自分の髪を抜く抜毛症は「こっちを向いて」のサイン! 医師に聞いた実態と治療法

 無意識のうちに髪の毛やまつ毛を抜いてしまう……。この行動は、抜毛症(トリコチロマニア)と呼ばれる病気の症状かもしれません。ヴィクシーモデルのサラ・サンパイオなど、有名人も続々とカミングアウトしているという「抜毛症」の実態と治療法について、横浜労災病院の皮膚科医師・齊藤典充先生にお聞きしました。

■抜毛症=精神の病とは言い切れない?

 抜毛症とは、正常な毛(髪の毛、眉毛、まつ毛など)を抜いてしまう精神障害だといわれています。しかし、「抜毛症を“精神の病気”と一言でくくるのは難しい」と齊藤先生は指摘します。

「学術書では『ストレスのはけ口としての自傷行為』といわれることもありますが、リラックスしていて、ストレスを感じていないときに抜いてしまう人もいます。病気と単なるクセはストレスの有無によって厳密には区別できません。『自分で正常な毛を抜く』という行為自体が抜毛症の定義となるのです。もともと『髪を触っていると落ち着く』という人が、その延長で抜き始める場合もあります」

 髪を抜く痛みはそんなに強くないために、快感になって抜いてしまいやすいそうです。では、抜毛症に、ほかの身体的疾患との関連性はあるのでしょうか?

「頭皮に湿疹があり、かくついでに毛を抜いてしまう、という人もいました。その場合は皮膚病を治してあげれば解決すると思います。また、抜毛していることを周りの人に知られたくないがために抜いた毛を食べてしまい、毛が消化されないで胃の中で固まって食欲減退を引き起こしていたケースもありました」

 齊藤先生によれば、「抜毛症は本人が自覚している場合がほとんど」とのこと。髪が不規則な抜け方をしていたり、抜くのに失敗した切れ毛・ちぢれ毛が目立つので、外見的にも判別できるケースが多いようです。

「大人は『自分で抜いてしまうんです』と言って受診することが多いのですが、親に連れられてきたお子さんの場合、すぐに『ハイ、抜いてます』とは認めないことが多いです。親に怒られるかもしれないという心理もありますが、ストレス起因の抜毛症の場合、そのストレスの原因の半分は学校や職場といった外の環境で、もう半分は家庭内にあるんです」

 子どもの場合、親の期待がプレッシャーとなって勉強中に毛を抜いてしまったり、両親が共働きでひとりぼっちの時間が多く、寂しさを紛らわすために抜いてしまうケースがあるそうです。本人の精神状態よりも、周囲の人の態度を変える必要がある場合も。

「素直でいい子がなりやすく、周りの人や物に当たれず、不満をひとりで抱え込んでしまいがちです。親に心配をかけたくないという気遣いから、誰にも見られない場所で抜きます。こういう子の場合、抜毛行為を『ダメ!』と否定してしまうと、隠れて余計に抜いてしまいます。大人の場合も、人に愚痴を言えなくて悩みを抱え込むタイプの人が多いですね」

 それでは、自分や身の周りの人が抜毛症かもしれないと気づいたとき、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?

「抜毛症は、手が毛を抜くことを覚えてしまっているので、とにかく頭を触らせないことです。頭にバンダナやタオルを巻いたり、帽子をかぶったりして髪の毛を隠すことで、抜く前に気づくことができます。触り心地の良いぬいぐるみを握るなど、別の手癖をつけるのもひとつの手です」

 また、抜く行為を防ぐのも重要ですが、「抜かない環境づくりも重要」と齊藤先生は言います。

「どのタイミング・場所で抜いているのか把握するために、どこに毛がたくさん落ちているのか観察してみるといいです。お子さんの場合、勉強机の周りにたくさん落ちているのであれば、勉強をする場所を変えてみたり、リラックスする時間を作ってみてはいかがでしょう。そもそも、『勉強がストレスになっているかもしれない』というヒントの表れなので、過度に期待をかけるような発言は控えましょう」

 抜毛症で医療機関を受診する場合は、基本的には皮膚科を受診し、必要に応じて精神科を受診する流れになるそうです。

「皮膚科では、皮膚病の場合を除き、初期の治療では主にカウンセリングを行います。そこでは抜かないためのアドバイスとともに、ストレスの原因がどこにあるのか、それを解消するにはどうしたらよいのかを患者さんと一緒に考えます」

 たとえば大人で、職場にストレスの原因がある場合は、「誰か相談できる人はいないか」「気分転換できる方法はないか」「どうしてもつらかったら、職場をお休みすることも検討してみては」といった提案をする場合もあるのだとか。

「抜毛症は『こっちを見て』という周りの人へのアピールのこともあるので、その場合は本人のケアだけでなく、周囲が寄り添って話を聞いてあげることや本人を許容して認めてあげることが重要です。身近に話せる人がいない場合は、遠くにいる家族やネットの友だちでもいいし、それこそ医療機関を頼ってくれてもいい。8割はそういった話し合いを続けると症状が改善します。一定期間治療をして、どうしても不安が募って抜毛もやめられないという場合は、精神科で心が楽になるお薬を処方してもらうことも選択肢のひとつです。段階を踏んで、一歩一歩治していきましょう」

 意外にも、薬なしで治る場合が多いという抜毛症。もしかして? と悩んでいる人は、まずは周りの人に相談し、皮膚科の受診を検討してみてはいかがでしょうか。
(松嶋千春/清談社)

齊藤典充(さいとう・のりみつ)
カリフォルニア大学サンディエゴ校留学・国立病院機構横浜医療センター皮膚科部長を経て、横浜労災病院皮膚科部長。なかでも脱毛症を専門とし、円形脱毛症や男性型脱毛症(AGA)など、デリケートな問題に悩む患者を救うべく診療を実施している。毛髪科学研究会世話人、日本臨床毛髪学会評議員。

横浜労災病院皮膚科

セレブ家庭で虐待は起こらない? 南青山児相建設計画、元児童福祉司が語る「反対派」の盲点

 昨年末、東京都港区が南青山に、児童相談所(以下、児相)を含む複合施設「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設予定であることに対し、一部の住民が猛反発する住民説明会の様子が、連日テレビで取り上げられ話題となった。

 反対派から挙がった声は、主に「青山のブランドイメージを損なう」というもので、そのほかには「児童相談所の子どもが、南青山に住む幸せな家族を見たとき、自分の家族とのギャップに苦しむのではないか」など、保護される子どもの家庭と南青山という一等地に住む家庭との格差を懸念するものもあった。世間では「選民思想丸出し」「あまりにも心が狭い」「逆に南青山の価値を下げている」といった批判が飛び交うことになったが、こうした反対派の背景には、「児童虐待は貧困家庭で起こるもの」「セレブ家庭と児童虐待は無関係」といった意識があるのではないだろうか。

 事実、児童虐待と貧困は密接につながっていると感じさせるニュースは後を絶たないが、本当に“裕福な家庭で児童虐待は起こらない”と言い切れるのか。今回、江戸川大学こどもコミュニケーション学科特任教授で、児相にて児童心理司、児童福祉司を務めた経歴も持つ金井雅子先生にこの疑問についてお聞きするとともに、南青山児相建設問題で浮き彫りになった「世間の児相に対する勘違い」や、虐待件数増加の背景などについても語っていただいた。

児相を“知らない”ことが問題

――まず、今回の南青山児相建設問題をどのように受け止めましたか。

金井雅子先生(以下、金井) 反対住民の「貧困家庭の子どもがセレブ家庭を見るのはかわいそう」といった声を耳にしたとき、やはり児相について“知らない”ことが住民の不安を大きくしているのだろうと感じました。一時保護している子どもは、その子の身の安全を図るために、保護されている場所を秘匿するのが今の流れです。そのため、むやみに出歩くなど人目に触れるようなことはしないんです。そのようなことが周知されていなかったため、反対派から見当違いな発言が相次いだのでしょう。

――なぜ正しい情報が伝わっていなかったのでしょうか?

金井 南青山のある港区では、子ども家庭支援センターがそれほど機能していなかったのかもしれませんね。日ごろから地域と深く関わっている区では、住民の理解度も高く、「ぜひ作ってほしい」との声も聞かれるくらいですから、恐らくそのような下地がなかったのだと思います。また、本来は説明会で丁寧なやりとりを行えば、住民の不安の多くを取り除けるはずなのですが、今回はそれが不十分だったのではないでしょうか。さらに、都内の一等地である「南青山」という地域性から、マスコミだけでなく世間もこの問題に注目し、問題が大きくなっていったのではないかと思います。

――これまでも似たような問題はあったのでしょうか。

金井 そうなんです。現在、江東区枝川にある江東児相は、墨田区にあった児相が移転したものなのですが、当初、墨田区内での移転が計画されていました。しかし、建設候補地近隣の商店街などから猛反発があったため、今の場所へ落ち着いたという経緯があります。児相は、子どもたちにとって必要なものとわかってはいるものの、「自分の住む地域には作ってほしくない」と思われてしまう建物なのかな、という気がしますね。とはいえ、今回南青山で話題になったことから、世間の児相への関心も高まったようなので、ある意味では良かったと捉えています。

――2016年に児童福祉法が改正され、東京23区でも児相を設置できるようになりました。その背景には、やはり虐待対応件数が年々増加していることも関係しているのでしょうか。

金井 統計で虐待対応件数が年々増加の一途を辿っているからといって、単に“虐待する親が増えている”というわけではないんですよ。ここ30年ほどで虐待がクローズアップされるようになって、いわゆる「泣き声通告」が増え、以前は見過ごされていた虐待が顕在化したことで統計上の数字が上がるという、いわば数字マジックの側面もあるのです。また、これまでは経過を見ていたケースでも、不安要素が少しでもあれば一時保護や施設入所につなぐなど、児相や子ども家庭支援センター、警察などの対応も変わってきています。

 なお、それは虐待の種類にもいえることです。虐待は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待の4つに分けられ、以前は身体的虐待とネグレクトが圧倒的に多かったのですが、2003年の虐待防止法の改正で「DVの目撃」が心理的虐待にカウントされるようになってからは、心理的虐待が一気に増えました。

――統計上の数字が絶対ではないんですね。

金井 虐待は、例えば「身体的虐待だけ」「ネグレクトだけ」といった形ではなく、「身体的虐待とネグレクトが同時に」というように、複合して起こることが多いのですが、統計上は「主に身体的虐待」もしくは「主にネグレクト」という、どちらかの形でカウントされます。また、例えば暴行による虐待でも、父親からなら「主に身体的虐待」となるのに対し、母親の恋人からであれば、母親が恋人の暴力を見過ごしたとして「主にネグレクト」と分類されるんですよ。「泣き声通告」にしても、ご近所トラブルによる嫌がらせや、親権争いで有利になりたい父親が妻を貶めるために、“嘘の通告”をすることもあるので、数字ではなく、内情にきちんと目を向けることが大切です。

