SKE48卒業生・酒井萌衣が語る、メンバーから見た48グループ、そして現在のアイドル界

 今や、国内だけで300人を超える巨大組織となった48グループ。その公式ライバルとして設立され、48グループと肩を並べるほどの人気となった坂道シリーズ。2010年にSKE48加入後、7年間活動した酒井萌衣は、それらのグループにどんな思いを抱いているのか。卒業した現在の活動と合わせお話を伺った。これを読めば、11月に多数放送される、スカパー!のアイドル番組が何倍も楽しめるはずである。

――SKE48のオーディションを受けたのは12歳の時ですよね。きっかけは何だったのでしょう?

酒井萌衣(以下、酒井) ほぼノリでしたね。ちょうどAKBが流行りだしていた時で、テレビを見ていたら、SKEのメンバー募集をやってたんです。それで、「地元の名古屋だったらやれるかな?」と思って。

――オーディション自体、受けたのは初めてだったんですか?

酒井 はい。小学校の時はずっとバスケばかりやって、芸能に興味はなかったんです。本当に普通の女の子でした。

――SKEに入って、自分のことを推してくれるファンがいるんだと認識したのは、どんなタイミングでしたか?

酒井 初めてファンレターをもらった時ですね。嬉しかったです。お披露目してすぐでした。

――酒井さんにとって、ファンの方ってどんな存在ですか?

酒井 私のワガママを聞いてくれる人ですね。みんな心が広い人が多いんですよ。人のこと悪くも言わないし、ファンの人同士も仲良かったりして。握手会の時も、レーンが明るい雰囲気でした。

――SKE時代で、一番嬉しかったことは何でしょう?

酒井 総選挙でランクインした時は、めちゃくちゃ達成感感じました。その前の年は、速報は入ってたのに本番入らなくて…それがめちゃ悔しくてすごい泣いたんです。もう一生分泣いたんじゃないかってくらい。

――では、SKE時代に一番辛かったことはなんですか?

酒井 仲の良かった同期が卒業した時ですね。初めて人の卒業で泣きました。

――ご自身も卒業するわけですけど、その時はどのような心境でしたか?

酒井 もともとお芝居がしたかったんです。SKEにいた時も、お芝居をする機会はあったんですが、名古屋にいると活動が限られてくるので、東京に出て一から頑張ってみようと思って、卒業を決めました。

――卒業を発表した時、ファンの方の反応はどうでした?

酒井 ショック受けてる方は多かったですね。「これからじゃん」っていう言葉は結構いただきました。

――卒業と同時に上京されたんですか?

酒井 そうです。もう「孤独」って感じでした。東京にはまだ友達もいないし、いつも一緒にいてくれたメンバーとかもいないわけですから、一人でいても不安でした。

――逆に「自由になった」みたいな感覚はなかったんですか?

酒井 よく「自由に恋愛できるようになったでしょ」とか言われるんですけど、私、恋愛にあまり興味がないので(笑)。別に、グループにいた時からそこにこだわってはいなかったですし。それよりも、仕事面の不安が大きかったです。

――そういう孤独感みたいなものは、どうやって克服したんでしょうか?

酒井 「結局、人生ってひとりだな」って思ったんですよ(笑)。自分の人生に他人が口出したところで、結局決めるのは自分じゃないですか。それに気づいたんですね。友達がいなくたって、別に友達が何かを決めてくれるわけじゃないし、そんなことを思って乗り越えてきました(笑)。

――今は、舞台を中心に活動されていますが、アイドル時代とは生活は変わりましたか?

酒井 変わりました。お仕事の内容も全く違うので。舞台だと、自分の芝居を評価されるわけじゃないですか。そういうプレッシャーがあります。

――今まで演じた中で、「これは難しかったな」という役はありましたか?

酒井 私、引きこもりなので(笑)、普通の女の子で明るい子の役が苦手でした。

――家で引きこもってる時は何をされてるんですか?

酒井 YouTube見たり、テレビ見たり、漫画読んだりしてます。結構な用事がないと外に出ないんです。

――11月にスカパー!の「スペースシャワーTV プラス」で、ワルキューレの番組が放送されるのですが、アニメや声優さんの番組などは見ますか?

酒井 見ますね。声優さんのユニットって、「キャラがそこにいる」って思えるじゃないですか。そこが好きでなんす。声優さんのライブは、横浜アリーナまで見に行ったこともあるんですよ。

――SKEの番組だと、『SKE48 ZERO POSITION』が放送中です。出演時の思い出などはありますか?

酒井 番組のロケで、旅館に泊まったことがあったんです。その時、2人部屋だったのに、仲のいい子を他の部屋から連れてきて、6人で寝てたんです。そしたら、次の朝が寝起きドッキリだったらしくて。「寝ているはずの部屋にメンバーがいない」ってなって、スタッフさん困ったらしいです(笑)。最後に私達の部屋に来たら、全員いて、ああよかったって。
あとは、運動会がめちゃくちゃ楽しかったです。期ごとの対抗だったんですけど。ファンの人が見たいものを作ってる感じですよね。

――ファミリー劇場の『AKB48 ネ申テレビ』も長寿番組ですよね。

酒井 ネ申テレビはよく見てますし、握手会時に密着したりしてましたね。

――SKEから見て、AKBはどんな存在ですか?

酒井 最初は、手が届かないような存在でした。前田敦子さんとかいらっしゃった時は、圧倒的だったので。AKBがあって、すごく離れてSKEがあって、という感覚で。

――ライバル心みたいなものもあるんですか?

酒井 めちゃくちゃライバル心があったわけではないですけど、やっぱりグループとしては、他のグループよりもいいって言われたい、というのはありました。

――『STU48 イ申テレビ』など、各グループのバラエティ番組も放送されます。そういうグループは、どういう感じで見ていましたか?

酒井 どこも負けじとやっているところが凄いなと思います。SKEは、トップの松井珠理奈さんが熱い人なので、後輩たちもそこについていく点では負けていないです。

――横山由依さんの『京都いろどり日記』も放送されます。横山由依さんの印象はどうですか?

酒井 コンサートの時ぐらいしか、お会いしていないんですが、SKEのことも色々気にして下さっていましたね。あとは、どんな後輩が挨拶しても、きちんと目を見て対応してくれる方です。高橋みなみさんもそうでしたけど、周りに流されない強さはありました。

――「乃木坂46」「欅坂46」のスペシャル番組も相次いで放送されるのですが、坂道グループについては、どんな印象ですか?

酒井 もう「可愛い~」って感じです。私、乃木坂卒業生の深川麻衣さんに似てるって言われてたんですよ。面識は無かったんですけど、ファンの方がいい出したらしくて。そしたら、乃木坂が名古屋で握手会した時に会いに来て下さったんです。それで、一緒に写真撮ったら「似てる!」ってなって(笑)。それから仲良くさせていただいています。

――いわゆる「ライバル心」みたいなのではないんですね。

酒井 だって可愛いじゃないですか。曲も素敵な曲ばっかりですし。48グループは48グループの色があって、坂道グループは坂道グループの色があると思っています。

――欅坂についてはいかがですか?

酒井 引きこもりなので、あの大人に反抗するようなタイプの曲は大好きです。共感できるというか。かっこいい。自分でもこの曲やってみたかったな、と思ったりします。

――卒業してから見るSKEって、中にいたときとは、見方が変わったりします?

酒井 変わりますね。卒業してみると、SKEは凄くもがいてる印象ですね。珠理奈さんの体調が悪かったりとか、越えていかなければならない壁がいっぱいあった一年だと思うんです。でも、今はだいぶ乗り越えてきて、一人ひとりが頑張ってるなって思います。SKEのドキュメンタリー映画も公開されていますが、そこでも描かれていますし。

――映画のお話になりますが、出演されている映画「最果てリストランテ」が来年公開になりますね。

酒井 映画は初めてだったんですが、緊張しました。舞台ともまた違う感じで。舞台は何をしていても見えるじゃないですか。でも、映像は、限られた部分しか映さないので、そこが違いましたね。難しかったですけど、個人的には映像のお仕事をたくさんしたいと思っているので、そのスタートとしては、いい経験でした。

――11月は舞台があるんですよね。

酒井 はい。11月の16、17日に本所地域プラザ BIGSHIPで行われる「好きにならずにいられない」に出演します。ラブコメディなんですけど、今までやったことがないタイプです。コメディは大好きなので、頑張ります。

――最後に読んでいる方にコメントがあれば。

酒井 これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。ぜひスカパー!見て下さい(笑)。

(取材・文=プレヤード/撮影=尾藤能暢)

●酒井萌衣(さかい・めい)
1997年生まれ。愛知県出身。2010年、SKE48 4期生オーディションに合格し、グループに加入。2016年の選抜総選挙では63位に入る。2017年にグループを卒業。以降、舞台を中心に女優として活動中。2019年公開予定の映画「最果てリストランテ」に出演。
Twitter:@mei__sakai
Instagram:https://www.instagram.com/sakai__mei/

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関ジャニ∞・大倉忠義も警告……ヤラカシが「嫌がらせ行為するワケ」を臨床心理士が解説

 11月8日、関ジャニ∞の大倉忠義が、公式携帯サイト・Johnny’s web内の連載「関ジャニ戦隊∞レンジャー」で、「ルールを守らない方達について」というテーマのブログを更新した。そこに書かれていたのは、過激ファンの存在についてだ。駅や空港で執拗に追いかけてくる、カバンの中にモノを入れる、突然手をつなぐ……そんな大倉が実際に受けた迷惑行為を告白し、「すごく憂鬱」「怖い」「ストレス」などと本音を吐露したのだ。

 こうした過激ファンは、かねてより「ヤラカシ」と、ジャニーズファンの間で呼ばれている。いわゆる“マナーの悪い追っかけファン”で、大倉が受けたような行為以外にも、アイドルの自宅や学校に押し寄せる、最寄り駅で待ち伏せる、アイドルの乗った移動車を追走するといった、ストーカー同様の迷惑行為を繰り返す者を指す。当然、ジャニーズ事務所はヤラカシの存在に頭を悩ませており、Johnny’s webのトップページには「大切なお願い」として、「マナーに反する過激な行為を行う」に対する警告文も掲載しているのだ。

 こうしたヤラカシ問題に、多くのジャニーズファンは激怒。応援するアイドルが危険に晒されている事態は捨て置けないと、「ストーカー規制法で逮捕してほしい」「事務所と警察は早く対策を取って」などとネット上で声を上げているが、一方で「ヤラカシは、なぜ大好きなアイドルに嫌われるようなことをするの?」「大好きなアイドルに嫌がられることをして楽しい?」といった疑問も飛び交っている。ヤラカシの複雑な心理とは一体どのようなものなのか? 今回、神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授である臨床心理士の杉山崇氏に話を聞いた。

 杉山氏はまず、ヤラカシにとって「『アイドルと自分』は、『アイドルとファン』の関係性ではなくなっている」と、その心理状況を指摘する。

「アイドルをあまりにも身近に感じすぎるあまり、家族や恋人のような存在になっているのでしょう。母親が家族のことを心配して世話を焼く感覚で、自分もアイドルのことを気にかけているといった感じです。このように、ヤラカシの頭の中では、アイドルはかなり身近な人物なのですが、そんな人に、自分の存在を無視されるのは、とてもつらいこと。愛情の反対は、“無視”ですから、たとえアイドルから向けられる感情が憎しみであっても、無視されるよりはいい……となるわけです」

 確かに、家族や恋人から、理由もなく無視され続ければ、「どうして?」という悲しみがわき、自分に何でもいいから反応を返してほしいと思うだろう。そして、返してくれたら「よかった」「うれしい」と感じることを、「理解できる」という人は少なくないのではないだろうか。

 また、杉山氏は、ヤラカシに境界性パーソナリティの傾向も見られるという。

「境界性パーソナリティの人は、人間関係のストレスを抱え込む力が弱い。そのため、大好きな相手が自分の気持ちに応えてくれずストレスが溜まると、途端に相手のことを大嫌いになり、嫌がらせをしたり、悪口を言うなど、攻撃するようになる。そうすることで、自分の存在を維持させようとするのです」

 アイドルに接触を図ろうとするヤラカシとは違うものの、ネット上で、少し前まで応援していたはずのアイドルに、罵詈雑言を浴びせかけているというファンを見たことはないだろうか。そういった人もまた、境界性パーソナリティの傾向が見られると言えるかもしれない。

「境界性パーソナリティの“種”のようなものは、誰しもが持っています。割りと、子どもってそういうところありませんか? 好きという気持ちが強すぎて、構ってくれないと相手が困ることをしたくなる……という。こういう心理状態は、心理学用語で“退行”と呼んでいます」

 ブログに警告文をつづった大倉の心境について、杉山氏は、「かなり追い詰められていると思います」と見解を述べる。

「ヤラカシは、何をどこまでやらかすか予想ができないため、大倉さんは戦々恐々としているのでしょう。人間は、不安のスイッチが一度入ると、『こんなことも、あんなこともされるのでは?』と連想し、さらに不安が増すもの。大倉さんがブログに書いた内容は、とても理解ができます」

 大倉は、迷惑行為を「無視することが最大の抵抗だと思っていました」としつつも、「でも、言わずにはいられない」と、今回のブログを書いた背景を説明している。

「無視は、ヤラカシに最大の苦痛を与えるという意味では確かに“最大の抵抗”です。先ほども述べた通り、無視は愛情の反対ですから。しかし、何かしらのリアクションを求めるヤラカシは、無視されればされるほど、諦めるのではなく、ますます行動をエスカレートさせてしまう。なので、アイドルは、ヤラカシに“上手にリアクションすること”が大事。もちろん相手に、『ヤラカシをするといいことがある』と思わせてはいけないので、時々『やめてください』『ほかの人にも迷惑です』と伝える程度がいいのではないでしょうか。事務所に間に入ってもらっても、ヤラカシにとってそれは『アイドルに無視された』のと同じですし、それで迷惑行為がやむことはないと思います」

