羽生結弦「負けは死も同然」発言、強靭なメンタルは諸刃の剣か? 精神科医が語る「懸念点」

 男子フィギュアスケート・羽生結弦選手が、3月に開催された『2019年世界フィギュアスケート選手権』男子シングルで、銀メダルを獲得した。右足首の故障から、4カ月ぶりに公式戦へ復帰した羽生選手は、ショートプログラムで冒頭の4回転サルコウが2回転になる失敗により、3位発進に。しかし、フリーでは、ほぼ完璧な圧巻の演技を見せ206.10点を叩き出し、総合では300.97点となるも、ショート首位のネイサン・チェン(米)は、フリーで216.02点を出し、総合は323.42点で、2位に留まったのだ。

 ファンは、羽生選手のケガからの銀メダル獲得に、大きな感動を抱いたようだが、この結果に納得いかなかったのが、羽生選手本人であった。試合後のインタビューでは、「正直、悔しい」「もっと強くならなきゃいけないというのを痛感している」と切実な心境を吐露。さらに、「やっぱり、負けには負けという意味しかない。はっきり言って、自分にとっては、負けは死も同然だと思っている。本当に、本当、勝ちたい」と語ったのだが、この「負けは死も同然」という言葉が、世間に波紋を広げることとなった。

 ファンの間では、とことんまで勝つことを追求する姿勢に称賛の声が上がったものの、ネット上では、「下位の選手に失礼ではないか」「死という言葉を軽々しく使うな」といった批判が飛び交ったほか、「かなり追い詰められているのでは」など、羽生選手のメンタルを心配する声も散見される事態に。オリンピック2大会連続金メダルという偉業を達成したアスリートにしかわからない境地であることは想像に難くないが、果たして、羽生選手はどういった精神状況にあるのか。今回、『一億総他責社会』(イースト・プレス)や『高学歴モンスター~一流大学卒の迷惑な人たち~』(小学館)などの著者である精神科医・片田珠美氏に話を聞いた。

 実は羽生選手のファンだという片田氏は、「負けは死も同然」について、「非常に彼らしい言葉で感銘を受けました。この言葉に、彼の精神状況や性格そのものがよく表れていると感じます」と話す。

「この言葉から、羽生選手に関する4つのことが読み取れると思います。まず1つ目が、『それだけフィギュアスケートに人生を懸けている』ということです。以前、羽生選手自身も、インタビューで同様のことを言っていましたが、まさにその通りで、彼は高校在学中にコーチをブライアン・オーサー氏に変更し、活動拠点をカナダに移してスケート一筋でやって来ました。一方、ライバルであるネイサン・チェン選手は、アメリカの名門イェール大学に進学し、学業とスケートを両立させているそうです。どちらが良いか悪いかは別として、羽生選手は『なぜ、これほどまでスケートだけに人生を懸けてきた自分が負けてしまったのか』と思い、それが『負けは死も同然』という言葉につながったのではないかと感じました」

 2つ目は「負けず嫌い」。羽生選手の言葉には、「負けたことを受け入れられない」面がにじみ出ているという。そして3つ目は「完璧主義」で、一番かそれ以外かという、いわゆる「ゼロヒャク思考」がみられるそうだ。

「4つ目はやはり、羽生選手がものすごいプレッシャーに晒されているということです。今回の世界選手権は自国開催のうえ、マスコミが『絶対王者』と騒ぎ立て、熱狂的なファンも復活劇に期待する中、真面目で責任感が強い彼は、それに応えなければいけないと思っていたのでしょう。期待というのは、裏返せば重圧ですから。これまでも相当なプレッシャーと戦ってきたのだと思いますよ」

 ほかにも羽生選手には、自分が一番じゃないと気が済まないという頑固者の一面がみられると片田氏。そういった性格は、「生まれ持ったもの」と「環境によるもの」どちらもあるというが、「コーチであるブライアン・オーサー氏の影響が大きいのではないか」という。

「オーサー氏は、1984年のサラエボオリンピックと、88年のカルガリーオリンピックで銀メダルを獲得した素晴らしい選手ですが、五輪では金メダルに手が届きませんでした。オーサー氏は自らの経験を元に、『なぜ自分は一番になれなかったのか?』を教えているかもしれませんし、その中で羽生選手が『一番でなければダメなんだ』という気持ちを強めている可能性はあるでしょう」

 こうした羽生選手の性格やメンタル面は、アスリートや芸術家が一流になるための必須条件だと、片田氏は言う。

「やはり『負けてもいいや』といった気持ちでは、決して一流にはなれません。『負けず嫌い』と『完璧主義』こそが、羽生選手の強さを支えていると言えるでしょう。しかし、それは諸刃の剣とも言えます。勝ち続けていられればいいのですが、そうはいきません。今回のように、負けてしまうこともある。そうすると、負けず嫌いゆえ、敗北を受け入れられず『うつ状態』になってしまう恐れがあります。また考えすぎて、身動きが取れなくなってしまうかもしれません」

 「うつ状態」は、本人が自覚しているかどうかは別として、「喪失体験」によって引き起こされるという。羽生選手にとっての喪失体験は、試合での敗北やケガだといい、「しかしこれまでは彼は、 “人より練習すること”でそれを乗り越え、『うつ状態』にならずに済んだ」と考えられるそうだ。

「人は喪失体験に直面すると、最初は『まさかこんなことになるはずがない』と否認するものですが、つらいからといってずっと目を背けてばかりはいられません。逃げてばかりいると、のちのちツケが回ってくる可能性もあり、お酒や薬物に溺れる人もいます。その点、羽生選手は凡人ではないので、しっかりと『なぜ負けたのか』『どうすれば勝てるのか』を考え、人より練習に励むことで、喪失体験を乗り越えてきたのでしょう。ただ、今後は年齢的な問題もあり、練習をすればするほど故障しやすくなりますし、ドクターストップがかかる可能性も否定できません」

 人より練習するという喪失体験の乗り越え方が通用しなくなる――そうなれば、羽生選手が抱える葛藤は、想像を絶するものになると予想されるが、片田氏は、彼が尊敬する、一昨年に現役を引退した男子フィギュアスケート選手、エフゲニー・プルシェンコ氏の言葉が、突破口になるのではないかと考えるそうだ。

「プルシェンコ氏がインタビューで、『ほかの選手に勝とう勝とうと思ってしまい、その自分に負けた』と言っていたんです。そして何より印象的だったのが『自分が何のために滑るのかが大事』という言葉。もちろんほかの選手に勝つことは重要ですが、ネイサン・チェン選手という才能あふれる若い選手が出てきたこと、また羽生選手の故障や年齢のことを考えると、今後、彼が勝てなくなる確率は今まで以上に高まるでしょう。そのとき、『何のために滑るのか』『スケートによって何を伝えたいのか』をもう一度考え直してほしいと思います。1位かそれ以外かという『ゼロかヒャクか』の考え方ではなく、別の視点を持つべきです」

 また、マスコミや羽生選手を応援する側が、金メダルを期待しすぎるのも問題だという。成績うんぬんではなく、彼のスケーティングから何を感じ取るかが大事と、片田氏は助言する。

 羽生選手は、4月開催の『世界フィギュアスケート国別対抗戦2019』を、右足首のケガのため欠場を発表し、「1日も早くケガを完治させ、来シーズンに向け練習に励みます」とコメントしている。羽生選手が、フィギュアスケートを心の底から楽しめる……そんな瞬間が来ることを、ファンならずとも祈りたいところだ。

“ジャニオタJリーガー”が熱弁! FC岐阜・竹田忠嗣選手に聞く、「ジャニーズアイドルの魅力」

 「ジャニーズは女性がハマるもの」という固定観念が薄れ、“男性ファン”が増えているジャニーズ。最近では、ジャニーズファンをメディアで公言する男性有名人も増えており、世間的にもジャニーズを応援する男性が珍しい存在ではなくなっている。

 そんな中でも、FC岐阜に所属するJリーガー・竹田忠嗣選手は、自身のSNSでKis-My-Ft2のコンサートに参加したことや、ジャニーズアイドルのCDを購入したことを笑顔で報告するなど、積極的に“ジャニオタ活動”を楽しんでいる男性ファンの1人。竹田選手はいわば、ジャニーズアイドルと同じく“応援される側”の人物だが、そんな人が一体なぜ、ジャニーズにハマったのだろうか。ジャニーズアイドルに感じる魅力や、自身の活動への影響などを語っていただいた。

――竹田選手はSNSでKis-My-Ft2のことをよくつぶやいていますが、ジャニーズの中でもなぜKis-My-Ft2がお好きなのですか。

竹田忠嗣選手(以下、竹田) 僕はキスマイのメンバーの“仲の良さ”に一番魅力を感じます。メンバー間のやり取りや、グループのバランスがいいですよね。メンバー同士のチームワーク、というとサッカーみたいになりますが、そこが好きになりました。

――竹田さんの“担当メンバー”は誰ですか。また、担当の好きなところ・ファン歴を教えてください。

竹田 北山宏光さんの担当で、ファン歴は5年目です。北山さんはキスマイ内で一番年上なのですが、メンバーが輝くようにトークを回すしっかり者の一面があり、少し抜けているところもあり、年下のメンバーからもイジられるという(笑)。年齢は僕の1個上なんですけど、かわいいところもあるし、かっこいいところもあるんです。僕もチームの中でそんな存在だったらいいな、とこっそり思って憧れています。

――最近気になっているジャニーズアイドルはいますか。

竹田 嵐、関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP、Sexy Zone、King&Princeが気になってます。キスマイ好きを公言してから、いろいろなグループのジャニーズファンの方が練習場に来て「ぜひ、これ聞いてください!」とCDの差し入れをしてくれます。

――ジャニーズのファンになったきっかけについて、「Jリーグ25周年記念特設サイト」に掲載されたインタビューでは「いつのまにかKis-My-Ft2にハマりました」と答えていますが、もともとジャニーズにハマる環境があったのでしょうか。

竹田 ハマる環境があったかはわからないですが、幼少期は光GENJIのポスターが家に貼ってありました。ローラースケートがかっこよくて、テレビを見て僕が好きになり、親に買ってもらったものだったと思います。家族や友だちにジャニオタがいた……というわけではないのですが、もしかしたら、“ジャニオタになる素質”があったのかもしれないです。キスマイは『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ系、現在は『キスマイ超BUSAIKU!?』)という番組を見て、それからハマりました。

――自身がジャニーズファンであることを、家族・友人・チームメイトなど、周りの人にどうやって明かしましたか。また、その時の相手の反応を教えてください。

竹田 仕事柄遠征が多く、バス・新幹線・飛行機に乗る時間が長いので、その時によくキスマイのライブDVDを持参して見ていました。後ろの席に座り、1人で楽しくDVDを見て過ごすことが多かったのですが、ある時、隣の席に座った選手が「なに見てるの?」みたいな感じで話しかけてきて(笑)。その時僕は、手の振り付けとかを覚えたかったので、DVDに合わせて練習していたんです。ほかの選手は「えっ?」みたいな感じで見てて、それでジャニオタがバレました(笑) 。