――世間では「貧困家庭に虐待が多い」という認識も強いのですが、実際に統計データなどは出ているのでしょうか。

金井 もともと児相が、虐待を虐待として統計を取り出したのが1990年からなんです。それまで虐待は、家庭の経済的問題を背景とする「養護問題」に分類されていたので、そうした背景から、家庭の経済状況と虐待が密接に関連づけられるようになったのでしょう。しかし、実は、経済問題と虐待に関するエビデンスや論文はそれほど多くないので、実際のところは何とも言えないのが現状なんです。虐待はさまざまな要因が重なって起きるものであり、貧困か裕福かの二元論で語れるものではないと思います。裕福な家庭でも、「この子のせいで自分のキャリアを犠牲にした」と感じて子どもに愛情を持てないとか、子育て能力が低かったり、うつ病などできちんと養育できないという親御さんはいますからね。

 ただ、虐待は、その程度によって「軽度・中度・重度」に分けられるのですが、貧困家庭では、経済的な問題から親が気持ちにゆとりを持てず、虐待が重症化しやすい傾向はあると思います。ニュースで取り上げられるのも、そのようなケースが多いので、イコールで見られやすいのでしょう。

――逆に、裕福な家庭の虐待はあまり表面化しないですよね。

金井 経済的なゆとりがあるぶん虐待が重度化するリスクが低いというのもありますが、社会的地位や権力のある男性が家庭内DVを働く、そしてそれを子どもが目撃する……という話を聞くことはよくあります。そういった人たちは、体裁を気にしてバレないようにうまく取り繕いますし、周囲も「まさか」と思っているので、介入や通告がされにくく、表面化しづらいという面も大きいです。妻がケガで受診したり、夫から逃げ出したりして初めて明るみになるケースも少なくないんですよ。

――表面化しづらいと、虐待のダメージも深刻化しやすいのでは。

金井 DVを目の当たりにした子どもは不安定になりやすく、家庭内暴力に走ったり、不登校になったり、わざと親を困らせたりといった形で症状を出してくることも多いです。以前、母親と密着状態になった幼児が、母親の気を引きつけたい一心で、首を吊るマネをしたこともありました。また、女の子の場合では、鬱になった母親の代わりとして、母親の“母親役”を担ってしまう“偽成熟”になるなど、両親の離婚後に問題が出てくることも多々あります。心理的虐待(DVの目撃)は、両親の離婚や一時保護をすれば解決すると思われがちですが、後々まで子どもに大きな影響を与えるので、早期に発見して、軽度のうちにケアしなければなりません。

――裕福な家庭は、両親がエリートな場合も多く、子どもへの過度な期待が、虐待につながるのでは……と想像してしまうのですが。

金井 名門校に入れたいとか、親の仕事を継がせたいとか、親の希望から勉強などを強要するケースはあるでしょう。それによって「できないから叩く」「ごはんをあげない」などとエスカレートしていっても、親は子どものためだと思っているので、虐待している認識がないのも特徴です。また、子ども自身が自分の夢だと思い込んでしまって、「やらなきゃいけない」「叩かれるのは自分が悪いから」などと受け止めていることも多いです。

 以前、一見、経済的な問題を抱えているようには見えない、仲のいい普通のご家庭の父親が、「娘を海外の有名スポーツチームに入れる」という夢を持ち、毎日過度な練習を娘にさせていたというケースがありました。そのスポーツチームは、男性しか入れないので、現実問題として実現不可能な夢なのですが、それでも娘さんに練習を強要していたのです。練習はエスカレートしていき、できないとゴハンを食べさせなかったり、暴力をふるったりしていたらしく、娘さんの異変に気付いた学校からの通告で一時保護したのですが、よくよく話を聞いてみると、父親は自分の実家で家庭内暴力を働いて親にお金を支援させていたこともわかりました。これもまた、経済的要因よりも、成熟しきらないまま親になったことで、このような虐待が起こってしまったのだと思います。

――やはり父親に虐待との認識はなかったのでしょうか。

金井 なかったですね。娘さんもそのような環境で育ったために、「私はこのスポーツが好きだからもっと練習したい、家にいたい」と言っていて、「そのチームに入らなくても、このスポーツを続けることはできるよ」と、まずは呪縛から解かないと、なかなか一時保護もできないほどでした。この家族に限らず、このようなケースでは、虐待だとわかってもらえないことには次のステップへ進めないので、一時保護をして親子分離することが、親の言う通りにしなくても良い事を子どもに気づかせると共に「大変なことをしていたんだ」と親にも気づいてもらえるきっかけになることも多いです。

――やはり虐待は経済状況に関係なく、どこの家庭でも起こりうるということですね。

金井 虐待でもっとも多いのは、実の母親によるものなんです。主な要因は育児不安やストレスの蓄積ですが、育児能力が不十分で養育できないとか、精神疾患や産後鬱でネグレクトしてしまうケースも多いです。また、望まない妊娠だったり、保護者自身のパーソナリティに問題があったりして、我が子に愛情が持てず、そこの葛藤から「愛情が持てないのは、この子が悪いからだ」と子どもに責任を転嫁して虐待に至ることもあります。そのほかにも、すごく手のかかる子どもで親がうまく関われなかったり、夫が育児を手伝ってくれなかったり、ステップファミリーや内縁の夫がいるなど家庭環境が複雑だったりすることから、虐待に発展することもあります。つまり、虐待のリスク要因はさまざまなので、誰しも、自分がそうなる可能性があるということです。虐待する親は特別な人間だと思われがちですが、誰にでも起こりうることです。多くの人が「自分の問題」として受け止めてくれたらと思います。

――大きな質問ですが、虐待のない社会にするためにはどうしたらいいのでしょうか?

金井 臨床をやってきた身としてまず思うのは、虐待の連鎖を断ち切ることです。そのためには、虐待を受けている子どもを早くその環境から救い出し、安定した環境でケアを行い、いつか結婚して子どもを持ったときに、きちんと育てられるようしていかなければなりません。また、子どもが育つ環境として、親が暴力をふるったり罵ったりするシーンを見るのはダメージが大きいので、DVをしている親の治療や教育も大切です。予防として、中学高校くらいの教育の中でも、適切な異性との関わり方などをもっと取り上げて、男女共に学ぶべきではないかと感じています。

――一方で、私たちが日常的にできることはあるでしょうか?

金井 虐待を受けている子どもが出すSOSに気づいてあげることです。そのためにも、「よその家のこと」にせず、気になる親子がいたら声をかけるとか、お節介をしていってほしいと思います。最近はそういった風潮も出てきていますが、もっと必要かなと感じるので。

 誰にだって虐待しそうになる瞬間はあるはずなので、それ自体を責める必要はありません。それより、どうやったら解決できるかなど、周りのサポートによるところが大きい問題を、みんなで考えていかなければならないと思います。例えば赤ちゃんが何をしても泣きやまなくて困っているとき、「大人だってなんとなく泣きたくなる時があるし、赤ちゃんも同じだよ」って声をかけてもらえたら、安心するじゃないですか。そういうサポートがなく虐待に至るケースが少なくないので、「頼れる人がいないのかな」「サポートが必要そうだな」と感じたら、積極的に声かけをしていってほしいですね。
(取材・文=千葉こころ)

金井雅子(かない・まさこ)
江戸川大学こどもコミュニケーション学科特任教授。心理職で入都後、主に児童相談所等で児童心理司、児童福祉司として児童福祉の第一線で勤務。

陸上男子100m、9秒台の夢を描く――舞台『マキシマムスピード』出演者が舞台ウラを語る!

 2017年、陸上男子100mで、日本人初の9秒台を達成した東洋大学(当時)の桐生祥秀。彼の功績をテーマにした舞台『マキシマムスピード~限界突破!!~』が、1月29日から築地本願寺プティストホールで幕開けとなった。

 本作品の主人公は、9秒台に最も近い男と呼ばれる東新大学陸上部の桐原秀明(仲野温)。桐原は、トレーナーと練習方法をめぐって対立し、スランプに陥る。あらゆることの見直しが図られ、スパイクの開発を行うことに。桐原サイドから「裸足で走っているようなスパイク」という注文を受けたスポーツメーカーは、社運を賭けて一大開発に取り組む。スパイクのテストランナーに、世界選手権銅メダリストの元スプリンター・為永清司(佐川大樹)を招聘しようとするが、為永は過去に桐原のコーチと対立したことがあり、テストランナーを断ってしまう。スパイク開発も難航し、なかなかスランプから抜け出せないまま、桐原はライバルの多山修二(大川慶吾)や山坂要太(阿部悠真)たちに次々と抜かれていき、オリンピック選考会で決定的な敗北を喫する。そんなどん底から、少しずつ「昔の自分を取り戻す」ことで、桐原はスランプから抜け出し、そして運命のレースを迎えるが……。

 陸上を通じて、見る人に勇気を与える感動の物語だという本作品。そのメインキャストで9秒台に最も近い男・桐原秀明選手を演じる仲野温さん、ライバルの多山修二選手を演じる大川慶吾さん、山坂要太選手を演じる阿部悠真さん、そして、世界陸上元銅メダリストの為永清司を演じる佐川大樹さんから、本作品にまつわるお話を伺った。

――皆さん、『マキシマムスピード』を、どのような作品として受けとっていますか?

仲野温さん(以下、仲野) 「全員が頑張ってる作品」ですね。、陸上というテーマのもと、主人公をはじめとした各キャラクターたちがそれぞれの目標のために頑張っているだけじゃなくて、そのキャラクターを演じる役者の一人ひとりも、演技に対してひたむきに頑張っています。

 とにかく必死感みたいなものが全編に充満してます。セリフだけじゃ表現できない感情を役者としてどう表すかというのが課題かなと思っていて、走るシーンもたくさんありますし、時に挑戦的だったり時に古典的だったりと、さまざまな手法を試みています。観劇された方々が、いい刺激を受けたり勇気づけられたりするような温かくておもしろい作品になっていると思いますよ!

