【このスピがすごい2018】スピリチュアル・引き寄せ市場の研究者が選ぶ、業界の“過激派”2名

 去る12月20日、子宮委員長はるが引退した。「子宮を大切にすると幸せになれる」という子宮メソッドは、多くの女性を魅了し、書籍やDVD、関連グッズが飛ぶように売れたという。果たして、スピリチュアル/自己啓発業界で、はるのような大ブレークを果たす人物はいるのだろうか? 

 今回、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の元副主任研究員で、『スピリチュアル市場の研究 ―データで読む急拡大マーケットの真実』(東洋経済新報社)の著者・有元裕美子氏に取材を行うことに。研究のため、さまざまなスピリチュアルセミナーなどに足を運び、マーケティング視点でその動向を追っているというが、「中立の立場でいようと思って参加するものの、ミイラ取りがミイラになることがあります(笑)。年間200万円近くの身銭を切ることもあるので、『だったら、私も幸せになりたい』と思ってしまいます」と微笑む。そんな有元氏に、「このスピがすごい2018」を2名選出してもらった。

多次元コンタクター・シャランさん

 最初に名前を挙げてくれたのが、多次元コンタクター・シャランさん。耳慣れない肩書だが、いわゆる“引き寄せジャンル”のスーパーノヴァ(超新星)的存在とのことで、有元氏いわく「この大変な時代に、不安を抱える人たちが、楽しい世界に行けるためのまったく新しい方法」を教える人物だという。

【選出理由その1】
これまでの引き寄せで効果がなかった人を取り込んだ
<有元氏のコメント>シャランさんは、これまでいくらやっても引き寄せができなかった人に向けて、段階を踏みながら引き寄せを習得していくメソッド(パラめく)を紹介しています。自分なんてダメなんだと嘆いている「クヨクヨさん」→他人との勝ち負けにこだわる「イライラさん」→他人のことは気にならなくなり、いつも幸せで穏やかな気持ちでいられる「ニコニコさん」という、3段階のステップアップに分けて対策を説いており、かなり斬新。一般的な引き寄せでは、全員にいきなり「ニコニコさん」だからこそ自然にできる「何事にも感謝しよう」「ポジティブシンキングをしよう」といった教えを説いてはいるものの、エネルギーが足りない「クヨクヨさん」や「イライラさん」状態の人が、そんな高度なことは実践できませんからね。

【選出理由その2】
「自分、自分、自分!」自分の本音や快適さが最優先の過激な実践法
<有元氏のコメント>パラめくでは、「エネルギー漏れ(過去のトラウマ、現在のトラブル、未来の心配、自分を責める、人を責める)を防ぐことによって、エネルギーを高め、ステップアップする」のですが、その方法はとても過激。「自分を制限する思い込みや枠を外し、その下に隠された本音に気づく」「自分を徹底的に慈しみ、嫌なことはしなくてよし」とされ、自分をケアするためであれば、働かなくていいし、のんびりするのが最高だし、自分のご機嫌だけを取りなさい、というのです(笑)。「マンガを読め!」「ギターを弾け!」「髪をカールに!」といった具体的な指示もあるようです。自分にダメ出しするくらいなら、心の中で他人に「死ね!」と言うこともOKだそう。とにかく自分、自分、自分! 自分第一。自分イジメは厳禁で、他人(の評価)に向けていた目線を自分(の感情)に戻し続けます。数ある引き寄せの中でも、ここまで徹底している教えはないのでは。

【選出理由その3】
「普通の人が激変する」「不安が減って幸せに!?」という体験談の強烈さ
<有元氏のコメント>パラめくを実践される方って、ある日突然思ってもいないような横っ飛びの展開が起こるらしいです。ある方は、今まで歌ったことがなかったのに、シャランさんに突然「前世はオペラ歌手だから、歌ってみろ!」と言われ、最初は抵抗していたものの、一念発起してオペラの先生に習いに行こうとしたそう。しかし、「勉強なんてするな、いきなり歌え!」というので、イベントで歌ってみたら、「うちのイベントでも歌って」とオファーが舞い込み、最終的に2000人くらいが応募したオーディションで優勝して、CDデビュー(笑)。ほかにもアイドルデビュー、映画出演を果たした方などもいるといいます。ある意味、狂っているようなことが起こるんです。

【選出理由その4】
スピ/自己啓発ジプシーの最終決定打となりそう
<有元氏のコメント>スピ/自己啓発にハマる人は、皆さん“最終決定打”を求めて、ジプシーのようにさまよい、それがこの業界にリピーターを呼ぶ構造になっていました。しかし、そういった方がこぞってシャランさんで打ち止めになっている印象があります。真面目さを排除し、ゆるむことに重きを置き、テンションを上げるというメソッドは、思考でなく感情に働きかけるため、無理なく実践しやすい。また、本やセミナーでは伝わり切れない、パラめくのゆるさとハイテンションの“周波数”を体感してもらって、日常により定着させるため、シャランさん認定のグランドマスターたちによるお茶会(パラめくベーシック講座)が盛んに開かれ、これによってコミュニティが形成され、リピーター定着と新規開拓、つまり、愛好者拡大の大きな原動力となっているように見えます。まさにシャランさんは、スピ/自己啓発業界の“最終決定打”なのかもしれません。

 次に名前を挙げてくれたのが、JCETI(日本地球外知的生命体センター)代表のグレゴリー・サリバンさん。「地球外知的生命体」という言葉から、宇宙人に関連する活動をしているように見受けられるが……。

【選出理由その1】
「宇宙人は『いる』、しかも『究極の親友』」という斬新さ
<有元氏のコメント>これまで宇宙人については、オカルト分野で「いるか/いないか」に焦点を当てた議論が多く、またスピ分野では、特別な力を持った人物が、「宇宙存在にチャネリングをして、そのメッセージを人々に伝える」など、コアなスピリチュアルワークがありました。しかしグレゴリーさんはそれらとはまったく異なり、宇宙人が(3次元で知覚できる)実体として存在していることは大前提なんです。

 グレゴリーさんいわく、宇宙人はすでに、分離や争いを乗り越え、またエネルギー問題や貧困などといった問題からも卒業し、ワンネス(全体愛)の境地に至っているそう。かといって、聖人君主のような遠い存在ではなく、人間らしい感情も残っており、かつて自分たちが歩んだ道で苦労している地球人を助けたいと思ってくれているとのこと。我々は現在、お金中心の社会で、戦争や病気などの問題を抱えながら生きているわけですが、そこから脱するために、各個人が、宇宙人とコンタクトを取れるように訓練し、その「宇宙人的ライフスタイル」を教えてもらって幸せになりましょうと説いています。初めて聞くと、ちょっとついていけないかもしれませんね(笑)。しかし、この“(優しく信頼できる)理想的な親友”といった宇宙人像がリアリティをもって語られている点は、大変斬新であり、親近感をグッと高めて人を惹きつけているように見えます。

【選出理由その2】
宇宙人に「実際会える」ことでハマる人が続出
<有元氏のコメント>“実体を伴う宇宙人との遭遇体験”を提供している点も、グレゴリーさん人気の理由でしょう。なんでも、宇宙人とは実際に“会える”もので、彼のイベントではアプリを使ってUFOを呼び、宇宙人を招くそうです。シリウス、プレアデス、アルクトゥルスなど天の川銀河から来ている場合が多く、日本ではオリオンからというケースも。なんと8~9割近くの参加者が目撃・遭遇しているといいます。

 さらにグレゴリーさんは、ET(宇宙人)ガイドによる“エーテル手術”というセッションも実施しています。人類全員にそれぞれついている守護ET(宇宙人)が、エーテル体(肉体に近いオーラ層)をエネルギー的にクリアな状態にする手術をしてくれるそうです。エーテル体が損傷し、エネルギーに不具合があると、その人の人生がうまくいかなくなるとか。なお、エーテル体が抜ける際に、何かが自分の体から抜けていく不思議な体感をする人も多いといいます。このように、実感がある、姿が見えるという点で納得感を得やすいことから、特別な透視能力がない人でも取っつきやすい。自身とのつながりを感じられる点が人気となっているのかもしれません。

【選出理由その3】
突飛にもかかわらず、実は壮大かつ真面目な「市民運動」!?
<有元氏のコメント>グレゴリーさんがこういった取り組みを、オカルト趣味や、商業ベースではなく、「社会貢献」「市民運動」として進めているところに大変驚きました。政府(主に米国)によって隠されている“宇宙人情報”をもっと開示すべきと訴えており、最終的には人類全体でアセンション(肉体を伴う次元上昇)していきたいそう。宇宙人とコンタクトを取るという突飛さながら、実は極めて壮大かつ真面目な取り組みである点も「このスピがすごい」と言うにふさわしいのではないでしょうか。

 シャランさんとグレゴリー・サリバンさん。この2人には、ある共通点があります。それは、引き寄せやETコンタクトを量子力学の観点から説いているところです。今まで、スピリチュアルや引き寄せは「根拠がない」「誰もが幸せになれるわけではないんじゃない?」と言われがちでした。そんな中、引き寄せ等を、量子力学というサイエンスによって説明しようというのが大きな流れになっています。

 これはあくまで仮説、しかも一例ですが、引き寄せの“叶えたいことを思い続ければ、それが現実になる”というのは、「全てのものは、素粒子から構成されている」「素粒子は、通常、波(エネルギー)として存在するが、観測者の存在によって粒子(物質)となり、現象が確定する(→普段は雲のような不確定でボヤっとした状態で存在するが、意識を向けたとたんに物質化する)」「波は、より近い周波数に共鳴、共振する(→意図したようなものが現れる)」という理論を根拠としている……といった感じです。

 シャランさんは、パラめくを実践すると、自分にとって好ましいことばかり起こる“パラレルワールド”にジャンプできると説いていますが、それは「素粒子は、観測者の存在がなければ、波(エネルギー)のまま存在し、現象が確定しない。つまり、可能性が重なり合った状態となっている(→意図して選ぶ前までは、無数のパラレルワールドの素が並存する)」「選択する周波数ごとに粒子が確定し、異なる現象が出現する(→そのうちの意図に近い1つの世界を引き寄せて体験している)」という理論を根拠にしている説があります。またグレゴリーさんのET手術は、時空を超えて情報伝達ができる点において「宇宙全体が量子力学的に全てつながっている」「素粒子レベルでは、物理的にまったくつながっていない状態でも、影響を及ぼし合っている」という理論を根拠にする説があります。

 もし本当に、ミクロの論理(量子力学)で、私たちが見ている世界のマクロ的現象を説明できるようになったら、そのインパクトは、人類史上、革命的なこと。スピや引き寄せの信頼性が高まるだけでなく、生きたいように生きられるようになることを意味するからです。現時点では、まだまだ理論が足りず、拡大解釈といわれることも多いようですが、スピ/自己啓発、サイエンスともに、未知の部分が多い分野だけに、これからもさまざまな説が出てくると思います。実はスピの現象を物理学で証明しようという試みは、以前からあったのですが、2018年は、日本中の引き寄せやスピ系の方ほぼみなさんが「量子力学」という言葉を使うようになったという象徴的な1年でした。

有元裕美子(ありもと・ゆみこ)
健康/スピリチュアル・ビジネス・コンサルタント。長年、健康及びスピリチュアル分野等の研究・コンサルティング等に従事。国委託案件のプロジェクト・マネージメントも手がける。NHK、日本経済新聞連載など対外活動多数。著書に『スピリチュアル市場の研究 ―データで読む急拡大マーケットの真実』(東洋経済新報社)、『「肥満解消」マーケティング(共著)』(日本経済新聞出版社)『維持透析患者に対する補完代替医療スタンダード(共著)』(東京医学社)などがある。

