薬物使用者の掲示板に見る、ドラッグに対する本心「人生が好転した」「死ぬしかない」

 今まで数多くの著名人等が、覚せい剤や大麻の使用・所持などにより逮捕され、世間を騒がせてきた。浅野忠信の父親が、覚せい剤使用の疑いで逮捕されたときは、本人も言い逃れすることもなく「自分の意思で使用していました」と、あっさりと使用を認めた。そんな話題を聞くたびに、ふと疑問に思うことがある。芸能界では覚せい剤って、そんなに身近なものなのだろうか? 多くの人にとって、覚せい剤は普段の生活で触れることのないものだ。せいぜい、知り合いに覚せい剤で逮捕された人がいるか……いや、そんなことも滅多にないだろう。

 だが、それが海外になると事情は変わる。私が海外で生活をした頃、多くの人にとって覚せい剤はごく身近なものであることを知った。例えば、海外では、日本の未成年者の喫煙と同程度の罪悪感の感覚で、平然とドラッグをキメることがあるようだ。もちろん、私が知っていることが全てではないが、現地の友人らも、約半数の人がドラッグを使用した経験があり、マリファナにいたっては約8割もの友人が経験アリとの答えだった。中には弁護士もいたし、一流大学出のいわゆる超エリートもいた。そんな彼らも、10~20代の頃に少なくとも一度や二度はドラッグの使用経験があるという。

 そこで今回紹介したいのは、英語圏最大のニュース掲示板サイト「Reditt」の「ドラッグ」コミュニティから、ドラッグ中毒を克服すると宣言した男性が立てた「Goodbye ドラッグ」トピック。このコミュニティは、大麻(Cannabis)、コカイン(Cocaine)アンフェタミン(Adderall)、MDMA、日本では指定薬物のクラトム(Kratom)などさまざまな薬物カテゴリがあり、ドラッグの使用感や取り引き方法、社会ニュースを議論するものまで幅広くトピックが存在している。

 「Goodbye ドラッグ」に寄せられたコメントのほとんどは、彼の決断を称賛するものばかりだが、LSDカテゴリのため基本的にみなLSDの使用者。ドラッグ経験者の彼らは、ドラッグをどのようなときに使用し、どう考えているのか? トピックのコメントを一部抜粋し、抄訳してご紹介する。

「Goodbye ドラッグ」

<トピック主>
 俺は、自分の人生と健康のために、ドラッグをやめるって決めた。最後にアシッド(LSD)でキマった時、ドラッグは人の成長を妨げるだけだって気付いたんだ。だから、やめて前に進む。俺はこのドラッグコミュニティでの交流を楽しんでるし、ドラッグを克服しようとしてる人をすごく尊敬するよ。もし、このコミュニティがなかったら、俺は間違いなく今よりもっと最悪なことになったと思うから。

<コメント1>
 主、よくやった! 俺がドラッグをやる時に一番大事にしてるルールは、ドラッグの効果を現実的に捉えるようにすること。それが、悪い効果でも良いものでも。たまに、悪い面ばかりを感じるときがあるけど、「良い効果ばかりじゃない」って気づくことが重要だと思う。もし主が、このドラッグコミュニティにまた来るなら、ドラッグをやってた過去の経験と、ドラッグ中毒を克服したその経験をみんなに話してもらいたい。ここのみんなにとって、きっと価値ある話になるから。

<主>
 ドラッグには良い面&悪い面があるっていうのには、すごく同意。大切なことは、ドラッグをやめたら、その後の行動に慎重になること。俺は今後、友達にもネット上でも、「ドラッグはやめるべきだ」って言い続けるつもりだよ。俺を救ってくれたこのコミュニティにお返しするためにも、いつか戻ってきたいと思う。

<コメント2>
 こないだコンサートでドラッグをキめたとき、ドラッグのおかげで、たくさんのことを学んだと気づいた。最高の人生のためにしなきゃいけないことが何か、ドラッグのおかげで理解できたんだ。奇遇なことに、それがわかってから人生は好転したし、愛も見つけることができて、鬱もなくなった。全てが以前よりもずっと良くなってきたんだ。このドラッグを開発した奴が、本物のMVPだよ。

<コメント3>
 これはある程度事実だと思うけど、ドラッグによる幻覚は、無限の知恵と自己洞察力を与えてくれる。私たちは、これからも人生のどこかで、障害にぶち当たり続けるけど、ドラッグは本当にやるべきことに気付かせて、それに集中させてくれる。そう考えると、LSDは精神的な問題を抱えていない限り、そして運転中じゃない限りは、最も安全なドラッグだと思う。

<コメント4>
 俺が最後にキマった時、ドラッグはもうやめるべきだってわかったんだ。特にマリファナ。あれはやめられなかった。最終的にパニック発作と不安の波が襲ってきたんだ。もし、やめられるタイミングがやってきたとしたら、賢くなったってことだよ。シラフの世界が待ってるよ!

<コメント5>
 中学生だった頃、俺はよくいるバカなガキだった。高校に進んでからは、環境を変えたい一心で、マリファナとか色んなことにハマったんだ。そのせいで、卒業するまでに2~3回停学を食らって、2回逮捕されたよ。そんな経験のせいか、大規模な非行グループのリーダーになったけど、そんなもの上っ面の関係でしかなかった。だから、高校を卒業してすぐ、俺はグループの何人かを除いて、全員との関係を断った。学校での悪い成績・評判が、その後の数年間、生活の妨げになった。俺は、将来や就職をちゃんと考えて過ごすべきだった時間を、しょうもない友達と過ごして無駄にしてしまったんだ。

 話を現在に戻すと、今は短大に通ってる。将来何がしたいかなんてわからないからね。まだ21歳だし、一人暮らしする理由もないから実家に住んで、クソみたいな販売のバイトをしてる。まだ将来に対して前向きに考えられないけど、でも少しずつ、道は見えてきてはいるんだ。とはいえ、俺には学が全然ないし、友達は少ないし、販売の仕事でよく物を持ち上げるせいで背中が痛み始めてるし、もう自分は負け組だなって。

 俺と同じような失敗はしてほしくない。高校生活に集中して、自分は何が得意なのか、将来どんなキャリアが築けるのかよく考えてほしい。別に、高校生活を楽しむばかりではダメだと言いたいんじゃないんだ。ただお願いだから、そういう楽しみは週末の夜だけにして、警察には十分気を付けるんだ。賢く生きろ。

