少し前までは、精神的な病に偏見を持つ人が多かったため、患っても隠す人がほとんどだった。しかし近年、若いセレブたちが、次々とメンタルの問題を抱えていることを公表している。
歌手のレディー・ガガは、うつ病や不安神経症、そして19歳の時にレイプされたことの心的外傷後ストレス障害を放置していたため線維筋痛症を発症してしまったと告白し、「トラウマはすぐに治療しなくちゃダメ」と声を上げた。アイドル出身のマイリー・サイラスは、薬はあまり好きではないといいつつ、抗うつ剤で症状が改善されたようで、「人に話したり薬を飲んだりすることに抵抗を感じる人が多いけど、大丈夫だよ」と、同じような症状を持つ人を励ましている。同じくアイドル出身の歌手セレーナ・ゴメスは、難病・全身性エリテマトーデスの副作用として、不安障害、うつ病を発症。悪化する前に精神医療施設に入院し、そのことをファンにもきちんと公表している。
世界保健機関(WHO)によると、うつ病に悩んでいる人は世界で約2億6,400万人。メンタルの問題は一人で抱え込んでしまいがちだが、セレブが自身の精神疾患をオープンに語ることにより、「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」と勇気づけられる人が世界中にいるのである。今回はそんな、メンタルの問題をカミングアウトしたセレブたちを紹介したい。
双極性障害に悩んだ、キャリー・フィッシャー
偏見をもたれやすい双極性障害の罹患だけでなく、精神科病棟に入院して治療を受けたこともオープンにしたキャリー。米社会で双極性障害に対する理解度が上がったのは彼女のおかげだといわれている。
『スター・ウォーズ 』のレイア姫として知られるキャリーだが、もともとは2世女優。ハリウッドで絶大なる人気を博した女優デビー・レイノルズと、人気歌手エディ・フィッシャーの間に誕生。赤ん坊のころに、父は大女優エリザベス・テイラーと不倫し、彼女と結婚するためにデビーと離婚。母親に引き取られたキャリーは、大人に振り回されながら成長した。メンタルの問題は子どものころから抱えており、1999年に受けたインタビューでは、「15歳のころからセラピストの世話になり、今は3人のセラピストに診てもらっている」と明かした。
17歳で映画デビューを果たし、その2年後に『スター・ウォーズ』で大ブレーク。女優として活躍する一方、作家としても頭角を現し、ベストセラーとなった自叙伝『崖っぷちからのはがき』(87)は映画化までされ、同書でキャリーは自身の薬物・アルコール乱用を包み隠さず告白した。そもそも依存症になったのは、双極性障害が原因だった。コカインなどのドラッグや鎮痛剤など薬物を乱用したのも、躁うつ症状を抑えるため。精神的な安定を求めて薬物依存になっていたのだと語った。
キャリーは、97年に精神科病院に入院。退院後も5カ月間通院した。薬物治療を受け、薬はずっと飲み続けていることを公にしていた。08年にリリースした自叙伝『Wishful Drinking』では、「双極性障害を抱えて生きるということは、全身全霊を尽くさなければならない挑戦であり、とんでもないスタミナや、それを超える勇気も必要なの。だから、この病を抱えてなんとか日常を送っているとしたら、それは誇りに思うべきことよ。恥じるなんてとんでもない」とつづり、双極性障害に苦しむ多くの人に勇気を与えた。
精神疾患と共に生きるのは容易なことではないが、上手に折り合いをつけて生きられるようになったと自負していたキャリー。世界中の人々に愛された彼女は、16年12月、心臓発作により60歳で死去。体内からはアルコールやコカイン、MDMAなどの薬物が検出され、最期まで双極性障害に苦しんでいたのではと同情を集めた。
いまやトップモデルの一員となったケンダル。世界を股にかけて活躍する彼女だが、2018年、家族で出演しているリアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』で、母親でマネジャーのクリスに「飛行機を降りたい」と泣きついている姿を見せ、世間を驚かせた。
ケンダルは、飛行中にパニック発作を起こし、クリスにテレビ電話をかけた。「飛行機に乗っていると頭がふらふらする。失神しそうになるの」「みんな『大丈夫だよ』って言うんだけど。私自身は大丈夫だなんて感じられないのよ」と訴え、不安障害からパニックを起こしたという。
彼女は、小さいころから健康なのに「病気ではないか」と心配する心気症だったとのこと。成長にするにつれ症状は薄れてきたが、16年にフランス・パリで異父姉キム・カーダシアンが拳銃強盗に遭ったことがきっかけで、不安障害を発症。その後、自宅に泥棒が入ったり、待ち伏せしていたストーカーに追いかけられたりと立て続けに怖い思いをしたことから重症化。「だから、あまり外出しなくなった。Twitterやインスタグラムもあまりやらなくなった。やってるだけで不安になっていくから」とクリスに訴えていた。