「キラキラ起業女子」に騙された! 「集団で洗脳された」とずさんなコンサル被害を告白

 SNSで集客し、カウンセリングやコンサルタントビジネスを行う「キラキラ起業女子」。この1、2年で一気に増えている印象だが、内容に見合わない高額な情報商材を売りつける起業家が増えた結果、「キラキラ起業女子に騙された」と被害を訴える声が続出しているのだ。ずさんなビジネスの被害に遭ったという告発者の1人に話を聞いた。

■1,000万円かけた勉強内容を、たった50万円で学べるという錯覚

 ブロガーのしおからさんは、自身が体験した返金トラブルを世に周知させるために、ブログ「キラキラ起業女子研究所」を立ち上げた。すると、しおからさんのもとには、キラキラ起業女子とのトラブルを経験したと訴える女性たちから、次々にメッセージが送られてくるようになったという。

「詐欺まがいのサービスに気付いても、ほとんどの人が誰にも言えずにいる状況です。私自身、返金してもらうまでに、ものすごく葛藤しました」

 しおからさんが、“A”という起業支援コンサルタントに出会ったのは2017年のこと。

「当時の私は、ビジネスを始めたばかりでした。独学だったので『本当にこれでいいのか?』という不安は常にあり、正しい方法を学ぶため、いろいろな起業家の情報を集めていたんです。そのとき憧れを持った起業家が2人いました。するとほぼ同じタイミングで、その2人がすごくオススメする起業家として名前を挙げたのがAです」

「憧れの人たちが絶賛する存在なのだから、この人はスゴイ!」と思い込んでしまったという。

 自身を起業支援コンサルタントと名乗るAは、6カ月50万円の継続講座の生徒を募集していた。起業したい女性に向けた講座で、商品設計からブランディングの方法までを教えるというもの。具体的には、月に2度、1回1時間オンラインでのコンサルのほか、24時間いつでもAにチャットで質問し放題、コミュニティへの所属権利など、魅力的な内容だった。

 Aのセールスページには、「5,000人との面談実績」「子持ちの主婦から2カ月で月商7ケタの起業家に」「トータル1,000万円を学びに投資してきた」など、大きな数字が並んでいた。悩んだ末、しおからさんは、継続講座に申し込んだ。

「その人が1,000万円かけて勉強したことを、たった50万円で学べるなんて、すごくおトクだと思ってしまったんです」

 Aの「ビジネスの構築をイチから教えます!」という言葉に惹かれたしおからさんだったが、講座開始直後に送られてきたのは1枚のシートだけ。そこには、「あなたの商品は?」「たった1人の理想のお客様は?」など、本屋に置いてあるビジネス書籍から引っ張ってきたかのような質問項目がズラリと並んでいた。

「こういう質問を、話しながら深掘りしてもらえるのがコンサルタントだと思っていたので、最初の時点でかなり期待はずれでしたね。講座料金の決済までのやりとりが非常に丁寧だった分、お金を払った途端にシートを1枚ぽんと送られてきただけだったことにも違和感を覚えました」

 その違和感はさらに続いた。事前の案内では「生徒たちのための専用コミュニティがあるので、切磋琢磨しながら夢を目指せる」という触れ込みだったのが、ふたを開けてみると、活気ある生徒同士のやりとりは、ほぼなし。コミュニティのベースが出来上がっていないのは一目瞭然だった。それもそのはず、しおからさんは、Aにとって初めてのお客様といっても間違いではなかったからだ。

「Aが『しおからさんたちが、初期メンバーです!』と言っていてあぜんとしました。セールスページでは、さも何人もの生徒を輩出してきたかのように書いていたのに、実際はまるで違ったんです」

 その後も、Aのずさんなコンサルタントは続いた。月初めにビジネスの目標を提出するのだが、いざコンサルの日になると「目標はなんでしたっけ?」と悪気なく聞いてくる。商品の価格を一緒に決めたのに、次のコンサルのときには忘れていることもあった。「お客様を増やすために、Facebookで片っ端からお友達申請してください!」という指導も疑問だった。自分の商品に興味を持ってくれる客層も考えずにSNSでただつながるだけでは、なんの成果もないと思った。

 さらには、月に2回のコンサルタントが消化できない月には「もう2回やったことにしてもいいですか?」と、耳を疑うような発言がAから飛び出したりもしたが、しおからさんは「想像と多少の違いがあるのは仕方ない」と自分を納得させていた。しかし、ついに我慢できない事件が起きる。

「オンラインコンサルの日、10分通話したところで、私がいったん通話を切らなければいけないことがあったんですが、それを一方的にコンサル1回分にカウントされてしまったんです。かすかにつながっていた信頼の糸がプツンと切れた瞬間でした」

 その後、しおからさんはAに、ずさんな継続講座に対するクレームとともに、返金要求のメールを送った。Aは全額返金に応じたという。

 トラブルを振り返り、しおからさんは「どうしてあんなものに引っかかってしまったのだろう」と後悔することになった。

「大げさな数字をすっかり信じ込んでしまいました。コンサルが始まってすぐに、おかしいなと思うことがいくつもあったのですが、同じ講座を受けている仲間たちはまったく疑う様子がなく『Aさん、すごい!』という空気でした。ところが、後々話を聞くと、みんな本当はAのやり方はおかしいと思っていたんです。集団で洗脳されていたんだと思います」

 もちろん、すべてのキラキラ起業女子のビジネスが、ずさんというわけではない。トラブルを経験したしおからさんに、近づいてはいけないキラキラ起業女子の特徴を聞いた。

「まず、自分を大きく見せたがる人はやっぱり危険です。特に、宣伝文にある数字は真に受けてはいけません。また、考える時間を与えない人も要注意だと思います。私がAの継続講座に申し込む際も、『今日中に契約すれば50万円、明日以降だと55万円』と言われ、即決を促されました。時間を与えないことは、すなわち、周りの人に相談する機会を奪うということです。高額の支払いが発生する講座に参加する場合は、冷静な第三者の目で確認してもらうべきだと思います」

 「夢を現実にして稼ぎたい」などと思っている人は、キラキラ起業女子のカモになる可能性が高いとしおからさん。少しでも冷静な自覚があるなら最初から近づかないほうがいいと忠告する。また、しおからさんが返金してもらえたのは稀なケース。現在Aは、ほかの生徒からも返金請求を受けているが、数が増えすぎたためか一切返金に応じない姿勢を見せており、依然としてトラブルは続いているのだという。君子危うきに近寄らずなのだ。
(島野美穂/清談社)

●取材協力
しおからさん
キラキラ起業女子研究所

羽生結弦選手のモノマネタレント・羽生ゆずれないが語る「そっくりポイント」ベスト3

――芸能界、政界、スポーツ界の個性豊かな著名人の方々に2018年の秘蔵ネタを語ってもらう「あの人が2018年を振り返る」。今回は、平昌オリンピックフィギュアスケート男子シングルで金メダルに輝いた羽生結弦選手の「ソックリさん」モノマネタレント・羽生ゆずれないさんがサイゾーウーマンに初登場! 

 なんと高校在学中、アイスホッケーでU-18日本代表主将を務めたこともあるという異色の経歴を持つモノマネタレント・ゆずれないさんが、今年イチオシだった「羽生選手にソックリなポイント」ベスト3を大発表。「周りに言われて羽生選手のモノマネを始めたので、よく『似てる!』と言っていただけるポイントになるんですが」とはにかみながら、答えてくださいました!!

2018年「羽生選手にソックリなポイント」ベスト3

【第1位】
笑顔

 笑ったときの顔が似ているというのは、よく言われます。特に目元あたりでしょうか。羽生選手って、演技しているときと笑顔のときのギャップがあまりにも激しいんです。あんな純粋な笑顔をされる方なのに、演技のときは、殺気を感じるような、入り込んだ表情で……僕自身、そしてきっとファンの方も、そのギャップに魅了されていると思います。

【第2位】
素のとき

 あまり作りこんだ表情にせず、自然にしているときが似ているみたいです。でも、しっかり意識して似せようとしている部分もあります。羽生選手が身につけている物を全て揃える、羽生選手の体形に合わせて食事制限をする、フィギュアをやるために必要な分だけ残して筋肉を落とす。あと小顔ローラーも買ってやってます!

【第3位】
スケートを滑っている姿

 より完成度の高いモノマネを目指すべく、フィギュアスケートを始めたんですが、滑っているときの姿が似ていると言われます。

羽生選手のオリンピック2連覇

 僕は「羽生ゆづれない」なので、今年のベストニュースはやっぱりコレです。オリンピックのときは、超応援していました!! 自分自身がスポーツをやっていた人間なので、靭帯のケガ(羽生選手は昨年11月に右足関節外側靱帯損傷)はとても気になりますね。

 5月に地元・仙台で行われた、凱旋パレードにも参加しました。そのときに、オリジナルの羽生さんのTシャツを着ていったら、結構バレまして、「写真撮ってください」と声をかけられることも。ただ、人だかりができてしまい、通行の邪魔になってしまうので、警備の方にちょっと怒られちゃいました(笑)。ちなみに、パレード中の羽生選手とは完全に目が合いましたね!!

 いつかお会いしてみたい……いや、モノマネを始めた当初はそう思っていましたが、最近は、「何を言われるのか怖い」と緊張する気持ちが強いです(笑)。羽生選手はSNSもやられていないので、「どう思われているんだろう」とドキドキしています。

2019年の目標

 フィギュアスケートを、人に見せられるくらいのレベルまで上達させたいです。ショーに出させていただいたり、小さい子にスケートを教える教室などもできたら……と思っています!

羽生ゆずれない(はにゅう・ゆずれない)
1995年、北海道出身。モノマネレパートリーは、「羽生結弦」「ルパン三世」「にゃんこスター(スーパー三助)」「細川たかし」「瀬川瑛子」「八代亜紀」「氷川きよし」などで、歌唱力に定評がある。麻布十番にあるものまねショーパブ「リトモ ディ ブリブリブッスン」にも出演中。
公式Twitter
公式インスタグラム
リトモ ディ ブリブリブッスン公式サイト

闇金で億単位を稼いだ男の転落と再生……処女作が話題の“伝説の不良”の素顔

 平成最後の年の暮れ。『歌舞伎町 阿弥陀如来』という自らの半生を綴った著作を刊行し、話題を呼んでいる“伝説の不良”がいる。背中には、阿弥陀如来の刺青。根城を新宿・歌舞伎町としていたことから、「歌舞伎町 阿弥陀如来」の異名を轟かせてきた藤井学氏だ。

 札付きの不良を経て、20代で闇金で大儲けし、億単位の金を手にするも、仲間の裏切りやドラッグの罠に陥り、一度は地獄を見た男。著書にも克明に描かれている“ネオ・アウトロー”の半生は誰よりもドラマティックだ。そんな藤井氏の横顔とは──。

──アングラで生きてきた藤井さんが、自分が表に出よう、書籍を出そうとしたきっかけを教えてください。

藤井 ぼくは裏の世界の人間だと自覚をしていました。だけど、それではいけないと周りの人からいろいろ言われて、しょせん人生なんか短いし、面白おかしく生きれば勝ちじゃないですか。それで楽しく人生を振り返ることができればいいかな、と思ったのがきっかけですね。ほかの人たちが、ぼくの人生を面白がってくれたり、そこから何かを得てくれたりしたら本望です。

──裏の世界の人間というのは?