 長くなっちゃってごめんよ。でもこのスレを見て、10代の人のドラッグ事情が心配になったから。ドラッグは間違ってる。人生をめちゃくちゃにするから。もし俺が使ってたようなヤバいドラッグには手を出さなかったとしても、中毒者にならないワケじゃないから。

<コメント7>
 ドラッグはいつも、人生を輝かせてくれる物のように感じる。その人を破滅させる前までは。自分を破滅させるために使い始める人なんていない。ドラッグをやる理由は、強さ・幸福感・自信、そして人生をより良くしてくれる全ての物を与えてくれると思うからだ。
最初はみんな、ドラッグのことを甘く見てる。「人生をこれほど輝かせてくれるなら使った方がいいに決まってるだろう」と。そう感じている間、脳は変化し、そして体はドラッグに染まっていく。

 使い始めは、ただのお遊び的な感覚で、たまに使用するだけだったのに、知らないうちにドラッグは自分の人生になり、生活の全てになってしまう。ドラッグが人を蝕んでいく。仕事に行き、そつなく仕事をこなしたとしても、実はもう、その人のアイデンティティーは失われ、人間らしい感情を持つこともなくなってしまう。お金は底をつき、健康状態は悪化していくにもかかわらず、ドラッグは人に、「自分はまったく問題ない」と思い込ませ、悪い方へと進んでいくんだ。

 ふと、「ドラッグのない生活の方がいいや」なんて気が変わり、やめられる人なんていない。ドラッグを断ち切ることができたのは、ひどく痛い目に遭った人か、すでにドラッグで死んだ人だ。人がシラフになる努力をしたとき、きっと何かが違うと感じる。その人を取り巻く世界は以前よりも暗く、思考は恐怖や退屈に支配される。確実に存在していた、明るかった世界の思い出は、まるで夢物語だったかのように思える。

 「ドラッグは最高だ……」。そんなものは最初だけだ。ドラッグは人を蝕み、人を虚無にする。後戻りできなくなる日がくるまで、誰しもがドラッグは最高だなんて思うんだ。

 ドラッグは必要ない。ドラッグのない人生の方がずっといい。ドラッグがあなたを食い尽くす前に、まず近寄ってはいけない。

――――――――――――――――――

 いかがだっただろうか。ドラッグ使用への罪悪感が薄いからか、それともドラッグが身近なものだからか、平然とドラッグを肯定する意見があるのは不思議なものだ。しかし、やはり最終的にたどり着く答えは、「ドラッグはやらない方がいい」というのが多数。

 これは海外での話だが、「日本は違う」と安心を決め込むことはできない。「やり始めはただの好奇心だった。たまにキメるだけで満足だった」。そういった人が増えないよう、中毒克服者の経験を知ることはストッパーになるかもしれない。
(抄訳・構成/藤子留美加)

薬物使用者の掲示板に見る、ドラッグに対する本心「人生が好転した」「死ぬしかない」

 今まで数多くの著名人等が、覚せい剤や大麻の使用・所持などにより逮捕され、世間を騒がせてきた。浅野忠信の父親が、覚せい剤使用の疑いで逮捕されたときは、本人も言い逃れすることもなく「自分の意思で使用していました」と、あっさりと使用を認めた。そんな話題を聞くたびに、ふと疑問に思うことがある。芸能界では覚せい剤って、そんなに身近なものなのだろうか? 多くの人にとって、覚せい剤は普段の生活で触れることのないものだ。せいぜい、知り合いに覚せい剤で逮捕された人がいるか……いや、そんなことも滅多にないだろう。

 だが、それが海外になると事情は変わる。私が海外で生活をした頃、多くの人にとって覚せい剤はごく身近なものであることを知った。例えば、海外では、日本の未成年者の喫煙と同程度の罪悪感の感覚で、平然とドラッグをキメることがあるようだ。もちろん、私が知っていることが全てではないが、現地の友人らも、約半数の人がドラッグを使用した経験があり、マリファナにいたっては約8割もの友人が経験アリとの答えだった。中には弁護士もいたし、一流大学出のいわゆる超エリートもいた。そんな彼らも、10~20代の頃に少なくとも一度や二度はドラッグの使用経験があるという。

 そこで今回紹介したいのは、英語圏最大のニュース掲示板サイト「Reditt」の「ドラッグ」コミュニティから、ドラッグ中毒を克服すると宣言した男性が立てた「Goodbye ドラッグ」トピック。このコミュニティは、大麻(Cannabis)、コカイン(Cocaine)アンフェタミン(Adderall)、MDMA、日本では指定薬物のクラトム(Kratom)などさまざまな薬物カテゴリがあり、ドラッグの使用感や取り引き方法、社会ニュースを議論するものまで幅広くトピックが存在している。

 「Goodbye ドラッグ」に寄せられたコメントのほとんどは、彼の決断を称賛するものばかりだが、LSDカテゴリのため基本的にみなLSDの使用者。ドラッグ経験者の彼らは、ドラッグをどのようなときに使用し、どう考えているのか? トピックのコメントを一部抜粋し、抄訳してご紹介する。

「Goodbye ドラッグ」

<トピック主>
 俺は、自分の人生と健康のために、ドラッグをやめるって決めた。最後にアシッド(LSD)でキマった時、ドラッグは人の成長を妨げるだけだって気付いたんだ。だから、やめて前に進む。俺はこのドラッグコミュニティでの交流を楽しんでるし、ドラッグを克服しようとしてる人をすごく尊敬するよ。もし、このコミュニティがなかったら、俺は間違いなく今よりもっと最悪なことになったと思うから。

<コメント1>
 主、よくやった! 俺がドラッグをやる時に一番大事にしてるルールは、ドラッグの効果を現実的に捉えるようにすること。それが、悪い効果でも良いものでも。たまに、悪い面ばかりを感じるときがあるけど、「良い効果ばかりじゃない」って気づくことが重要だと思う。もし主が、このドラッグコミュニティにまた来るなら、ドラッグをやってた過去の経験と、ドラッグ中毒を克服したその経験をみんなに話してもらいたい。ここのみんなにとって、きっと価値ある話になるから。

<主>
 ドラッグには良い面&悪い面があるっていうのには、すごく同意。大切なことは、ドラッグをやめたら、その後の行動に慎重になること。俺は今後、友達にもネット上でも、「ドラッグはやめるべきだ」って言い続けるつもりだよ。俺を救ってくれたこのコミュニティにお返しするためにも、いつか戻ってきたいと思う。