雑誌のインタビューでもメンタルの問題について赤裸々に語っており、18年1月に米誌「Harper’s Bazaar」のインタビューで、「衰弱性の不安症持ちなの。精神的に追い詰められると、真夜中にパニック発作を起こして目を覚ましてしまう」「どうしていいか、わからなくなる。何が原因かわからなくなるほど」と語り、ファンを心配させた。
その後、受けた米誌「Love」のインタビューでは、18年2月末~3月頭に開催されたパリ・ファッション・ウィーク(2018/19年秋冬パリコレクション)に出なかった理由について、「ロスで仕事をしていて、“あぁ、もうだめだ。このままだと自分がおかしくなってしまう”と思った」と説明。6月にはミラノのメンズ・ファッション・ウィークのランウェイを歩いたものの、「崖っぷちの精神状態だったから」いつでもキャンセルできるようにしていたのだと明かした。
ケンダルは、“体の上に置いて鳴らすおりんの音で精神状態を整える”というサウンド・バスやはり治療、座禅を組み20分間マントラを唱える超自然瞑想など、不安症やパニック障害を乗り越えるためのさまざまな方法に挑戦しているという。
人気上昇中にうつ病を告白したリリ・ラインハート
今も昔もイメージが大切なハリウッド。そのためメンタルの問題については、人気が定着した後に公にするセレブがほとんどだ。だが、リリは、若者に人気のドラマ『リバーデイル』で知名度が上がり出したころから、自身が抱える精神疾患についてオープンに語っていた。
17年4月に女性誌「コスモポリタン」のインタビューで、メンタルな病との闘いを話すのは、恥ずかしいことではないと発言。「学校で普通に話すべきだと思う。ティーンは、メンタルに問題があること自体、特殊だと感じて『隠さなきゃ』とプレッシャーを感じてしまう」といい、もっとオープンになるべきだと訴えた。
19年11月、英誌「Glamour」では、「私はうつ病と不安症を抱えている」「やる気がまったく起きない日があるの」「ストレスとうまく付き合えない」と、今も苦しんでいることを明かした。「自分の経験をシェアすることで『私だけじゃない』と認識する。自分にとっては素晴らしいセラピーだわ」と、今どき時の若いセレブらしい発言をし、話題を集めた。
重度の社交不安障害に見舞われたことがきっかけで、10代のころからセラピーに通っているというリリは、「学校がダメで、毎朝行く前に泣いていた。でもセラピーを受けて、いろんなことが理解できるようになった。問題をどう解決するかを学び、つらい気持ちが軽減された」「私はクレイジーじゃない。問題は私じゃないんだと思えるようになった」と、セラピーで自信をつけることにより症状が改善されたとも明かしている。
“自信にあふれた力強い女性”というイメージが強いビヨンセ。ソロキャリア初期は、ステージ用の別人格サーシャになりきってパフォーマンスを続けていたというほど、シャイな性格であることはあまりにも有名だ。だが、子どものころのいじめによりメンタルに大きなダメージを受けたことはあまり知られていない。
2009年に発売された伝記本『Beyonce Knowles』によると、子どものころは学校で「耳が大きくてダンボみたい」「バカ、ブス!」といじめられていたとのこと。そんな彼女は、7歳の時に教師に勧められて参加したタレントショーで、歌う楽しみを知る。ビヨンセの才能を信じた両親は、ガールズグループ「デスティニーズ・チャイルド」を結成。父親はマネジャー、母親はスタイリストとしてグループを応援するようになった。
しかし、そのデスティニーズ・チャイルドを初期に去ったメンバー2人が父親を訴えたことで、ビヨンセは人間不信に陥ってしまう。06年に米誌「Parade」で、2年間うつに苦しんだことを告白。「食べられなくなってしまって。自分の部屋にこもるようになった」と述べ、メディアに追いかけ回されたことも「攻撃を受けているよう」で精神的に参ったと吐露した。
自分自身さえも信じられなくなったビヨンセだったが、母親の「あなたは頭が良くて、優しくで、美しいのよ。みんなに好かれるに決まってるじゃない!」という言葉で自信を取り戻し、グループは大成功を収めた。グループ解散後もソロアーティストとして活躍。しかし、大ブレイクして多忙を極めるようになった10年に、ビヨンセは突然活動を停止。半年以上、表舞台から姿を消した。
11年の英紙「ザ・サン」のインタビューで、ビヨンセは、この活動停止について精神崩壊を回避するためだったと告白。「自分がどこにいるのかわからなくなった。セレモニーや授賞式の席に座りながら、頭の中は次のパフォーマンスのことでいっぱいで」と語り、母のアドバイスに従って長期休養を取る決断を下したそう。
