フォースコリー、メリロート、はとむぎエキス……専門家が「人気美容サプリ」の落とし穴を解説

 美容意識が高い女性たちの間では、サプリを日常的に摂るという人も少なくない。最近SNSを中心に流行しているのが、「フォースコリー」「メリロート」そして「はとむぎエキス」で、それぞれ「ダイエット」「むくみ」「美肌」に効果が期待できるという。しかし、最近では、効果のほどが疑わしいサプリの存在が取りざたされることも多々あるだけに、果たしてこれらが、実際に信頼できるものなのか、気になるところ。今回、『そのサプリ、危険です!』(経済界)の著者である、予防医療サプリメントアドバイザー・柴田丞氏に話を聞いた。

フォースコリーは運動しなければ意味なし

――まず、「フォースコリー」について教えてください。化粧品やサプリのメーカーであるDHCから発売されているダイエットサプリで、パッケージでは「除脂肪体重(筋肉や骨、内臓など、体脂肪以外の組織の総量のこと)に着目」と紹介されています。

柴田丞氏(以下、柴田) フォースコリーの成分「フォルスコリン」は、もともと外国で「医薬品」に使用されているものです。インド大陸の伝統医学「アーユルヴェーダ」において、喘息やガン、はたまた高血圧など、さまざまな治療に用いられています。その中の一つとして、ダイエット効果に着目したのが、このサプリというわけです。

 具体的にフォースコリーが体にどのように作用するのかについてですが、リパーゼとアデニリルシクラーゼという酵素が、脂肪を燃えやすい形にしてくれます。なので、フォースコリーを飲むと体重が減るのではなく、フォースコリーを飲んで「運動する」と、脂肪が燃えやすくなるというわけです。「除脂肪体重に着目」というのは、除脂肪体重を減らさず――つまり筋力を維持しながら体脂肪率を減らすことに着目しているといった意味になります。

――「これさえ飲めばダイエットはばっちり」といった、ぐうたら思考の人には向かないサプリですね。

柴田 はい、運動は必須です。ダイエットサプリにはさまざまな種類があり、例えば「炭水化物を吸収しにくくするもの」「胃袋で膨らんで満腹感を与えてくれるもの」などもあるのですが、フォースコリーはそれらとは別で、食前に飲めばいいといったものではありません。あくまで体脂肪を燃やしやすくするもの、運動の効率を上げるもの、体形を維持しながらダイエットしたい人向けのものと考えてください。論文にも「これを飲みさえすれば痩せる」と書かれているものはなかったです。「体脂肪は減少したが、体重は減少しなかった」といったものはありましたが……。ほかにも、ある国の実験で、23人の太りすぎ女性を対象に、12週間フォースコリーを投与したところ、「体重減少はしなかったが、実験期間中、体重増加はしなかった」という結果になった論文も見ました。

――危険性についてはどうでしょうか。

柴田 調べてみたところ、安全性に関する論文が出されているので、危険性は低いのではないかと考えられます。しかしフォースコリーの成分は、さまざまな薬効がある中で、主に「血圧を下げるため」に使用されており、となると、低血圧の人や、すでに血圧を下げる薬を飲んでいる人はあまり飲まない方がいいかもしれません。

――続いて「メリロート」についても教えてください。こちらもDHC、また大手だとFANCLも販売しています。メリロートはマメ科のハーブで、利尿作用を持つことから、むくみに効果があると広く知られています。

柴田 フォースコリーと同じく、メリロートエキスは、ヨーロッパだと、慢性静脈不全の治療として、脚の血流を良くするために使用される医薬品で、確かに利尿作用があります。それが、「脚のむくみを軽減するサプリ」という名目で売られているのです。ちなみに調べたところ、メリロートエキスはもともと、主に「いぼ痔の緩和」にも使われているものだといいます。

 メリロートで着目したいは、過去に肝障害の被害報告が上がっている点です。メリロートエキスの中に含まれ、効果のもとになっている「クマリン」という成分があるのですが、肝障害の報告を受けて調べた結果、このクマリンの含有量が医薬品の摂取目安量を超えており、これが原因なのではないかと疑われたそうです。メリロートエキスをサプリとして売る際、このクマリンの含有量について規制がなかったのが原因でしょう。

――それで販売停止にはならなかったのですか。

柴田 肝障害の報告が出たのが2003年で、DHCの「メリロート」だったのですが、1日の摂取目安量を3粒から2粒に減らすことで販売を続けているようですね。それで特に、被害報告が出ていないのであれば、問題はないのでしょうが、飲めば飲むほど利尿作用があると思い、大量に摂取するのは絶対に避けるべき。そういった飲み方をする人は、むくみ対策というより、体重減少を目的にしているかもしれませんが、そもそもメリロートにダイエット効果は期待できません。

――では、「はとむぎエキス」はどうでしょうか。肌に透明感やなめらかさを与えるという効果が期待できるとのことで、こちらはDHC、アサヒグループ食品などから販売されています。

柴田 はとむぎは、イメージがいいですよね。よく知られる植物なので、天然のものであることが想像できやすいし、はとむぎ茶などもポピュラーですから。効果があるとされるのは、はとむぎエキスに含まれる「ヨクイニン」という成分で、ウイルス感染によるイボの治療薬として使われるものです。確かに、美肌効果は期待できるのではないでしょうか。メリロートのように被害報告が出ているものではないですし、安全性に関しては問題ないかと思いますが、「摂れば摂るほどよい」というものでもないですね。

 しかし気になるのは、実際に商品として売られている「はとむぎエキス」のサプリを見てみると、はとむぎエキス以外に、さまざまな成分が入っていることです。例えば、アサヒグループ食品の「はとむぎエキス」は、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB6、さらにはヒアルロン酸とコラーゲンまで配合されている。もしアサヒの「はとむぎエキス」を飲んで、実際に肌が綺麗になった人がいたとして、「本当にはとむぎエキスの効果なのか?」と思ってしまうところはあります。

――ほかの成分によって肌が綺麗になったのではないか、ということですか。

柴田 そうです。ビタミンCは、たんぱく質をコラーゲンにするために必要ですし、ビタミンEは抗酸化作用によって細胞の健康維持に役立ちます。ビタミンB2・B6は、皮膚や粘膜を維持するもので、これだけ飲んでいても、肌への効果は期待できます。こうした疑問は、フォースコリーにも抱きますね。DHCの「フォースコリー」には、ビタミンB1・B2・B6も配合されており、これらにも脂肪燃焼作用があるので、効果があったとしたら、フォースコリーの成分ではなく、もしかしたらビタミンB1・B2・B6によるものなのかもしれません。こういう「保険を打っているサプリ」って、結構多いんですよ。なお、FANCLの「メリロート」に関して言うと、分岐鎖アミノ酸(BCAA)が配合され、これは筋トレをする人がよく摂取している、たんぱく質を作る成分。なぜメリロートサプリに、BCAAが入っているのか謎なのですが、ダイエット目的で飲んでいる人に向けてなのかもしれませんね。

