巷で話題「港区女子」の実態とは!? 彼女たちを取り仕切るTwitterで話題の美女・ひとみんにインタビュー!【前編】

 ここ数年、まるでバブルのような存在感でその名を轟かせている「港区女子」。生息地は主に港区は六本木や西麻布。社長や外資系サラリーマンなど、高収入ハイスペックの「港区おじさん」と夜な夜なバブリーにおデートをし、人脈作りや玉の輿を狙う若い女性のことである。

 そんな港区女子の憧れを一身に集めるのが、通称・ひとみん(Twitterアカウント:@htm_192)だ。薬学部に通う現役大学生ながら起業家でもあり、さらに港区女子を集める“トップ”的存在である彼女は、女子大生ならば一度はその名を聞いたことがあるほどの知名度を誇る。

 彼女は一体何者なのか? どれほど派手な生活を送っているのか? 収入源は? 破廉恥すぎる港区の性事情って……!?  気になりまくりな港区女子の生態に迫る。

――ひとみんさんは「港区女子」としてTwitterを中心に有名ですが、そもそもどういったきっかけで、いつ、どのようにして「港区女子」界隈に足を踏み入れたんでしょうか?

ひとみん 今から約2年前、大学2年生のとき、電車内で私の前にブサイクな女の子が立っていて、後ろから彼女のスマホが目に入ったんです。彼女はマッチングアプリをやっていて、デートに誘われまくっていました。で、私もすぐに登録してみると、一瞬にして「いいね」数が3,000くらいきて、1位になりました。

――ブサイクがやっているなら、私のほうが……と?

ひとみん 私は「社長」や「年収○○円以上」などで検索して、マッチングした社長と会いまくり、毎晩デートしていました。ランチ→ディナーで1日2人と会ったこともあったなあ。

――社長のハシゴをした、と。

ひとみん テスト期間中以外は、ほぼ毎日会いました。

――目的はなんだったんですか?

ひとみん 社長と知り合いたかったのと、おいしいご飯が食べたかったから。

――自分のお金は一切使わずに?

ひとみん ですね。むしろこちらが何も言わなくても、タクシー代を1〜3万円くれますし。

――今までもらったもので、一番高いものはなんでしたか?

ひとみん うーん……指輪とかもらったことあるけど、忘れちゃった。たぶん150万円はあるかも。

――すごい! ちなみにどんな贅沢体験をしましたか?

ひとみん いっぱいあります。強いて言うなら、リッツ・カールトンの最上階のスイートルームで、1本100万円のワインをあけたり、とか。最初にご飯に行って、何度か会って仲良くなってからじゃないと、お泊まりデートはしませんけど。

――何者なんですか、その男性は。

ひとみん 元スポーツ選手の会社経営者でした。上場企業の社長とかも結構登録しているんですよ。普通に婚活していたり。でも、彼氏ができたのがきっかけで、マッチングアプリを辞めたんですよ。彼氏も社長で、今まで会ってきた人と違って、「ひとみんを超える女はいないと思うから、もうやらない」って、登録していたマッチングアプリ全部を辞めてくれました。でも、彼に出会う前はほとんどが既婚者でしたね。

――既婚者も登録しているんですか。彼らとは、おいしいご飯を食べられればOK、と?

ひとみん あとは、仕事をくれたりもするし。「船を売ってきてくれ」とか。

――ふ、船?

ひとみん あと飛行機もありますね。お金が余っている会社の社長って、節税対策で船や飛行機を買いたがるんですよ。それをマッチングアプリで会ったほかの社長に軽く言ってみたら、ポンと買ってくれたり。

――もはや女子大生の範疇を超えていますね。そんなに毎日膨大な人数の社長に会い、疲れませんでしたか? 中には嫌な奴がいたり。

ひとみん いや、ないですね。会ってみたい人としか会ってないから、変な人はいなかったです。だってマッチングアプリの登録情報以外に、会社概要やFacebookの「友人」までチェックするから。社長のレベルって、その人の付き合っている人のレベルで決まるんですよ。

――就活の企業研究のようですね。

ひとみん で、そうやって社長人脈ができてきて、さらにTwitterのフォロワー数も多かったことから、今から半年前、ずっと「これは、お金になるのでは」と考えていたことを形にし始めました。私自身がマッチングアプリを使い、研究してきた成果として、社長と、彼らと出会いたい女の子の出会いの場を作ろう、と。

――自らが仲介人の立場になったんですね。

ひとみん そう。最初はTwitter上で女の子を募集することから始めました。「金持ちと結婚したい子、LINEください」と、QRコードを載せて。すると、一瞬で数百人から応募がありました。

――主に、どんな女性でしたか?

ひとみん 私より年下が多く、大学生がほとんど。目的は、パパを探している子や、社長人脈がほしい子が多いですね。

――いわゆる“パパ活”ですね。その子たちは、社長たちからどれほどの“おこづかい”がもらえるんでしょうか?

ひとみん 金額は容姿レベルで変動しますが、1〜5万円。モデル級の子は5万円、その辺にいるような並な子は1万円程度です。

――社長に紹介するのですから、素性も需要ですよね。

ひとみん 素性はなんでもいいです。顔と年齢が最重要。でも、会話していて面白くないと2回目以降はありませんけど。

――そうして女性が集まると、社長に紹介をするんですか?

ひとみん 社長側から「いつどこで、こんな飲み会があるから」というオファーが来るので、そこに来てもらいます。で、そのときに社長が連れてきた別の社長から、またオファーがあり……と、どんどん枝が広がっていく感じですね。

――それはいわゆる、女性にギャラを支払って飲み会に来てもらう「ギャラ飲み」でしょうか?

ひとみん 「ギャラが出る」とは言いませんから、厳密に言うと違いますね。そういう世界は別にあって、たとえば、港区界隈で遊んでいるギャラ飲み目的の子が登録している、何百人規模のグループラインがいくつかあるんです。

――聞いたことがあります。「ギャラ飲み」の斡旋料で生活している「ギャラ飲みおばさん」が存在する、とか。

ひとみん そういった類いの人は、会ったこともないし会いたくもないですね。ウワサによると、すっごいババアしか集めないから、男性陣から不評なんだって。基本的に、そういったグループラインはブサイクとババアしかいないそうです。私のところにもコンタクトしてくるんですよね、「35歳、元ミス○○です」みたいな人が。そういう人は、なし、です。

――年齢制限があるんですか?

ひとみん 綺麗な女性なら32歳までならOKかな。そもそも、グループラインの中で女性を探すのは限界があります。すでに出回ってる女性たちだし、社長から紹介料を取ってまで紹介するほどじゃないですよね。

――たしかに。その点、ひとみんさんは手垢のついていない新たな顔ぶれを集めるわけですね。

ひとみん そうですね。女性は全部いちから自分で集めるし、男性側もみんな知り合いだし、その辺は決定的に違います。女性たちは、北から南まで、すっごい田舎からはるばるやって来るんですよ。「ひとみんに会いたいから」「ひとみんのように社長の知り合いがほしいから」と。

――ひとみんさんのようになれそうな子はいますか?

ひとみん 全然いない。みんな連絡が遅いし、まずそこがダメ。あと、たまにすごいダメな子がいて、ギャラ飲みに慣れているブサイクは、「男がしょぼい」とか文句を言ったり、社長に面と向かって「タクシー代出るの?」と聞いたりするんですよ。「いや、その顔じゃもらえないでしょ、帰れよ」って感じですけどね。

――斬れ味鋭いですね……。やぱり容姿は重要なんですね。

ひとみん ですね。募集した中で、直接飲み会で会い、実際にかわいい子だけはLINEを交換して、そういった子を130人くらい集めたグループLINEを作っています。

――1軍、といったところでしょうか。2軍、3軍などもあるんでしょうか?

ひとみん 2軍は欠点が1、2つあるような子で、3軍はそもそもLINE交換しません。

――これまでの応募総数は、どれほどなんでしょうか?

ひとみん 900人くらいですね。たまにかわいい子がいるレベルです。

――かわいい子を社長に紹介したり、もしかして芸能人にも紹介したりしますか?

ひとみん ありますね。社長経由で、芸能人やスポーツ選手との飲み会セッティングを頼まれることもあります。私自身、これまでに会ってテンションが上がったのは、●●●●●(某ミュージシャン)。酒が強くて、一緒にポーカーをして、金の話をしながら飲みました。

――すごいイメージ通りです。他に港区界隈の芸能人といえば、ダレノガレ明美さんが今年1月21日放送の『ウチくる!?』(フジテレビ系)で、港区女子について言及していました。招待されていないバーベキューに港区女子が白いワンピースにハイヒール姿で現れ、気安く「ちゃんづけ」で話しかけられたことなどから、「港区女子が許せない」としていました。3月23日放送の『必殺!バカリズム地獄』(AbemaTV)でも怒っていて、そのとき彼女が話した港区女子の定義は、「インスタグラマーじゃ食べていけないから、港区の男の人たちと遊んでお金を稼いでいる子たち」とのことでした。

ひとみん たしかにダレノガレさん、よく港区で見ますね。一般人を寄せ付けない雰囲気でお店にいます(笑)。でもその定義は違うんじゃないかな。っていうか、港区で遊んでいるインスタグラマーの子はちゃんと稼いでいる子もいるし。みんな「社長になりたい」などの野心があって、港区の男の人に会っているんですよね。

――なるほど! 「港区女子」とはしっかりとした目標を持っている女性のことなんですね!

 知れば知るほど、奥が深い「港区女子」。しかし、彼女たちにも野心があり、金持ちの男性とただ遊んでいるわけではないようだ。もしかしたら、これからの日本を支えるのは彼女たちなのかもしれない。

(後編に続く)

●ひとみん (Twitterアカウント:@htm_192)

 現役大学生でありながらも、現役港区女子として活動中。港区女子界隈で“アイドル的存在”であり、女子たちからの支持はアツい。また、Twitterでは“フォロワーからの質問に本音で答える”というスタンスが好評。現在はブログも開設し、活動の場を広げている。

親の「就活介入」は当然の時代!? 就職予備校にやって来る、大学生の父母の深い悩みとは?