<コメント2>
 こないだコンサートでドラッグをキめたとき、ドラッグのおかげで、たくさんのことを学んだと気づいた。最高の人生のためにしなきゃいけないことが何か、ドラッグのおかげで理解できたんだ。奇遇なことに、それがわかってから人生は好転したし、愛も見つけることができて、鬱もなくなった。全てが以前よりもずっと良くなってきたんだ。このドラッグを開発した奴が、本物のMVPだよ。

<コメント3>
 これはある程度事実だと思うけど、ドラッグによる幻覚は、無限の知恵と自己洞察力を与えてくれる。私たちは、これからも人生のどこかで、障害にぶち当たり続けるけど、ドラッグは本当にやるべきことに気付かせて、それに集中させてくれる。そう考えると、LSDは精神的な問題を抱えていない限り、そして運転中じゃない限りは、最も安全なドラッグだと思う。

<コメント4>
 俺が最後にキマった時、ドラッグはもうやめるべきだってわかったんだ。特にマリファナ。あれはやめられなかった。最終的にパニック発作と不安の波が襲ってきたんだ。もし、やめられるタイミングがやってきたとしたら、賢くなったってことだよ。シラフの世界が待ってるよ!

<コメント5>
 中学生だった頃、俺はよくいるバカなガキだった。高校に進んでからは、環境を変えたい一心で、マリファナとか色んなことにハマったんだ。そのせいで、卒業するまでに2~3回停学を食らって、2回逮捕されたよ。そんな経験のせいか、大規模な非行グループのリーダーになったけど、そんなもの上っ面の関係でしかなかった。だから、高校を卒業してすぐ、俺はグループの何人かを除いて、全員との関係を断った。学校での悪い成績・評判が、その後の数年間、生活の妨げになった。俺は、将来や就職をちゃんと考えて過ごすべきだった時間を、しょうもない友達と過ごして無駄にしてしまったんだ。

 話を現在に戻すと、今は短大に通ってる。将来何がしたいかなんてわからないからね。まだ21歳だし、一人暮らしする理由もないから実家に住んで、クソみたいな販売のバイトをしてる。まだ将来に対して前向きに考えられないけど、でも少しずつ、道は見えてきてはいるんだ。とはいえ、俺には学が全然ないし、友達は少ないし、販売の仕事でよく物を持ち上げるせいで背中が痛み始めてるし、もう自分は負け組だなって。

 俺と同じような失敗はしてほしくない。高校生活に集中して、自分は何が得意なのか、将来どんなキャリアが築けるのかよく考えてほしい。別に、高校生活を楽しむばかりではダメだと言いたいんじゃないんだ。ただお願いだから、そういう楽しみは週末の夜だけにして、警察には十分気を付けるんだ。賢く生きろ。

 長くなっちゃってごめんよ。でもこのスレを見て、10代の人のドラッグ事情が心配になったから。ドラッグは間違ってる。人生をめちゃくちゃにするから。もし俺が使ってたようなヤバいドラッグには手を出さなかったとしても、中毒者にならないワケじゃないから。

<コメント7>
 ドラッグはいつも、人生を輝かせてくれる物のように感じる。その人を破滅させる前までは。自分を破滅させるために使い始める人なんていない。ドラッグをやる理由は、強さ・幸福感・自信、そして人生をより良くしてくれる全ての物を与えてくれると思うからだ。
最初はみんな、ドラッグのことを甘く見てる。「人生をこれほど輝かせてくれるなら使った方がいいに決まってるだろう」と。そう感じている間、脳は変化し、そして体はドラッグに染まっていく。

 使い始めは、ただのお遊び的な感覚で、たまに使用するだけだったのに、知らないうちにドラッグは自分の人生になり、生活の全てになってしまう。ドラッグが人を蝕んでいく。仕事に行き、そつなく仕事をこなしたとしても、実はもう、その人のアイデンティティーは失われ、人間らしい感情を持つこともなくなってしまう。お金は底をつき、健康状態は悪化していくにもかかわらず、ドラッグは人に、「自分はまったく問題ない」と思い込ませ、悪い方へと進んでいくんだ。

 ふと、「ドラッグのない生活の方がいいや」なんて気が変わり、やめられる人なんていない。ドラッグを断ち切ることができたのは、ひどく痛い目に遭った人か、すでにドラッグで死んだ人だ。人がシラフになる努力をしたとき、きっと何かが違うと感じる。その人を取り巻く世界は以前よりも暗く、思考は恐怖や退屈に支配される。確実に存在していた、明るかった世界の思い出は、まるで夢物語だったかのように思える。

 「ドラッグは最高だ……」。そんなものは最初だけだ。ドラッグは人を蝕み、人を虚無にする。後戻りできなくなる日がくるまで、誰しもがドラッグは最高だなんて思うんだ。

 ドラッグは必要ない。ドラッグのない人生の方がずっといい。ドラッグがあなたを食い尽くす前に、まず近寄ってはいけない。

――――――――――――――――――

 いかがだっただろうか。ドラッグ使用への罪悪感が薄いからか、それともドラッグが身近なものだからか、平然とドラッグを肯定する意見があるのは不思議なものだ。しかし、やはり最終的にたどり着く答えは、「ドラッグはやらない方がいい」というのが多数。

 これは海外での話だが、「日本は違う」と安心を決め込むことはできない。「やり始めはただの好奇心だった。たまにキメるだけで満足だった」。そういった人が増えないよう、中毒克服者の経験を知ることはストッパーになるかもしれない。
(抄訳・構成/藤子留美加)

「弟子なのか職業なのか」漫画家・三田紀房氏の“残業代請求”騒動、アシスタントの本音は?