――すでによく知られたサプリの中に、同様の効果が期待できるものがあるんですね。

柴田 やはり「目新しいもの」の方が手を伸ばしてもらいやすいのでしょう。例えばビタミンCが肌にいいというのは一般的に知られていますが、はとむぎエキスのサプリと一緒に並んでいたとしたら、「どんなサプリなんだろう?」と、はとむぎエキスの方に興味を示す人が多いのでは。ちなみに、売るためには値段設定も重要で、皆さん「値段が高い」と買うんですよ。フォースコリーは、30日分3,000円弱の値段で、同様の脂肪燃焼作用があるビタミンB1・B2・B6のサプリより割高ですが、よくわからないサプリの値段がそれなりに高いと、「効果があるのではないか」と期待する人は少なくない。そういったサプリのからくりを知っておいてもいいかもしれませんね。

柴田丞(しばた・たすく)
1980年、東京都生まれ。2007年、東京農工大学大学院応用生命化学専攻修了。大手外資系製薬会社アストラゼネカなどを経て、株式会社柴田丞メディカル総合研究所を設立、代表取締役に就任。予防医療サプリメントアドバイザーとして活躍中。著書に『そのサプリ、危険です!』(経済界)がある。

「カラテカ入江ひとりを悪者にするのはダサい」お笑い好きの”元アウトロー”瓜田純士が闇営業にモノ申す!

  反社会的勢力の忘年会で闇営業を行ったとして、宮迫博之や田村亮らお笑い芸人13人が、所属事務所から無期限謹慎処分を言い渡された。元反社でお笑い好きでもある“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39歳)は、一連の騒動をどんな思いで見つめていたのか?

――今回の騒動を見て、まず何を感じましたか?

瓜田純士(以下、瓜田) 乞食かな、と思いました 。ある程度の立場にいる奴らが、目の前の10万、100万を拾いにいく姿が卑しくて、乞食みたいだな、と 。プライドを持ってちゃんと一芸で食べている芸人やタレントは、道端に10万円落ちていても絶対に拾わないと思うんですよ。ダウンタウンとか明石家さんまとかは。

 だから今回謹慎になった奴らは、そのレベルに達していない、しみったれた連中ってことなんですよ。

――手厳しいですね。

瓜田 自分の話をさせてもらうと、俺みたいな元不良って、昔の不良仲間と街でばったり再会したときに、そいつらから羽振りの良さを見せつけられるケースが多いんですよ。見たこともないような高級車から降りてきたり、ギンギラギンの腕時計をハメていたり、六本木あたりで信じられないような派手な遊び方をしていたり。

 で、そういう謎の金持ちに限って、「俺は飲食店をいくつもやっていて」とか、「ITで成功して」とか、「外国のビッグビジネスに携わっていて」みたいなことをサラッと言いながら、「ところで瓜田くんは元気なの?」「いつも応援しているよ」とすり寄ってきて、「俺の先輩が瓜田くんに会いたがっているから、今度一緒にメシでも食わない?」とか言って、やたらと席を設けたがるんですよ。

――そういう誘いに、瓜田さんは乗るのでしょうか?

瓜田 自慢じゃないけど俺、一度も行ったことがないんですよ。足代とかを渡されそうになったこともあるけど、受け取ったことがないんです。それを受け取ったら俺はもう、アウトだと思っているんで。

 だって、場合によっちゃ、犯罪で稼いだお金で飯を食ったことになっちゃうじゃないですか。カタギになってからは、そのへんのブロックをものすごく徹底しているから、今回の芸人たちの心理が、まったく理解できないんですよ。

――うっかり忘年会に顔を出してしまった心理が?

瓜田 うっかりとかじゃないんですよ。あのね、厳しい言い方をすると、こいつらは道端に落ちているお金も平気で拾うような連中なんですよ。こないだ嫁と一緒に自販機の小銭をあさった俺が言うのもなんですけど(笑)。

――自販機の小銭? なんですか、その話は。

瓜田 夫婦で近所のスーパーに買い物に行ったら、100円だけお金が足りなくて。「わざわざ100円を取りに家に戻るのは面倒や」と嫁が言うもんだから、俺は「任せろ!」と言って、近くにあった自販機の釣り銭口をあさったんですよ(笑)。

――何をしているんですか……。

瓜田 100円のためにそんなことをしちゃうぐらいだから、「俺はまったくクリーンな男だ」とは言えませんし、言うつもりもありません。ただ、俺はヤクザの世界から足を洗うときに、組の人間からこう言われまして。「辞めるからには、今後は歌舞伎町の中に入ったり、そういうことをしている連中とつるんだり、こっち側の稼ぎ方をするんじゃねえぞ」と。もちろんわかっていますよ、と言ってカタギの世界に戻ったわけです。

 そんな俺が、犯罪で収益を得ているかもしれない奴らと飯を食ったり、そいつらから小遣いをもらったりしていたら、「てめえ、話が違うじゃねえか!」となりかねないと思っていたんですよ。ずっと。

 何があっても「俺は白だ」と言える状況こそが、強いと思っているんで。そのためだったら、どんなに苦しい思いをしてもいいと思える性格なんで。それを十何年間、徹しているから、「うっかり行っちゃった」みたいな事態や「バレなきゃいい」みたいな発想がそもそもないんですよ。誰も見ていなくても、自分との約束を守る性格なんで。

――なるほど。

瓜田 ところが、うちの嫁はそうじゃない。夫婦で散歩中、ばったり会った昔の知人が、いかつい高級車から降りてきて、「これで奥さんとデザートでも食べなよ」と言って万札を渡してこようとしたりすると、俺は断るんだけど、嫁は「おおきに!」と言って受け取っちゃう。俺が「そんな食べ物に口をつけたくない」と言っても、嫁はヒョイパク食べちゃうわけです。

 不良時代の知り合いと飲食店で偶然会って、「おごってやるよ」と言われても、俺はそういうお金にありつきたくないから、「自分らの分は自分で払う」と言うのに、嫁は俺の見ていないところで、ちゃっかりタクシー代とかをもらっているんですよ(笑)。

 ――夫婦の間で、価値観の相違があるんですか?

瓜田 うちの嫁は、よく言えば偏見がない人なんです。「せっかく好意であげるって言うてくれてはんねんから、断ったら相手に失礼やんか」と言うんですよ。あとは、俺は相手の正体を見抜けるからブロックできるけど、素人の嫁は見抜けない、というのもあるでしょう。

 ただ、今回名前が出ている奴らは芸人として売れるぐらいだから洞察力もあるわけだし、東京でもしっかり遊んできた連中だろうから、それなりの人たちを見てきていると思うんですよ。まともな経営者から、街の不良、うさんくさい遊び人まで一通り見てきているはずだから、わかっていたと思うんですよね。

  だって、20代かそこらの柄の悪い連中が、そろいもそろって高い腕時計をハメていたりするんですよ? そいつらから「エステ会社の忘年会だ」と言われて、それを信じるわけがないと思うんですよ。やっぱ“匂い”が違うんで、悪い奴らって。一目瞭然ですから、そんなの。特に酒を飲んでいるときは、カラオケの合いの手の入れ方ひとつ取っても、柄悪い奴らは柄悪くいくんですよ。足を崩して、大声出してね。

  だからはっきり言って、あの会場に行った芸人らの「反社会勢力だとは知らなかった」という言葉には無理がある。絶対わかっていただろう、と。

――会場に来てから「ヤバい連中だ」と気づいたけど、その時点ではもう帰るに帰れなかった、という可能性はないですかね?