 社会人への通過儀礼ともいえる“就職活動”。経団連が、就活解禁日としている大学3年生の3月1日を迎えると、真新しいリクルートスーツを身にまとった就活生が、街中でよく見られるようになる。どの学生も、希望する会社に入れるよう必死に活動をしている中、昨今は、保護者向けの就活相談やセミナーが全国各地で開催されるほど、“親の就活介入”も当たり前になってきているそうだ。

 世間では、20歳を過ぎた子どもの就活に親が首を突っ込む様子に「親離れ、子離れができていない!」「さすがに過保護すぎる」「子どもの成長を邪魔してどうする」との批判も根強いが、果たして“親子就活”の実情とは――? 保護者向けの就活相談も行っている、就職予備校「内定塾」東京校の就職コンサルタント・齋藤弘透氏に話を聞いた。

保護者向けの相談会では「現状を正しく知ってもらう」

――最初に、保護者向けの就活相談では、どのようなことをお話されているのですか?

齋藤弘透氏(以下、齋藤) 内定塾では、個別で問い合わせに対応するスタイルなので、ご相談内容によって若干変わってきますが、スケジューリングや就活の実態など、今の就活事情について説明することが多いですね。その上で、準備の仕方や企業が採用する基準などをお伝えしています。保護者の方が就活を経験された時代とはずいぶん状況が変わっているので、まずは現状を正しく知っていただくことが大切だと感じています。

――今の大学生の保護者というと、50代くらいの方が中心ですよね。保護者の時代と、どういった点が変わっているのでしょうか?

齋藤 まず、一番大きく変わったのは、「就活のやり方」だと思います。応募方法も今と昔とでは大違いです。かつてはインターネットなどありませんでしたから、自宅に送られてきた分厚い就職情報誌に付いているハガキを送って入社案内を入手し、簡単な履歴書を郵送したと思いますが、今の学生はネットが普及し、就職情報誌に代わって就職情報サイト(就活ナビ)が必須のツールになっています。また、評価基準も変わりました。今はより即戦力に近い人材を求める傾向にあり、「好きなことを頑張れるのは当たり前」との見方も強まっているため、学校の成績やGPA(各科目の成績から特定の方式によって算出された学生の成績評価値)を参考材料にして、能力や、苦手なことも頑張れる力を見る企業が大半。ひと昔前の大学生って、仲間と一緒に朝まで飲んで騒いで、翌日の授業をサボる……なんてことが当たり前でしたが(笑)、企業は“学校の成績”を見るようになったため、出席率も重要で、そういった学生は就活で苦戦するようになっています。

 あと、スポーツの実績が尊重され、大企業に受かりやすいイメージも強かった体育会学生も、しっかり学業と部活を両立できていないと難しいケースが増えています。それから、大学時代、資格取得に励む学生もいますが、今は1人でコツコツ頑張るより、チームワークを必要とするサークルやアルバイトなどでの経験を重視する企業も少なくありません。資格や英会話力などは、付加価値程度なんです。

――「難関大学に通ってるから大丈夫!」という保護者の方も少なくないのでは、と思ってしまいます。

齋藤 そうなんです。今は、就活生の7~8人に1人が就職浪人といわれていて、しかも、そのほとんどが高学歴層の学生。中堅大学などの学生は身の丈に合った企業選びをするので内定につながりやすいのですが、高学歴層では、周囲も保護者も難関企業を受けて当たり前のムードがあるため、競争の中で埋もれて、どこからも内定をもらえない学生が出てきてしまうようです。

――親世代だけでなく、30~40代の人たちの頃の就活事情とも、全然違う気がします。そもそもなぜ、評価基準が変わってきたのでしょうか?

齋藤 確かに10年前と比較しても、まったく違います。評価基準が変わった理由については、企業側に人材を育てているだけの余裕がなく、離職率も下げたいとの思いから、志望度が高く、かつ即戦力となる学生を求めているからでしょう。内定辞退もできる限り避けたいので、たとえインターンシップを受けた学生であっても、熱意が低いと感じられれば選考で外されます。このような昨今の就活事情を知らない保護者は多いので、危機感を抱いていただけたらとの思いでお話していますね。

「資格&語学力があるから楽勝」は親の勘違い

――実際に、保護者から寄せられる相談はどのような内容が多いのでしょうか?

齋藤 大学4年生のお子さまの保護者の方であれば「内定が決まらないがどうしたらいい?」といったもの、1~3年生のお子さまの保護者の方であれば、「今からどんな準備をしたらいいのか?」といった内容が多いですね。また、東京オリンピック後の景気を不安視して「就活の現状を知りたい」という方や、大学のキャリアセンターで十分な対応をしてもらえなかったために「プロの意見が聞きたい」と来られる方など、当塾生の保護者に限らず、外部からのお問い合わせも非常に多いです。やはり保護者の方も、子どもに内定が出ないと不安を覚えてしまうようで、また対策も知っておきたいと思われるようですね。

――相談はどのくらい寄せられますか?

齋藤 時期によって波はありますが、インターンシップ前の5~6月や、就活が本格化する1~3月は、外部だけでも週に3件くらいのペースで問い合わせがあります。お母様からの相談がもっとも多く、全体の半数くらいを占めていますね。次いでご夫婦そろってのご相談、お父様のみといった感じです。なお、お母様は先回りしすぎて思い詰めていらっしゃるケースが多いのですが、お父様はあまり危機感を抱いていない方が多く、楽観視している傾向が強いです。

――保護者の方は、どういった思いから、相談に来ていると思われますか?

齋藤 保護者の方は、子どもに苦労をさせたくない、就活を成功させたいとの思いが強いように感じます。本人の適性を踏まえた上でどこの企業がいいのかとか、一向に腰を上げないわが子にどうアドバイスしたらいいのかなど、心配する気持ちから相談に来られる方も多いのですが、本心としては、総合商社や外資企業、大手広告代理店、メガバンクなど、難関企業への就職を希望されているケースがほとんどですね。

 ただ、先ほども言ったように、今の就活を勘違いしている方が多いです。特に上位校に通っているから難関企業に入れるだろうという安心感はもちろんのこと、資格や英会話力があるから内定は楽勝と思っていたり、ご自身の経験から、いざとなればコネクション入社ができると思っていたりするあたりですね。また、リクナビやマイナビといった就活サイトや大学のキャリアセンター、インターンシップなど、保護者の方の時代にはなかったシステムにまつわる勘違いも多々あります。特にここ3年ほどで強化されてきたインターンシップについては、把握できていない保護者の方が多いと感じます。インターンシップは、大きく分けて選考直結型とアルバイト感覚の2タイプがあり、また、選考直結型でも内定とイコールではないのですが、そこを勘違いされて、「インターンシップが決まったから安泰!」と思われている保護者の方も少なくありません。私としても、確かに就活をするのは子どもですが、こういった勘違いをしたまま、保護者の方が口を挟んだり、むやみに心配をするより、まずは正しい情報を知ってから……との思いから、相談を受けています。

(後編につづく)

内定塾公式サイト

舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏に聞いた、創り手サイドからみた「ガチ恋ファン」って――!?「<後編>

 元・モーニング娘。の新垣里沙が“若手俳優オタク”を演じ賛否両論、大きな話題を呼んだ、昨年8月上演の舞台、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、この度小説家デビューを果たした松澤くれは氏に直撃!

 前編に引き続き、後編では創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについてお話を伺った。

(インタビュイー前編はこちらから)

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

*  * *

■「ガチ恋」な主人公は、いろんなオタクの集合体

 

――皆さんの感想を見ていると、「自分の推しにも見てほしい」「読んでほしい」といった意見や、「ガチ恋だと思っていなかったけど、自分もガチ恋なのかもしれない」などの声もありました。

松澤 元々僕は、一人の女の子を描こうとはしていなくて。「私はりさ子じゃない」って思う人と、「私はりさ子だ」って思う人って、比重の違いかな? って思ったんです。100%りさ子と同じ人がいるわけはない。でも、100%違うって言い切れないんじゃないかって。

 だから、この作品は“自分がどれくらいりさ子だったか”っていう楽しみ方もあるのかなと(笑)。りさ子がしたことは悪いことですけど、「完全な悪」ではないんですよ。

――そう考えると、登場人物の中に、「100%、悪い人」っていませんよね。

松澤 悪いヤツは、一人だけいますけどね(笑)。でも、それは根底にあるんです。りさ子だけが悪いんじゃなくて、りさ子をああしてしまった周りの環境も描きたくて。友達や会社の同僚、応援している俳優……、周りから受ける影響によって人は変わるし、“運命”とまでは言いませんが、“巻き込まれていく”ことはあるんじゃないかなって。だから、一人でも他の登場人物が欠けていたら、この作品はきっと成立してないんです。

――そういう意味では、オタクはみんな、りさ子になり得る要素を持っているのかもしれないし、どこでそのスイッチが入るか分からないですよね。これから年齢を重ねていく上で、りさ子はどんな女性になるんだろうと気になってしまいます……(笑)。

松澤 「推し変」を繰り返してオタ活を続けるか、結婚したり何らかのタイミングで“オタク”とは完全に縁が切れるんじゃないかな。きっと、一貫しないと思うんですよ。「ずっとこの人を追いかける!」って思っていても、気持ちに嘘はつけない。「あんなに好きだったのに好きじゃない」って感じたら、現場に通うのも苦痛になるじゃないですか。

 でも「今まで通ってきたから」とか、お金を使ってきたから何となく惰性や情で現場に行く人もいると思うんです。そうなると、推し活がつらいって感じた時点で離れないと、キツいんだろうなって。だから僕は、推し変は別に悪いことだとは思っていないんですよ。

■「誰かを応援するってすごいエネルギー」

 

――ちなみに、演劇に携わる立場からみて、「ガチ恋ファン」ってどう思われますか?

松澤 人を想う気持ちは、誰にも止められないし、りさ子も言っていたように、“愛は誰にも否定できない”。だから、やっぱり僕は「ファン」ってすごいなって思います。凄まじいエネルギーじゃないですか。それこそ、毎公演何をするにも遠くから、何回でも足を運んでくださいますし、“見に来てくれる”っていうこと自体が有難いです。

 ファンって本当にすごい存在だなって。誰かを応援する力ってすごいと思うんですよね。だから僕はその「力」を尊敬するし、信じる。なくてはならないものです。僕は、ファンの方はなるべく覚えたいなと思っているので、積極的に「認知」をしてコミュニケーションを取っていきたいですね。

――松澤さんが「ガチ恋」的に一途になれるものは? やはり「演劇」でしょうか……?

松澤 そうですね。「ガチ恋」というわけではありませんが、ある人への「憧れ」がすごく強くて。その人っていう“目標”を定めてこれまで活動してきました。その人が、すごいことをすると、嬉しい反面、焦るんです。「あ、やばい。一生追いつけない」って。だから、「永遠の目標」に少しでも近づけるような、認められるものを創りたいです。

 ちなみに、僕の創作の目標は、芥川賞作家の中村文則さんなんです。あの方のように、言葉で世界を変えたいんです。だけど、どんどん離される……。でも、「小説を出します」ってお伝えしたら、喜んでくださって。

――では、松澤さんの原動力は、そこに?