 漫画家アシスタントは“ブラック”なのか――? そんな疑問が、今ネット上で話題を呼んでいる。昨年12月上旬、Yahoo!ニュースが配信した「週休3日、残業禁止、『作画完全外注』――漫画家・三田紀房が『ドラゴン桜2』で挑む働き方改革」という漫画家・三田紀房のインタビュー記事に、かつて同氏のアシスタントを11年7カ月間務めていた漫画家・カクイシシュンスケ氏が、「残業はあった」などとブログで反論。ほかの漫画家たちも、カクイシ氏のブログ内容やアシスタントの労働環境に関する意見を述べるなど、大論争に発展しているのだ。

 三田氏は、『ドラゴン桜』(講談社)などで知られる人気漫画家で、インタビューによると、アシスタントの労働環境を整えるべく、「アシスタントは週休3日、残業禁止」「絵を描く作業はデザイン会社に外注」しているとのこと。しかし、カクイシ氏は、三田氏の職場に関して「だいたい平和な11年7カ月であったと思います」「(それは)業界の水準に比べても三田先生の職場が時間にきっちりしていたことが大きいと思います」としながらも、「完全にホワイトかと言われるとそうではありませんでした。労働基準法にきちんと則った職場であったかというと、そうは言えないでしょう」と苦言を呈したのだ。

 三田氏の記事にある「現在、三田のアシスタントが働くのは9時30分から18時30分まで。休憩は自由にとることができるが、残業は禁止されている」という部分には、「残業は今までさんざんしました」「(休憩は)15時00分から15時15分くらいまでの10~15分間だけ」と反論。また残業代に関しては11年7カ月の間一度も支払われなかったといい、請求を考えているとのこと。

 さらに、三田氏が自身の公式サイトで「漫画家の公務員化を行った」と述べている点に関して、「平成17年に三田先生のもとで働き始めた時は、私の記憶が確かなら月給13万円からのスタートだったはずです(中略)最終的な私の月収は23万円でした(中略)公務員とは程遠い収入です」といった異議を申し立てたのだ。

 知られざる漫画業界の慣習に、ネット上では「ブラックすぎる」「残業代は請求すべき」といった声が飛び交う中、これに反論したのは『ピューと吹く!ジャガー』(集英社)の漫画家・うすた京介氏。カクイシ氏に対して「漫画業界は使う側使われる側に関係なく結局は実力社会」「そもそも漫画家なんてまともな仕事じゃないんだから嫌なら就職しなさい」と、業界の実情をツイートし(現在は削除済み)、波紋を呼んだ。

 こうした一連の騒動を、実際に現在アシスタントをしている人はどう見ているのだろうか? 漫画雑誌に投稿を続けながら、編集者から紹介を受けたアシスタント業に就く20代のA氏は、「カクイシ先生のブログを読んだけれど、共感できない部分が多かった」と語る。

「アシスタントは、自分の漫画だけでは食っていけない新人漫画家や、漫画雑誌に投稿をしているタマゴたち。あくまで私の経験による意見ですが、そもそもアシスタントって、漫画家の“お弟子さん”みたいなものだと思っています。お手伝いすることで技術を学ばせてもらい、たまにいいもん食べさせてもらったり(笑)。それに労働時間などに関して、前もって契約を交わすことはあまりありませんし、お給料についても、時給なのか、日給なのか、月給なのか、どのように算出されているのか、またそこに食費や交通費は含まれているのかなど、全て先生にゆだねられていて、明細がもらえないところもあります。だから、師匠が弟子におこづかいをあげてるみたいなものなのかなぁと。三田先生が労働時間について語っていたので、カクイシ先生から“残業”という言葉が出たのでしょうが、私はお給料の算出方法も知らないので、残業という概念自体なかったです」

 A氏は「アシスタント=職業」といった認識があまりないようで、お給料に関しても「確かなのは、売れてる先生のアシ代は高いことぐらい」だそう。カクイシ氏に対しては、「最初に三田先生と契約を交わしていたのか。もし交わしていたとしたらどんな内容だったのか知りたいですね。ただ、先生にいきなり『契約内容をはっきりさせてくれ』なんて言いづらいですが」という。

■不満があっても「早く独り立ちしろ」と言われるだけ

 一方で、A氏の意見を、「通い制度のアシスタントの意見」と語るのは、20代の新人漫画家・Bさん。最近はデジタルで描くマンガ家が多いため、通いではなく自宅で作業を行う“デジタルアシスタント”が増えており、「彼らは1コマいくら、時給いくらと、最初に細かくお給料を設定するケースが多い」という。

「僕も実際に、デジアシさんに手伝ってもらったことがありますが、最初に細かくお給料についてはお話しましたよ。でも、昔ながらの通いのアシスタントはなぁなぁですよね。カクイシ先生は、休憩時間に関しても疑問を呈していましたが、それはどこの現場でも同じだなぁと思いました。休憩時間は自由と言われていても、例えば、お菓子を食べながらゴロゴロしたり……みたいな時間はない。月刊だと、週刊よりはゆるいと聞きますけど、それでもみんな手は動かしてると思いますよ」

 さらにB氏は、うすた氏が「結局は実力社会」と指摘した点について、プロアシスタントという存在を解説してくれた。

「うすた先生が言っていた“実力社会”というのはまさにその通りなんです。アシスタントの中には、“プロアシスタント”と呼ばれる高い技術力を持った人たちがいて、中には月給40万円近く稼ぐ人もいますよ。彼らはアシスタントを“職業”にしている。自分がいないと現場が回らないことを理解しているから、先生に対しても待遇に関して強気の交渉ができるんです」

 しかし、「普通のアシスタントにそういった権限を持つことはなかなかできない」と語るB氏。アシスタントの待遇に不満を持っていたとしても、「『だったら早くうまくなって、独り立ちしなさい』と言われてしまうでしょうね。漫画業界って、昔からそういうところなんですよ」という。

 昨今芸能界では、タレントの雇用問題が表面化し、古くからの慣習に世間が疑問を投げかけるケースも増えている。漫画業界でも同様に、これまで業界内のルールとして通用していたアシスタントの労働環境や賃金制度が、世間一般に知れ渡るところとなった。アシスタントは、弟子なのか、職業なのか――今後どういった議論に発展していくか、注目していきたい。

「女性自衛官をバニーガール扱い」ポスター1枚で怒り心頭に発する人々は2018年も不滅か

 ホント、みんな萌え系ポスターが好きだな……という程度で、冷ややかな目で見ているのではないかな。

 もはや当たり前になってきた、行政や公共系の団体・組織による萌え系イラストのポスター。それらで用いられるイラストにさまざまな非難が浴びせられるのも、いあまやテンプレとなっている。非難とはいうが、個人的な感想に公共性を持たせる=みんなそう思ってるんだよ!! という類いの「意見」である。