大川慶吾さん(以下、大川) 陸上競技がストーリーのベースになっていて、かつ試合のシーンもあるので、一見、「ナンバーワンを競い合う」といった物語なのかなと思いきや、実は「オンリーワンを目指す」話だなと思っています。劇中には「それぞれの金メダル」といったセリフも出てきますし。

 温ちゃんが言うみたいに、観客の方にとって、いい刺激になったり、温かみを感じてもらえる作品ですし、間違いなく「明日への活力」を得られる作品になっていると思います。特に、「頑張ってるけど、なかなか結果が出せない」という苦しさに直面している人に、この作品を見てほしいです。必ず何かしらのヒントを得られると思います。人によっては「忘れていた感覚」を取り戻せるかもしれません。

阿部悠真さん(以下、阿部) 最近の作品の中では、ここまで「純粋に挑戦すること」をテーマにした作品は珍しいんじゃないかと思います。全てのキャラクターたちが正々堂々と勝負する姿が描かれています。また、登場人物たち全員に一つひとつ見せ場が用意されているんです。みんなのパワーがひとつになっているのを実感できる作品だと思います。

佐川大樹さん(以下、佐川) 物語としては、3つの主軸があります。「100mで9秒台を出すこと」「選手以外の人々の夢」「スポーツマンシップ」ですね。どの視点から観劇しても楽しめる作品になっているはずです。

――それぞれのキャラクター作り、役作りで工夫した点はありますか?

仲野 僕の演じる桐原は、陸上選手としてスランプに陥るシーンがあります。自分自身も、役者としてスランプを何度も経験していて、この役をいただいた時、「絶対この役をやり遂げたい」って思いました。苦しい時やつらい時ほど、その人間がよく見えるって言うじゃないですか。だから自分の経験と向き合いながら、「この役を生きる」ことを心がけました。設定が自分の実年齢よりも年上なんですが、背伸びしないというか、無理しないで素直にキャラクターを表現できる領域を探しながら、役作りを行いましたね。

大川 全登場人物の中で、自分が演じる「多山修二」だけが、やや異色のキャラクターになんです。ほかのキャラクターたちとの違いをみせる工夫が求められたので、自分の役だけでなく、ほかの役者さんが演じるキャラクターも分析し、自分なりの演技プランを立てて稽古をしました。それから多山は、「残されたものは努力しかない」という強い考えの持ち主でして、それなら自分も、ストイックに「努力」の意味を考えなければとも思ったんです。全身から強いメッセージを放出できるような演技を目指そうという目標もありました。

 稽古休みの日には、実際に陸上競技場に行ってトラックを走ってみたり、ジムで筋トレもしたり……。ちなみに自分が筋トレをしていたら、みんなも筋トレをやりだして……筋トレの輪が役者たちの間で広まりました(笑)。

阿部 山坂は、陸上短距離界のエリート的な役柄。一つひとつのセリフに、彼の歩んできた足跡やそれにまつわるいろんな感情が凝縮されているので、それをどう表現するのかが、自分なりのテーマでした。アドリブや勢いまかせでやる芝居よりも、すべての所作に表現的意味を持たせて演じられるように稽古を重ねましたね。それは、どんなに小さなリアクションでも、です。陸上というものを、単なるスポーツとしてとらえるだけでなく「生きがい」とか「人生そのもの」であると感じられるようになりたいと思って、いろいろ考えながら役作りに挑んでみました。

佐川 為永は、登場人物の中で、一番挫折を経験している役柄です。そういう人間的経験を積んだ役を自分が演じるにあたって、誰かの真似事をするよりも、とにかく自分自身を追い込んで、平常心を保てない状態にすべきだと思い、そうしてみました。一言で言ってしまえば、「疑似体験」かもしれませが、稽古期間中に、まるで本当に挫折をしたかのように、つらくなったり、悔しくなったりした気持ちは、本物だと思います。こうやって養った感覚でする芝居は、嘘にはならないんじゃないかな(笑)。また為永は、挫折から「這い上がる」という役柄でもあるんです。先ほど言ったように、自分を追い込んだところから、いかにして平常心を取り戻し、希望を持てる精神状態にまで持っていくかを考え、実践していました。

――稽古中の楽しかったことや大変だったことは?

仲野 とにかくみんなで走ってます! こんなに走った稽古は、生まれて初めてでしたよ(笑)。陸上競技の経験者を稽古場に招いて、ミニハードルの特訓をしたり、フォームの研究もやりましたね。それが楽しくもあり、そして大変だったという。まず、「練習」の練習をして、それができるようになってから、初めてちゃんとした「練習」をして……という稽古だったので、クリアしなきゃならない課題がたくさんありました。(距離にして走ったのは)トータルで100キロ以上だと思います。普通の演劇の稽古ではこんなに走りませんから、マジでトレーニングしてましたね(笑)。

大川 どちらかと言うと、大変な目にばかり遭う稽古の方が、役柄的には合っているのかもしれないんですけど……稽古中は和やかでした(笑)。出演者の中には、同じ事務所の人や、前々から知っている先輩もいたりしたので、すごく穏やかなコミュニケーションを取れましたね。稽古中、役に入っている時と素にならなきゃならない時に、オンオフを切り替えなければいけないのは、大変だったかもしれません。芝居中は、相手がたとえお世話になっている先輩だとしても、歯向かわなきゃならない時もあるんですが、休憩中はやっぱり気を使いたいわけじゃないですか(笑)。ただ、ワザとそのオンオフスイッチを間違えて、みんなに笑ってもらうのは、逆に楽しかったですね (笑)。本当に、出演者のみなさんと仲良くできてうれしく思っています。稽古には、芝居パートだけじゃなくて走ったり筋トレしたりっていうトレーニングパートもありましたから、初めての共演者同士でもすぐに打ち解けて、盛り上がれましたね。

阿部 「挑戦」というのが一つのテーマにもなっている作品なので、稽古の時から、みんなの挑戦魂が炸裂していて、すごく熱気に満ち溢れた稽古場でした。もちろん、大変な面もあるんですけど、役者としてはやっぱり楽しいですね。熱気ある稽古はありがたい限りでした。SNSにも、稽古中のことを投稿していました。実は稽古場に専属のカメラマンさんがいたので、稽古場写真をたくさん撮っていただいたんですよ。自分もカメラをお借りして撮らせてもらったりして、すごく楽しかった。自分たちのスマホでも撮ってましたけどね。

佐川 日を追うごとに、各人がいろいろな演技プランを持ち寄って話し合えたのが楽しかったです。稽古が終わって、次の日にみんなと稽古場で顔を合わせると、また新しいアイデアが出て、それをみんなで話し合い、どう合わせていくかと検討していく……みたいな。日に日にどんどんよくなっていくので、稽古していても、役を演じる実感がわいたというか、充実した稽古だったなぁと思います。さっき慶吾くんが言っていたみたいに、いつの間にか、筋トレの輪が広がって、気がついたらみんなで筋トレやってたり、慶吾くんが陸上競技場に行ったのを知って、後からみんなも追いかけて一緒に走ったり……結構、肉体的にも鍛えられましたね。(筋トレをやった回数は)各部位で200回はやってますね。

――この作品の見どころを教えてください。

仲野 陸上の100m走は個人競技ですが、一人の選手の周りには、トレーナーや仲間たちがいて、それぞれがそれぞれの立場で支え合いながら共通の目標に向かっています。この作品でも「人の支え合い」「仲間同士のサポート」がよく描かれています。ズバリ、これが、この作品の見どころでもあり魅力でもあると思います。それぞれが、想いと能力を出し合って、目標を達成することは尊い! 一人でも多くの方に、この作品を見てもらえたら有り難いと思います。

大川 役者としては、この役は「これまでにない役」なんです。「大川史上初の長ゼリフ」にも挑んでいますので、ぜひ多くの方に見てもらいたいですね。作品的にも、明日への活力、勇気を得られるストーリーとなっているので、何度見ても感動すると思います。ぜひ何度も見てほしいです。

阿部 この作品が一つのキッカケとなって、皆さんが陸上競技に興味を持ってもらえたらいいなと思います。陸上の楽しさや奥深さを知ってもらえれば、「2020年東京オリンピック」も、より有意義に見られるのではないでしょうか。また、本作品では、主人公のスパイク作りの苦労話もあって、今村聡さん演じるモーサテ商事の「小山田主任」や大迫洸太郎さん演じる「大迫社員」たちの奮闘ぶりも見どころです。どうぞよろしくお願いします!

佐川 ストーリーが進むにつれて、自分が演じる「為永」と、主人公「桐原」との関係がどんどん濃くなって面白くなっていくのが見どころですかね。最後まで楽しめる作品になっていますので、皆さまぜひ劇場に足を運んでみてください。

仲野温
『花のち晴れ ~花男Nextseason~』(TBS系)にてドラマデビュー。その後もテレビ、CM、映画などで活躍。
大川慶吾
『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)にてドラマデビュー。その後、映画『新宿スワン』『新宿スワン2』などのほか、バラエティーやCM等にも出演。
阿部悠真
男性アイドルユニット「ZEN THE HOLLYWOOD」のメンバーとして注目を浴びる。音楽活動だけでなく、テレビや舞台などにも多数出演。
佐川大樹
「第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ベスト30。舞台『ミュージカル・テニスの王子様3rdシーズン』等で人気を博す。

舞台『マキシマムスピード~限界突破!!~』
陸上競技100m短距離走で日本人初9秒台達成を記念して制作された舞台。選手の苦労、また選手を取り巻く人間模様が描かれたオリジナルのスポーツ根性ヒューマンドラマ。演出:田中優紀、脚本:藤原良
公式サイト

バファリン、イブ、ロキソニン……市販の解熱鎮痛剤、間違った「自己流の服用法」を医師が斬る!