松澤 そうですね。23歳のときに、中村さんに芝居見てもらって、「才能あるよ」って言われたことを思い出し自分を鼓舞しながらここまでやってきました。“今の自分が信じられなくても、自分がすごいと思った人の言葉だけは信じよう”と誓いながら。

 先日、「あのときに『才能ある』って言ってくださったから、これ(小説)を出せました」と報告できました。

 あとはやっぱり、ファンの方たちですね。「面白い」「他の作品と違う」って言ってくださるんですよ、もっと人気のある作品はいっぱいあるのに。「僕の芝居見てくれてありがとう」と、感謝の気持ちが強いです。

 

■「人と人とのつながりをたくさん描きたい」

 

――今回は、「ガチ恋ファン」がテーマでしたが、今後書いてみたいテーマはありますか?

松澤 人間関係を描くのが好きなので、「俳優とファン」にはとらわれずに、パッと見「一方通行なのかな?」と感じる関係性は、今後も書くと思います。

 それこそ、この作品の答えになってしまうかもしれませんが、僕は俳優とファンって別に一方通行の関係ではないと思うんです。でも、普通の“双方向”とは違う。だから、僕自身でその複雑な関係性について掘り下げてみたくてこの作品が生まれました。

 他にも、「この立場とこの立場の人」といったように、人と人とのつながりをたくさん描いていきたいです。元々は小説家になりたかったんですが、いつの間にか演劇をやっていて、それを生業にしてきたので、これからは「二足のわらじ」で頑張っていきます!

――最後になりますが、ファンの皆さんにメッセージをお願いいたします。

松澤 ファンの皆さんがSNSで発信して話題にしてくださったおかげで今がありますし、舞台の上演から半年以上たった今でも、まだ『りさ子』という作品が生き生きしています。

「楽しんでくれて、話題にしてくれて、あなたの感想を聞かせてくれて、本当にありがとうございます」と、感謝の気持ちです。舞台を発表したら、皆さんからそれ以上のものをいただきました。なので、この小説はそのお礼です。またぜひ感想を聞かせてください!

 これから作品に興味持ってくださる方は、「はじめまして!」「ようこそ!」という気持ちです。僕は、「作品を与える」とか「見せる」っていう意識はなくて、「とりあえず新しい作品を発表したから、リアクション下さい」っていうスタンスなんです。作品に触れてくれたのなら、「じゃあ、とりあえず話そっか」みたいな(笑)。

 舞台DVDからでも、小説からでも、どちらから入っても楽しんでいただける作品になっていると思うので、どんどん感想を聞かせてください! 劇場にも来てね! 待ってます!
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
https://uwanosora-hiasobipray08.jimdo.com

舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏に聞いた、創り手サイドからみた「ガチ恋ファン」って――!?「<後編>

 元・モーニング娘。の新垣里沙が“若手俳優オタク”を演じ賛否両論、大きな話題を呼んだ、昨年8月上演の舞台、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、この度小説家デビューを果たした松澤くれは氏に直撃!

 前編に引き続き、後編では創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについてお話を伺った。

(インタビュイー前編はこちらから)

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

*  * *

■「ガチ恋」な主人公は、いろんなオタクの集合体

 

――皆さんの感想を見ていると、「自分の推しにも見てほしい」「読んでほしい」といった意見や、「ガチ恋だと思っていなかったけど、自分もガチ恋なのかもしれない」などの声もありました。

松澤 元々僕は、一人の女の子を描こうとはしていなくて。「私はりさ子じゃない」って思う人と、「私はりさ子だ」って思う人って、比重の違いかな? って思ったんです。100%りさ子と同じ人がいるわけはない。でも、100%違うって言い切れないんじゃないかって。

 だから、この作品は“自分がどれくらいりさ子だったか”っていう楽しみ方もあるのかなと(笑)。りさ子がしたことは悪いことですけど、「完全な悪」ではないんですよ。

――そう考えると、登場人物の中に、「100%、悪い人」っていませんよね。

松澤 悪いヤツは、一人だけいますけどね(笑)。でも、それは根底にあるんです。りさ子だけが悪いんじゃなくて、りさ子をああしてしまった周りの環境も描きたくて。友達や会社の同僚、応援している俳優……、周りから受ける影響によって人は変わるし、“運命”とまでは言いませんが、“巻き込まれていく”ことはあるんじゃないかなって。だから、一人でも他の登場人物が欠けていたら、この作品はきっと成立してないんです。

――そういう意味では、オタクはみんな、りさ子になり得る要素を持っているのかもしれないし、どこでそのスイッチが入るか分からないですよね。これから年齢を重ねていく上で、りさ子はどんな女性になるんだろうと気になってしまいます……(笑)。

松澤 「推し変」を繰り返してオタ活を続けるか、結婚したり何らかのタイミングで“オタク”とは完全に縁が切れるんじゃないかな。きっと、一貫しないと思うんですよ。「ずっとこの人を追いかける!」って思っていても、気持ちに嘘はつけない。「あんなに好きだったのに好きじゃない」って感じたら、現場に通うのも苦痛になるじゃないですか。

 でも「今まで通ってきたから」とか、お金を使ってきたから何となく惰性や情で現場に行く人もいると思うんです。そうなると、推し活がつらいって感じた時点で離れないと、キツいんだろうなって。だから僕は、推し変は別に悪いことだとは思っていないんですよ。

■「誰かを応援するってすごいエネルギー」

 

――ちなみに、演劇に携わる立場からみて、「ガチ恋ファン」ってどう思われますか?

松澤 人を想う気持ちは、誰にも止められないし、りさ子も言っていたように、“愛は誰にも否定できない”。だから、やっぱり僕は「ファン」ってすごいなって思います。凄まじいエネルギーじゃないですか。それこそ、毎公演何をするにも遠くから、何回でも足を運んでくださいますし、“見に来てくれる”っていうこと自体が有難いです。

 ファンって本当にすごい存在だなって。誰かを応援する力ってすごいと思うんですよね。だから僕はその「力」を尊敬するし、信じる。なくてはならないものです。僕は、ファンの方はなるべく覚えたいなと思っているので、積極的に「認知」をしてコミュニケーションを取っていきたいですね。

――松澤さんが「ガチ恋」的に一途になれるものは? やはり「演劇」でしょうか……?

松澤 そうですね。「ガチ恋」というわけではありませんが、ある人への「憧れ」がすごく強くて。その人っていう“目標”を定めてこれまで活動してきました。その人が、すごいことをすると、嬉しい反面、焦るんです。「あ、やばい。一生追いつけない」って。だから、「永遠の目標」に少しでも近づけるような、認められるものを創りたいです。

 ちなみに、僕の創作の目標は、芥川賞作家の中村文則さんなんです。あの方のように、言葉で世界を変えたいんです。だけど、どんどん離される……。でも、「小説を出します」ってお伝えしたら、喜んでくださって。

――では、松澤さんの原動力は、そこに?

松澤 そうですね。23歳のときに、中村さんに芝居見てもらって、「才能あるよ」って言われたことを思い出し自分を鼓舞しながらここまでやってきました。“今の自分が信じられなくても、自分がすごいと思った人の言葉だけは信じよう”と誓いながら。

 先日、「あのときに『才能ある』って言ってくださったから、これ(小説)を出せました」と報告できました。

 あとはやっぱり、ファンの方たちですね。「面白い」「他の作品と違う」って言ってくださるんですよ、もっと人気のある作品はいっぱいあるのに。「僕の芝居見てくれてありがとう」と、感謝の気持ちが強いです。

 

■「人と人とのつながりをたくさん描きたい」

 

――今回は、「ガチ恋ファン」がテーマでしたが、今後書いてみたいテーマはありますか?

松澤 人間関係を描くのが好きなので、「俳優とファン」にはとらわれずに、パッと見「一方通行なのかな?」と感じる関係性は、今後も書くと思います。

 それこそ、この作品の答えになってしまうかもしれませんが、僕は俳優とファンって別に一方通行の関係ではないと思うんです。でも、普通の“双方向”とは違う。だから、僕自身でその複雑な関係性について掘り下げてみたくてこの作品が生まれました。

 他にも、「この立場とこの立場の人」といったように、人と人とのつながりをたくさん描いていきたいです。元々は小説家になりたかったんですが、いつの間にか演劇をやっていて、それを生業にしてきたので、これからは「二足のわらじ」で頑張っていきます!

――最後になりますが、ファンの皆さんにメッセージをお願いいたします。

松澤 ファンの皆さんがSNSで発信して話題にしてくださったおかげで今がありますし、舞台の上演から半年以上たった今でも、まだ『りさ子』という作品が生き生きしています。

「楽しんでくれて、話題にしてくれて、あなたの感想を聞かせてくれて、本当にありがとうございます」と、感謝の気持ちです。舞台を発表したら、皆さんからそれ以上のものをいただきました。なので、この小説はそのお礼です。またぜひ感想を聞かせてください!

 これから作品に興味持ってくださる方は、「はじめまして!」「ようこそ!」という気持ちです。僕は、「作品を与える」とか「見せる」っていう意識はなくて、「とりあえず新しい作品を発表したから、リアクション下さい」っていうスタンスなんです。作品に触れてくれたのなら、「じゃあ、とりあえず話そっか」みたいな(笑)。

 舞台DVDからでも、小説からでも、どちらから入っても楽しんでいただける作品になっていると思うので、どんどん感想を聞かせてください! 劇場にも来てね! 待ってます!
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
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育児の温度差が「産後クライシス」を生む? 専門家に聞いた、夫を男脳から「父親脳」にする方法

 出産を機に夫婦関係が急激に冷え込んでしまうことを「産後クライシス」と呼ぶ。もともとこの言葉は、2012年9月放送の『あさイチ』(NHK)によって紹介された造語だ。同番組で、産後クライシスは「妻の出産から子どもが2歳ぐらいまでの間に起きる現象」と定義している。

 それを裏付けるかのように、夫婦間の離婚率は、実はこの時期が最も高い。厚生労働省が11年に発表した「全国母子世帯等調査結果報告」によると、夫婦が離婚した時の末の子どもの年齢は0〜2歳が最も多く、その割合は全体の35.1%にも上る。

 幸せなはずの子育て期に、離婚に至るまで夫婦仲が引き裂かれてしまうのは、なぜなのだろうか?