藤井 ガキのころから悪さばかりしていて、周りでは「誰が刺された。さらわれた」とかの事件は日常茶飯事に起こっていました。そんなのは真っ当に生きていれば味わえない世界じゃないですか。別に自分がそのような生き方を選んだのではなくて、気が付いたらその最前線を走っていた。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いという自分に正直な生き方をしているだけなんですけどね。

──暴力団ではないですよね?

藤井 ぼくは違います。個人的に縁を持っているのは、本の後書きにも名前を出させていただいた棚本清己氏、亡くなられましたが、漫画の『代紋TAKE2』のモデルといわれている阿久津雄治氏。この2人の任侠がいわゆる世間でいわれる暴力団ですが、ぼくが暴力団の一員として扱われたり、お付き合いしたりとかは一切していないです。

──裏の世界の人だった藤井さんは、最初、ネットメディアの「R-ZONE」で連載を開始して名前が表に出るようになりました。反響はありましたか?

藤井 メチャクチャありましたね。藤井学はどこに向かっているんだろうとか、そんなこと言われましたね(笑)。

──自身では、それまで動画配信などもしていましたが、それとは違う感触でしたか?

藤井 あれは本当に遊びでやっていて、別にぼくの生き方を左右するようなことではなかったので。

──藤井さんの人生を変えたきっかけはなんですか?

藤井 さきほど名前を挙げた、棚本氏、阿久津氏をはじめとした人との縁ですか。それと本の後書きにも名前を出しましたが、親友だった(桜井)義光との出会い、そして彼の死がぼくの考え方、生き方を変えましたね。こいつが生きるはずだった人生を、ぼくは背負わなければいけない。それは何だとかは細かくは人には言いませんが、ぼくは義光の人生を背負って今も生きています。ぼくが死んだ時に義光に「学、ありがとな」と声を掛けられるかは、死んだあとなのでわからないですが。「余計なことしやがって」とかも言われるかも知れないですけどね(笑)。

──藤井さんが生まれた昭和51年や、その前後数年に生まれた、東京の不良少年史に名を残す有名な人間大勢いますよね。『歌舞伎町 阿弥陀如来』では、当サイトでもおなじみの瓜田純士や関東連合のメンバーなどと交友関係があったような記述が見られますね。

藤井 そうですね、好き嫌いは別にして、顔見知りですね。東京だけじゃないですよ。埼玉から神奈川、千葉の同年代の人間とは付き合いはあります。

──本を出版して何か変わりましたか?

藤井 変わらないです、人からは「本を出したね、応援するから」とかいろいろ言われますが、ぼくは今まで通り、自分の生き方を曲げる気はありません。

──本に書ききれていないことはありますか?

藤井 ありますけど、それは言う気もありません。ぼくが何か言ったり書いたりすると傷つく人間もいますから。

──まだまだ裏の部分はありそうですね。

藤井 それは当然ありますね。だけど何でも書けばいいというものじゃないですか。人の悪口を書くのは簡単だし、表に出ていないことで見てきたことはたくさんあるので、それを書くのも簡単です。だけどそんな曝露をするために本を書いたわけではありません。この本は裏社会の暴露本ではありません。そこはみなさんに理解をしてもらいたいです。

──最後に本を読んだ読者、これから読んでもらいたい読者にメッセージはありますか?

藤井 人間誰もが生きていれば壁にぶつかることがあると思います。その時に逃げるのは簡単です。だけど、ぶつかれば必ず解決します。逃げたら逃げ癖がつくし、周りからそんな人間だと思われてしまいます。ぼくは逃げずにぶつかり正面から戦った。勝ったとか負けたとか、そんなのは結果であり、どうでもいいんです。戦うことが大切なのをわかってもらいたい。そんな人たちに、少しでもぼくの生き方が参考になればと思っています。

 * * *

 現在発売中の『実話ナックルズ』(大洋図書)では、藤井氏と同じくネオ・アウトローと呼ばれる、歌舞伎町を根城に裏社会に生きてきた工藤明生氏との対談も掲載されているが、それも併せて読めば、平成という時代の社会の裏街道を彼らがどう生きてきたかがわかるはずだ。マスコミでは決して語られない、時代のひとつの側面を理解する上でも『歌舞伎町 阿弥陀如来』必読の一冊であろう。

『歌舞伎町 阿弥陀如来 闇東京で暴走を続けるネオ・アウトローの不良社会漂流記』
著者:藤井学/発行:サイゾー/定価:1300円+税

オタク議員・荻野稔大田区議が辞職へ「一度、けじめをつけます」「もし、お許しいただけるならもう一度応援をいただきたい」

 年の瀬に、大変なニュースが飛び込んできた。コミケにサークル参加したり、コスプレを用いた町おこしなどで「オタク議員」として知られている東京都大田区の荻野稔大田区議会議員が、年末をもって議員辞職を決めたというのだ。

 さっそく本人を突撃した筆者に、荻野区議は「年末付けで、議員を辞職するための辞職願を区議会議長に提出済みです。年末年始を挟むため、正式には手続きも発表も年明けになってしまいますが……」と明かす。

 辞職のきっかけとなったのは、世間の注目を集めた10月の事件が原因だ。

 すでに報道されているように、荻野区議の銀行口座が振り込め詐欺に利用されていたことが発覚。しかも、口座を譲渡した容疑で任意聴取を受けるに至ったのである。

 記者会見での説明などによれば、荻野区議は親族や周囲からのたび重なる金の無心に悩み、ネットで見つけた金融業者に連絡。その業者から「キャッシュカードを送れば、口座に現金を入金して送り返す」と指示され、自身の持つ信用金庫のカードを郵送した。

 その後、この業者と連絡が取れなくなったことから、荻野区議はすぐに口座を停止した。だが、すでに口座は振り込め詐欺に利用され、大阪府堺市の女性が200万円をだまし取られる被害に遭ってしまったのだ。これ自体は、公人としてあまりにも脇が甘い行為。その件に触れたところ、荻野区議は改めて謝罪の言葉を口にした。

「本当に申し訳ございませんでした。記者会見でも述べましたが、自身の愚かさ、未熟さゆえの過ちです……」

 荻野区議は、記者会見で自らの無知が原因で口座の不正譲渡を行ってしまったことを謝罪。自身に直接の責任はないものの、被害者女性に直接、被害額200万円の全額を弁償している。

 被害者にも弁償をしたことで、すでに反省の意は示しているはずなのに、ここにきて辞職を決意した理由はなにか。荻野区議は語る。

「来年4月には大田区議会議員選挙があります。現状では、自身のけじめをつけているとはいえない。有権者の方から見ても、その後、どうなったのかわからない中途半端な状態に見えると思います。一度、議員辞職という形で責任を取り、その上で区民のみなさんに判断していただく必要があると考えました」

 荻野区議は、記者会見と謹慎を経て、今後とも区議会議員としての任期を全うしたいと語っていた。にもかかわらず、このタイミングで辞職を決めたことをどう考えているのか。そのことを問うと、荻野区議は言葉を詰まらせた。

「私自身、悩んだのですが……やはり、けじめを……」

 実のところ、いまだに所属する日本維新の会からは党員資格が停止されたまま。さらに、事件の捜査についても、いまだ書類送検にも至っていないことも、荻野区議にとっての枷になっている。

「このまま、歯にものが挟まった状態で、事件についても止まったままで、またみなさまの代表をやらせてくださいというのも、誠意がないと思います。何より、今のまま区議会にいても議員としての活動や情報発信が難しく、みなさまから期待された活動もできない。出席してお給料をもらうだけになってしまう。そういった状況でズルズル続けてしまうよりも……と考えて、辞職願を提出しました。責任を取り、信託をいただけるなら、もう一度挑戦させていただきたいと思っています」

 事件の発覚以来、荻野区議は苦悩の日々を送ってきた。これまでの支援者の中には、突然、音信不通になる者もいた。だが、一方で事務所を訪ねてくれる人も後を絶たなかった。

「地域の方々には暖かい言葉もかけていただきました。また、年上の方々からは人生のアドバイスも多くいただきました。今回の事件は、身の丈に合わないことをやっていた自分の不始末だと思っています。地元の方からの『あなたは生き急ぎすぎだ』という言葉は身に染みました」

 だが、事件によって信頼を失ったことは事実。さらに辞職してしまっては、次回の区議選は苦しいものになるのではないか……。

「どんな形であれ、選挙は優しいものではありません。ここまで追い込まれてしまったのだから、必死にやるしかないと思っています。言葉を尽くして、信頼を取り戻そうと思っています」

 幾度も反省の言葉を口にしながらも、再出発に駆ける意志を語った荻野区議。31日のコミックマーケットには、予定通りサークル参加する予定だという。
(文=昼間たかし)

 

2018年の日本映画を英国人プロデューサーが語る「今後は俳優もロイヤリティー契約を結ぶべき」

 是枝裕和監督、安藤サクラ主演作『万引き家族』はカンヌ映画祭パルムドールを受賞、国内でも興収45億円の大ヒットとなった。製作費300万円という超低予算映画『カメラを止めるな!』は都内2館の上映から始まり、口コミやSNSで人気が広まり、31億円超えのミラクルヒットとなった。インディペンデント系の映画が話題を集めた2018年の日本映画界。日本映画をこよなく愛し、それゆえに「日本映画のポスターはダサすぎる」(参照記事)などの苦言も呈する英国人プロデューサーのアダム・トレル氏に、この1年の日本映画を振り返ってもらった。

──日本の優れたインディペンデント映画を海外へ広めているアダムさんは、『カメラを止めるな!』に早い段階から注目していたそうですね。

アダム・トレル(以下、アダム) アスミック・エースは『カメ止め』が話題になってから共同配給に名乗り出たけど、俺は前から上田慎一郎監督の短編映画も観ていたし、奥さんのふくだみゆき監督のアニメ作品も観ていたから、上田監督が長編を撮るのを知って楽しみにしていたよ。17年の先行上映で観て、「絶対に話題になる」と思った。上田監督は子どもが産まれたばかりで大変だったから、上田監督と奥さん、子どものためにも、俺は『カメ止め』の宣伝をがんばろうと思った。それでまず海外の映画祭で話題にしようと考えて、世界80カ国の映画祭に出品した。友達にDCPを無料で作ってもらい、各国の映画祭とはメールでやりとりして交渉したから、費用は全然使わなかった。中でもイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭はアジアから芸能人が参加するし、映画関係者も多いからニュースになりやすいと思った。

──ウディネ・ファーイースト映画祭では、『カメ止め』は韓国映画『1987、ある闘いの真実』に次ぐ観客賞第2位に。日本での公開前に勢いづかせる、効果的な宣伝になりました。

アダム 『カメ止め』の公開が始まってからも、海外の映画祭で次々と上映されて、話題が絶えなかったのもよかったと思う。海外の映画祭に出品するまで時間がなかったから、ポスターは俺が構成案を考えて、ふくださんに仕上げてもらった。自主映画のスタッフたちを主人公にしたコメディであることを前面に出すと観客のハードルを上げてしまうので、ジョージ・A・ロメロっぽいゾンビ映画みたいなビジュアルがいいと思った。英語タイトルも『ONE CUT OF THE DEAD』にした。ゾンビ映画が好きな人は低予算なほど喜ぶし、会場で盛り上げてくれるから。映画の内容と違うと反対するスタッフが最初は多かったけど、日本映画のポスターはどれも説明的すぎてよくない。見た目のインパクトのあるゾンビ映画ふうのポスターにしてよかったと思うよ。

