「男ナシで生きていける強い女」はゴールじゃない!? 加藤ミリヤが“女”たちを鼓舞!

 2016年、「“女子”の呪縛ワードを斬る」企画にて、電撃サイ女ファミリー入りした加藤ミリヤ(↑)ねえさん。去る3月には『I HATE YOU -EP-』、5月にはシングル「ROMANCE」を発表し、6月には20代最後のアルバム『Femme Fatale』のリリースが控えるねえさんの新作を聞きながら、編集部内も「相変わらずミリヤってる~!」と歓喜に震えていたところ、「ちょっとサイゾーウーマンさん、女性向けサイトとして“女性のエンパワーメント”に対して、どう思っているのかしら?」なんて果たし状が届きまして。私、その話を詳しく聞きに行ってまいりました!

――昨今のミリヤのテーマは「女性のエンパワーメント」のようですが、そう思ったきっかけからお聞きします。

ミリヤ 三十路を目前にしているという年齢的な考えからきているのかもしれないけど、内側から細胞がふつふつと変化している感じがするんです。新しく生まれた細胞じゃなく、私の体の中にもともとあった細胞が、いま改めて騒ぎだしている感じ。10代の頃にメラメラしていた感覚に近いのかな。その根底にあるのが、女としての強さ、女として生きていくことの意味。すごく、考えちゃう。

 最近同い年の女の子と話をする機会が増えたんですね。その中でも京都で芸妓さんをやっている親友の子がいるんですけど、「女性の多くは28~29歳までに結婚や出産を経験し、30目前に一旦、結婚ラッシュが落ち着くよね」って話になって。決して、その行為自体を咎めているわけではないんですけど、「なんなんだろう、これって?」みたいな感覚にとらわれるんです。結婚も出産も女性にとってはステージが変わるタイミングですよね。もちろん、私はまだどちらも経験していない。周りのみんなが結婚や出産という選択をしている中、私はこれからキャリアを重ねていき、何かを得て、何かを捨てていくのかな?とかも漠然と考えてる。ただ、そうであるからには、強く生きていたし、発信していきたいという気持ちが強まってきているんです。

――結婚や出産自体が、女性として“保守”に走っているとは思っていないけど、未経験のミリヤとしては、何か思うところがある、ってことですね。

ミリヤ そう。強い女性に憧れていたのは10代の頃からで、男性社会の中でも快活に意見を言い放って、大勢の人を目の前にしても怖じ気づかない女性は素敵だなって思う。04年に16歳でデビューをしたとき、日本はジャパニーズR&Bブームの真っ只中で、女性の弱さを歌うアーティストは周囲に誰もいなくて、ライブの楽屋でも男性スタッフに強くあたるアーティストばっかり(笑)。そこで「この世界では思ったことを言葉にしなくてはいけない、強くないと生き残れない!」と思ったんです。実際に、「あなたはどんなアーティストになりたい?」「あなたはどんな女性でありたい?」と問いかけたら、0.5秒で回答が戻ってくるよう“即答女子”たちが活躍していたと思うんです。もはや、質問をすべて言い終える前に、食い気味で返ってきちゃうくらい。

――すると、現代を生きる女性からは、そういった強さ、たくましさがあまり感じられないと?

ミリヤ いや、弱いとは思ってないの。ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、私って意外と古いタイプの人間で、男性のほうが強くて偉くて当たり前、って思っちゃってるんです。10代の頃は「男がいなくても生きていける強い女になって稼いでやる!」と思っていたけど、実際そうなれたときに、「あれ……これって私のゴールじゃないな」って感じて。もうすぐデビューしてから15年ですけど、10年目くらいまで気づかなかった。正確には、そこに到達するまで気づけなかったのかもしれない。そして、その時期まで私には“結婚”という選択肢が入ってこなかっただけなんです。今の私は、未経験のことは経験してみたいと思うから、結婚もしてみたいし、子どもも生んでみたいと思う。仮に私が結婚したら、さっき話したように、男性が強くて当たり前だから、常に夫の三歩後ろを歩くタイプになるんだと思う。

――それは世が思い描くミリヤ像からは「意外」と思われそう。

ミリヤ 私の母親は「こんなに素敵な男性と結婚して出産もできて、これぞ女の幸せ」というタイプの女性なんです。小さい頃の私は、その考えにまったく共感できなかった。ただ、デビューして10年が経過して、私が26歳のとき、「お母さんはこの年で私を生んだんだよなあ」って気持ちになって。その3年後には父が他界して、それからは女手ひとつで家庭を支えてきたんだよな、って。そこで初めて母親に対して尊敬の念が芽生えた。「私は結婚という選択をしなかったけど、働く女性としてがんばろう。どんなことにもめげずに、もっと広い意味での女性としての強さを提示していきたい」と強く思えるようになったんです。

――なるほど、ミリヤの言うエンパワーメントの全貌が見えてきました。それが新作のリード曲「I HATE YOU」のMVの世界観にもある“バブル時代”を謳歌した女性からは、そうした女の強さがうかがえると。

ミリヤ 私は88年生まれで、日本はバブル真っ只中。もちろん、なんの記憶もないけれど、「私が生まれた年の日本は、どんな感じだったんだろう?」って。その頃の女性って、すごく輝いて見えるし、女が女であることを武器にして、まったく恥じる気配もない。それこそさっき話したような、自信に満ち溢れる即答女子ばかりが闊歩しているイメージ。

――ミリヤはMVの中でバブル時代のアイドルになりきっていますが、これは確実に工藤静香オマージュであるのは間違いありません。確かに工藤静香は、名前のごとく“静か”でおしとやかなアイドルのイメージだったけど、歌う曲のタイトルは「抱いてくれたらいいのに」「くちびるから媚薬」とか、完全女を武器にしたような曲が多い印象。

ミリヤ 静香さんのほかにも、小泉今日子さんや松田聖子さんなど、当時の女性アーティストをたくさん見て、「もう、断然静香さん!」ってなりました。

――2012年のシングル「AIAIAI」のカップリングで「慟哭」(※工藤静香が93年にリリースしたシングル)をカバーしていたことは、ある意味、先見の明ですね。

ミリヤ 下がり眉、常に困った表情という共通点もありますからね(笑)。私がもしその時代にアーティストを目指していたら、絶対に静香さんに影響を受けていたんだろうな、って思います。

――すると、昨今のミリヤの「女性のエンパワーメント」を感じない女性に苦言を呈するなら?

ミリヤ ううん、逆に苦言はなくって。むしろこれまでは「ああしろ! こうしろ!」って思う気持ちがあったけど、最近は気にならなくなっちゃって(笑)。「エンジョイ……エンジョイして!」って思うようになった。例えば、今、女をアピールする武器がインスタとかだと思っている子がいたなら、それは写真同様、フィルターがかけられた状態なんですよね。これは前回のウーマンのインタビューでも話したことですけど、やっぱり生身の姿で勝負するのが大事。ただ、その意識の高さは大切だとも思うんだけど、その意識をもっと違うところで使ったほうがいいんじゃないのかな、とは感じる。私も年齢のせいか、自撮りでキメ顔を作ることに恥ずかしさを覚えてきちゃって(笑)。

――そういう思いが『I HATE YOU -EP-』に込められている?

ミリヤ 何かに対して「大っ嫌い!」っていう気持ちを元に作った作品ではなくて、レーベルの社長やスタッフ、妻帯者の奥さんの気持ちになって曲を書こうと思ったんです。奥さんって、普段から些細なことで夫に対して怒りや憎しみを覚えたりするけど、実際に旦那さんがいないと困る、考えてみれば“大事な人”っていう気持ちも同時に持っていると思うんですね。「帰りが遅い」「浮気してるかもしれない」「愛されているか不安になる」――それって、実は究極の純愛だと思いませんか? 時には嫌いになりたい=I HATE YOU!だけど、その環境を捨てられない、結果的に嫌いになれない。「I HATE YOU」と「I LOVE YOU」は紙一重であって、好きだからこその「I HATE YOU」を歌いたかった。みんな、そういう思いを抱きながら生きているんじゃないかなって。なので、曲としては「愛の奴隷」という落としどころにしたかったんです。

――これまでの話を総括すると、加藤ミリヤというアーティストが持つ「強い女性でありながら、弱さは隠さず表に出してもいいじゃない」が、うまく具現化された作品になってますね。

ミリヤ かつ、「面倒くさそうなアーティスト」ってイメージは、常に持たれていたいかな(笑)。簡単に攻略できてしまったら、面白味に欠けますからね。

 デビュー10周年で起きた変化、そしていま騒ぎだしている細胞が、デビュー15周年を迎える2019年、どういった変化をもたらすのか? 「どんな年になるかわからないけど、すごく楽しみだし、何かチャンスもあるんじゃないかなって思ってる」と話すミリヤの眼光からは、とてつもない女性のエンパワーメントが感じられたのでありました。

加藤ミリヤ(かとう・みりや)
1988年、愛知県生まれ。2004年に「Never let go/夜空」でデビュー。BUDDHA BRANDやUAなどの名作をサンプリングした楽曲で注目を集める。自身のアパレルブランド「KAWI JAMELE」のデザイナー、小説家としても活躍。

※6月20日にはアルバム『Femme Fatale』発売! 初回生産限定盤 4,500円(+税) / 通常盤3,056円(+税)

“MILYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2018”
公演日時間:2018/6/22(金) 18:00 / 19:00
会場:STUIDO COAST

アラサー女性はなぜ「スナック」にハマるのか? 社会的背景と魅力を分析!

snackjoshi 中年オジサンたちの溜まり場のイメージが根強い「スナック」。しかし、近頃は1人でスナックを訪れる「スナック女子」が増えているという。お酒を飲むならほかにもいろいろな店があるのに、昭和の香り漂うスナックの何が女性たちを引きつけるのか? 「東洋経済オンライン」でスナックの魅力を広めるコラム『今夜もスナックが呼んでいる』を連載中で、スナックライターの五十嵐真由子氏に聞いた。

■女性の新たなコミュニケーションの場

 これまでは一般的な女性が足を運ぶ場所とは言い難い「スナック」だったが、2016年ごろから「Hanako」(マガジンハウス)、「OZmagazine」(スターツ出版)などの女性誌がスナック特集を大々的に組み始めたことをきっかけに、各地のスナックで徐々に女性客が増えてきていると五十嵐氏は指摘する。

「今年の2月に熊本県のイベントの一環として、全日本スナック連盟会長の玉袋筋太郎さんと女性限定のスナック講座を開いたところ、予想以上に応募者が殺到しました。参加者も20〜30代の比較的若い世代の人から50代の方もいて、幅広い年齢層がスナックに興味を持ち始めていると感じています」