活動停止中、ビヨンセは博物館を巡ったり、世界遺産の万里の長城を訪れたり。ゆっくりと休養したおかげで、心の健康を取り戻せたよう。「私は母親から、心の健康に気を配るように言われ続けてきたのよね」と感謝しながら、思い切って休む大切さを伝えた。
ビヨンセだが16年に女性誌「ELLE」で、女性が完璧を追い求めることは危険だとも警告。「女性は自分のメンタル・ヘルスについて、じっくり考える時間が必要。自分のために時間を作って。後ろめたいとか、自分勝手だと思うことなく」と熱弁し、大きな話題を呼んだ。
「21歳まで生きられないと思っていた」デミ・ロヴァート
子役からキャリアをスタートさせ、米ディズニー・チャンネルの人気青春コメディ『サニーwithチャンス』に主演したことで一躍アイドルスターとなったデミ。しかし、人気絶頂だった2010年に、摂食障害、双極性障害、自傷癖で精神医療施設に入院。明るく元気なイメージを持たれていたため、世間に大きな衝撃を与えた。
14年、デミはTwitterに「摂食障害は命を奪う深刻な病。単なるダイエットなんかじゃないのよ」「絶食しているみんながダイエットしているわけじゃないし、過食嘔吐するのはガリガリにやせている人だけじゃない。摂食障害は人を選ばない病気なの」と投稿。「拒食症の人に『もっと食べればいいのに』、過食症の人に『吐かなきゃいいのに』って言うけれど、そんな単純な問題じゃない。精神障害への無知・無学が、メンタルの問題に対するケアを後回しにさせている。毎日のように悲劇が起きているというのに」と、世間が摂食障害に対して持っている誤解を指摘した。
16年には米誌「American Way」で、入所前にはメンタルの問題から薬物を乱用したり、過度な飲酒をしたりと最悪な状態だったと激白。「自分は21歳まで生きられないと思っていた」「(07年に)ブリトニー・スピアーズが精神崩壊した時、『3年後の私の姿』だと思った」と赤裸々に語った。
同年末には米誌「People」で、「家族、友人、治療をしてくれる専門家たちが、私のメンタルが回復するまでサポートしてくれた」「専門家たちとの関係は今も続いている。精神科医やセラピストに1回会うだけじゃ、終わらない。治療を続け、精神疾患とうまく付き合いながら生きていかなければならないから」と継続治療の重要性を訴え、「双極性障害持ちでも、ちゃんと立派に生きていける。私がよい見本だよ」とメンタルの問題を抱える人たちを励ました。
ポジティブな姿勢を見せていたデミだが、18年7月には、薬物過剰摂取で意識不明となり、病院に緊急搬送。再び療養生活を送るようになった。
だが直前に書いた、“精神的に追い詰められ、切実に助けを求める”という内容の新曲「Anyone」で見事復活。今年のグラミー賞授賞式で力強く歌い上げ、拍手喝采を浴びた。デミはその後、ポッドキャストで「薬物依存に陥った原因は摂食障害。克服したと思ってたけど、エクササイズ依存になり、健康的な食事からまた遠ざかってしまった」と告白。摂食障害がいかに恐ろしい病なのかを世間に訴えた。
大ヒット映画シリーズ『トワイライト』でヒロインを演じ、一躍ブレイクしたクリステン。同シリーズで恋人役を演じたロバート・パティンソンとのロマンスや、映画『スノーホワイト』(12)でのルパート・サンダース監督との不倫、ロバートと破局後は女性と交際するなど、私生活でタブロイドをにぎわせることも多い人気女優だ。
そんな彼女は、『トワイライト』で突然有名人になったことで「自分自身でコントロールできない状況に陥った」ことがストレスとなり、不安症から慢性的な胃痛に苦しんだと、16年に英誌「ELLE」のインタビューで告白。「私はコントロール・フリークなの。物事をコントロールできないと、パニック発作を起こしてしまう。だから常に胃が痛かった」「(人気者となり)自分でコントロールできない、予想できないことばかりで。『このままだと病んでしまう』と思っていたら、本当に体調を崩してしまったの」と回想した。
クリステンは、「年を重ねるにつれ、強迫性障害にも悩まされるように」とも明かし、「物事がメチャクチャになってしまうと、すべてを見失ったような感覚に陥るの」「だから、自分自身に『今は、必要なことだけをしなさい! すべてを整理整頓する必要はないのよ!』と言い聞かせるの」と語った。
苦しみながらも、メンタルの問題とどう付き合って生きていけばよいかを身につけたとのこと。「ある時、恐怖がなくなっていたことに気がついたの。多くの苦しみを経験してきたけど、私はなんとか生きているし」「不安は尽きたんだと理解したわ。もう悩むようなエネルギーは残っていないんだ、って」と吐露し、「苦しんだ先に希望が見える」と、メンタルの問題を抱える人たちを励ました。