 昨年末、そんな「意見」によって、新たに話題になったのが、自衛隊・茨城地方協力本部の自衛官募集ポスターだ。

 ここでは、近年毎年『I☆P’s』と名付けた3人娘のキャラクター。空の「ひばり」、海の「のばら」、陸の「小梅」を用いたポスターを制作し、話題となっている。

 そんなポスターに寄せられたのが「(キャラクターの)胸の大きさが強調されるのが変だ。自衛隊はオタクのみをターゲットにしてるのだろうか」というツイート。どうも人によっては胸を強調しているデザインに見えるようで「女性自衛官へのセクハラですよ」「まるで女性自衛官をバニーガール扱い」といった非難のツイートがなされたのである。

 ここまでなら、またいつもの「私の意見は、みんな同じ」系の萌え絵ヘイト。ところが、今回は自衛隊との組み合わせだったために、あらぬ方向へと一部の人の思考は拡大していった。

「日本では軍隊の暴力性はエロに組み込まれた」「アニオタ≒ネトウヨの図式は、なぜか一致する事が多い」「再び、慰安婦をやりだす懸念を感じずにはいられない」などなど……。

 これに関連する形で、戦史研究家でシミュレーションゲームデザイナーの山崎雅弘氏は「防衛省・自衛隊側がコンテンツの権利者に擦り寄って、兵器の情報提供などの協力と引き換えに<味方>に取り込もうとする動き」があることを冷静にツイートしている。でも、平時における自衛隊の宣伝戦略を指摘する、冷静なツイートに対する感想は「安倍政権の陰謀」を信じたい人たちのものばかり。

 安倍政権への是非は別として、ポスターひとつを通して、萌え絵に文句を言いたい人と、憲法9条を守りたい系の人が合体すると、とんでもないことになるなとしか思えない現象。きっと2018年も、またさまざまな事件が起こることだろうと考えている。

 ただ、ずっと疑問なのはTwitterだとよく見かける、こうした思考の人にリアルだと、ほぼ出会う機会がないこと。「萌えは女性差別」「自衛隊は人殺し」系の発言をする人は、普段はどこで何をして暮らしているのだろうか。それが、一番の謎だ。
(文=昼間たかし)

「女性自衛官をバニーガール扱い」ポスター1枚で怒り心頭に発する人々は2018年も不滅か

 ホント、みんな萌え系ポスターが好きだな……という程度で、冷ややかな目で見ているのではないかな。

 もはや当たり前になってきた、行政や公共系の団体・組織による萌え系イラストのポスター。それらで用いられるイラストにさまざまな非難が浴びせられるのも、いあまやテンプレとなっている。非難とはいうが、個人的な感想に公共性を持たせる=みんなそう思ってるんだよ!! という類いの「意見」である。

 昨年末、そんな「意見」によって、新たに話題になったのが、自衛隊・茨城地方協力本部の自衛官募集ポスターだ。

 ここでは、近年毎年『I☆P’s』と名付けた3人娘のキャラクター。空の「ひばり」、海の「のばら」、陸の「小梅」を用いたポスターを制作し、話題となっている。

 そんなポスターに寄せられたのが「(キャラクターの)胸の大きさが強調されるのが変だ。自衛隊はオタクのみをターゲットにしてるのだろうか」というツイート。どうも人によっては胸を強調しているデザインに見えるようで「女性自衛官へのセクハラですよ」「まるで女性自衛官をバニーガール扱い」といった非難のツイートがなされたのである。

 ここまでなら、またいつもの「私の意見は、みんな同じ」系の萌え絵ヘイト。ところが、今回は自衛隊との組み合わせだったために、あらぬ方向へと一部の人の思考は拡大していった。

「日本では軍隊の暴力性はエロに組み込まれた」「アニオタ≒ネトウヨの図式は、なぜか一致する事が多い」「再び、慰安婦をやりだす懸念を感じずにはいられない」などなど……。

 これに関連する形で、戦史研究家でシミュレーションゲームデザイナーの山崎雅弘氏は「防衛省・自衛隊側がコンテンツの権利者に擦り寄って、兵器の情報提供などの協力と引き換えに<味方>に取り込もうとする動き」があることを冷静にツイートしている。でも、平時における自衛隊の宣伝戦略を指摘する、冷静なツイートに対する感想は「安倍政権の陰謀」を信じたい人たちのものばかり。

 安倍政権への是非は別として、ポスターひとつを通して、萌え絵に文句を言いたい人と、憲法9条を守りたい系の人が合体すると、とんでもないことになるなとしか思えない現象。きっと2018年も、またさまざまな事件が起こることだろうと考えている。

 ただ、ずっと疑問なのはTwitterだとよく見かける、こうした思考の人にリアルだと、ほぼ出会う機会がないこと。「萌えは女性差別」「自衛隊は人殺し」系の発言をする人は、普段はどこで何をして暮らしているのだろうか。それが、一番の謎だ。
(文=昼間たかし)

伝統的なアイドル雑誌テイストの安心感は編集者のウデか? 老舗出版社が新たに挑戦するVRサイト「LOVR」

 VRの技術を用いたコンテンツは、着実に進化し普及している。2017年も数多くのさまざまなVRコンテンツが話題となったが、これに本格的に参入をしようとしているのが出版業界である。

 これまで多くの人に論じられているように、従来の紙媒体の発行・流通は徐々に時代に合わなくなっている。それでもなお、出版業界には「現状のスタイルを維持できないか」という声も多く聞かれる。

 だが、進取の気性に富むタイプの出版人は、そうしたコンサバな志向に見向きもせず、胎動を始めている。

 12月、出版社・ジーウォークでは、ケータイ小説の草分け的存在である「魔法のiらんど」などで知られる株式会社エヌ・ティー・エスと組み、スマホ向けのVRサイト「LOVR(https://lovr.jp/)」をスタートさせた。月額課金制のこのサイトで提供されるのは、アイドルコンテンツ。スマートフォンとVRゴーグルを用いて、アイドルと各地に出かける。あるいは「スク水露天風呂」などのVR動画が適用されている。わかりやすくいえば、VRを用いてアイドルを一人占めして、デートできるというものだ。

 ジーウォークは、これまでアイドルなど芸能コンテンツのほか、アダルト・成年コミックやBLなどで実績を重ねてきた出版社だ。かつては、アダルト系に強い出版社であったが、近年はサブカルチャーや料理本などの刊行も増加し、総合出版社へと進化している。

「出版社が、紙以外の商売にもシフトしていくのは必然。今はまだ種まきの時期、刈り取りは先かも知れませんが……」

 同社の担当者は、そんな言葉を漏らす。でも、それは昏い言葉ではない。むしろ、次々と増殖する新規・珍奇なVRコンテンツの中で、出版社は優位性があるという自信を持っている。