 また、五十嵐氏によれば、スナック女子が増えている背景には、メディア効果のほかに、社会的背景も影響しているという。

「ここ数年は働き方改革が進み、残業が許されず定時に帰らされるケースが増えているせいか、会社帰りに同僚と飲むなどの、社内コミュニケーションが減っています。30代から40代で役職に就いている女性の場合は特に、部下と気軽に情報交換することに戸惑ったり、自分の弱い面をさらけ出すことに抵抗があったりするので、気軽に飲みにいけない。そこでスナックがひとつのコミュニティの場となってくるのです」

 スナックには、親と同じくらいの年齢のママやマスター、常連のお客さんがいて、近況報告や悩み事など、どんな話も聞いてくれる。そんな自分を解放できる場所、居心地のいい場所がスナックにあるということに女性たちが気づき始めたらしい。

 新たなコミュニケーションの場として、女性から人気を集めている「スナック」。しかし、ママの高齢化や採算が合わないなどの理由で店を閉めるケースも増えていて、年々全国で約1万店が淘汰されている。とはいえ、入れ替わるように若い女性の参入も増えつつあるという。

「スナックは居抜きでも始められますし、調理場もいらないので、比較的コストをかけずに開店することができます。お酒とカラオケ、簡単なおつまみさえあれば十分なので、飲食経験がなくても始めやすいんです」

 若いママが増えているのも、同年代に当たる「スナック女子」が増えている要因のひとつかもしれないと五十嵐さんは語る。

 ほかに、さまざまなコンセプトを掲げている変わり種のスナックも人気を呼んでいる。

「岩盤浴のある店や、占いが楽しめる店など、エンタメ色が強い個性的なスナックも増えています。あとは戦隊ものが好きな人たちが集まる店など、何かの趣味に特化したお店も多いですね」

 さらに五十嵐氏は、スナックの魅力として、明朗会計な上にコスパがいい点を挙げる。

「女性なら、飲み放題&カラオケ歌い放題2時間3,000〜4,000円くらいが相場です。行ったことがない人は驚くと思いますが、普通のカラオケよりも断然安くてお得なんですよ」

■常連さんが来る前の19〜20時がおすすめ

 最後に、スナックデビューを目指す女性に向けて、五十嵐氏からアドバイスをもらった。

「都心なら、スナック検索サイトを見て、ある程度下調べするといいでしょう。料金や店の雰囲気が載っていますので、自分に合いそうなスナックが見つけられると思います。地方の場合ですと、古典的ですが、飲食店の店員やタクシーの運転手さんにイチオシの店を聞くのが一番。ただ人気店だと、満席で入れないことも結構あるので注意が必要です」

 そして、行きたい店が決まったら、初心者でも入りやすい時間帯を狙って行くべきだと五十嵐氏は言う。

「初めての店なら、19〜20時ごろに行くのをおすすめします。遅い時間に行ってしまうと、すでに常連さんたちでにぎわっているので、その輪に入っていきづらいかもしれません。早めに店に行ってママと話しておけば、スムーズになじめるはずです」

 今の時代、SNSで簡単に人とつながることができる。しかし、女性たちはリアルなコミュニケーションを求めてスナックにたどり着き、日頃のストレスを発散しているようだ。
(福田晃広/清談社)

初体験はインド人、親に内緒で中国人と入籍……刺激を求める「ADHD女子」の恋愛遍歴とは?

 最近、よく目にするようになった「大人の発達障害」と、それに伴う「生きづらさ」。しかし、「生きづらさ」と一口に表されても、具体的にどのような悩みを抱えているのかよくわからない、という人も多いのではないだろうか? 自身の恋愛経験を通して“発達障害の生きづらさ”を漫画として描いているのが、ざくざくろさんだ(以下、ざくろさん)。2月には、インスタグラムやブログにアップされた漫画に描き下ろしを加えた単行本『ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴』(宝島社)が発売され、話題になっている。自身もADHD(注意欠陥/多動性障害)であるざくろさんに、過去の恋愛や発達障害ならではの苦悩、漫画を描く理由について聞いた。

■外からの刺激を受けたときだけ、脳のモヤが晴れる

 漫画『ウチにはクズがちょうどいい』は、ざくろさんの幼少期のエピソードやその後の恋愛譚を中心に描かれる、100%実話のコミックエッセイ。タイトルにもある通り、その恋愛遍歴はかなり“変”で破天荒だ。

 たとえば、バイト先のインドカレー店のコック・アンスール氏(30)と壮絶な初体験を済ませ、彼との交際中に中国に語学留学。その後、留学先で出会った中国人、通称「メガネ」と親に黙って入籍をするも、メガネの激しい束縛とDVに耐える結婚生活を送ることになるなど、かなりハードな恋愛遍歴が描かれている。

 実は、ざくろさんが恋愛でいばらの道を選んでしまうのは、ざくろさん自身の発達障害による部分が大きいという。

「ADHDの人は、刺激が足りないと覚醒しにくく、眠くなったりすることがあります。私の場合は、刺激がないと脳に“モヤ”がかかったような感覚になり、刺激を受けたときだけ、そのモヤが晴れて脳がスッキリするんです」

 ざくろさんは30歳のときに「ADHDと軽度のアスペルガー(現・自閉症スペクトラム)」という診断を受けており、ADHDの人はざくろさんのいう“スッキリ状態”になろうとして日常に刺激を求める傾向があるそうだ。刺激として作用するものは人それぞれで、覚醒するためにアルコールやドラッグに依存してしまう人も多いという。ちなみに「ADHD」には、集中力が続かない、忘れっぽいなどの「不注意」や、落ち着きがない「多動性」、思いついたままに行動をする「衝動性」といった症状があるそう。もう一方の「自閉症スペクトラム」は、集団行動が苦手だったり、人とのコミュニケーションを取るのが難しいなどの特徴があるという。

「ドーパミンやノルアドレナリンなど神経伝達物質の働きが異常なため、刺激を求めてしまうようです。また、私の場合は外国に行っていろいろな刺激を受けたときも、脳のモヤが晴れました。ただ、恋愛で刺激を求めると『ああ、こんなことになってしまった。どうしよう』という状態になり、最終的にはすごく疲れてしまうんです。その都度『もう疲れた、普通に生きたい』と思うのに、平穏なときを過ごしていると、またウズウズしてきて『刺激が欲しい、舞台に上がりたい!』って思っちゃうんです」

 穏やかな日々に物足りなさを感じ、ついハードな道を選んでしまうというざくろさん。ただ、彼女が“発達障害の生きづらさ”を感じるタイミングもまた、恋愛でトラブルが起きたときだったそう。

「認知症かと思うほど忘れっぽいことや、感情をコントロールできないことなど、全部死ぬほど厄介な症状でした。でも、やっぱり一番ツラかったのは、“苦労する”とわかっているパートナーをあえて選んだり、気がついたら親に内緒で中国人と結婚していたりと、自分の人生を自分で壊しにいってしまうことでした」

 漫画に描かれているのは、彼女が最も苦悩した時代のエピソードの数々。そう聞くと少し身構えてしまうが、ざくろさんの漫画はユーモアを交えて恋愛経験をつづっているのが特徴だ。たとえば、初体験の相手・インド人のアンスール氏とのファーストキスでは、吸引力が強すぎる彼のキスを「何コレ金角銀角のあのひょうたん!? ウチ今日死ぬんや」と死を覚悟したり、元夫・メガネのアソコを「万里の長城」にたとえたりと、独特な表現をしていることも人気の理由だ。

「多くの人に読んでもらうには、ギャグやユーモアを織り交ぜなければ興味を持ってもらえないと思ったので、漫画を描くときには暗い内容もなるべくポップにすることを意識しました。下ネタもたくさん載っていますが、それらは発達障害と関係ない人にも興味を持ってもらえるように描いただけなので、本当に読んでほしいのはそこではないんですよ」

 発達障害をどう伝えるか、どうすれば興味を持ってもらえるか。それを心がけながら漫画の構成を考えているという。そんな彼女が漫画をアップするブログやインスタグラムには、さまざまな感想が寄せられる。

「発達障害の人から『心のモヤモヤを言語化してもらえた!』と言われたり、発達障害ではない人からは『職場のADHDっぽい人、こんなこと考えてたのか!』という感想をいただいています。そんなコメントを見るのが生きがいになってきたので、今後も“わかりやすさ”を重視して、漫画を描いていきたいです」

■「心が病んでいるときこそ、創作のチャンス」

 「漫画を通して発達障害の人たちと健常者をつなぐ通訳者になりたい」と話すざくろさんだが、なぜ自身の恋愛経験を漫画化したのだろうか?

「今の夫はまるで仏のように優しくしてくれるので、再婚してからは平和な日々が続いていたんです。にもかかわらず、私は時々ものすごい虚無感に陥ったと思ったら、反対に『何か刺激のあることをしたい』という感覚に襲われる。エネルギーを持て余していて、夜中に自転車で爆走することもありましたが、満たされはしませんでした」

 自分自身でもコントロールできない怒りや悲しみが込み上げ、場所を問わず暴れてしまうこともあったという。

「ああ、もうこれは酒とドラッグに溺れるしかないなって思ったんですけど、酒もドラッグも別に興味なかったわ、と気がつきまして。それからいろいろ考えて、心が病んでいるときは創作のチャンスだな、と思ってセルフカウンセリングを兼ねて漫画を描き始めました」

 最近は「薬と老化のおかげで極端なことはしなくなりました」と、ざくろさん。彼女のインスタグラムのフォロワーは6万人を超え、多数寄せられるメッセージに救われていると語る。何より「強く優しい夫のおかげで、自分大好き人間になれた」という。

「夫が私の光の部分と影の部分も認めて愛してくれたから、というのは大いにあります。あとは、いろいろと調べた結果、自己肯定感の低さがすべての元凶だということがわかったので、自分で自分を褒めたり、自愛の本を読みまくったり、自己分析をしたりと、いろいろなことを試しました。自分で自分を愛さないと、他人も愛せないし、他人からの愛も受け取れないですからね。夫の存在と、自分を見直すこと、この両方がいい方向に作用して、自分大好き人間が完成しました」

 自分を愛するのはとてもつらく、長い時間を要する作業だったという。それでも、旦那さんと一生一緒にいたいという一心で努力を重ね、現在は、ほぼ暴れることはなくなった。

 読者の中には「自分は発達障害かも」と思いつつ、一歩を踏み出せずない人もいるはず。しかし「悩みや生きづらさを感じているなら、その原因をつきとめるためにも病院に行ったほうがいい」と、ざくろさんは話す。