瓜田 仮にそうだとしても、「すいません、帰ります」と言って、ギャラを受け取らずに途中で抜け出すことだって、できたわけじゃないですか。

  俺だったら迷わず帰りますよ。え? ここで? ウソ? と周囲にいる人がヒヤヒヤするタイミングでも帰っちゃう。なんで帰ったんだ! と後で怒られても、「だってあいつら、怪しいじゃないですか」と言えばいい。断れない人って多いけど、断れないせいで痛い思いをするんだったら、嫌われても断ったほうがいいんで。絶対に。

――それにしても、宮迫さんあたりは表の仕事だけでも十分稼いでいるのに、なぜ闇営業なんかしたんでしょうね?

瓜田 会社から振り込まれる給料は、いくら高額だとしても嫁が管理していたりして、好きなようには使えない。そんな中、どこに報告する必要もないお金が数十万ポケットに入ってくる。それが単純に魅力的だっただけだと思いますよ。「気に入っている姉ちゃんにバッグの一個でも買ってやれる」ぐらいの感覚でしょう。バカだなって思いますよ。

 あとね、一連の報道を見て、卑怯だなと思ったこともあるんですよ。 

 ――それはなんでしょう?

瓜田 カラテカ入江ひとりを悪者にするのは卑怯じゃないか、と。入江みたいな奴って、芸能界に限らず、どこの世界にもいるんですよ。謎のコネクションを自慢しながら謎のコネクションの中を生きる奴。人をパーティーに誘っておきながら、「次のパーティーがあるから」とか言って、わずか10分程度で会場から消えるような奴(笑)。

 「俺はパーティーとパーティーの間をすり抜けて生きている」ぐらいの感覚の、うさんくさくて調子が良くて、ルックスはさえないくせに誰よりもいい服を着ているようなバカって、昔から一定数いるんですよ。

  そういうバカは本当に、悪気なく話を振ってくるんで。入江からしたらそのシーズンだけで、おそらく何十件ものパーティーや忘年会を回していたと思うんですよ。今回問題になっている忘年会はその中の1件にすぎず、おそらく「ここは羽振りがいいから芸人仲間を連れていこう」ぐらいの軽いノリでしかないから、ヘタしたら入江のほうがあんま覚えていないぐらいの出来事だと思うんですよ。

 それをみんなで「入江が、入江が」と言うのはダサい。宮迫が最も古株なんだとしたら、「入江を指導できなかったことを含め、すべての責任は俺にある」ぐらいのことを言えないもんですかね? 「俺はどんな処分でも受ける。ほかの奴らは俺という先輩がいる手前、帰れなかっただけ。だから俺が全責任を取る」と言えば、まだ見方も変わったのに。

  宮迫とか亮クラスが後輩のせいにして頬かむりするっていうのが、一番ダサいですよ。先日、何かの雑誌で宮迫が数千万円の腕時計コレクションを自慢していましたけど、自分はそんな贅沢して、不倫までしているわけじゃないですか。一方、忘年会のメンバーの中には、苦労してやっと去年ぐらいから売れ始めた芸人もいる。同じ事務所の先輩として、そういう後輩の罪をかぶる男気はないのかな、と残念に思いました。

――今回の一件を通じて、われわれが得られる教訓ってありますかね?

瓜田 幼稚園ぐらいのときに先生や近所の口うるさいオヤジの言っていたことって、結構正しくて。「よく知らない人についていったり、よく知らない人からもらった食べ物を口にしちゃいけませんよ」って、絶対言われるじゃないですか。そのまんまなんですよ。

  幼稚園の教えを守っておけば、結構なんとかなる。「信号を守りましょう」「正直でいましょう」「ウソはダメです」とか。そういう子どもでも知っているようなルールを中年にもなって守れないのは、ただのバカと言うほかないですね。

(取材・文=岡林敬太)

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)  https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧  https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

 

「ViVi」自民党企画が波紋――軍地彩弓氏が語る「もし私が女性ファッション誌で政治を扱うなら」

「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」

 講談社の女性ファッション誌「ViVi」が6月11日、ウェブでこんなタイトルの記事を配信した。ViVigirl9人が、「どんな世の中にしたいってある?」という問いに対して、それぞれ「Be Happy ハッピーに生きていける社会にしたい」「Express Yourself 自分らしくいられる世界にしたい」などと、思いを語っているのだが、実はこの記事、自由民主党とのタイアップ企画。記事最下部に、ViVigirlのメッセージ入りTシャツのプレゼントが告知され、そこには「どんな世の中にしたいか、自分の気持ちをという思いを#自民党2019 #メッセージTシャツプレゼントの二つのハッシュタグをつけてTwitterもしくはInstagramに投稿してね」と応募詳細が掲載されていた。

 女性ファッション誌と政治――この2つを「相容れないもの」と見る人もいるかもしれないが、ここ数年、女性ファッション誌が政治を取り上げることは徐々に珍しくなくなり、誌面に「憲法改正」「特定秘密保護法」「参院選」などの言葉が散見されるようになっている。しかし、今回の「ViVi」の自民党タイアップは、「特定の政党」の「広告」という点で、先に挙げた企画とは明らかに一線を画しているだろう。ネット上には「特定の政党からお金をもらって記事を作るのはちょっと……」「自民党がどういった政党なのか一切説明しないまま、『Tシャツプレゼント』で自民党をPRするってどうなの」「何だか読者層の若い女性をバカにしているようにも見える」などと “モヤモヤ”を抱える人が続出。そんな中、いち早くこのタイアップ企画に「おかしい!」と声を上げたのが、かつて「ViVi」に編集スタッフとして携わっていたこともある、編集者でファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏だ。

 軍地氏は同13日、ニュースサイト「HUFF POST」に、「ViViの自民党キャンペーン『#自民党2019』は、読者への裏切りではないのか。 元編集スタッフの私が感じたモヤモヤ。」という記事を寄稿。「ファション雑誌が政治について語ることは大賛成」としつつも、自民党のタイアップ企画は「参院選前のこの時期に、読者にバイアスをかけてしまう」と問題視し、さらに「ViVi」ひいては講談社が、読者や社会に対して、この記事を配信したことの “説明責任”を果たせていない点を厳しく指摘したのだ。

 同記事は、SNSで爆発的に拡散され、あらためて「ViVi」の自民党タイアップの問題点が議論されるとともに、「女性ファッション誌が政治を取り上げること」そのものは賛同できるという声も散見されるようになっている。そこで今回、軍地氏に「もし20代女性ファッション誌で政治を取り上げるなら……」というテーマで話をお聞きした。

