連続殺人鬼を熱演した『モンスター』(2003)や、世界初のセクハラ訴訟を起こした女性を情熱的に演じた『スタンドアップ』(05)など、華やかなハリウッド女優が敬遠するようなアクの強い役を引き受け、巧みに表現するシャーリーズ・セロン。
米FOXニュースで実際に起きたセクハラ騒動を描いた新作映画『スキャンダル』(本日12月20日から全米公開、日本公開は2月21日)では、同局の売れっ子キャスターだったメーガン・ケリーを演じた。メーガンは、昨年移籍先の米NBCニュースで人接差別を擁護するような発言をしたとして批判を浴び、番組が打ち切りとなるなど、論議を呼ぶ人物であることから、「一筋縄ではいかぬメーガン役を引き受けたのは、やっぱりシャーリーズだったか」「徹底的に役作りのできるシャーリーズが、どこまでメーガンに近づけるのか楽しみ」と注目が集まっている。
そんなシャーリーズが『スキャンダル』のプロモーションのために受けた米ラジオ局「NPR」のインタビューで、彼女を語る上では欠かせない「15歳の時に、家庭内暴力を振るっていた父親を母親が正当防衛で殺害した」事件を回想。ネット上では「何度聞いても、鳥肌が立つ」「あまりに壮絶な体験」と同情を集めている。
シャーリーズは今回のインタビューで、映画の題材であるセクハラについてや、アパルトヘイト政策が残る南アフリカ共和国で生まれ育ったことについて話した。その流れで家族について話が及んだのだが、初めに「父はとても病的な人だった。私は、アルコール依存症だった父しか知らない。生まれた時からずっと依存症だったから……本当に絶望的な状況で、私たち家族はその絶望から抜け出せずにいたの」と、酒におぼれた父親が母親に日常的に暴力を振るう家庭で育ったのだと説明。
「依存症の人との予測不可能な日常を送っていると、これが普通なんだと耐性ができてしまう。そのトラウマは体の中に深く入り込み、死ぬまでずっと持ち続けることになる。(母が父を殺害した)一夜の、一度だけの出来事がトラウマの原因じゃない」「私の家族は信じられないくらい不健康だった。(略)問題の根本にきちんと向き合わないと、不幸なことが起きてしまうのよね」と述べ、父だけでなく共依存だった家族にも問題があったことを示唆した。
続いて当日のことを回想。「銃を手に持って帰宅した父は、歩くこともままならないほど泥酔していた。寝室にいた母と私は、父が寝室に入ってこられないようにと、必死でドアに背中を押しつけた。父はドアを押し開けようとしていたのだけど、ふと一歩、後ずさりする音がして。直後、私たちが押さえていたドアに向かって銃を3発撃ったの。母と私に1発も命中しなかったのは奇跡としか言いようがないわ。でも、母はその時に、この脅威を終わらせたの。正当防衛でね」と淡々と語った。
日常的に暴力を受けていた母親は、このままだとシャーリーズも殺されると思い、自分のバッグの中に入れていた拳銃を取り出して父親を銃殺。地元警察は、父親がアルコール依存症でDVしていたことを知っていたため、母親は正当防衛が認められ、殺人罪などで起訴はされなかった。
シャーリーズは、「DVについて、私はたくさんの人と経験を共有するようにしている。別に恥じていないし、話せば話すほど、『こんなひどい目に遭っているのは自分だけじゃないんだ』と気づいてくれる人が増えるから」とも述べていた。
しかし、17年に別のラジオ番組に出演した際は、母親が正当防衛で父親を殺害してからしばらくは「何も起きなかったふりをした。誰にも話さなかったし、話したくなかったし。聞かれたら『パパは交通事故で死んだ』と答えていた」と告白。「誰もこんな話はしたくない。それに、聞かされた人だって反応に困るでしょう? 被害者扱いされるのも嫌だったし。本当に何年も苦しんで、最終的にセラピーを受けるようになったの。20代後半~30代初め頃だったかな」と、セラピーにより気持ちが楽になったことを明かした。
また、「実は、父の死はトラウマになってないのよ。トラウマになっているのは、依存症の人がいる家の中で目を覚まし、『今日は何が起きるんだろう』『今日はお酒を飲むのかな』とおびえていた子ども時代の経験。このトラウマは、大人になった今も自分に影響を与えてるわ」とも激白していた。
そんな彼女を命がけで守ってくれた母親とは固い絆で結ばれているよう。11年にトーク番組に出演した際、2歳の頃、彼女がプールで溺れるた際に母親が服を着たまま飛び込んで助けてくれたエピソードについて話が及ぶと、「母親として本当に素晴らしい人なの。『夫を正当防衛で殺害した人』という目でしか見られないけど、何度も私の命を助けてくれたのよ。自身は毒母に育てられたのに、私には愛を注いでくれた、母親として最高の女性」と、心からの賛美を送っていた。
アルコール依存症の父から暴力的支配を受け、逃げ場のない家庭で15年も暮らした経験があるからこそ、シャーリーは人間の奥底に潜む闇や、矛盾した感情などを表現できるのかもしれない。