 その後は、たまたまコンサートに行く機会があり、年末にテレビ番組を見ている時、「そういえば、キスマイのコンサート行ったな」と思い出して、なにげなく自分のSNSに写真をアップしたんですが、周囲からの反響がすごく大きかったです。そんなに反響があるとは思わなかったので、驚きましたね。

――竹田選手から見た「ジャニーズアイドル」の魅力を教えてください。

竹田 「夢を与えてくれている」ところでしょうか。僕らは試合に勝つばかりでなく、負けることも、悔しい思いをすることもあります。そういう時に、ジャニーズは元気をくれる存在です。僕の仕事も、ファンの方に元気や夢を与えられる仕事だと思うので、いつかジャニーズアイドルのように夢を与えられる存在になりたいと思っています。また、試合前にジャニーズの曲を聞くと気持ちが上がるし、それも魅力ですね。

――これまで、ジャニーズコンサートで“ファンサービス”をもらったことはありますか。

竹田 Kis-My-Ft2・横尾渉さんから手を振っていただいたことや、宮田俊哉さんが僕を見てタオルを投げてくれました。ただ、僕の近くにいた方がそのタオルを取ってましたね。でも、あれは多分、僕に投げてくれたタオルでした! ……みんなそう思っているんでしょうけど(笑)。

――竹田選手から見て、「ジャニーズに入れそう」なJリーグ選手はいますか。反対に、「Jリーガーになったら活躍しそう」なジャニーズアイドルは誰ですか。

竹田 ジャニーズに入れそうなのは、ガンバ大阪・矢島慎也選手です。彼とは元チームメイトで仲もいいのですが、2018年のリオデジャネイロオリンピックで日本代表に選ばれて、サッカーもとてもうまいのですが、単純にイケメンです。ジャニーズに入ったら人気が出るでしょうね。

 Jリーガーになって活躍しそうなのは、北山さんです。ファンになってから知ったのですが、もともとはジャニーズになるのが夢ではなくて、サッカー選手を目指していたそうですね。高校もサッカー推薦で入り、その後はプロになるというのが夢だったというインタビュー記事を読んで驚きました。北山さんのことは、しゃべっている雰囲気なども含めて「いいな」と思っているのですが、なんとなく、話し方が“サッカーしている人”の感じなんですよね。そのあたりも、自然とJリーガーとしてチームに溶け込めるんじゃないかな、と思います。

――この記事を読んで、竹田選手を応援しにサッカー場を訪れるジャニーズファンが増えるはずです! 今後の試合予定・イベントスケジュールを教えてください。

竹田 FC岐阜の公式サイトで随時情報を更新しています。全国で試合を行っていますので、ぜひ試合スケジュールを見て、応援に来ていただけたらうれしいです。

竹田忠嗣(たけだただし)

2018年より岐阜県全域をホームタウンとするプロサッカーチーム・FC岐阜に所属。1986年7月27日生まれ、マレーシア出身。ポジションはDFで、19年からチームの副キャプテンを務めている。

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「寸分違わぬ千鳥になりたい!」本格的ブレイク前夜・“二番手芸人”かまいたちの野望

「テレビマンがいま一番キャスティングしたい芸人」「ポスト千鳥」……昨年、東京進出を果たしたかまいたちは、まさに本格的ブレイク前夜。飄々として正体をつかませない、なぜか与沢翼氏と仲が良い山内健司(本人いわく「『クアラルンプールの別荘、いつでも使っていいっていいよ』って言ってくれるけど、そもそもクアラルンプールに行くことがない」)、、そんな山内を母のような慈愛に満ちたまなざしで見つめる濱家隆一。「面白い人は何年かかったとしてもちゃんと売れる」という芸人の掟を地で行く2人が見つめる未来とは――?

***

――15周年で初の全国ツアー、少し意外な感じがしました。もっと早くにやってらっしゃるかと。

濱家 そうですね、僕らNGKなんばグランド花月)での単独も、14年目で初めてやったんですよ。結構、そのへん慎重になってたというか、もうちょい早いうちにやってもよかったのかなとも思うんですけど。

山内 2016年の「キングオブコント」決勝に行くまでは単独やっても即完にはならなくて、それがあったんで……。全国ツアーは確実に即完できる状況になったらやろうかな、みたいなんあったんです。

――お2人とも慎重な性格ですか?

濱家 いや、入らへんのに売ってもなっていう(笑)。

――「キングオブコント」(16年3位、17年優勝)が大きな転機になったんですね。

濱家 そうですね。でかかったですね。ずっと面白いネタをやってるつもりではいたんですけど、それを「やっぱり面白い奴らやったんや」って世間にわからしてくれたんが、1回目の「キングオブコント」だったんやと思います。で、そっからネタで仕事の声かけてもらうことも多くなったり。

――私が初めてお2人のことをテレビで知ったのは、『ふくらむスクラム!!』(フジテレビ系)でした。めちゃくちゃ面白い人たちが出てきた!! って。

山内 あー、はいはいはい(笑)。

――あの『めちゃイケ』片岡飛鳥さん企画の番組。

濱家 あの時は……売れた思いましたけどね。決まった時は、もう「よし、確定」っていう。

山内 実際は、片岡さんを見る前に番組が終わりましたからね。

濱家 一度もお目にかからずに(笑)。

――この15年で「ちょっとキツいな」「もうやめたい」とかそういう気持ちになったことはありますか?

濱家 それはなかったですね。キツいっていうほど、飯食われへん時代も意外になかったんで。ただそれがない分、やっぱりこう同じルーティンで毎日仕事してるんで、ヒリつかへんっていうのはありました。それでもまあなんとなくネタは作り続けて、ちょっとずつやってきたつもりではあるんですけど。

――そして今「業界評価No.1」「ポスト千鳥」と。正直「キテるな」という自覚はなんとなく?

山内 なんとなくどころじゃないです。とんでもなくあります。

濱家 そんなんある?

山内 もう、ヤバいっす。

濱家 もう一回聞くけど、そんなんある?

山内 ヤバいっす、ヤバいっす。まずね、「いいね!」の数が全然違う!

濱家 インスタ基準にしてはるやん!

山内 「いいね!」が、前は1,000なかなか超えなかったんすけどね。今ヘタしたら4,000はいく。

濱家 恥ずかしいから言うな、4,000くらいで(笑)。

山内 いや、渡辺直美のインスタでも、ストーリー(動画機能)までは上げてもらえるようになったんですよ(笑)。

濱家 バリバリの後輩やがな。

山内 いや、最近ようやくストーリーには上げてもらえるようにはなった。しかし、まだ本編には登場してない。

濱家 かたくなにな(笑)。

山内 どうしても本編には載せてくれないんで、直美が。

濱家 まあ、直美ちゃんが認めてくれだしたっというね。

山内 ただ、絶対に載せないんですよね、本編には。

濱家 昨日も直美ちゃんと一緒の仕事やったんですけど、帰り際ギリギリまで「本編に載せろ。毎回ストーリー止まりだから、本編に載せろ」って、直美ちゃんに無理やり写真撮らせて。あんまり載せろ載せろしつこく言ってたら、今回はストーリーでも本編でもなく、ブログのほうに上げるという(笑)。

――そっちいった(笑)。

山内 あれ、どういうことなんかな……。インスタの流れが崩れるとでも?

濱家 やめろ(笑)。

山内 俺が載ったら、今までの投稿の何かが崩れるとでも?

濱家 積み上げてきたインスタフォロワーナンバーワンのイメージが崩れちゃうんやろ。

山内 とにかく、今の目標は渡辺直美のインスタ本編です。

――そこに載ったら、芸能界で成功したと……。

山内 大成功。直美のインスタ本編、大成功です。

濱家 そもそも「本編」って言うの、あれ?(笑)

――お2人が本格的に東京進出を果たしたのは、昨年4月ですよね。それもちょっと意外でした。

濱家 もうちょいで1年たちます。

――慣れましたか?

濱家 そうですね。でも慣れた言うても、家の周りと仕事場ぐらいしか行かないですけど。

山内 本当にそう。

濱家 来たばっかりの時は奥さんと東京タワー行ったり、浅草行ったり、あとGINZA SIX……

山内 結局、GINZA SIXまで。

濱家 最先端はGINZA SIX。

山内 GINZA SIXで十分や。

濱家 やっぱ東京は攻めてるなって思ったのが、GINZA SIXでバー行ったら、山椒のお酒しか置いてないんですよ。山椒のハイボールとか、山椒のマティーニとか。そんなお店大阪にはないですよ。

――窓口狭い(笑)。

山内 僕、見栄張ってもうたと思ったのが、GINZA SIXで……。

――絶対GINZA SIXなんですね(笑)。

山内 空き時間にスタバいったら、なんかリザーブ席っていうのがあって、「これなんですか?」って聞いたら、チャージ払って座れる席だと。ソファー席でね、30分3,000円くらいかかる。

濱家 高っ! うそ! えー!

山内 周り見たら、ママ友とかがお茶するような感じなんですけど、なんか聞いた手前いっとこうかなと。スターバックスラテ持って、飲みながら……え、今めちゃくちゃもったいなくない? って。

濱家 もったいない! スターバックスラテの6倍くらい!!

山内 めちゃくちゃもったいなかった……。

濱家 どれくらい滞在したん?

山内 30分きっちり。

濱家 余すことなく。

――(笑)。ちょうど同じ時期に、ダイアンさんも東京進出されてますよね。ダイアンさんは、だいぶそのことイジられてますが……。

濱家 それこそダイアンさんは、大阪を守ってきた、大阪のお笑いをずっと支えてきたと言ってもおかしくないぐらいの人たちで、僕らはそのちょっと後ろをついていってた感じ。僕らが恵まれているのって、そういう二番手感だと思うんですよ。

――二番手感。

濱家 「キングオブコント」で優勝した時も、にゃんこスターがブワー行って、僕らの話題はこう、シュンってなったじゃないですか?

――ああ……。

濱家 それ、すげぇありがたかったです、いま考えると。矢面に立たずに、こう目立たずにこう、ペース崩さずに入られた。

――そっか。一番手のつらさは確かにありますよね。

山内 バーンってフィーチャーされたらその分、バーンって落ちる可能性も高いんで。

濱家 めっちゃビビりなんですよ、僕ら。

山内 でもね、僕ら大阪のレギュラー8本あったのを7本やめて東京に出てきたんです。ちなみに、ダイアンさんは6本あって……。

濱家 4本残し(笑)。

山内 2本だけやめた。思い切りの良さでは僕らですよ!

――それだけあった大阪の番組にけじめをつけて東京に来るって、やっぱり相当な覚悟ですよね。ご家族もいらっしゃるし。

濱家 そうですね。結婚したてでしたし。でも、そこまで深刻にはなってなかったな。

山内 僕らが大阪ん時についてくれてて、ほんまこいつすごいなと思ってたマネジャーが、東京で出世してたんですよ。そんで、僕らもそろそろ東京行きたいってなった時に、そのマネジャーが東京でついてくれると。全然知らないマネジャーだったらやっぱり不安だったと思うんですけど、一番よくわかってくれてる人がついてくれたってのもでかいです。

 

――いま、千鳥さんがすごくブレイクされて、お2人が「ネクスト千鳥」的な感じで見られていることについては、どうでしょうか。プレッシャーは感じますか?

濱家 そんなええこと言ってもろうてるんですか?