「21世紀に入ってから、男性誌を中心にDVD付録も当たり前になっていました。ですので、動画制作のスキルを持ち、読者の嗜好を読める編集者はたくさんいます。これからは、そうした人材がVRを担っていくことになるでしょう」

 とりわけ、アイドルなどの実写コンテンツでは「誰」を「どのように」登場させるかが、人を惹きつける要素となる。さらには、前例のないことに挑戦させる事務所との折衝など、そうしたバックグラウンドの部分のスキルで、出版社には確かな信頼がある。

 VRに限らず、ネット発のコンテンツというものは、何かしらの規制や忖度のようなものが当たり前のようについて回る。だが、多くの出版社には枷を解き放つ突破力が確かにある。

 さらに、担当者からは、こんな優位性についての言及も。

「紙媒体の流通インフラを用いることで、書店やコンビニエンスストアを介した販促・宣伝ができるのも、出版ならではだと思っています」

 VRというと、どうしても若い世代のためのコンテンツという意識が強い。しかし、紙媒体を併用すれば、その主な読者層である中高年をも取り込める……そんなことも意識されているようだ。

 実際、そのための動きも始まっている。新サイトに併せて、同社では12月末にムック『VRデート』を発行。既に類似書籍でも実施されているように、本書でもゴーグルが付属し、新たな読者層の開拓を狙っている。

 VRは、最先端の技術。ゆえに、どうしても体験する段階で身構えてしまう感覚は拭えなかった。ところが、ジーウォークのVRコンテンツの雰囲気は、伝統的なアイドル誌の、それ。それが安心感を与えている。なるほど、これが出版社の強みなのか。
(文=昼間たかし)

●LOVR(ラヴァー)
https://lovr.jp/

●ジーウォーク『VRデート』
http://gwalk.sakura.ne.jp/item-html/01_mook_item-html/2017-12_VRdate.html

 

 

決着してないぞ!! エロ同人誌は大丈夫なのか……2020年“コミケ5月開催”で広まる新たな懸念

 問題は決着せず、新たな問題が浮上した。

 2020年東京オリンピックの影響で、東京ビッグサイトの使用が制限され、多数の産業に影響が生じると危惧されている問題。

 その中で、コミックマーケットは2020年の夏コミを5月に前倒しして開催することを表明した。これは、小池百合子都知事が9月の会見で「2020年の5月1~5日をコミケ関連で使えるように調整する」と述べたのを受けてのもの。

 昨年12月23日に明らかにされた内容では、この期間に『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』を、コミックマーケット準備会のほか、赤ブーブー通信社、COMIC1準備会、コミティア実行委員会、スタジオYOU、博麗神社社務所、character1 JAPANの合同で開催するというのである。

 これを受けて一部のメディアは「コミケ問題決着」と報道。しかし、これに対しては猛反発が寄せられた。これまでの東京ビッグサイトの利用制限問題を追っていれば、何も問題が解決していないことは明白だからである。

 これまで報じている通り、東京ビッグサイトの使用制限をめぐっては、関連産業から商談の機会を奪われる、仕事そのものがなくなるなど、猛烈な反発が生まれている。そして、問題は解決を見ないまま、東京ビッグサイト側が提示した利用制限期間と代替会場の提案を飲むしかないところに追い込まれている。

 問題は、コミケに限ったものではないのだ。あたかも問題が解決したかのように喧伝する一部報道の不見識は批難されても当然だろう。

 そして『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』の座組をめぐって、さっそく懸念も生じている。

 オタク議員として知られる、大田区のおぎの稔区議は、この報道を受けて「これではエロもグロも書けなくなって、人が住めなくなる」と指摘している。

 おぎの区議が懸念しているのは、過去、公共施設を利用した同人誌即売会で当初は問題にされていなかったエロ表現を扱った同人誌などが突如、頒布を禁止されて事例が多数あること。東京オリンピック直前という時期での開催にあたり、それらの表現が突如、行政や国家権力から横やりを入れられる可能性は十分にあり得る。

 さらに、この『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』が、コミックマーケット準備会のほか、企業・団体の協同で開催されること。同人誌に詳しい人ならば理解していると思うが、コミックマーケット準備会と、その他の関係各所は、それぞれにエロ表現など「表現の自由」へのスタンスがまったく異なる。そして、いくつかの企業や団体は、即売会の中で「表現の自由」の在り方をめぐって、激しく火花を散らしてきた経緯がある。

「現状は枠組みを決めただけ、これから具体的にどう運営していくかを決めるのですが……規制が強まる事態にはならないとは思っています」(ある参加団体のスタッフ)

 東京オリンピックを前に余計に注目を集める時期だけに、各企業・団体の「表現の自由」への覚悟が見えることになるだろう。

 なお、この変則的なコミケ開催による同人印刷業などへの影響については、取材中なので、また改めて報告する。
(文=昼間たかし)

決着してないぞ!! エロ同人誌は大丈夫なのか……2020年“コミケ5月開催”で広まる新たな懸念

 問題は決着せず、新たな問題が浮上した。

 2020年東京オリンピックの影響で、東京ビッグサイトの使用が制限され、多数の産業に影響が生じると危惧されている問題。

 その中で、コミックマーケットは2020年の夏コミを5月に前倒しして開催することを表明した。これは、小池百合子都知事が9月の会見で「2020年の5月1~5日をコミケ関連で使えるように調整する」と述べたのを受けてのもの。

 昨年12月23日に明らかにされた内容では、この期間に『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』を、コミックマーケット準備会のほか、赤ブーブー通信社、COMIC1準備会、コミティア実行委員会、スタジオYOU、博麗神社社務所、character1 JAPANの合同で開催するというのである。

 これを受けて一部のメディアは「コミケ問題決着」と報道。しかし、これに対しては猛反発が寄せられた。これまでの東京ビッグサイトの利用制限問題を追っていれば、何も問題が解決していないことは明白だからである。

 これまで報じている通り、東京ビッグサイトの使用制限をめぐっては、関連産業から商談の機会を奪われる、仕事そのものがなくなるなど、猛烈な反発が生まれている。そして、問題は解決を見ないまま、東京ビッグサイト側が提示した利用制限期間と代替会場の提案を飲むしかないところに追い込まれている。