 そこで気になるのは、ヤラカシは“治るのか”という点である。例えば、ストーカー規制法違反で逮捕されたとしても、懲りずにまた同様の行為を繰り返す可能性も否定できない。

「改善はできます。ポイントは『現実感覚を取り戻せるか』です。例えばヤラカシ自身が逮捕される、逆にアイドルが恋人と結婚するなど、第三者が介入し、ヤラカシに現実を突きつけることで、改善することはあると思います。また、現実に耐え切れず、余計ファンタジーに逃げ込んでしまうヤラカシには、カウンセリングを通しての改善が期待できるのではないでしょうか。もしくは、ヤラカシが自ら気づくケース。『私は、こういうことをやるくらい、あなたのことが好きなのよ!』など、『ヤラカシ行為=正しい』と思いこんでいた人が、ふと冷静になったとき『私、一体何をやってるんだろう?』と気づき、足を洗うこともあると思います」

 大倉はブログで、「ルールを守らない方達」のことを、一度も「ファン」とは書かなかった。もしヤラカシたちが、大倉と自分のことを「アイドルとファン以上の関係」と信じ込んでいるのだとしたら、一刻も早く「ファンですらない」ことに気づいてほしいものだ。

“食べ物の味がしない”20〜30代女性が増加中! 「味覚障害」の危険性を専門医が警鐘

mikakushogai 何かを食べたら味がする……その当たり前の感覚が得られなくなる疾患「味覚障害」をご存じだろうか? これまで、中高年や高齢者に多いとされてきたが、最近では若年層にも増えつつあるといい、特に料理などで味覚を使う機会が多い女性は、症状に気がつきやすいといわれている。味覚障害の症状や発症の原因、そしてそのリスクについて、専門医に聞いた。

■味がしない、甘い物を苦く感じる……味覚障害の症状とは

「味覚障害の代表的な症状は、食べたものの味がわからない、薄味に感じてしまうなどの『量的障害』と、本来甘いはずのものを苦く感じてしまう、何も食べていないのに口の中が苦いなどの『質的障害』の2つに分けられます」

 そう話すのは、兵庫医科大学病院で味覚外来を担当する任智美医師。そのほかにも、塩味や甘味など、ひとつの味を強く感じてしまう「味覚過敏」や、何を食べても嫌な味に感じる「悪味症」など、さまざまな症状があるとのこと。

「味覚障害になると、食事の内容や日常生活にも悪影響が表れます。味がわからなくなる量的障害の人は、鈍くなった味覚を補うために塩分や糖分を余計に加えて、味を濃くする傾向があります。それによって、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす恐れがあるんです」

 一方、何を食べてもまずいと感じる質的障害の人は、食事を苦痛に感じてしまい、食欲が減退することでうつ症状につながることもあるそう。味覚だけの問題でなく、心身の健康に深くかかわってしまうようだ。

「味覚障害は、これまで中高年から高齢者の女性に多い病気でした。しかし、この数年で、20〜30代の味覚障害患者も増加しているんです。中には、自分の味覚障害に気がついていない人も多くいると考えられています」

 女性に多い理由は、料理をする機会が多く、味の変化を感じやすい環境にあるから、とのこと。実際には、性差はあまり関係なく、誰しも発症する可能性があるが、その原因は多岐にわたるという。

 発症の原因の多くは、舌の表面にある「味蕾(みらい)」という器官に関係している、と任先生。

「私たちは、舌にある味蕾を介して大脳の味覚野に味物質を伝えることで、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味という5つの味を認識します。しかし、何らかの原因によって、味が伝わるプロセスが妨げられると、味覚が異常を来してしまうのです」

 味覚障害発症の原因はさまざま。そのひとつとして挙げられるのが、血液中の亜鉛不足だ。

「『亜鉛』は、味蕾の中にある味細胞が、正常に働くために必要な栄養素です。偏った食生活を送り、血液中の亜鉛が不足すると、味を感じることができなくなります。亜鉛はカキなどの魚介類に多く含まれているのですが、食生活の欧米化によって肉を食べる量が増えたり、魚介類を食べる機会が減ったことも原因のひとつとして考えられています」

 また、30〜40代の女性に多いのが、ダイエットによって引き起こされる味覚障害。肉類に含まれる動物性タンパク質には、亜鉛の吸収をサポートする働きがあるにもかかわらず、ダイエットと称して肉を食べなくなると、結果的に亜鉛が不足する原因になるとのこと。また加工食品ばかりを摂るなどの偏った食生活も、亜鉛を含めた栄養バランスを崩す原因となり、味覚障害を引き起こすこともあるという。

「そのほかにも、服用している薬の副作用で亜鉛が体外に出やすくなったり、加齢によって消化吸収の機能が衰えて亜鉛が体に吸収されにくくなるなど、亜鉛が不足する理由もさまざまです。鉄やビタミン不足による貧血や胃腸炎などの消化器疾患の症状のひとつとして味覚障害が表れることもあるので注意が必要です」

 そして、正常な味が感じられない場合は、ストレスやうつ病などの心因性の味覚障害である可能性も。一口に味覚障害といっても、原因の特定が難しい病なのだ。

■まずは亜鉛の摂取から! 味覚障害の治療法

 味覚の低下や変化は、徐々に進行していくケースが多く、自覚しにくいのも特徴だ。そのため、任先生のもとを訪れる患者の中には、家族に“料理の味の変化”を指摘されて発覚するケースが多々あるという。そこで「ひょっとして、自分も味覚障害かも?」と感じている人は、まず以下の項目を確認してみよう。

1:水1リットルに対し小さじ1/2の割合で食塩を入れた塩水10ccを口に含んだときに、塩味をまったく感じない
2:水1リットルに対し小さじ1杯の割合でグラニュー糖を入れた砂糖水10ccを口に含んだときに、甘味をまったく感じない
3:本来の味とは違う味がしてしまう(甘味→苦味など)
4:何も食べていないのに口の中が苦い
5:塩味だけがきつく感じる

「この項目にどれかひとつでも当てはまったら、味覚障害の可能性があります。まずは亜鉛を摂ることを心がけ、牡蠣、うなぎ、牛肉、ごま、大豆やアーモンドなどの食品を積極的に食べたり、サプリメントで亜鉛を補うことをお勧めします」

 ただし、サプリメントの場合は、摂りすぎには注意が必要。亜鉛を過剰に摂ると、貧血や免疫力の低下などの“過剰症”に陥ることもあるので、用量を守って飲むように心がけよう。

「原因が亜鉛不足の場合は、若い人であれば食生活を変えるだけでも味覚機能が改善されます。しかし、1カ月ほど意識的に亜鉛を摂っていても味覚に異常を感じるようであれば、ほかの原因が考えられます。その際は、味覚外来を掲げている耳鼻咽喉科や歯科などの医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けてください」

 味覚障害は生活習慣病の原因となるなど、さまざまなリスクも抱えているが、何より食事をおいしくないと感じるのはツラいこと。普段、あまり“味”を意識していない人も、健康を維持するために自分の味覚を見直してみるといいかもしれない。
(真島加代/清談社)

任智美(にん・ともみ)
兵庫医科大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師。現在の日本では数少ない味覚外来を担当し、年間約200人の味覚障害患者を診察。味覚障害に関する論文も多数発表している。

特定機能病院兵庫医科大学病院

「いつか阿佐ヶ谷ハイムを……」阿佐ヶ谷姉妹“ルール”なき共同生活のススメ

 人情味あふれる町・阿佐ヶ谷の6畳一間のアパートで、本物の姉妹でない2人の40代女性が、6年間に及ぶ共同生活……その実態は、とにかく「のほほん」だった――。

 人気お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のリレーエッセイ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が発売された。ひょんなことから始まった新しい住まい探しを経て、現在は別々の部屋(隣同士)に暮らす2人が、あの長くて短かった蜜月の日を思い返す。そこには「自分以外の誰かと一緒に暮らすこと」のヒントがたっぷりと詰め込まれていた。

***

――この本は夫婦が読んでも、すごく共感できる部分とかがあると思うんですよね。誰かと上手に暮らしていく秘訣みたいなのが詰まっている。

美穂(妹) 上手に暮らせてるんですかね。

――普通に暮らしてたら見過ごしてしまうことも、言葉にして初めて気づく……みたいな。

江里子(姉) それこそ6年ぐらい、空気のように当たり前だと思って、6畳一間に住んでしまっていました。周りから「そんな狭いところに、よく一緒に住めますね」と言われつつ。「どこがおかしいのかな」って思ってたんですけど、書かせていただいてるうちに、美穂さんにもいろいろと折り合いをつけてもらっていたんだなあって。そういう意味では、確かに少し冷静になれたというか。直接ぶつけられないことを、お互いにね、文章でぶつけ合って、分析して。時には、「あいつめ……」みたいな感じで書いて、少し溜飲を下げて、日常に戻るみたいなことができた気がしますね。

美穂 私のほうが、不満が多かったのかしら(笑)。でも書くことで、ストレス発散になりましたね。世間のみなさんに「お姉さんこういう人なんです」ってわかってもらえたら、うれしいです。ただ2人の間のことなんで……みなさんがそれをどう思うのか心配です……。

――もともと、幻冬舎のウェブで連載されていたものをまとめた本ですが、随時アップされるお互いのエッセイを読むときは、やはり緊張するものですか?

江里子 でも美穂さん、言葉に出して(キーボードを)打つんですよ(笑)。しかも、書いてる最中に「これでどうですかね」って、チェックを強要するみたいなところがあるので。

美穂 どう思う? どう思う? みたいな。

江里子 それで何カ所か、もみ消した部分もあるんですけど(笑)。でもそうですね……輪ゴムのこととかね、布巾のこととか、なかなか直せないんですよ。気をつけてても、ついボロが出ちゃう。それでも、読んでからは少し意識するようにはなりました。

美穂 確かに「布巾が嫌い」なんてこと、一緒に住んでないと気づかない(笑)。隣同士とかだったら、たぶんわからなかったと思います。

江里子 いやいや、美穂さんの観察眼ですよ。琴線に触れるところの独特さはすごいなと思ったけれどもね。

美穂 私だって「そうか私の服ダサいんだ」ってなりましたよ! 自分でもちょっと考えたくなかったことです。

江里子 「ダサい」って言ってない。まあ、「小学生みたいな靴下」とは言ったけど。

美穂 それなのに、差し色をしたがる。

江里子 昨夜も仕事から帰って、美穂さんの部屋に行かせてもらったんですよ。そこでおしゃれについて話し合って。美穂さん、「お姉さんのファッションは、普通だ」って言うんです。「私のは機能的だ」って。「普通よりも機能のほうが勝ってる」みたいな、そういうことを言われまして。

美穂 おしゃれが、またわからなくなってきてます……(ため息)。

江里子 おしゃれを機能で語っている美穂さんが、ちょっと不思議でしたけど。

■姉が隣の部屋に引っ越して……

――現在はお2人で住んでいたお部屋に美穂さんが残り、隣のお部屋に江里子さんがお引っ越しされて……でも、今でも同じお部屋に集まって、お話ししたりお茶飲んだりは日常的にされてらっしゃるんですね。部屋を別にして、何が一番変わりましたか?

美穂 お姉さんが一番不満だった、お風呂の順番を私が守ってくれないっていうのが解消されたのかしらね。

江里子 ああ、それはあるかしらね……。

――朝のお風呂の順番ですね(笑)。

江里子「頼むから1カ月ごとに、交互にしてもらえないか」と。

美穂 何回も言われたんですけれどもね。

江里子 時には若干、目に涙を浮かべつつ訴えたこともあったんですけど……守って2日。

美穂 2日ぐらいはね。

江里子 あとはお手洗いね。やっぱり同じ生活リズムだと、だいたいお手洗いに行きたくなるのが同じサイクルなんですよね。

美穂 お姉さんはすぐトイレに引きこもるし。30分ぐらい出てこない。

江里子 お手洗いだけが、私の唯一のプライベートルームみたいになって。個室みたいな気分で。

美穂 そこで1人の時間を楽しんでたから。

江里子 楽しんでた(笑)。

美穂 仕方なくLINEで「トイレに入りたいです」って。

江里子 そのストレスは、なくなったね。

美穂 でも別々になったら、お姉さんのほうが、ちょっと寂しそうなんですよ。

江里子 いや、まあでもそうですね。共同生活が私、結構好きだったので。たとえ自分のスペースが1畳未満であっても、やっぱり一緒にいてもらって、好きなときに好き勝手しゃべることができる相手がいるのは、すごく居心地がよかった。

美穂 でも隣だから。

江里子 お互いの部屋の鍵を持ってるので、「行っていいですか」ってLINEで言って、鍵開けて入らせてもらったり。美穂さんは必ず「ちょっと来てもらえますか」って私を呼びつけるんですけど。

美穂 呼びつけるわけじゃない。

江里子 あ、呼びつけてるわけじゃないの?