――はい、ソースは日刊サイゾーです。

濱家 マジっすか(笑)。まあ、山内の目標が「寸分違わぬ千鳥」になることだから。それはありがたいです(笑)。

山内 『アメトーーク!』(テレビ朝日系)終わりにノブさんとごはん行ったんですよ。そんで今の仕事内容とかしゃべってたら「2年前のおれらと寸分違わぬ動きしてるから」って言われて。だから今「寸分違わぬ千鳥ライン」を行けてるわけです。

濱家 まあロケ番組多めに呼んでもらったり、劇場も大阪の方入れてもらったりとか。あと『アメトーーク!』に頻繁に呼んでもらったり、『笑神様は突然に…』(日本テレビ系)にもポツポツ呼んでもらったり。それがちょうど2年前の千鳥さんと同じ状況らしくて。

――加地倫三さん(『アメトーーク!』総合演出)がものすごくお気に入り、という情報もあるんです。

濱家 へー、それどこの情報かな?

――日刊サイゾーです。

山内 サイゾーか……。

濱家 お前が言うな(笑)。

――ロケもできる、もちろん漫才も、コントも、トークもとなると、逆にこう、何が自分たちの強みなのか。いろいろなことができてしまうがゆえの悩みがあるのではと思うのですが……。

濱家 それはあんま思ってはないんですけど。

山内 ギャラ、ギャラ、ギャラ、ギャラと能力が合うてない!

濱家 4回言うた(笑)。

山内 もっと渡さんかい! って思いますね。

濱家 すごい印象が悪い!

山内 この感じ、サイゾーさんぽいでしょ?

――はい、太字に。「もっと渡さんかい」のところを。

山内 悪そうな顔して言っていたと。

濱家 いやいや本当にね、なんとかちょっとでも次呼んでもらおう、次も呼んだろって思ってもらえるようにってだけですね。

――ちょうど2年前くらいに、日刊サイゾーで千鳥さんのインタビューさせていただいたんです。

濱家 やっぱ寸分違わぬ!!

――そうなんですよ。で、その時に大悟さんが「もっとライトな、司会みたいな仕事がやりたいのに、全力で笑わせいみたいなやつを毎日毎日やらないといけない」「爪痕を残せ、ばかり求められてしんどい」っておっしゃってたんですよ。

濱家 まさにそれですね。

山内 寸分違わってない!

濱家 昨日の仕事も、渡された台本の1行目が「かまいたちさんにやってほしいこと。とにかく面白を入れてもらいたい」

――(笑)。

濱家 台本持って「ぶるぶるぶるぶる」って(笑)。

山内 いま僕ら一巡目で呼んでもらってるのもあるんで、まずはそこで普通と違う感じでウケて爪痕残さないと。でも、それが続いたら今度は、これはあの(博多)大吉先生がおっしゃってたんですけど「”ただそこにいるだけでいい”っていう時期がやってくるから」って。だから、それまでは……。

濱家 振り回すしかない。

山内 そう、振り回して、ハマらんかったらはまらんかったで、呼ばれなくなればいいだけだと。

――今日お話しされていてもそうですが、かまいたちさんって、そんなにグイグイという感じじゃない……。

濱家 いや、行ってるけど(編集で)切られてるんじゃないですか(笑)?

――クールなイメージあります。

濱家 僕に関しては、大阪じゃあんまりイジられるってことなかったんですけど、最近では東京の猛者たちにイジってもらうことがちょっとずつでてきて、僕もう最近パニックしかしてない(笑)。

山内 この間の『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で、若手芸人20名のリアルアンケートっていうのやったんですよ。それで「うらやましい芸人」をみんな3人ずつ書く。基本、全員最低一票は入ってるんですけど、パンサーの尾形さんはゼロ票、あとトム・ブラウンのみちお君ゼロ票とか、まあそのへんってわかるじゃないですか。で、最後もう一人ゼロ票、「かまいたち、濱家隆一!」ってなった時に、ドーン! って。

濱家 パニックや、こっちは。

山内 収録の後に加地さんとしゃべってて、「あのドーン! の感じ、なんか見たことあるなって記憶たどっていったら、あれ品川さんの“おしゃべりクソ野郎”だ」って。

――伝説の!

山内 「有吉さんがあれ言った時に『みんな思ってるけど言えなかったことを初めて言ったぞ』感があった」って。「あれ、久しぶりに見たんだよね」って加地さん言ってて。

濱家 それなのに本人はパニックになって、こっち走れば全員が面白くしてくれるのに、きびすを返して逆方向に行くという(笑)。

山内 ひどかったな、あれ。

――大阪と東京で全然イジられ方が違う。

濱家 イジられ方っていうか、確かに今まで誰にも言われへんかったな、でも大阪でもたぶん同じように思われてたんやろなと(笑)。そこの免疫がついてないから、頑張っていかんと、という。

山内 有吉さんもザキヤマさんもフジモンさんも、イジられイメージの人をイジるのにもう飽きてはるんですよ。だからまだイジられてない、イジりがいのあるターゲットを探してる。そこに現れた、ダイヤの原石が……。

濱家 ここさえ、ここさえ、うまいこと一巡返せたら……(苦悶)。

山内 あのモンスターたちに捕まると、恐ろしいっす。

――毎日が戦い、毎番組が戦いなんですね……。

濱家(苦悶)

――苦悶の先に見据えている目標や未来の姿は?

濱家 僕は軸として1年に1回単独ライブ、あとは面白い方たちと一緒にバラエティ番組に出られればそれで。

山内 僕は昔見てて面白かった番組を復活させたい。『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)的な、泥臭い、ただ見てるだけで笑える系の。まあコンプラもあるんでしょうけど、テレビつけて見てまうの、そっち系が多いんで。そういう番組をネットじゃなくてテレビでやってみたいです。

濱家 AbemaTVのね、フジモンさんのやつ(『フジモンが芸能界から干される前にやりたい10のこと』)とか、めっちゃ面白かったよな。

山内 今のテレビがやりづらいとかはないんですけど、もうちょっとルールが広がれば、そこもできるのにな、とは思う。

――いま一番ライバルだなと思う芸人さんはいますか?

濱家 ライバルかぁ。

山内 まあ千鳥さん、ですね。目標であり、ああいうふうになっていつか追い越したい存在です。

濱家 まあ、もちろんグイグイ自分らで行って自分らで席取らないとやっていかれへん世界やと思うんですけど、まあでも、なんか、こんなこと言うのもあれですけど、山内よりこう、おもろいなって思う人あんまりいないというか。だから大丈夫なんだろうな、と思いますね。

――素晴らしいですね……。

濱家 ここ、ここも太字、太字で書いておいてください(笑)。

山内 ダイアンさんとか和牛とか、よく同じに言われますけど、ちょっとジャンルが違うかなぁとは思ってる。僕らを使ってくれるテレビの人はだいたい変な人多いんで、その人らとゆくゆく変な番組をしていけたらいいかなと思いますね。

――かまいたちさんは、ハマるとすごく中毒性が高いんですけど、毒が効いてくるのに少し時間がかかるタイプなのかなって。お2人の「慎重だ」というお話を聞いて、ますますそう感じました。

濱家 猶予はあと2年あるみたいなんで……。

山内 千鳥さんへの。

濱家 まあ、もう40代ですけど。

山内 そっすね。

濱家 その第一歩としての全国ツアーにはしたいかなと。去年は「M-1」だけに照準合わせて漫才オンリーのライブやったんですけど、今回はコントもやります。大阪と東京でしかやったことなかったんで、全国の方に生で僕ららしさというか、見に来ていただけたらうれしいなと思いますね。

山内 オール新ネタですし。

――すごい!!

濱家 でも、なんかほかの人に聞いたら、初全国やる時は「あ、これこれ」「おなじみの」みたいなネタ入れたほうがいいって……。

山内 じゃあ、入れると思います(笑)。

――全国ツアー楽しみにしてます! あと渡辺直美さんのインスタも……

山内 出てやりますよ、本編のほうにね!!

(取材・文=西澤千央)

◆かまいたち 初全国ツアー

『コンビ結成15周年いたち』〜素直・謙虚・感謝〜

・4月26日(金)東京 ルミネtheよしもと 19:00開場/19:30開演/21:30頃終演 

※2次抽選販売 受付期間:4/6(土)11:00~4/11(木)11:00 

・5月3日(金)名古屋 東文化小劇場 18:00開場/18:30開演/20:30頃終演

・5月31日(金)福岡 イムズホール 18:30開場/19:00開演/21:00頃終演

・7月20日(土)札幌 教育文化ホール 16:30開場/17:00開演/19:00頃終演

・8月22日(木)大阪 なんばグランド花月 18:30開場/19:00開演/21:00頃終演   

※5月18日(土)より抽選販売開始

チケット 前売り4000円 当日4500円

http://yoshimoto.funity.jp/2019/02/25/kamaitachitour15/

「高校生は妊娠しちゃダメ」は本当なのか? 性教育の“当たり前”を考え直すことの可能性

 人が生きていくうえで切り離して考えられない「性」。喜びと危険が隣り合わせのデリケートなテーマだけに、総じて教育による理性的なコントロールを身に着けることが望ましいと言われている。しかし、日本の性教育はグローバルスタンダードから大幅に遅れているとの指摘が絶えない。

 そこで、性教育に自論を持つとにかく明るい性教育 パンツの教室協会」代表・のじま なみさんと、NPO法人「ぱぱとままになるまえに」代表・西出 博美さんの対談を実施。前編に続き、後編では家庭での性教育や未成年の妊娠について、それぞれの考察をお届けしたい。

(前編はこちら)

――やはり家族で性の話をするのは難しいのでしょうか、

のじまなみさん(以下、のじま) おそらく、子育ての一番の悩みは性に関する教育だと思います。食や運動、勉強にまつわる話は、家庭でも会話しやすく、ママ友にも悩み相談しやすいですし、ネットにも信頼できる情報がある程度充実しています。でも、人生を左右する性教育は、誰からも教え方を学ぶことができませんし、悩み相談もしづらいものです。

西出博美さん(以下、西出) 何をどこまでどう教えるかって本当に難しい問題ですよね。学校で「責任が取れるまでコンドームを着けてセックスしましょう」と教えられましたが、私は「いつコンドーム外せばいいの?」って思いました。教える側の強い意志・主張を学校教育で植え付けられた私たちが、今度社会へ出たときに「考えを変えるきっかけ」がなくて、大人になり、交際して結婚して、「あれ、どうしたらいい?」みたいなことになりかねないなと。それもあって、もっと普通に妊婦さんと出会って友達になり、話をする中で、ご夫婦や女性、妊婦さんの変化、赤ちゃんの成長を知っていくのがいいのではないかという思いがあり、そういったNPO活動をしているんです。子ども自身が考えて選択する自由が、性教育にあってもいいんじゃないかなと思っています。

――確かに子どもだからといって、一方的に教えるたり否定するだけではなく、意思を尊重することも大事ですよね。

のじま ただ、性被害に遭うリスクを回避するための知識は、たとえ一方的でもきちんと教えるべきだと思っています。私は年間4000人のお母さんに向けて講演していますが、ご自身が性被害に遭われている方が本当に多いんです。実の両親から、兄弟、近所のお兄ちゃん、こんなにも多いのかと驚きます。でも、誰一人、親に言えていないんです。親を傷つけてしまうのでは、親から嫌われてしまうのではと思い、一人で堪えて傷を抱えてきた女性がいて、子どもたちにこんな経験をさせたくないという思いが強いんです。