 問題は、コミケに限ったものではないのだ。あたかも問題が解決したかのように喧伝する一部報道の不見識は批難されても当然だろう。

 そして『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』の座組をめぐって、さっそく懸念も生じている。

 オタク議員として知られる、大田区のおぎの稔区議は、この報道を受けて「これではエロもグロも書けなくなって、人が住めなくなる」と指摘している。

 おぎの区議が懸念しているのは、過去、公共施設を利用した同人誌即売会で当初は問題にされていなかったエロ表現を扱った同人誌などが突如、頒布を禁止されて事例が多数あること。東京オリンピック直前という時期での開催にあたり、それらの表現が突如、行政や国家権力から横やりを入れられる可能性は十分にあり得る。

 さらに、この『DOUJIN JAPAN 2020(仮)・コミックマーケット98』が、コミックマーケット準備会のほか、企業・団体の協同で開催されること。同人誌に詳しい人ならば理解していると思うが、コミックマーケット準備会と、その他の関係各所は、それぞれにエロ表現など「表現の自由」へのスタンスがまったく異なる。そして、いくつかの企業や団体は、即売会の中で「表現の自由」の在り方をめぐって、激しく火花を散らしてきた経緯がある。

「現状は枠組みを決めただけ、これから具体的にどう運営していくかを決めるのですが……規制が強まる事態にはならないとは思っています」(ある参加団体のスタッフ)

 東京オリンピックを前に余計に注目を集める時期だけに、各企業・団体の「表現の自由」への覚悟が見えることになるだろう。

 なお、この変則的なコミケ開催による同人印刷業などへの影響については、取材中なので、また改めて報告する。
(文=昼間たかし)

“男性差別CM”の炎上騒動はなぜ起こったのか? 「ALFACE」「保険のビュッフェ」の問題点

 「女性蔑視である」という理由から、テレビCMや広告が炎上するケースが増えている。2016年10月、資生堂の化粧品ブランド「インテグレート」のCMが物議を醸した。多忙により、疲れた様子で仕事をする女性社員に、男性上司が「(頑張っている様子が)顔に出ているうちは、プロじゃない」と指摘するといった内容に、ネット上を中心に「疲れていても女は綺麗でいろということ?」「セクハラ・パワハラに当たる」などと抗議の声が上がったのだ。

 ほかにも、鹿児島県志布志市が16年9月に公開した、ふるさと納税PR動画「うな子」は、うなぎをスクール水着姿の美少女に擬人化し、プールで育てていくといった内容で、「なぜ性的な内容でふるさと納税PRを?」「女性を貶めている」などと批判が噴出。また17年5月、ユニ・チャーム「ムーニー」のCMに関しては、母親が初めての育児に孤軍奮闘する様子が描かれ、最後に「その時間が、いつか宝物になる」との字幕が入るのだが、「ワンオペ育児を賛美しないで」と悲痛な叫びが上がった。

 女性を描いたこうしたCMの炎上事例は枚挙に暇がない状況だが、一方で17年、「男性に差別的」という理由で問題視されたCMも散見されるようになったのだ。この現象を、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に解説していただいた。

■性差別CMにはパターンがある

――近年、“女性蔑視”CMの炎上が多発しています。急にそういったCMが増えたということなのでしょうか。

田中東子氏(以下、田中) 昔から、女性蔑視に当たるCMは放送されています。今、ビデオリサーチ社の方と過去20年くらいのCMをピックアップして分析をしています。まだ結果は出ていないのですが、これまでにも女性蔑視に当たるCMはいくつもありました。

 CMにおける女性蔑視の中には、「女性を性役割分業のステレオタイプで描写する」「女性を性的なアイコンとして使う」「女性に脅しかけ(『○○を使わなければ可愛くなれない』など)をする内容」の3パターンがあると思います。

――では、なぜ今炎上が増えているのでしょうか?

田中 この20年間で、女性のライフスタイルは大きく変わりました。共稼ぎ夫婦の増加、それに伴って家事や子育てを夫婦で分業するような都市型の若い世代の夫婦も増えましたし、そして何より、結婚しない人も少なくありません。そういった人にとっては、ステレオタイプの“理想の家庭像”をグイグイ押し付けてくるようなCMに、嫌な感じを覚えると思うんです。

 それともう1つが、メディア環境の変化。これまでは、リビングルームや自分の部屋などで、それぞれがテレビを見て、心の中だけで「何かこのCM嫌だなぁ」と思っていて、それを後日、人に話そうにもタイムラグが生じていました。しかし、現在では、今見ているCMについて、「嫌だ」と思ったことを、すぐにSNSで発信でき、実は同じものを嫌だと思っていた人がたくさんいることがわかるようになったんです。それが目に見える“かたまり”として、出てきやすくなったのではないでしょうか。

――17年は、男性蔑視だと物議を醸したCMも目立ちました。自由に使えるお金が少ないと嘆く主婦が、夫に向かって「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」と脅す「ENEOSでんき」、ブサイクな男性に好意を持たれた美人の女性が嫌悪感を示す「ALFACE」、花嫁が二股をかけていた男に「俺は君の何だったんだ?」と問い詰められ、冷たく「保険」と言い放つ「保険のビュッフェ」などが挙げられます。

田中 男性蔑視といわれるCMにもパターンがあり、「イケメンかブサメンかという外見差別(ルッキズム)の描写」「男性をATMやお財布扱いする内容」「男性は臭いといった偏見」が多いのではないでしょうか。

 今まで、男性は社会的地位や経済力を独占できていた性別なので、“容姿”はそこまで気にならないような状態だったんです。しかし現在、社会的地位も経済力も、男性の独占物ではなくなり、ロスジェネ以降は特に、社会でのポジショニング取りがうまくいかず、経済力も持てなかったという男性が増加しています。男性も、地位や経済力ではなく、外見で選別されるようになり、「地位やお金はないが容姿はいい男性」を、「地位とお金を持った女性」が消費することも珍しくなくなりました。そういった背景から、CMにおける男性の容姿の描かれ方に、疑問を抱く男性が増えたというのはあるのではないでしょうか。かつて、男性は「社会的地位や経済力」、女性は「容姿・見た目」で生き延びていく――といった面があったものの、現在はそれが逆転しつつあるようにも思えます。

――「ALFACE」のCMは、まさに男性に対するルッキズムが問題視されました。

田中 あまりメジャーな企業ではないので、話題性を狙いすぎて炎上をしてしまった印象もありますが……男女逆だったら、こんなものでは済まないような大炎上になったと思います。