美穂 そっちの部屋に行くと、よくないみたいだから。

江里子 まだね、ちょっと部屋が片付いてなくて。

美穂 なかなか入れてくれないんですよ。

江里子 1人になってスペースが広くなったら、そのまま物を置きっぱなしにしちゃう。片付けるのヘタだから、そのまま……美穂さんにも見られたくないんですけど。「見られたくない」って言ってるときこそ、ニヤニヤしながら入ってこようとするんで。

美穂 殺し屋みたいににらまれて。怖かったわ。だから私の部屋で、お茶も打ち合わせもすることになって。

江里子 居心地がいいのよ、あそこに散々住んでたし。

――実家に帰るみたいな気持ち……。

江里子 そうです、そうです。

美穂 お姉さんの部屋でもだんらんしたいですよ。

江里子 まだ整ってない。まだ座布団買ってないのよ、ごめんなさい。

美穂 そういうとこの愛情が、ちょっと足りないんだわ。

江里子 だって、あっちのお部屋のほうがいいでしょう。

美穂 うちにご招待する、っていう気持ちが。

江里子 いや、でも美穂さんのためにラグマットとこたつは買ってきたのよ、ほんとに。でも座布団は買ってない。ごめんなさい。だから、敷いてある布団の上に上がっていいって言ってるじゃない。あら、私たちどうでもいい話を……

■「お姉さんのいびきが……」

――いや、永遠に聞いていたくなります(笑)。小さい頃、自分の部屋を持つことに憧れたけど、いざひとり部屋になると妙に寂しくなる感じを思い出しました。

江里子 わかります! でもやっぱり、隣の部屋でそれぞれに暮らしてるっていうのは、すごくいい選択肢を、奇跡的に得ることができたなあと思って。壁1枚向こうで、なんとなく寝起きしてる感じはわかりますし。時々くしゃみの音とか聞こえますし。ああ、生きてるんだなあ、みたいな。

美穂 お姉さんの電話してる声も聞こえますし、テレビ見て笑ってるバカみたいな声も。

江里子 バカみたいは余計じゃない?

美穂 そういう声も聞こえますけど。

江里子 バカみたいがちょっと余計だけど。

美穂 違うアパートだったら、ちょっと寂しいかもしれないけど。今はちょうどいい安心感がありますね。

――先ほどお風呂の話が出ましたが、2人で暮らしていたときは、ほかにもルールを作っていましたか?

江里子 逆に、ルールをあまり作らなかったことで、私たちはなんとか折り合いつけてこられたのかなっていうのはありましたね。

美穂 まったく守られない。

江里子 こういうルール決めたのに!! ってなると、逆にフラストレーションがたまるじゃないですか。ルールでがんじがらめにするよりも、妥協案を探ってくっていうことが、ここまでこられた理由のひとつかなあとも思ってますね。

美穂 得意なことを各自やったり。

江里子 そうねえ。

美穂 お姉さんがお洗濯したりとか。

江里子 お料理は私で、でも汁ものは美穂さんにやってもらうとか。

美穂 得意分野を各自やったりしてたっていうのが、よかったんですかね。

――どうにも我慢できなくなることはなかったですか?

江里子 どうでした? 私よりも美穂さんのほうがあったんじゃない?

美穂 そうですね。いびき。

江里子 いびきね。

美穂 私が結構宵っ張りなんで、起きてるんですけど、お姉さんは10時ぐらいに眠くなっちゃって。

江里子 私、朝型なんで。

美穂 早めに寝ちゃって。寝た途端いびきをかき始める。寝つきがいい。起きないので。そういうときはYouTubeを大きい音量で見て邪魔したり。

江里子 あとビニール袋ね。

美穂 お姉さんはビニール袋のガサガサした音が嫌いで、ちょっと反応するんですよ、寝てても。それをガサガサガサガサやって。何回もやって、うなされるようにしたりとか。

――うなされる(笑)。

美穂 「うーん」ってうなって、ちょっと止まったりする。それが楽しくて。

■姉妹を悩ませる「出ますよ問題」

――本でも美穂さんのパートは、どこか動物の観察日記みたいな雰囲気を感じました。

江里子 姉の観察日記みたいな感じ。

美穂 そう。書くことで楽しく。

――それまですごい仲よかったのに、一緒に住んだら仲悪くなっちゃうっていうこと、結構あると思うんですよ。

美穂 そっか。嫌いにはなってないですね。

江里子 あら、うれしい。美穂さんに、いっつも言われるんです。「嫌いではないんです」と。「普通です」と。まあ、嫌われてない分、いいですね。

美穂 真ん中ぐらい。

江里子 それはありがたいわね。

美穂 好きでも嫌いでもない。普通。

江里子 ほんとね。普通はありがたいわね。普通って大事よね。

――やっぱり、仲いいと思います(笑)。

美穂 仲いいんですかね。どうなんですかね。

江里子 いや、まあね。

美穂 だいたい2人だもんで。

江里子 そうね。一駅、高円寺から歩いたりもしてるしね、一緒にね。

美穂 薬局も一緒に行きますし。

江里子 そうね。ご飯も食べるしねえ。

――最近はそうでもないですけど、芸人コンビは仲悪いっていうイメージあるじゃないですか。それは照れからくるものかもしれませんが。

江里子 照れ……確かに。照れくさいからあんまり一緒にいないとか、よく言われてますね。ただ私たちは……照れも何もあったもんじゃない。全部バレちゃってるから。今さらもう。私はもともとカッコつけだから、こういうインタビューのときも、ちょっといいこと言おうとしたりしますけど、、それもバレてる。美穂さんに「またカッコつけ」って言われて、反省したりするんですけど。

――それを素直に聞けるのが、すごいと思います。

江里子 機嫌が悪い朝なんかはね。時々イラッとするときありますけどね。言葉尻で腹立たしいこととかいっぱい。まあでも美穂さんも……。

美穂 「出ますよ問題」ね(笑)。

江里子 どっちかが扉を先に出るっていうときに。

美穂 「出ますよ」って言ってほしいっていうのがね。

江里子 なんにも言わずに、先にそーって出てくときがあるんですよ。私、それは嫌だと。「出まーす」って一言言ってもらえるとうれしいなって。そしたら、「出ます」って言ってくれるようにはなったんですけど、なぜか「出ますよ」になった。「よ」がつくと、なんかちょっとカンに触って。「よ」のそのニュアンスが、すごく気になる……。それで返事の「はい」をちょっと語気強めに言ったのが、美穂さんに伝わって「なんかすごい機嫌が悪かったけど、あれはなんだったんだ」と。だから私「『出ますよ』の『よ』が気になったの」って言ったら、それから「よ」をやめてくれたのね。

美穂 だって、そのときの「はい」すごかったんですよ。

――気になるところがちょっとずつ違うのも、いいのかもしれないですね。

江里子 たとえ一緒に暮らしていても、感覚は別ですもんね。そこはわかってもらえないんだろうなとは思ってます。

――基本わかってもらえないってところから始まると、わかってもらえたらすごいうれしいですし。

江里子 あと、すぐに嫌いになられちゃうと困るっていうのがあって。そこはわりと心がけてるところ。危機感を持ってるつもりはあります。

――千鳥ノブさんをして「いま一番ヤバい女芸人」と言わしめる美穂さん(笑)。

美穂 あら、喜んでいいのかしら。

江里子 いいのつけていただいたわね。この本読んでいただいたら、ヤバいってわかると思う。

美穂 私、バレちゃうかしら。

江里子 バレちゃうかしら、じゃないわよ。

■テレビは思い出作り

――本に収録されている書き下ろしの恋愛小説でもやっぱり、片鱗が。

美穂 好きなものをいろいろ入れて書いただけなんですけど。

江里子 いやもう私は、この美穂さんの『3月のハシビロコウ』ができたときに、傑作だなと思って。人間の目じゃない、むしろ動物の目から見た世界……そういう感じの不思議さがあって。美穂さんの実話じゃないんですけど、美穂さんというフィルターを通して生まれた作品なんですよ。書きながら、その都度その都度、私にまたチェックを強要するんです。それがどんどんいい感じになってくる。それで私、ちょっと一回筆を折ろうかって思ったぐらい。こんな面白いもの書けないからどうしよう……ってなったぐらい。

美穂 私の小説のほうは、お姉さんの生態をいっぱい入れられたんで。それでなんか、楽しく書けたんですよ。お姉さんはすごい肩に力が入ってて。すごいかっこつけで書いてたので、そこは「かっこつけだな」って指摘しました。

――厳しい編集者ですね……。

美穂 すごいいいのを書こうとしてるっていう感じは出てたので。「お姉さん、リラックスして」って。

江里子 本当に、なかなか書けなくてね……。私、向田邦子さんが好きで。向田さんのエッセイや小説に、すごく憧れてて。

美穂 理想が。

江里子 そうね。理想が高かったのよ。書いている途中で、山崎ナオコーラさんの本を読ませていただく機会があって。「ああ、ほんとにプロの方ってすごいな」って。「どうしたら、ああなれるんだろう」って、やっぱり、そっちに行こうとしてた。

美穂 その傾向は、すごい強い。何回言い聞かせても、そう思っちゃう。

江里子 美穂さんはちゃんと自分の身の丈を知った感じで、無理はしない。今回は本当に勉強になったわ。

――たくさんテレビにも出て、いわゆる「ブレーク」というのを果たしてもなおスタンスを変えないのは、すごいことだと思います。お2人のお話を聞いていて、だからこの本には希望と癒やしがあるんだなと。夫婦や親子やきょうだいでなくても、こういう関係性を築けるんだ……っていう。

江里子 そんないいように言っていただいてるんですけど、自分たちで選択してこうなったわけじゃなくて。成り行きでなっちゃったみたいなところはすごくあって。だから恥ずかしいんですけど。

美穂 こんなにのほほんと、なんにも考えないで暮らしてる人がいるんだと思って、安心してもらえたらうれしいですね。

江里子 これがずっと続けばいいわね。50代になっても、60代になっても。私は夢があって……。

――なんですか?

江里子 ゆくゆくはここに親とかもね、呼び寄せたりして。

美穂 阿佐ヶ谷にね。

江里子 阿佐ヶ谷ハイムをね。

美穂 みんな住める。

江里子 共同体じゃないですけど。親やお友達とか、何人か寄り集まって住んでるような。阿佐ヶ谷ハイムができたら、って。

――冠番組を持つとか、そういうことではなかった(笑)。

美穂 だいたい今も、「テレビに出させてもらえるのは思い出作り」って言ってますし。

江里子 そうね。タモリさんに会えたわね。

美穂 これからも思い出が増えたら、ぐらいですかね。

(取材・文=西澤千央)

「いつか阿佐ヶ谷ハイムを……」阿佐ヶ谷姉妹“ルール”なき共同生活のススメ

 人情味あふれる町・阿佐ヶ谷の6畳一間のアパートで、本物の姉妹でない2人の40代女性が、6年間に及ぶ共同生活……その実態は、とにかく「のほほん」だった――。

 人気お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のリレーエッセイ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が発売された。ひょんなことから始まった新しい住まい探しを経て、現在は別々の部屋(隣同士)に暮らす2人が、あの長くて短かった蜜月の日を思い返す。そこには「自分以外の誰かと一緒に暮らすこと」のヒントがたっぷりと詰め込まれていた。

***

――この本は夫婦が読んでも、すごく共感できる部分とかがあると思うんですよね。誰かと上手に暮らしていく秘訣みたいなのが詰まっている。

美穂(妹) 上手に暮らせてるんですかね。

――普通に暮らしてたら見過ごしてしまうことも、言葉にして初めて気づく……みたいな。

江里子(姉) それこそ6年ぐらい、空気のように当たり前だと思って、6畳一間に住んでしまっていました。周りから「そんな狭いところに、よく一緒に住めますね」と言われつつ。「どこがおかしいのかな」って思ってたんですけど、書かせていただいてるうちに、美穂さんにもいろいろと折り合いをつけてもらっていたんだなあって。そういう意味では、確かに少し冷静になれたというか。直接ぶつけられないことを、お互いにね、文章でぶつけ合って、分析して。時には、「あいつめ……」みたいな感じで書いて、少し溜飲を下げて、日常に戻るみたいなことができた気がしますね。

美穂 私のほうが、不満が多かったのかしら(笑)。でも書くことで、ストレス発散になりましたね。世間のみなさんに「お姉さんこういう人なんです」ってわかってもらえたら、うれしいです。ただ2人の間のことなんで……みなさんがそれをどう思うのか心配です……。

――もともと、幻冬舎のウェブで連載されていたものをまとめた本ですが、随時アップされるお互いのエッセイを読むときは、やはり緊張するものですか?

江里子 でも美穂さん、言葉に出して(キーボードを)打つんですよ(笑)。しかも、書いてる最中に「これでどうですかね」って、チェックを強要するみたいなところがあるので。

美穂 どう思う? どう思う? みたいな。

江里子 それで何カ所か、もみ消した部分もあるんですけど(笑)。でもそうですね……輪ゴムのこととかね、布巾のこととか、なかなか直せないんですよ。気をつけてても、ついボロが出ちゃう。それでも、読んでからは少し意識するようにはなりました。

美穂 確かに「布巾が嫌い」なんてこと、一緒に住んでないと気づかない(笑)。隣同士とかだったら、たぶんわからなかったと思います。

江里子 いやいや、美穂さんの観察眼ですよ。琴線に触れるところの独特さはすごいなと思ったけれどもね。

美穂 私だって「そうか私の服ダサいんだ」ってなりましたよ! 自分でもちょっと考えたくなかったことです。

江里子 「ダサい」って言ってない。まあ、「小学生みたいな靴下」とは言ったけど。

美穂 それなのに、差し色をしたがる。

江里子 昨夜も仕事から帰って、美穂さんの部屋に行かせてもらったんですよ。そこでおしゃれについて話し合って。美穂さん、「お姉さんのファッションは、普通だ」って言うんです。「私のは機能的だ」って。「普通よりも機能のほうが勝ってる」みたいな、そういうことを言われまして。

美穂 おしゃれが、またわからなくなってきてます……(ため息)。

江里子 おしゃれを機能で語っている美穂さんが、ちょっと不思議でしたけど。

■姉が隣の部屋に引っ越して……

――現在はお2人で住んでいたお部屋に美穂さんが残り、隣のお部屋に江里子さんがお引っ越しされて……でも、今でも同じお部屋に集まって、お話ししたりお茶飲んだりは日常的にされてらっしゃるんですね。部屋を別にして、何が一番変わりましたか?