■産後、夫への拒絶感が増す妻たち

 育児工学を専門とする東京未来大学准教授の小谷博子氏は「出産後、妻が夫に愛情を感じられなくなるのは、ホルモンの影響も考えられます」と話す。

「妊娠・子育て中の女性の脳は、ホルモンの洪水に見舞われて、大きく変化します。たとえば、妊娠中から上昇するプロラクチンというホルモンは、動物を勇敢にしたり、敵対感情を引き起こしたりする作用があることが、ラットを使った実験で明らかになっています」

 プロラクチンは血液中で母乳生成を促すホルモンだが、わが子を外敵から守るために、母親を果敢にさせているとも考えられるという。

「本来、夫は一緒に子どもを育てる同志なのですが、妻から“敵認定”されると“外から雑菌を持ち帰ってくる存在”となり、嫌悪感を抱かれるようになります」

 これまで、小谷氏は多くの母親にヒアリング調査を行ってきたが、子どもを育てる女性からは「産後は夫に近寄られるだけでもイヤだ」「夫がいなくても子どもがいれば幸せ」といった声が寄せられたという。

 また、小谷氏によると「プロラクチンは性欲を減退させる作用もある」とのこと。産後はセックスレスになりやすいというが、こうしたホルモンの影響も考えられるのである。

 しかし、ここまで妻に毛嫌いされてしまえば、夫としても面白いはずがない。一線を引かれるような態度に戸惑い、拒絶された寂しさを紛らわすために浮気でもしようものなら、離婚問題に発展しかねない。

 このようなホルモンの作用による夫婦間の「すきま風」にうまく対処できなかったため、その関係性までもが変化してしまうのが「産後クライシス」の正体なのだ。

 では、妻の妊娠・育児期間中、夫はひたすら耐え忍ぶしか道はないのか? 産後クライシスで関係にヒビが入る夫婦とそうでない夫婦について、小谷氏は「夫が妻にとって“敵”となるか、一緒に子どもを育てる“同志”となるかが分かれ目だ」と話す。

 「夫が子育ての同志になる」とは、どういうことだろうか? 実は、子育てモードに入った男性も、脳に変化が表れるのだという。

「たとえば、妻の妊娠中に父親としての自覚に目覚めた男性は、テストステロンという攻撃性を増すホルモンが3分の1に減少することが報告されています」

 ただし、妊娠・出産を経験することで脳が変化する女性とは異なり、男性が「父親脳」になるには、周囲の環境や自らの心がけが必要になってくるという。

「日本ではいまだに男性が育児休暇を取ると白い目で見られることが多いですし、父親が育児に集中できる環境が整っていません。そうした中で夫が父親としての自覚を持てないままでいると、夫婦の意識に大きな差が出てしまうのです」

 男性の脳は職場では戦闘モードになるため、帰宅したらクタクタで、子育てに参加するどころではなく、わが子の泣き声すら煩わしくなってしまう。しかし、妻としては産後の不安定な時期こそ夫の協力を得たい。それなのに、協力どころか「俺の飯は?」なんて言われた日には、腹立たしいことこの上ないだろう。

「さらに、『泣き声がうるさい』などと夫の不満の矛先が子どもに向かってしまうと、妻は『子どもを守らなくては』という意識が働き、夫のことをより外敵と見なしてしまうのです」

■産後クライシスを迎える前に、知っておくべきこと

 夫と妻が“同志”になるためには、小谷氏は「夫も妻の妊娠中から“わが子”と触れ合うことが大切」だと言う。

「たとえば、社会保障が手厚いことで知られるフィンランドは、妊娠中から夫婦で参加できるプログラムが充実していたり、男性の育休取得率も8割になります。こうして、妊娠中から男性が『父親』になれるように促していくことが大切なのです。日本では、まだまだ男女の役割が固定化されたままなので、行政レベルで問題を改善していくしかありません」

 性別役割分担意識の改善は、近年、社会における女性の権利向上といった視点で語られることが多い。だが、家庭内での夫婦の関係性においても、こうした意識改革が必要なのだ。

「“イクメン”といった言葉が話題になるなど、今の日本社会は男女の固定化された役割が変化していく過渡期。そうした中で、妊娠・出産に伴う女性の体の変化についても、多くの夫婦が知っておく必要があるのではないでしょうか」

 父親・母親になるにあたって、お互いの脳の変化についてあらかじめ知識を得ておけば、「産後クライシス」も回避できるのではないだろうか。
(松原麻依/清談社)

小室圭さんの母・佳代さんが“上流階級にあこがれる”ワケ――「バブルの価値観」と辛酸なめ子談

 秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期が発表されて、早3カ月がたった。圭さんの母・佳代さんが、元婚約者A氏との間に400万円の借金トラブルを抱えていたという週刊誌報道が原因とみられ、その後、A氏がメディアに登場し、佳代さんから、ことあるごとに金銭をせびられていたことを暴露。

 事実、報道で知られるようになった佳代さんのお金の使い方は、一般庶民とはかけ離れているようだ。圭さんの中高は授業料年間200万円以上のインターナショナルスクール、大学は私立の国際基督教大学(ICU)で、アメリカ留学もさせているほか、圭さんの成人式の写真を帝国ホテルで撮影、また、自身もパートにタクシー通勤するなど、まるでセレブのような金遣いを見せる佳代さん。さらに、「幼稚園の送り迎えは車(アウディ)で」「圭さんに『お母様』『お父様』と呼ばせる」といった週刊誌報道を受け、ネットユーザーは「上流階級にあこがれる女のようだ」と盛んに指摘している。

 そこで今回、『皇室へのソボクなギモン』(竹田恒泰共書、扶桑社)などの著者で、皇室をウォッチし続けているコラムニスト・辛酸なめ子さんにインタビューを行った。昨年9月、婚約内定会見の際にサイゾーウーマン上で、「『Let It Be』の発音が、さすがTOEIC950点のネイティブ級」と圭さんの座右の銘に太鼓判を押していたなめ子さん。結婚延期、そして報道が過熱する現状について「本当にショックです」というが、彼女の目に、佳代さんはどう映っているのだろうか。

妙なフェロモンが漂っている“魔性の女”

 眞子さまと圭さんが婚約内定となり、メディアの前に姿を見せるようになった佳代さん。なめ子さんは、その印象を次のように述べる。

「ゴミ出しをする佳代さんの胸元から、谷間が見えている写真を見たとき、“世の中の真面目な普通のお母さん”とはちょっと違うんじゃないかな、と思いました。オンナ感が強いというか、妙なフェロモンが漂っているというか。最近は、スーツのような皇室を意識したファッションになっているようですが、それでもやっぱり生脚やサンダルといった格好もしていて、50代女性の落ち着きが見えないんです。“現役感”を感じてしまいますね」

 なめ子さんいわく、漫画家・根本敬氏の作品によく出てくる“魔性の女”を彷彿とさせるとのこと。

「妖気に近いようなフェロモンを発していて、一度ハマると逃れられなくなる女性なのではないでしょうか。決して美人ではないと思いますし、怖いんですけど、佳代さんの写真をなぜか見続けてしまうんです。わかりやすい美人じゃない方が、男性は一度ハマると抜けられなくなるのでしょうか。根本先生に、佳代さんを描いていただきたいですね」

 確かに佳代さんは、元婚約者に、「別の男性からも同時期にプロポーズされた」と語ったことがあるという。彼女は“モテる女”なのかもしれない。

 婚約内定時、佳代さんはパートをしながら、圭さんを女手ひとつで育てたよき母として報じられていた。しかし、圭さんの経歴と照らし合わせると、「パートのお給料だけでは、圭さんの教育費が間に合わないのではないかと思っていたんです。遺産や遺族年金以外に、何かしら、資金源があるのかなと。ご実家も資産家ではないようでしたし」と、なめ子さんは、当初から違和感を覚えていたのだという。

 佳代さんは、どこか身の丈に合っていない生活を送っている、上流階級にあこがれて背伸びをしているのではないか――世間で言われる佳代さんの人物像について、なめ子さんがその根拠となるエピソードをあげてくれた。

「例えば、『うちの子はバイオリンの天才なの』という発言。また、元婚約者の方が、皇族と間接的な知り合いだと知ると食いついたといった話や、圭さんの交際相手の家柄や経済状況にこだわりを見せていたという話もありました。それから、元婚約者の方とのメールのやりとりで、自分のことを『Jenny』と書いていたり、『クルージングパーティー』に興味を示すなど、そういった点に、上流階級にあこがれる一面を感じました」

 特に違和感を覚えたのは、婚約内定にあたり、佳代さんが宮内庁を通じて書面で出した“コメント内容”だという。

「『主人亡き後、息子は自発的に物事に取り組み、努力を重ね、ご尊敬申し上げる方々からのご指導のもと、人生の要所要所を固定概念にとらわれることなく決断してまいりました』と、息子である圭さんのことを褒めているんです。普通こういう場合、謙遜するのではないかと。母と息子が一体となっている、関係が深いと感じました」

 では、なぜ佳代さんは、そうした女性に化したのだろうか。なめ子さんは「佳代さんは紀子さまと同世代なのですが、やはり“バブル世代”の影響が大きいと思います」と語る。

「ブランドを大切にして、お金持ちに見えるかどうかを気にしていたり、元婚約者の方もまるでアッシー、メッシーのような扱いをしています。また、学芸大前の人気のスイーツ店で働かれているのも、イメージを気にしているのかなぁと。バブル当時の女性の感覚や価値観を持ち続けている気がします」

 男性にお金を使わせることに何のためらいもない点も。バブル世代の女性に見られがちな感覚だろう。

「佳代さんは、男性からお金を引き出すことを、もはや“仕事”と感じていたのかもしれませんね。元婚約者の方の証言を見るに、あまりにも手馴れていたので。決算書のようなものを提出させたり、生命保険の書き換え指示をしたり、恋愛感情はなく、ビジネス的にやられていたのだと感じます。金融業界などでその能力を発揮できたのでは」

 また、コンプレックスによって、上へ上へという気持ちが強まったのではと続ける。

「佳代さんは昔、ある寮に家族全員で住みこんでいたと報じられていました。狭い場所での暮らしに、“いつかはここから出て行きたい”“本当はもっといい生活をしていいはずだ”という思いを募らせていったのではないか……と想像してしまいます。私も実家が狭かったのでわかります」

 そんな佳代さんにとって、“息子が皇族と結婚する”ということは、筆舌に尽くしがたい栄光だったはずだ。しかし、自身の金銭トラブルで、今では結婚延期どころか破談の可能性まで浮上している。