──なるほど、アダムさんが考えた海外用のポスタービジュアルが、そのまま国内のポスターにも生かされることになったんですね。製作費300万円という低予算なことも注目を集めました。

アダム 公開初日後も、ずっと監督やキャストが劇場での舞台あいさつを続けたでしょ。あれがよかった。お金のかからないうまい宣伝方法。日本独自の素晴しいスタイルだと思う。安藤サクラが主演した『百円の恋』(14)も安藤サクラが自分でいろんなところでチケットを売って、下北沢でチラシを配って回った。『百円の恋』がヒットしたのは、もちろん安藤サクラの芝居がよく、映画が面白いからだけど、安藤サクラが宣伝をがんばったことも大きかった。キャストががんばって宣伝することで『百円の恋』も『カメ止め』もヒットした。ヒットしたら、その分はキャストやスタッフにロイヤリティーとして還元できるような契約にしたほうがいい。『カメ止め』は上田監督も劇場公開段階ではロイヤリティーはなくて、DVDが売れた場合にDVDの売り上げの1.75%がもらえるだけ。

──いくら劇場で満席が続いても、監督やキャストにはロイヤリティーは発生しないんですね。

アダム いちばん美味しいのは、途中から配給に加わったアスミック・エースだよね。すでに話題になってから配給したから、宣伝費もかからなかった。俺、アスミック・エースの社員になりたいよ(笑)。今後はロイヤリティー契約を俳優たちも結べるようにしたほうがいいと思う。スタッフやキャストのギャラをみんな上げると、インディペンデント系の映画は撮れなくなってしまうけど、ロイヤリティー契約なら、配給会社はヒットしたときだけ支払えばいいから、リスクはないはず。俺が日本でプロデュースした『下衆の愛』(16)はスタッフだけでなく、キャストともロイヤリティー契約を結んだ。そのほうがスタッフもキャストも、映画をヒットさせようとさらにヤル気が出ると思うよ。

■映画館で映画を楽しむのは、もはや日本の独自文化!?

──アスミック・エースの話題が出ましたが、『時効警察』(テレビ朝日系)で知られる三木聡監督の9年ぶりのオリジナル映画だった阿部サダヲ&吉岡里帆主演作『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』はアスミック・エース配給で全国公開したところ、興収的には残念な結果に。

アダム 俺、三木監督の作品が大好き。俺的には音楽業界を舞台にした『音量を上げろタコ!』は面白かった。主演俳優たちは日本では有名なんだよね? 他の映画やテレビにいっぱい出ているから、見飽きられてたんじゃないのかな。日本の映画製作会社は映画やテレビにいっぱい出ている有名芸能人を主演にすればヒットすると思いがちだけど、客はテレビでよく見る人を映画館までわざわざ観に行こうとは思わない。三木監督は英国で人気がある。三木監督の『亀は意外と速く泳ぐ』(05)や『転々』(07)、それに『インスタント沼』(09)を英国でDVD BOXとしてリリースしたら、すごく売れた。三木監督と奥さんのふせえりさんを英国に呼んでトークイベントを開いたら、すごく盛り上がった。三木監督のブラックな笑いは海外で人気があるけど、逆に日本では大ヒットは難しい。『亀は意外と速く泳ぐ』の頃みたいに、あまり予算を使わない映画を撮ったほうがいいと思う。

──ゼロ年代にはミニシアター文化がありましたが、今はミニシアターが減ってしまい、難しいのかもしれません。

アダム そんなことはないよ。海外に比べると、日本にはまだまだミニシアターは残っている。海外ではネットフリックスなどの映像配信に押されて、ミニシアターどころか映画館そのものがどんどん消えている。日本はミニシアターが残っている映画文化のある国。新宿のK’s cinemaなどに行くと、いろんな自主映画が上映されている。これは日本だけの独自の文化だよ。

──アダムさんは中島哲也監督の作品も好きで『下妻物語』(04)がきっかけで、日本映画を海外で配給するようになった。中島監督がホラー映画に初挑戦した『来る』はどうでしたか?

アダム 『来る』は公開初日に新宿ピカデリーで観たよ。中島監督の『告白』(10)は海外でも人気だし、俺も大好き。でも前作の『渇き。』(14)もそうだったけど、『来る』もやりすぎだと思う。『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』(06)は俺が海外配給やったんだけど、物語や映像にアップダウンがあって楽しめた。『来る』は最初から最後までアップばかりで、疲れてしまう。編集で短くしたら、印象は変わるかもしれない。

──中島監督は実写版『進撃の巨人』で挫折したことから、破壊衝動に振り切ったように『渇き。』のときは感じられたのですが、まだ『来る』でもその衝動は収まっていないように思いました。

アダム 実写版『進撃の巨人』は、中島監督で観たかったよね。中島監督は英国のパインスタジオでの撮影を予定し、北欧のリトアニアでのロケも計画していて、俺は英国で『進撃の巨人』のプロデューサーと会って打ち合わせもしていた。実際に撮影もスタートしていたんだけど、いろいろ大変だったみたい。中島監督はスタッフやキャストに厳しいけど、自分自身にも厳しい。中島監督のそういうところは、俺はすごくリスペクトしている。

■才能ある俳優を生かすも殺すも事務所次第

──アダムさんが日本でプロデュースした『獣道』(17)でヒロインを演じた伊藤沙莉は、今や映画やテレビドラマに引っ張りだこ状態。助演した『寝ても覚めても』も評判がいいですね。

アダム 『寝ても覚めても』のキャストの中では、伊藤沙莉がいちばんよかった。伊藤沙莉は演技がうまいし、人間的にも好感が持てる。彼女自身も素晴しいけど、彼女のマネジャーや所属事務所もいい。でんでん、毎熊克己とか他にもいい役者がいるし、事務所が映画のことに理解がある。あと、『寝ても覚めても』を面白いと思った人は、ぜひ濱口竜介監督の過去の作品も観てほしい。『PASSION』(08)や『THE DEPTHS』(10)はもっといいから。観たら、きっと驚くと思う。

──アダムさんは前回のインタビューでも、日本は芸能事務所の力が強すぎることを問題点として挙げていました。事務所の力がいくら強くても、脚本の善し悪しを判断できないマネジャーだと俳優は伸びることができない。

アダム 俳優にいくら才能があっても、所属事務所がダメだといい作品に出会うことができないよね。ジャニーズや吉本興業はタレント数が多いから、マネジャーも大変だと思う。でも、事務所が所属タレントの舞台あいさつの際に写真撮影を禁じるのはどうかと思う。本人の判断に任せればいい。舞台あいさつはSNSなどで話題が広まるから、すごくいい宣伝になる。もったいないよ。

──2018年は白石和彌監督の活躍も印象に残ります。

アダム 今、日本でいちばんいい監督だよね。『凶悪』(13)のときから才能があることは分かっていたけど、年々レベルアップしている。東映で全国公開された『孤狼の血』もよかったし、『止められるか、俺たちを』はすごくよかった。『止められるか、俺たちを』は若松孝二(井浦新)を主人公にしたら、よくある伝記映画になっていたし、若松孝二のファンしか興味を持たない作品になっていたと思うけど、若い女性助監督(門脇麦)の視点から描いたことで、若松孝二のことを知らない人でも楽しめる作品になっていた。こういう発想を出来る白石監督はすごくいい。日本ではフレディー・マーキュリーの生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディー』が大ヒットしているけど、海外ではあの映画は評価がそれほど高くない。英国人はクイーンに関するエピソードたくさん知っているから、映画を観ても驚きがない。俺は『止められるか、俺たちを』のほうが面白いと思った。

■日本の監督は、作品を厳選したほうがいい

──アダムさん的に気になった日本映画は?

アダム 俺が今年いちばん好きだったのは、『ドブ川番外地』。渡邊安悟監督が大阪芸術大学の卒業制作として撮った作品。映画祭での上映だけだったから、観た人は少ないと思う。あと、村上春樹原作の『ハナレイ・ベイ』も意外とよかった。松永大司監督は面白い映画を撮る人。吉田恵輔監督はオリジナル作『犬猿』がよかった。吉田監督の『純喫茶磯辺』(08)や漫画原作の『ヒメアノ~ル』(16)も面白かったけど、『愛しのアイリーン』の後半はやりすぎだと思う。武正晴監督の『銃』はオシャレだし、見やすかった。武監督みたいにマジメなエンタテインメント作品を撮れる監督は日本では少ないと思う。

──是枝裕和監督の『万引き家族』はどうでしたか。

アダム 『万引き家族』は観てない。是枝監督や河瀬直美監督は海外配給がすでにしっかり付いているから、俺が出る幕じゃない。福田雄一監督の『銀魂2 掟は破るためにこそある』は機内で観たよ。俺は漫画を全然読まないから分からないけど、原作漫画をそのまま実写化しているんでしょ? 漫画やアニメが好きな人は実写映画を観ないけど、福田監督の演出だったら抵抗なく観られるのかもしれない。逆に実写映画が好きな人は興味を持たないと思うけど。

──日本映画を愛するあまり、海外配給だけでなく日本で映画をプロデュースするようになったアダムさんですが、今の日本映画の置かれた状況をどう感じていますか?

アダム 日本映画は年間600本も公開されている。いくらなんでも製作本数が多すぎると思う。英国では年間40本、フランスでは80本、ドイツでは50本ぐらい。製作本数は絞られている。もちろんつまらない作品もあるけど、面白い作品に当たる確率は50%くらいはある。日本映画を俺は年間200本くらい観ているけど、面白いと思う映画は20~30本くらい。確率は10~15%。たまにしか映画館に行かない人が、つまらない日本映画に当たってしまう確率が高い。ギャラが安い分、たくさん映画を撮る監督がいるけど、それも問題。撮る映画はもっと選んだほうがいいと思う。お金を稼ぐために撮るのなら、テレビドラマを撮ればいい。テレビドラマまでは海外の人は観ないけど、映画は海外でも観られるから、自分のクオリティーを下げるようなことは避けたほうがいい。日本は評論家が厳しいことを言わないのもダメ。あと映画の配給会社や宣伝スタッフは試写やサンプル映像で済ませるのではなく、お金を払って劇場で映画を観るべき。そうしないと、どんなお客さんが来て、どんなシーンで盛り上がっているのか分からないよ。

──2019年はアダムさんがプロデュースした『ばるぼら』の公開が楽しみです。

アダム 俺、1980年代にデビューした日本の監督たちが好き。80年代は塚本晋也、石井岳龍、山本政志みたいな個性的な監督がいっぱい出てきた。彼らの撮った作品にはパッションがあった。中でも手塚眞監督の『星くず兄弟の伝説』(85)は大好き。それで手塚監督に頼まれて、『ばるぼら』をプロデュースした。撮影もポスプロも終わり、あとは国内での配給が決まるのを待っているところ。これが難しくて、なかなか決まらない(苦笑)。ばるぼら役の二階堂ふみはクレバーだし、英語も話せるから、海外でも充分活躍できると思うよ。2019年は1月から『カメ止め』の英国公開が始まるし、俺もがんばるしかないよ。
(取材・文=長野辰次)