美穂 お姉さんが一番不満だった、お風呂の順番を私が守ってくれないっていうのが解消されたのかしらね。

江里子 ああ、それはあるかしらね……。

――朝のお風呂の順番ですね(笑)。

江里子「頼むから1カ月ごとに、交互にしてもらえないか」と。

美穂 何回も言われたんですけれどもね。

江里子 時には若干、目に涙を浮かべつつ訴えたこともあったんですけど……守って2日。

美穂 2日ぐらいはね。

江里子 あとはお手洗いね。やっぱり同じ生活リズムだと、だいたいお手洗いに行きたくなるのが同じサイクルなんですよね。

美穂 お姉さんはすぐトイレに引きこもるし。30分ぐらい出てこない。

江里子 お手洗いだけが、私の唯一のプライベートルームみたいになって。個室みたいな気分で。

美穂 そこで1人の時間を楽しんでたから。

江里子 楽しんでた(笑)。

美穂 仕方なくLINEで「トイレに入りたいです」って。

江里子 そのストレスは、なくなったね。

美穂 でも別々になったら、お姉さんのほうが、ちょっと寂しそうなんですよ。

江里子 いや、まあでもそうですね。共同生活が私、結構好きだったので。たとえ自分のスペースが1畳未満であっても、やっぱり一緒にいてもらって、好きなときに好き勝手しゃべることができる相手がいるのは、すごく居心地がよかった。

美穂 でも隣だから。

江里子 お互いの部屋の鍵を持ってるので、「行っていいですか」ってLINEで言って、鍵開けて入らせてもらったり。美穂さんは必ず「ちょっと来てもらえますか」って私を呼びつけるんですけど。

美穂 呼びつけるわけじゃない。

江里子 あ、呼びつけてるわけじゃないの?

美穂 そっちの部屋に行くと、よくないみたいだから。

江里子 まだね、ちょっと部屋が片付いてなくて。

美穂 なかなか入れてくれないんですよ。

江里子 1人になってスペースが広くなったら、そのまま物を置きっぱなしにしちゃう。片付けるのヘタだから、そのまま……美穂さんにも見られたくないんですけど。「見られたくない」って言ってるときこそ、ニヤニヤしながら入ってこようとするんで。

美穂 殺し屋みたいににらまれて。怖かったわ。だから私の部屋で、お茶も打ち合わせもすることになって。

江里子 居心地がいいのよ、あそこに散々住んでたし。

――実家に帰るみたいな気持ち……。

江里子 そうです、そうです。

美穂 お姉さんの部屋でもだんらんしたいですよ。

江里子 まだ整ってない。まだ座布団買ってないのよ、ごめんなさい。

美穂 そういうとこの愛情が、ちょっと足りないんだわ。

江里子 だって、あっちのお部屋のほうがいいでしょう。

美穂 うちにご招待する、っていう気持ちが。

江里子 いや、でも美穂さんのためにラグマットとこたつは買ってきたのよ、ほんとに。でも座布団は買ってない。ごめんなさい。だから、敷いてある布団の上に上がっていいって言ってるじゃない。あら、私たちどうでもいい話を……

■「お姉さんのいびきが……」

――いや、永遠に聞いていたくなります(笑)。小さい頃、自分の部屋を持つことに憧れたけど、いざひとり部屋になると妙に寂しくなる感じを思い出しました。

江里子 わかります! でもやっぱり、隣の部屋でそれぞれに暮らしてるっていうのは、すごくいい選択肢を、奇跡的に得ることができたなあと思って。壁1枚向こうで、なんとなく寝起きしてる感じはわかりますし。時々くしゃみの音とか聞こえますし。ああ、生きてるんだなあ、みたいな。

美穂 お姉さんの電話してる声も聞こえますし、テレビ見て笑ってるバカみたいな声も。

江里子 バカみたいは余計じゃない?

美穂 そういう声も聞こえますけど。

江里子 バカみたいがちょっと余計だけど。

美穂 違うアパートだったら、ちょっと寂しいかもしれないけど。今はちょうどいい安心感がありますね。

――先ほどお風呂の話が出ましたが、2人で暮らしていたときは、ほかにもルールを作っていましたか?

江里子 逆に、ルールをあまり作らなかったことで、私たちはなんとか折り合いつけてこられたのかなっていうのはありましたね。

美穂 まったく守られない。

江里子 こういうルール決めたのに!! ってなると、逆にフラストレーションがたまるじゃないですか。ルールでがんじがらめにするよりも、妥協案を探ってくっていうことが、ここまでこられた理由のひとつかなあとも思ってますね。

美穂 得意なことを各自やったり。

江里子 そうねえ。

美穂 お姉さんがお洗濯したりとか。

江里子 お料理は私で、でも汁ものは美穂さんにやってもらうとか。

美穂 得意分野を各自やったりしてたっていうのが、よかったんですかね。

――どうにも我慢できなくなることはなかったですか?

江里子 どうでした? 私よりも美穂さんのほうがあったんじゃない?

美穂 そうですね。いびき。

江里子 いびきね。

美穂 私が結構宵っ張りなんで、起きてるんですけど、お姉さんは10時ぐらいに眠くなっちゃって。

江里子 私、朝型なんで。

美穂 早めに寝ちゃって。寝た途端いびきをかき始める。寝つきがいい。起きないので。そういうときはYouTubeを大きい音量で見て邪魔したり。

江里子 あとビニール袋ね。

美穂 お姉さんはビニール袋のガサガサした音が嫌いで、ちょっと反応するんですよ、寝てても。それをガサガサガサガサやって。何回もやって、うなされるようにしたりとか。

――うなされる(笑)。

美穂 「うーん」ってうなって、ちょっと止まったりする。それが楽しくて。

■姉妹を悩ませる「出ますよ問題」

――本でも美穂さんのパートは、どこか動物の観察日記みたいな雰囲気を感じました。

江里子 姉の観察日記みたいな感じ。

美穂 そう。書くことで楽しく。

――それまですごい仲よかったのに、一緒に住んだら仲悪くなっちゃうっていうこと、結構あると思うんですよ。

美穂 そっか。嫌いにはなってないですね。

江里子 あら、うれしい。美穂さんに、いっつも言われるんです。「嫌いではないんです」と。「普通です」と。まあ、嫌われてない分、いいですね。

美穂 真ん中ぐらい。

江里子 それはありがたいわね。

美穂 好きでも嫌いでもない。普通。

江里子 ほんとね。普通はありがたいわね。普通って大事よね。

――やっぱり、仲いいと思います(笑)。

美穂 仲いいんですかね。どうなんですかね。

江里子 いや、まあね。

美穂 だいたい2人だもんで。

江里子 そうね。一駅、高円寺から歩いたりもしてるしね、一緒にね。

美穂 薬局も一緒に行きますし。

江里子 そうね。ご飯も食べるしねえ。

――最近はそうでもないですけど、芸人コンビは仲悪いっていうイメージあるじゃないですか。それは照れからくるものかもしれませんが。

江里子 照れ……確かに。照れくさいからあんまり一緒にいないとか、よく言われてますね。ただ私たちは……照れも何もあったもんじゃない。全部バレちゃってるから。今さらもう。私はもともとカッコつけだから、こういうインタビューのときも、ちょっといいこと言おうとしたりしますけど、、それもバレてる。美穂さんに「またカッコつけ」って言われて、反省したりするんですけど。

――それを素直に聞けるのが、すごいと思います。

江里子 機嫌が悪い朝なんかはね。時々イラッとするときありますけどね。言葉尻で腹立たしいこととかいっぱい。まあでも美穂さんも……。

美穂 「出ますよ問題」ね(笑)。

江里子 どっちかが扉を先に出るっていうときに。

美穂 「出ますよ」って言ってほしいっていうのがね。

江里子 なんにも言わずに、先にそーって出てくときがあるんですよ。私、それは嫌だと。「出まーす」って一言言ってもらえるとうれしいなって。そしたら、「出ます」って言ってくれるようにはなったんですけど、なぜか「出ますよ」になった。「よ」がつくと、なんかちょっとカンに触って。「よ」のそのニュアンスが、すごく気になる……。それで返事の「はい」をちょっと語気強めに言ったのが、美穂さんに伝わって「なんかすごい機嫌が悪かったけど、あれはなんだったんだ」と。だから私「『出ますよ』の『よ』が気になったの」って言ったら、それから「よ」をやめてくれたのね。

美穂 だって、そのときの「はい」すごかったんですよ。

――気になるところがちょっとずつ違うのも、いいのかもしれないですね。

江里子 たとえ一緒に暮らしていても、感覚は別ですもんね。そこはわかってもらえないんだろうなとは思ってます。

――基本わかってもらえないってところから始まると、わかってもらえたらすごいうれしいですし。

江里子 あと、すぐに嫌いになられちゃうと困るっていうのがあって。そこはわりと心がけてるところ。危機感を持ってるつもりはあります。

――千鳥ノブさんをして「いま一番ヤバい女芸人」と言わしめる美穂さん(笑)。

美穂 あら、喜んでいいのかしら。

江里子 いいのつけていただいたわね。この本読んでいただいたら、ヤバいってわかると思う。

美穂 私、バレちゃうかしら。

江里子 バレちゃうかしら、じゃないわよ。

■テレビは思い出作り

――本に収録されている書き下ろしの恋愛小説でもやっぱり、片鱗が。

美穂 好きなものをいろいろ入れて書いただけなんですけど。

江里子 いやもう私は、この美穂さんの『3月のハシビロコウ』ができたときに、傑作だなと思って。人間の目じゃない、むしろ動物の目から見た世界……そういう感じの不思議さがあって。美穂さんの実話じゃないんですけど、美穂さんというフィルターを通して生まれた作品なんですよ。書きながら、その都度その都度、私にまたチェックを強要するんです。それがどんどんいい感じになってくる。それで私、ちょっと一回筆を折ろうかって思ったぐらい。こんな面白いもの書けないからどうしよう……ってなったぐらい。

美穂 私の小説のほうは、お姉さんの生態をいっぱい入れられたんで。それでなんか、楽しく書けたんですよ。お姉さんはすごい肩に力が入ってて。すごいかっこつけで書いてたので、そこは「かっこつけだな」って指摘しました。

――厳しい編集者ですね……。

美穂 すごいいいのを書こうとしてるっていう感じは出てたので。「お姉さん、リラックスして」って。

江里子 本当に、なかなか書けなくてね……。私、向田邦子さんが好きで。向田さんのエッセイや小説に、すごく憧れてて。

美穂 理想が。

江里子 そうね。理想が高かったのよ。書いている途中で、山崎ナオコーラさんの本を読ませていただく機会があって。「ああ、ほんとにプロの方ってすごいな」って。「どうしたら、ああなれるんだろう」って、やっぱり、そっちに行こうとしてた。

美穂 その傾向は、すごい強い。何回言い聞かせても、そう思っちゃう。

江里子 美穂さんはちゃんと自分の身の丈を知った感じで、無理はしない。今回は本当に勉強になったわ。

――たくさんテレビにも出て、いわゆる「ブレーク」というのを果たしてもなおスタンスを変えないのは、すごいことだと思います。お2人のお話を聞いていて、だからこの本には希望と癒やしがあるんだなと。夫婦や親子やきょうだいでなくても、こういう関係性を築けるんだ……っていう。

江里子 そんないいように言っていただいてるんですけど、自分たちで選択してこうなったわけじゃなくて。成り行きでなっちゃったみたいなところはすごくあって。だから恥ずかしいんですけど。

美穂 こんなにのほほんと、なんにも考えないで暮らしてる人がいるんだと思って、安心してもらえたらうれしいですね。

江里子 これがずっと続けばいいわね。50代になっても、60代になっても。私は夢があって……。

――なんですか?

江里子 ゆくゆくはここに親とかもね、呼び寄せたりして。

美穂 阿佐ヶ谷にね。

江里子 阿佐ヶ谷ハイムをね。

美穂 みんな住める。

江里子 共同体じゃないですけど。親やお友達とか、何人か寄り集まって住んでるような。阿佐ヶ谷ハイムができたら、って。

――冠番組を持つとか、そういうことではなかった(笑)。

美穂 だいたい今も、「テレビに出させてもらえるのは思い出作り」って言ってますし。

江里子 そうね。タモリさんに会えたわね。

美穂 これからも思い出が増えたら、ぐらいですかね。

(取材・文=西澤千央)

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の過激すぎる夫婦喧嘩が映画『焼肉ドラゴン』で解決しちゃった!?

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(38)が、愛妻と共に映画の感想を語り合う不定期連載。今回の作品は、高度経済成長期の在日コリアン一家の生活を描いた『焼肉ドラゴン』(鄭義信監督)だ。最近、夫婦喧嘩が絶えない瓜田家。この映画を見たことによって、東京出身の夫と、大阪出身の妻の価値観の相違が改めて浮き彫りになったらしく、またしても口論が始まった。瓜田夫妻、大丈夫か……?