 先述した通り、ここ数年、女性ファッション誌が政治をテーマにした企画を組むようになっている。例えば2014年には、「VERY」(光文社)が「お母さんこそ、改憲の前に知憲! 今、改憲が実現したら、将来、戦地に行くのは誰?」、15年には「Seventeen」(集英社)が「17sで考えよう "戦後70年"」、さらに16年には「LEE」(同)が「2016夏 参院選 もしあなたが投票に行かなかったら...」というタイトルの企画を掲載し、それぞれ大きな話題を集めていた。軍地氏は、中でも「VERY」の憲法企画の印象が強かったと語る。

「編集者の仕事というのは、あくまで生活者の目線で、みんながモヤモヤしていたり、疑問を抱いていたり、あえていま口に出して聞けないといった読者の“心のニーズ”を引き出すことだと思うのですが、『VERY』の企画は、しっかりそこを押さえていました。同誌の読者である“お子さんのいる働く女性”目線で、彼女たちがなんとなく窮屈さを感じていることを顕在化して、ちゃんと俎上に上げて論じているのが、よかったと思います。確かに20世紀には、『ファッション誌に政治的なことは入れなくていい』といった風潮があったかもしれませんが、政治は特別のものではなく、本来、国民の生活をよりよくするものです。ファッション誌が『そこを語らないのはおかしい』という見方は当たり前なのではないでしょうか」

 軍地氏は、クリエイティブ・ディレクターとして創刊・運営に携わった「VOGUE GIRL」(コンデナスト・ジャパン)で「震災」のテーマを扱ったこともあり、「生活者目線、読者目線で情報を発信することが何よりも大事」だと感じているという。

 なお「お母さんこそ、改憲の前に知憲!」という企画をめぐっては、掲載号の発売直前、内閣府広報室から「VERY」編集部に、「秘密保護法を特集するのですか。それならうちも取材してくれませんか」という電話がかかってきたという一件もあったと新聞報道されているが、軍地氏は「発売前の雑誌の内容が外部に漏れ、さらに内閣府が介入してきたとあって、とても気持ち悪さを感じたものの、編集部は毅然とした態度で取り合わず、その点も正しかったと思います」と振り返った。

「政治がタブー視される風潮があった理由は、『バランス感覚を保つのが難しいから』なのではないでしょうか。ただ、SNS時代の今、社会的にも『自分の意見を発する』ということが大事になり、タブーを持っていること自体がかっこ悪くなっているように思います。14年、シャネルのファッションショーで、モデルたちが『女性をもっと自由に』などのプラカードを持ち、ランウェイを闊歩したことがありましたが、ほかにもディオールやステラマッカートニー、ヴィヴィアンウエストウッドなど、“メッセージ性を打ち出す”ファッションブランドが増えてきているんです。トランプ政権の誕生によって、世界中に不穏な空気に包まれる中、『声を出すことがかっこいい時代』になってきたと言えるのではないでしょうか」

 そんな軍地氏が今、20代女性ファッション誌で政治を取り上げるとしたら、どのような企画を展開するのだろうか。

「ローラさんや渡辺直美さん、水原希子さんなど、有名人の中にも自分の考え方を発信する女性が出てきていますが、そういった人物へのインタビューを通して、その『カッコよさ』をしっかり見せたいですね。やっぱり、若い世代にものを伝える手段として『カッコよさ』は大事だと思います。これまで、身の回りのさまざまな問題を発信し、注意喚起を行っていくのはメディアが担っていた部分でしたが、今は“影響力のある人物”が担うようになってきました。これからのメディアの仕事は、問題を曲解して俎上に上げるのではなく、発信している有名人たちの声を一緒に伝えることが重要になるとも感じています」

 同時に、「正当で偏りのない“ファクト”を伝える記事も作りたい」と軍地氏。

「まず座談会などで、読者が『世の中にどのようなことを感じているのか』『何を問題に思っているのか』を話し合う。そこでは、政治についてと限定するのでなく、LGBTやフェミニズムの問題など、さまざまな意見が出ていいと思っています。そして、読者が抱いている疑問や問題を『論点』として取り上げて、『未来の年金制度はどうなってると思う?』『消費税が10%になるけど、どう思う?』『もし外国が日本を攻めてきたとしたらどうなると思う?』といったテーマに発展させ、各政党がこれらにどのような立場にいて、どんな取り組みを行っているのか、わかりやすい言葉で客観的に、表などにして見せたいですね」

 偏りのないファクトを重視した企画に軍地氏がこだわるのは、「ViVi」の自民党キャンペーンが、「『自民党』という言葉自体をサブリミナル的に見せている点」を強く問題視したからだという。

「あの企画では、自民党がどういった政党なのかまったく述べられていませんし、Tシャツプレゼントの応募のために『#自民党2019』というハッシュタグをSNSに投稿するように指示している。もし『ViVi』の自民党キャンペーンを知って『選挙に行こう』と思った人がいたとして、政党についてよくわかっていないと、インスタのキャンペーンで見かけた『自民党』という政党名をそのまま投票用紙に書いてしまう可能性も出てくるでしょうし、そういった“誘導”につながることは絶対に避けるべきです」

 「#自民党2019」のハッシュタグが、ゆくゆく世間にどのような影響を及ぼすか――その点を軽く見て、同キャンペーンをコントロールできなかった「ViVi」編集部は、「罪が重い」と軍地氏は言う。講談社広報室は、マスコミの取材に対して「政治的な背景や意図はまったくございません」と回答、その後6月21日をもって同キャンペーンを終了した。

 では軍地氏は、「ViVi」の読者層にもあたる、20代女性の政治意識をどのようにとらえているのだろうか。

「無自覚層と意識の高い層の二極化が進んでいると感じます。昔はテレビや新聞が発信する公の情報が、ある程度末端にまで伝わってきたと思うのですが、今のネット時代では、アルゴリズムによってフィルターバブルが進み、それが無自覚層の拡大につながっているのではないでしょうか。しかし一方で、『今のままじゃいけない』『世の中を変えよう』と考える若い女性も増えてきたと思います。今年『SPA!』(扶桑社)の『ヤレる女子大学生RANKING』が炎上し、20代の女性が、記事に反対する署名運動を起こしましたが、こうした“上の世代が見逃してきたこと”を見逃さずに、声を上げる人が出てきたのです。若い世代の間で新しい秩序が出てきていると思います」

 軍地氏は、20代女性ファッション誌で政治を取り上げるならば、「無自覚層」と「意識の高い層」どちらにも伝わる内容にしたいといい、「“共通言語”を見つけていくのも編集者の仕事」と語る。

「最初に、Twitterで『ViVi』の自民党キャンペーンについて触れた時、私自身、『政治の話をするのはドキドキする』と感じたんです。やっぱり政治について語ると、いろいろな矢が飛んでくるものなので。でも実際は、返ってきた反応のうち、8割は『よく言ってくれた』という意見で、特に女性からのメッセージが多く、その時、『残り2割の“矢”を怖がって何も言わないより、8割の賛同の方を希望だと思わなければいけないな』と強く感じたんです。ファッションはもともと自己表現の一つであり、『私は何者であるのか』『私はどうありたいか』を伝えるもの。そうした前提がある中で、『ファッションと政治は別物』という方が、かっこ悪いと私は思います。ファッション誌の編集者は、今読者が世の中に抱いている疑問や問題を『論点』として取り上げていくべきです」