●アダム・トレル
1982年英国ロンドン生まれ。22歳で映画配給会社「Third Window Films」を設立。中島哲也監督の『下妻物語』(04)や園子温監督の『愛のむきだし』(08)などの海外配給を手掛けた。資金集めが難航した園監督の『希望の国』(12)に共同プロデューサーとして参加。2014年より日本での映画製作を始め、藤田容介監督の『福福荘の福ちゃん』(14)、内田英治監督の『下衆の愛』(16)と『獣道』(17)をプロデュースしている。最新プロデュース作である手塚眞監督の『ばるぼら』が公開待機中。

マスコミをマスゴミにした『共犯者たち』は誰!? 元NHK・堀潤氏が語る権力とメディアとの関係

 マスメディアには権力を監視する役割があると言われるが、果たして本当だろうか? 籾井勝人NHK前会長が「政府が右と言ったものを左と言うわけにはいかない」と発言したことは記憶に新しい。テレビ朝日の看板番組『報道ステーション』は自民党から圧力を受け、番組プロデューサーが異動になったと言われている。マスメディアは権力にとても弱い存在ではないのかと思わざるを得ない。現在公開中のドキュメンタリー映画『共犯者たち』を観ると、その思いがいっそう強まる。

 韓国ではドキュメンタリー作品として異例のヒット作となった『共犯者たち』は、韓国の公共放送局KBSと公営放送局MBCで当時の大統領イ・ミョンパクに対して批判的な報道をしたニュース番組のスタッフたちが現場を追われた事件を追ったもの。局の経営陣は権力者寄りの人物に一新され、局員たちはストライキを行なうことで抵抗するが、ストライキ参加者は容赦なく解雇される。しかし、権力寄りとなった局は、2014年に起きた「セウォル号事件」で“全員救助”という大誤報を流してしまう。MBCを解雇された元プロデューサーのチェ・ホンス監督は独立系メディア「ニュース打破」を立ち上げ、メディアを腐敗させた“共犯者”たちをカメラで追い詰めていく──。

 日本唯一の公共放送であるNHKに2001年から2013年まで勤め、現在は市民投稿型ニュースサイト「8bitNews」を主宰しているジャーナリスト・堀潤氏はこの映画を観て、どのように感じただろうか。12月15日、ドキュメンタリー映画監督の森達也氏と共に行なったポレポレ東中野でのトークショーを終えた堀潤氏にコメントを求めた。

■日本と韓国では“共犯者たち”は異なる!?

──『共犯者たち』は韓国のテレビ局で起きた事件を追ったドキュメンタリーですが、堀さんはどのような感想をお持ちでしょうか?

堀 僕がNHKを辞めたのは2013年で、韓国の公共放送であるKBSがストライキを行なったのは2014年。「権力からの圧力を跳ね返して、公共放送としての使命をまっとうしたい」という彼らの声を聞いて、居ても立ってもいられなくなり、韓国まで取材に行ったんです。ストライキ中の舎内で組合の委員長や現場のディレクターたちから「公共放送は権力者のものではなく、市民一人ひとりのものなんだ」という熱い話が聞けてうれしかったですね。そんなふうに点として見ていた事件を、チェ・スンホ監督が時系列で追った作品にまとめたことで線として理解することができましたし、市民運動へと広がって面となっていく展開に引き込まれました。でも同時に日本の状況を省みると、不甲斐なさと寂しさも感じます。日本では事件や人物を興味本位で消費していくだけ。例えば、安田純平さんについてもマスメディアは自己責任論について論じるだけで、シリアの今の情勢を伝えようとか、安田さんを拉致した集団は何者だったのかということは検証しようとしない。視聴者が飽きてしまえば、それで終わり。『共犯者たち』と同じような事件が日本で起きた場合、そのことに異議を唱えない視聴者一人ひとりが“共犯者”ということになるんじゃないかとも思いましたね。

──『共犯者たち』では、韓国の権力者におもねるテレビ局の経営陣をマスコミをマスゴミに変えた“共犯者たち”と糾弾しているわけですが、堀さんは日本の状況に置き換えて観ていたわけですね。

堀 そうですね。権利とは与えられるものではなく、勝ち取るものなんだなということを改めて感じました。その意識がないと、ある意味で隷属関係と変わらないんじゃないかと。日本って、やっぱり“お上の文化”なんでしょうね。クビ切り民主主義なんて言います。何か問題が起きれば、責任者のクビを切って、それで一件落着。企業が問題を起こせば社長が変わり、政府が問題を起こせば政権が変わって、一件落着。問題の本質は変わらないままなので、問題が繰り返し起きてしまうんです。フランスではマクロン政権の燃料税引き上げに対して市民は暴動で抵抗していますが、日本人である僕らは秩序を維持することに価値をいちばん感じているのかもしれません。体制を維持するためなら、個人の権利さえも差し出してしまう文化が封建時代から根づいているように感じます。終戦の際も“国体護持”が最優先されたわけです。原発事故から7年が経つのに、今もまだ被災民は10万人以上いる。そのことを伝えるメディアもすっかり減りました。五輪や万博を誘致して浮かれるよりも前に、私たちの税金を使う先はあるはずなのに、おかしいですよ。福島で起きたことをもう忘れたんじゃなくて、もともと他人の幸せには興味がないんでしょう。そんなことを考えると虚しくなるんですが、そうじゃないものを探し出すことが僕の取材のモチベーションになっているんです。

■NHKを辞めることになった本当の理由

──堀さんはNHK在職中、3.11の報道の在り方に批判的なことをTwitter上で呟いたところ、国会議員からクレームがあり、上司からTwitterを止めさせられたと聞いています。

 実を言うと、あれはとても些末な出来事でした。僕のTwitter上の発言に対して圧力があったということになっていますが、その圧力は本当に政治家からだったのか、経営陣の判断だったのか、はっきりしていません。そのように上司から説明されただけなんです。政治的圧力を理由に、自分たちから言論の自由を放棄してしまうことに不快さと寂しさを感じて、その時点で「NHK、辞めます」と上司に伝えました。そのときは「まぁまぁ」となだめられ、それでLAへ留学することになったんですが、留学中に僕が撮った日米の原発メルトダウン事故についてのドキュメンタリー映画『変身 Metamorphosis』を地元の市民が上映したいと申し出てくれたことに上司はNGを出したんです。LAの市民にまでNHKは連絡を入れ、上映会を取り止めさせた。それがいちばん悲しかったですね。他国の人たちが情報を発信しようという権利にまで圧力を掛けてしまう。民主主義の発展を標榜しているはずのメディアに対して恥ずかしさを感じて、上司にその場で文句を言いました。それから日本に帰国し、より自由な報道の場を求めてNHKを退職することになったんです。

──NHKを辞めた原因は、政治家からの圧力ではなかった?

 政治家はメディアに対して圧力を掛けるなんて、ヘタはそうそうは打ちません(笑)。圧力を掛けたことが明らかになれば、政治家にとってはリスクになりますから。僕が嫌だったのは、世間からバッシングを浴びるんじゃないかと心配して、とにかく穏便に済ませようとする局内の雰囲気、信頼関係のなさだったんです。僕が主宰している「8bitNews」で、当時101歳だったジャーナリスト・むのたけじさんをインタビューしたことがあります。むのさんは2016年に亡くなられましたが、戦時中は朝日新聞に勤め、日本がポツダム宣言を受諾した1945年8月15日に朝日新聞を退職し、故郷の秋田県横手市で「たいまつ」という反戦を訴えた新聞を出し続けた方です。「むのさんのようなジャーナリストがいたのに、朝日をはじめとする大手新聞はどうして大本営発表に加担したんですか。軍部の圧力がすごかったんですか?」と尋ねたところ、むのさんの第一声は「圧力なんか掛けるわけないじゃない。彼らは笑っているだけだよ」というものでした。組織を守るために、生業を失わないように、新聞社と記者たちは大本営の発表を受け入れ、さらには社内検閲まで自主的に設け、それを軍部は笑って見ているだけだったと話してくれました。この構造は今も変わっていないと思います。メディアや企業だけでなく、日常的にもこれは起きうること。その危険性を意識して変えていかないと、権力者にうまく利用され、あっという間にコントロールされてしまいます。市民一人ひとりが声を上げていくことが大事です。それもあって「8bitNews」を立ち上げることにしたんです。

■マスメディアは権力とは闘わない

──マスメディアには権力を監視する役割があると言われますが、堀さんはどのように考えていますか。

 メディアは“大衆の鏡”とも言われていますよね(笑)。ですから、僕ら大衆側の人間に、権力を監視するぞというモチベーションがあるかどうか次第だと思うんです。俺は権力を監視する気もないし、声を上げるつもりもないけど、マスメディアは権力を監視し、声を上げるべきだという考え方ではダメでしょう。メディアで働いているのは大衆の一人であり、決して独立した機構ではないわけです。もっと言えば、政治の世界も司法界も本当は大衆と繋がっているものです。権力を監視し、変えていくのは大衆の一人ひとりなんだと思います。『共犯者たち』はそのことを伝えているように僕は思います。

──NHKでアナウンサーとして活躍していた堀さんに、もうひとつお訊きしたいことがあります。NHKのトップである会長がどのようにして選ばれているのかは、NHKの局員にも分からないものなんですか?

 NHK会長の選出に関しては構造上、誰もタッチできないんです。経営委員会が会長を選出しているわけですが、経営委員は内閣に指名された人たちです。その経営委員たちが会長に誰を選ぶかは、局員も視聴者もいっさい関知することができません。従来はNHK内から会長が選ばれていましたが、ここ10年は外部から会長を連れてくるようになりました。でも、これはNHKの身から出た錆なんです。NHKで不祥事が相次ぎ、「国民から受信料を集めておきながら、あいつらロクなことしない」という世評ができてしまい、NHKをコントロールしたいという権力側の思惑と合致してしまった。権力は常にメディアをコントロールしようとします。だから、放送局側はスキを与えちゃダメなんです。公共放送であるNHKはお上のものだと思われがちですが、公共料金を払っているのは我々ですから、我々市民のものであるはずなんです。僕は「NHKは日本最大の市民メディアですよね」と事あるごとに言うようにしています。「自分たちがお金を払っているのに、会長を選ぶ議決権がないのはおかしい」とみんなが声を上げていけば、放送改革に繋がっていくはずです。先ほどのトークの中で、森達也監督がいいことを言っていましたよね。「中国の人たちは端から自国のメディアを信用していない」と(笑)。そういう自覚を、僕らも持っていたほうがいいと思います。権力と闘うのがメディアではなく、権力と結び付くのがメディアなんだと。そのことを意識して、自分たちで変えていこうと声を上げていくことが大切だと思いますね。

──堀さんが主宰している「8bitNews」には、クレームは届きませんか?