 バファリン、イブ、ロキソニンなど、ドラッグストアで簡単に購入できる、市販の解熱鎮痛剤。一般的に馴染み深い薬のため、中には説明書を読まず、自己流の服用法をしている人も少なくないのではないだろうか。そこで今回、日本医師会認定産業医/内科医の星野優先生に、さまざまな“自己流の服用法”が正しいか間違っているか、ジャッジしてもらった。

 そもそも市販の解熱鎮痛剤には、どういった成分が配合されているのだろうか。星野先生いわく「市販薬とはいえ、『バファリンA』や『ロキソニンS』といった、いわゆる解熱鎮痛剤は、『総合感冒薬』とは異なり、アセチルサリチル酸(アスピリン)やロキソプロフェンといった、昔から病院でも使われている解熱鎮痛成分が主体となっています。ただし、その他の成分を含んだ風邪薬のような商品もあるため服用には注意が必要です」と述べる。

 また、一口に市販の解熱鎮痛剤といっても、「第一類」「第二類」といった区分けがされており、「一般用医薬品の中で最も副作用が生じる恐れが高い医薬品」という「第一類」は、ドラッグストアでも薬剤師が不在だと購入できない薬品もある。

 体にどのように働くかについては、「例えば、有名なロキソニンの作用機序としては、一般的に、『痛み』や『発熱』を誘発するプロスタグランジンの生成にかかわるシクロオキシナーゼ(COX)を阻害することで『解熱・鎮痛作用』が生じます」という。

 市販の解熱鎮痛剤に記載されている具体的な「効果/効能」は、「頭痛・月経痛(生理痛)・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・咽喉痛・歯痛・抜歯後の疼痛・打撲痛・ねんざ痛・骨折痛・外傷痛・耳痛の鎮痛/悪寒・発熱時の解熱」とあるケースが多い。幅広い効果/効能があるだけに、痛みや熱があれば、そもそもの原因について深く考えず、とりあえず飲むという人もいるかもしれないが、果たして正しい服用法なのか、疑わしいものもある。

 例えば、“二日酔い”による頭痛。深酒をした晩の翌朝、ひどい頭痛で目が覚めた際、解熱鎮痛剤を飲むという人もいるが、正しい服用法だろうか。

「いわゆる『頭痛』ですので、『片頭痛』と同様に人によっては解熱鎮痛剤が効果を有することもあります。ただし、アルコールも解熱鎮痛剤も、肝臓へ非常に負担をかけているため、常用した場合、肝障害が増悪することが懸念されます。また、腎障害や胃潰瘍などの副作用も非常に多く報告があるため、個人の判断で常用することは危険です。医師の診察・処方による適切な管理の下、服用するようにしていただくようお勧めします」

 そもそも二日酔いによる頭痛の原因は、「実はいまだはっきりとしていない」とする星野先生。「アルコール摂取に伴う過剰なアセトアルデヒドによって血管拡張が引き起こされて頭痛が生じるという仮説が有名」で、また近年では、「ヒスタミン、セロトニンといった神経伝達物質が頭痛を誘発している可能性についての報告もなされている」そうだ。

 また、ちょうど現在流行しているインフルエンザ。発熱やのどの痛み、関節痛など、解熱鎮痛剤で抑えられそうな症状がいくつかあるが、実は、服用には注意が必要だと言う。

「大人の場合は、医療機関でもカロナールなどの解熱鎮痛剤が処方されるため、使用しても問題ないと考えます。ただし、特に小児に多いのですが、インフルエンザの重篤な合併症として『インフルエンザ脳症』という疾患があります。意識障害などを引き起こし、致死率も約30%と言われる非常に怖い合併症なのですが、ロキソニンに代表される『NSAIDs(非ステロイド系解熱鎮痛剤)』によって、インフルエンザ脳症の発生が誘発される可能性が、さまざまな報告より示唆されています。小児のインフルエンザで解熱鎮痛剤を服用するは禁忌となっているのです」

 なお、ノロウイルスなど、ウイルス性胃腸炎による発熱・腹痛時に解熱鎮痛剤を使用することは「大きな問題はないと考えられます」という星野先生。しかし、「解熱鎮痛剤自体に『胃腸症状(胃痛や下痢など)』の副作用もあるため、場合によっては消化器症状が増悪する懸念があります」という。

 いずれにせよ、インフルエンザやウイルス性胃腸炎が疑われる際は、「個人的な判断で市販薬を調整するよりも、迅速に医療機関を受診するようお勧めします」。

 一方で、市販の解熱鎮痛剤を飲む頻度について、悩みを抱えてる人もいるだろう。例えばよく見聞きするのが、「常用すると効かなくなる」というウワサから、「本当につらいときだけ服用する」というケースだ。

「市販薬であれ、処方薬であれ、いわゆる解熱鎮痛剤、NSAIDsには徐々に効きづらくなるといわれている『耐性』は、“ない”と言われております。ですので、解熱鎮痛剤を常用したから効きづらくなるということは、ないと考えられます。腰痛などで常用した場合に『効かなくなった』とおっしゃる方もいますが、その場合は腰痛がさらに増悪したか、心理的に『効かない』と感じるかなど、その他の原因があるのではないでしょうか」

 ということは、つらくなるまで我慢せずに服用した方がいいということだが、解熱鎮痛剤の常用には、副作用の危険もあるようだ。

「特に高齢者の方や、持病がある方に多いのですが、複数の医療機関で名前の異なる解熱鎮痛剤を併用してしまっている場合があります。また、普段処方を受けている薬にプラスして、個人的判断で市販薬を勝手に飲んでしまっている場合もあります。解熱鎮痛剤を複数内服したり、あまり長期に常用することは、副作用の点で非常に危険です。腰痛や歯痛で痛み止めをたくさん飲んだことにより、『出血性胃潰瘍』となって、救急搬送や命の危険にさらされたり、肝不全、腎不全など生じてしまうこともあります」

 ちなみに、市販の解熱鎮痛剤のパッケージを見ると、「『頭痛用』『熱冷まし用』など、効能を分けて記載されていることがありますが、ほとんどの場合、根本的にな成分は同様の物質のことが多い」というだけに、別の薬を飲んでいるつもりでも、結果的に、同様の成分のものを複数服用していることになるので、注意が必要だろう。

「また、もともとほかの疾患で、さまざまな薬剤を内服している場合、『薬物相互作用』といって、いわゆる飲み合わせの問題も生じてきます。思わぬ副作用などが生じたり、ほかの薬剤の効果が減弱・増強してしまう危険もあります。皆さんお忙しく、体調不良でも医療機関を受診できない場合、市販薬はとても便利だとは思いますが、薬は非常に危険な一面もありますので、十分注意する必要があると考えられます」

 市販の解熱鎮痛剤が便利なのは事実だが、その便利さに頼りすぎることなく、服用したいものだ。

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が映画『クリード』を斬る! スタローンへの“忠誠心”強すぎ!?

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、現在公開中のボクシング映画『クリード 炎の宿敵』だ。ロッキーシリーズから派生した『クリード チャンプを継ぐ男』(日本では2015年12月公開)の続編。ロッキーの大ファンで、シリーズ全作を飽きるほど見てきたという瓜田だが、果たしてこの最新作に対しては、どんな反応を見せるのか?

 瓜田の“ロッキー愛”はハンパじゃない。ロッキーことシルベスター・スタローンがフィラデルフィア美術館の前でガッツポーズをする名場面の写真を自宅に飾り、それに勇気をもらいながら自身も毎日筋トレに励んでいるという。

「筋トレにはタンパク質が不可欠。スーパーのハム売り場に行ったら、俺は迷わず伊藤ハムを選ぶ」と瓜田。これも、伊藤ハムのCMに出演していたスタローンへの忠誠心なのだとか。

 そんな瓜田は前作『クリード チャンプを継ぐ男』を見て、感動のあまり泣いたそうだ。その続編がこのたび上映されると知るや、「前作を超える予感がする。絶対に見逃せない!」と大興奮。公開初日に映画館へ駆けつけた。

 あらすじは次の通り。ロッキーのライバルにして親友であるアポロは、『ロッキー4/炎の友情』(日本では1986年6月公開)で、ソビエト連邦の王者ドラゴと対戦。壮絶なファイトの末に倒され、そのまま帰らぬ人となった。あれから月日が流れ、ロッキーの指導を受けたアポロの息子アドニス・クリードと、ドラゴの息子ヴィクターが、ついにリングで激突することに――!

 以下は、鑑賞後の瓜田夫妻の感想である。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) いやぁ、よかったです。作り手がファン心理をわかってる。物足りない点もあるにはあったけど、アドニスに子どもが生まれるなどの新展開もよくて、ガッカリさせない内容でした。際立ってたのは、アポロの奥さん。アドニスの嫁が妊娠してることを見抜いたり、ヴィクターにビビってるアドニスを奮い立たせたりと、オカンとして一枚上手な感じが最高でした。

――「物足りない点もあった」とのことですが、具体的には?

純士 いくつかあるんですけど、ドラゴの息子ヴィクターに関していえば、「俺はお前のロボットじゃねえ!」みたいに父親に噛み付くシーンが欲しかった。最後まで父親離れしてない点が残念でした。

瓜田麗子(以下、麗子) でもドラゴ親子にも、最後のほうでええ見せ場があったやん。

純士 あれは泣けたね。物語の設定もよかった。ロッキーに負けたせいで国からも嫁からも見捨てられたドラゴ親子と、守るべき子どもができたアドニス夫婦。お互い背負うものがあり、おまけに父親の仇という要素も加わるから、そりゃ男なら燃えるに決まってるでしょ! っていう内容でした。前作を超える感動だったかもしれない。

麗子 いや、ウチは、前作を超えることはなかったな。

純士 俺は初っ端から面白かったよ。なのに、上映中に嫁から「スタローンはカツラや」とか耳打ちされて、水を差されたわ。笑ったけど。

麗子 あれ、絶対にカツラか増毛やろ。ウチの目はごまかされへんで。

純士 確かに、スタローンやドラゴの嫁は、最新の美容技術を駆使した無理な若作りが見てて辛かった。と同時に今回、スタローンの出番が少ないことに寂しさを感じたなぁ。発言も年相応に日和ってたし。以前のスタローンは、もっと熱いことを言ってたんだよ。「人生ほど重いパンチはない」とか。でも今回は次世代の物語になってて、ロッキーが入り込む隙がなかった。もちろん、世代交代もいいんだけど、今作ではもっと、嫁よりもロッキーが、アドニスに付きっきりでいてほしかったな。アドニスが独り立ちするのは、次回作あたりでよかったんじゃないか。

――感動したと言う割に、苦言が多いですね。

純士 ロッキー好きとしてはどうしても、スタローンやシリーズの、この先のことを考えてしまうんでね。因縁はドラゴで終わり。『クリード』シリーズをまだまだ続けるつもりなら、アドニスの子どもにボクシングをさせる展開とかも有りだろうけど、アドニスの子どもは女の子だからなぁ……。

麗子 出産そのものには感動したけどな。最初のベッドシーン、「いらんわ~。見たくないわ~」と思って見とったけど、赤ちゃんができたことにつなげたんやったら、お見事やと思ったわ。

――今をときめくマイケル・B・ジョーダンが演じた、アドニスについて思うことは?

純士 アポロって、過去キャラの中でも印象が弱いほうなんですよ。だから、アポロの息子ってことで今後も物語を紡いでいくのは、ちょっと花がないというのが正直なところ。

麗子 クリードの話は、今回で完結でええんちゃう?