――幼少期だと、性被害なのかどうかもわからないですよね。

のじま そうですね。皆さん、自分が大人になってから、あれは性被害だったんだと気づいたパターンがほとんどのようです。いま、小学生がSNSで巻き込まれる性被害の数が、過去最高となっており、発覚している被害者の中で、低年齢だと8歳のお子さんもいます。また、男の子のお母さんは、誰かを悲しませる加害者になったらどうしようと悩んでいます。

西出 性教育と防犯を合わせて教えることも大事ですよね。例えば、防犯や防災と組み合わせて教えていくとか、真正面の性教育だと難しくても、もうちょっと違う入り口を探してみるのもいいかもしれませんね。性教育は近い未来と遠い未来、それぞれに影響がある話をする必要があると思っていて、教える側は、段階を踏むことと、「自分はどこを教えているのか」を理解することが必要なんじゃないかなと。

のじま 世界では5歳からの性教育がスタンダードだという認知が広まっている中、日本では「コンドーム」という言葉が性教育で出てくるのが高校です。今のままでいいのだろうかと、親も教員も疑問に思っているけれど、どこまで踏み込んで良いかわからない。ジレンマがありますよね。

西出 私自身の好みかもしれませんが、あまり主張を織り込まず、色をつけない性教育がいいなと思いますね。

――10代の妊娠はリスクと教えられるのが常ですが、法律で明確に出産年齢が決められていない以上、「じゃあいつならいいの?」という疑問はつきまといますよね。もちろん身体的な面からリスクだと伝えることはできると思いますが。

西出 性教育では、当たり前に「高校生は妊娠してはダメ、リスク」と教えられるけど、「高校生の妊娠はリスクなのか??」っていう問いがあり、リスクかどうかは本人が判断したら良いと思っています。逆に、例えば高校生に「いま妊娠したら、妊娠させたらどうなるんだろうね?」という問いを立てて、そこから性の話に降りて考えるのも良いのではないかなと。「結婚はできる? できない? できるならする? しない? 学校はどうする?」と考えさせるように、教えていくんです。そして、実際にそうなったとき、「考えた結果、子どもを持ちたい」ということなら、その判断をするのは本人と家族がすればいいと思います。

のじま 私は「10代では産まなくて良い」と思っている側の人間です。10代でしかできない経験があるのと、10代の離婚率は9割と高くて体の負担も大きい。人生をショートカットせずに、子どもを持つ前に自分自身と向き合うことが大事だと思います。若年層の妊娠出産の支援がもっと充実してもいいと思いますが、社会を変えるのは時間が掛かると思います。

西出 そうですね。ただ私としては、いまは高校生で妊娠すると、退学になる学校が多いですが、それはおかしいと感じます。復学しやすい環境をすぐに整えるべきではないでしょうか。本人の意思で勉強し直すことができる、寛容な社会になったらいいなと思います。

――どんな選択をするにしても、それが苦しみや悲しみを伴う選択にならないために、まずは家庭で臆せずに性の話ができる環境づくりから始めるべきかもしれないですね。

のじま そうですね。シビアなテーマも自然と語り合えることが望ましいと思います。性教育に段階をつけるとしたら、セックスの話は8合目です。その後に、妊娠、感染症、エイズ、レイプについて語る必要があります。これらは、普段から家庭で性の話をしているからこそ、ハードルは低くなるのです。今の日本では、漫画とかネット媒体、アダルトビデオから性を知って育ちますが、その中に「巨根神話」「イクイク神話」というのがあって、問題だと思っています。男性は「おちんちんが大きくないとダメ」、女性も「イケないのは不感症?」「演技をしなきゃ」と思い込んだり……これは、セックス離れが進む原因にもなっていると感じますね。

西出 最近、ボランティアで「命育」という新しいサイトがローンチされましたが、かわいくて見やすく、性教育にまつわる具体的な質問に対して、監修に入っている助産師さんが答えるというコンテンツが充実しています。私はこうしたサイトのように、学校の性教育だけでなく、いろいろな組織や団体がちょっとずつ性教育のあり方を変えていけたらいいのかなと思います。

のじま そうですね。そのときに大事にしてもらいたいのは、プラスの性教育とマイナスの性教育、両方を教えるということ。防犯やHIVや中絶はマイナスなので、愛や恋愛などプラスの性教育も必要です。そうじゃないと子どもは、性を恐怖だけで受け取ってしまい、バランスに欠いてしまいます。そうやって地道な積み重ねで、20年後に日本の性教育が世界から一目置かれるようなものに発展していくことが理想ですね。
(末吉陽子)

「テラハはバカにされる」宮城大樹が語る、『テラスハウス』で「一番キツかったこと」と現在

 『あいのり』(フジテレビ系)に始まり、『テラスハウス』(同)『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライム・ビデオ)など、最近また話題を集めているリアリティ番組。「やらせだ」「台本だ」などの論争が飛び交いながらも、素人に毛が生えたような人々がカメラの前で巻き起こすリアルな人間模様に、ついつい感情移入してしまう人も多いのでは? 

 そこで、リアリティ番組出演者の、その後を追ってみよう! ということで、今回は2013年1月から12月まで『テラスハウス』湘南編のメンバーだった宮城大樹さん(29歳)にインタビューを敢行。キックボクサーとしても活躍していた宮城さんのイマとは……?

■台本がない……は本当? 

 現在は渋谷のキックボクシングジム「TARGET SHIBUYA」の代表を務めながら、タレントとして活動されている宮城さん。そもそもテラスハウス入居のきっかけは、なんだったのでしょうか?

「単純に、有名になりたかったからですね(笑)。あとは当時、プロのキックボクサーだったので、キックボクシングをもっとメジャーなスポーツにしたいという思いがあって、それをオーディションで伝えたら受かっちゃった」

 実際に番組では宮城さんの試合が放映され、メンバーみんなで応援に行くという一幕も。販売価格3億円超えともうわさされる豪奢な家で繰り広げられる「台本のない男女6人の共同生活」。実際に「台本がない」は真実?

「ガチです(笑)! 何しゃべろうとか一切決まってなくて、スタッフさんに『(ドアの)ピンポン押してください』と言われて、え! いきなりっすか! って焦りましたね。ドアを開けた瞬間に、哲(菅谷哲也)がいて、とりあえず挨拶するしかないって感じで始まりました」

 メンバーが卒業すると入れ替わりに新メンバーが入居するというスタイルのテラスハウスにおいて、湘南編で最初から最後まで住み続けた菅谷さんと、13年1月から12月まで11カ月間という長期滞在をした宮城さんはムードメーカーとなり、番組を盛り上げました。とはいえ、最初から素を出すのは難しかったのでは?

「僕、けっこう人見知りなんです。好き嫌いも激しいし。湘南編はみんないい意味で自己中だったんで、それがうまく共存できた理由ですね(笑)。だから最初の頃の自分を見ると、めちゃくちゃカッコつけてんなと。初オンエアが終わった瞬間に、友達から『キャラどうした?』みたいな連絡がいっぱい来ました(笑)」

 カメラで撮られ続けるだけではなく、ときに炎上やネットでの誹謗中傷に遭うことも多いリアリティ番組ですが、ストレスを感じることはなかったのでしょうか?

「スタッフさんの人数も限られてるので、常にカメラを回してるわけではないし、自分は目立ちたがりなんで、撮られているのは楽しめました。SNSのバッシングも気にならなかったけど、当時はよくエゴサーチしてましたね。僕は意外と叩かれてなかったほうなんで、それはラッキーでした(笑)」

 番組で最も印象的だったエピソードについて聞くと「メンバーとのデート後、同じ家に一緒に帰らないといけないのがキツかった」と苦笑い。

「普通だったら、そんなシチュエーションって絶対ないじゃないですか! 朝、一緒に出発して、夜はまた一緒に家に帰ってくる。この帰りの時間が、微妙に気まずいんですよ(笑)。僕にとっては好きな人と同じ家で生活するっていうのが、一番新鮮でドキドキしましたね」

 テラスハウスで欠かせないのが当然、メンバー間の恋愛と友情です。卒業から5年、今でもテラスハウスのメンバーと親交はあるのでしょうか?

「最初の頃は女性メンバーともよく集まっていたけど、最近会うのは男だけですね。仲良くしてるのは、哲と島一平。3人のグループラインがあって、毎日連絡をとっています。もちろん仲良くなれなかったメンバーもいたけど、みんなの活躍はSNSで見て応援しています」

 現在、Netflixにて配信中の最新シーズン『軽井沢編』には、「ゲスの極み乙女。」の休日課長が入居するなど話題には事欠きませんが、宮城さんは視聴していないそう。

「僕、自分が入居する湘南編も、最初は見ていなかったぐらいなので……(笑)。ただテラハメンバーって、仕事とか、スタッフさんの結婚式とかで会う機会が多いので、あとで友達になることはありますね。このあいだも東京編(『TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY』)の太田光るくんと、20歳祝いで一緒に飲みました」

 13年7月の検査でくも膜嚢胞が見つかり、ドクターストップがかかったことでキックボクサーの道を断たれた宮城さん。その様子は番組内でも放映され、多くの視聴者の涙を誘いました。

「当時は、路頭に迷うしかないと思いました。僕って中卒なんですよ。5歳から格闘技を始めて、もう『人生捧げよう』って勉強もしてこなかったから、自分にはキックボクシングしかない。そのことを後悔はしていないけど、『じゃあ格闘技できなくなったら、何する?』って。当たり前にあると思っていた道が閉ざされて、目の前が真っ暗になりました」

 そんな中、自身の新たな道を探すために、テラハからの卒業を決意。一度は目標を失い、失意の底に落ちた宮城さんですが、それでも前向きに行動できたのはテラスハウスのおかげだといいます。

「キックボクシング引退後は、子どもが好きなんで保育園でアルバイトさせてもらったり、ジムのインストラクター業を始めたり、いろいろ模索しました。本気で保育士になろうかと勉強した時期もあったし……。でもやっぱり自分はどこか表舞台に立ちたくて。テラハがあったから可能性を広げられて芸能界という新たな道が開いたので、本当に感謝しています」

 姉でありモデルの宮城舞さんの事務所に声をかけられたことがきっかけで、芸能界入りを決めた宮城さん。今は「俳優という仕事が楽しい」と、うれしそうに話します。6月よりU-NEXTで独占配信される任侠連続ドラマ『すじぼり』への出演も決定しているそう。

「最初は芝居って照れくさかったけど、初めて舞台に出た時に、格闘技時代に応援してくれた方々が何百人と見にきてくれたんです。で、その応援団の人たちが舞台後に口をそろえて、『リングと同じぐらい輝いてたよ』って言ってくれた。なんか涙出てきちゃって、俺の次の目指すところ、ここなのかな? と思いました」

 親友の菅谷さんが俳優として頑張っているのも当然、刺激になっているそう。

「あいつサラッと『下町ロケット』(TBS系)とかに出てて、すごいんですよ。だからお互い芽が出てるとはいえないながらも、がんばろうぜって。2人で飲みに行くと『これ決まったんだよね』『ふーん。俺も今度あれに出るんだよね』って、静かにやり合ってます(笑)」

 テラスハウス出身のメンバーには誰にも負けたくないという、宮城さん。現在の目標は?