「通院にはお金がかかるし、そもそもどこの病院に行けばいいのかわからない……など、いろいろなハードルはありますが、まずは『自分が発達障害だと知ること』『それを知ってどうしたいか?』を考えてみるといいかも。いまはネットで調べられるし、自治体の精神保健福祉センターなどでは無料で相談もできるなど便利になってはいますが、病院選びは重要です。本当はADHDなのに統合失調症と誤診されて、全然効かない薬を飲まされ続けたという話もあるので、ADHDのことがわかっているお医者さんのところに行かなきゃダメですよ!」

 どうやら、発達障害は、医師側の認知度にもバラつきがある様子。医師選びは慎重に行いたいところだ。また、自身の著書は発達障害の理解を深めるための“福祉の本”として活用してほしいと、ざくろさんは語る。

「この本は、私と同じ発達障害を持つ人や、その家族、あとは学校の先生など、教育に関わる人にも読んでほしいです。発達障害を持つ人は、健常者に比べて心の病も併発しやすく、自殺率も何倍も高いらしく、これは、目に見えない障害が原因で理解を得られず、周囲から浮いて孤独になっているせいだと思います。『発達障害』という言葉そのものはメジャーになってきましたが、まだまだ理解と呼ぶには程遠いと感じています。1人でも多くの人が発達障害を理解できるように、私は漫画を描き続けます」

 目に見えないだけに、他人はもちろん、自分自身ですら自覚するまでに時間がかかる発達障害。その入門書として、ざくろさんの著書を手に取ってみてはいかがだろうか。
(真島加代/清談社)

ざく・ざくろ
昭和59年生まれ、滋賀県在住。幼少期から謎の生きづらさを感じていたが、30歳のときにADHDと自閉症スペクトラムということが発覚。自身の半生をつづったインスタグラムが人気。3月に『ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴』(宝島社)を発売。
ざくざくろの絵日記

眞子さまは、なぜ小室圭さんに惹かたのか? 皇室ウォッチャーが“恋心”を読む

 いまだ世間の関心を集め続けている、秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期騒動。圭さんの母・佳代さんの借金トラブルや、小室親子の分不相応な金銭感覚を暴露した元婚約者A氏はすでに鳴りを潜め、小室親子に関する新情報は出ていない状況だが、一方で眞子さまは現在、どういったご心境にあるのだろうか。皇室ウォッチャー見解を聞いた。

――元婚約者A氏の暴露により、小室さん親子への世間の印象は地に落ちてしまった印象です。眞子さまの現在のご心境について、どのようにお考えでしょうか。

皇室ウォッチャーX氏(以下、X) 各週刊誌では「眞子さまの結婚のご意思は変わっていない」と報じられています。ただ、小室家のまつわるネガティブな情報が世間に垂れ流され続ける現状には、精神的に参っていらっしゃるかもしれません。結婚延期が決まった時点での圭さんに対する気持ちが100%だったとすると、今では60~70%くらいに下がっているでしょうね。延期決定からは月に一度しか会えていないようですし、周囲からの余計なお世話ともいえる「考え直した方がいい」などの“アドバイス”もお聞きになっているでしょうから。

――眞子さまは、圭さんのどこに惹かれていると思いますか?

X あくまで報道ベースでの話ですが、女性週刊誌に初めてデート報道があった際、圭さんは電車で眞子さまのお住まいの赤坂御用地近くまでお見送りされていたそうです。そういった“紳士的な優しさ”に惹かれたのかもしれません。また、英語が堪能で国際系の仕事を目標としている圭さんと、眞子さまの価値観が重なったのではないでしょうか。

 もうひとつ、「眞子さまにプロポーズする覚悟」という点が大きいと思います。普通の男性だったら、皇族である眞子さまと、お付き合いはしたとしてもプロポーズはなかなかできないのでは。日本中から注目され、皇族と親戚になるなど重圧は想像できないほどですからね。それでも圭さんが結婚を申し込んでくれたという初めての経験に、眞子さまが舞い上がってしまったのかなと、想像できます。

――眞子さまのお人柄、圭さんのお人柄を考えたときに、お二人はお似合いだと思いますか?

X 世間では、おしとやかで控えめな印象が強い眞子さまですが、意外とご自分の意見を主張される方だと聞いたことがあります。昨年9月の婚約内定会見でも、会見に慣れていない圭さんをリードしていたように思えますし。一方で圭さんは、母親の佳代さんのある意味“言いなり”で、バイオリンを習ったり、進学先を決めたり、彼女についてのアドバイスも受けていたらしく、全体的に“受け身”な印象。眞子さまが圭さんを引っ張り、圭さんが眞子さまについていくという形で、交際時はうまくいっていたのだと思います。

――眞子さまと小室さんが再来年に結婚することになったら、日本国民はどのような反応を示すと思いますか?

X 正直このままの状態で再来年に結婚されてしまうと、国民からは祝福されないと思います。佳代さんが抱えている借金トラブルが報じられて以降、小室家バッシングが続いており、やはり国民としては、小室家にお金がなく、圭さん自身の給料が少ないことを気にしていると思うのです。眞子さまと結婚すると、1億数千万円の“一時金”が支払われるのですが、小室家がこの一時金目当てなのではないかと疑う人も少なくありません。さらに毎日、圭さんを警備するSP費用が毎月数百万円かかっているなどとも報じられて、「そんなことに税金を使ってほしくない」という批判も出てしまっていますし……こういった状況での結婚では、国民も祝福できないのでは。

――眞子さまも、結婚を祝福されないことで、心を病まれてしまうのではないかと心配でなりません。

X 確かに、現状のような国民からの批判が結婚後も続くと、眞子さまが幸せになれない可能性があります。両陛下の初孫として、これまでしっかりと公務を担われてきた眞子さまが、結婚相手のせいで胸を張って結婚生活を送れないのは不憫でしかありません。せめて、借金問題を解決するなど、小室家や宮内庁は対応を取っていただきたいと思います。

――眞子さまと圭さんの結婚が、世間にいい影響を与える可能性はないのでしょうか?

X これは諸刃の剣ですが、いわゆる“庶民”である圭さんと結婚されると、ぐっと皇族と国民の距離が近づくとは思います。今までの皇族方は、由緒正しき家柄の方々と結婚されるのが通例で、紀宮さまと結婚された黒田慶樹さんも、ずっと学習院で秋篠宮殿下のご友人でした。圭さんと結婚したあとの生活は、恐らく贅沢のできない庶民生活になると思いますが、あの眞子さまがそういった日々を送ることになると、国民も皇族を今よりも近くに感じるのではないかと思います

【新潟・女児殺害事件】小林遼容疑者は「優しくていい子」――医師に聞く“小児性愛者の素顔”

 5月7日、新潟市西区青山水道のJR越後線の線路上で、小学2年生の大桃珠生さんの遺体が見つかった事件で、同14日夜、同市内の電気設備工事会社に勤める会社員・小林遼容疑者が死体遺棄と損壊の疑いで逮捕された。小林容疑者は、殺害についても関与を認めており、「車の事故で(珠生さんに)ぶつかった。泣き出したのでパニックになり、車に乗せて首を絞めた」と供述している。

 小林容疑者は、今年1月、山形県内のホテルで女子中学生にわいせつな行為をしていたと報じられているほか、4月にも、車で同じ女子中学生を連れ回したとして、県青少年健全育成条例違反容疑で書類送検されていたとのこと。小林容疑者自身は、今回の事件について明確な動機を自供していないものの、こうした背景から、各メディアは「彼は小児性愛者で、珠生さんを性的動機で連れ去ったのではないか」と見る向きが強い。捜査本部も、幼い女児が被害に遭っていることなどから、捜査当初より、「いたずらなどの目的の可能性を視野に入れて捜査を開始していた」と伝えられている。

 そんな中、報道で盛んに取り上げられているのが、小林容疑者の“人柄”についてである。近所の住民からは「疑いをかけられるような子じゃない。優しくていい子」「高校生の時に回覧板を持って来てくれたりしたが、感じのいい子だった」、また勤務先の会社社長からは「コミュニケーション能力は高いです。指示するとちゃんと仕事はこなしてくれる」といった声が出ているとのこと。

 一方で、小林容疑者と幼稚園から中学校まで一緒だった幼なじみの男性は、「小学校の時は結構周りとも仲良くしていたけど、中学校に入ってから今の言葉で言うと『陰キャラ』っていうのか」と語り、中学時代の小林容疑者が、小学校低学年の子どもと楽しそうに遊んでいたとも証言。

 一般的に小児性愛者という言葉から連想される性格は、「コミュニケーション能力が低い」「社会生活を円滑に送ることができない」といった特徴で、事実ネット上にも、そういったイメージを抱いている人が散見されるが、どうやらこれら特徴と小林容疑者の人物像はかけ離れているようだ。そこで今回、性障害専門医療センター SOMECの代表理事である、精神科医・福井裕輝氏に取材を申し込み、お話を伺うことに。これまで、性犯罪加害者の治療に尽力してきた福井氏に、小児性愛者をめぐる世間の先入観と誤解について聞いた。

 福井氏はまず、小児性愛者自体は人口の5%ほどいるとし、「40~50人のクラスには2~3人いる計算になります。皆さん知らないだけで、小児性愛の嗜好を持つ人と普通に接してきているんです」と語る。世間では、「小児性愛者=危険人物」と見る向きが強いものの、「性的な嗜好というのと、それを子ども相手に実行するというのは話が別。実行せずに、例えば動画などを見ることで満たしている方も大勢います」という。

「小児性愛者に対して、『社会的能力が劣っている』といったイメージを持つ人が多いようですが、それもまったくの誤解です。例えば、同性愛者の方が『社会的能力が劣っている』なんてことはあり得ませんよね。それと同じだと考えてください。性的嗜好とは別として『優しくていい子』というイメージだった人が殺害事件を起こした点において、驚く人がいるのは理解できますが」

 また、福井氏は、小児性愛について詳しく解説をしてくれた。小児性愛には、2パターンあるという。

「『子どもにしか興味がない』という純粋型と、『大人に興味はあるのだが、コミュニケーション能力が低いがために親しくなれず、性的対象を子どもに向ける』という非純粋型です。小林容疑者は、職場では普通に過ごしていたと報じられているので、後者には当てはまらないのではないかと思われます。なお、純粋型は遺伝による先天的なものが大きいです。あとは、幼少期に性的虐待を受けたことにより、発達がうまくいかず、加害者になってしまうというケースもあるのですが、それが小林容疑者に当てはまるかどうかは検討に値すると感じています」

 福井氏は、自身の感覚として、「性犯罪者の9割がやめたいと思っている」という。それは小児性犯罪者にも当てはまるというが、一方で小児性犯罪者は「再犯率が高い」面があるのも事実だ。

「“わいせつ行為をされても、あまり抵抗しない”という点が、小児性犯罪者の再犯率を高めているのです。大人は抵抗しますから、性犯罪者側も『事件化して逮捕されるかもしれない』と察知し自らやめることがありますし、実際に起訴されて裁判を受け、『何とかしなければ』と思うケースもあります。小林容疑者は、先月、県青少年健全育成条例違反容疑で書類送検されていますよね。相手に抵抗されなかった、しかも書類送検で済んだという点で『意外となんともないんだ』と思い、犯行がエスカレートした可能性も考えられるのではないでしょうか」

 近隣の人は、小林容疑者が1カ月前に書類送検されていた事実を知らなかったという。世間では、「なぜ小児性犯罪者を野放しに?」と警察を批判する声も多い。

「警察も法にのっとって釈放したのだと思いますが、現状では、一度そういったことを起こした人物に対して“危険なのかどうなのか”を評価するシステムがないんです。警察と、性犯罪者に関する知識のある専門家が連携し、そういったリスク評価をする体制を作るべきだと感じています」

 もう二度と、痛ましい事件が起こらないためにも、こうしたシステムが早急に実施されることを強く祈りたい。

性障害専門医療センター SOMEC公式サイト

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士&妻と“元リアル極妻”瓜田母は、映画『虎狼の血』をどう見たのか?