 取材中、かつて携わっていたファッション誌の編集会議で、「政治経済を扱ったコラムをやりたい」と提案した際、男性の編集長に「女の子ってファッション誌に政治とか求めてないでしょ?」と言われ、驚いたことがあるというエピソードも明かしてくれた軍地氏。これからは、「誰だって、ファッションと同じくらい政治のことだって考えるでしょ」というのが“当たり前”になっていくことを祈りたい。

軍地彩弓(ぐんじ・さゆみ)
編集者、ファッション・クリエイティブ・ディレクター。大学卒業と同時に「ViVi」編集部で、フリーライターとして活動。その後、「GLAMOROUS」「VOGUE GIRL」に携わり、2014年には、自身の会社である「株式会社gumi-gumi」を設立。現在「Numéro TOKYO」のエディトリアルアドバイザーほか、多岐にわたる活動を展開中。

「モンスター母」と「男性中心社会」は無関係じゃない――毒親被害と”男女差”を考える【田房永子×音咲椿対談】

 過干渉な実母のもとを飛び出し、現在は2人の子を育てている田房永子さん。毒親の母を持つ元彼から、一方的に婚約を破棄された経験を『私の彼が毒親から逃れられない!~婚約破棄で訴えてやる・番外編~』(サイゾーウーマン)で描いている音咲椿さん。なぜ、音咲さんの元彼は毒親から逃げられなかったのか。毒親はなぜ、毒親になってしまったのか。田房さんが2歳の男の子を育てている母親の目線で分析する。

■前編はこちら……「毒親被害と「男女差」を考える――彼が切り裂きたかったのは“へその緒”だった

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音咲椿さん(以下、音咲) 毒親から離れられないのは、男女差はありますか? 田房さんはお母さんから逃げたじゃないですか。なぜ男は逃げないんだろうと疑問に思っているんです。田房さんの『うちの母ってヘンですか?』(秋田書店)に、田房さんと生育環境がソックリの男性が「なんだかんだで母はボクを愛してるんで、田房さんとちがって」といったことを語っているのが印象的でした。

田房永子さん(以下、田房) そもそも私の“毒親漫画”は、男性の読者は少ないんですよ。女性は「うちの母親もこうなんです」と話してくれて、私が「それはヤバイですね!」と返したり笑ったりすると、「そうですよね! やっぱヤバいですよね! 話してよかった!」と明るく帰っていく人が多いです。一方、男性の場合は深刻な感じなんです。めちゃくちゃヤバいエピソードを話してくるから私が「それはヤバいですね!」って言うと、逆に暗くなっちゃう。「田房さんは親に愛されていないけど、僕は愛されてはいるんです」と反論されたり。ちょっと違うんだなって思います。

 女性は30代を超えたあたりで、だんだん「お母さんって、私が小学校のときにこんなふうだったんだな」と肌感覚でわかるんですよね。一番大きいのは、性的なこと。「お母さん、この年でスケベなことを考えてたんだな」とか。女性は30代になったらこんなもんだと、母親たちの愚行、女性のどうしようもなさが、許す許さないは別として同じ人間としてわかる。だから、女性のほうがカラッと「うちのお母さん、超ヤバいっすよね」と言えるようになる。一方、男性はずっと「女性は性欲がないんじゃないか」とか、母親に対してちょっと“女神感”を抱いてる感じ。それはファンタジーだと頭ではわかってても、肌ではわからない。そういうことが影響してるのでは?

音咲 なるほど、そうかもしれない……。不思議なのは、実家には弟も同居してたんですが、弟はNを見ているからか、取り込まれないんです。お義母さんも弟には強く出られないんですよ。

田房 それも、長男次男でよくある話だよね。

音咲 でも、弟が留守のときには、お義母さんが部屋を家捜しして「大人のオモチャがあった! 相手の女との写真もある」とNに告げ口するんですね。しかもその話が私にまで来る。

田房 デリカシーがない人は、境界線がないんだよね。たとえばセクハラする人も、自分の世界しか見ていないから、自分が言いたいことを言って、相手がどう思うか考えるという感覚がない。

音咲 母親って、子どもがいくつになっても家捜しするものなんですか?

田房 うちの場合は、小2と2歳だから、私はまだあまりそういう活動はしてないです。隠してたら見たくなっちゃうのかも。もう少し大きくなっても、安全面の問題で親が管理しなければならないこともあるけれど、子どもの前で「これ何?」と言うのはマナー違反だと思う。私、友達の手紙を母が勝手に読んでて、エッチな話を冗談で書いてたら「なんなの!?」ってテンパられて、つらかった。

 想像なんですけど、たとえば子どもが思春期になってエロに関するものを隠していたとしますよね。それを見つけたとき、私が自分の性の感覚を覚えていないとパニックになるかもしれない。でも、自分も中高生のとき、エロいことに興味があったと思い出すことができれば、別に大したことじゃないと気付ける。常に自分の性や思春期の感覚を覚えておいたほうがいいかなと思ってます。

田房 基本的に、親子が対等であることは100%ない。子どもにとって、親はものすごい権力者で脅威の存在。仲が良くても支配者。そこを親自身がわかっていないと、息子がイケメン(大人の男)になったら、あっという間に取り込まれると思う。お義母さんは加害者だけど、お義母さんもなにか誰かの懐に入りたい、胎内に入りたいという思いはあったと思うよ。

音咲 そうそう。お義母さんは、仕事を続けたかったのにお義父さんと結婚したら仕事を辞めさせられて、お義父さんには愛人がいて、子どもだったNに「私はあいつに裏切られた」「あんな汚い男!」と言っていて……。私は、田房さんが新刊で書いていた一文を読んで、お義母さんが許せそうになったんです。

――「私は男性の欲望を目にしすぎてしまったのかもしれない(中略)その自分の傷を自覚し、被害者である自分を自分で認めることをやりきるのがまず、私にとっては『男の子を育てるため』に必要なことだと思った」
(『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』より引用/大和書房)

音咲 「お義母さんは『男に傷つけられた』んだよ、お互い様でしたね」と言ってあげたい。結局、誰が一番悪いかというと、お義父さんだと思うんです。

田房 そうなんだよ。毒母問題は、「家父長制の男性中心社会の問題」なんだよ。

音咲 お義母さんは、2人の息子を育てるために離婚できずに我慢するしかない。それで顔のいい息子を頼りにするしかない……?