純士 かもね。ロッキーの若い頃のほうが、荒くてハングリーでタフでした。一方、アドニスは結婚して子どもができたことで日和っちゃうあたりが、「今の子」って感じです。あの子は、体も顔つきも、きれいすぎる。エグザイルみたいな感じ。スタローンみたいな骨太さがない。あんな真面目な性格だったら、アポロと違って、隠し子も作らないだろうし(笑)。

――ところで今日は、公開初日の夕方6時台からの上演回でしたが、客入りがイマイチでしたね。

純士 前作のときは満員だったんですけどねぇ。公開初日の金曜のこの時間帯なら、もっと入ってもよかったのに。そこまで期待されてないのかなぁ……。この手のストレートな男臭さや、単純なスポ根は、今の若い子たちにはハマらないのかも。

――総合格闘家でもある瓜田さんから見て、この映画のトレーニング風景はいかがだったでしょう?

純士 インスタに一般の外人たちが投稿してるトレーニングをそのまんまやってる感じで、新鮮味がありませんでした。昔のロッキーはニワトリを追いかけたり、丸太を担いだりしてたから、見てて衝撃を受けたんですけどね。そういうのを超えてほしかった。原始的なネタがないなら、その逆でもいい。VRゴーグルを使って宇宙軍と戦うような科学的なトレーニングをしたり。

――虎の穴での特訓シーンはどうでしたか?

純士 あれの何が虎の穴なんだよ(笑)。アドニスが「ひどい環境だな」みたいに嘆いてたけど、別になんにもひどくない。お互いタイヤに片足突っ込んで殴り合う練習なんて、俺が今通ってるジムでもみんな普通にやってますから。

――試合のシーンはいかがでしたか?

純士 みんな目が肥えてきてるからなぁ。ついこないだ、メイウェザーの変幻自在な動き見た後に、いくらヘビー級とはいえ、役者のガチガチの“ボクシング風”の動きだと、ちょっと……。

麗子 メイ・ウェザーと那須川天心の、数分間の試合のほうが引き込まれたわ。

純士 この映画は正直、ボクシングのリアリティーは薄いですよ。あんなきれいに2連発は入らねえよとか、ここでブロッキングはねえだろとか、細かい粗を探すとキリがない。どうせ泥臭くいくなら、スローを多用して、嘘臭い「うぉぉぉぉぉ!」みたいな叫び声とかも入れて、もっと昔っぽくしたほうが映画的にはよかったのかも。

麗子 まあ、なんにせよありきたりで、心に残らん作品やったわ。ストーリーもすべて予想通りやし。

純士 確かにすべてが予想通りだった感は否めない。俺が監督だったら、こういうストーリーにしたかも。まず、強くなった途端にすり寄って来た元嫁や国に対し、ドラゴ親子がブチ切れる。「ナメてんのか。お前みたいなクソ女や、こんな国に応援されたくない!」と。で、追放処分を食らう。その代わりにロシアが用意したサイボーグみたいな怪物ボクサーと、アメリカのアドニスが戦うことになる、と。

――いいですね。そこから先は?

純士 試合前夜、アドニスのもとに、ヴィクターが1人の男として現れる。「何しに来た?」と問うアドニスに対し、ヴィクターがこう言います。「俺はボクサーは辞めたけど、親父の仇を取りに来た。ここで勝負をつけよう」と。そしてストリートファイトに発展して、ロッキーが止めに入って、アドニスとヴィクターの間に友情が芽生える。その翌日、アドニスのセコンドにヴィクターがついて、ロシアの怪物と戦う、みたいな話はどうでしょう?(笑)

――試合前日にタイマンを申し込むのは非常識極まりないですが、映画なら有りでしょう。なかなか燃えるストーリー展開ですね。

純士 昨日の敵は今日の友となり、共に戦う。で、ロシアの観衆も考えが変わっていく、みたいなストーリーだったら、もっと感動したでしょう。

――ソビエト連邦の時代だったら、さらによかったですね。

純士 確かに。今の時代、ロシア対アメリカと聞いても、かつてのような緊張感がないですもんね。映画の中でも、アドニスの嫁がアドニスの入場曲を生で歌わせてもらえたりして、会場はアウェイなのに丁重に扱われてたし。ザギトワが秋田犬を抱いてニコニコしてる現実社会の印象も加わって、映画の中でのロシアという国に脅威を感じなかったのは事実だわ。

麗子 『ロッキー4/炎の友情』のときは、あんなにハラハラドキドキしたのになぁ。

純士 ……って考えると、スタローンには悪いけど、ロッキーは前作で死んだほうがよかったのかも(笑)。その上で、ドラゴ親子に狙われて、アドニスが自力でどう乗り切るか。「ロッキーならこう言ったはず」「ロッキーならこうするはず」と亡き師匠の意思を想像しながら、アドニスが暗中模索するストーリーだったら、スタローン不在の次世代バトルでもヒリヒリできたと思う。

麗子 やっぱ誰かが死ななアカン、ってことやな。

純士 そう。だから、「スタローンの出番が少なくて寂しかった」という前言を撤回します。やっぱ、カツラや増毛してまで出しゃばってくるのは、いい迷惑だわ(笑)。プラセンタ注射を打ちすぎたせいか、オネエみたいになってたもんなぁ、スタローン……。まあでも、そんなスタローンのことも、好きなんですけどね。
(取材・文=岡林敬太、撮影=おひよ)

『クリード 炎の宿敵』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 78点
麗子 3点

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

「『私はADHDだから』と開き直らないで!」精神科医が“自称ADHD”たちに伝えたいこと

 発達障害の一種であるADHDに悩む大人の女性たち――そんな彼女たちが恋や仕事で壁にぶつかった際の対処法をまとめたのが『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます。』(東洋館出版社)である。今回、著者の司馬クリニック院長・司馬理英子先生にインタビューを行い、前編では、“女性だからこそ”感じるADHDのしんどさを解説いただいた。後編では、ADHDの認知度が高まるとともに増える「もしかしてADHDかも?」というグレーゾーンの人々に関する見解をうかがった。

(前編はこちら)

“非常に”困っていなければ、受診はしなくても……

――ADHDの情報が広まるとともに、「もしかして自分もADHDかも……?」と感じている人が増えたように思います。いわゆる“グレーゾーンの人”は、やはり病院を受診すべきなのでしょうか。

司馬理英子先生(以下、司馬) その人が、どのくらい困っているかどうかではないでしょうか。例えば、忘れっぽいからと、スケジュール帳に予定を書き、リマインドのためのアラームを掛けるなど、対処ができている場合は、診断をあえて受ける必要はないでしょう。一方で、患者さんの中にいるのが、忘れっぽいことを自覚しつつも、メモを取らない、アラームも使わない、そして失敗してしまうという人です。それから、「あの人はADHDかも……」と周りが思っても、本人は困っていないケースもあります。例えば、家族がフォローをしてくれるので困っていないという人もいれば、1人で好きに生きているので問題がないという人もいます。

――ただ、本人が平気でも、周りが迷惑している場合もありますよね。

司馬 確かにそうです。ADHDの人は、きちっとした性格の人と比べると、「時間に遅れている状況」「片付いていない状況」を気にしない傾向があります。時間にせよ、片付けにせよ、個人の感覚の違いというものがあるので、事細かな人の方が“神経質”ととらえられるケースも存在するかもしれません。やはり近しい人にADHDの特性があり、困っている人はいます。

 例えば、子どもの遅刻や忘れ物、整理整頓のできなさ、じっとしていられず、待つことが苦手な点などを、幼少期から注意し続けてきたのに、大人になっても直らないと悩む親御さん、また、奥さんがミスばかりで、「なんでこんなことができないのだろう」と疑問を抱く旦那さんなどです。もし周囲の人が、「このままでは生活が破綻してしまう」と感じたら、受診を検討する方がいいでしょう。クリニックには、自発的に来る人が多いですが、時には母親や旦那さんに連れてこられる人もいます。

――「ADHDかもしれない」という状態でも、本人や周りが困っていなければそのままで大丈夫ということですか。

司馬 そうですね。個人的にだけでなく、会社での立場が危うくなるなど“社会的”に困っているかどうかが、受診の判断基準になるとも言えます。ちょっと困っているという場合は、いわゆるグレーゾーンなのかもしれませんね。忘れっぽかったり、思ったことをそのまま口に出してしまうのは、“性格”なのか“発達障害”なのか感嘆には区切れません。自分で本を読んで、対処ができるならそれでいい。対処しようにも、何をどうすればよいのかわからない、やろうとしてうまくいかない場合は、専門家に相談してはいかがでしょう。

――ADHDの人に対して、どう接すればいいのかも知りたいです。例えば、同僚がADHDの特性を持っていて、仕事上のミスが多く、困っているという人は少なくないのではないかと思います。

司馬 「なぜできないのか?」と叱るのはよくないです。本人と相談しつつ「あの仕事はどうなってる?」「今日は〇〇の予定だよね」などと、確認やリマインドをするといいでしょう。例えば、ADHDの人が資料作りをする際、4分の1の工程でどうなっているか聞いた方がいいでしょう。そうしないと「締め切りが明日なのに終わらない!」といった状況に陥り、結果、周りも迷惑することになります。ADHDの人は、“先延ばし”と“忘れる”が同居しているので、「普通、大人相手にそこまで確認しないよね」ということでも、確認した方がうまくいくと思います。

 最近は小学生までもが、友達に対して「ADHDなんじゃない?」といった言葉を使うなど、“よくないイメージ”がつきまとっている面もあり、それはよろしくない傾向ですが、その半面、ADHDの子どもが、周りから配慮してもらえるようになって「困ることが減ってきた」という話を聞くこともあります。ADHDの理解がより深まればいいなとは思いますね。

――ネットなどでは、ADHDと診断されていないまま「自称ADHD」と発信している人も増えたように感じるのですが、そのことについてどうお考えですか?