 「8bitNews」はいろんな声をいただいていていますが、クレームはないです。僕もNHKを辞めてフリーランスとして、いろんな番組に呼ばれていますが、「こんなことはしゃべらないで」と言われることないですね。結局、NHKという組織にいたことで忖度が働いていたんだなということが、フリーになって分かりました。発言の内容は全て個人の責任になるわけです。NHK時代はいいドキュメンタリー番組を作って思うような視聴率を残せないと、「せっかくいい番組を作ったのに視聴率が悪かったのは、視聴者のみなさんのせいですよ」なんてことは心で思っても、決して口には出せませんでした。でも、今はフリーな立場なので、何でも自由に発言できます。いちばん怖いのは「こんなことを言ったら、仕事が来なくなるかも」と自己忖度して、言いたいことを言わなくなってしまうことでしょうね。トークショーで森達也さんが言っていらっしゃったように自分自身がいちばん怖い相手なんだなと思いますね。

(取材・文=長野辰次)

『共犯者たち』
監督/チェ・スンホ 脚本/チョン・ジェホン 撮影/チェ・ヒョンソク 音楽/チョン・ヨンジン 製作/ニュース打破
配給/東風 ポレポレ東中野ほか全国順次公開中。
2019年1月5日(土)より渋谷ユーロスペースにて拡大上映決定。『スパイネーション/自白』と同時公開。
(c)KCIJ Newstapa
http://www.kyohanspy.com

●堀潤(ほり・じゅん)
1977年兵庫県生まれ。2001年にNHKに入局。『ニュースウォッチ9』のレポーター、『Bisスポ』のキャスターなどを担当。12年より市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、13年にNHKを退職。NHKを辞めた経緯は著書『僕がメディアで伝えたいこと』(講談社現代新書)、客員研究員としてUCLA留学中に製作したドキュメンタリー映画『変身 Metamorphosis』の内容は『変身 メルトダウン後の世界』(KADOKAWA)で詳しく語られている。

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が映画『暁に祈れ』にガックリ「それより俺のYouTubeを見ろ!」

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、覚せい剤中毒になりタイの刑務所に投獄された後、ムエタイでのし上がることに成功したイギリス人ボクサーの自伝を映画化した『暁に祈れ』だ。自身もタイでの逮捕経験や覚せい剤での服役経験のほか、格闘技で更生した経験も持つ瓜田は、境遇が丸かぶりとも言えるこの映画を見て、何を思うのか? タイでの苦い思い出話も交えつつ感想を語ってもらった。

『暁に祈れ』は、世界的ベストセラーとなったビリー・ムーアの自伝小説を原作にした映画だ。イギリス人ボクサーのビリーは、タイで麻薬中毒になり、逮捕されてしまう。収監されたチェンマイの刑務所は、殺人、レイプ、汚職が横行する地獄のような場所だった。死と背中合わせの毎日を過ごすビリーだったが、所内でムエタイに出会うことによって、生きる希望を見出していく――。

 かつて刑務所として使われていた場所をロケ地に選び、服役経験のある素人を囚人役として起用するなどリアリティーにこだわったこの作品は、カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門で上映され、大きな反響を呼んだという。

 そうした前評判を聞いていた瓜田は、「これは絶対に見ておきたい! 主人公の境遇が、俺と近い気がするから」と言って意気揚々と映画館へ入っていったが、果たして満足できたのだろうか? 以下は、上映終了後のインタビューである。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) うーん、あんまりかな……。目新しいことや予想外の展開が何もなかった感じ。ビリーの行動も想定内でした。ムショで体を鍛えて試合を迎えて……ってのも、俺でも当然そうするだろうと思ったし、シャブで捕まったのも自分に近いし、おまけにビリーのムエタイパンツまで俺の試合着に似てた(笑)。境遇が近いから共感できるかと思いきや、そうじゃなく、そりゃそうだろうよ、と思うことばかりで刺激不足でした。ビリーよりも、「ムショで3人殺した」と言ってた脇役の囚人に興味が湧いた。いっそのこと、あいつを主役にしたほうがよかったんじゃないでしょうか(笑)。

――格闘技の練習シーンで燃えませんでしたか?

純士 いや、そんなに。まったくの素人は騙せても、ちょっと格闘技をかじってる奴だったら、映画の中のビリーはそんなに過酷な練習をしてないことがわかるんで。

――ストーリー展開はいかがでしたか?

純士 どん底からのサクセスストーリーのつもりなんだろうけど、きっかけはただのブーシャ(覚せい剤)だろ(笑)。ムショの中でまで薬物を求めてるし、いちいち短気を起こすし、世話になったレディーボーイに嫉妬をするし……。金払いも悪いんだから、リンチされて当然だろ。おまけにラストで「ビリーは今も薬物と戦っている」って、まだやめてないのかよ! っていう(笑)。奴はすべてが未熟で中途半端なんですよ。

――実話ベースだから、そこらへんは正直に描いたのかも。

純士 ドキュメントとして見れば面白かったけど、せいぜい『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)あたりで見るもんでしょう。1時間でよかったかな。2時間の映画にするほどのもんじゃない。この程度の話で簡単に映画になっちゃったら、ますます本人が調子に乗りますよ。俺はデビュー作の『ドブネズミのバラード』が売れたことで調子に乗って、全然更生しなかったですから(笑)。10年経ってようやく更生しましたけどね。

――一緒に映画をご覧になった奥様の感想はいかがでしょう?

瓜田麗子(以下、麗子) ウチは大満足でした! 主人公と純士の境遇が近いんで、感情移入しやすかった。ビリーが格闘技を頑張ってる姿を見てウルウルきました。純士は今ケガをして格闘技のジムに通えてへんから、映画を見て練習したいと思ったやろ? そう考えると余計に泣けてきた。短髪で色白やし、アウェイで頑張って這い上がっていく姿も純士とかぶって、グッときたわ。

純士 俺に惚れてるから感動しただけだろ(笑)。ただ、俺もいろいろと思い出しました。そもそも俺が本格的に筋トレや格闘技を始めた動機のひとつは、海外で捕まったときを想定してのことなんですよ。黄色人種でガリガリの体だと、海外のムショで裸になったときにナメられる。そうならないよう、体を嫌え始めた。だから、ビリーがムエタイに目覚めた心理は理解できました。ただ、ビリーと俺は似てるようで、実は決定的な違いがあるんですよ。その違いに萎えました。

――その違いとは?

純士 まず、金払い。俺は10年ほど前にタイでパクられたんですが、留置所の売店でタバコを買うとき、自分の分だけじゃなく、店員の分も買い与えていたんですよ。それが礼儀だし、チップ代わりだと思ってた。ところがビリーは金も払わずタバコを何度も店員にねだったりして、セコかったじゃないですか。

麗子 それはお金がなかったからや。

純士 まあ、それもそうか。俺は入国時にパクられたから、金を持ってたもんな。ただ、ビリーは結局、赤落ち(懲役・禁固の判決が確定)して、ムショに行くじゃないですか。ムショに入った人間は、2つのタイプに大別されます。悪魔に魂を売ってひたすら堕ちていくタイプと、聖書を読みながら更生を図るタイプ。実は前者のほうが、ラクなんですよ。映画の序盤から中盤にかけてのビリーはまさに前者で、誘惑に負けて、ラクなほうラクなほうに逃げてばかりいたじゃないですか。それが男として嫌だった。ダセえなこいつ、と。

――瓜田さんは、そうじゃなかったんですか?

純士 かつてはビリータイプだったんですが、今は昔の自分が大嫌いになって、すっかり性格が変わってしまってるんです。だから、ムエタイに目覚めるまでの自堕落なビリーを好きになれず、作品にもノレなかった。最初からすべての誘惑を断ち切って、ブレずにひたすらリングを目指す話だったら、今の俺でもノレたんでしょうけど。

麗子 あの人(映画の中の囚人)たちって、いろんな理由があって、底辺の底辺の底辺におるんでしょう。上流階級、中流階級、いろんな人がおると思うけど、どこの階級で生きるかは、やっぱ自分次第やなと強く思ったわ。最底辺から中流や上流にいくことも、生き方次第では可能やと思った。逆に、上流の人でも下の下のふるまいをしてたら最底辺に転落する。結局そういうことやねんな。

純士 下獄してからビリーはしばらく、動物のように生きちゃってた。「薬物が欲しい」「タバコが欲しい」なんて言わず、誇り高く生きてたら、同じ境遇でもワンランク上の扱いになってたはずなのに。

麗子 ちょっとした今の快楽だけを追ってると、あとで「あれ? 知らんうちに最悪なことになってしまってる。え、なんで?」という結果になりかねないから、やっぱ酒や麻薬はやらんほうがええな。一度しかない人生やのに、そんな風に時間を過ごすのはもったいない。

純士 ちょっと可哀想なのは、ビリーって単細胞なんだよね。もっと賢かったら、俺のようになれたのに。ヘヘヘ。

――タトゥー愛好家の瓜田さんから見て、この映画に出てくる囚人たちのタトゥーはどうでしたか?

純士 特に驚きはなかったです。タイには何度も行ってるし、パクられたときも、保釈中に1ヶ月ほどバンコクにいて、多くのタイの元囚人とかと関わったから、あの手のタトゥーは見慣れてるんですよ。ビリーが入れた虎の模様もたくさん見ました。あれ、向こうのお守りというか験担ぎみたいな模様らしいですね。ついでに言うと、ワイクルー(ムエタイの競技前に行われる舞踊)も毎朝のように見てたんで、特に新鮮味はなかったというか、タイでの生活を思い出してウンザリしました。

――瓜田さんは、なぜタイで捕まったのでしょう?

純士 入国審査のときに止められたのに、暴れて強行突破しようとしたらパクられました。パスポートも没収されて、この映画にも出てきたようにトラックの荷台に乗せられて、留置所にぶち込まれたんです。最初は相部屋でした。

――映画のビリーみたく、同部屋のタイ人からいじめられませんでしたか?

純士 すぐに1人部屋に移されたから大丈夫でした。これは海外でパクられたときの鉄則で、フィリピンでも使った手なんですが、俺は捕まると、狂人のフリをするんです。そうすると1人部屋に移してもらえる。でも、気持ちは全然休まらなかったですよ。「7年は食らう」とのウワサを耳にしたりして、焦りました。いろんな人の助けもあって、留置所はすぐに出ることができましたが。

――よかったじゃないですか。

純士 いや、そこからも辛かったですよ。裁判を待つ間、出国が許されず、『ドブネズミのバラード』の印税を握りしめて1ヶ月ほど、あちこちのホテルを転々としたんですが、慣れない異国だし判決も不安だから、体調を崩して熱でうなされる日々が続きました。その間ずっとホテルの庭から、ピー・ムアイ(ムエタイの音楽)が流れてきて……。この映画でもピー・ムアイが延々と流れてたから、当時の苦しい思い出が蘇ってきて苦痛でした。

麗子 映画見ながらそんなこと思ってんの、純士だけやと思うで(笑)。あの独特の音楽が、異国で捕まった不安感を煽って、よかったやん。

純士 音楽はさておき、意志の弱い欧米人が吠えてるだけって感じで、映画としてイマイチだったかな。捕まるまでのシャバでの様子や、親との関係とかがもっと描かれてれば、ビリーに感情移入できたと思うんだけど……。

――でも映画の評判は上々のようで、今日も満席でしたね。

麗子 お客さんの9割ぐらいが男の人やったな。隣のおっちゃんが、2時間ずっと鼻ほじってて、おまけに息も臭かったんやけど、それを無視できるほどの内容の濃さやったわ。ところで劇中、新入りの囚人がレイプされるシーンがあったやん。あれ、純士が犯される立場やったら、どうする?

純士 あの段階だったら、迷わずケツを差し出すね。

麗子 えええっ!?

純士 下手に抵抗して、殺されるほうが嫌だ。ケツ掘られたって命に関わらないから、いくらでもどうぞ、って感じかな。俺はとにかく生き伸びたいと考えるタイプだから。

――タイ人の受刑囚たちの迫力はどうでしたか?