「俳優をやっても、『テラスハウスの〜』ってなると、ちょっとバカにされる。テラスハウスってだけで、下に見てくる人は多いんです。だから逆に僕がもっと有名になって、『テラスハウスの宮城大樹』って言われないようにしたい。そこに負けないようにという糧になっています」

 いつまでもテラスハウス出身の……と枕詞がついてしまう彼らにとって、「テラスハウス」を越えられるかどうかが、今後の芸能人としての分かれ道なのかもしれません。
(ジョージ山田)

「出産動画に恐怖」「教科書を音読するだけ」日本の性教育は、どのように“遅れている”のか?

 世界に引けを取っていると言われ久しい日本の性教育。2018年には、足立区の中学校で行われた性教育の授業を都議が不適切だと批判、物議を醸していた。

 しかし、最近になって少しずつ変化の兆しも見られる。3月28日には、東京都教育委員会がおよそ15年ぶりに「性教育の手引」を改訂。中学校で避妊法や人工妊娠中絶など、文部科学省策定の学習指導要領を超える性教育を条件付きで容認する姿勢を示した。

 とはいえ、性教育の定義は幅広く、定石の指導も教材も確立されているわけではない。だからこそ、目指すべき性教育の在り方を巡る議論に意味があるはずだ。

 そこで、家庭でできる楽しい性教育を伝える「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」の代表理事で性教育アドバイザー・のじま なみさんと、「“家族”という概念を越えて、子どもと暮らすことを楽しむ社会に。」をミッションとし、妊婦さんから話を聞く機会を提供する活動を主に行っているNPO法人「ぱぱとままになるまえに」代表理事の西出 博美さんに語っていただいた。

――現在、未成年を取り巻く「性」について、環境面をどのように見ていらっしゃいますか?

のじまなみさん(以下、のじま) やはりネットの浸透が著しく、3~4歳くらいからエッチな動画を見だす子どももいます。子どものなりたい職業の上位にYouTuberが挙がるほど、ネットが身近すぎる時代です。たとえ、ご家庭で見せなくても、小学生になって友達の家に行った際、スマホやパソコンが必ずあるため、エッチな動画を見るケースも頻繁に起きはじめます。

 子どもの性に対するハードルがぐっと下がり「やってみたい」と興味喚起されたときに、ネットの性産業は「コンドームをちゃんと付けましょう」なんてことは教えてくれません。こうした環境について、潜在的な不安を持つ親御さんはたくさんいます。

西出博美さん(以下、西出) じゃあ学校で性について教える環境が整っているかという意味では、疑問に感じたことがあります。私たちの活動の一環で、妊婦さんの話を小学生が聞く機会をつくらせていただいたときに、子どもたちから妊婦さんへの質問を募集したのですが、先生が質問を見て性に関連しそうな質問を何個か省いたんですね。結果として「子どもの名前は決めていますか?」とか、当たり障りない質問が残りました。何で触れないのかなと思うと同時に、学校の性教育って難しいんだなって思いました。

のじま 保健体育の授業があるわけですし、親としては性についてもしっかり学校で教えてもらいたいですよね。とはいえ、私自身も学校で性教育について習った覚えがほとんどなく、教えてもらったのは生理くらいかな……程度です。科学的に教えないからこそパンドラの箱を開けたい子どもたちが、ネットで検索してしまうんですよね。

西出 私は、中学2年生時の家庭科の先生が熱心で、出産の動画を見せてくれたんです。でも、妊婦さんが叫んでいて痛そうだし、「出産こわっ」と思いましたね。先生としては出産のリアルを伝えたかったんだと思いますが、「妊娠、出産は大変そう」と感じさせるだけでは、抑止的な効果はあっても、子どもを産む喜びを知る機会が損なわれてしまうんじゃないかなって。

のじま 私は看護師だったので、出産の現場は何度も目にしましたけど、医療経験がない人からすると子どもじゃなくても怖いに決まっていますよね。ほかの学校でも中絶シーンを見せるケースもあります。そうすると、当然ながら恐怖のバイアスがかかるんです。でも、性ってそれだけでは語れません。例えば、「恋って何なの?」という話をしても良いと思うんですよ。

――確かに、「性」にはセックスや妊娠出産だけではなく、もっと手前の恋愛やジャンダーなども含まれますよね。

のじま 我が家では、子どもたちに、どんどん恋しなさいと伝えています。中高生は恋したいじゃないですか。先輩にあこがれて、付き合って、キスをして、たくさん思い出を作っていいと思うんです。でも、自分の体を守る方法は覚えておきなさいと。これは、広く言えば性教育ですが、同時に「あなたたちがいかに大切な存在であるか」を伝えることでもあります。

西出 おっしゃるように、性教育は学校だけに任せるのではなく、学校は学校で教えられることを教えて、家庭やNPOなど、いろんな人たちが協力し合って、子どもに知識を授けていくのがいいんじゃないかなと思います。ただ、平等に知識を学ぶという観点では、公教育にしかできない性教育も、まだまだ可能性があるはずですよね。

のじま 学校と提携している性教育の協会もありますが、いずれにしてもセックスや交尾という性に関するワードは使わないことになっています。生命の誕生の奇跡とか、性の“キラキラしたところ”しか言ってないんですよね。中途半端に学ぶので、結局のところ親に「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞きます。親から納得いく説明がもらえなかったとなると、子どもはインターネットに聞きにいくんです。

――好奇心が高まっても、正しい知識を得られる場所がないとなると、大人への不信感が募ってしまいますよね。

のじま うちの娘もどこで聞いたのか、「処女ってなに?」って聞いてきたことがあるんです。私は看護師なので、仕組みから説明できますが、中途半端に教えるのが一番よくないと思います。例えば、学校で卵子と精子のパネルで妊娠の仕組みを教わった子が、「お父さんとお風呂に入ったから妊娠したかも」と真剣に言い出したケースも耳にしたことがあります。妊娠を目的にした性交渉は膣にペニスを入れて成り立つこと、精子は空気に触れると死んでしまうことなどを体系立てて教えていれば、お風呂で妊娠とかあり得ないことが子どもにもわかるはずです。

――性を科学で捉えて教えることが大事だということですね。

西出 学生時代、保健体育の授業で性教育を教わったとき、教科書に書いてあることを丸々音読しただけで、クラスからはクスクスという笑い声が漏れ、先生も音読して「ハイ終わり」という感じでした。先生も人間ですから、恥ずかしい感情もあるのかもしれませんが、現実と合わなくなってきている教科書の内容を見直して、無味無臭の性の知識を淡々と教える時間がベースにあって、それにプラスして自分の思いを語るといいのではないでしょうか。もっと、生きていくこと、家庭を作ること、暮らしていくこと、生活していくことにちゃんと着地していくような教育を先生たちが意識して、教える内容を考えてもらえるといいのかなと。

のじま その通りだと思います。ただ、公教育を変えるには、20年くらいかかるんです。いまの小中高生が誰かに傷つけられる、正しい知識がないために悲しいことに遭いかねない。だとすれば、まずは地域と家庭を変えていかないといけない。一番は子どもたちに最も近い「家庭」を変えることです。私は、まず発信力のある意識の高いお母さんを変えて、徐々に地域に広げていけるような活動をしていきたいと考えています。

西出 出産後の健診時に絵本をプレゼントする「ブックスタート」という活動をしている団体がありますが、そこに性教育の絵本とか混ざってるといいかもしれませんね。妊娠手帳のように、一家に一冊“人体の不思議”的な本として、全家庭に配られることで知識が向上するきっかけになるんじゃないかなと思います。
(末吉陽子)

(後編につづく)

バイトテロを起こす若者は「自分に自信がない」……臨床心理士が“悪ノリ”する理由を斬る!!

 飲食店やコンビニなどで働くアルバイトの従業員が、職場での“悪ふざけ”動画をSNSに投稿して大炎上を巻き起こす「バイトテロ」。過去にもこうした騒動は起こっていたが、今年に入ってから炎上が頻発し、「社会問題化している」と言われるようになった。

 今年1月、牛丼チェーン「すき家」のアルバイト男性が、氷を店内に投げる、お玉を股間に当てるなどする行為を撮影した動画をインスタグラムのストーリーにアップし、その後、Twitterに動画が転載されて炎上、運営元のゼンショーホールディングスが謝罪するに至った。2月には、回転ずしチェーン「無添くら寿司」のバイト従業員が、一度ゴミ箱に捨てた魚を再びまな板に乗せるという動画を、同じくインスタグラムのストーリーに投稿して炎上。くらコーポレーションは、これに関わった従業員2名を退職処分とするとともに、刑事・民事での法的措置を取る準備に入ったと報告している。

 ほかにも同月、コンビニチェーン「セブン-イレブン」や「ファミリーマート」で、バイト従業員がそれぞれ「おでんのしらたきを口に入れて戻す」「商品のペットボトルの飲み口を舐める」といった動画をSNSに投稿して問題となり、企業が謝罪。外食チェーン「大戸屋」でも、バイト従業員がズボンを下ろしてアキラ100%のモノマネをする動画が炎上し、同社はこれを受け、全店を1日休業し、再発防止のための勉強会を実施している。

 企業としての信頼を失墜させるバイトテロ……世間は、こうした騒ぎを起こす従業員を強く批判し、「若者の愚行」などと指摘しているが、果たして“若さゆえ”の過ちと言ってしまってもいいのだろうか。年を重ねれば、改心されるものなのか。今回、臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈氏に話を聞いた。

 岡村氏はまず、バイトテロを起こす若者たちの心理について、「『店を潰そう』という意識はないのではないでしょうか。なので『テロ』と言ってしまってもいいのか? という問題はあるかと思いますが……」と、考察をめぐらせる。

「やはり『承認欲求』だと思います。ただ、『称賛されたい』というような承認欲求ではなく、『面白いと思われたい』など、“自分はこういう風に見られたい”といった承認欲求なのではないでしょうか。『自意識が強い』とも言えますね。同時に、バイトテロを起こす人は、『自分に自信がない』とも感じます。自ら面白いものを生み出す自信がない、だから『周りが笑ってくれることをやる』もしくは『自分が面白いと思った芸人のネタを真似る』というか。恐らく、これまでも仲間内で似たようなことをやっていて、相手が笑ってくれたのでしょう。そのことが『動画に撮ってSNSに投稿しても大丈夫』という安易な気持ちを生んだと思います」

 自ら動画をアップしたのか、はたまた、仲間内だけで見せていたものが“うっかり”流出してしまったのか……その違いはあるものの、「ネット社会の怖さを知らないのは確か」と岡村氏。「SNSを使い慣れているにもかかわらず、自分の身に炎上が降りかかるかもしれないというリスク感覚が欠如している」と指摘する。