田房 息子が彼氏か夫か、わからなくなってるというところはあるでしょうね。子どもに性愛的なものが向かうということは「ない」と思っていたけど、日常から「性愛の対象は大人」と意識していなければ「ある」と思う。みんなそこを話さないし、意識していないから、逆に漏れ出てる感じがする。実際的な性的な行為はなくても、精神的に“彼氏の役割”や“夫の役割”をさせてしまう危険性がある。そういうことをもっと母親学級で言っておかないと、子どもたちが大変。虐待という名前がつかない虐待なんだよね。

 実は全部「女性差別」「女性蔑視」の問題なんだよ。うちのお母さんの性格はなんだろうとどんどん考えていくと、そこに行き着いた。戦後、ものすごい暴力を受けた人たちが一斉に現実社会に帰ってきて、めちゃくちゃ暴れたり夜中に叫んだり、あるいは異常な元気のよさで東京タワーを建てたりして、DVは当たり前、女性は25歳までに結婚しなかったら売れ残りのクリスマスケーキと呼ばれるひどい時代。戦争の後遺症と、それを癒やすための風俗文化の異常な発展がいまだに続いていて、令和になったからといって、何もかも急にクリーンになるわけがない。男の人に傷つけられてきた女性たちから“モンスター母”が生まれるのは、無関係じゃない。

音咲 ……私は特に、九州出身というのもあるかもしれないです。父は母に「自分が稼いでくるから、家事育児をしてほしい」と言って、確かに自分は稼いでくるけど浮気したり。母はおそらく祖母(母にとっては姑)や九州独自の男尊女卑精神に呪いをかけられてたんでしょうね。きっと九州の女性は皆そうだと思います。母は、私や姉に「お父さんには絶対冷たいご飯を出しちゃいけない」と呪いをかけてきた。私もいまだにチンしたご飯をお父さんに出しちゃいけないと思うし、夫になる人にも出しちゃいけないと思ってた。今なら「こっちも忙しいんだから、チンでいいだろ」と思うけど。

田房 その九州的マインドは、N親子に呼応したのかもしれないですね。「私が規格外なんじゃないか」と思っちゃうのも、九州マインドのなせる業かもしれない。

音咲 私も田房さんの新刊を読んで、今までになかったお義母さんに対する親近感というか、「救われてほしい」という気持ちが出てきましたね。

田房 「シスターフッド」ってやつだと思う。女性同士のつながり、目に見えない絆みたいなのはやっぱりあるよね。女性同士だと、たいしたこと言うわけでなくても癒やされたり、スッとしたりということがある。男性に2時間どんなに説明してもわからないことが、女性は5秒くらいで「ああ、わかる」という時がある。敵であっても。

音咲 敵なんだけど同胞……義母が。

田房 そう、同胞だよね。

音咲 なぜあの時義母に寝返ったのか、ずっと彼に聞きたかったんです。でも10年たって、「理由は聞かなくていいな」と思えるようになった。

田房 聞いてもしゃべれないと思うよ。まだ“生まれていない”から、羊水で声が出ない。男性に限らず、女性にもそういう人はいる。「進学する」「就職する」「結婚する」と言う度に、母親から「○○が実現したらしてもいい」と無理難題な条件を出されて、なかなか実家を出られないという女性もいます。本人はお母さんの希望通りにしてあげたいからがんばっちゃう。その女性に「どうしたいのか」と聞いても「どうしよう」と言うだけで答えられない。思考するということを母親から消されているんです。それは娘に自立されると母親が不安になるから。消している母親本人の思考も消えている。

音咲 そこで、思考することが消えていない私が来たから、面倒なことになったんですかね。

田房 それもあると思う。「思考を消して私の懐に入りなさい」ということなんだと思う。

音咲 なるほど……。今日はいろいろと自分の中でストンと落ちました。ありがとうございました!

 

****

田房永子(たぶさ・えいこ)
1978年東京都生まれ。2000年雑誌「マンガエフ」にて漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。
母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行し、ベストセラーに。主な著書に『ママだって、人間』(河出書房新社)、『呪詛抜きダイエット』(大和書房)、『それでも親子でいなきゃいけないの?』(秋田書店)、『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス)、『キレる私をやめたい〜夫をグーで殴る妻をやめるまで〜』(竹書房)などがある。6月22日に大和書房より『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』を刊行。

音咲椿(おとさき・つばき)
男性向けグラビア誌編集長を経て、ポット出版社刊「女の子×女の子のためのエロチックブック・Carmilla」にてイラスト・漫画家デビュー。
単行本「イケメン外国人たちとベッドで異文化交流した結果。」(ぶんか社刊)好評発売・配信中。
マンガ「『こんな大きいなんて聞いてない!』~外国人と異文化SEX、ヤりまくりました。」「婚約破棄で訴えてやる!~毒親持ち彼氏と167日間壮絶バトル~」配信中。


音咲椿さんの作品『婚約破棄で訴えてやる!』は、電子書籍にてご覧いただけます。
連載中の番外編はこちら

★★★各電子書店にてお買い求めいただけます★★★

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「モンスター母」と「男性中心社会」は無関係じゃない――毒親被害と”男女差”を考える【田房永子×音咲椿対談】

 過干渉な実母のもとを飛び出し、現在は2人の子を育てている田房永子さん。毒親の母を持つ元彼から、一方的に婚約を破棄された経験を『私の彼が毒親から逃れられない!~婚約破棄で訴えてやる・番外編~』(サイゾーウーマン)で描いている音咲椿さん。なぜ、音咲さんの元彼は毒親から逃げられなかったのか。毒親はなぜ、毒親になってしまったのか。田房さんが2歳の男の子を育てている母親の目線で分析する。

■前編はこちら……「毒親被害と「男女差」を考える――彼が切り裂きたかったのは“へその緒”だった

****

音咲椿さん(以下、音咲) 毒親から離れられないのは、男女差はありますか? 田房さんはお母さんから逃げたじゃないですか。なぜ男は逃げないんだろうと疑問に思っているんです。田房さんの『うちの母ってヘンですか?』(秋田書店)に、田房さんと生育環境がソックリの男性が「なんだかんだで母はボクを愛してるんで、田房さんとちがって」といったことを語っているのが印象的でした。

田房永子さん(以下、田房) そもそも私の“毒親漫画”は、男性の読者は少ないんですよ。女性は「うちの母親もこうなんです」と話してくれて、私が「それはヤバイですね!」と返したり笑ったりすると、「そうですよね! やっぱヤバいですよね! 話してよかった!」と明るく帰っていく人が多いです。一方、男性の場合は深刻な感じなんです。めちゃくちゃヤバいエピソードを話してくるから私が「それはヤバいですね!」って言うと、逆に暗くなっちゃう。「田房さんは親に愛されていないけど、僕は愛されてはいるんです」と反論されたり。ちょっと違うんだなって思います。

 女性は30代を超えたあたりで、だんだん「お母さんって、私が小学校のときにこんなふうだったんだな」と肌感覚でわかるんですよね。一番大きいのは、性的なこと。「お母さん、この年でスケベなことを考えてたんだな」とか。女性は30代になったらこんなもんだと、母親たちの愚行、女性のどうしようもなさが、許す許さないは別として同じ人間としてわかる。だから、女性のほうがカラッと「うちのお母さん、超ヤバいっすよね」と言えるようになる。一方、男性はずっと「女性は性欲がないんじゃないか」とか、母親に対してちょっと“女神感”を抱いてる感じ。それはファンタジーだと頭ではわかってても、肌ではわからない。そういうことが影響してるのでは?