「佳代さんが皇室に結婚一時金の前借りを申し入れたという報道もありましたが、みんなが助けてくれることに慣れきっているのかもしれませんね。もちろん母子家庭は大変だというのもわかるのですが……。そういえば、出版関係の方に聞いたのですが、小室さん親子の問題を特集すると、週刊誌の売り上げがいいそうです。その儲かった分を、小室さん側に少しでも還元してあげれば、400万円くらいの借金はすぐに返せるのにな、と思います。ブームになっていても、小室さん側が何も得るものがないのはつらいですよね」

 なめ子さんは「圭さんと佳代さんは、絶対に結婚を諦めないと思う」と言う。宮内庁は、「2020年まで延期」と発表しているが、そのとき佳代さんは笑っているのだろうか。

舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏が明かす、制作のウラ側――「元モー娘。新垣里沙は、バケモノのような女優」<前編>

 昨年8月、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)という斬新なタイトルの舞台が上演され、演劇ファン、俳優ファンに衝撃が走った。

 タイトルにある「ガチ恋」とは、自分の一推しの俳優やアイドルを意味する“推し”に、本気(ガチ)で“恋”しているオタク(ファン)のことを示すオタク用語だ。同様に、「沼」はその対象から抜け出せず、沼のようにどんどん深みにハマっていくことを表す言葉。つまり、この舞台は「俳優に恋をしているオタク」の物語だ。

 主人公・りさ子を演じたのは、元・モーニング娘。の新垣里沙。国民的アイドルだった彼女が“若手俳優オタク”を演じ、俳優とファンの泥沼愛憎劇を繰り広げるということで賛否両論を呼んだが、舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、このたび小説家デビューを果たした松澤くれは氏を直撃! 今だから話せる舞台の裏側や、公演中に起こった“アノ”騒動、小説のみどころについて、話を伺った。

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

* * *

■客席は、ある種“カオス”だった

――このたびは、出版おめでとうございます。

松澤くれは氏(以下、松澤) ありがとうございます。

――まずは、この作品が生まれたキッカケについてお聞かせください。

松澤 元々、元モーニング娘。の新垣里沙さんと、2013年と15年に『殺人鬼フジコの衝動』(以下、フジコ)という舞台でご一緒して、「また何か一緒にやりたいね」と話していたんです。

 これまで新垣さんを主役にした書下ろし作品に挑戦したことがなかったので、じゃあ、あらかじめ新垣さんが演じる役を作ってから、物語を作ってみようと思いまして。元々「俳優とガチ恋ファン」という構想が頭にあったので、「元モー娘。のリーダーが地味なファンの子を演じるのを観たい!」とストレートに新垣さんにお伝えしたら、「やってみたい!」と。それから「二人でこういうのやりたいんですけど……」っていうのをSNSに書いたら、『フジコ』のプロデューサーさんが食いついてくださって舞台化が実現しました。

――舞台を終えて半年以上経ちますが、改めてご感想は?

松澤 まずは、無事に終えられてよかった……(笑)。本当にたくさん、予想以上のお客様に見ていただくことができました。

――客席の反応はいかがでしたか?

松澤 同じシーンで泣いている女の子がいれば、笑っているおじ様がいたり、お客様の反応がこんなに分かれる舞台は初めてで、強烈に印象に残っています。笑う人もいれば笑わない人もいるといった反応の違いは今までにもありましたが、同じシーン見ながら、捉え方がここまで真逆になるんだと驚きました。そういった客席のある種の“カオス”現象が、この作品に対する一つの答えなのかなと実感しました。

 お客様一人ひとりの顔を見ることが脚本・演出家としての責任だと勝手に思っていたので、全公演を客席後方で見て、終演後は出口に立ったんですが、「すごく面白かったです」って話しかけてくれる人がいたり、中には「納得いかないから話しませんか?」と、十数分ロビーでお話ししたこともありました。

 あとは、皆さんSNSで感想をものすごい長文で書いてくださって、その観劇レポを読んだレポみたいなものまで生まれていて(笑)。本当にたくさんの方が、自分の感想を自分の言葉で表現してくれた作品でした。

 会場にアンケート用紙を用意しなかったのも、そういった意図からです。この作品に限らず、僕はアンケートを取りません。見た感想を僕ではなく、周りの人にSNS上で広めてほしいんです。良いことも悪いことも、そのまま素直に感じたことを自由に書いて、皆さんで意見交換をしてほしいので、特にこの作品には、そのやり方が合っていたのかなと思っています。

――ブログ等を拝見させていただきましたが、キャスティングが難航したそうですね。

松澤 僕もプロデューサーから聞きました。いや~、断られまくりだったらしいですね(笑)。僕は、脚本・演出なのでキャスティングにはあまり関わりませんが、以前ご一緒した方がキャスティングされていたり、僕が「この人とご一緒してみたい!」と推薦させていただいた方が何名かいらっしゃいます。元々役は用意していましたが、演じる俳優の名前をそれぞれ役名に入れて、本人のキャラに寄せた部分もあります。

――新垣さんファンの反応を見ると、「新しいガキさんが見れた」という声もありました。

松澤 こういう役は、僕しか振らないと思うので(笑)。良い意味で、バケモノのような女優さんなので、もっといろんな彼女を見たいですね。本当に素敵な役者さんです。

――篠戸るる役を演じた階戸瑠季さんも、大変な役柄だったんじゃないかなと感じましたが……。

松澤 それが、階戸さんは、「やりたいです!」と二つ返事で引き受けてくださったんですよ。階戸さんをはじめ、本当に全キャストにメチャクチャ感謝をしています。オファーを受けてくださったということは、僕とプロデューサーがやりたいことをきちんと汲んでくださったわけですから。

■「告知したときが一番、叩かれた」

 

――「ガチ恋」というタイトルにかなり衝撃を受けました。作品を上演するにあたって、さまざまな意見があったかと思いますが、いかがでしたか?

松澤 業界の反応は、「そういうのやったらダメだよ」「何やってんの!?」と(苦笑)。「やっていいことと、悪いことがあるよ」といった目では見られましたね。最初に告知したときが一番、叩かれました。

 公演日程と劇場程度の内容だったんですけど、やはりタイトルのインパクトが強かったようで、「直ちにやめてください」「オタクを茶化すな」と、Twitter のDMで脅迫されたこともありました(苦笑)。僕は、基本、シリアスな作風が多いんですが、それを知らない方々は、コメディー作品だと思ったようで、実際に作品を見てもらうまでは分かってもらえないだろうなと覚悟はしていました。もちろん、「すごく面白い題材」って言ってくださる方もいらっしゃいましたが、告知の段階では、結構ネガティブな意見の方が多かったですね。

――でも、いざ公演が始まると、ネット上で評判がどんどん感想を拡散されて、連日たくさんの方々が当日券を求めて劇場に列を作ったとか。

松澤 そうなんですよ。毎ステージたくさんの方に並んでいただいて、チケットの当選倍率は20倍超えだったと聞きました。皆さんの口コミのおかげでもありますね。それぞれ受け取り方は違うと思いますし、面白いと思う人もいれば、面白くないと思う人がいる中で、見た人には僕がやりたいことは伝わったのかなって。そう思うことができたのは救いでした。

――公演中には、ファンの方が松澤さんに贈ったスタンド花が、誰かの手によって壊されてしまうという悲しい事件もありましたよね。

松澤 あの件は、本当にショックで……。これは自分の中できちんと消化しないといけないなと思いブログを書いたら、たくさんの反響をいただきました。でも、「自分で壊して話題性を狙ったんでしょ?」なんて言われてしまって。ただ、僕のことを元々ネガティヴに捉えている人は、当然そうなるよなと。そう思った時に、言葉を尽くせば伝わるっていうのは、欺瞞だなって思ったんです。こっちが心を尽くして話した言葉でも、どう受け取るかは相手の自由ですから。

 そういう意味では、精神的なダメージは結構大きかったんですが、そこから色々考えることもできましたし、現場はすごく楽しかったです。役者さんとみんなで和気あいあいとしていました。

■「現実」と「リアリティ」はイコールではない

 

――今作で、松澤さんが一番こだわった部分は何ですか?

松澤 「語彙」です。俳優の言葉づかいと、ファンの方たちの言葉づかいを意識しました。Twitterにおける「本アカ」と「愚痴アカ」の語彙の使い分けには特に気をつけましたね。小説版では、舞台とは違った小説ならではのある“仕掛け”があるので、読んでくださった方は、皆さん驚かれるかと思います!

――「松澤さん、よく見ていらっしゃるな~」と、投稿内容の一つひとつにリアリティを感じました(笑)。

松澤 でも、あまり具体的な出来事などは追わないようにしたんです。とはいえ、勝手に入ってくる情報もあるので、自分からは調べずに、なるべく情報を入れすぎないようにしましたね。よくある“匂わせツイートをしてカノバレ”騒動も作中に出てきますが、完全に妄想なので、もし現実にああいうことが起きていても、偶然被っているだけなんです。

――りさ子のオタク友達には遠征組の子がいたり、原作厨がいたり、「こういう服装の人、劇場でよく見るな」というファッションだったりと、登場人物のキャラクター設定にも“あるある”要素が詰め込まれているなと感じました。

松澤 具体的なモデルはいません。でも、僕自身オタクなので、ジャンルは違えどもある程度の知識はありますし、衣装のブランドとか、細部までこだわってしまうことはよくあります(笑)。「分かる~!」って共感していただくだけでも、楽しんでいただけるかなって。

 俳優達の楽屋でのやりとりは、今回出演していない知り合いの俳優に、雑談の中で色々聞いたりもしましたが、例えば「プレゼントは何を貰ったらうれしい?」など、細かいことは聞きませんでしたね。「スタバカード、ありがとうございます!」みたいなツイートとか、よく見るなぁ、よく貰っている=みんな嬉しいのかな? とかいろいろ考えてたときに、そういう俳優がいても不思議じゃないなと。ただ、現実にいるかどうかは分からない。

「現実」と「リアリティ」は決して同じものではないし、“特定の誰か”を明確にせず、余白を残したほうが面白いと思うんです。

――確かに、どこまでが実像でどこからが虚像なんだろうって考えるのが楽しかったです! 例えば、公演を見たファンが「あそこがよかった!」って盛り上がっていても、実際、俳優たちの手ごたえとしては、「微妙だったな」って温度差があったり……(笑)。

松澤 正直、それはありますね(笑)。毎回必ずベストを目指しますが、人間なので、むしろ変わらないことはできませんし、試行錯誤を積み重ねた結果、微妙な出来になってしまったり、うまくいかずに「悔しいな」って思っていた時に、お客様から、「今日が一番よかった」って言われることはもちろんあるし、その逆もあり得るので(笑)。

――そう考えると、ファンって、俳優たちのことを分かっているようで分かっていないんですよね(笑)。

松澤 そうなんですよね(笑)。“知りたい”と思う一方、“でも他人のことは、その本人にしか分からない”っていうのが、この作品の根幹にあります。

――松澤さんは、「俳優」と「ファン」は、どういう関係性だと思われますか?