 瓜田夫妻は先月末から不定期で、「ふわっち」というアプリで動画の生配信を行っている。時事ネタ、健康ネタ、アウトローネタなどをコンビでざっくばらんに語り合っているのだが、この番組進行を巡って、夫婦喧嘩が絶えないのだという。

 映画館に現れた瓜田純士は、開口一番、「たかがふわっちで離婚危機ですよ」とぼやいた。

「配信中に、ひよっけ(妻の愛称)がちょいちょい粋がるもんだから、それを制したところ、夫婦喧嘩に発展しまして……。こっちはテンションがダダ下がりになったんですけど、ひよっけは続きを配信したいと言って、ひとりでめちゃくちゃハシャいでるから、『俺はやる気ねえよ。バカじゃん』ぐらいの態度を取ってたんですよ。そしたら『なんでやねん!』とひよっけがガチギレしまして。『知らねえよデブ!』と言い返したら、『もう離婚や!』と言われてしまいました」

 夫婦の会話はそこで途切れ、家の中は重苦しい沈黙に包まれたという。

「そんなさなかに緊急地震速報が飛び込んできて、部屋の電気が落ちたから、謝るなら今だ! と思って後ろから抱きしめて、『ひよっけ、さっきはごめんな』と言ったら、『何しとんねん!』と払いのけられた。その後もしばらく無言状態が続いたので、こうなったらあのセリフで揺さぶりをかけるしかないと思って、台湾版『花より男子』の御曹司を真似して『おいひよっけ、俺といても辛いだけだろうから、もうラクにしてやる』みたいなことを言ったら、『うん、ありがとう』とあっさり返されたから、参りましたよ」

 それが昨夜の出来事だとか。まだギクシャクした空気を抱えたまま、ふたりは映画館にやって来たのだ。

「面白い映画を見て、うまいメシでも食えば、きっと仲直りできるんじゃないかと思ってます。なぁ、ひよっけ?」

 奥様はプイッと横を向いた。

 以下は、映画鑑賞後のインタビューである。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) よかったですね。こんなに感動するんだったらティッシュを持ってくればよかったですよ。

瓜田麗子(以下、麗子) 映画を見てる最中、昨日の夫婦喧嘩のことが何度も脳裏をよぎったし、なんでウチらが喧嘩になったのかもわかったわ。ま、それはのちほど。

――映画の序盤から、おふたりがヒソヒソ話をしながらクスクス笑っていたから、「あ、夫婦喧嘩は収まったんだな」と安心しました。

純士 あれは出だしから、ひよっけのいつものド勘違いが始まったから、笑ってただけですよ。まずあのアボジ(父/キム・サンホ)のことを「さすが、ほっしゃん。やばい演技するで」とか言い出した。俺が何度否定しても、前半はずっと、アボジのことをほっしゃんだと思ってたみたいで。さらには、あの焼肉屋の中で酔っ払って大泉洋にやたらと絡む奴がいたじゃないですか。あれを、「山田孝之や」って言い張るんですよ(笑)。

麗子 あれ、ホンマに山田孝之ちゃうの?

純士 ……って、何度も言うもんだから、「全然ちげーよ!」っていう面白さがあって。俺は俺で、あのクラブの支配人(大谷亮平)のことを、しばらくトータス松本だと思ってたんですよ(笑)。そういうふたりの間違いから軽く入れたから、夫婦間のギクシャクは序盤でほぐれました。でも、映画に入り込むのには時間がかかりましたね。

――それはなぜでしょう?

純士 どういうタイプの映画なのか、予備知識ゼロで来たもんだから、しばらく戸惑ったんですよ。たとえば、大泉洋と亀の子だわし(ハン・ドンギュ)が、真木よう子を巡って喧嘩になるシーン。あれ、最後にオチがあるからよかったけど、オチに至るまでの“間”が長かったじゃないですか。だから途中までは、戦後の暗い話に男女のドロドロを織り交ぜた重苦しい映画なのかよ、こりゃ参ったな、と思って見てました。

麗子 そうか?(納得いかない表情)

純士 単に間の悪いドロドロのメロドラマだったらどうしよう……と。途中からは、「あ、これは涙あり、笑いありの作品なんだな」とわかって安心して見れたけど、趣旨をつかむまでに時間がかかりました。

麗子 西の人って、普段でもボケとツッコミを絶対するんですよ。どんなシリアスな場面でも。その色がちゃんと出てたと思ったけどな。

純士 間って、引っ張れば引っ張るほど、笑いが大きくなるというのはわかる。でも、そのタメが俺には長すぎて。リヤカーのクダリも、間が長いと感じた。ま、そうは言っても、笑えたし、感動はしましたけどね。

麗子 大阪っぽさを出すために、喜怒哀楽をほどよいバランスで盛り込みたかったんやと思うで。あとは絶対忘れちゃいけない、ボケ、ツッコミ、オチも。

純士 仮に大阪っぽさの演出だとしても、井筒(和幸)監督だったらもっとテンポよく、わかりやすく描いたんじゃないかな。

麗子 コッテギだか、トッポギだかの人?

――『パッチギ!』です。

麗子 あ、そうやったか(笑)。

純士 『焼肉ドラゴン』で一番わかりやすかったのは、クラブの乱闘シーンでした。大御所シンガー(根岸季衣)が嫉妬して喧嘩になる。あれは迷わず笑えました。でもそのほかは全体的に、男女のガチっぽいギクシャクした関係性の描写が多かったから、ストンと笑いに落ちにくかったんですよ。

麗子 おじゅん(夫の愛称)は東の人間やからや。ひよっけは、吉本新喜劇を見てる感覚ですんなり笑えたで。

純士 言われてみれば以前、嫁に新喜劇を見せられたとき、ちょっとあの間に馴染めなかったなぁ。

麗子 最後までよぉ見ぃひんかったもんな。

純士 俺は、ひょうきん族とかドリフで育ってるから。ドリフだと、クシャミしてからタライが落ちるまでが早いんですよ。でもこの作品の間は、もっと引っ張るんです。そのスピード感がなぁ……。

麗子 たぶん西と東は、間合いが全然違うんやろうな。ウチはたけしの何が面白いのかわからない。けど、さんまは面白い。なんでか言うたら……

純士 出ました、ひよっけの「ウチはこう思ってる節」! これが「ふわっちクオリティー」です(笑)。

麗子 フンッ!

純士 ひよっけ~、大好きだよ~(取り繕うように甘ったるい声で)

麗子 嫌い! 大嫌いや!

――あれ? まだ仲直りしていなかったんですか?

麗子 ウチは今回の映画を見て、おじゅんとなんで喧嘩になるのかがわかったんですよ。西はこの映画の大泉洋みたいなアカンタレな大人の男がぎょうさんいてるから、ウチみたいな気の強いチャキチャキした女はすごいチヤホヤされるし、重宝される。西はカカア天下なんですよ。でもこっち来てビックリしたんは、東京は男が女にやたら偉そうにしてること。特にこの人(純士)は男の人としてすごいチヤホヤされて、女の人を踏みつけて生きてきた人でしょ? そのカルチャーギャップが、ウチらの夫婦喧嘩の原因やねん。

純士 俺がこの映画を見て感じたのは、大泉洋がカッとなるタイミングが、俺と同じだってこと。で、井上真央がふてくされて奥の座敷に引っ込むタイミングが、ひよっけと一緒だってことだね。あと、アボジとオモニ(母/イ・ジョンウン)の関係性も、瓜田夫妻に似てるな、とも思った。アボジは苦労してるし、みんなの幸せを考えないといけない立場だから、登校拒否のいじめられっ子である息子(大江晋平)に留年しろと言った。一方、オモニは息子のことしか見えてないから感情的になって、それに反対した。それが俺とひよっけの関係にソックリでした。よくひよっけが、俺の苦労も知らずに、「そこはこう言ってほしいねん」と、いっときの感情で噛みついてくるんですよ。でも俺は全体が見えてるから、「そこでその言葉を言ったらオシマイじゃん」と、グッと堪える選択をすることが多いんですよ。

麗子 ウチは「なんてKYな女なんだ!」と、おじゅんからよく怒られるんですけど、この映画に出てくる井上真央みたいに、思ったことはなんでもバンバン言ってしまう性格なんですよ。でもこっちの人って、本音と建前があるやんか?

純士 ひよっけは「本音と建前」と思ってるけど、そうじゃなくて、「子どもと大人」なんですよ。空気を読むんですよ、大人って。

麗子 ………。

純士 孫悟空って「お腹すいた、お腹すいた」って簡単に言うでしょ。「でもここでそれを言っちゃダメだよ、悟空くん」っていう俺の態度を、ひよっけは「建前」だと言う。「悟空のままでええねん」となるんですよ。それでよく喧嘩になるんです。

麗子 そんなに周りに気を使わんでもええやんか。

純士 いや、ここでは大人の態度を取らないとまずい、という場面だってあるでしょ。

――双方の長所を認め合いつつ、歩み寄るのが一番なのでは?

麗子 そやねん。実際、ちょっとずつやけど、歩み寄ってはいますよ。おじゅんも西寄り感を出してくれようとしてるし、ウチもいろいろ我慢してるし。

純士 大阪人と東京人、まだお互いの出身地に対するプライドがあるから、ぶつかることも多いけど、あと2、3年もすれば完璧なニコイチになってますよ。

――そうなることを祈ります。

純士 で、映画の話に戻るけど、笑いだけじゃなく、重いテーマも入ってて、しっかり“泣かせ”があったのはさすがでした。それと結局、何があっても最後は家族なんだな、という点に感動した。喧嘩しようが浮気しようが、何かにつけて家族がちゃんと集まるじゃないですか。あれが微笑ましかったし、羨ましかったですね。

麗子 よぉ描いてはるなぁと感心したのは、実際、関西って若くして死ぬ子が多いんですよ。家庭環境が複雑だったりヤンチャな子も多い環境やから、ウチの周りでも自殺とか交通事故で死ぬ子が多かった。映画では自殺の背景とかも描いてはったから、監督はきっと、西を伝えたかったんやろうな。

純士 いや、全然違う。

麗子 ひよっけはそう思ったの! おじゅんはおじゅんでええやん! ひよっけにはひよっけの感想があんねん!

純士 西や東はあまり関係ないと思う。これはきっと、当時の在日韓国人のありきたりな一般家庭の話なんですよ。高度経済成長期の日本には、そこでしか生きられない在日韓国人がたくさんいたんだよってことを、『サザエさん』や『男はつらいよ』を見て育った現代の日本人に見てもらいたかったんじゃないかな。で、作品の肝は、アボジの言ってた言葉でしょ。「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっといい日になる」「逃げても何の解決にもならない。ここで生きていくしかない」。俺はおじいちゃんからずっとそう言われて育ってきたから、アボジの言葉には本当に共感できたし、最後はやっぱり家族の絆が大事なんだということであるなら、腹を割って話せるひよっけを嫁にして本当によかったと思いましたよ。

麗子 ホンマにそう思うてる?

純士 思ってる、思ってる。最後のアボジとオモニのシーンを見て、「女はゴマンといるけど、やっぱひよっけじゃなきゃダメなんだ」と俺も思ったから。

――笑いの間が合わなかったこと以外の不満点は?

純士 お役所の人が立ち退きを要求しに来る場面が、もう3、4回あってもよかったかも。で、全員が冷徹な役人ってわけじゃなく、中には情が移ってしまう役人もひとりぐらいいて、家族と一緒に飲んだりするシーンでもあったほうが、人情味が出ただろうし、解体されたときの切なさもより一層出たんじゃないかと。あと、個人的にちょっと不満だったのは、飛行機の音がうるさすぎた点と、真木よう子の芝居が重すぎた点ですね。真木は『孤狼の血』のときはあの重さがハマったけど、今回は足を引きずってるワケありの長女ってだけで重いんだから、もっとラフに芝居してほしかった。終始深刻な顔だったし、ドスのきいた声でガチトーンで来るもんだから、超シリアスな物語なんだと思って序盤は構えちゃったよ。ヤカンのシーンは笑ったけどさ。

麗子 西の人は重いこともあえて重さを表現せず、結構さらっと言ったりするから、あの演技は確かにちょっと重かった。あと、ケガした足をわざわざ人前で洗うのは、なんかわざとらしくていやらしいねん(笑)。でも、その真木よう子が、日本語をしゃべれない初対面の人を身内のパーティーに招き入れるシーンは好きやで。顔を合わせたら誰とでもすぐ仲良くなるあの感じは、西っぽいと思ったわ。

――大阪出身の奥様から見て、役者陣の関西弁はいかがだったでしょう? ちなみに大泉洋は北海道、真木よう子は千葉、井上真央は神奈川、桜庭ななみは鹿児島出身です。

麗子 85点ですね。みんなものすごく頑張ってましたが、感極まると、イントネーションがおかしくなったり、「アカン」が「ダメ」になったり、ところどころ不自然やったかな。でも演技は全体的にめっちゃよかったです。井上真央なんて、幼少期の自分を見てるようで、ホンマにうまかったです。

純士 大泉洋もよかったよね。イケメンじゃないし、強くもないけど、強がってみせて、結局トホホな感じになるっていう、あのサジ加減が絶妙で。

麗子 大泉は、人間味があって親近感湧くよな。

純士 恋敵とやりあうシーンでも、あれがたとえば江口洋介だったら相手を一喝して終わっちゃうんだろうけど、大泉だと「なんだこの野郎!」と相手からやり返されちゃうから面白い。

麗子 おもろい顔してるしな。あと、アボジとオモニもよかったな。新大久保あたりに住んでる素人さんちゃいます? って感じ。ドキュメンタリーかと思ったわ。

純士 そう思わせるってことが、役者として一番すごい。

――ところで、在日韓国人に対する差別やいじめは、おふたりの身近にありましたか?