音咲 なるほど、そうかもしれない……。不思議なのは、実家には弟も同居してたんですが、弟はNを見ているからか、取り込まれないんです。お義母さんも弟には強く出られないんですよ。

田房 それも、長男次男でよくある話だよね。

音咲 でも、弟が留守のときには、お義母さんが部屋を家捜しして「大人のオモチャがあった! 相手の女との写真もある」とNに告げ口するんですね。しかもその話が私にまで来る。

田房 デリカシーがない人は、境界線がないんだよね。たとえばセクハラする人も、自分の世界しか見ていないから、自分が言いたいことを言って、相手がどう思うか考えるという感覚がない。

音咲 母親って、子どもがいくつになっても家捜しするものなんですか?

田房 うちの場合は、小2と2歳だから、私はまだあまりそういう活動はしてないです。隠してたら見たくなっちゃうのかも。もう少し大きくなっても、安全面の問題で親が管理しなければならないこともあるけれど、子どもの前で「これ何?」と言うのはマナー違反だと思う。私、友達の手紙を母が勝手に読んでて、エッチな話を冗談で書いてたら「なんなの!?」ってテンパられて、つらかった。

 想像なんですけど、たとえば子どもが思春期になってエロに関するものを隠していたとしますよね。それを見つけたとき、私が自分の性の感覚を覚えていないとパニックになるかもしれない。でも、自分も中高生のとき、エロいことに興味があったと思い出すことができれば、別に大したことじゃないと気付ける。常に自分の性や思春期の感覚を覚えておいたほうがいいかなと思ってます。

田房 基本的に、親子が対等であることは100%ない。子どもにとって、親はものすごい権力者で脅威の存在。仲が良くても支配者。そこを親自身がわかっていないと、息子がイケメン(大人の男)になったら、あっという間に取り込まれると思う。お義母さんは加害者だけど、お義母さんもなにか誰かの懐に入りたい、胎内に入りたいという思いはあったと思うよ。

音咲 そうそう。お義母さんは、仕事を続けたかったのにお義父さんと結婚したら仕事を辞めさせられて、お義父さんには愛人がいて、子どもだったNに「私はあいつに裏切られた」「あんな汚い男!」と言っていて……。私は、田房さんが新刊で書いていた一文を読んで、お義母さんが許せそうになったんです。

――「私は男性の欲望を目にしすぎてしまったのかもしれない(中略)その自分の傷を自覚し、被害者である自分を自分で認めることをやりきるのがまず、私にとっては『男の子を育てるため』に必要なことだと思った」
(『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』より引用/大和書房)

音咲 「お義母さんは『男に傷つけられた』んだよ、お互い様でしたね」と言ってあげたい。結局、誰が一番悪いかというと、お義父さんだと思うんです。

田房 そうなんだよ。毒母問題は、「家父長制の男性中心社会の問題」なんだよ。

音咲 お義母さんは、2人の息子を育てるために離婚できずに我慢するしかない。それで顔のいい息子を頼りにするしかない……?

田房 息子が彼氏か夫か、わからなくなってるというところはあるでしょうね。子どもに性愛的なものが向かうということは「ない」と思っていたけど、日常から「性愛の対象は大人」と意識していなければ「ある」と思う。みんなそこを話さないし、意識していないから、逆に漏れ出てる感じがする。実際的な性的な行為はなくても、精神的に“彼氏の役割”や“夫の役割”をさせてしまう危険性がある。そういうことをもっと母親学級で言っておかないと、子どもたちが大変。虐待という名前がつかない虐待なんだよね。

 実は全部「女性差別」「女性蔑視」の問題なんだよ。うちのお母さんの性格はなんだろうとどんどん考えていくと、そこに行き着いた。戦後、ものすごい暴力を受けた人たちが一斉に現実社会に帰ってきて、めちゃくちゃ暴れたり夜中に叫んだり、あるいは異常な元気のよさで東京タワーを建てたりして、DVは当たり前、女性は25歳までに結婚しなかったら売れ残りのクリスマスケーキと呼ばれるひどい時代。戦争の後遺症と、それを癒やすための風俗文化の異常な発展がいまだに続いていて、令和になったからといって、何もかも急にクリーンになるわけがない。男の人に傷つけられてきた女性たちから“モンスター母”が生まれるのは、無関係じゃない。

音咲 ……私は特に、九州出身というのもあるかもしれないです。父は母に「自分が稼いでくるから、家事育児をしてほしい」と言って、確かに自分は稼いでくるけど浮気したり。母はおそらく祖母(母にとっては姑)や九州独自の男尊女卑精神に呪いをかけられてたんでしょうね。きっと九州の女性は皆そうだと思います。母は、私や姉に「お父さんには絶対冷たいご飯を出しちゃいけない」と呪いをかけてきた。私もいまだにチンしたご飯をお父さんに出しちゃいけないと思うし、夫になる人にも出しちゃいけないと思ってた。今なら「こっちも忙しいんだから、チンでいいだろ」と思うけど。

田房 その九州的マインドは、N親子に呼応したのかもしれないですね。「私が規格外なんじゃないか」と思っちゃうのも、九州マインドのなせる業かもしれない。

音咲 私も田房さんの新刊を読んで、今までになかったお義母さんに対する親近感というか、「救われてほしい」という気持ちが出てきましたね。

田房 「シスターフッド」ってやつだと思う。女性同士のつながり、目に見えない絆みたいなのはやっぱりあるよね。女性同士だと、たいしたこと言うわけでなくても癒やされたり、スッとしたりということがある。男性に2時間どんなに説明してもわからないことが、女性は5秒くらいで「ああ、わかる」という時がある。敵であっても。

音咲 敵なんだけど同胞……義母が。

田房 そう、同胞だよね。

音咲 なぜあの時義母に寝返ったのか、ずっと彼に聞きたかったんです。でも10年たって、「理由は聞かなくていいな」と思えるようになった。

田房 聞いてもしゃべれないと思うよ。まだ“生まれていない”から、羊水で声が出ない。男性に限らず、女性にもそういう人はいる。「進学する」「就職する」「結婚する」と言う度に、母親から「○○が実現したらしてもいい」と無理難題な条件を出されて、なかなか実家を出られないという女性もいます。本人はお母さんの希望通りにしてあげたいからがんばっちゃう。その女性に「どうしたいのか」と聞いても「どうしよう」と言うだけで答えられない。思考するということを母親から消されているんです。それは娘に自立されると母親が不安になるから。消している母親本人の思考も消えている。

音咲 そこで、思考することが消えていない私が来たから、面倒なことになったんですかね。

田房 それもあると思う。「思考を消して私の懐に入りなさい」ということなんだと思う。

音咲 なるほど……。今日はいろいろと自分の中でストンと落ちました。ありがとうございました!