「『自分の身の回り』と『SNS』の境界線が曖昧なため、自分の周りが笑ってくれることは、SNSでも笑ってくれる、ましてや炎上なんてことにはならないと思っているのではないでしょうか。またそもそも『笑い』と『人の嫌がること』の区別ができていない面も。それから、悪ふざけをした本人ではなく、バイト仲間がSNSに動画を流出させることもあると思うのですが、その場合、『信頼のおける身内』と『信頼できない他人』や『仲間』と『組織』の区別もついていないですよね。言うなれば、バイトテロを起こす若者は、こうしたさまざまな“境界線”を曖昧なまま認識してしまっているのです」

 ひと昔前は、ネット上に動画をアップして反応をもらうにも、大変な作業が必要だったが、最近は誰でも簡単に動画が投稿でき、簡単に「いいね!」が来る。その手軽さが、「自分の身の回り」と「SNS」の境界線をぼやかしているのではないかと、岡村氏は言う。「テレビゲームの影響により、2次元と3次元の境界線が曖昧になるといったことがよく言われますが、それと同じような現象だと感じる」とのことだ。

 一方で、こうしたバイトテロが「若気の至り」と言われる点を、岡村氏はどのように感じているのだろうか。

「学生ゆえに、そのバイトに生活がかかっているわけではなく、かつ責任がないので、ああいった動画を投稿してしまう部分はあると思います。また、最近の若者はマニュアル化に慣れてしまい、細かいところまで指示されないと動けないと言われますが、自ら考える訓練をしておらず、『この動画をアップしたらどうなるか』が想像できない面はあるかもしれません。やはり、生活のために会社に勤めるということになれば責任も生じますし、自分で考えて動かなければいけなくなりますから、『年を重ねることで改心する』ことはあるでしょう。また、仕事に価値を抱くようになることで、変わる可能性もあります」

 しかし一方で、バイトテロを起こすような“未熟さ”から脱せない人もいるという。

「先のことを考えられない人、他人の気持ちを考えられない人、自己愛が強い人は年齢問わずいますが、何らかのペナルティを受ければ、バイトテロのような“行動”を起こすことはなくなるでしょう。しかし、心の中ではまったく反省しておらず、それでも社会に適応していくために“表と裏の顔”を持つようになることはあると思います」

 社会に出て働くようになっても、悪ふざけを我慢できないという人は、「過激なYouTuberになるしかないかも(笑)」と、岡村氏は言う。では、企業側は、バイトテロを起こす従業員を生まないために、何らかの対策を講じられないだろうか。

「『このバイトは自分の経験になる』と思っている人は、バイトテロを起こさないと思います。バイトやお店に価値を抱いていない、学ぶこともメリットも何もないと思うからこそ、やってしまうのではないでしょうか。お店側は、バイトにマニュアルを渡すだけではなく、お店に“関わらせる”ことが必要。『どうすればお客さんが喜ぶか』『○○なお客さんにはどう対応すべきか』、また『どうやって掃除をすればいいか』でもいいと思うのですが、バイトに意見を求めて、情報共有する。そういった仕組みがあれば、バイトテロを防ぐことにつながるのではないでしょうか」

 そのほかにも「バイトの面接に来た人物に、『バイトテロについてどう思うか?』を聞くのも、バイトテロ防止の一助になるかもしれません。その問いに対し、どんな反応を示すのか、どんな表現で回答するのかなどを、見て判断することもできますし、また店側がバイトテロに気をつけていることを喚起させる意味もあります」と岡村氏。

 確かにバイトテロが起こるのは、大手のチェーン店が多く、仕事内容が細部に至るまでマニュアル化されている可能性はあるだろう。現時点で、バイトテロとマニュアル化の因果関係が「ある」とは断言できないものの、社会問題化するバイトテロ発生の仕組みを解明する一助になるかもしれない。

汚濁水でしか生きられない『なんちゃらアイドル』御茶海マミに聞く“リアルな地下アイドル”事情

 昨年度の総ライブ出演本数140本(!?)地下アイドル界でも異例の精力的なペースで活動を続ける2人組ユニット『なんちゃらアイドル』赤色担当・御茶海マミさん。まるで二次元から飛び出してきたようなキュートなルックスと、本来は引きこもり気質だというマニアックな一面とのギャップで、去年は『有吉ジャポン』(TBS系)に出演を果たすなど今、人気急上昇のアイドルのうちの一人である。彼女が日頃、ステージの上から眺めている景色とは?

“地下アイドル”という新たなアイドルの在り方が浸透しつつある昨今。活動を通して思うこと、リアルな地下事情についてお話していただきました!

気がついたら“地下”だった

 アイドル活動を始めたのは大学生の頃。友達と遊びに行ったアートイベントで、たまたまビラを配りに来ていた当時のメンバーに声をかけたられたことがきっかけだった。それまでアイドルに興味を持ったことはなく、大学卒業後はみんなと同じように就職し、平穏な生活を送るものだと思っていたという。どこにでも居そうな普通の女の子、そんな彼女が他に類を見ないライブアイドルとして成長するまでに歩んできたシンデレラストーリーは決して平坦な道のりではなかった。

――まず、アイドルをやってみようと思った理由についてお聞きしたいです。

御茶海マミ 楽しそうだったから! 最初は暇潰しとか、辞めたくなったら辞めればいいしぐらいの本当に適当な気持ちで始めたんだよ。でも、実際にステージに立つようになってみたら、不思議ともう辞めたいって感覚には一切ならなかった。嫌なことがあっても、いつも『こいつら絶対に見返してやるからな!』って気持ちのほうが強かったんです。そうやって続けているうちに応援してくれる人が増えてきて、そのうちに自然と責任感みたいなものも生まれてきたから、活動5年目の今はもう中途半端な雰囲気ではなくなりましたね。

――そういう覚悟の決め方含め、ものすごいライブ本数をこなしているイメージもあるから、どちらかというとアイドルっていうよりもバンドっぽいスタイルですよね。

御茶海マミ そうなんです。アイドルイベントとかだとノルマあり・ライブ時間15分・チケット代3,000円っていう出演条件が多いんだけど、なんちゃらアイドルはバンドアイドルのスタイルをとっているので振付があるわけじゃないし、たった15分の3曲じゃどうしても自分たちの魅力を伝えきれないような気がしていて。今はチケット代2,500円以下・持ち時間25分以上・ノルマあり、ギャラ無しでもOK、面白そうであれば地方も行きます! みたいな感じで活動しています。そういうスタンスが性に合っているんだと思う。あんまりお金お金! ってなってないところが好き。

――でも、それってかなり過酷な条件ですよね。地下にこだわる理由みたいなものもあったりするんでしょうか?

御茶海マミ それ結構聞かれるんだけど正直、私自身は地下にこだわっているつもりはまったくなくて、偶然やってる場所が地下だったってだけなんですよね。なんちゃらアイドル自体アングライベントがきっかけで結成されたグループなので、初期の頃から服を脱いだり亀甲縛りをしてみたり、あんまりアイドルっぽくない過激なパフォーマンスを売りにしているんです。うちらも脱ぐことに対してそんなに抵抗感もないし、やっぱり変わったことをすると興味を持ってくれる人もいるので。野良犬精神で食いついてくぞ! っていう気持ちで活動しているので、武器になるものがあればどんどん使っていく所存ですよね。

――そういった過激なパフォーマンスをしていると勘違いされるような場面も多いんじゃないですか。同性として、それがいちばんつらいだろうなぁと。

御茶海マミ あー、「エッチ好きでしょ?」みたいな?「うん!」って答えてるよ(笑)。不躾にやーやー言ってくるような人よりも、私たちのことを大事に思ってくれているファンの人たちを大切にしたい。たまーにツイッターのDMで、バキバキのチ●コの写メとか送られてきたりするけど、黙ってブロックしてます(笑)。たぶん、向こうは反応が返ってくることにエクスタシーを感じていると思うから最初から相手にしない。

――ファンとの距離が近いぶん、正統派アイドルよりもそういうことに巻き込まれるリスクは大きいですよね。

御茶海マミ 正統派のほうが距離感をつかめなくなっちゃう人は多い気がする。やっぱりオタクの人たちってピュアだから。こんなに好き勝手やってても「マミちゃんにエッチな格好してほしくない」って言わるもん。最初からエッチな格好してるんだから慣れてほしいし、喜べ! と(笑)。そういう時はしんどい思いさせてごめんねって気持ちでつらくはなるよね。

――あー、こっちがね。逆に、活動するうえでの醍醐味というか、この瞬間のためにアイドルをやっているっていうのは何ですか?

御茶海マミ ステージから、楽しんでくれているお客さんたちの姿が見えた瞬間がいちばん。私たちと会場の盛り上がりが上手く一致した時に、そこで初めて良い空間を作り出せた実感を得ることができるというか。でもそれって、アガペーじゃないのよ。なんちゃらアイドルのライブを見て元気になったよって言ってもらえると、私たちも救われる。反応が返ってきてくれて嬉しいからやる、救われてくれると嬉しいから続けられるってところはありますね。アイドルって一方通行じゃないから楽しいんです。人前に出ることがすごく苦手だったけど、表に立ってみて本当に良かったって思うなぁ。

汚濁水でしか生きられない『なんちゃらアイドル』御茶海マミに聞くリアルな地下アイドル事情の画像2

 そんな彼女だが、いわゆる“地上系”のように「夢は武道館!」などわかりやすい目標を掲げないまま、アイドルという、いつかは終わりがくる活動を続けることに対して、最近では悩むことも増えてきたという。最終的に目指す場所を聞いてみると、意外にも裏方の仕事に興味があるのだそう。

――マミちゃん個人の目標もアイドルとして成功することにある?

御茶海マミ 最近、それがわかんなくなってきちゃったの。なんか、みんなで楽しめたらいいよねとは思うんだけど。例えばCDを何万枚売るとか、そういうことに対してはあまり積極的になれない。自分の実力が伴ってないからそう思えないのかな。でもね、今ついてきてくれている人たちの気持ちは信じているし、ファンの存在がプレッシャーになってるって話でもないんだよね。

――たぶん、応援している人たちはどんどん高みに登っていく姿を見たいじゃないですか。でも、自分のなかではそれが本当に実現できるかわからないから、思い切れないということなんでしょうか?

御茶海マミ 私、別に自分のルックスが良いと思ってアイドルになったわけじゃないから、表に立つようになって「可愛いね」って言ってもらえることが増えて、最初はへー! 私、意外と悪くないんだ! って、それだけで嬉しかったんだよね。この顔で興味を持ってくれる人がいるのであれば、できる限り何でも挑戦していきたいなって思ってた。でも“可愛い”なんてね、年取れば絶対に失われるものだから。今、自分にはこれがあるから大丈夫って思えることが“アイドルであること”しかなくて、そういう永遠のないものばかりに頼りすぎる精神状態はあまり良くないんじゃないかなって。地に足がついてない感じがして、すごく怖いんですよね。だから、その反動で最終的には裏方にまわりたいって思うのかも。

――裏方というのは?