松澤 まさに、そこは、小説を読んでいただきたいです! ラストの翔太の言葉を、僕の考えとして受け取ってもらえたらうれしいですね。

■“容姿と表情”“役者の演技”を、いかに自分の言葉で伝えるか

 

――小説の出版の話は、いつ頃からあったんですか?

松澤 担当編集さんが舞台を観に来てくださって、僕も「小説にしたい」という気持ちがあったので、すぐに打ち合わせをして「じゃあ、2カ月で第一稿を書いて、年明けには形にしましょう」と、ものすごいスピードで話が進みました。去年の秋はずっと原稿を書いていましたね。

 役者さんが演じていると、もうパッと見で伝わるじゃないですか。でも小説では、今どんな顔をしていてどんな服を着て……というのを、細かく書かないと伝わらない。舞台では役者さんの演技に委ねる部分も、すべて自分の言葉で表現しなければならないので、“容姿と表情をいかに伝えるか”に気をつけました。

――小説は、舞台版とは異なる結末を迎えますよね。

松澤 舞台は、絶対に劇場でしかできないことをやったので、小説なら小説でしかできない終わり方にしたかったんです。最後に“あの一文”がくるっていうのが、小説の結末だなって思ったので、思い切って変更しました。

 演劇の良さと小説の良さっていうのを最大限引き出したいなと思いながら、両方とも作りました。舞台版はDVDで、役者さんの“演技そのもの”を見ていただきたいですし、小説版は、りさ子の心情の移り変わりを追体験してほしい。また、小説は舞台版と比べると俳優サイドがすごく詳しく描かれているので、りさ子ではない、もう一人の主人公に注目していただだければ。

――最後には、「劇団雌猫」さんによる解説もありますが、どういったつながりで?

松澤 ちょうど『りさ子』の稽古している時に、『浪費図鑑』(小学館)という面白い本が出たらしいと聞いて、影響を受けたくなかったので、そのときは読まなかったんです。それで、後日読んだでみたらすごく面白くて、お会いした事もないのに、勝手に“同志”だとシンパシーを感じて(笑)。「ぜひ解説を書いてほしい」と出版社を通して僕からオファーをさせていただきました。本当に良い解説を書いていただきましたね。

――劇中作品の『政権☆伝説』の特設サイトも公開されていますが、凝ったつくりになっていますよね。

松澤 実は、『政権☆伝説』に一番力を入れたといっても過言ではありません(笑)。イラストはプロのイラストレーターさんに、サイトデザインやロゴは全部デザイナーさんに発注しているんです。キャラクターデザインが上がってきたときは、あまりの完成度の高さに思わず笑ってしまうくらい、力を注いでくださって。スタッフさん全員の気合の入れ方が半端じゃなかったです。スピンオフも色々やっていけたらいいなぁ……!

*  * *

 後編では、創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについて、松澤氏に引き続き話を伺っていく。
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
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舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏が明かす、制作のウラ側――「元モー娘。新垣里沙は、バケモノのような女優」<前編>

 昨年8月、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)という斬新なタイトルの舞台が上演され、演劇ファン、俳優ファンに衝撃が走った。

 タイトルにある「ガチ恋」とは、自分の一推しの俳優やアイドルを意味する“推し”に、本気(ガチ)で“恋”しているオタク(ファン)のことを示すオタク用語だ。同様に、「沼」はその対象から抜け出せず、沼のようにどんどん深みにハマっていくことを表す言葉。つまり、この舞台は「俳優に恋をしているオタク」の物語だ。

 主人公・りさ子を演じたのは、元・モーニング娘。の新垣里沙。国民的アイドルだった彼女が“若手俳優オタク”を演じ、俳優とファンの泥沼愛憎劇を繰り広げるということで賛否両論を呼んだが、舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、このたび小説家デビューを果たした松澤くれは氏を直撃! 今だから話せる舞台の裏側や、公演中に起こった“アノ”騒動、小説のみどころについて、話を伺った。

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

* * *

■客席は、ある種“カオス”だった

――このたびは、出版おめでとうございます。

松澤くれは氏(以下、松澤) ありがとうございます。

――まずは、この作品が生まれたキッカケについてお聞かせください。

松澤 元々、元モーニング娘。の新垣里沙さんと、2013年と15年に『殺人鬼フジコの衝動』(以下、フジコ)という舞台でご一緒して、「また何か一緒にやりたいね」と話していたんです。

 これまで新垣さんを主役にした書下ろし作品に挑戦したことがなかったので、じゃあ、あらかじめ新垣さんが演じる役を作ってから、物語を作ってみようと思いまして。元々「俳優とガチ恋ファン」という構想が頭にあったので、「元モー娘。のリーダーが地味なファンの子を演じるのを観たい!」とストレートに新垣さんにお伝えしたら、「やってみたい!」と。それから「二人でこういうのやりたいんですけど……」っていうのをSNSに書いたら、『フジコ』のプロデューサーさんが食いついてくださって舞台化が実現しました。

――舞台を終えて半年以上経ちますが、改めてご感想は?

松澤 まずは、無事に終えられてよかった……(笑)。本当にたくさん、予想以上のお客様に見ていただくことができました。

――客席の反応はいかがでしたか?

松澤 同じシーンで泣いている女の子がいれば、笑っているおじ様がいたり、お客様の反応がこんなに分かれる舞台は初めてで、強烈に印象に残っています。笑う人もいれば笑わない人もいるといった反応の違いは今までにもありましたが、同じシーン見ながら、捉え方がここまで真逆になるんだと驚きました。そういった客席のある種の“カオス”現象が、この作品に対する一つの答えなのかなと実感しました。

 お客様一人ひとりの顔を見ることが脚本・演出家としての責任だと勝手に思っていたので、全公演を客席後方で見て、終演後は出口に立ったんですが、「すごく面白かったです」って話しかけてくれる人がいたり、中には「納得いかないから話しませんか?」と、十数分ロビーでお話ししたこともありました。

 あとは、皆さんSNSで感想をものすごい長文で書いてくださって、その観劇レポを読んだレポみたいなものまで生まれていて(笑)。本当にたくさんの方が、自分の感想を自分の言葉で表現してくれた作品でした。

 会場にアンケート用紙を用意しなかったのも、そういった意図からです。この作品に限らず、僕はアンケートを取りません。見た感想を僕ではなく、周りの人にSNS上で広めてほしいんです。良いことも悪いことも、そのまま素直に感じたことを自由に書いて、皆さんで意見交換をしてほしいので、特にこの作品には、そのやり方が合っていたのかなと思っています。

――ブログ等を拝見させていただきましたが、キャスティングが難航したそうですね。

松澤 僕もプロデューサーから聞きました。いや~、断られまくりだったらしいですね(笑)。僕は、脚本・演出なのでキャスティングにはあまり関わりませんが、以前ご一緒した方がキャスティングされていたり、僕が「この人とご一緒してみたい!」と推薦させていただいた方が何名かいらっしゃいます。元々役は用意していましたが、演じる俳優の名前をそれぞれ役名に入れて、本人のキャラに寄せた部分もあります。

――新垣さんファンの反応を見ると、「新しいガキさんが見れた」という声もありました。

松澤 こういう役は、僕しか振らないと思うので(笑)。良い意味で、バケモノのような女優さんなので、もっといろんな彼女を見たいですね。本当に素敵な役者さんです。

――篠戸るる役を演じた階戸瑠季さんも、大変な役柄だったんじゃないかなと感じましたが……。

松澤 それが、階戸さんは、「やりたいです!」と二つ返事で引き受けてくださったんですよ。階戸さんをはじめ、本当に全キャストにメチャクチャ感謝をしています。オファーを受けてくださったということは、僕とプロデューサーがやりたいことをきちんと汲んでくださったわけですから。

■「告知したときが一番、叩かれた」

 

――「ガチ恋」というタイトルにかなり衝撃を受けました。作品を上演するにあたって、さまざまな意見があったかと思いますが、いかがでしたか?

松澤 業界の反応は、「そういうのやったらダメだよ」「何やってんの!?」と(苦笑)。「やっていいことと、悪いことがあるよ」といった目では見られましたね。最初に告知したときが一番、叩かれました。

 公演日程と劇場程度の内容だったんですけど、やはりタイトルのインパクトが強かったようで、「直ちにやめてください」「オタクを茶化すな」と、Twitter のDMで脅迫されたこともありました(苦笑)。僕は、基本、シリアスな作風が多いんですが、それを知らない方々は、コメディー作品だと思ったようで、実際に作品を見てもらうまでは分かってもらえないだろうなと覚悟はしていました。もちろん、「すごく面白い題材」って言ってくださる方もいらっしゃいましたが、告知の段階では、結構ネガティブな意見の方が多かったですね。

――でも、いざ公演が始まると、ネット上で評判がどんどん感想を拡散されて、連日たくさんの方々が当日券を求めて劇場に列を作ったとか。

松澤 そうなんですよ。毎ステージたくさんの方に並んでいただいて、チケットの当選倍率は20倍超えだったと聞きました。皆さんの口コミのおかげでもありますね。それぞれ受け取り方は違うと思いますし、面白いと思う人もいれば、面白くないと思う人がいる中で、見た人には僕がやりたいことは伝わったのかなって。そう思うことができたのは救いでした。

――公演中には、ファンの方が松澤さんに贈ったスタンド花が、誰かの手によって壊されてしまうという悲しい事件もありましたよね。

松澤 あの件は、本当にショックで……。これは自分の中できちんと消化しないといけないなと思いブログを書いたら、たくさんの反響をいただきました。でも、「自分で壊して話題性を狙ったんでしょ?」なんて言われてしまって。ただ、僕のことを元々ネガティヴに捉えている人は、当然そうなるよなと。そう思った時に、言葉を尽くせば伝わるっていうのは、欺瞞だなって思ったんです。こっちが心を尽くして話した言葉でも、どう受け取るかは相手の自由ですから。

 そういう意味では、精神的なダメージは結構大きかったんですが、そこから色々考えることもできましたし、現場はすごく楽しかったです。役者さんとみんなで和気あいあいとしていました。

■「現実」と「リアリティ」はイコールではない

 

――今作で、松澤さんが一番こだわった部分は何ですか?