純士 今さらあんな刺青だらけのたるんだ体をたくさん用意したところで、たいして驚かないですよ。今はYouTubeやテレビの『クレイジージャーニー』などで、世界のいろんな裏情報が出回ってるから、ああいう環境の映像に新鮮味がない。映画って、想像の域を超えるから面白いんであって。ちょいちょい瓶を割って脅かしたりもしてたけど、ああいうハッタリも怖くなかったですね。

――そうですか。

純士 カンヌで話題になったと聞いてたから楽しみにしてたんだけど、おまえの半生なんてどうでもいいよ、と思っちゃった。出来事がどれも普通に思えちゃって。格闘技を題材にした映画は好きだけど、俺の魂には火がつかなかったですね。

――褒めるべき点はありましたか?

純士 さっき「ドキュメントとして見れば面白かった」と言いましたけど、それって実は、最高の褒め言葉でもあるんです。まったく映画っぽくなく、リアルだなと思えたし、彼が役者だとも思えなかった。ビリー本人という感覚で終始見れたのはよかったかな。

麗子 あれ、本人ちゃうの?

純士 (呆れ顔で)……ビリーを演じてるんだよ、役者(ジョー・コール)が。

麗子 本人がやってると思ってたわ!

純士 そんだけ役者がすごいんだろうね。あとは、タトゥーまみれの房長みたいなのが、いいことを言ってましたね。「俺たちは人間なんだ。動物じゃない。話し合いができる」と。あれは「確かに」と思いました。

――この映画から得た教訓はありますか?

純士 郷に入っては郷に従え、ってことでしょうか。ムショに入ったらジタバタせず、「いかに賢くふるまって、いかに最短で出るか」だけを考えるべき。とはいえ、真面目に生きてれば無関係な世界なんですけどね(笑)。すべてはあいつの行いが悪い。自分がちゃんとしてれば、あんなところにぶち込まれることはないわけですから。

麗子 シラフ最高! それがこの映画から得た教訓ですね。

純士 あ、最後に、この作品をカンヌで褒め称えた連中にこう言いたいです。「YouTubeで『瓜田純士プロファイリング』を見ろ! もっとすごい役者がいるぞ!」と。俺のことなんですけどね(笑)。
(取材・文=岡林敬太)

『暁に祈れ』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 50点
麗子 80点

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

風俗レポの域を超えた文才の無駄使い! 25歳素人童貞「素童」の果てなき風俗愛

 19歳で風俗初体験をして以来、7年間にわたってネットに風俗レポートをアップし続けている素人童貞・通称「素童」。

 ピンサロに始まり、デリヘル、M性感、「男の娘」ヘルス……数々の風俗に通い綴られた、時に文学的・哲学的な風俗レポートはネットで大きな話題を呼び、ついには『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)にまで出演してしまった。

 そんな素童の風俗レポートが『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』(ぶんか社)という1冊の本に! 風俗レポートの書籍化って……平口広美の漫画くらいしか知らないよ。

 なぜ彼はそこまで風俗に通い詰めるのか? そして「素人童貞」を捨てたいとは思わないのか?

■小6から彼女がいたけど、素人童貞

——まず、リアル童貞だった頃の話から聞きたいんですが、どんな子どもだったんですか?

素童 普通だと思いますよ。セックスを知るのも遅かったんで。

——じゃあ、風俗の存在を知ったのは?

素童 中学生の頃です。ブックオフにあった、風俗嬢のインタビュー集みたいなのを読んで。

——エロ本より前にそっち!? やっぱりエロ文を書く素質があったんですね。性に目覚めて、普通に「彼女作りたい」とかの方向にはいかなかったんですか?

素童 彼女はいたんですよ。

——なにーっ!(怒) いつですか?

素童 最初の彼女は小6ですね。

——小学生で彼女って! でも小6だから、具体的に何かをやるとかは……。

素童 ないですね。メールしたり、一緒に学校から帰ったりくらいです。

——そこから、彼女は何人くらいいたんですか?

素童 5人くらいいたんですけど……。

——はぁ〜っ!? なに素人童貞やってるんだよ!

素童 小6で1人、中学で2人、高校で1人、大学で1人……みたいな感じで。

——高校・大学になったら、ヤル人はヤルじゃないですか。そういう方向にはいかなかったんですか?

素童 そうなんですよね。なんか、セックスって難しいじゃないですか。

——それから「成人式前に風俗というものに行ってみたい」ということでピンサロに行ったそうですけど。その頃、風俗のジャンル分けって理解できてましたか?

素童 まったく。「ソープは本番ができる」みたいな話は知ってましたけど、「素股」がなんなのかとか、わかってなかったです。

——ピンサロがなんなのか区別がついてない状態で、1人で行くのって勇気いりません?

素童 怖かったですよ~。

——しかも、全裸で待機していたらピンサロ嬢に爆笑されて、発射もできなかったって。俺だったらもう二度と行かないと思いますよ。

素童 でも「そんなもんかな」って。「ヌキたかったな」とは思ったけど、「失敗だったな」とは思わなかったですね。

――ピンサロって、いくらくらいかかるんですか?

素童 最初のところは高かったんですよ。7,000円ぐらい払って。

――大学生にとって7,000円ってデカイでしょう。

素童 でも、奨学金もらってたんで。

――奨学金でピンサロ! 2度目の風俗には、どのくらいの間隔で行ったんですか?

素童 1週間ぐらいで行きました。

――エーッ!! パチンコ屋で7,000円負けても、しばらく行くのやめようって思うのに。

素童 風俗以外にお金使うこと、特になかったんで。食費も節約してました。

――それからはガンガン通うように?

素童 すごい行ってましたね。週に3回くらい。さすがに「これはお金がヤバイ」と思って(笑)。そこで、レポートサイトに投稿すると、お金をもらえるっていうのを知って。ピンサロに行ってレポートするようになったんです。

――なるほど、かなり初期の段階から風俗レポートを書いていたんですね。

素童 最初はピンサロに行くお金を稼ぐためだったんですが、だんだんと「レポートを書きたい」という気持ちのほうが強くなりましたね。そのレポートサイトで、割と簡単にアクセス上位に入れたんですよ。「初めて認められた!」みたいな。

――そこで成功体験をしちゃったんだ。玄人童貞を喪失したのは、いわゆる「本サロ」(本番ができるとかできないとかいううわさのあるピンサロ)ってヤツですよね。ピンサロ以外の業態には行かないんですか?

素童 当時はピンサロだけでしたね。レポートを書くには、ピンサロに詳しくないといけないじゃないですか。で、通い詰める中で「本サロ」というのがあるのを知って「1回行っておかなくちゃ」って。

――やっぱり「本番もヤリたい!」みたいな気持ちも。

素童 いや、本番には抵抗あるんですよね。でも、ピンサロのレポートサイトって、本サロのレポートが載ると「ウォー!」ってなるんです(笑)とはいえ、「本番は1回経験できてよかった」ぐらいのもんでしたね。本番やったら先がないんで、変な気持ちになるんですよ。目的を見失ってしまって。

――普通の人だったらそこから、「素人ともヤリたい」みたいな目標になると思うんですけど、「風俗の頂点を極めてしまったからもういいや」と。

素童 だから本番系はその1回だけです。

■謝ってるけど、俺はピンサロ行ってきたからね!

——社会人になってからは、どのぐらいのペースで?

素童 月に6〜10回くらいですね。予算的に、10万円台ぐらいに収まればいいと思ってます。本当に性欲がそんなに強くないんで。

——何を言ってるのかわからない!

素童 風俗は3日に1回ぐらいで十分なんですよ、マックスでも。

——働きながら10回行くって、けっこう大変じゃないですか?

素童 大変ですよ。池袋に住んでるんで「平日はできるだけ池袋にしよう」とは考えてます。

――本のタイトル通り、本当に昼休みに行くこともあるんですか?

素童 ピンサロには行きます。時間的にデリヘルはムリですね。

――昼休みにまでピンサロに行くモチベーションって、どこから来ているんでしょう?

素童 仕事でうまくいってない時とか、行きたくなりますね。取引先の人に謝んなきゃいけない時とか(笑)。

――謝りに行く前に行ってるんですか?

素童 はい。

――最低の謝罪ですね。イソジン臭い口で謝って(笑)。

素童 「反逆心」みたいのを持ちたくて……。「謝ってるけど、俺はピンサロ行ってきたからね」みたいな(笑)。

――「心の安定剤」的な部分もあるんですかね?

素童 ありますよ! やっぱり面白いことが起きると安定しますね。

――ホント、レポートのネタ探し感覚なんですね。

素童 でも、ヌケなかったら不安定になります。

――難しい(笑)。「抜ければいいけど、面白いことが起こったらもっといい」という。

■「乳首舐めのための乳首舐め」は崇高

――風俗嬢にもいろいろいると思いますが、「こんな子がいい」っていうこだわりポイントは?

素童 うーん。まあ、みんないいんですけどね。

――みんな違ってみんないい(笑)。

素童 現場でよくなかったとしても、レポートが面白くなればいいんで。よくなかった中で「どんなふうによくなかったか」のほうが重要です。だからあまりプレイに没頭できないんですけどね、観察しちゃうから。

――ピークが発射した瞬間じゃなくて、レポートを上げてネットでウケた瞬間だったりするんですかね?

素童 終わって振り返る時がピークですね。「面白い人だったなー」って。それから「じゃあ文章に書こう」と。

――面白ければ、どんな子でもいい?

素童 どっちかというと、唾液が多い子がいいですけど。

――(笑)。それは風俗情報サイトで調べても出てこない情報ですね。

素童 ないですねー。飛び込みで行って、唾液が多かったらうれしいです。

――唾液の何がいいんですか?

素童 顔を舐められたり、ツバかけてもらったらうれしいじゃないですか。

――あ、単純にMなんですね。これまでで「面白かったなー」と思うプレイは?

素童 先週デリヘルに行ったんですけど、「乳首舐め」ってしてもらうじゃないですか。

――知らないけど(笑)。

素童 普通、女の子は射精させるため、チンコ勃たせるために乳首を舐めるんですよ。でも、この前の子は、プレイが終わった後もずっと乳首を舐め続けてくれて。それはもう「乳首舐めを目的とした乳首舐め」なんです。……それは良かったですね!

――ただ単に、手持ち無沙汰だったんじゃないですか?

素童 いやいや、崇高な感じがするじゃないですか!

――風俗にもいろんな業態がありますけど、どういう気分で行き分けているんでしょう?

素童 素直になりたい時はM性感とか、女の子の新鮮な表情が見たいなっていう時は[A2] 、素人系のお店に行きますね。

――風俗を極めるに当たっていろんな業態に行きたいというのは分かるんですけど、男相手の風俗に行く気持ちはまったく共感できないんですよ。なんで「男の娘」風俗に行ったんですか!?

素童 大学の先生が、すごいリベラルな人だったんで……。今の時代、性別とかに関して寛容じゃないとダメじゃないですか。

――それは「男とヤレ」って話じゃないですよ(笑)。

素童 「ヤッてみたら世界が変わる」とかそういう話も聞くんで、行ってみないとわかんないのかなと。でも、チンコを舐めると男臭くて……男の娘風俗は1回で十分でしたね。

■「前向きな風俗嬢」にウケるレポートを書きたい

――小学校から大学までコンスタントに彼女がいたわけですけど、今は欲しいとは思わない?

素童 そうですね。彼女と一緒にしたいことがないんで。 今のところ行きたいところ風俗しかないですし、 風俗のことを考えるのに忙しいです。

――今回、本が出ましたけど「これからこうしていきたい」という展望はあるんですか?