“キング・オブ・アウトロー”こと作家の瓜田純士(38)が、森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、瓜田が「原作は未読だけど公開初日に見たい!」と熱望した東映映画『孤狼の血』(原作:柚月裕子、監督:白石和彌)だ。“警察小説×仁義なき戦い”と評される同名原作を映画化した本作。果たして、極道上がりで深作ファンでもある瓜田の御眼鏡にかなうのか?

 かつては“リアル極妻”だった瓜田の母と、エログロバイオレンスが苦手な瓜田の妻も劇場に招き、三者の感想を聞いてみた。

『孤狼の血』の公式サイトによると、「昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原を舞台に、刑事、やくざ、そして女が、それぞれの正義と矜持を胸に、生き残りを賭けて戦う生き様を描いた映画」とある。

 公開初日の土曜日ということもあってか、場内はほぼ満員。客層は20~40代風のおとなしそうな人が中心で、男女比は半々といったところか。若い単独女性や、高齢の単独男性の姿もちらほら。コワモテの客は、瓜田1人だけのように見えた。

 以下は、映画終了後に近所のとんかつ屋で行ったインタビューである。

 * * *

――いかがでしたでしょう?

瓜田純士(以下、純士) いやぁ、めちゃくちゃ良かったです。感動しました。

母・恭子(以下、恭子) 最初から最後まで、最高だったよね!

妻・麗子(以下、麗子) 『アウトレイジ 最終章』の2億倍良かったわ~(参照記事はこちら)。

――おやおや、奥様まで。みなさん、何がどう良かったのでしょう?

純士 まず、みんなのケジメのつけ方が、きっちりと描かれてたのが良かったです。東映の本気と、それに応えてやろうという役者陣の本気を見たという感じですね。あの時代(昭和63年当時)の広島って、本当にああいうマル暴がいただろうし、やくざも本当にあんな感じだったと思うんですよ。で、今この時代にこういう映画をやるとなったときの、引き受けた役者たちの「一癖も二癖もある感じに悪く演じてやろう」という本気度に圧倒されました。きっとみんな役者をやってる以上、東映の任侠映画を見て育ってきただろうし、ファンだったと思うんですよ。だからこそ、下手な芝居はできないところですが、そこをきっちりやり切ったのがすごいな、と。

恭子 私は岩に波がザバ~ンとぶつかって「東映」ってマークが出てきたところから、「うわ、昔のまんまだ!」って感じで一気に引き込まれちゃったわ。でも出てる役者は今の役者だから、懐かしくも新鮮な面白さがあったわね。

純士 終盤の太鼓の迫力と、その音に合わせたケジメの付け方も、さすが東映といった感じ。盛り上げ方を知ってるな、と。

麗子 役者もみんな光ってたな。

純士 うん。主役の刑事から脇役のチンピラに至るまで、キャスティングがピカイチだった。中でも刑事を演じた役所広司と松坂桃李が、とびきり良かったね。真相を知ったときの松坂の演技なんて、もう……。

恭子 純士、泣いてるのかと思ったわ。

純士 結構、泣いちゃったよ。

麗子 ウチも何度も泣きそうになったけど、化粧が崩れるのがイヤやから必死でこらえたわ。

純士 松坂が、あるアイテムを探り当てたときの感情表現とか、めちゃくちゃ上手かったじゃない。真面目一徹の新人刑事が、だんだんディープな世界に引き込まれていく。あれが他の役者だと、例えば東出昌大とかだと嘘臭くなっちゃった可能性がある。あの松坂の絶妙な正義感が良かった。

恭子 良かったよね~。私、松坂桃李って役者としてあまり好きじゃなかったのよ。だけど今回、そのすごさを思い知らされちゃった。あんなにいい男だとは知らなかったわ。役所さんもすごかった。宝くじの宣伝してる場合じゃないわよ(笑)。

麗子 ウチは、真木よう子がたまらんかったわ。あれは、実生活で酸いも甘いも噛み分けた彼女にしかできへん役ちゃうかな。

純士 真木は、喫茶店での暗い顔、あの本当に腹を決めてる表情とかが本当に良かったし、終盤にも大きな見せ場があったよね。終始、貫禄がすごかった。

麗子 貫禄はあるけど、細くて美しいという。

恭子 あの顔と体型って、本当に私の理想なのよっ!

麗子 おっぱい、めっさデカいしな。

純士 役者の力もすごかったけど、今回、この作品を最初から最後まで冷めることなく楽しめたのは、「時代設定の上手さ」もデカいと思う。俺もこないだ現代物のノワールを書いたんだけど、主人公の刑事の設定をどこまで過激にしていいのかとか、ここまで書いたら不自然なんじゃないかとか、いろいろ考えすぎた結果、思い切り安パイを取っちゃって、あんまり悪くない刑事にしちゃったんですよ。なんでかというと、時代的に「ウソだろ!」「そんなの今どきありえない!」と突っ込まれちゃうから。でも今回の原作者が上手いと思ったのは、「あの時代だから許される」という設定にしたこと。「これは昭和の話です」という一文を入れるだけで、許されちゃう。俺もその手法を取れば良かったな、と思いましたもん。

恭子 田舎だから特にね。

純士 そうそう。広島だからより一層、刑事とやくざの癒着もあっただろうし、タマも普通に飛んでただろうし。パチンコ屋でパチンコが出なくてパチンコ台を弾いたっていうもん、当時のやくざは。そういう時代性を感じさせる細かいディテールの描き方も良かったですね。

――それは例えば?

純士 やたらとハイライトを吸ったり、ゴテゴテのジッポを使ったり。悪い刑事って格好いいな、と思えちゃうじゃないですか。実際にいたら迷惑ですけど(笑)。あのカチコミに行ったやくざ(中村倫也)が、行く前に景気付けに一発ポン(覚せい剤)を打つとかのディテールも良かった。シラフじゃあんなもん務まらないから。そいつがウワーとか掛け声かけて行くもんだから、そんなことしたら直前にバレて取り押さえられちゃうだろと思ったけど、その見てるほうが不安になる頼りなさってのが、リアルな鉄砲玉っぽくて良かったです。

恭子 あのヒットマンのキチ●イっぽい顔つきを見て、私は昔の純士を思い出したわよ(笑)。開襟シャツ着て目もトンじゃって。うわ、純士の再来だ! 悪夢再び! って。

純士 ヒットマンが走る前に一発ヅケようが、右翼(ピエール瀧)の嫁が家で猟銃をブッ放そうが、そんなの微罪。当時のデコ(警察)は、本線の殺しとは関係ないから引っ張りもしないっていう感じも良かった。揉み消しだったり、潰しだったり、なんでもまかり通る時代だっただろうから。

麗子 薬剤師の女の子(阿部純子)の下着や靴下も、いかにも昭和って感じで懐かしかった。あの子、初めて見る女優やけど、印象深かったな。

――元やくざの瓜田さんから見て、不良描写や暴力描写は、いかがだったでしょう?

純士 親分衆の貫禄も、若い衆の緊張感も、リアルでした。中でも、石橋蓮司。あいつが一番やくざでしたね。

麗子 磯野波平な。波平も良かったわ。

純士 石橋がホステスにセクハラするシーンとか、病院でクチャクチャうなぎを食ってるシーンとか、めちゃくちゃ本職っぽかったですよ。ものすごく下品で、卑猥で、汚れた感じで、いやらしく笑って……ってのが不良の鉄則ですから。実際のやくざはああいうのばっかりで、逆に江口洋介みたいなスマートなのは1人もいませんから。

麗子 江口は『るろうに剣心』のまんまやったわ。

恭子 何それ?

麗子 こないだ、江口が出てる『るろうに剣心』をDVDで見たんですよ。そんときと何も変わってへん印象やった。

純士 江口はケジメを取りに行くシーンは最高に格好良かったけど、いかんせん顔と体型がきれいすぎるというのはあるな。そういやなんで、一之瀬(江口の役)は、モリタカとも呼ばれてたんだろう? 稼業名と本名、ってことなのかな。やくざは江口のことを「男前の一之瀬」と呼んでたけど、ガミさん(役所広司)とかは「モリタカ」と呼んでたから、「それ、奥さんの名前だろ」と思ったんですよ(笑)。

恭子 あ、森高千里か!(笑)

純士 「男前」ってキーワードでどうにかわかったけど、あれ、事前にパンフレットを読んでない人は混乱するでしょうね(編注:江口が演じた役のフルネームが「一之瀬守孝」だと後に判明)。

恭子 私は竹野内豊が物足りなかったわ。いい男で本当に大好きな役者なんだけど、目立たなかったのが悲しい。なんだかしょぼい役だったし、出番も少なかったから。

純士 あれはあれで良かったよ。派手でタチの悪いやくざの実在感があった。リアルさってことでいうと、田舎やくざが外国にかぶれてフィリピンのことを「フィリペン」って発音したりするのも本物っぽかったし、面白かったね。

恭子 商店街の「◯◯ギンザ」とかって看板も、東京に憧れてる地方都市の感じが出てて面白いなぁ、と思って見てたわ。ただ全体的に、昭和63年というよりも、それより10年前の昭和53年っぽい背景だな、と感じたのは、私だけかしら? 昭和63年といえばちょうどバブル絶頂期だけど、その頃は黒電話じゃなくてプッシュホンを使ってた記憶があるから。

純士 それは、東京と広島の違いもあるのかもしれないね。俺は、タバコやジュースの自販機とか、缶ビールのプルタブの形状とかも、懐かしいな、そういやこんなのあったな、って楽しんで見れたし、広島弁も違和感なかった。NHKの朝ドラなんかの昭和はいかにもセットって感じだけど、この映画では各アイテムが町並みにしっかり溶け込んでて、興をそがれることはなかったね。

恭子 NHKの朝ドラで思い出したけど、滝藤賢一! 今あの人『半分、青い。』で松雪泰子とほのぼのした夫婦役をやってるんだけど、『孤狼の血』では目つきから声まで、まるで別人だから驚いたわ。役者ってやっぱ、すごいよねぇ。

麗子 あの人、西川きよしの長男ちゃう?