司馬 例えばそれで、「私はADHDだから○○ができません」と言うなど、ADHDを“言い訳”に使う人がいたら、「それってどうなの?」と思いますよね。チェックリストを見て、ただ自分は当てはまると思っているだけの人や、言い訳に使っている人は、自分はADHDであるという認識を“活用できていない”のです。ADHD関連の本を読んで、使えそうなやり方を試してほしいと思います。

 自己肯定感の低さをどうしていくべきか、周りに迷惑をかけないようにするにはどうすればよいのか――そういったことを考えられるようになることこそ、ADHDを知る意味であり、大事なことなのではないでしょうか。
(取材・文=池守りぜね)

司馬理英子(しば・りえこ)
1978年 岡山大学医学部卒。医学博士。1983年に同大学大学院卒業後、渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を積む。1997年『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を上梓。同年帰国し、司馬クリニックを開院。中学生までの子どもと大人の女性を専門に、治療を行う。

ADHD女性が抱える“しんどさ”の正体――精神科医が語る「女性は家事が得意」の重圧

 近年、ネット上で、「ADHD(注意欠如多動症)」という言葉を目にすることが増えた。タレントの小島慶子やSEKAI NO OWARIの深瀬慧など、有名人のカミングアウトの影響もあってか、ADHDの症状に注目が集まっているようだ。ADHDは、3つの特性がある発達障害――その特性とは、1つ目は、じっとしていられなかったり、次から次へ仕事に手を出したりするような「多動性」、2つ目は、いらないものを買ってしまったり、思いつきで行動してしまうのが抑えられない「衝動性」、3つ目は忘れ物や仕事でのケアレスミスを多発する「不注意」だという。大人のADHDの場合、こうした症状によって、仕事や人間関係でのトラブルを引き起こすことも珍しくなく、生きづらさを抱えている人も多いようだ。

 今回、ADHDの女性が、仕事や恋愛でぶつかる壁に、どう対処をしていけばよいのかを書いた『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます。』(東洋館出版社)の著者である、司馬クリニック院長の司馬理英子先生に取材を行った。司馬先生に、ADHDの症状や患者を取り巻く状況について見解をうかがったところ、“女性だからこそ”ADHDによる苦しみが強まる社会的背景が浮き彫りになった。

ほかの人が「苦労せずできること」ができない

――『わたし、ADHDガール。恋と仕事に困ってます。』では、発達障害の1つであるADHD女性=ADHDガールに起こりがちなトラブルの対処法について、漫画を交えてわかりやすく説明してあります。ADHDに関する入門編ともいえる内容ですが、この本の読者層はどういった方なのでしょうか。

司馬理英子先生(以下、司馬) 「落ち着きがない」「片付けられない」「衝動買いがやめられない」など、ネットでADHDの症状を知って、「自分は、もしかしたらADHDかも」と悩んで本を手にする方が多いようです。本を読んで、クリニックに来院される方もいます。実際に通院中の方や、「子どものために買いました」という親御さんからの反響もありましたね。

――世間では、以前に比べてADHDの情報が浸透してきたように思います。 

司馬 テレビなどで取り上げられるようになったので、ADHDは、今や多くの人が知るようになった障害だと思います。しょっちゅう遅刻をする、締め切りが守れない、計画性がないといった生活態度から、「あなた、ADHDなんじゃないの?」と言われる人が増えたのではないでしょうか。というのも、ADHDは、行動などから症状が目に見えるので、素人にも気づかれやすい。そのため、症状が目に見えにくい心の病よりも、人に指摘されてショックを受け、大変な思いをしている人も多いかもしれません。

――ADHDの人にとって、一番顕著な悩みとなる特性はなんでしょうか?

司馬 「不注意」の特性により、「片付けができない」と悩む方が多いですね。使ったものを元の場所に戻さないため、部屋が片付かない。鍵や財布を、いつも探し回ったりしています。ADHDの人は、視野が狭いという特徴があり、注意を払うことが苦手なのです。片付けは、いろいろなものをコンスタントに整えなければいけないので難しいです。待ち合わせや締め切りを守れないのも「不注意」の特性ではありますが、こういった時間に関することの方が、片付けよりはまだケアがしやすい面はあるのではないでしょうか。

 それから、ADHDの人が「つらい」と感じてしまうのは、ほかの人にとっては苦労せずできる当たり前のことができないことです。例えば、シンクに溜まった皿を片付けるということに、普通はいちいちうんざりしないのに、ADHDの人は一つひとつの出来事に感情で反応するため、疲れてしまう面があるのです。

――本書では、ADHDの人は大人になるにしたがい、自己肯定感を持ちにくくなるという指摘もありました。

司馬 子どもの頃は、勉強ができるなど、何か高い能力があれば、遅刻や忘れ物の多さ、落ち着きのなさなどは、そこまで深刻にとらえられません。また、周りの先生や親が「そろそろ課題を提出する時期ですよ」と言ってくれたりもします。しかし、社会人になると、マルチタスクを求められるようになる。その際、ADHDの人は、記憶が漏れ落ちてしまい、そのたった1つの“抜け”が、致命傷につながる場合もあるのです。特に、能力が高い人たちの集団に入ると、ADHDの特性である遅刻癖や先延ばし癖、計画性のなさなどによって、窮地に立たされることがあります。一人前の大人として扱われているのに、細かいことができずに失敗して、落ち込んでしまい、結果、自己肯定感を持ちにくくなるのです。

 できることと、できないことのギャップに悩み、自己肯定感を育めないケースもありますね。例えば、仕事はきちんとできるのに、領収書の提出がいつも遅れてしまったりすることで、上司から叱られてしまう。外ではちゃんとしているのに、家では部屋がぐちゃぐちゃ……などもそうで、どんなに仕事で評価されても、「片づけができない私は、ちゃんとしていない」というふうな思考に陥りがちなのです。

――自己肯定感が失われていくと、鬱などの二次障害につながっていくとも解説されていました。

司馬 そうですね。例えば、約束を忘れたり、忘れ物をしたり、思ったことをすぐ言ってしまったりという小さなミスが頻繁にあるため、自分でも「なんで?」と戸惑い、周りからも「だらしない」「付き合いづらい」などと思われてしまう。そういうことが繰り返され、自己肯定感が低くなり、二次障害につながっていきます。

――本書は、『わたし、ADHDガール。恋と仕事に困ってます。』というタイトルの通り、ADHD女性に特化した内容になっています。女性ならではのADHDの苦労というのはあるのでしょうか。

司馬 発達障害は男性に多いと言われていますが、「困っている」と自覚している大人の女性は多い。女性は小さい頃から、周りの親や教師などから“女の子なのにどうか”というふうに、厳しい評価にさらされがち。性差という部分でも、ADHDの女性はしんどさを感じやすい面があるため、自己肯定感も弱くなりやすいのです。

――具体的にはどういうことでしょうか。

司馬 先ほど、片づけができないことに悩むADHD女性が多いと言いましたが、女性は「家事が得意」「水回りも綺麗にしている」「しっかり者」といった世間のイメージがあるんです。男性がシンク周りを汚くしていても「やっぱり男の子ね」「男だからしょうがない」で済むのに、女性の場合は「女として最低」などと、存在を否定されてしまいがち。同じくらいだらしなくても、女性だけが、周りからなんだかんだと言われるようです。

 それに日本の女性は、結婚、出産にともない、たくさんの役割を担わされる面がある。結婚をしたら、たとえ共働きでも、女性の方が家事をするものだという風潮が根強くありますし、また、いまだに育児の主な担い手は女性です。このように、日本の女性は社会に求められる役割が多いだけに、ADHD女性が生きづらさを感じやすいのではないでしょうか。
(取材・文=池守りぜね)

(後編につづく)

司馬理英子(しば・りえこ)
1978年 岡山大学医学部卒。医学博士。1983年に同大学大学院卒業後、渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を積む。1997年『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を上梓。同年帰国し、司馬クリニックを開院。中学生までの子どもと大人の女性を専門に、治療を行う。

切らない手術より「子宮全摘出」が推奨されるワケ――「子宮筋腫」、婦人科医に聞く治療の選択肢

 40代女性の3~4人に1人は持っている「子宮筋腫」。当連載では社会復帰の早さと対応医院の多さという観点に着目し、「子宮動脈塞栓術(以下、UAE)」と「腹腔鏡手術」、2つの手術について取材を行っている。UAE手術の2回目となる今回も、前回に引き続きUAE手術を1998年から行い3,500症例の実績を持つ調布keijinkaiクリニック・瀧康紀医師に気になる再発や費用について話を伺った。

子宮筋腫の5年目の再発率は5~10%

――前編で、子宮筋腫は多発するほど再発しやすい、とお話ありました。UAEの手術後の再発の状況について教えてください。

瀧康紀医師(以下、瀧) UAEの手術における子宮筋腫の5年目の再発率は5~10%です。若い人ほど閉経まで時間があるため、再発しやすいと言えます。

 ですので、40歳の女性100人がUAEの手術を受けたら、5~10人が45歳で再発します。ただ、その次に手術をすると、5年後ですので、閉経のタイミングもやってきますから、手術をしなくても子宮筋腫が閉経で小さくなっていく、というケースもあるでしょう。

――UAEの手術において再発とは、一度壊死した子宮筋腫とはまた別の子宮筋腫が出てくるということでしょうか?

瀧 それもありますし、子宮筋腫につながる血管を塞がれて、枯れたと思われた子宮筋腫の一部に生きている細胞が残っていて、そこが再増大をはじめた、というケースもあります。子宮筋腫において「再発のない治療」というのは子宮を全摘出する以外にありません。胃潰瘍と一緒なんです。胃が残ってる限り、胃潰瘍になる可能性はありますよね。

おへその高さより高い筋腫はUAEの適応外

――大きくなりすぎた子宮筋腫はUAEでは不向きなのでしょうか。

瀧 『Williams 婦人科学』という世界中で読まれている医学書があるのですが、当院の治療法はこちらに則っています。この中で子宮筋腫における「禁忌(医学用語においては、「適応させていけない」という意味)」についても触れられており22~24週の妊娠子宮より大きいサイズの子宮は「相対的な禁忌」と書かれています。より具体的に言えば、おへその高さより高い位置にある子宮筋腫は、UAEの適応外になります。

――「相対的な禁忌」というのは?