御茶海マミ 地下アイドルでライターの姫乃たまさんの活動に憧れます。学生の時から文章を書くことが好きだったから、脚本を書いたりとかしてみたいなぁ。アイドルをしていると芸人さんやカメラマン、ディレクターとかいろんな職業の人たちに出会うことが多いので、今は表側からそういう人たちの生き方を見る時なのかもしれない。

――表舞台に立つようになったからこそ外の世界に触れて、いろんなものを見聞きするうちに、そのうえで思うのは表現をしていきたいなと。

御茶海マミ うん、形が変わってもそういうことは続けていきたい。昔から漫画を描いたり、バンドを組んだり表現活動はずーっとしてたし。ただ、もともとが内向的な性格なので今までそれを表に出してこなかった。表に現れるで“表現”なんだから、出さなかったらその時点で別物なんだよ。だから今は誰にも見せずに創作してきたものを、アイドルとしてステージの上からアウトプットしてる感覚はあるかな。

汚濁水でしか生きられない『なんちゃらアイドル』御茶海マミに聞くリアルな地下アイドル事情の画像3

キャンプファイヤーみたいに燃え尽きたい!

 “アイドル”という儚さゆえに華やかな世界に生き、常に自分のなかでの終わりと向き合いながら、“地下”独特のその終わりさえ見えないような、舗装されていない道を走り続けている彼女。何がここまでそうさせて、『なんちゃらアイドル』は今、どこへ向かおうとしているのか? 最後に、リアルな心情を吐露してくれた。

――普通に就職するんだろうなぁっていうところから、劇的に運命が変わっていくとしたら相当恐ろしいことだと思います。そこを簡単に乗り越えることができたのに、今になって恐怖を感じるっていうのは?

御茶海マミ 最初は何もわかってなかったから、まぁこれも人生かっていうところからのスタートでした。だからあんまり激流に巻き込まれたような感覚もなくて、流れるプールで浮いていたらそのまま流れてましたみたいな。でも、今はすごく怖い。流れるプールだと思ってたのに海だった!ってことに最近気づいたんですよ。

――そうやってやりたいことを模索している今、『なんちゃらアイドル』としての最終形態はどうあってほしいっていうのは考えたりしますか?

御茶海マミ やっぱりキャンプファイヤーみたいに燃え尽きたいよね。たぶん、その瞬間があるから私もオタクも夢中になれるんだと思う。燃え尽きる最後の最後まで、みんなの良い思い出になれたらいいですね。キャンプファイヤーって楽しいでしょ、マイムマイムとか踊ってね(笑)。

――そうだよね、それこそアイドルって感じがします。いつ大きな火になるのか、消えてしまうのかは誰にもわからない。

御茶海マミ そうそう。ある程度こういうことがしたいっていうのはあるし、今までその通りブレずにやってきた自信もあるんだけど、売れる売れないに関しては本当に未知数。今はもう“地下アイドル”って言葉があるぐらいだから、何を以て売れるとするのかもわかんないよね。めちゃくちゃCDを売ったり、おっきな箱でワンマンやれたら売れてるってことではあるんだろうけど、ツイッターのフォロワーが2,000人ぐらいのアイドルでもそういうことができちゃう子たちって結構多いんだよ。なんちゃらだって、ある日突然バッっと売れる可能性も無きにしも非ずというか。そういうヒリヒリした感じが楽しいんだよね。だから私、いつ辞めるんだろう? とは考えるけど、まだまだ辞めるつもりはありません!
(文=佐藤麻亜弥)

●御茶海マミ(みさみ・まみ)
https://twitter.com/samami27

“歩く伝説”山本政志監督が『ロビンソンの庭』と未完の大作『熊楠 KUMAGUSU』について語る

 1980年代に盛り上がったインディーズムーブメントにおいて、その中心にいた人物が山本政志監督だ。ロックバンド「じゃがたら」の初期プロデューサーを務め、16ミリフィルムで撮影した自主映画『闇のカーニバル』(82)はベルリン映画祭やカンヌ映画祭に出品された。音楽と映画が混然化した熱気を放ち、新しい時代の到来を感じさせた。続く35ミリフィルム作品『ロビンソンの庭』(87)は単館系での上映ながらロングランヒットを記録し、ミニシアターブームの先鞭となった。

 現在はワークショップスタイルの映画塾「シネマ☆インパクト」を主宰するなど、プロデューサーとしての活躍が目立つ山本監督。クラウドファンディングによるHDリマスター化を進めている初期代表作『ロビンソンの庭』にまつわる伝説の数々、また撮影が中断したまま18年の歳月が流れた町田康主演作『熊楠 KUMAGUSU』の内情を語った。

──バブル期の東京都内に残っていた廃墟の数々で撮影した『ロビンソンの庭』には、多くの伝説が残されています。出資者を求め、長者番付(高額納税者ランキング)の上から順に当たったそうですね。

山本政志監督(以下、山本) やったやった(笑)。その頃は長者番付が毎年発表されていて、上から順に電話した。もろろん、うまくはいかないよ。それでもめげずに、長者番付には載ってないけど、日本船舶振興会(現日本財団)の笹川良一会長ならお金をたくさんもっているはずだと思って電話したんだよ。「俺、頭いいな!」と思って。やっぱりダメだったんだけど、あの頃はなんでもやってみたね(笑)。それで経済紙の記者から「佐々木ベジって人に、会ってみたら」と勧められた。当時のベジさんは、“秋葉原のバッタ王”と呼ばれていた人だったんだよ。

──本名が佐々木ベジとはすごい。ネット検索してみると、今も「企業再生引受人」として活躍中のようですね。

山本 本当に面白い人だよ。初対面で、「テレビショッピングを撮れるか」と訊くから、「当たり前だろ」と答えたら、その場で広告代理店に電話して、地方局での放送を決めたんだよ。しかも、「明日までに納品しろ」と(笑)。こちらも「やれる」と答えたから断ることもできず、知り合いに電話をしまくって撮影できるスタジオを速攻で抑えたよ。4本くらい撮影して、翌朝まで掛けて編集したら、その編集スタジオに黒塗り車が現われたんだよ。どこの暴力団関係者かと思ったら、ベジさんだった(笑)。それでベジさんに融資してもらい、制作会社レイラインを立ち上げた。2年間弱で6000万円くらい出資してもらった。でも、俺は「じゃがたら」復活ライブとかアルバム制作だとか、好き勝手なことばっかやってた。そのつけは、全て親会社のベジさんのとこに回してね。そんなとき、うちのおふくろが遺産相続で4000万円受け取ったんで、「社会貢献に使うべきだ」と俺がぶんどったの。ベジさんから「その4000万円を預けたら、3倍にしてあげるよ」と甘い言葉を囁かれたけど、さすがにそれは断った(笑)。

混沌さを極めた廃墟での撮影

──映画制作費は守ったわけですね。いよいよ都内に残っていた廃墟の数々で『ロビンソンの庭』を撮影することに。

山本 目黒、立川、井荻、初台……。都内の6か所くらいの廃墟で撮影したかな。今はどこの廃墟も消えてしまったね。井荻の廃墟は確か、区民公園にするかゴミ処理場にするかで地元住民の間でトラブっていて、国会議員のところまで撮影の許可をもらいに行ったんだよ。「8ミリフィルムを使って、5~6人で撮っている小さな小さな映画です」とか言ってさ。本当はスタッフ50人くらいで、クレーン3台入れてガンガン撮ったんだけど。廃墟一面をペインティングして、やりたい放題やったね(笑)。

──ジム・ジャームッシュ監督作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)の撮影監督トム・ディチロが参加したことも話題でしたが、トムは撮影途中で帰国することに。ケンカ別れだったんですか?

山本 いや、そうじゃないよ。もともとトムとは40日間という約束で契約を結んでいたんだけど、最終的に撮影は2か月半に及んだ。途中から俺、スケジュールは気にせずにやりたいようにやろうと決めたわけ。プロデューサーの浅井隆(現『アップリンク』代表)にしてみれば「何、それ?」だよな(笑)。今はさすがにそんなことはしないけど、あのときは本当に自分が撮りたいものを撮ろうとこだわったんだよ。『ロビンソンの庭』が欧州の映画祭で上映された後、NYに寄って、ジム・ジャームッシュやトムや照明のジム・ハイマンたちと一緒に試写したんだけど、トムたちはガールフレンドに「俺が撮ったこのシーンの光がいいだろう」とか自慢してた。和気あいあいな雰囲気でさ。撮影現場の地獄のような日々はなんだったんだろうと思ったよ(笑)。プロデューサーの浅井は海外勢との仕事や海外映画祭での上映で、今の仕事につながるものがあったと思うし、演出補の諏訪敦彦は、8ミリ作品から続いて3本目の参加で、いつもながらの地獄を案外楽しんでたみたいだし、助監督だった平山秀幸さんは商業映画の監督として活躍することになるけど、『ロビンソンの庭』の打ち上げでは、「この現場に参加できてよかった」と酔っぱらいながら泣いてたし、美術を担当した林田裕至はこの作品が美術監督としてのデビュー作だし、俺もスタッフワークで作る映画の面白さが分かった。みんなのこだわりが結実した作品だよ。

──主人公のクミ(太田久美子)は廃墟で暮らすことで心の癒しを感じるものの、やがて自然界の大いなる力に呑み込まれてしまう。目に見えない大きな力に引き寄せられていく、大自然の前では人間なんてちっぽけな存在だというテーマは、その後の『熊楠 KUMAGUSU』や『水の声を聞く』(14)などに通じるものですね。

山本 それはあるね。ロジックじゃないんですよ。俺はヨーロッパ的なエコロジーの考え方には賛成できない。自然は人間が保護してあげなくちゃいけないって言うけど、人間も自然の一部なんだよ。その立ち位置の違いは、かなり大きい。『ロビンソンの庭』は主人公が自然に取り込まれていくみたいな展開になるけど、俺としては大きな意味での再生を描いたつもりなんだ。ロジックで映画を撮ろうとするとつまらなくなる。よくは分からないけど、なんか面白いなと感じてもらえるような映画にしたかったんだ。

──『闇のカーニバル』に続いて、太田久美子さんが主演。スクリーンで独特な佇まいを感じさせた太田さんのその後は……。

山本 何十年も会ってない。最後に電話で話したときは、チャネリング占いをやってるって話だった。宇宙から声が聞こえてきたらしいんだけど、その声が英語だったんで英会話スクールに通っていると話してた。面白いよなぁ。本当、俺の周囲はぶっ飛んだ奴らばっかしだったよ(笑)。

──「シネマ☆インパクト」で若い世代と接することも多いと思いますが、山本監督から見ると今の世代はどう映っていますか?

山本 女の子は今も面白い子が多いけど、男の子はみんなマジメで大人しいな。もっと個性を出せばいいのにと思うよ。コンプライアンスだとか、リスクマネジメントとか気にせずにさ。いや、でも変な奴らは今もいるところにはいるんだろうな。だいたい当時から俺らは少数派だったわけだし、俺らみたいな人間ばっかりだったら、世の中は回らなくなるよ(笑)。

──「シネマ☆インパクト」の一環として製作された大根仁監督の『恋の渦』(13)はスマッシュヒットし、話題になりました。大根監督が語っていた「製作費10万円」というのは本当?