恭子 違う、違う(笑)。目だけで判断しちゃダメよ。


純士 暴力描写のリアルさってことでいえば、刑事が手荒い取り調べの前に腕時計を外したでしょ。なんであんなこと、知ってるんだろう? って感心しました。ああいう細かい描写がリアルだと物語の説得力が増しますよね。きっと一個一個、細かく研究したんだと思うよ。

――ところで奥様はさきほど、「『アウトレイジ 最終章』の2億倍良かった」とおっしゃっていましたが、何がどう違ったのでしょう?

麗子 『アウトレイジ』は男の人の作った映画やからか、「戦う、死ぬ、終わる」だけやった気がするんですよ。エロビで言うと「入れる、出す、終わる」みたいな。でも『孤狼の血』は原作が女の人やろ? 女の人ってデートの前段階を楽しむ生き物やないですか。ダイエットして、エステして、服買って、ああだこうだとその前をすごい楽しむ。『孤狼の血』はエロビで言うと、入れるまでの前戯がめちゃめちゃ長くて濃厚で、こっち目線あり、あっち目線あり、あ、こう来たか、という斜め上からの攻めが何度もあったから、気持ち良かったし、終わったあとの余韻も心地良かったんですよ。

恭子 アッハッハッ!

――エログロが苦手な奥様が、この作品を受け入れたことが驚きでした。

麗子 確かに暴力描写やグロいシーンも結構あったけど、事件解決に向けて純粋な気持ちでボコってはるシーンが多かったし、変態的なグロやなく、敵討ちのための必然的なグロが大半やったから、全然OK。この映画はきっと、原作が女性やから、ウチでも楽しめたんやと思うわ。

純士 『極道の妻たち』は、原作が女だけど映画は駄作だったじゃん。

恭子 “極妻”は確かにやりすぎというか、嘘くさい感じがあったわよね。

純士 北野武の『アウトレイジ』はきっと、男にだけウケりゃいいぐらいに思って最初から作ってる。『孤狼の血』は『仁義なき戦い』にインスパイアされて作ってる。それに尽きるよ。男女の性差は関係ない。『仁義なき戦い』、見た?

麗子 見てへん。

純士 そのタッチなんだよ。舞台は広島だし、テロップも入るし、独特のナレーションも入る。原作はどうだか知らないけど、映画に関しては『仁義なき戦い』に思い切りインスパイアされてる奴らが、脚本を書いてるんだよ。

麗子 そんなん、知らん!

純士 こっちは物書きだから。

麗子 ウチは一般女子やから。しかも女子力高め女子やから(笑)。

恭子 アッハッハッ!(手を叩きながら大笑い)

純士 (呆れ顔で)ウチの嫁は、いつも鼻高々に思い切り的外れなことを延々としゃべるんですよ。

麗子 いいねん、いいねん。それが女子力高め女子の可愛らしい感想や。ウチは訂正せえへんで!

恭子 クックックッ(笑)。そのぐらいに思ってないと、世の中生きていけないよね。

純士 まあとにかく、いい映画だったよ。粗を探す気にならない。今日が、公開初日じゃん。今日の来場者数や反応次第で、上映館の数が増えたり、次回作の話が来たりっていう勝負の日だと思うんだけど、ただの一観客であるこっちが、「なんとかこの映画が世に広まってくれないかな」って目で見てたもん。

麗子 今まで見たやくざ映画の中で一番面白かったわ。「入れる、出す、終わる」ちゃうかったもんな。

純士 ここ、ご飯を食べるところだから。

麗子 前戯が濃厚やったし。

純士 ここ、ご飯を食べるところだから。

麗子 調子乗っちゃって~♪

恭子 こいつ、ウザい!(笑)

純士 忘れちゃいけないのは、『孤狼の血』は任侠映画っぽいけど、主人公が警察だってこと。警察の世界にも任侠があるじゃん。暴力団に対抗するための。だから、これをやくざ映画とは思いたくない。伏線もしっかり回収されるし、ちゃんとミステリーにもなってるから、ジャンル的には「警察VS 極道のハードボイルド」なんだと思います。両者のむき出しの狂気や、それぞれの落とし前の付け方、そして喰うか喰われるのかの迫力と色気がすごかった。その作品の屋台骨を最初から最後まで支えたのは、なんと言っても役所広司だね。

――役所広司って、女性から見て男前なんでしょうか?

麗子 色気がありますよね。

恭子 あ、そう? 私は全然いい男とは思わないけど、役に入り込んだときのオーラが別格。だから役者って本当にすごいなって思ったわ。

麗子 今回ちょい役で出てた中村獅童もそうやけど、やっぱ舞台やってはる人は、存在感の示し方がハンパないな。

純士 役所はくどいおじさんだけど、そのくどさがいい。真木よう子の店で飲んでる最中、子どもから「暑苦しい」と言われたときの反応も、「プライベートでもきっとこういう顔するんだろうな」と思って見てました。あと今回、役所で印象に残ったのは、「俺は綱渡りをしている。歩かないと落ちて死ぬるから歩き続けるしかないんだ」みたいなセリフ。もう戻れないってことですから。あのセリフはシビれたなぁ。

――三者ともに大絶賛といったところですが、不満点はありますか?

麗子 ないな。イントロの養豚場のシーンから小洒落たエンドロールまで、飽きることなく見れたし、泣けたし、最高でした。

恭子 私はさっきも言ったけど竹野内豊が目立たなかったことと、黒石(高大=かつて瓜田純士と共に格闘技大会の『THE OUTSIDER』に出ていたこともある役者)が、すぐに死んじゃう役だったのが悲しかった。黒石は本当にいい男なんだから、もっといい役で出させてください! って思ったわ。

純士 黒石はまだ役者として下積み中だから。あの唐沢寿明だって若い頃は、何十回も死体役をやったって言うじゃない。黒石も5年後、10年後には、もっといい役をもらえるようになるはずだよ。というか今回の役は決して、悪い役とは思わない。役名もあったし、前半でまず印象を与えて、中盤でまたちらっと出て、後半またそのシーンが出るっていうのは、他の名もなきエキストラとは扱いが全然違うでしょ。

――純士さんは、本作への不満点は?

純士 強いて言うなら、ガミさん(役所)と親友の貫目が釣り合ってなかったような気がします。親友がもうちょい大物、それこそ江口の組の親分(伊吹吾郎)あたりだとバランスが取れたし、ガミさんが威張ってる意味もわかったんだけど。

恭子 え、本当? 人間味があっていいな、と思ったけど。

純士 あとは、松坂がやりすぎたかな、ってこと。

恭子 え、本当? もっとやれ! と思ったけど。

麗子 ウチもや!

恭子 どうしても、松坂側を応援してる自分がいるんだよね。

純士 そこが上手く描けてたよね。これが不良目線だとここまで心は動かなかったと思う。刑事目線で見てるってことは、見る側は正義だってこと。だから気持ちのいい映画でしたよ。

麗子 うん、気分ええな。 

恭子 やっぱ映画って、見終わったあとに考えさせられるよりも、最後はスッキリするほうがいいよね。

純士 さあ、さんざんしゃべったから、食べましょうか!

恭子&麗子 いただきまーす!

 * * *

 養豚場でのエグいシーンが印象的でもある映画だったが、そのあと瓜田一家はおそらく無自覚のまま、「とんかつ定食」をおいしそうにたいらげていた。それだけ後味の悪さがなく、爽快さの残る映画と言うことができるだろう。(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※瓜田純士の人生相談「No problem」
https://kinngofoutlow.jimdo.com

※瓜田純士の最新刊『熱帯夜』(Kindle版)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07769PXXJ/nikkancyzo-22/ref=nosim/

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

「エナジードリンク」は危険ではない!? カフェイン研究のスペシャリストが正しい飲み方伝授

 レッドブル、モンスターエナジー、バーンエナジードリンク、キックスタートなど、年齢性別を問わず、近年、一般的に広く飲まれるようになった“エナジードリンク”。一方でこれらは、「飲みすぎると体によくない」「短時間に何本も飲んではいけない」と、ネット上で盛んに注意喚起されている“危険な飲み物”でもある。というのも「エナジードリンクは、カフェインが配合されているから、飲みすぎるとカフェイン中毒を起こす」とされ、エナジードリンクを1日1本日課として飲んでいる人が、「最近、飲んでも集中力が続かなくなった気がする」「脳みそがプカプカ浮いているような感覚になる」などと訴えるケースも、ネット上では散見されている。

 しかし、含有量は異なるものの、お茶やコーヒーにもカフェインは含まれており、これらを日課として飲んでいるという人は大勢いるのが実情。結局のところ、エナジードリンクは体に悪いものなのだろうか? 効果的に飲む方法はあるのだろうか?

 そんな疑問に終止符を打つべく、今回、元東京福祉大学教育学部教授で、カフェインに関する書籍『カフェインの科学-コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用』(学会出版センター)の著者でもある栗原久氏(医学博士 神経行動薬理学)にお話を聞くことにした。脳に作用する薬物(具体的には依存・乱用性薬物)の有害性や、嗜好品(アルコール・ニコチン・カフェイン)の有益・有害作用についての専門知識を持つ栗原氏は、「カフェインや脳の話をするのは、私にとって至福の時間」と、取材を快く引き受けてくれた。

コーヒーとの違いは“アルギニン”

――エナジードリンクとは、一体どういう飲み物なのでしょうか。一般的に広く飲まれていますが、「どのような成分が、どう体に働いているのか」をしっかり認識している人は少ない気がします。

栗原久氏(以下、栗原) 確かにそうかもしれませんね。基本的にエナジードリンクは、カフェイン、アルギニン、糖分(ブドウ糖など)の成分からできています。カフェインには、脳や中枢神経系を刺激し、視覚や聴覚などの“感覚”を高める作用があるため、飲むと集中力を高める、眠気を覚ますといった効果があるわけです。

――やはりカフェインがメインなんですね。でも、それならコーヒーと変わらない気がしますが……。

栗原 コーヒーとの違いは、“アルギニン”が入っていることですかね。アルギニンはアミノ酸の一種で、代謝を上げたり、免疫力を高めたりする効果があり、カフェインの作用を少し強めてくれるものなんです。もちろん飲む量にもよりますが、エナジードリンクは、「カフェイン量が同じなら、コーヒーよりも少しだけ、脳の興奮を強めてくれる飲み物」と考えるとよいのではないでしょうか。

――では、エナジードリンクは、1日どれくらいまでなら飲んでよいのでしょうか?