――「ALFACE」のCMにはもう1パターンあり、美人な女の子とそうではない女の子の2人が登場し、イケメンが美人に好意を寄せる……といった内容でした。

田中 その2人の女性の容姿は、あからさまに優劣がついているわけではありませんでしたよね。そうすることで、炎上を避けようとしたのでしょう。だからといって、男性が容姿で差別されるCMを作っていいかというと、それは絶対にあり得ません。ただ、このCMに関して、一部では問題になったものの、意外と男性が騒がない印象もありました。その背景には、「男はそもそも顔じゃない。社会的地位や経済力だ」といった価値観があるのでしょう。なので、それらを差別された表現の方が、男性は嫌なのかもしれません。それが「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMでしたね。

(後編につづく)

“男性差別CM”の炎上騒動はなぜ起こったのか? 「ALFACE」「保険のビュッフェ」の問題点

 「女性蔑視である」という理由から、テレビCMや広告が炎上するケースが増えている。2016年10月、資生堂の化粧品ブランド「インテグレート」のCMが物議を醸した。多忙により、疲れた様子で仕事をする女性社員に、男性上司が「(頑張っている様子が)顔に出ているうちは、プロじゃない」と指摘するといった内容に、ネット上を中心に「疲れていても女は綺麗でいろということ?」「セクハラ・パワハラに当たる」などと抗議の声が上がったのだ。

 ほかにも、鹿児島県志布志市が16年9月に公開した、ふるさと納税PR動画「うな子」は、うなぎをスクール水着姿の美少女に擬人化し、プールで育てていくといった内容で、「なぜ性的な内容でふるさと納税PRを?」「女性を貶めている」などと批判が噴出。また17年5月、ユニ・チャーム「ムーニー」のCMに関しては、母親が初めての育児に孤軍奮闘する様子が描かれ、最後に「その時間が、いつか宝物になる」との字幕が入るのだが、「ワンオペ育児を賛美しないで」と悲痛な叫びが上がった。

 女性を描いたこうしたCMの炎上事例は枚挙に暇がない状況だが、一方で17年、「男性に差別的」という理由で問題視されたCMも散見されるようになったのだ。この現象を、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に解説していただいた。

■性差別CMにはパターンがある

――近年、“女性蔑視”CMの炎上が多発しています。急にそういったCMが増えたということなのでしょうか。

田中東子氏(以下、田中) 昔から、女性蔑視に当たるCMは放送されています。今、ビデオリサーチ社の方と過去20年くらいのCMをピックアップして分析をしています。まだ結果は出ていないのですが、これまでにも女性蔑視に当たるCMはいくつもありました。

 CMにおける女性蔑視の中には、「女性を性役割分業のステレオタイプで描写する」「女性を性的なアイコンとして使う」「女性に脅しかけ(『○○を使わなければ可愛くなれない』など)をする内容」の3パターンがあると思います。

――では、なぜ今炎上が増えているのでしょうか?

田中 この20年間で、女性のライフスタイルは大きく変わりました。共稼ぎ夫婦の増加、それに伴って家事や子育てを夫婦で分業するような都市型の若い世代の夫婦も増えましたし、そして何より、結婚しない人も少なくありません。そういった人にとっては、ステレオタイプの“理想の家庭像”をグイグイ押し付けてくるようなCMに、嫌な感じを覚えると思うんです。

 それともう1つが、メディア環境の変化。これまでは、リビングルームや自分の部屋などで、それぞれがテレビを見て、心の中だけで「何かこのCM嫌だなぁ」と思っていて、それを後日、人に話そうにもタイムラグが生じていました。しかし、現在では、今見ているCMについて、「嫌だ」と思ったことを、すぐにSNSで発信でき、実は同じものを嫌だと思っていた人がたくさんいることがわかるようになったんです。それが目に見える“かたまり”として、出てきやすくなったのではないでしょうか。

――17年は、男性蔑視だと物議を醸したCMも目立ちました。自由に使えるお金が少ないと嘆く主婦が、夫に向かって「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」と脅す「ENEOSでんき」、ブサイクな男性に好意を持たれた美人の女性が嫌悪感を示す「ALFACE」、花嫁が二股をかけていた男に「俺は君の何だったんだ?」と問い詰められ、冷たく「保険」と言い放つ「保険のビュッフェ」などが挙げられます。

田中 男性蔑視といわれるCMにもパターンがあり、「イケメンかブサメンかという外見差別(ルッキズム)の描写」「男性をATMやお財布扱いする内容」「男性は臭いといった偏見」が多いのではないでしょうか。

 今まで、男性は社会的地位や経済力を独占できていた性別なので、“容姿”はそこまで気にならないような状態だったんです。しかし現在、社会的地位も経済力も、男性の独占物ではなくなり、ロスジェネ以降は特に、社会でのポジショニング取りがうまくいかず、経済力も持てなかったという男性が増加しています。男性も、地位や経済力ではなく、外見で選別されるようになり、「地位やお金はないが容姿はいい男性」を、「地位とお金を持った女性」が消費することも珍しくなくなりました。そういった背景から、CMにおける男性の容姿の描かれ方に、疑問を抱く男性が増えたというのはあるのではないでしょうか。かつて、男性は「社会的地位や経済力」、女性は「容姿・見た目」で生き延びていく――といった面があったものの、現在はそれが逆転しつつあるようにも思えます。

――「ALFACE」のCMは、まさに男性に対するルッキズムが問題視されました。

田中 あまりメジャーな企業ではないので、話題性を狙いすぎて炎上をしてしまった印象もありますが……男女逆だったら、こんなものでは済まないような大炎上になったと思います。

――「ALFACE」のCMにはもう1パターンあり、美人な女の子とそうではない女の子の2人が登場し、イケメンが美人に好意を寄せる……といった内容でした。

田中 その2人の女性の容姿は、あからさまに優劣がついているわけではありませんでしたよね。そうすることで、炎上を避けようとしたのでしょう。だからといって、男性が容姿で差別されるCMを作っていいかというと、それは絶対にあり得ません。ただ、このCMに関して、一部では問題になったものの、意外と男性が騒がない印象もありました。その背景には、「男はそもそも顔じゃない。社会的地位や経済力だ」といった価値観があるのでしょう。なので、それらを差別された表現の方が、男性は嫌なのかもしれません。それが「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMでしたね。

(後編につづく)