山本 大根監督のリップサービスだよ。実際はもっと使っている。現場で30~50万円。あっ、充分に安いか(笑)。編集費も含めて製作費100万円ってところだね。でも、今にして思えば、『恋の渦』はワークショップスタイルでヒットした映画の走りだな。「ENBUゼミナール」の市橋浩治プロデューサーが製作した『カメラは止めるな!』(18)は興収30億円のヒットだっけ? 面白いと思うよ。そういう予想もしていなかったことが現実でも起きるから、この世の中は面白いんだよ。この間、夢を見てさ。市橋プロデューサーがバリ島風の豪華御殿で暮らしていて、ライオンの頭をなでなでしてたんだよ。夢だよ。それでこの間、彼に会いに行ったときに「ライオンはどこだ?」と尋ねたら、すごく怪訝そうな顔をしてたよ(笑)。

『熊楠』はまだ生きている

──1991年に町田康主演で撮影を進めていたものの、撮影が中断してしまった『熊楠 KUMAGUSU』のことが気になります。映画の完成をまだ諦めてないそうですね。

山本 『ロビンソンの庭』を撮ったことで、より大きな自然について考えるようになり、日本で初めてエコロジー的思想を提唱した南方熊楠の生涯に興味を持つようになったんだよ。熊楠が暮らした熊野でのロケを含めて撮影は60%以上済んでいたけど、製作費が底を突いてどうにもならなくなってしまった。その後、アミューズの当時の会長が出資を検討してくれた時期もあったし、俺自身でプロデュースしようと頑張ってもみたんだけど、『熊楠 KUMAGUSU』は簡単には動かないんだよ。

──最初の撮影から18年の歳月が流れ、熊楠の青年時代を演じた町田康は熟年期も演じられる年齢になったわけですが……。

山本 撮影が中断してしまったことを肯定的に受け止めるなら、町田康がひとりで熊楠の生涯を実年齢で演じられるようになってきたということだね。それは大きなメリットだと考えている。撮影のたむらまさきさんは2018年に亡くなったけど、『熊楠 KUMAGUSU』が完成したら自分の最高傑作になると言ってくれていた。だから、映画は絶対に完成させたい。まずは『ロビンソンの庭』のHDリマスター化。その次に新作を何本か撮って、それから『熊楠 KUMAGUSU』にもう一度取り組もうと考えている。

──『ロビンソンの庭』のHDリマスター化は、クラウドファンディングで製作費を募っていますが、今なら動画配信サービスの企業あたりを営業すればお金は出るんじゃないですか?

山本 HDリマスター化されたら、そういったところにも売り込むつもりだけどね。でも、なるべくなら自前で資金は調達したい。著作権を手放すと、劇場が「山本政志特集をやりましょう」と言ってくれたときに、すぐには組めなくなってしまう。俺の監督作の中で『アトランタ・ブギ』(96)だけはアミューズに権利があるから、特集上映のときに一本だけ上映されない状況なんだよ。この間も、香港の映画関係者が相米慎二監督の『台風クラブ』(85)の著作権がどこにあるか探すのを手伝ったんだけど、撮った本人が故人になっている作品は著作権の所在先が分からないケースが増えてきている。それもあって、なるべく自分の作品は自分でコントロールできる状態にしておきたいんだ。

──山本監督の新作と『熊楠 KUMAGUSU』の撮影再開を楽しみにしています。

山本 新作『脳天パラダイス』は年内には撮る予定で、すでに「シネマ☆インパクト」でワークショップオーディションをやってるところ。その後、何本か撮って、自分の中で気持ちが整ったら『熊楠 KUMAGUSU』をやりたいね。これが完成したら、監督としてのキャリアはもう終わってもいいくらいの気持ちなんだよ。『ロビンソンの庭』HDリマスターのクラウドファンディングに興味を持ったみなさん、ぜひお金持ちの知り合いも紹介してください(笑)。

(取材・文=長野辰次)

歩く伝説山本政志監督が『ロビンソンの庭』と未完の大作『熊楠 KUMAGUSU』について語るの画像5

『ロビンソンの庭』(1987年公開)
監督/山本政志 製作/浅井隆 撮影/トム・ディッチロ、苧野昇 音楽/じゃがたら、吉川洋一郎、ヘムザ・エル・ディン 
出演/太田久美子、町田康、上野裕子、CHEEBO、OTO、坂本みつわ、IZABA、横山SAKBI、溝口洋、利重剛、室井滋

■『ロビンソンの庭』HDリマスター版制作クラウドファンディング実施中!!
https://motion-gallery.net/projects/ROBINSONS-GARDEN

●山本政志(やまもと・まさし)
1956年大分県生まれ。16ミリフィルムで撮影した『闇のカーニバル』(82)がベルリン映画祭、カンヌ映画祭に選出される。続く35ミリフィルム作品『ロビンソンの庭』(87)はベルリン映画祭zitty読者賞、ロカルノ映画祭審査員特別賞、日本映画監督協会新人賞を受賞。1991年『熊楠 KUMAGUSU』の撮影に取り組むが、資金難のため中断。97年には文化庁海外派遣文化研究員としてニューヨーク留学を経験。主な監督作に『アトランタ・ブギ』(96)、『リムジン・ドライブ』(00)、『聴かれた女』(07)、『水の声を聞く』(14)など。プロデューサー、俳優としても活躍中。

日本は盗み撮りし放題!? 弁護士に聞く、“無法状態”の現実と「盗撮罪」新設の必要性

 「会社員が女子高生のスカート内を盗撮」「教師が女子生徒の着替えを盗撮」など、頻繁に報道されている盗撮事件。最近では、レイプ加害者が犯行を盗撮する、より悪質な事件も増えている。しかし、日本では現状、盗撮そのものを罰する法律が存在しない。

 盗撮行為の実態や、法律の不備により生じる別の問題について犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長で弁護士の上谷さくら氏に聞いた。

■盗撮を罰する専門的な法律がない

 盗撮とは「相手の同意を得ず、勝手に写真や動画を撮影する」という犯罪行為。多くの人がイメージするのは、男性が性的欲求を満たすために、階段やエスカレーターの下から女性のスカート内を隠し撮りするといった犯行だろう。

 誰でも簡単に盗撮ができるようになったのは、スマートフォンの普及によるところが大きい。多くの盗撮犯は、シャッター音が鳴らない「無音カメラ」と呼ばれる無料アプリなどを悪用しているといわれる。そのため、自分が盗撮被害に遭ったことにまったく気づいていない人も多く、実際の発生件数は計り知れない。しかし、もっと恐ろしいのは「そもそも日本では、盗撮行為そのものを厳格に罰する法律が存在しないこと」と上谷氏は指摘する。

「現在、盗撮を罰するには、主に各都道府県で制定されている迷惑防止条例、もしくは軽犯罪法が適用されています。法律家でも『それで取り締まれるのだから問題ない』と言う人もいるのですが、どちらも実態とかけ離れており、適切な法律とはとてもいえません」(上谷氏、以下同)

■迷惑防止条例は、罪の重さが「統一されてない」

 というのも、迷惑防止条例の場合、各自治体で内容がそれぞれ異なるため、都道府県によって、処罰されたりされなかったりと、全国一律のルールが存在せず、仮に罰せられたとしても、非常に罪が軽いそうだ。

「仮に、駅構内のエスカレーターでスカートの中を盗撮した場合、迷惑防止条例違反に問われます。事件の内容によりますが、東京では一般的に1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。常習だと2年以下の懲役又は100万円以下の罰金。ただ初犯で懲役刑はまずあり得ず、被害者に賠償金を払って示談になることも多い。重くても、せいぜい略式起訴で、罰金10万円から20万円程度になると思います」

 さらに、埼玉や千葉の場合だと、通常は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習だと1年以下の懲役又は100万円以下の罰金になるという。

 また、スマホでの盗撮は軽犯罪法第1条第23号で定められている「窃視(のぞき)の罪」に該当する可能性があるが、上谷氏によれば、解釈が難しいようだ。「窃視(のぞき)」とは、“通常衣服をつけないでいる場所(自宅、浴場、トイレなど)をひそかにのぞき見ること”と規定されている。

「スマホの画面を見ずに被害者にかざしてシャッターを切る行為が『ひそかにのぞき見た』に当たるのか、専門家の間でも見解の相違があります。高裁では、スマホでの盗撮行為が『のぞき』とされた裁判例がありますが、被害者を救済するために無理な解釈をしたように思っています。そもそも軽犯罪法は昭和23年に制定された法律なので、スマホでの盗撮などはまったく想定されていなかったのです」

 もうひとつ重要なのは、日本では公共の場所(電車や公園のトイレなど)以外での盗撮は、ほとんど処罰されない点。アメリカやカナダなどでは、会社や自宅など、非公的な場所での盗撮も犯罪となっているという。

「迷惑防止条例は『公共の平穏を保持する』ことが目的なため、基本的に私的スペースは範囲外。そして軽犯罪法の場合は、自宅や浴場など『通常衣服をつけないでいる場所』での行為が対象のため、たとえば社長室、ホテルの部屋などでの盗撮には適用されないのが実態なのです」

 さらに、深刻な問題となるのは「プライベートな場での強制性交や、強制わいせつ罪に問われるような場面で盗撮されていたケース」と、上谷氏は指摘する。

■犯人から盗撮動画を没収する法律がない

「レイプなどの性犯罪が行われる際、加害者が犯行場面を盗撮するケースが非常に多くなっています。しかし、撮影された盗撮画像や動画を加害者から取り上げる根拠となる法律がそもそもないため、現状では検察や警察が説得して任意提出させたり所有権放棄させたりしているのです」

 こうしたケースで大きな問題になったのが2010年4月〜13年12月に起きた「宮崎アロママッサージ店強姦等事件」だ。これは、宮崎市のアロママッサージ店を経営する男が、店舗内で複数の女性に対して強姦・強姦未遂・強制わいせつを行った上、その犯行をデジタルビデオカメラで隠し撮りしていた事件。被告人は、法的根拠がないのをいいことに、これらの盗撮動画の所持を強く訴え続けていた。

「この事件は、被告人側が『告訴を取り下げるのであれば、盗撮ビデオを処分する』といった示談交渉をしていたという経緯がありました。そして、昨年6月26日の最高裁判決では『捜査機関に処罰を求めることを断念させ、刑事責任の追及を免れようとしたと認められる』という理由で、ビデオ没収になりました。しかし、今回のケースでは『犯行の発覚を防いだ』点のみに言及しており、例えば『性的に楽しむ』、『被害者との関係継続を強要する』といった目的ではビデオ没収が認められない可能性があります。なので、一般的に動画を回収することを認めたわけではないのです」

つまり、被告人が捜査の妨害をしたという理由が根拠で、今回はたまたま盗撮動画を没収できたということなのだ。

 また、仮に盗撮ビデオを没収したとしても、犯人がどこかにコピーを取っている可能性もある。さらに動画をインターネット上に拡散することを規制する法律としては、リベンジポルノ禁止法があるが、元交際相手に対する復讐を防ぐ目的で作られた法律であることから、それ以外のケースにはあまり適用されていない。つまり、被害者は流出におびえながら生活しなければならないことになる。

 つまり、迷惑防止条例、軽犯罪法、リベンジポルノ法といった3つの法では、現状、盗撮行為、盗撮画像・動画の没収、盗撮物の拡散・販売を罰することができないわけだ。これらを網羅的に取り締まる「盗撮罪」の新設は急務といえるだろう。
(福田晃広/清談社)