素童 お店の人や女の子が楽しんでくれるような文章を書いていきたいですね。普通の風俗レポートって「客がどれだけいい思いするか」ばっかりなんで。それよりは「前向きな風俗嬢」にウケるレポートを書きたいです。

――「恩返し」みたいなところもある?

素童 本も出させていただいたし、そういう気持ちになってきました。

――「本を出したから、これからは文化人だ!」っていうこともなく。

素童 そうやって失敗していく作家さんとかいますからね。ホント、今すぐにM性感に行って素直になろうと思ってますよ。

――本の印税がある程度まとまって入るんじゃないかと思いますけど、やっぱりそれは「風俗にぶっ込んでいこう」という感じで?

素童 それしかないでしょう!

(取材・文=北村ヂン)

 

ラップとフォークを突き詰めた2人が見つけた「KESHIKI」~5lack×前野健太対談【後編】

 

 5lackが、オリジナルアルバム『KESHIKI』をリリースした。これを記念して、日刊サイゾーではシンガーソングライターの前野健太との対談を企画。前編では対談のきっかけや互いの印象、両者の出会い、そして2人をつなぐ重要なピースであるUNDERCOVERについて話してもらった。

 後編では、2人に音楽や歌詞に対する思いを聞いた。ラッパーとシンガーソングライター。それぞれ異なる視点を持ったミュージシャンが、『KESHIKI』を読み解いていく。対談の最後に、2人がたどり着いた場所はどこなのだろうか?

■5lackを聴いてたら詩集はいらねえよ

――『KESHIKI』を聴いた前野さんの感想を教えてください。

前野 泣いた。京浜東北線に乗ってる時、イヤホンで『KESHIKI』を聴いてました。そしたら「進針」が流れてきて。車窓からは青空が見えたんですよ。僕は詩集とか好きなんですが、いい詩は読んでると気持ちがスーッと遠くなるんです。「進針」でそれを感じました。

5lack 気が遠くなるっていうのは、心ここにあらずみたいなことですか?

前野 いや違う。僕は、感情って自分だけのものじゃないと思ってるんですよ。太古の昔から、いろんな人がいろんなことを感じて、今の自分の感情が出来上がってると考えていて。詩には時代ごとにいろんな人たちが感じた気持ちが表現されていて。古い詩集を読んだりすると、そういう過去の感情と現代の自分の感情が、言葉を通じてつながるような瞬間があって。それを感じると、スーッと気持ちが遠くなるんです。自分は点ではなく線なんだと感じることができる、というか。

5lack 「進針」では、どのあたりでそう感じたんですか?

前野 「時計の針が回る」に過去を感じ、「どこへいくの」に未来を感じた。しかも詩集を読んでるんじゃくて、音楽として耳で聴いてたから、京浜東北線の窓に流れていく景色を目で見ることができた。そのすべてが「どこにいるの」で重なった時、進んでいく時間の中で、現在の自分がポツンと1人で佇む感覚が味わえたんです。圧倒的にすがすがしい孤独感というか。でも、感情は連なってきたものだし、という不思議な感覚。そしたら「5lackを聴いてたら詩集はいらねえよ」って言葉が頭に浮かびましたね。

5lack すごい感覚だなあ。俺は基本的にラップ優先で作詞をしているんですよ。ただ、自分的には記憶を喚起するような曲を作りたいという思いがあって。写真を観て「あの時のあの瞬間が頭に浮かぶ」みたいな曲を作りたいと思ってるんです。俺は普段からいろいろ考えちゃうタイプだから、もしかしたらいろんな感情が自然と歌詞に出ちゃってるのかもしれない。

前野 5lackさんの曲を聴きながら街を歩いて人間を見てると、面白いんですよ。その人の「底力」みたいなものを感じることができるんです。最初は「殺意」かと思ったんです。でも、なんか違うんですよ。それでよくよく見てみると、それはその人の「底力」が顔に表れてるんだということに気づいた。人間のバイタリティって優しさだけじゃないからさ。人間の本性を暴き出すような音楽だと思う。ほかの人の曲を聴いてて、そんなふうに感じたことがなかったから、ちょっと驚いたんですよね。

■変わり続けることが俺の普通

前野 そもそも『KESHIKI』ってタイトルは、どういう意味なの?

5lack 最近、いろんな人から「変わったね」って言われるんですよ。でも、俺自身は昔から毎日変わり続けているから、そんなの最近に限った話ではないし、変わり続けることが俺の普通なんです。言ってることも昔から全然変わってないし。つまり変わってるのは俺じゃなくて、周りの景色だけっていう。タイトルには、そんな意味があります。

前野 変化に対しては、なぜか否定的な意見が多いよね。

5lack 「変わったね」って、なぜかネガティヴな場面で使われることが多いですからね。俺は、自分が進化することを否定したくない。

前野 アルバムも、そういうことを意識して作ったの?

5lack いや、俺は昔からテーマを決めてアルバムを作るのではなく、毎日生活している中で感じたことを曲にしているだけなんです。だから、曲は日記に近い。アルバムはその集合体というだけですね。

前野 『KESHIKI』というアルバムには、日本的な感覚があると思うな。それは八百万の神は自然に宿るという考え方。僕の『サクラ』というアルバムは山がテーマの曲「山に囲まれても」で始まって、海がテーマの「防波堤」で終わるんです。意識して作ったわけじゃないけど、結果としてこのアルバムは山川草木を表現してたのかなって。そういう部分でも、僕と5lackさんの感覚は近いように思える。

■「ハハッ」と笑う5lackの引き際のうまさはズルい

――SNSが発達して情報供給過多になった現代で、ミュージシャンが音楽を作ることにどんな意味があると思いますか?

5lack もしもミュージシャンが音楽を作ることに意味があるのだとしたら、それは同時に意味のないものでもあると思うんです。ただの歯車というか。つまり、一義的な側面から、物事の本質はとらえられない。

前野 5lackさんは、引いた視点をうまく表現するよね。そういうことって、頭ではわかってても言葉では表現できないものですよ。もうね、ズルい(笑)。5lackさんはよくアルバムで何か言ってから「ハハッ」って笑うじゃない? あのクールな引き際は正直悔しい。

5lack 俺、めっちゃ客観的なんですよ。例えば、みんなと遊んでてめっちゃ楽しくなるんだけど、同時に「俺、めっちゃ楽しんでる」と客観視してる自分もいて。だから、自分自身がただ楽しめるものを作ることが本当に難しいんです。

前野 あの「ハハッ」の温度感は絶妙だと思うな。自分に対して茶々を入れてるのに、カッコいいっていう。

5lack 「自分が正しい」って言い切れる人はすごい。俺は何もかもに疑いを持ってるから、絶対無理。むしろ、そうなりたいもんです。俺、自分が歌った曲も、正しいとは思ってないですよ。

――ミュージシャンとしては、特にステージ上ではナルシスティックでエモーショナルになったほうが、観客は喜ぶんじゃないですか?

5lack お客さんは、おそらくそうでしょうね。俺は自分に陶酔しきっちゃってる人のライヴを観ると、むしろ希望を感じる。「こんな人がまだいるんだ!」みたいな。俺も昔は「俺がナンバー1だ」って雰囲気を出そうしたけど、結局うまくいかなかった。だから最近は、結構作り込んだ、スキのないライヴをやっちゃいます。本当は、もっとラフでルーズなライヴをやってみたい気持ちもあるんですけどね。

前野 それはわかるな。だって、僕もライヴでは必ず「陶酔コーナー」を作るもんね。「人間はここまで歌に入り込める動物なんです」っていうコーナー。ライヴの構成的には絶対欲しいし。僕は5lackさんの平熱感に憧れるな。昔から、しゃべり声で歌う人が大好きなんですよ。

5lack 「こんなやつがいたらいいよね」みたいな感覚でやってる部分もありますよ、そこは。

■5lackの声はすごく音楽的

前野 5lackさんの歌詞は、聴き手に向かっていることが多いじゃない?

5lack すべての歌詞に対して一概に言えることじゃないけど、真面目に頑張って生きてる人を鼓舞する言葉もありますよ。あと、聴いてる人を浮かれた気分にさせちゃおう、みたいな気持ちで作った曲もあるし。

前野 固有名詞もよく出てくるよね。5lackさんの曲に影響されて、Dickiesのズボン買っちゃったもん(笑)。固有名詞に魔法をかけるのがうまい。

5lack Dickiesに関しては、まさにそういう意図で書いたんですよ。VANSのスニーカーと、ドンキで買ったDickiesを履いて。「これが俺のユニフォームだぜ」みたいな。そういう気持ちにさせるBGMを作りたかったんです。俺、人を調子に乗らせるのが好きなんですよ。失敗させるためじゃなくて、ポジティヴにするためにおだてるというか。

前野 「進針」には「Young Brother」って言葉があったけど、あれは具体的な誰かをイメージして書いたの? リスナーとか?

5lack あの部分は、同業者に向けて言ってますね。自分言うのもアレですけど、俺はヒップホップの中では、まあまあいい感じでやれてると思うんです。けど、前野さんみたいなミュージシャンたちの中に入ると、俺の音楽的技量なんて下の上くらいのもんなんですよ。生バンドと一緒にやってるラッパーもたくさんいるけど、それは「ラッパーがただバンドと一緒にやってる」という以上でも以下でもない。ほとんどの場合、ラッパーはバンドの技量に追いついてない。たぶんそういうので成立してるラッパーって、日本では3人くらいしかいないと思う。

前野 逆に、その3人が気になるよ(笑)。でも、それは全然知らなかったな。5lackさんが対談の最初のほうで「俺の音楽について、いろいろ指摘されちゃいそう」って言ったのは、そういう思いがあったからなのね。

5lack そうですね。アメリカには、バンドとやってるラッパーもたくさんいるんですよ。でも、そういう人たちは単純に音楽的な技量が高い。

前野 僕にはヒップホップシーンのことやラップのテクニック的なことはわからないけど、5lackさんの声はすごく音楽的だと思うな。声に旨味が内包されてるんだ。京都で5lackさんのライヴを観た時、「日本語が喜んでる!」って感じたんですよ。狭苦しい場所に収まらないで、自由になってた。正直、負けたと思った。でもそれは同時に、僕にとっての新しいスタート地点でもあったんですよ。だからすごくうれしくもあったんです。今度、アコギ1本で僕がラップしてみようかなって考えてみたりさ(笑)。

5lack 俺はラップに音程やメロディをつけて、音楽っぽく響かせたいと思ってたんです。そこでいろいろ工夫はしました。単語を小節の最後にぴったりはめるんじゃなくて、あえて次の小節まで引っぱっちゃったり。日本語の「~である」に英語の「R(アール)」って音を入れたり。ラップを音に近づけていきたかったんですよ。今回のアルバムでは、それがだんだんなじんできた感覚はありますね。むしろ自分的には、ボブ・ディランとか昔のブルースの歌い方に近い。もはや、そういう感覚になってますね。

――前野さんはこれまで日本語の意味を追求した歌を作ってきたけど、徐々に言葉の音やリズムを意識するようになった。一方で5lackさんはラップをしゃべりから音楽に近づける作業の中で、前野さんのルーツであるフォークやブルースに近づいていった、と。

前野 じゃあ、今度一緒にライヴやりましょうよ。僕がアコギ伴奏とラップで、5lackさんは歌という編成で(笑)。

5lack 俺がもっと頑張んないと、マエケンさんに全部持ってかれちゃいますよ(笑)。

(取材・文=宮崎敬太)