麗子 親の世代から、なかったと思います。たまに「あの子は在日だ」とかいう噂が立つこともあったけど、個人的にはどうでもいい問題だったので、確かめもせず一緒に遊んでましたよ。

純士 自分がガキの頃の新宿には、すでに当たり前に韓国人が街や学校にいたので、差別はなかったし、韓国人と聞くと「金持ちなのかな」と思う程度で、いじめの対象にもならなかったですね。でも、近所の韓国学校とはよく喧嘩をしましたよ。自分がいた中学の先輩が弱かったせいで、「日本人はたいしたことない」とナメられてた感があります。韓国学校の生徒にいじめられて「ママに言いつけるぞ」と言って逃げ帰った日本人もいたらしいから(笑)。

――結論として、この映画を見てよかったですか?

純士 『万引き家族』のようなズッシリくる感じはなかったけど、娯楽作品として十分に楽しめました。

麗子 見てよかったというか、おじゅんに見せれてよかったです。ウチは最近、ふわっちの配信中や日常生活の中で関西色を出しすぎて、おじゅんによく怒られてたので、この映画を見せることによって「ひよっけは実は100分の1も関西色を出してへんのやで。普段からめっちゃ我を抑えて頑張ってるんやで」ということを夫に伝えられてよかったです。

純士 ひよっけには悪いけど、俺はこの映画を見ても、その言葉を聞いても、そこについてはなんも伝わってこないよ。

麗子 はぁっ!?

純士 大阪ではカカア天下でハシャいでこれたのかもしれないけど、東京だったら通用しないですから。ありえないですよ。

麗子 東京に通用せんでも、おじゅんに通用すればええやんか。

純士 そんなの大阪でやってろ、って話ですよ。「大阪ではもっとイキってたんや。そういう自分を捨てて来たんや」という思いが強いせいで、最近ちょいちょい地を出そう、地を出そうとするから面倒くさいんですよ。

麗子 出てまうねん。楽しくなったら。

純士 それが鼻につく。

麗子 それってひどない? 人格否定や! 昔のひよっけは、もっと元気で、もっとしゃべって、もっと笑ってってしとってん。それを完全に押し殺したら、仮面夫婦になってまうやろ? そんなんやったら離婚したほうがマシや!

純士 (しばし沈黙したのち)……まあ、冷静になって考えてみると、どんなにキャンキャン粋がったところで、所詮はひよっけひとりじゃないですか。大阪から出てきて俺に人生を捧げてくれてる。彼女にとって東京はアウェイですよ。そういう立場の人が粋がったところで、たかが知れてるし、俺にはそれを包み込む器量さえもないのかよ、と思うと、ちょっと自分が情けなくもなるかな。

麗子 そうやで。もっと泳がしたってよ。1回こっきりの人生なんやから。

純士 俺は、常識人になりすぎちゃうところがあるんですよ。もっとくだけていいような場面でも、「他の人に迷惑をかけるから」みたいなところが。

麗子 あんねん、堅苦しいところが。

純士 その生真面目なところが、ひよっけ本来のノリからすると、「大人ぶってる」ということになるんでしょう。

麗子 そうそう、すぐに大人ぶりよんねん。

――純士さんはこう見えて、紳士的なところがありますからね。

純士 顔にタトゥーがあるからこそ、余計にそういうところで気をつけようと思うんですよ。

――奥様は、標準的な関西娘なのでしょうか? それとも?

麗子 ちょっと上品なほうです(急に澄まし顔になる)。

純士 あのですね、彼女は下品の見本市みたいなところがあるんですよ(笑)。

麗子 ひどーい!

純士 ウソウソウソ(笑)。そういやこないだ、ひよっけが道端でなんか食べたいと言い出したから、俺は通行人に迷惑がかかるから人のいないところで食えって注意したら、喧嘩になったんですよ。そこでひよっけが言い放った言葉が、すごいですよ。「道はものを食べるためにあるんやで!」だって(笑)。あれはさすがにウケましたね。

麗子 ええ言葉やないの(笑)。

純士 自分の嫁の好きなところは、ハングリーさですね。スーパーに行って両手で抱えきれないほどの荷物になっても、「袋は4円もかかるからもらわんで!」とか言うんですよ。まあ、恥も外聞もないんだけど、家計を守るという意味では最良のパートナーなのかもしれない。そんな彼女には「ホテルのロビーでは騒いじゃダメだよ」なんていう俺の紳士的なアドバイスは、馬の耳に念仏なんですよ。

麗子 なんでそんな眠たいこと言うてんねん、思うわ。眠たいわ~、ホンマ。

純士 眠たきゃ道で寝ればいい、みたいなノリなんですよ、ウチの嫁は(笑)。

麗子 人生、毎日を全力で楽しまないと。いつ死ぬかわからんねんで。ウチひとりぐらい粋がらせてみぃや。押さえつけたら可哀想やろ。生きてんねん、ひよっけも。

純士 まあ、それもそうだな……って、『焼肉ドラゴン』とは全然関係ない話になっちゃいましたね(笑)。

 * * *

「離婚」という言葉が飛び出したときはヒヤッとしたが、瓜田夫妻はその晩、ふわっちで仲良くカラオケ配信をしていた。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」とは、まさにこのことだろう。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※瓜田純士&麗子のふわっち(週1回程度の不定期配信)
https://whowatch.tv/profile/t:Junshiurita

※瓜田純士の人生相談「No problem」
https://kinngofoutlow.jimdo.com

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

King&Princeデビューは「小手先の戦略」!?  企業コンサルタントが「崩壊するジャニーズ」に助言

 今年に入り、不祥事やタレントの退所、活動休止が相次ぐジャニーズ事務所。前編では、SMAP解散騒動以降、事務所の実権を握っているとされる藤島ジュリー景子副社長について、企業コンサルタント・大関暁夫氏から「コミュニケーションの流れを変える組織運営こそが重要」という話をお聞きした。後編では、その具体例を探っていきたい。

(前編はこちら)

――今年、ジャニーズ事務所はトラブル続きですが、一方で明るいニュースもありました。King&Princeという若手の新しいグループがデビューし、5月に発売されたシングル「シンデレラガール」は初週57.7万枚を売り上げています。ジャニーズにいい流れをもたらしてくれる存在と、期待を寄せるファンも多いです。

大関暁夫氏(以下、大関) それは、先ほど述べたような「コミュニケーションの流れを変える」というのとはまた別の話。組織内でどのような意思決定があって彼らを売り出すことになったのかはわかりませんが、傍から見ていると、小手先の戦略に近い感じがします。もう一度、サッカー日本代表を例に出しますが、これはつまり、ハリルホジッチ監督と選手間のコミュニケーションがうまくいっていない中、「だったら若い選手を集めて新しいチームを作り直そう」と言っているようなものでしょう。それは現実的に考えて問題解決にはならない。新しい選手も、監督に対して同じ不満を抱くことになるでしょうし、気持ちの緩みが出てくると思います。日本代表は、年齢層が高いことから「おっさんJAPAN」などと呼ばれていましたが、ジャニーズも同様に、稼ぎ頭となっているのは、ベテラン勢ではないでしょうか。やはり内部のコミュニケーション円滑化に彼らの力を借りないと、組織としての立て直しはあり得ないと思います。

――確かに、露出の多い嵐は30代半ばから後半、TOKIOも長瀬智也は39歳ですが、ほかのメンバーは40代です。

大関 そういった中心で動いているベテランの気持ちを組織に引き戻す、気持ちを1つにすることが重要だと感じます。小手先で「若い奴らに変えればいいじゃないか」というのは、最終的にはうまくいかないと思います。

 SMAPが解散、TOKIOの山口達也さんが不祥事を起こし、関ジャニ∞の渋谷すばるさんが退所……と、上から崩壊していっている点も気になります。次に、V6や嵐が何か問題を起こすとなると、それこそ雪崩のように組織が崩壊していくのではないかと。それが一番怖いですよね。組織のトップは、それをいかに食い止めるのかを考え、行動を起こすべきでしょう。

――具体的にどうすればいいのでしょうか?

大関 例えば、タレントも含めて“これからのジャニーズアイドル”はどうあるべきかと議論するなどでしょうか。SMAPの元チーフマネジャーは、これまで“歌って踊る”のがメインだったアイドルを、バラエティやドラマにどんどん進出させ、今のアイドルのスタイルを築き上げました。今のジャニーズのアイドルは、その流れに乗っかっていると思いますが、危機に瀕している今、あらためて“みんなで”“イチから”、今後のジャニーズアイドルの在り方を考えてみてもいいのではないでしょうか。それが、ジャニーズ事務所のコミュニケーションの流れを変えることにもつながる気がします。

――ジャニーズ事務所は、ジャニー氏の審美眼に支えられている部分も大きかったと思います。“売れるアイドル”を見抜く目があると、業界内外で言われていました。

大関 確かに、ジャニー氏のような能力のある人物はなかなかいません。であればジュリー氏は、“天才がいなくてもいい運営方法”を考えなくてはいけないんです。それが企業として、大きく発展できるかの鍵になります。例えば、ソニー創業者の井深大氏と盛田昭夫氏はどちらも優秀な技術者でしたが、あるとき、井深氏は開発に、盛田氏は経営に専念するようになりました。なんでも“天才発明家”として才覚を発揮していた井深氏が、盛田氏に「ソニーを次の世代に引き継ぐために、君にはマネジメントに専念してほしい」と提案したそう。ソニーにとって、この開発と経営を分離したことこそが、世界に名だたる大企業としての基礎になったんですね。

――ソニーの話を聞いて思ったんですが、ジャニー氏はそもそも演出家で、メリー氏とタッグを組み、それぞれ「開発」と「経営」を担っていたとされています。ただ、ジュリー氏の代になって、その分離がうまくいかなくなったということなのでしょうか。

大関 ジャニー氏とメリー氏が、次の世代に事務所を渡す準備をしていなかったのが大きいと思います。芸能界で栄華を極めているがゆえの、油断や安心感もあったのかもしれませんね。どれだけ立派な組織であっても、未来永劫続くものはありません。

――このままでは、ジャニーズ事務所も衰退の一途を辿るのでしょうか。

大関 ジャニーズは、SMAP、そして嵐という2大グループが大きく花開いて20年といったところでしょうか。どこの企業でもそうなのですが、例えば一事業が大きく花開いても、それが続くのは長くて30~40年。20年というのはピークアウトに近いといえるでしょう。「金のなる木」というマーケティング用語があります。投資を続けて事業を大きくしていき、ある時、投資しなくてもどんどんお金が入ってくるようになる……その状態を「金のなる木」と呼びます。ただ、お金が入ってくるからといって、そのまま放置しておくのではなく、次のビジネスモデルを考えて、新たな投資をしていかなくてはいけないんです。

 ジャニーズ事務所も、SMAP型のビジネスモデルは既にこの「金のなる木」なのかもしれませんが、結局、同じタイプのアイドルの売り方をしてもダメ、いずれ飽きられてしまいます。King&Princeが一時期売れたとしても、第2の嵐、第2のSMAPにはなり得ない、まったく別のアイドルのあり方を作らなければいけない。そういう危機感も持つべきだと思います。それに、時代とともに、ファン層も、ファンがアイドルに求めるものも変わっていくものです。それを敏感に察知して、新しいアイドル像に取り入れていくことも念頭に置いた方がいいのではないでしょうか。

――いかに新しさを取り入れるかが重要なのでしょうか。

大関 やはり先取りをするから、大きなヒットが生まれると思います。SMAPはその典型例。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の番組構成は、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(同)と同じだと聞いたことがあります。アイドルに、芸人と同じことをやらせてみるというのは、当時かなり新しかったと思います。「タブーを極力を失くす」という方針で生まれたのがSMAPだったわけです。今まさに、その考え方がジャニーズ事務所に必要なことなのではないでしょうか。

――今では逆に、「アイドルに何でもかんでもやらせすぎている」といった声も出ています。嵐・櫻井翔が、報道番組『NEWS ZERO』でキャスターを務めたり、NEWS・手越祐也や関ジャニ∞・村上信五がワールドカップでキー局のメインキャスターを務めるなど、ジャニーズの息がかかっていない分野はないのではないかと思うほどです。

大関 これは私の思いつきですが、野球選手の大谷翔平くんのように、“本気の二刀流”を目指すというのはどうでしょうか。これまでも打撃のいい投手はいましたが、大谷くんは、投手と打者を本格的に両立する二刀流として人気を博しています。同じように、アイドルだけでなく、もう1つの分野でもプロになる……という。例えば、櫻井さんも、キャスター業に真正面から向き合っているとは思いますが、どこまで本気かはわからない。というのも、彼は『NEWS ZERO』内ではコメンテーター的な役割も担っていますが、ほかのメディアから、政治問題や事件に関してコメントを求められることはありません。本業はアイドル、バイトとしてニュース番組に出ているような感じなんです。そうではなく、アイドルとコメンテーター、どちらも本業にするというのが、新しいスタイルになり得るかもしれません。まぁ、これはあくまで私の思いつきでしかありませんが、新しいアイドル像を築くやり方は、たくさんあると思いますよ。

――ジュリー氏は、今まで以上に現状を厳しく受け止めた方がいいのかもしれませんね。

大関 どれくらい危機感を持ってやっていらっしゃるか。独裁的ではなく、みんなで一緒に考えて作っていく、これが今一番大切なことなのではないかと思いますね。

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

吉原ソープ嬢の恋愛・セックス・男性観――2万人とヤッた女がたどり着いた答え

 9月に安室奈美恵が40歳で引退すると発表し、「早すぎる」「まだ活動続けてほしい」と惜しむ声が上がっているが、“40歳で引退”は普通とされる業界がある。風俗業界だ。40歳を超えると途端に仕事が減り、生活できなくなる危機が訪れ、自然と引退ムードになるのだ。

 では、40歳を過ぎた風俗嬢はどうすればいいのか? 前編に続き、ソープ嬢歴28年のゆかさんと、サイゾーウーマンで「おちぶれ続けるアラフォー風俗嬢と男たち」を連載中の曼荼羅さんが語る。

(前編:ジャニーズ・俳優とヒミツのプレイ、「はとバス」が風俗斡旋!? 吉原ソープ嬢座談会

――最近の風俗業界は「働く女の子が減っている」「病気が増えている」と聞きますが、実感としていかがですか?

