米Time誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に、テイラー・スウィフトやドナルド・トランプ大統領と並び、ゲーム配信者でプロゲーマーのNinjaが選出された。彼は20代後半ながら、年収は10億円ともいわれており、ゲーム好きなら知らない人はいないほどの有名人だ。
昨年発表された「新語・流行語大賞」に“eスポーツ”という言葉がノミネートされ、ゲームは遊ぶものとしてだけでなく、“競技”や“仕事”としても注目され始めている。日本国内では、日本テレビや吉本興業などの大手メディアがプロチームを作り、若手選手に活躍の場を提供。さらに、ロート製薬やUCCといったゲームに直接関係のない企業も選手のスポンサーに乗り出し、海外での活躍を支援している。
野球やサッカーのようなプロスポーツを彷彿とさせるeスポーツ業界だが、その中で“少数派”とされているのが、女性選手だ。現在、プロシーンで活躍する選手はほとんどが男性で、女性はほんの一握り。体格などの性差にとらわれず、男女平等に戦えるのがeスポーツの良さでもあるはずだが、圧倒的な“男性社会”だと言えるだろう。また最近では、とあるゲームの公式大会で優勝したにもかかわらず、容姿に対する誹謗中傷を受けたという女性選手が、自身のブログでその悲痛な思いを吐露したことが話題となり、ゲーム業界を超えて、ネット上で議論を呼んでいる。
そこで、女性ゲーミングチーム「花鳥風月」のメンバーである、ドスコイ☆花子さん、あさいさん、razさん、そしてイベントMCやゲーム配信者として活動するセリーナさんに、男性中心の業界で女性が直面している問題について語っていただいた。
【座談会出席者プロフィール】
セリーナ……忍ismストリーマー部門所属。『キャサリン』やホラーゲームなどを配信するバイリンガル女子ゲーマー。
ドスコイ☆花子……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』をメインに、 格闘ゲームや『Dead by Daylight』をプレイ。
あさい……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』をメインに配信を行っている。『Apex Legends』などFPSゲームもプレイ。
raz……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』の動画投稿など、 YouTubeでの配信を中心に活動を行っている。
ゲームをしていて感じる“恐怖感”の正体
――今日はお時間いただきありがとうございます。まず大前提からお聞きしたいのですが、ゲーム業界は女性にとってどのような場所なのでしょうか。
セリーナ 今のところ、「活動しにくい世界」という感じでしょうか……。
――特にどんな場面で感じますか。
ドスコイ☆花子(以下、花子) 私はアーケードゲームが好きで、ゲームセンターによく行ってたんですよ。でもゲームセンターって、女子1人では相当入りにくい場所ですよね。一歩踏み出すまでが、本当に大変です。
――「入りにくい」というのは、感情としては何が近いんでしょうか。
花子 「怖い」……ですかね。
セリーナ やっぱり怖さはありますね。新しいゲームが話題になって気になっても、友達と一緒じゃないと行けないというか。ゲームにもよりますけど、女子のプレイヤーはどうしても少ないので、普通に遊んでいるだけでも、ジロジロ見られることが多い。でも、今はオンラインでいろんなゲームができるので、遊びやすくはなったと思います。
あさい 私はもともとゲームセンターには行かず、家でゲームをしているんですけど、オンラインゲームの世界でも、女性への風当たりはやっぱりキツいです。大会に出て結果を残しても、SNSで「チームメイトの男が強かったんでしょ?」とか、「女の子だから強い人と組めてよかったね」って言われたり……。
raz 私がプレイしている『スプラトゥーン2』というゲームは、オンライン対戦中にボイスチャットでコミュニケーションを取ることが多いんですけど、自分と近いレベルの人はだいたい男性でした。なので、最初はマイクを使わないで他の人の会話を聞くだけにして、女だっていうことがバレないようにしてましたね。何か言われるんじゃないかとか、見下されるんじゃないかって、“恐怖感”があったので。
――その恐怖感は、どこから生まれるんですか。
セリーナ 同じ女性プレイヤーが悪口を言われたとも聞きますし、自分の体験もあります。例えば、ゲームの大会に出てネット中継の映像に映った時、コメント欄が「女だ、女だ!」で埋まるんですよ。男性が出ても「男だ!」とはならないのに、不思議ですよね。そういう時に、やっぱり1人のプレイヤーとしてではなく、“女”という属性でしか見てもらえてないんだなと感じます。
raz ゲーム配信は今、世界中の人がやってますけど、特に日本は顔や外見のことを言われやすい気がするんですよね。ゲームがうまいかどうかより、「とにかく顔」みたいな。
あさい 私も配信している時に、心ないコメントをされたことがあります。「あさいさん老けた」とか、「声がかわいくない」とか。ゲームに全然関係ないことばっかり(苦笑)。あと、SNSで「やばい女子ゲーマーランキング」とか勝手に作ってる人がいて……もちろん無視しますけど! でも、やっぱりいい気持ちはしないです。
――そういうことを言ってくるのも、男性なんですか?
