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「雨降って地固まる」という言葉がある。
何か問題が起きて、それが解決されると、元の状態よりも良くなっているという意味だが、こと人間関係においては、トラブルが起こった後、関わった人たちの絆が強まり、関係性が良くなる、というように捉えてよいだろう。
テレビドラマの中では、このパターンは王道中の王道、それをどううまく料理していくかが、面白さに繋がってくると言ってもいい。
ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第8話。物語も終盤に向け、この「地固まる」展開が多く見られた。
11月になり、匡平(横浜流星)の東大受験まで数カ月を残すのみとなった。東大模試に向け、指導に力が入る順子(深田恭子)の元に、自身の経歴を詐称していたことがバレ、花恵会を辞めた牧瀬(高梨臨)が現れる。自分がこれまでに作った授業ノートを順子に渡し、去ろうとする牧瀬を、順子と匡平は引き止め、理数系はこれまで通り教えて欲しいと頼む。一つの事件を乗り越え、ここに新たな絆が生まれているのだ。
その夜、美和(安達祐実)の策略で、プチ同窓会をやることになり、順子と牧瀬、従兄弟の雅志(永山絢斗)、匡平の担任の山下(中村倫也)が集まった。不思議な関係で繋がった5人、それぞれの思いを抱えたまま乾杯するのだった。
その席上、牧瀬が雅志を好きだったという話から、山下と順子もデートをすることとなる。日にちは、匡平の模試当日。その日であれば、先生はやることがないからだ。
デートの当日、山下は、順子を自分のバイクの後ろに乗せて出かける。初めてバイクに乗った順子は思う。
「大人になって『初めて』が少なくなった。今見るこの初めての景色は、すごく気持ちがいい」
子供の頃や、若い頃は、初めて経験することがたくさんあった。もちろん、楽しいこともつらいことも含めて。順子が言うように、大人になるとそれが減ってくるのは事実だ。いろんな経験をして、新しいことの絶対数が減ってくるというのもある。ただ、それ以上に、慣れたことを続けようとして、新しいことにチャレンジしなくなったという事情もあるだろう。
どんなことであれ、新しい一歩を踏み出すのには、勇気がいる。その勇気を持ち続けることこそが、“若さ”なのではないかと思う。
模試の当日、デートを終え、順子と山下が塾の前で別れたところを、匡平は目撃してしまう。「山下と何をしていたのか」そう問う匡平に、「デートしていた」と順子は正直に答える。模試の自己採点も芳しくなかった匡平は、心にモヤモヤしたものを感じる。
一方で、匡平の家ではさらに大きな問題を抱えていた。
大学の認可に絡んだ、国会議員・吉川(平泉成)の不正に、匡平の父親で文科省局長の菖次郎(鶴見辰吾)が関わっていたというのだ。自宅にはマスコミが押しかけ、大騒ぎになる。さまざまなことが重なり、プレッシャーに押しつぶされた匡平は「受験をやめる」とまで言い始める。
学校にも塾にも行かず、一人で勉強を続ける匡平を、東大近くの喫茶店に誘ったのは雅志だった。匡平に「どうしてそこまでしてくれるのか?」と尋ねられた雅志は答える。
「人が動く動機は2つ。自分の幸せのためか、好きな人の幸せのため」
つまり、雅志は、好きな順子の幸せのために、匡平を助けているというのだ。本当に優しい人だと思う。好きな人の幸せのためとはいえ、匡平と順子がうまく行けば、自分が悲しい思いをするかもしれない。それでも、順子がより幸せになるのはどちらなのか、その間で揺れ動きながら、今できる最大限のことをしているのだろう。
不正事件については、山下も動いていた。実は、山下の別れた妻・優華(星野真里)は、吉川の娘だったのだ。吉川に会いに行った山下は、不正の事実を認める代わりに、自分が優華とよりを戻し、政治家として跡を継ぐことにしたのだ。
匡平の父親の疑惑は晴れ、順子も安心することだろう。しかし、山下はそれで良かったのだろうか? もう、順子と結婚することはできない。一番好きな人のために、その人と一緒になることをあきらめたのだ。
雅志と山下、2人の行動は、ある意味「自己犠牲」ということもできる。そして、匡平はそのことに気づいている。では、順子はどうだろう? 意外と、そこまで気が回っていないようにも思う。でも、それも含めて順子が魅力的な女性でもあることは間違いない。
今回は、「先生」という言葉がキーワードになっていた。
最初に出てきたのは、菖次郎が電話で吉川のことを話すシーン。「吉川先生はなんとおっしゃってるんだ!?」と叫ぶ。まずは、国会議員としての「先生」だ。
次は、問題が発覚し、悩む匡平の元を、順子と山下が訪ねたシーン。ここで、匡平は、順子のことを「春見先生」と呼ぶ。自分のことを心配してくれている順子に対する、尊敬の念が、そう呼ばせているのだろう。
そして最後、自分の生涯をかけて、不正を暴いてくれた山下に対し、匡平が声をかける。「山下先生!」。それまで呼び捨てにしていた山下に対し、感謝の思いがこもっていることを感じる。そして、匡平は、そんな思いを素直に口にできる、優しい人間になったのだ。
さて、教師を辞めた後の山下はどうなることだろう。吉川の地盤を引き継ぎ、政治家としてまた違った「先生」と呼ばれるのかもしれない。それもまた悪くはない。
今話では、大学の設置認可に、ヤンキー先生の国政進出など、現実の出来事とリンクするような展開が見られた。時間軸がリアルタイムに近づいてくるのを感じさせるためにも、有効な仕掛けだったと思う。
今回の出来事を通して、それぞれの関係性は、より強くなったと思う。いわゆる「男女の愛情」以上のものを、見つけはじめているのかもしれない。順子の気持ちは、最終的に誰のもとに行き着くのか。深まる絆とともに注目していきたい。
(文=プレヤード)