ゆかさん(以下、ゆか) 昔は履歴書一枚で、「私、行くところがなくて、借金で今追われているの」って言えば使ってくれたけど、今は家がない人や身元がわからない人は使ってくれないもんね。

曼荼羅さん(以下、曼) 警察署の指導が厳しくなっていて、写真付きの身分証と本籍地がわかるものを提出しなければならないですね。

ゆか それに、最近は店を掛け持ちしないと稼げないのよね?

曼 そうですね。今は、風俗も1本だけで食べていけない時代です。例えば、週の半分は渋谷、週の半分は吉原とか、掛け持ちしないと稼げないです。働く女の子も減っていて、この1年で「風俗上がりました」っていう人は、すごい増えている。Twitter上で会話する風俗嬢の女の子とお会いすると、「やっぱり働く女の子減ってるよね」っていう話と、「病気増えてるよね」っていう話が出て。みんな同じように感じているんだ、気のせいじゃないよねって……。

ゆか 昔は、掛け持ちしたらクビになったのよね。

曼 昼職でも副業が話題になっていますが、風俗業界も風俗一本から掛け持ちの時代へと移行していますね。それに、やっぱり梅毒が増えています。Twitter上でも、去年から今年にかけて、毎日女の子がつぶやいてて。「チンコに赤いしこりがあって、梅毒症状なので触らないで帰しました」とか。

ゆか 性病は倍増してると思うよ。

曼 性病にかかったことない人だと、検査に行くっていう発想がないので、それがまた増えちゃう原因なんでしょうね。

ゆか 私は28年間で「クラミジア」に1回かかっただけ。たぶん免疫が強いんだと思う。

曼 運が良かったんですね。私、淋病とクラミジアを2回ずつもらったことあります。同時もらいしたこともあるし。カンジタもあります。

ゆか 昔は「けじらみ」が多かった。当時は、店に検査表を出さないと出勤停止だった。仕事をつけてもらえなかったの。今は自己責任で、「検査に行きたければ、やんなさい」って。ヘタしたら1~2年しない子は、いっぱいいる。「私、ゴム着だから」って。

曼 ゴムなんて関係ない時代なんですけど! 前にお会いした吉原で働いているAV女優さんは、ずっとゴム着で働いていたんですけど、年齢が上がってきてから生のお店に移って。ゴム着の時は、しょっちゅう性病をもらってたけど、生になってから一度ももらってないって言ってたから。ゴム着だろうが生だろうが、もらう時はもらう。定期検査はしないと。

――誰から性病をもらったのか、わかるんですか?

曼 症状が出ている病気によってはわかります。カンジダって、チンコがめちゃめちゃ真っ白けになるんですよ。

ゆか あー、わかる。粉吹いたり。糖尿病の人もそうなるわよね。白っぽく、おしっこの穴から糖が吹いちゃうから。

曼 あとむくと、カリの下のところにカスがたまっていたりして、臭いがすごくて洗ってもとれないからローションで覆っちゃって。

ゆか ははは(笑)。覆うんだ!

曼 一応、Agプラスの消臭ローションとかあったので、臭いが消えたらいいなと思って(笑)。あと、ボディソープの中にイソジンを大量に入れたりとか。もういろんな試行錯誤をしましたね。

――性病のお客さんのほかに、衝撃的だったお客さんはいますか?

曼 変なお客さんばかりで、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってますけど、今まで来た人で衝撃的だったのは両腕がない方でしたね。予約の時に伝えといてくれればいいのに、何も言わないので、お店で対面した時に「え?」って動揺しましたね。でも、プレイでは足でバランスを取るんですよね。正常位ができて。

ゆか 私はドジョウを10匹持ってきたお客さんがいました。「ドジョウって、豆腐に頭突っ込むでしょ? だからお姉さんの股の中に突っ込むか、やってみていい?」って。お風呂の中にドジョウを入れて、私も顔では笑ってるけど「全部入っちゃったらどうしよう?」と思いながら、アソコを締めたりして(笑)。もちろん入らなくて、排水溝に全部流しちゃった(笑)。

――ちょっと話は変わるんですけど、ゆかさんの娘さんも今、風俗で働いていると伺ったのですが、どのように知ったのですか?

ゆか 私が直感で気づいて。知ったときは、ショックでブチ切れて、フォークで娘の頭を刺したの。

曼 なんでショックだったんですか?

ゆか うーん…………。私みたいな、つらい思いするのかって……。やっぱりつらかったんだよね。生活のためにとはいえ、仕事がつらかった。

曼 逆上しちゃったのは初めてだった?

ゆか そうそう。私、あんまり子ども怒らないから。手も上げたことないし。娘たちも10代の頃とかに、私がソープで働いていることを気がついてたのよね。「じゃ、今度は私も働く」っていう感じで……。でも、やっぱり評判悪い店も知ってるから、「20歳で若いんだし、高いところで働きなさい」って、娘にお店を紹介したっていうか……。私もひどい親だよね。

曼 娘さんお二人ともですか?

ゆか そう。そしたら、紹介した店の面接が通って、そこで4~5年ナンバーワンになって、随分良い思いもしてたみたいね。でも最近はいつも「今日、お茶(※お茶を引く:客がつかないこと)だ」って言ってるから「ペチャパイなんだから、おっぱいあげる努力しなよ」「もうちょっと服も派手にすれば?」「お茶引いて、よくそんなにのんびりしていられるね」って指導してるから。ひどい親だよね、私。

曼 時代が違いますしね。今やってる人は、お茶引くのは普通にありますからね。

ゆか お茶引くのに慣れちゃって「えへっ」なんて言ってるから、お店変えればいいのになって思ってる。でも、もう36~37歳の大人だしさ。

曼 限界ぎりぎりですね。40歳まで。

――ゆかさんは、若い頃に離婚されて、再婚されていないんですか?

ゆか してないです。お客さんから何回かプロポーズされたけれど、やっぱり仕事を選んじゃう。やっぱりお金の力ってすごい。恋愛よりもお金。

曼 恋愛はしていなかった?

ゆか 恋愛したかったら、ホストクラブに行ってた。今もあるけど浅草の「Minami」ね。ホストでも5000~6000万円は使ってると思う。1日に100万単位でドンペリ、リシャール入れたりして。シャンパンタワーは、「はやらないからやりたくない」って言われて、その分は裏っ引きしたりね。やっぱり、子育てと仕事で悶々としてたんだよね。彼氏もいないし。

――風俗を経験する前と後では、男性に対する価値観や見方って変わりましたか?

曼 ますます嫌いになりました。

ゆか 嫌いになる。

曼 口から言ってることが全て信じられない。「俺だけは、ほかの奴と違うから」みたいに言ってくる人も結局一緒なんですよ。

ゆか あ、わかる。同じ。お客さんで「また来るよ」っていう人に限ってこない。「俺は女大事にするよ」そういう奴に限って、大事にしないから(笑)。

曼 挨拶と同じレベルの発言でしょうね。誰にでも言ってる。

――セックスについては、変わりましたか?

曼 あまりにもヘタな人が多すぎて、びっくりしますね。今まで、風俗に入る前に出会っていた男性は、みんなリードしてくださる人ばかりだったんですよ。風俗にくる人は、8割9割、いやもっとかな。大半はヘタ。1,000人に1人くらいの感じですよね、上手な人。

ゆか でもそれは、私たちが育てちゃったかも。そういうふうに。ヘタなのに、「すごい!」って言ったり、演技で「テクニック上手ね」って言うと、「俺すごいんだ!」って。それで上達しなくなっちゃうとかね。

曼 それは言えますね。マットがあるので、受け身の男性が多くなって攻め方がわからなくなっちゃう。もうマグロみたいになっちゃうので。

ゆか 小汚いおじさんが、すごいうまかったりね。嫌われないように技を磨いているのね。

――よく、「セックスには愛が必要」とか言われていますが、お仕事のセックスに愛はあるんですか?

曼 ない(笑)。愛のあるセックスって何? っていう。

ゆか でも愛はないけど、イクときはイクんだよね。愛もなくて、初めて会ったのにさ、なんでイクんだろう。「イッたあとは、死にかけのセミみたいになりなさい」ってよく教えられたんだけど、フリじゃなくて本当に死にかけのセミ。

曼 ぴったりフィットする人、たまにいますよね。

ゆか 顔は全然タイプじゃないのに、体が異常に合うの。自分の好きなおちんちんの形とか、入れてる挿入時間とか、動かし方とか、全てが合う。そういう人っているんだね。何万人に1人とか。2万人に数人だよね。

曼 心と体は全然違いますよね。

ゆか 違う。

――最後に風俗嬢のセカンドキャリアのお話を伺いたいのですが、ゆかさんの風俗を上がってからのお仕事は?

ゆか 初めてカタギの仕事、お弁当屋さんで流れ作業をやったんですけど、そこでいじめに近いような仕打ちをうけて、2カ月で辞めました。そこからは7年間、ずっとひきこもりですね。

曼 やはり風俗を30~40代で上がってしまった人は、定年の60歳まで体は動くけれども働き場所がないのかも。大変でしょうね。

ゆか 同僚だった女の子で、スナックとかお店をやった子もたくさんいるけど、この景気の悪さに、みんな潰してる。

曼 スナックや小料理屋をやっても、潰れる確率が高い時代だから、個人で働く人が増えているのかも。いま、風俗もフリーランスでやっている人が増えているのかなって。

ゆか そうなんですね。

曼 マッサージをやってる人とか、ノンアダルトのエステティシャンを個人でやってる人とか増えていますよね。吉原にいた時に、ソープランドに籍だけおいて、顧客を自分で持ってビジネスホテルでマッサージする。もちろんヌキとかじゃなくて普通のマッサージです。あと、最近お会いした高級ソープ出身の女の子はマッサージの資格を取って、風俗を上がって、レンタルサロンで個人経営しています。「大金を稼ぐのは大変だけど、1人で食べていくくらいの金額なら、みんなできるようになっている時代だな」ってすごく感じました。

ゆか 私もセカンドキャリア、もうちょっとやりたいことちゃんと探してみようかな?

ジャニーズは不祥事&退所続き……企業コンサルタントが「ジュリー氏の問題点」を斬る!!

 「ジャニーズ終わった」――そんなため息混じりの嘆きが、至るところから聞こえてくる。今年、ジャニーズ事務所は大揺れに揺れている。TOKIO・山口達也が、未成年への強制わいせつ事件で書類送検(不起訴)され退所、関ジャニ∞・渋谷すばるがグループ脱退と退所を発表、NEWS・小山慶一郎と加藤シゲアキが未成年との飲酒同席騒動でそれぞれ活動自粛と厳重注意処分を受け、Hey!Say!JUMP・岡本圭人は2年間の留学とそれに伴う活動休止を公表と、タレントの不祥事や人材流出が立て続けに起こったのだ。

 こうした現状を受け、世間には“ジャニーズ終焉”の空気が漂いだした。熱心なファンたちも、「ジャニーズ、大丈夫なのかな?」「応援しているのが不安」と口々に訴え、中には、SMAP解散騒動を機に、ジャニー喜多川社長とメリー喜多川副社長から、事務所の実権を引き継いだとされる藤島ジュリー景子副社長の手腕に、疑問を投げかける声もある。果たして、ジャニーズ事務所は本当に、終わりの始まりを迎えているのか。企業コンサルタント・大関暁夫氏に話を聞いた。

――今年に入ってからトラブルが頻発したことにより、世間では「ジャニーズ終わった」という声が高まっているのですが、大関さんの目にはどのように映るでしょうか?

大関暁夫氏(以下、大関) 今年起こった一連の騒動を見ていると、組織の求心力が落ちていると感じますね。やはり、2016年に起こったSMAP解散騒動、また有能といわれていたSMAPのチーフマネジャーが退職したことに、端を発しているのではないでしょうか。我々には見えない部分ですが、これまでは、経営者とマネジャーの信頼関係があり、だからこそタレントがしっかり働けていたものの、SMAP解散騒動以降は、それがややおかしくなっているのではないか、と。確固たる証拠はないですが、そういった雰囲気は伝わってきます。

――SMAP解散は、ジャニーズファンの間でもかなり尾を引いている騒動です。

大関 一般企業に置き換えて考えてみましょう。経営者が、その会社の主軸となる、スピリットを示すような“主力商品(=SMAP)”を粗雑に扱い、商品価値を下げる問題に発展させ、最終的に失ってしまったわけです。組織とは生き物なので、その影響は中にも外にも伝わります。SMAP解散は、経営責任を問われるべき騒動だったと思います。

――今年立て続けに起こっている不祥事や人材流出は、タレント個人の問題に感じるのですが、トップに問題があるといえるのでしょうか?