花子 もともとゲーマーは男性が多いからっていうのもありますけど、やっぱり男性が多いのかな? でも、女性も同じようなことを言う人はいるし、女性が男性のフリをして目立つ女性を攻撃することもあります。なので性別以前に、ゲーム業界全体として、「誰に何を言ってもいい」空気になっているのかもしれないですよね。
――みなさんは、男性も含めてほとんどのゲーマーより技術があって、単純に強いと思うんですが、それでも「女だから」誹謗中傷されてしまうんですね……。
セリーナ 本当にゲームが好きで、真剣に勝とうとしてる女性がいる、という感覚がまだ薄いんだと思います。確かに、ゲーム業界で活躍して注目されるのはほとんどが男性だから、珍しくてちやほやされるのがうれしい女性ゲーマーがいるのも事実だとは思います。でも、周りのことなんてどうでもよくて、ただただゲームが好きな女性も結構いるよ? っていうことは、わかってほしいです(笑)。
あさい 普通に勝ちたいし、うまくなりたいよね。まあ、私たちが相当負けず嫌いなのは確かだけどさ(笑)。ただ、実は私自身も「女の子には絶対負けたくない」と思うことも正直あるので、自分が“女性”にとらわれている部分もあると思います。女性のゲーム人口が増えてきたら、今ほどはライバル視しなくなると思うんですけどね。
――今、「女性をライバル視する」といった話もありましたが、女性プレイヤー同士の距離感はどんな感じですか。
raz 私は“競技”としてゲームをしている意識の方が強いですが、ゲームの話ができて、仲良くできれば、勝ち負けにこだわらない遊び方でも気にならないです。とにかく、1人でも多く女性プレイヤーが増えてくれるのがうれしいです。
花子 女性だけのオフイベントを開いてるのも、それが目的なんですよ。男性と一緒だと、参加しにくい方もいるので。でも、そういうイベントにわざわざ遠方から来てくれて、「ゲームセンターに初めて入りました!」っていう子がいたりするんですよね。その子にとっては、地元のゲーセンよりも、東京の女性限定イベントの方が、心理的に距離が近かったというか。自分がガチのゲーマーってことを言えずにいる女性も含めたら、実はすごく多いと感じてます。その人たちが楽しく遊んだり、「ゲームが好きです」って自信を持って言えるような環境を作っていきたいです。
セリーナ ゲーマーが集まる対戦会でも、女の子ってどうしても目立ちます。周りの人にキツく当たられるのはもちろん怖いけど、逆に優しくされすぎても、「あいつは男漁りに来た」って見られたりして……。「行くだけで叩かれるから嫌だ」って、ほかの人と交流を避ける子も多いんです。
――なるほど、「女の子だから嫌な思いさせないようにしよう」と思われすぎても、困ることがあるんですね。
あさい 自分よりうまい人は男性の方が多いし、本当はそういう人にアドバイスをもらいたいんですけど、叩かれるかもしれないと思うと、それもしづらくなっちゃったり……。だから、性別について意識せず、単純にいちゲーマーとして教えてくれる人は、本当にありがたいし尊敬してます。
raz 私たちは、とにかくうまくなりたいだけです。最後は男の人たちも含めて、性別関係なくプレイヤー全員に勝ち、1番になりたい。それだけを思って、日々練習に取り組んでいることは知っておいてほしいと思います。
(後編へ続く)