松澤 「語彙」です。俳優の言葉づかいと、ファンの方たちの言葉づかいを意識しました。Twitterにおける「本アカ」と「愚痴アカ」の語彙の使い分けには特に気をつけましたね。小説版では、舞台とは違った小説ならではのある“仕掛け”があるので、読んでくださった方は、皆さん驚かれるかと思います!

――「松澤さん、よく見ていらっしゃるな~」と、投稿内容の一つひとつにリアリティを感じました(笑)。

松澤 でも、あまり具体的な出来事などは追わないようにしたんです。とはいえ、勝手に入ってくる情報もあるので、自分からは調べずに、なるべく情報を入れすぎないようにしましたね。よくある“匂わせツイートをしてカノバレ”騒動も作中に出てきますが、完全に妄想なので、もし現実にああいうことが起きていても、偶然被っているだけなんです。

――りさ子のオタク友達には遠征組の子がいたり、原作厨がいたり、「こういう服装の人、劇場でよく見るな」というファッションだったりと、登場人物のキャラクター設定にも“あるある”要素が詰め込まれているなと感じました。

松澤 具体的なモデルはいません。でも、僕自身オタクなので、ジャンルは違えどもある程度の知識はありますし、衣装のブランドとか、細部までこだわってしまうことはよくあります(笑)。「分かる~!」って共感していただくだけでも、楽しんでいただけるかなって。

 俳優達の楽屋でのやりとりは、今回出演していない知り合いの俳優に、雑談の中で色々聞いたりもしましたが、例えば「プレゼントは何を貰ったらうれしい?」など、細かいことは聞きませんでしたね。「スタバカード、ありがとうございます!」みたいなツイートとか、よく見るなぁ、よく貰っている=みんな嬉しいのかな? とかいろいろ考えてたときに、そういう俳優がいても不思議じゃないなと。ただ、現実にいるかどうかは分からない。

「現実」と「リアリティ」は決して同じものではないし、“特定の誰か”を明確にせず、余白を残したほうが面白いと思うんです。

――確かに、どこまでが実像でどこからが虚像なんだろうって考えるのが楽しかったです! 例えば、公演を見たファンが「あそこがよかった!」って盛り上がっていても、実際、俳優たちの手ごたえとしては、「微妙だったな」って温度差があったり……(笑)。

松澤 正直、それはありますね(笑)。毎回必ずベストを目指しますが、人間なので、むしろ変わらないことはできませんし、試行錯誤を積み重ねた結果、微妙な出来になってしまったり、うまくいかずに「悔しいな」って思っていた時に、お客様から、「今日が一番よかった」って言われることはもちろんあるし、その逆もあり得るので(笑)。

――そう考えると、ファンって、俳優たちのことを分かっているようで分かっていないんですよね(笑)。

松澤 そうなんですよね(笑)。“知りたい”と思う一方、“でも他人のことは、その本人にしか分からない”っていうのが、この作品の根幹にあります。

――松澤さんは、「俳優」と「ファン」は、どういう関係性だと思われますか?

松澤 まさに、そこは、小説を読んでいただきたいです! ラストの翔太の言葉を、僕の考えとして受け取ってもらえたらうれしいですね。

■“容姿と表情”“役者の演技”を、いかに自分の言葉で伝えるか

 

――小説の出版の話は、いつ頃からあったんですか?

松澤 担当編集さんが舞台を観に来てくださって、僕も「小説にしたい」という気持ちがあったので、すぐに打ち合わせをして「じゃあ、2カ月で第一稿を書いて、年明けには形にしましょう」と、ものすごいスピードで話が進みました。去年の秋はずっと原稿を書いていましたね。

 役者さんが演じていると、もうパッと見で伝わるじゃないですか。でも小説では、今どんな顔をしていてどんな服を着て……というのを、細かく書かないと伝わらない。舞台では役者さんの演技に委ねる部分も、すべて自分の言葉で表現しなければならないので、“容姿と表情をいかに伝えるか”に気をつけました。

――小説は、舞台版とは異なる結末を迎えますよね。

松澤 舞台は、絶対に劇場でしかできないことをやったので、小説なら小説でしかできない終わり方にしたかったんです。最後に“あの一文”がくるっていうのが、小説の結末だなって思ったので、思い切って変更しました。

 演劇の良さと小説の良さっていうのを最大限引き出したいなと思いながら、両方とも作りました。舞台版はDVDで、役者さんの“演技そのもの”を見ていただきたいですし、小説版は、りさ子の心情の移り変わりを追体験してほしい。また、小説は舞台版と比べると俳優サイドがすごく詳しく描かれているので、りさ子ではない、もう一人の主人公に注目していただだければ。

――最後には、「劇団雌猫」さんによる解説もありますが、どういったつながりで?

松澤 ちょうど『りさ子』の稽古している時に、『浪費図鑑』(小学館)という面白い本が出たらしいと聞いて、影響を受けたくなかったので、そのときは読まなかったんです。それで、後日読んだでみたらすごく面白くて、お会いした事もないのに、勝手に“同志”だとシンパシーを感じて(笑)。「ぜひ解説を書いてほしい」と出版社を通して僕からオファーをさせていただきました。本当に良い解説を書いていただきましたね。

――劇中作品の『政権☆伝説』の特設サイトも公開されていますが、凝ったつくりになっていますよね。

松澤 実は、『政権☆伝説』に一番力を入れたといっても過言ではありません(笑)。イラストはプロのイラストレーターさんに、サイトデザインやロゴは全部デザイナーさんに発注しているんです。キャラクターデザインが上がってきたときは、あまりの完成度の高さに思わず笑ってしまうくらい、力を注いでくださって。スタッフさん全員の気合の入れ方が半端じゃなかったです。スピンオフも色々やっていけたらいいなぁ……!

*  * *

 後編では、創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについて、松澤氏に引き続き話を伺っていく。
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
https://uwanosora-hiasobipray08.jimdo.com

「連絡帳の自作」を保護者に指示――“時代錯誤”な小学校と“よき母になりたい”親はなぜすれ違う?

 先日、小学1年生の子どもを持つという、とあるTwitterユーザーが、学校から「指定のノート全ページに、赤ペンでラインを引いて連絡帳を作ってください」といった指示を受けたという内容のツイートを投稿し、ネット上を騒がせた。連絡帳とは一般的に、児童が翌日の持ち物や予定などを書き記すノートで、文房具店には専用のノートも販売されており、誰もが小学生時代に一度は使用したことがあるだろうメジャーなもの。しかしそれを、保護者が自作しなければならないという話は「初めて聞いた」と驚く人が多く、「なぜ保護者にこんな苦行を」「市販の連絡帳を買えばいいのに」「この文具メーカーと癒着しているのではないか」と、批判の声がネット上を渦巻いている状況だ。

 投稿者は、埼玉県さいたま市在住とみられる。周辺の学校でも同様の指示がされているそうだが、同じさいたま市の小学校に子どもを通わせている別の人物からは、「うちの地域ではない」との声も少なくない。つまり、この保護者による連絡帳づくりは、さいたま市のごく一部の小学校で行われているものとみられ、ネット上には、「さいたま市教育委員会は把握しているのか?」といった疑問も出ている。

 そこで、幼児教育、小学校教育、中学校教育、国際教育等にかかわる事業を行っている同市教育委員会の「学校教育部指導1課」に問い合わせたところ、「(連絡帳についてそのような指示を出している小学校については)把握していません」とのこと。学校が独自に行っている指示のようだが、“児童の持ち物に名前を記入する”のと同様に、「子どもを育んでいくために、学校からご家庭に協力を依頼するものの1つではないか」という。その依頼内容については、各校の判断に委ねられているそうだ。

 小学校が“子どもを育んでいく”場であるのは、学校側と保護者側の共通認識だろうが、それでも、市販の連絡帳をなぜ使用してはいけないのかという疑問は拭えない。投稿者の子どもは小学1年生のため、まだ文字のサイズやバランスの調節ができず、市販用は使いづらいとも想像できるが、わざわざ保護者がラインを引かなくてはいけない理由には当たらないと感じる人も多いだろう。

 学校からの依頼が、保護者の許容範囲を超えてしまう――それは、今回の連絡帳の一件に限ったことではなく、全国各地で見られる現象のようだ。

 「(連絡帳の話を知って)脱力してしまいましたね。『いつの時代の話かな?』と思って、あらためて確認して、『あ、やっぱり今年の話なんだ』って(笑)」と語るのは、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(ともに太郎次郎社エディタス)などの著者であるジャーナリストの大塚玲子氏。保護者が学校側からの依頼に慌てふためいてしまうという事例を、次のように解説してくれた。

「例えば、算数セットの数え棒(数を数える学習や、図形作り、長さ比べ、立体図形作りなどに用いられる棒。数十本~100本で1セットとなっている)への名前つけ。ものすごく小さな細長い専用のシールがあって、それにペンで名前を書いて一本一本に貼るという作業で、実際に私もやったんですが、途中で『何なんだろう、これは……』と、ぼう然としてしまいました。Twitterなどを見ていると、同じく数え棒への名前つけに苦労されている方をよく見かけますね。もちろん、名前が書いてあった方が、もし失くしても持ち主の元に戻ってきやすいというのはわかるんですが、それにしても数え棒は名前を貼るのに不向きだと思うんです」

 ほかにも、「明日の図工で使うからと、“2Lのペットボトル”や“粘土”“牛乳パック”などを突然持ってきてくださいといわれ、苦労する保護者もいる」そうで、「私も仕事から疲れて帰って来て、夜、泣きながら紙粘土を買いに出たことがあります(笑)」とのこと。

「そのときのお母さんは、『何なの学校!?』『何なの子ども!?』という心境なのでは。学校は、2~3日前に伝えていたのに、子どもが忘れていた場合もあるかもしれませんしね。正直、低学年だったら、ちゃんと親に伝えられない場合もあるので、『1週間前までにはにお便りで教えてもらわないと対応できない』という保護者は多いような気がします。あと、平日日中に保護者会や参観日が設定され、『仕事が休めない!』と困り果てる保護者も多いのではないでしょうか」

 共働きの家庭が増えている中、確かに、“ちょっとしたこと”でも、それが積み重なると保護者にとって多大な負担になることはあるだろう。では、なぜ学校側の“これくらいはお願いしても大丈夫”という認識と、保護者の許容範囲に大きなズレが生じてしまうのだろうか。