瀧 「手術を行っても不利益が多い」ということですね。UAEに限らずどんな治療法も益と不益があります。益が不益を上回るときにその治療法は選択されます。

瀧 「UAE」は日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が出している産婦人科診療ガイドラインにおいて、子宮筋腫の治療法において、現在3番目に上がっている治療法です。以前は5番目でした。

――2と3を比較すると、子宮摘出よりUAEは下なんですね。ガイドラインに沿えば、より上位で「子宮摘出」が選ばれることになります。

瀧 子宮摘出を何とかして避けたくて、ネットで調べて当院にいらっしゃる患者さんは多いですね。費用面でいうと、UAEは2014年から保険適応になり15万円です。基本的に全ての患者さんが保険適用です。尚、UAEは高額医療に該当し、還付金が受けられますので実際には8~10万円の出費ですね。

――UAEの手術後、壊死した子宮筋腫が膣から落ちてくる、というケースもあるとか。

瀧 筋腫の位置によっては、そういった壊死した子宮筋腫が膣から出てくる「筋腫分娩」になるケースもあります。ですが、このケースは限られており、粘膜下筋腫(子宮の粘膜に飛び出ている筋腫)がほとんどですね。

――どういった形で出てくるんでしょうか。

瀧 子宮口でつっかかることもありますが、患者さんの自力で出てくるケースもありますよ。6センチ以下の筋腫であれば出産経験ありなしかかわらず問題なく出てくると思います。出産経験者だと10センチぐらいまで出ますよ。

瀧 僕はUAEの手術を行っていますが、諸手を上げてUAEに賛成というわけではないんです。手術(子宮そのものの摘出や、子宮筋腫だけの核出手術)をした方がいい患者さんにはそうしたほうがいい、と伝えていますし、実際、当院の外来にいらっしゃる方の2割はUAEの適用外なんです。

――「子宮筋腫の大きさ」のほか、UAEの適応に該当しないケースがあるのですね。

瀧 例えばお子さんを欲しい方の場合、子宮筋腫が1つだけしかないなら、UAEよりは、子宮筋腫そのものを核出してしまった方が、妊娠出産に有利だということがわかる場合は核出手術を薦めています。一方、子宮筋腫が多発していて、現実的に摘出で取り除くのが不可能であったり、できたとしても平たく言えば、子宮があちこち傷だらけになってしまい妊娠出産を望めないだろうという場合は、UAEが有利になります。

 また、子どもを望まない方でも、過去に何回か子宮筋腫の核出手術で開腹手術をしているケースは、腹腔内の癒着もあることが見込まれます。そういった人がまた手術、となると今度はシンプルに子宮全体を摘出することになる可能性もあります。それならば、その前にUAEはやる価値があると思います。

――子宮筋腫による症状、閉経までの年齢、妊娠の希望、それまでの手術歴を加味する必要があるんですね。ありがとうございました。
(石徹白未亜)

調布keijinkaiクリニックホームページ

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テラスハウス元住人・Shoheyこと上村翔平が明かす!「リア充たちの恋愛劇」ではないテラハの真実

 Netflixとフジテレビの人気リアリティー番組『テラスハウス OPENING NEW DOORS』。2018年、軽井沢が舞台の今シーズンに出演して一躍人気者になった、バンド「THREE1989」(スリー)のボーカル・Shoheyこと上村翔平が、なんとサイゾーウーマンに初登場! 『テラハ』史上最もロマンチックなシチュエーションでの告白(結果は失恋……)、メンバー全員が号泣した卒業ソングライブなど、多くの名シーンを生み出した「Shoheyちゃん」が、「キラキラしたリア充の宴」という『テラハ』のイメージをぶち壊す“真実”を語る! 

『テラハ』史上最もロマンチックな告白シーンの裏側

――まずは、『テラハ』で一番思い出に残っているシーンを教えてください。

Shoheyさん(以下、Shohey) 入居した日の「これが『テラハ』なんだ!」という第一印象が、最も強く残ってます。安未(モデル志望の大学生・小室安未)に「水道屋さんかと思った」と言われたり(笑)、普段は自分より若い子とは全然話したりしてなかったので、年齢的なギャップを感じて衝撃でした。共同生活も初めてで、不安がありましたね。

――聖南さん(モデル・島袋聖南)への告白シーンも印象的でした。貸し切りのチャペルに呼び出し、バラの花束を渡しての告白……。2人は事前にキスもしていて良い雰囲気だったので、振られた瞬間はたくさんの視聴者が翔平さんと一緒に嘆き悲しみました。

Shohey 自分では70%振られると思ってました。オンエア上では良い感じに見えたのかもしれないですけど、聖南さんが忙しくて、意外とテレビに映っている部分でしか会えていないんですよ。距離が縮まりにくかったです。

 ああいう大それた告白は人生で初めてだったんで、ほんとに緊張しました。オンエア上ではすぐ聖南さんが来ましたけど、実際は1時間前から教会にスタンバイしていて。告白する瞬間よりも待っている時間が一番ドキドキでしたね。

――聖南さんをはじめ、視聴者からも「翔平ちゃんはいい奴」と言われることが多かった翔平さん。「いい奴」と恋愛対象になる「いい男」の境界線って、どこなのでしょう?

Shohey いい男キャラじゃないんで、「いい奴」と言われるのは素直にうれしいですね。友達と恋人を分けるのは、どこなんだろうな~。難しいっすね。女性でいうと、ちょっと安心できなかったり、危なっかしいというか、あどけなさが残ってると男心をくすぐられます。完全に僕個人の好みですけど(笑)。

――『テラハ』を見たことのない人は、「キラキラした人たちが恋愛する番組でしょ?」というイメージを持ちがちだと思います。実は私もそうだったのですが、実際に見てみると、人間関係の築き方が面白く、とても見ごたえのある人間ドラマでした。

Shohey 僕も出演が決まるまでは、実は1回も『テラハ』を見たことなくて、「キラキラ~! オシャレ~! パリピ~!」みたいなイメージでした。チャラチャラ撮って、チャラチャラ遊んで……みたいな感じかと思ってたんです。でも入ってみたら本当に、みんなガチで向き合ってた。寝る間も惜しんで仕事しているスタッフさんも含めて、“テラスハウス”というものに真剣でした。そういう意味でも最初のギャップがすごかったですね。

 メンバーも朝から晩まで普段の仕事をして、家に帰ってきてからまた撮影をしてっていうのをずーっとやっていて。みんな目標を持っているし、「うわ、本気だな」というのが見えた。そこで自分も、100%全裸の自分を出して『テラハ』と向き合おうと思えました。だからこそ、メンバーに厳しいことも言ったりしてましたね。

――『テラハ』のメンバーは、お互いに厳しい本音を言い合う場面がありながらも、人間関係のバランスを保っていて、そういう部分はやっぱり「コミュ力がある集団」に見えます。

Shohey いやいや、『テラハ』に集まってるのは、基本的には「これから頑張ろう」っていう、売れてない人。そういう中途半端なヤツらが集まってるので、傷を舐め合おうと思えば舐め合える環境なんです。高め合おうとしなければ、ますます落ちていく。『テラハ』に出ると勝手に知名度が上がっていくので、それってマイナスでもあるんです。これを生かすも殺すも自分次第だぞと、全員がわかっていたから、ちゃんと言い合えたのかもしれないですね。

 例えば麻由(グラビアアイドルの小瀬田麻由)は、周りがあんまり見えないタイプ。そこは悪いところでも、嫌いなところでもないけど、「共同生活する上ではこうした方がいいんじゃない?」と思うことは言ってましたし、目標があるのに毎日ダラダラしていたときも、1回言いました。向き合いたい仲間だから。そういうバランス感覚が、みんな良かったのかな。

――メンバーが自分たちのことを「売れていない」「中途半端」と自己分析しているとは意外です。

Shohey あそこにいる人たち、めっちゃもがいてるんです。みんなリア充に見えてリア充じゃないんですよ。やっぱり売れてない人の集まりだから、いろんなコンプレックスを持ってます。僕も今までの人生では自分をひた隠してきましたし、今でも自己否定はすごいです。『テラハ』でもトイレの大の方は、女子メンバーが全員出かけてから行くくらい気にしいだし(笑)。実際は『テラハ』にいる人たちもみ~んなコミュ障っすよ。だからスタジオの山ちゃん(南海キャンディーズ・山里亮太)たちがイジって面白くしてくれるのは、ありがたいっすね! ただの素人の普通の暮らしを見るだけじゃ、全然面白くないじゃないですか。

――選ばれしコミュ力最強戦士たちの集いだと思っていました……。

Shohey いやいや! 僕はずっと音楽が好きで、それって意外と根暗だと思うんです。家でずっと作業しますし。ずっと好きな映画見たり、本読んだりとかもするし。基本的にインドアで、根暗な方かなと思います。根暗じゃないと音楽とか作れないと思うので。

 でも『テラハ』に入ると毎日誰かと絶対会うわけじゃないですか。だからちゃんと目を見て話すということだったり、今までできなかった基本的なコミュニケーションが『テラハ』に入ってできるようになったかな。僕は表面的に仲良くなるのは得意なんですけど、意外と本当に心を開くっていうのは、今まであんまりできなかったんです。親友も今まででの人生で数人ですよ。

――自身を「根暗」「コミュ障」と称する翔平さんですが、『テラハ』で100%自分を出し切った経験を振り返って、どんなものを得られましたか。

Shohey 24時間見られている感覚だったので、良い意味で人目を気にしなくなったし、自分は自分で良いっていう自信になったのかな。あとは、人に優しくなれたかもしれないです。シェアハウスをしていると、人に興味を持たざるを得ないんですよ。今まで他人に興味なかったのに、毎日「この人はどういう生き方をしてきたんだろう」「どういう人なんだろう」っていうのを聞くことになるので、興味を持てるようになりました。人間が好きになってきた、というのが一番の糧かもしれないです。

――次に2018年を振り返って「俺が輝いてた瞬間」ベスト3を教えてください。ますは3位からどうぞ。

Shohey 安未が卒業を宣言して、自分の涙が止まらなくなったとき。自分の殻が1つ剥けたと感じて、あのときに『テラハ』と本気で向き合おうという気持ちがまた一段上がりました。最初はやっぱり、バンドの売名をしたいから『テラハ』に出るんだという気持ちもあるじゃないですか(笑)。だから自分を作る部分もあったんですけど、あの涙を流してからは「それじゃダメだ」と。100%全裸の自分を見せていこうと思えた瞬間でした。

――では2位はどうでしょうか?

Shohey 聖南さんに突然キスをしたとき。100%の自分を出すと言っても、カメラの前だから、やっぱり守らなきゃいけない部分はあるわけです。でも好きな人とさら関係を深めるためには、そんなの気にしてられない! と。また1つ殻が剥けて、自分が輝きましたね。

――第1位をお願いします!

