスが始まったのが、13年末から14年にかけて。15年に総人口に対するネット利用者の割合が50%を超え、海外のファッションメディアにアクセスするようになるなど、地方都市に至るまで若者のファッションセンスが大きく向上した。ECサイトも日本以上に浸透しており、ネットショッピング大手「天猫(Tモール)」「京東商城(ジンドン)」のほか、「YOHO!(ヨーホー)」というサイトがストリート系では圧倒的人気を誇る。もともとファッション誌からスタートした「YOHO!」は、メディア、小売、イベントの3つを事業の柱として業績を伸ばしている。
「ただ、中国ファッション市場で気をつけるべき点は、やはり偽物。今年6月、上海に旗艦店を出していたフェイクブランドのシュプリーム イタリアが、本家シュプリームの働きかけにより中国での登録商標を抹消されたばかり。こうした点は日本よりトラブルが多いですね。また、バイヤー側が日本と比べると成熟しておらず、経営スキルが高くないケースが多々ある。そのあたりは取引先となったときに注意しておかないと、経営が突然傾いて損失を被る可能性もあります」(兒玉氏)
そんなリスクがありつつも、日本を含めたさまざまな国外ブランドが中国市場を狙っているわけだが、中国発のブランドも負けじと成長し、今後は世界に打って出るケースが増えてくるかもしれない。中国の若手デザイナーを取材するファッション・ジャーナリストの倉田佳子氏は、このように語る。
「上海ファッションウィークの開催期間中に行われる、国内の若手デザイナーや新興ブランド(下段コラム参照)をフィーチャーしたショー『LABELHOOD(レーベルフッド)』は毎回、上海当代芸術博物館やTANKといった十分な広さのある大型美術館を会場として使い、大がかりに開催しています。ショーのフロントロウには、欧米のショーでも見かけるような有名メディアの編集長や人気ブロガーらが招待ではなく、自発的に取材に来ていますね。中国国内のみならず、海外からも注目されていることがよくわかりますよ」
前出の兒玉氏も中国ブランドや人材に着目している。
「やはり資本力があるので、海外進出は大いにあり得ます。実際、スポーツアパレルブランドの李寧(リーニン)はニューヨークでショーを開催し、その話題を受けて中国国内でも『海外でウケている』と購買者が増加、業績を回復させています。これからも、ブランディングという意味で欧米に打って出ようと考えるブランドは増えるでしょう。とはいえ、海外進出には財力だけでなく、ファッションに関する知識やスキル、センスなども磨く必要があるわけですが、その点では、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズやニューヨークのパーソンズ美術大学、日本の文化服装学院など世界のファッション名門校で中国の留学生が増加している。このように海外留学を経験してから中国で働く若者たちは“海亀”と呼ばれ、期待されていますね」(兒玉氏)
しかし、「LABELHOOD」のファウンダー/ディレクターであるターシャ・リュウに取材したことがある前出の倉田氏は、こうした留学一辺倒の教育システムに疑問を呈する。
「海外のファッションスクールに行く前段階としての塾が中国国内に何校もあるのですが、そこを経て留学するとなると、トータルの学費はかなりかかる。つまり、国内の学校で優秀な人材を十分輩出できる日本と違い、中国には留学させられる経済力のある家庭の子女でないとファッションデザイナーになれない、という暗黙の了解が染み付いているのです。留学から帰国した後、家族経営をして家族に還元するという価値観もいまだに根強く残っていますが、ターシャは金銭面を第一条件とせずに、純粋にクリエイションを重んじる学生を育てられる安定した環境を整備すべく動き始めているようです」(倉田氏)
上海ファッションシーンにカネが飛び交い、熱気を帯びているといっても、文化としての成熟はもう少し先のことかもしれない。しかし、変化は速い。中国のファッション界が猛スピードで成長し続けているのは間違いない。
「『LABELHOOD』は単に若手のブランドを業界内に紹介するのみならず、演出面で一般客を楽しませるために工夫をするなど、クリエイション全体を成長させようという気概を感じます。その上で、国外へのプロモーション活動に積極的に取り組み、スポンサーを集め、長期的なビジネスとしても成り立たせようとしているんです。そこに、服として魅力あるブランドがもっと増えていけば、海外でもより面白い展開を見せるのではないでしょうか。また、デザイナーだけでなく、メディアという面でもWeChatを中心に発信する個人がブランドのプレスリリースをそのまま記事にするなど未熟な部分があるので、批評の環境が整備されれば相乗効果でファッション界が底上げされていくと思います。いずれにしろ、成長の速度がスゴいので、今後が楽しみですね」(倉田氏)
“メイド・イン・チャイナ”がオシャレの象徴になる日は、目の前に来ている。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)