「まず先生たちの思考停止状態があると思います。『もし自分が保護者側だったらどう思うのかな?』と、ちょっと想像したら、『すぐ変えなければ』と感じるはずなんですが。きつい言い方ですが、『学校は、“考えないことが大事”とされ、“言われたことをやるのが最優先”の世界なのでは』と思ってしまいます。学校の先生が多忙すぎるとよくいわれるのも、頭を使って考えれば、改善される部分もあるのではないかと。PTAでもそうなんですが、その場では『前年通りにやる』のが、一番話がスムーズで、何か変えるとなるとさまざまな調整が必要となるんです。忙しい中だと特に、“前年通り”“言われた通りにやる”方に流されてしまうのではないかと感じます。そうやって、横着してきた結果、保護者への負担も大きくなってしまったのではないでしょうか」

 負担を減らすために何かを変えようとすると、逆に手がかかりすぎて大変。そんな背景が学校にはあるのだろうか。しかし一方で大塚氏は、保護者側にも責任があるという。

「保護者も、学校側に要望を“伝えてこなかった”んです。確かに、忙しそうにしている先生に言いづらいのはわかります。特に子どもが入学したばかりだと、学校側の指示をこなすのにいっぱいいっぱいで、とても言う暇がない。お母さんたちって、基本的に、“いいお母さんにならなきゃプレッシャー”をものすごく受けていて、ノートにラインを引くとか、数え棒への名前つけだとかでも、子どものためにやらなきゃいけないといわれると、断れない。『おかしい』という感情を殺してしまうんですね。でも、その『おかしい』という気持ちを、学校側に言わないことには、何も変わらないですから」

 今の保護者たちは、学校側から「モンスターペアレンツ」と見られてしまうことをとても恐れている傾向があり、一方、学校側もモンスターペアレンツに目をつけられないように気を使っている面があるという。そういった背景から、保護者も先生も、お互い「こういった点が負担になっているから、改善しましょう」と言いづらい空気が出来上がっているようだ。

「保護者と先生が、“お互いに負担を減らして、楽になる方法”を考えられるようになるといいですね。例えば、数え棒の名前つけにしても、もっとほかにやり方があるはず。数え棒ってたいてい、小1でしか使わないので、例えば、1人1セットではなく、みんなで共有のものにして、数本なくなったら、次の年に買い足せばいいと思います。学校側は、『子どもが数え棒をなくしたときに、保護者から苦情がくる』という理由で、名前つけを指示していると思うのですが、であれば、『子どもが数え棒をなくしても、学校に文句言いません』と保護者のコンセンサスを取ってもいいかもしれません。それに、自作の連絡帳だって、最初からそういうノートを買えばいいし、そもそもさいたま市の一部の小学校以外の子は、普通に連絡ノートを使っていますよね」

 古くから、努力は美徳であるとされる日本。特に学校では、その考えが深く浸透している気もするが、保護者の不必要な負担が減ることは、「何より子どものためになります。ノートにラインを引いたり、名前つけの作業がなくなれば、その分子どもと遊べますもんね」と大塚氏は言う。冷静に考えて、子どものために何をすべきか――それを考えることが、保護者と学校双方にとって、思考停止状態から脱却する突破口となるのかもしれない。

「連絡帳の自作」を保護者に指示――“時代錯誤”な小学校と“よき母になりたい”親はなぜすれ違う?

 先日、小学1年生の子どもを持つという、とあるTwitterユーザーが、学校から「指定のノート全ページに、赤ペンでラインを引いて連絡帳を作ってください」といった指示を受けたという内容のツイートを投稿し、ネット上を騒がせた。連絡帳とは一般的に、児童が翌日の持ち物や予定などを書き記すノートで、文房具店には専用のノートも販売されており、誰もが小学生時代に一度は使用したことがあるだろうメジャーなもの。しかしそれを、保護者が自作しなければならないという話は「初めて聞いた」と驚く人が多く、「なぜ保護者にこんな苦行を」「市販の連絡帳を買えばいいのに」「この文具メーカーと癒着しているのではないか」と、批判の声がネット上を渦巻いている状況だ。

 投稿者は、埼玉県さいたま市在住とみられる。周辺の学校でも同様の指示がされているそうだが、同じさいたま市の小学校に子どもを通わせている別の人物からは、「うちの地域ではない」との声も少なくない。つまり、この保護者による連絡帳づくりは、さいたま市のごく一部の小学校で行われているものとみられ、ネット上には、「さいたま市教育委員会は把握しているのか?」といった疑問も出ている。

 そこで、幼児教育、小学校教育、中学校教育、国際教育等にかかわる事業を行っている同市教育委員会の「学校教育部指導1課」に問い合わせたところ、「(連絡帳についてそのような指示を出している小学校については)把握していません」とのこと。学校が独自に行っている指示のようだが、“児童の持ち物に名前を記入する”のと同様に、「子どもを育んでいくために、学校からご家庭に協力を依頼するものの1つではないか」という。その依頼内容については、各校の判断に委ねられているそうだ。

 小学校が“子どもを育んでいく”場であるのは、学校側と保護者側の共通認識だろうが、それでも、市販の連絡帳をなぜ使用してはいけないのかという疑問は拭えない。投稿者の子どもは小学1年生のため、まだ文字のサイズやバランスの調節ができず、市販用は使いづらいとも想像できるが、わざわざ保護者がラインを引かなくてはいけない理由には当たらないと感じる人も多いだろう。

 学校からの依頼が、保護者の許容範囲を超えてしまう――それは、今回の連絡帳の一件に限ったことではなく、全国各地で見られる現象のようだ。

 「(連絡帳の話を知って)脱力してしまいましたね。『いつの時代の話かな?』と思って、あらためて確認して、『あ、やっぱり今年の話なんだ』って(笑)」と語るのは、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(ともに太郎次郎社エディタス)などの著者であるジャーナリストの大塚玲子氏。保護者が学校側からの依頼に慌てふためいてしまうという事例を、次のように解説してくれた。

「例えば、算数セットの数え棒(数を数える学習や、図形作り、長さ比べ、立体図形作りなどに用いられる棒。数十本~100本で1セットとなっている)への名前つけ。ものすごく小さな細長い専用のシールがあって、それにペンで名前を書いて一本一本に貼るという作業で、実際に私もやったんですが、途中で『何なんだろう、これは……』と、ぼう然としてしまいました。Twitterなどを見ていると、同じく数え棒への名前つけに苦労されている方をよく見かけますね。もちろん、名前が書いてあった方が、もし失くしても持ち主の元に戻ってきやすいというのはわかるんですが、それにしても数え棒は名前を貼るのに不向きだと思うんです」

 ほかにも、「明日の図工で使うからと、“2Lのペットボトル”や“粘土”“牛乳パック”などを突然持ってきてくださいといわれ、苦労する保護者もいる」そうで、「私も仕事から疲れて帰って来て、夜、泣きながら紙粘土を買いに出たことがあります(笑)」とのこと。

「そのときのお母さんは、『何なの学校!?』『何なの子ども!?』という心境なのでは。学校は、2~3日前に伝えていたのに、子どもが忘れていた場合もあるかもしれませんしね。正直、低学年だったら、ちゃんと親に伝えられない場合もあるので、『1週間前までにはにお便りで教えてもらわないと対応できない』という保護者は多いような気がします。あと、平日日中に保護者会や参観日が設定され、『仕事が休めない!』と困り果てる保護者も多いのではないでしょうか」

 共働きの家庭が増えている中、確かに、“ちょっとしたこと”でも、それが積み重なると保護者にとって多大な負担になることはあるだろう。では、なぜ学校側の“これくらいはお願いしても大丈夫”という認識と、保護者の許容範囲に大きなズレが生じてしまうのだろうか。

「まず先生たちの思考停止状態があると思います。『もし自分が保護者側だったらどう思うのかな?』と、ちょっと想像したら、『すぐ変えなければ』と感じるはずなんですが。きつい言い方ですが、『学校は、“考えないことが大事”とされ、“言われたことをやるのが最優先”の世界なのでは』と思ってしまいます。学校の先生が多忙すぎるとよくいわれるのも、頭を使って考えれば、改善される部分もあるのではないかと。PTAでもそうなんですが、その場では『前年通りにやる』のが、一番話がスムーズで、何か変えるとなるとさまざまな調整が必要となるんです。忙しい中だと特に、“前年通り”“言われた通りにやる”方に流されてしまうのではないかと感じます。そうやって、横着してきた結果、保護者への負担も大きくなってしまったのではないでしょうか」

 負担を減らすために何かを変えようとすると、逆に手がかかりすぎて大変。そんな背景が学校にはあるのだろうか。しかし一方で大塚氏は、保護者側にも責任があるという。

「保護者も、学校側に要望を“伝えてこなかった”んです。確かに、忙しそうにしている先生に言いづらいのはわかります。特に子どもが入学したばかりだと、学校側の指示をこなすのにいっぱいいっぱいで、とても言う暇がない。お母さんたちって、基本的に、“いいお母さんにならなきゃプレッシャー”をものすごく受けていて、ノートにラインを引くとか、数え棒への名前つけだとかでも、子どものためにやらなきゃいけないといわれると、断れない。『おかしい』という感情を殺してしまうんですね。でも、その『おかしい』という気持ちを、学校側に言わないことには、何も変わらないですから」

 今の保護者たちは、学校側から「モンスターペアレンツ」と見られてしまうことをとても恐れている傾向があり、一方、学校側もモンスターペアレンツに目をつけられないように気を使っている面があるという。そういった背景から、保護者も先生も、お互い「こういった点が負担になっているから、改善しましょう」と言いづらい空気が出来上がっているようだ。

「保護者と先生が、“お互いに負担を減らして、楽になる方法”を考えられるようになるといいですね。例えば、数え棒の名前つけにしても、もっとほかにやり方があるはず。数え棒ってたいてい、小1でしか使わないので、例えば、1人1セットではなく、みんなで共有のものにして、数本なくなったら、次の年に買い足せばいいと思います。学校側は、『子どもが数え棒をなくしたときに、保護者から苦情がくる』という理由で、名前つけを指示していると思うのですが、であれば、『子どもが数え棒をなくしても、学校に文句言いません』と保護者のコンセンサスを取ってもいいかもしれません。それに、自作の連絡帳だって、最初からそういうノートを買えばいいし、そもそもさいたま市の一部の小学校以外の子は、普通に連絡ノートを使っていますよね」

 古くから、努力は美徳であるとされる日本。特に学校では、その考えが深く浸透している気もするが、保護者の不必要な負担が減ることは、「何より子どものためになります。ノートにラインを引いたり、名前つけの作業がなくなれば、その分子どもと遊べますもんね」と大塚氏は言う。冷静に考えて、子どものために何をすべきか――それを考えることが、保護者と学校双方にとって、思考停止状態から脱却する突破口となるのかもしれない。