大関 はい。組織はトップの意思を反映して、風土が作られていきますから、当然、そのときに実権を握っているトップの求心力が弱ってくると、タレントの気持ちが離れ、問題を起こすようにもなると考えられます。例えばベンチャー企業でも同様で、社員が経営者の心意気や事業にかける思いに共感を覚えれば、単に「給料が安い」「仕事に恵まれていない」だけでは辞めていかない、「一緒に頑張って、いずれみんなでハッピーになればいいじゃないか」と思うものです。社員にそう思わせるのが、トップにとっては重要な部分だけに、やはり、SMAP解散騒動がベースにあって、ジャニーズのトップの求心力が弱まっていると感じますね。

――現在、ジャニーズ事務所の実権は、ジャニー喜多川社長とメリー喜多川福社長から、藤島ジュリー景子副社長に移ったとされています。

大関 代替わりって、ものすごく重要なポイントなんです。ただ、民間企業でも国営企業でも、世襲制をベースにしている組織は、大企業であればあるほどシステムが出来上がっているので、誰が継いでも大きな影響は出ないといわれています。北朝鮮を例に挙げるとわかりやすいかもしれません。北朝鮮は、現在、世襲で三代目という流れですが、社会主義国家としてのベースがしっかり出来上がっているため、世襲によって急激な変化が起こることはない。もちろん、継いだ人間の能力によって、徐々に変化がもたらされることはありますが、実権が移った段階ですぐに……というのは、そもそも組織としての統制がとれていないということになるでしょう。

 しかし、芸能事務所のような小さな組織では十分起こりうることなので、断言はできませんが、ジュリー氏に経営者としての器に問題があるといえるのかもしれませんね。ジャニー氏とメリー氏が厳しく統制を取っていたとしても、SMAP解散、そしてジュリー氏の経営方針や彼女自身のリーダーシップに、タレントがなんとなく嫌な印象を覚え、気持ちが緩んだということもあるのではないでしょうか。

――その気持ちの緩みが、山口や小山のような不祥事につながったのかもしれません。

大関 ああいった不祥事が立て続けに起こるのは、組織の緩みが出ている証拠です。下の者は、上の者の行動を見て、「上がダラけているんだから、俺もダラけていい」などと、自分の行動を決めるところがありますから。逆に上が厳しすぎて、下の者の気持ちが離れていくケースも考えられますが。もちろん、これは組織の中に入って検証しなければわからないことですが、「組織統制」という観点から考えると、やはりトップに何か問題や原因があると疑うべきだと考えます。

――これまでジャニーズは、ジャニー氏のイメージが強かっただけに、それを引き継ぐジュリー氏は大変かもしれないとは思います。

大関 ジャニー氏は、いわばカリスマトップ。カリスマトップの代替わりはリスクが高いものだと思います。ファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバンクの孫正義氏などもそうなんですが、カリスマになりすぎればなりすぎるほど、誰にバトンタッチするか、どのタイミングでするかなどが、難しい問題になってきます。

 ただ、ジャニー氏のようなカリスマトップ自体が悪いわけではなく、組織の人間がトップに信頼感を持ち、崇めていることが前提となり、コミュニケーションが円滑に進んで、組織の統制が取れるということがあります。しかし、次の代に移ったときに、同じコミュニケーションの取り方が有効かというとそうではないんです。

――ジャニー氏に対してタレントが信頼を寄せているのは、ファンの目にも明らかだったと思います。実際にタレントがジャニー氏に関する話をテレビなどで披露する機会は多いです。

大関 組織にとってコミュニケーションは重要なんです。先のサッカーワールドカップの日本代表を例に出すとわかりやすいと思います。大会2カ月前になって、バヒド・ハリルホジッチ監督が更迭されましたが、選手とのコミュニケーションがうまく取れなかったことが原因だったそうです。連戦連勝していれば、選手も「この人についていけば間違いない」と思うでしょうが、実際には連戦連敗だっただけに、恐らく選手の間に「この人の言うことを聞いていていいのか?」といった気持ちが芽生えたのではないでしょうか。そこで、「我々の意見も入れてください」と訴えても、つっぱねられてしまっては、組織として崩壊に向かうのは当然。「俺はもう辞める」なんて人が出てきたら、その組織はもう崩壊寸前です。

 これをジャニーズに置き換えて考えてみましょう。ここ数十年、ずっと連戦戦勝を続けていたジャニーズにとって、“SMAP解散騒動”は、ある意味初めての大きな負けだったのでは。そんな敗北の雰囲気が漂う中、トップは、タレントとのコミュニケーションの取り方、心のつなぎ止め方、さらに大きく言うと組織の運営に関して、もっともっと気を使うべきなのです。それをカリスマトップの二代目を引き継いだジュリー氏が、もし「今まで通りやればいいや」と考えているならば、タレントから「だからSMAPは解散してしまったんだ」と見られてしまい、結果的に組織に対する気持ちが離れることも致し方ないのではないでしょうか。

――タレントの不祥事や人材流出が今後も続くのではないかと不安がっているファンは多いのですが……。

大関 SMAP解散騒動後、ジャニーズ事務所は連戦連敗状態と言えるかもしれませんね。日本代表は、監督が西野朗氏に替わった後、監督と選手間のコミュニケーションが円滑になり、それでチームがまとまって、予選突破を果たすことができたとされていますが、つまり“コミュニケーションの流れを変える”組織運営が重要なのです。ジャニーズ事務所においても、それができなければ、まだまだトラブルが続くと思います。

(後編につづく)

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

 

ジャニーズは不祥事&退所続き……企業コンサルタントが「ジュリー氏の問題点」を斬る!!

 「ジャニーズ終わった」――そんなため息混じりの嘆きが、至るところから聞こえてくる。今年、ジャニーズ事務所は大揺れに揺れている。TOKIO・山口達也が、未成年への強制わいせつ事件で書類送検(不起訴)され退所、関ジャニ∞・渋谷すばるがグループ脱退と退所を発表、NEWS・小山慶一郎と加藤シゲアキが未成年との飲酒同席騒動でそれぞれ活動自粛と厳重注意処分を受け、Hey!Say!JUMP・岡本圭人は2年間の留学とそれに伴う活動休止を公表と、タレントの不祥事や人材流出が立て続けに起こったのだ。

 こうした現状を受け、世間には“ジャニーズ終焉”の空気が漂いだした。熱心なファンたちも、「ジャニーズ、大丈夫なのかな?」「応援しているのが不安」と口々に訴え、中には、SMAP解散騒動を機に、ジャニー喜多川社長とメリー喜多川副社長から、事務所の実権を引き継いだとされる藤島ジュリー景子副社長の手腕に、疑問を投げかける声もある。果たして、ジャニーズ事務所は本当に、終わりの始まりを迎えているのか。企業コンサルタント・大関暁夫氏に話を聞いた。

――今年に入ってからトラブルが頻発したことにより、世間では「ジャニーズ終わった」という声が高まっているのですが、大関さんの目にはどのように映るでしょうか?

大関暁夫氏(以下、大関) 今年起こった一連の騒動を見ていると、組織の求心力が落ちていると感じますね。やはり、2016年に起こったSMAP解散騒動、また有能といわれていたSMAPのチーフマネジャーが退職したことに、端を発しているのではないでしょうか。我々には見えない部分ですが、これまでは、経営者とマネジャーの信頼関係があり、だからこそタレントがしっかり働けていたものの、SMAP解散騒動以降は、それがややおかしくなっているのではないか、と。確固たる証拠はないですが、そういった雰囲気は伝わってきます。

――SMAP解散は、ジャニーズファンの間でもかなり尾を引いている騒動です。

大関 一般企業に置き換えて考えてみましょう。経営者が、その会社の主軸となる、スピリットを示すような“主力商品(=SMAP)”を粗雑に扱い、商品価値を下げる問題に発展させ、最終的に失ってしまったわけです。組織とは生き物なので、その影響は中にも外にも伝わります。SMAP解散は、経営責任を問われるべき騒動だったと思います。

――今年立て続けに起こっている不祥事や人材流出は、タレント個人の問題に感じるのですが、トップに問題があるといえるのでしょうか?

大関 はい。組織はトップの意思を反映して、風土が作られていきますから、当然、そのときに実権を握っているトップの求心力が弱ってくると、タレントの気持ちが離れ、問題を起こすようにもなると考えられます。例えばベンチャー企業でも同様で、社員が経営者の心意気や事業にかける思いに共感を覚えれば、単に「給料が安い」「仕事に恵まれていない」だけでは辞めていかない、「一緒に頑張って、いずれみんなでハッピーになればいいじゃないか」と思うものです。社員にそう思わせるのが、トップにとっては重要な部分だけに、やはり、SMAP解散騒動がベースにあって、ジャニーズのトップの求心力が弱まっていると感じますね。

――現在、ジャニーズ事務所の実権は、ジャニー喜多川社長とメリー喜多川福社長から、藤島ジュリー景子副社長に移ったとされています。

大関 代替わりって、ものすごく重要なポイントなんです。ただ、民間企業でも国営企業でも、世襲制をベースにしている組織は、大企業であればあるほどシステムが出来上がっているので、誰が継いでも大きな影響は出ないといわれています。北朝鮮を例に挙げるとわかりやすいかもしれません。北朝鮮は、現在、世襲で三代目という流れですが、社会主義国家としてのベースがしっかり出来上がっているため、世襲によって急激な変化が起こることはない。もちろん、継いだ人間の能力によって、徐々に変化がもたらされることはありますが、実権が移った段階ですぐに……というのは、そもそも組織としての統制がとれていないということになるでしょう。

 しかし、芸能事務所のような小さな組織では十分起こりうることなので、断言はできませんが、ジュリー氏に経営者としての器に問題があるといえるのかもしれませんね。ジャニー氏とメリー氏が厳しく統制を取っていたとしても、SMAP解散、そしてジュリー氏の経営方針や彼女自身のリーダーシップに、タレントがなんとなく嫌な印象を覚え、気持ちが緩んだということもあるのではないでしょうか。

――その気持ちの緩みが、山口や小山のような不祥事につながったのかもしれません。

大関 ああいった不祥事が立て続けに起こるのは、組織の緩みが出ている証拠です。下の者は、上の者の行動を見て、「上がダラけているんだから、俺もダラけていい」などと、自分の行動を決めるところがありますから。逆に上が厳しすぎて、下の者の気持ちが離れていくケースも考えられますが。もちろん、これは組織の中に入って検証しなければわからないことですが、「組織統制」という観点から考えると、やはりトップに何か問題や原因があると疑うべきだと考えます。

――これまでジャニーズは、ジャニー氏のイメージが強かっただけに、それを引き継ぐジュリー氏は大変かもしれないとは思います。

大関 ジャニー氏は、いわばカリスマトップ。カリスマトップの代替わりはリスクが高いものだと思います。ファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバンクの孫正義氏などもそうなんですが、カリスマになりすぎればなりすぎるほど、誰にバトンタッチするか、どのタイミングでするかなどが、難しい問題になってきます。

 ただ、ジャニー氏のようなカリスマトップ自体が悪いわけではなく、組織の人間がトップに信頼感を持ち、崇めていることが前提となり、コミュニケーションが円滑に進んで、組織の統制が取れるということがあります。しかし、次の代に移ったときに、同じコミュニケーションの取り方が有効かというとそうではないんです。

――ジャニー氏に対してタレントが信頼を寄せているのは、ファンの目にも明らかだったと思います。実際にタレントがジャニー氏に関する話をテレビなどで披露する機会は多いです。

大関 組織にとってコミュニケーションは重要なんです。先のサッカーワールドカップの日本代表を例に出すとわかりやすいと思います。大会2カ月前になって、バヒド・ハリルホジッチ監督が更迭されましたが、選手とのコミュニケーションがうまく取れなかったことが原因だったそうです。連戦連勝していれば、選手も「この人についていけば間違いない」と思うでしょうが、実際には連戦連敗だっただけに、恐らく選手の間に「この人の言うことを聞いていていいのか?」といった気持ちが芽生えたのではないでしょうか。そこで、「我々の意見も入れてください」と訴えても、つっぱねられてしまっては、組織として崩壊に向かうのは当然。「俺はもう辞める」なんて人が出てきたら、その組織はもう崩壊寸前です。

 これをジャニーズに置き換えて考えてみましょう。ここ数十年、ずっと連戦戦勝を続けていたジャニーズにとって、“SMAP解散騒動”は、ある意味初めての大きな負けだったのでは。そんな敗北の雰囲気が漂う中、トップは、タレントとのコミュニケーションの取り方、心のつなぎ止め方、さらに大きく言うと組織の運営に関して、もっともっと気を使うべきなのです。それをカリスマトップの二代目を引き継いだジュリー氏が、もし「今まで通りやればいいや」と考えているならば、タレントから「だからSMAPは解散してしまったんだ」と見られてしまい、結果的に組織に対する気持ちが離れることも致し方ないのではないでしょうか。

――タレントの不祥事や人材流出が今後も続くのではないかと不安がっているファンは多いのですが……。

大関 SMAP解散騒動後、ジャニーズ事務所は連戦連敗状態と言えるかもしれませんね。日本代表は、監督が西野朗氏に替わった後、監督と選手間のコミュニケーションが円滑になり、それでチームがまとまって、予選突破を果たすことができたとされていますが、つまり“コミュニケーションの流れを変える”組織運営が重要なのです。ジャニーズ事務所においても、それができなければ、まだまだトラブルが続くと思います。

(後編につづく)

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。