栗原 1日1本程度でしたら、基本的にはまったく問題はありません。それ以上飲もうとする場合、エナジードリンクは缶によって容量が違うので、「1日何本までならOK」と明確には言えないものの、日々飲んでいるコーヒーやお茶と同じくらいの量なら大丈夫だと思います。ただし、飲む量と飲み方には気をつけてほしいです。

――と、言いますと?

栗原 コーヒーは1杯150mlくらいで、カフェインは約65mg入っています。一方でエナジードリンクは、種類にもよりますが、1缶350mlという容量で、カフェイン量は150mg配合されています。つまりエナジードリンク350ml缶のカフェイン量は、コーヒー1杯分の2.5倍にもなるんです。

 カフェインは心臓に対しても刺激する作用があるので、例えばコーヒー2杯半を一気飲みしたら、感度の高い方だと心臓がバクバクして、気分も悪くなってしまう可能性があります。エナジードリンク350ml缶も同様に、一気飲みはよくありません。

エナジードリンク“だけ”で死ぬ可能性は低い

――では、一気飲みではないものの、「エナジードリンクを短時間に何本も飲む」というのはどうでしょう? 日本では、エナジードリンク関連で死亡した例があり、「エナジードリンクを飲みすぎる=死ぬ」というイメージを持っている人も少なくないようです。

栗原 短時間に大量に飲むと、心臓に負担がかかります。心臓に不整脈などの持病がある方なんかは、大体カフェイン500mg(コーヒー約8杯分)でリスクとなりますが、一般的なカフェインの致死量としては、1回摂取で大体10g(10,000mg:コーヒー約150杯)とされています。実は飲み物だけで、カフェイン中毒になって死ぬというのは難しいんですよ。

――では、死亡した例は、短時間に100缶以上のエナジードリンクを飲んだということでしょうか?

栗原 調べてみたところ、死亡した方の胃の中からは、“カフェインの錠剤”が見つかっているんです。カフェイン錠剤は1錠中に100㎎のカフェインが含まれ、血中濃度から換算すると、約170錠を摂取したと推定されました。つまり、エナジードリンクとは別で、カフェイン錠剤も摂取していたことになります。死亡原因は主にカフェイン錠剤で、エナジードリンクだけのせいではないようですね。もちろん、だからと言って「エナジードリンクを大量に飲んでいい」というわけではありません。コーヒーやお茶と同じように、適度な量を守ってください。

効果的に飲むポイントは、“飲む時間帯”と“飲む速度”

――では、パフォーマンスを上げるために効果的なエナジードリンクの飲み方はあるのでしょうか?

栗原 効果的に飲みたいのでしたら、特に“飲む時間帯”と“飲む速度”を気にするとよいでしょうね。まず時間帯ですが、基本的には、コーヒーやお茶を飲むのと同じようなスケジュールで飲むことを意識してください。カフェインは一度摂取すると3~4時間で体内の濃度が半分に減るので、一気に何本も飲むより、そのくらいの間隔を空けた方がずっと効率的です。そして、夜飲むことはおすすめできません。よく、「カフェインを夜摂取すると眠れなくなる」と言いますが、これは正しい。カフェインは脳を刺激しますから、夕方4時以降に摂取すると睡眠に影響が出てしまいます。

――「午後4時以降」とは、意外に早い時間帯という印象です。

栗原 そうですね。「カフェインは夕方まで」を心がけると、睡眠の質が上がりますよ。それと、朝に飲む際は“空きっ腹”に気を付けてください。胃がカラの状態で飲んでしまうと、胃液が増えてしまい、キリキリしてしまいますからよくありません。必ず朝食と一緒に飲む、またはご飯の後に飲むことを心がけてください。

――では、飲む速度としてはどのくらいがよいのでしょうか?

栗原 先ほど「一気飲みはよくない」と話しましたが、おすすめは、一気飲みの反対で“ゆっくり飲むこと”。一気に飲んでしまうと、約30分でカフェインの血中濃度がピークになり、そして減っていきます。減ってしまうとその分パフォーマンスも落ちてしまうので、ゆっくり飲んで、血中濃度を上げすぎないことが大切です。

――缶に直接ストローを挿して飲んでいる人もいますが、その飲み方はどうでしょうか?

栗原 それは良い飲み方ですね! がぶ飲みだと、どうしてもいっぱい飲んでしまうという方もいますから、そういう方はストローを使ってゆっくり飲むことを意識できたらいいと思います。まだ見かけませんが、キャップのついたペットボトル入り本格エナジードリンクがあれば、一気飲みの防止に役立ちますね。

――私はどちらかというとエナジードリンクに否定的だったのですが、正しい知識を知ってイメージが覆りました。コーヒーやお茶と同じ「カフェインが入った飲み物」として適度に飲めばなんの問題もないんですね。

栗原 はい。カフェインは決して“悪”ではありません。むしろ、カフェインは皮膚などの末梢の血流をよくするので、冷え症やむくみの解消にもいいんですよ。さらに、代謝も上がるので、お肌がきれいになる効果もあるんです。

――代謝が上がればダイエットにもつながるので、女性にはうれしい効果なのではないでしょうか。

栗原 そうですね。ただ、エナジードリンク自体は砂糖がたくさん入っているので、ダイエットには不向きです。健康のためにカフェインを摂りたいのであれば、ブラックコーヒーやお茶がおすすめ。ただし、カフェインは胎児によくないので、妊婦さんは摂取を控えてください。

 今回栗原氏にお話を聞いた限り、「エナジードリンクだから飲んではダメ」というのは間違いだということがわかった。正しくは、「エナジードリンクもコーヒーもお茶も、“カフェインが入っている飲み物”という面ではたいして変わりはなく、適切な時間・量を守り、大量摂取しなければ危険ではない」ということだ。

 今後エナジードリンクを飲む際は、ぜひ参考にしていただきたい。
(ヨコシマリンコ)

別れさせ屋が「水難偽装・妻殺害事件」を考察――保険金殺人報道に「不倫相手の女性気になる」

 昨年7月、和歌山県白浜町の海水浴場で、妻・野田志帆さんを水難事故に見せかけて死亡させたとして、和歌山地検が5月11日、野田孝史容疑者を殺人罪で起訴した。報道によると、孝史被告には彼の子どもを妊娠したキャバクラ嬢の不倫相手がおり、その事実を知った志帆さんとは離婚調停中だったそう。そして、志帆さんが亡くなる前、孝史被告は数カ月の間に2社で合計5000万円の生命保険をかけていたといい、保険金目当て殺人の線が浮上。「極悪非道な保険金殺人事件」として、世間の耳目を集める事態となっている。

 そんな中、同事件に反応したのが、別れさせ屋・復縁屋の「ブリジャール」。男女間のトラブル解決を担う同社は、公式ブログで「毎年通った思い出の海水浴場に誘い出し、ダイビングのライセンスまで取得するほど海が好きな妻を、海に沈めた夫はどのような心境だったのでしょう」とつづり、同事件の動機と考えられるポイントを「復縁を断られ続けた妻を恨んでいた」「不倫相手と一緒になりたくて早く離婚協議を終わらせたかった」「離婚して他の男と再婚するくらいなら殺してしまおうと思った」「お金が欲しかった。または必要だった」と推察したのだ。

 そこで今回、サイゾーウーマンでは、ブリジャールの代表に取材を敢行。婚姻トラブルに対峙してきたプロは、同事件をどのように見たのか、話を聞いた。

気になるのは、不倫相手のキャバクラ嬢

 ブリジャールの代表は、まずブログ更新後、同事件の背景が徐々に明らかとなりつつあることに触れ、「現段階では、お金目的で、保険金殺人を行ったとみられると思います」と言及する。

「ブログには、『不倫相手と一緒になりたくて早く離婚協議を終わらせたかった』という動機が考えられると書いたのですが、不倫相手と一緒になりたかったら、スムーズに離婚できていたと思います。奥様も、復縁を望んでいたわけではないと思います。そこで、違和感を覚えてしまうのが、この被告の不倫相手の女性です」

 不倫相手の女性は、被告の子どもを妊娠し、すでに出産していると報じられている。

「本当にこの男性を愛していて、結婚したいと思っていたら、早く奥様と離婚してくれることを望むと思うのですが……にもかかわらず、保険金をかけて殺害という期間を見守っていたとしたら……。不倫相手の女性も、被告の計画を知っていたのではないかと想像をめぐらせてしまいます。もちろん何も知らなかった可能性もありますが」

 実際に、ブリジャールに相談を寄せる依頼者には、既婚者男性の不倫相手という立場の女性が多いという。

「『既婚者の彼と交際をしているのだが、「いつまでに離婚する」と言っているのに離婚してくれない』『彼の離婚が成立しないので、何とか力を貸してくれないか』というご相談が多いですね」

 既婚男性の略奪をもくろむ不倫相手の女性の中には、「『奥様に消えてほしい、いなくなってほしい』と涙を流しながら訴えてくる方も、たまにいらっしゃいます。男性側が奥様と話し合ったものの、離婚を成立させられなかった、という方が『奥様さえいなければ……』という考えに至ってしまうようです」とのこと。

「お相手をどうにか振り向かせたいという強い思いを持ち、感情のコントロールができなくなってしまっている場合、まずはお話をお聞きし、共感します。そうすることで、落ち着きを取り戻される方が多くいらっしゃいます」

 その後、ブリジャールでは、相手の配偶者に別れ工作専門の工作員を接触させるなどして、離婚という状況に導いていくとのこと。具体的には「例えば、奥様がジムに通っているならば、そこへ男性工作員を送り込んで恋愛関係を構築する。または、女性工作員を送り込み、奥様と仲良くなってから、男性を紹介するパターンなど、ケースバイケースで、何十種類もあります」という。

 お金を払い、第三者に依頼してでも、既婚男性と一緒になりたい――そんな思いを抱く女性に多く接してきた代表。今回の事件における不倫相手の女性は、「そういった女性とは明らかに様子が違うように見える。やはり“お金”が目的だったように思います」という。