Shohey 目標にしていたフェス「りんご音楽祭」に出られたときですね。『テラハ』を卒業してから、ライブで地方に行ってもお客さんがたくさん来てくれるようになりました。このフェスは、『テラハ』で自分を100%出した上村翔平を知ってもらえて、好きになってもらえて本当によかったと思えた瞬間でしたね。1曲目から涙が出てきちゃって。でも、お金を払って来てもらっているわけだから、泣いちゃいけないじゃないですか。ぐっとこらえました。涙もろいわけじゃないんですけどね……(笑)。

――最後に2019年の抱負をお願いします。

Shohey 『紅白歌合戦』(NHK)に出たいというのは常に目標に置きつつ、まずは2月に3rdアルバム『Kiss』を出すので、たくさんの人に聞いてほしいです。あとは海外でもライブをしようかなと思っています。曲作りでは、聞いてくれた人の人生に照らし合わせて「これは私の中ではこういう意味なんだ」と思ってもらえるような、一人ひとりの受け止め方で何にでも生まれ変わる音楽を作っていきたい。

 「僕にしかできない表現は何か?」と考えたとき、世の中に「ありがとう」をそのまま「ありがとう」という歌詞で伝える曲は、もうたくさんの人がやっていると思って、あえて遠回しな歌詞にしています。賛否両論ありますけど、僕も含めた“チーム根暗”には響くのかもしれないっすね(笑)。

Shohey(しょうへい)
1989年7月16日、熊本県熊本市生まれ。2014年にエレクトロバンド「THREE1989」の活動開始、15年にジャズバンド「SHEWAS」の活動開始。ともにボーカル担当で、主に作詞・作曲を担当。19年2月13日にニューアルバム「Kiss」をリリース予定。同2月8日には発売記念ワンマンライブを東京・渋谷WWW Xで開催する。
「THREE1989」公式サイト

テラスハウス元住人・Shoheyこと上村翔平が明かす!「リア充たちの恋愛劇」ではないテラハの真実

 Netflixとフジテレビの人気リアリティー番組『テラスハウス OPENING NEW DOORS』。2018年、軽井沢が舞台の今シーズンに出演して一躍人気者になった、バンド「THREE1989」(スリー)のボーカル・Shoheyこと上村翔平が、なんとサイゾーウーマンに初登場! 『テラハ』史上最もロマンチックなシチュエーションでの告白(結果は失恋……)、メンバー全員が号泣した卒業ソングライブなど、多くの名シーンを生み出した「Shoheyちゃん」が、「キラキラしたリア充の宴」という『テラハ』のイメージをぶち壊す“真実”を語る! 

『テラハ』史上最もロマンチックな告白シーンの裏側

――まずは、『テラハ』で一番思い出に残っているシーンを教えてください。

Shoheyさん(以下、Shohey) 入居した日の「これが『テラハ』なんだ!」という第一印象が、最も強く残ってます。安未(モデル志望の大学生・小室安未)に「水道屋さんかと思った」と言われたり(笑)、普段は自分より若い子とは全然話したりしてなかったので、年齢的なギャップを感じて衝撃でした。共同生活も初めてで、不安がありましたね。

――聖南さん(モデル・島袋聖南)への告白シーンも印象的でした。貸し切りのチャペルに呼び出し、バラの花束を渡しての告白……。2人は事前にキスもしていて良い雰囲気だったので、振られた瞬間はたくさんの視聴者が翔平さんと一緒に嘆き悲しみました。

Shohey 自分では70%振られると思ってました。オンエア上では良い感じに見えたのかもしれないですけど、聖南さんが忙しくて、意外とテレビに映っている部分でしか会えていないんですよ。距離が縮まりにくかったです。

 ああいう大それた告白は人生で初めてだったんで、ほんとに緊張しました。オンエア上ではすぐ聖南さんが来ましたけど、実際は1時間前から教会にスタンバイしていて。告白する瞬間よりも待っている時間が一番ドキドキでしたね。

――聖南さんをはじめ、視聴者からも「翔平ちゃんはいい奴」と言われることが多かった翔平さん。「いい奴」と恋愛対象になる「いい男」の境界線って、どこなのでしょう?

Shohey いい男キャラじゃないんで、「いい奴」と言われるのは素直にうれしいですね。友達と恋人を分けるのは、どこなんだろうな~。難しいっすね。女性でいうと、ちょっと安心できなかったり、危なっかしいというか、あどけなさが残ってると男心をくすぐられます。完全に僕個人の好みですけど(笑)。

――『テラハ』を見たことのない人は、「キラキラした人たちが恋愛する番組でしょ?」というイメージを持ちがちだと思います。実は私もそうだったのですが、実際に見てみると、人間関係の築き方が面白く、とても見ごたえのある人間ドラマでした。

Shohey 僕も出演が決まるまでは、実は1回も『テラハ』を見たことなくて、「キラキラ~! オシャレ~! パリピ~!」みたいなイメージでした。チャラチャラ撮って、チャラチャラ遊んで……みたいな感じかと思ってたんです。でも入ってみたら本当に、みんなガチで向き合ってた。寝る間も惜しんで仕事しているスタッフさんも含めて、“テラスハウス”というものに真剣でした。そういう意味でも最初のギャップがすごかったですね。

 メンバーも朝から晩まで普段の仕事をして、家に帰ってきてからまた撮影をしてっていうのをずーっとやっていて。みんな目標を持っているし、「うわ、本気だな」というのが見えた。そこで自分も、100%全裸の自分を出して『テラハ』と向き合おうと思えました。だからこそ、メンバーに厳しいことも言ったりしてましたね。

――『テラハ』のメンバーは、お互いに厳しい本音を言い合う場面がありながらも、人間関係のバランスを保っていて、そういう部分はやっぱり「コミュ力がある集団」に見えます。

Shohey いやいや、『テラハ』に集まってるのは、基本的には「これから頑張ろう」っていう、売れてない人。そういう中途半端なヤツらが集まってるので、傷を舐め合おうと思えば舐め合える環境なんです。高め合おうとしなければ、ますます落ちていく。『テラハ』に出ると勝手に知名度が上がっていくので、それってマイナスでもあるんです。これを生かすも殺すも自分次第だぞと、全員がわかっていたから、ちゃんと言い合えたのかもしれないですね。

 例えば麻由(グラビアアイドルの小瀬田麻由)は、周りがあんまり見えないタイプ。そこは悪いところでも、嫌いなところでもないけど、「共同生活する上ではこうした方がいいんじゃない?」と思うことは言ってましたし、目標があるのに毎日ダラダラしていたときも、1回言いました。向き合いたい仲間だから。そういうバランス感覚が、みんな良かったのかな。

――メンバーが自分たちのことを「売れていない」「中途半端」と自己分析しているとは意外です。

Shohey あそこにいる人たち、めっちゃもがいてるんです。みんなリア充に見えてリア充じゃないんですよ。やっぱり売れてない人の集まりだから、いろんなコンプレックスを持ってます。僕も今までの人生では自分をひた隠してきましたし、今でも自己否定はすごいです。『テラハ』でもトイレの大の方は、女子メンバーが全員出かけてから行くくらい気にしいだし(笑)。実際は『テラハ』にいる人たちもみ~んなコミュ障っすよ。だからスタジオの山ちゃん(南海キャンディーズ・山里亮太)たちがイジって面白くしてくれるのは、ありがたいっすね! ただの素人の普通の暮らしを見るだけじゃ、全然面白くないじゃないですか。

――選ばれしコミュ力最強戦士たちの集いだと思っていました……。

Shohey いやいや! 僕はずっと音楽が好きで、それって意外と根暗だと思うんです。家でずっと作業しますし。ずっと好きな映画見たり、本読んだりとかもするし。基本的にインドアで、根暗な方かなと思います。根暗じゃないと音楽とか作れないと思うので。

 でも『テラハ』に入ると毎日誰かと絶対会うわけじゃないですか。だからちゃんと目を見て話すということだったり、今までできなかった基本的なコミュニケーションが『テラハ』に入ってできるようになったかな。僕は表面的に仲良くなるのは得意なんですけど、意外と本当に心を開くっていうのは、今まであんまりできなかったんです。親友も今まででの人生で数人ですよ。

――自身を「根暗」「コミュ障」と称する翔平さんですが、『テラハ』で100%自分を出し切った経験を振り返って、どんなものを得られましたか。

Shohey 24時間見られている感覚だったので、良い意味で人目を気にしなくなったし、自分は自分で良いっていう自信になったのかな。あとは、人に優しくなれたかもしれないです。シェアハウスをしていると、人に興味を持たざるを得ないんですよ。今まで他人に興味なかったのに、毎日「この人はどういう生き方をしてきたんだろう」「どういう人なんだろう」っていうのを聞くことになるので、興味を持てるようになりました。人間が好きになってきた、というのが一番の糧かもしれないです。

――次に2018年を振り返って「俺が輝いてた瞬間」ベスト3を教えてください。ますは3位からどうぞ。

Shohey 安未が卒業を宣言して、自分の涙が止まらなくなったとき。自分の殻が1つ剥けたと感じて、あのときに『テラハ』と本気で向き合おうという気持ちがまた一段上がりました。最初はやっぱり、バンドの売名をしたいから『テラハ』に出るんだという気持ちもあるじゃないですか(笑)。だから自分を作る部分もあったんですけど、あの涙を流してからは「それじゃダメだ」と。100%全裸の自分を見せていこうと思えた瞬間でした。

――では2位はどうでしょうか?

Shohey 聖南さんに突然キスをしたとき。100%の自分を出すと言っても、カメラの前だから、やっぱり守らなきゃいけない部分はあるわけです。でも好きな人とさら関係を深めるためには、そんなの気にしてられない! と。また1つ殻が剥けて、自分が輝きましたね。

――第1位をお願いします!

Shohey 目標にしていたフェス「りんご音楽祭」に出られたときですね。『テラハ』を卒業してから、ライブで地方に行ってもお客さんがたくさん来てくれるようになりました。このフェスは、『テラハ』で自分を100%出した上村翔平を知ってもらえて、好きになってもらえて本当によかったと思えた瞬間でしたね。1曲目から涙が出てきちゃって。でも、お金を払って来てもらっているわけだから、泣いちゃいけないじゃないですか。ぐっとこらえました。涙もろいわけじゃないんですけどね……(笑)。

――最後に2019年の抱負をお願いします。

Shohey 『紅白歌合戦』(NHK)に出たいというのは常に目標に置きつつ、まずは2月に3rdアルバム『Kiss』を出すので、たくさんの人に聞いてほしいです。あとは海外でもライブをしようかなと思っています。曲作りでは、聞いてくれた人の人生に照らし合わせて「これは私の中ではこういう意味なんだ」と思ってもらえるような、一人ひとりの受け止め方で何にでも生まれ変わる音楽を作っていきたい。

 「僕にしかできない表現は何か?」と考えたとき、世の中に「ありがとう」をそのまま「ありがとう」という歌詞で伝える曲は、もうたくさんの人がやっていると思って、あえて遠回しな歌詞にしています。賛否両論ありますけど、僕も含めた“チーム根暗”には響くのかもしれないっすね(笑)。

Shohey(しょうへい)
1989年7月16日、熊本県熊本市生まれ。2014年にエレクトロバンド「THREE1989」の活動開始、15年にジャズバンド「SHEWAS」の活動開始。ともにボーカル担当で、主に作詞・作曲を担当。19年2月13日にニューアルバム「Kiss」をリリース予定。同2月8日には発売記念ワンマンライブを東京・渋谷WWW Xで開催する。
「THREE1989」公式サイト