 一方で、同社代表は、「不倫相手との結婚を阻む奥様と円満に別れたい」という依頼を持ってブリジャールを訪れる既婚男性もいることを指摘する。

「今回の件で被害者となった奥様は、『離婚したくない』と言っていたわけではなかったようですが……奥様と不倫相手の板ばさみにあって、『早く離婚したい』と当社へいらっしゃる既婚男性の方がいます。最初にこのニュースを知ったとき、保険金の話も出ていましたが、同時に『奥様と不倫相手の板ばさみになったのかな?』と感じました。奥様に手をかけてしまうのではないかと心配になるほど、焦っている既婚男性の方は、実際に多くいらっしゃいます」

 警察によると、野田被告はこれまでの調べに対して、黙秘を続けているとのことだが、今後、どのように同事件の真相が浮き彫りになってくるのか。続報を待ちたい。

別れさせ屋・復縁屋の「ブリジャール」公式サイト

人気女優のCMで好感度の高い優良企業の不祥事!! 日本企業の隠蔽体質を暴く『サムライと愚か者』

 神々のたそがれならぬ、日本企業のたそがれなのか。人気女優・宮崎あおいが2007年からCMキャラクターを務めている「オリンパス社」。国内ではカメラの老舗ブランドとして有名だが、内視鏡分野では世界シェアの75%を占める世界的な光学機器メーカーである。ギリシア神話の舞台となったオリンポス山を社名の由来とするオリンパス社が、国際ニュースを騒がしたのは11年に発覚した「オリンパス損失隠蔽事件」だった。オリンパス社が大量のCMを出稿するクラアントであることから、国内の大手メディアはオリンパス社が1,200億円もの損失を隠してきたこの事件を報じることに躊躇した。ドキュメンタリー映画『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』は、15年に英国の国営放送BBCをはじめ、欧州各国でテレビ放映されて大きな反響を呼び、ようやく国内でも劇場公開されることになった。日本企業特有の隠蔽体質、組織のトップに対する忖度、外国人社長とのコミュニケーション不全……。海外生活の長い山本兵衛監督に、本作の製作事情とオリンパス事件が抱える特異性について語ってもらった。

 山本兵衛監督はニューヨーク大学映画製作科を卒業後、米国の映画配給会社で働くなどしながら、短編映画を各国の映画祭に出品してきた。今回の『サムライと愚か者』が長編デビュー作となる。かつて松竹を解任された苦い経験を持つ奥山和由プロデューサーはオリンパス社から解任されたマイケル・ウッドフォード元社長の告発本『解任』(早川書房)に感銘を受け、オリンパス事件をベースにした映画はできないかと山本監督に打診したのが12年。17年間に及ぶ海外生活の中で文化的価値観の相違を痛感してきた自分なら、日本人側の視点、国際的な視点の両面からこの事件を捉えることができると快諾したという。

山本「オリンパス社で初の外国人社長に抜擢された英国人のマイケル・ウッドフォード氏ですが、不可解な会計処理に気づき、真相を究明しようとしたところ、解任されてしまいました。事件の発覚後、再来日したウッドフォード氏がオリンパス社の内情を語る形で、事件を検証していく構成にしています。奥山プロデューサーから企画を打診され、より多くの出資を募るため、アムステルダムのドキュメンタリー映画祭の企画マーケットに出品したところ、BBCが興味を示し、欧州各国のテレビ局も出資してくれることになったんです。それもあって、まず英国、その後ドイツ、フランス、デンマーク、スウェーデンでも放映されました。欧州ではかなりの反響があり、日本でも公開することになったのですが、中には『世界的に知られる日本の優良企業の恥部を、どうしてさらすようなことをするんだ』と思う方もいるかもしれません。でも今回のオリンパス事件は、時代の変換期を迎えた日本社会が抱える様々な問題の縮図であるように、僕には思えるんです」

 11年7月、オリンパス事件を最初にスクープしたのは月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)だった。出版取次を通さない会員向けの総合情報誌「FACTA」誌上で、記者クラブには所属しないフリージャーナリストである山口義正記者が怪しい企業買収を重ねるオリンパス社の不正を訴えた。同年4月にオリンパス社の社長に就任したばかりだったウッドフォード氏はこの記事に驚き、前社長である菊川剛会長(当時)に疑惑の解明を要求したところ、菊川会長を中心とする役員会(ウッドフォード氏以外は全員日本人)で一方的に解任されてしまう。この解任劇とウッドフォード氏によるオリンパス社の不正告発を海外のメディアは大々的に報道したが、日本の大手メディアがこの事件を取り上げるまでには相当の時間差を生じた。

山本「日本の企業文化の独自性を題材にしたドキュメンタリーになっていますが、オリンパス事件を追求しなかった日本のメディアもおかしな状況ではないでしょうか。世界で起きた重大ニュースを、日本のメディアは海の向こうで起きたローカルニュースのように扱う。例えば、米国パークランドの高校で起きた銃乱射事件の後、高校生たちが銃規制を訴えてワシントンでデモ行進したニュースを、日本のニュース番組では『歌手のレディ・ガガさんも参加しました』と芸能ニュース扱いで報じていました。海外の常識では考えらえないことが、今の日本のメディアでは当たり前になっています。日本のテレビ局はNHKニュースをまずチェックし、特オチしていないかを確認することが基本になっている。オリンパス事件の本筋からは離れてしまうので編集段階でカットしたんですが、国内メディアの姿勢にも大きな疑問を感じます。情報源の機嫌をそこねるようなニュースは出さない日本の既成メディアからは、本当の意味でのスクープは生まれません。今、世界では何が重大なニュースとなっているのか、報道されているニュースは正しいのか、そして報道されていないニュースは何かを知ることは、とても重要なことだと思います」

■オリンパス社の粉飾決算は氷山の一角に過ぎない!?

 本作のタイトルとなっている『サムライと愚か者』は、オリンパス社を解任されたウッドフォード氏の発言であり、山口記者の著書『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)からとったものだ。バブル時代に財政難に陥ったオリンパス社は長年にわたって粉飾決算を続け、ウッドフォード氏は本社の裏事情を知らないまま菊川会長によって新社長に抜擢された。菊川会長はCEOとして実権を握り続け、お飾りとしてウッドフォード氏は社長に祭り上げられた格好だった。疑惑を知り、説明を要求したウッドフォード氏は菊川会長と財務担当の森久志副社長(当時)とのランチミーティングの場を与えられるが、菊川会長と森副社長の前には豪華な寿司が用意され、ウッドフォード氏の前にはキオスクで売っているようなツナサンドが置かれたという屈辱を味わっている。日本社会ならではの“空気を読む”“忖度する”といった見えない壁に阻まれ、ウッドフォード氏は社内改革を実行できないまま、英国に帰国した。会社を守ろうとしたサムライは、一体どちらだったのか?

山本「今回のオリンパス事件で海外の人たちが驚いているのは、不正を働き、そのことをずっと隠してきたオリンパス社の役員たちが私腹は肥やしてなかったということなんです。ウッドフォード氏は会社の過ちを正そうとした自身やサポートしてくれた一部の社員たちをサムライ、今回の解任劇を黙って見ていた役員たちを愚か者だと称しているわけですが、役員側の立場に回れば、ウッドフォード氏のほうが空気を読まずに勝手に暴走した愚か者だということになるんです。もちろん不正を明らかにしようとしたウッドフォード氏の行動は企業ガバナンス的に正しいのですが、現体制を守ろうとした役員たちの心情は日本人として理解することはできる。ウッドフォード氏はサムライという言葉を使っていますが、侍/武士は言ってみれば封建時代の既得権者でもあるんです。侍が正しい存在という考えは、幻想にすぎません。また、菊川会長は私腹を肥やしてはいないものの、10年間にわたって大企業のトップにいた。権力の座に長くいると、判断力が鈍り、組織は腐敗していくものです。どちらがサムライで、どちらが愚か者なのかは、本作をご覧になった方に判断してもらえればと思います」

 創業から99年という長い歴史を持つオリンパス社で起きた大不祥事。オリンパス社だけの問題ではなく、不正の事実を見逃してきた監査法人、オリンパス社の怪しい財務状況に気づかずにいたメインバンクの在り方など、掘り下げれば下げるほど、日本特有の企業社会の暗部が広がっていく。

「戦後の復興期は、みんな一丸となって働くという日本的なやり方がよかったわけです。そのお陰で日本は復興し、高度経済成長を遂げることができた。でも、国際化の時代は日本だけで通じるやり方ではやっていくことはできません。組織のトップを守ろうという意識だけでは、企業は成り立たないんです。じゃあ、どうすれば組織を変えることができるのかと問われても、僕には具体策を提示することはできません。でも問題があることを認識し、その部分を改善し、組織を変えていく努力をしていかないことには船は沈んでしまいます。大相撲やレスリング界でもパワハラ問題が起きているように、旧来の組織論では通じない時代になっています。オリンパス事件はどの企業にもどの組織にも共通する、普遍的な問題ではないでしょうか」

 映画は最後にウッドフォード氏がオリンパス社から和解金を受け取ったことを伝えてエンディングを迎えるが、事件はまだ終結していない。ウッドフォード氏はかつて勤めたオリンパスの子会社である英国メーキッド社から半ば嫌がらせのように横領罪で訴えられ、ウッドフォード氏はオリンパス社の報復だと法廷で争っているところだ。日本での劇場公開は5月19日(土)から。オリンパス社は本作の公開について沈黙を守っている。
(取材・文=長野辰次)

『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』
監督・編集/山本兵衛 エグゼクティブ・プロデューサー/奥山和由 
配給/太秦 5月19日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(c)チームオクヤマ/太秦
※5月19日、イメージフォーラムにて先着100名に関西土産として話題の「黒忖度まんじゅう」を初日プレゼント。2017年の流行語にもなった“忖度”の味を映画を観ながら噛み締めたい。
https://samurai2018.com/

●山本兵衛(やまもと・ひょうえ)
1973年生まれ。米国マサチューセッツ州の高校を卒業、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』はニュヨークエキスポ短編映画祭にて、最優秀フィクション賞を受賞。短編4作目『わたしが沈黙するとき』は15以上の世界の映画祭で上映された。日本に帰国後、2011年に制作会社ヴェスヴィアスを設立。初めてのドキュメンタリー映画『サムライと愚か者』で長編デビューを果たした。現在は2作目となるドキュメンタリーを準備中。

 

盗撮、GPS、Twitterのアカウント暴露……SNS全盛の今、風俗嬢が「怖いこと」とは?

 変わった性癖の持ち主や、思わず可愛いと思ってしまう客との触れ合い、意外な真面目さで信頼感溢れるED店長、ベテランの域に達して得たテクニック――フラットで等身大な“風俗嬢あるある”が大きな共感と笑いを呼び、5月17日には第2弾も刊行されるコミックエッセイ『リアル風俗嬢日記〜彼氏の命令でヘルス始めました』(竹書房)。

 風俗業界に足を踏み入れたきっかけとなった「ご主人様」との異質な日々をうかがった前編。後編では、漫画大ヒットにより降りかかった、喜びだけではない“弊害”についてお聞きした。

2-1-500

前編はこちら:「調教されて風俗入り」は意外と多い? “家畜部屋”で暮らした女性の“リアル”な過去とは

――入店時は、どんな気持ちでしたか? 不特定多数の男性に裸を見られることなど、抵抗感はありましたか?

Ω子さん(以下、Ω) ご主人様とほかの奴隷との「こいつらもやっているから。な? おまえらやってるんだよな?」「はい」といったやりとりを見せられたあとだったので、風俗嬢になるのは当たり前だと思っていました。実際に、1人目のお客様を相手にしたあとは、「こんなもんなんだ」程度です。「裸を見られて嫌」とか、「好きでもない人と、こういうことをするなんてつらい」という感情はありませんでしたね。そもそも「お金を稼いでご主人様に気に入られよう」という感情だけだったので、“お客様”を見ていなかったんだと思いますが。

――ご主人様との関係を断ち、そうした目的がなくなってからも働き続けていましたが、目的なく働くのはしんどそうです。

Ω 惰性で働いていて、だけどすっぱりと辞めるのも難しかったんですよね。だって、その日勤務すれば、その日のうちにまとまった稼ぎが得られますから。お金が貯まったら辞めようと思っていましたが、店長から講習を受けたあとは劇的に指名が増え、定期的に指名してくれるお客様には愛着が湧き始めました。率直に「今日はうれしかったよ」「気持ちよかったよ」などと言ってくれて、やりがいを感じるようになったんです。そうなると、仕事後の達成感も以前とはまったく違って。指名数やお金で結果がわかりやすく見えるのが、働き続けた動機の1つです。

――仕事の目的や意味を見いだし、プロとして再始動されたんですね。

2-1-500 近年よく、性風俗業に従事する女性とセットで語られる“誇り”。仕事に対する“誇り”を、ほかの仕事よりも声高に論じがちな業界ではないだろうか。対照的に、「後ろめたさを持たねばならない」という圧力も受けがちだ。しかし、Ω子さんの作風からは、そのどちらも感じられない。こんな描写が象徴的だ。

「風俗嬢だって働く立派な女性であってうんたらかんたら」と高説するお客様に、シコシコと手コキをしながら心ない笑顔で、「うんありがと」とドライに対応する。一方で、下ネタを苦手とする女友達の前では、「ヘルスで働いているなんて死んでも言えない」と固まり、「性の多様化などで風俗も昔よりは偏見が減っているとのことですが やはり友人 親族に言えるような仕事ではありませんからね」と客観的に分析する。

Ω “誇り”を持って風俗をされてる方もいると思いますが、私個人はドライです。それに、「親や友人に言えないような仕事をしている」という自覚はありつつも、別に卑下することもありません。そのあたりもドライですね。だって、差別したり何か言ってくる人がいたとしても、その人は私のすべてを知っているわけじゃないし、私は私で「こう思っているよ」と伝えているだけで、あまり気にしていません。

――「人に言えない」ということで、Ω子さんの職業を知っている友人は、作中に登場する男友達くらいでしょうか。

Ω あとは元・同業者の子と、彼女の友人で偏見がないとわかっている子ら、何人かですね。

――「偏見がない」のはどのようにわかったんですか?

Ω 元同業者の子が、「あの子なら気にしないから大丈夫だよ」と言っていたんです。なので伝えてみると、「あ、そうなんですか」とあっさりしていましたね。

――これだけ有名になると、自ら言わずとも友人に“身バレ”しそうです。

Ω そうですね。絶対にバレるだろうなと思い、連載前、昔から漫画をアップしていたTwitterアカウントを削除しました。でも、それだけじゃ、親しい友人には効きませんでしたね。あるとき、私のプライベートアカウントでつながっている子が、『リアル〜』の単行本の画像を「今日買ったよ」というコメントつきでアップしていたんです。「えっ……!?」と、びっくりしてしまって。その後ひさしぶりに会う機会があったら、「あの漫画、Ω子ちゃんだよね。すごく面白かったよ!」とだけ言われました。それ以上、掘り下げて聞いてくることもなく、それっきりです。今も変わらず仲良くしてくれる、大人な友達に感謝ですね。

2-3-500 一方で、突然フォローされたアカウントに対し、「なんとなく友人のようなアカウントだな」という勘が働き、つぶやきをチェックしてみると。数日前にΩ子さんと一緒に行ったカフェの画像をアップしており、予感は確信に変わる。彼女のつぶやきは、まるでΩ子さんへの辛辣な“エアリプ”のように思えるものだった。

「一緒にいた友人 絶対風俗嬢だし」

「おかしいと思ってたんだよ」

「ご立派なこと言ってるけど ただの風俗漫画でしょ」

「そうやって一生 周りの友人を騙して生きていけばいいんじゃない?」

――やはり、絵柄でバレてしまったんでしょうか。

Ω そう思います。でも、常々私もボロが出ていたんですよね。夕方から夜中にかけて「仕事が終わった」とツイートし、結果的に夜職の生活サイクルを匂わせるつぶやきをしてしまったり。私は自分の職業に嘘をついて伝えていたので、もしかしたら、しらじらしい嘘をつく私が許せなかったのかもしれません。彼女とはその一件以降、一切かかわりを持っていません。

――作中、彼女のつぶやきを読んだΩ子さんが、「別に犯罪を犯しているわけでもないのになあ」としんどさを吐露する場面が印象的でした。

Ω 彼女のツイートはまるで犯罪者扱いだったので。人に自慢できるような仕事じゃないけど、罪は犯していないし、迷惑もかけていない。私は私でやりがいを感じているだけなのになあ、と。でも、漫画を描いている以上、こういうこともあるかなとは想像していました。ついにきたか……という感じでしたね。

――広告の出現率が半端ではない印象です。話題になり、広告も増えることで、陰ながら肝を冷やしていたんでしょうか。

Ω ヒヤヒヤしましたね。でも、広く読んでいただけた方が、いい。バレたらバレたで仕方ない! と。今お話した2人以外にも、もしかしたら気づいている友人はいるだろうなとは思います。でも何も突っ込まずに付き合ってくれる。すごくありがたいですね。

――Ω子さんの漫画が売れることで、かつてないライトでポップな風俗嬢描写に、「私も風俗嬢になりたい」と憧れる方もいそうです。

Ω 実際、「漫画読んで、楽しそうだから風俗嬢になってみたい」というDMをいただきます。今それが、ちょっと悩みの種でもあるんです。「いや、ちょっと待って!」と言いたいんですよ。

担当編集 最初の頃は意識的に楽しく明るい話の雰囲気にしてもらったので、読者の方々から単純に「風俗って楽しそう!」と思われたのかもしれません。だからか、最近ではときどき重めの話を描いてくださいます。

Ω 「楽しいだけのお仕事」では、絶対にないです。そこは忘れないでほしいです。人に勧めるような仕事ではないと思っているし、「親にも言えないし、離れていってしまう友達もいる。それでも必要だったりやりたいと思う人は、やってもいいと思う。自己責任で」としか言えないですね。

2-4-500

 作中、Ω子さんは「職場にも友人の理解にもとても恵まれている」としているが、それは風俗嬢として「当たり前の環境ではない」と自覚する。だからか、「こんなにきれい事ばかりのはずがない」といった声も届くという。人の捉え方は千差万別だ。離れる友達や家族もいれば、そうでないこともある。風俗で働くことにより「何が起こるのか」にまで想像力を働かせるためには、『リアル〜』は等身大で知ることができる教材にもなりそうだ。

――数字では割りきれないと思いますが、あえて比率にすると、楽しい:つらい、どうでしょうか?

Ω お客様によりけりです。いいお客様だと、楽しい7:つらい3。面倒くさいお客様は、楽しい0:つらい10。だから、トータルで5:5くらいですね。

――嫌な客、というと、作中に登場した帰宅時に待ち伏せる男が浮かびます。

Ω 私は経験はないですが、すごくきれいでサービスも素晴らしく、すぐに予約で埋まってしまう子がいるんですが、彼女は出待ちされていると聞いたことがあります。目的は、「店外デートに誘いたい」とか、「プライベートの姿が見たい」とかだと思いますが、最近はスタッフがいろいろと対策をしているようです。

――スマホの普及による盗撮被害などはいかがでしょうか?

Ω 講習時に指導されて、お客様のカバンは戸棚の戸の裏に置くようにしています。どうしても入らない大きさの場合、体から見えない死角に置いています。

――動きの怪しい客はいませんか?

Ω 一度、スーツケースを持った方がいて、いつも通り戸の裏に置こうとしたら、「いや! いいから、こっちに置いておいて」と怪しいことを言うので、そのときはスーツケースのファスナー部分が埋まるように、さりげなくバスタオルを乗せました。

――あくまでもさりげなく。

Ω 「警戒されている」と思うと、お客様も落ち着かないでしょうしね。

――機転を利かせなければならないことが、本当にたくさんあるんですね! 『リアル〜』は、面白いエピソードだけではなく、そうした数々の体験も昇華されており、「楽しそうだから」と手放しで憧れる読者の方へのブレーキにもなりそうです。

Ω そうした、読者の方に対して「ちょっと待って!」という意識を持ち出したのは、ごく最近です。描き始めた頃は、「とにかく楽しんでもらいたい」という気持ちの比重が大きかったですね。エピソードもすべて描いているわけではなく、面白くなりそうなことを取捨選択してるし、ギャグにもならない嫌な客のことは描いていません。そういうドロドロしたものは、それが得意な人が描いた方が面白いでしょうし、私は笑いながら楽しく読める漫画が好きなんですよね。誇るわけではないし、かといって卑下もしないけど、腫れ物として扱われるのは違う。だから、「こういう世界もあるんだ」「こういう人もいるんだ」とフラットに読んでいただき、楽しんでもらえたらうれしいです。

(文=有山千春)

 

<著者プロフィール> 

Ω子/おまΩ子(おめが・こ/おまおめこ)
電子コミックサイト・めちゃコミックで『リアル風俗嬢日記』を連載中。単行本第2弾『リアル風俗嬢日記〜今日も元気にヌいてます〜』(竹書房)は、5月17日発売。