 

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田房永子(たぶさ・えいこ)
1978年東京都生まれ。2000年雑誌「マンガエフ」にて漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。
母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行し、ベストセラーに。主な著書に『ママだって、人間』(河出書房新社)、『呪詛抜きダイエット』(大和書房)、『それでも親子でいなきゃいけないの?』(秋田書店)、『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス)、『キレる私をやめたい〜夫をグーで殴る妻をやめるまで〜』(竹書房)などがある。6月22日に大和書房より『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』を刊行。

音咲椿(おとさき・つばき)
男性向けグラビア誌編集長を経て、ポット出版社刊「女の子×女の子のためのエロチックブック・Carmilla」にてイラスト・漫画家デビュー。
単行本「イケメン外国人たちとベッドで異文化交流した結果。」(ぶんか社刊)好評発売・配信中。
マンガ「『こんな大きいなんて聞いてない!』~外国人と異文化SEX、ヤりまくりました。」「婚約破棄で訴えてやる!~毒親持ち彼氏と167日間壮絶バトル~」配信中。


音咲椿さんの作品『婚約破棄で訴えてやる!』は、電子書籍にてご覧いただけます。
連載中の番外編はこちら

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毒親被害と「男女差」を考える――彼が切り裂きたかったのは“へその緒”だった【田房永子×音咲椿対談】

 『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)ほか著書で、29歳のときに縁を切った母親との葛藤を描き、コミックエッセイで初めて「毒親」と呼ばれるジャンルを生み出し『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』(大和書房)を6月22日に刊行した田房永子さん。元彼の母が毒親で、一方的に婚約を破棄された経験を『私の彼が毒親から逃れられない!~婚約破棄で訴えてやる・番外編~』(サイゾーウーマン)で描いている音咲椿さん。音咲さんの元彼が毒親から逃げられなかったのはなぜか。毒親との関わり方に性差はあるのか。旧知の仲の2人が語り合った。

***

田房永子さん(以下、田房) 音咲さんの元彼・Nさんって、2、3回会ったことがあるけど、どイケメンですよね!

音咲椿さん(以下、音咲) きれいな顔ですよね(笑)。でも残念な結果になってしまいました。決定的な事件は、お義母さんが「同居しろ」と言い出したことだったんです。私も彼も「同居はしない」と団結していたはずでした。なのに、いつの間にかNは寝返っていて……以来、彼に電話をしても着信拒否。すでに2年も同棲していたのだから、普通なら別れるときは2人で話し合って別れると思うんですが、一切なにも言わず、一方的に婚約破棄されました。

音咲 納得がいかず調停を起こしたら、お義母さんから「お宅とは婚約していませんから」と、“何もなかった”ことになって。お義母さんは「いますぐ50万円払え」といった無理難題を要求してきたり、彼の仕事(エロ漫画家)について「汚らわしい」と暴言を吐いたり……。彼が仕事できないくらい、ひどい状況だったんです。だから彼も、お義母さんから絶対に離れたいはずと思っていたのに、結局離れなかった。

田房 その手のお母さんって、かぐや姫みたいにありえない要求を課してくるよね。本当は50万円なんてどうでもいいんですよ。それは罠。Nさんが音咲さんのほうに行かないようにしているだけ。「自分のところにいなさい」という脅しだと思うよ。

音咲 やっぱりそうなんだ!? お義母さんは、『母がしんどい』のエイコのお母さんと似ていると思うんですよ。お義母さんは、以前は私を自分の実家の墓参りにまで連れていってくれて。「大好き!」「あなたは家族の一員ね」という感じで、接してくれていたんです。

田房 お義母さんが音咲さんのことを「好き好き」と言ったのは、「私の懐に入りなさい」と同じ意味だと思うよ。自分が知らないところで、Nさんと音咲さんが仲良くしているのは嫌。両方とも単独で自分が手に入れたい。でもその気持ちを自覚しているわけではないから、ハチャメチャなことになる。そういう人はその場の衝動と不安に突き動かされていて、心の中は常にパニック。だから他人を引っかき回す一方で、「お嫁さんと仲良く出かける義母でありたい」という思いもあって、周りは惑わされるんです。私の母もそういう感じだった。

田房 でも、今はお互い年を取ったのと、私が離れたことによって母もいろいろ考えたのかわからないけど、変わりましたね。離れることは重要。その人のパニックに巻き込まれている最中に「お互い落ち着きましょう」と言うのは無理だから。まず離れて、お互いが自分の本当の心を見つめる。その作業には10年くらいかかるんですよ。

音咲 私も10年間、怒りと悲しみがすごかった……。なぜあそこまでお義母さんに憎まれなければならなかったのか、今もわからないです。

田房 音咲さんの人格は関係ないよー。私が悪かったとか、落ち度があったとか思う必要はまったくないから。彼がお義母さんと離れられないのは彼の問題だし、音咲さんは100%被害者。そういう人に巻き込まれてしまう要素はあるかもしれないけど、それは、自分の心が回復したあとで考えること。

音咲 “理想の嫁”じゃなかったのかなとか、考えてしまうんです……。

田房 “理想の嫁”なんか、ないないない!

音咲 Nのことがすごい好きだったのに、2人で生活した2年間、交際期間を入れると3年間を“何もなかった”ことにされたことがすごく悲しくて、受け入れられなくて。しかも、お義母さんから調停で「バカ女」と追い掛けられて、殺されてもおかしくない状況。2018年に、息子が妻を殺して母親と死体を遺棄した事件があったでしょう。あれ、私だったかもしれないと思った。

田房 心理的にはそれ(殺人)が起こってるんだよ。肉体的には殺されていないけど、彼らの世界のなかでは「殺さなければならない」ということだったのだと思う。

音咲 すごかったのが、Nとお義母さんのけんか。お義母さんが「同居しろ」と言ってきたときに、Nは「絶対に嫌だ」と言って電話をずっと無視していたんです。そしたら、お義母さんが私たちの家に押しかけてきたんですね。詳細はマンガに描きますが、渡していない家の鍵まで手に入れてて。それを知ったNが「殺してやる」と包丁を出して玄関に走って、「これはヤバい」と思った瞬間、お義母さんがドドドドッと入ってきた。

田房 ええ~! 怖い! なぜ!? 内側からもチェーンロックはしてたんですよね?

音咲 Nがロックを外しちゃったんです……。最終的には、義母がNに「許してあげる」と言って終わりました。

田房 オマエが引っかき回しておいて、何を許すんだという話。

音咲 私はそのとき、親子げんかで包丁が出てくるなんて、結婚したら今度は私に刃が向かってくる!? と思って、怖くなってしまって。

田房 その時Nさんが包丁で切ろうとしたもの、それは「へその緒」ですよ。Nさんはまだ胎児で、お義母さんのお腹の中にいるような状態。成人している子どもを「胎児扱い」するお母さんっているんだよね。子どものほうはいつまでもお腹の中にいられないから、自分の母親はこういう人だと認めて、自力で生まれないとならない。だから、Nさんは「へその緒」を包丁で切ろうとした。内側からの帝王切開。本気で殺したいと思ったんじゃないと思う。その視点で考えるともしかしたら、当時のNさんは、自分の母よりもっと強い女の人に救い出してほしかったんじゃないかな……。代理母ではないけど、音咲さんの子宮・羊水を貸してもらって、僕を「生んでくれ」というような。彼にとってはそういうレベルの戦いだったんじゃないかな。

田房 私も、Nさん側として自分を振り返ると、自力で生まれるのってすごく難しかった。家出して当時の彼氏の家に転がり込んで、寄生させていただくみたいな感じで、依存先が必要だった。いきなり母親と1対1の尊重し合える関係にはなれない。いったんどこかで、「母親以外の胎内に入ってから、生まれる」という作業が必要な気がする。でも、それって殺し合いになるよね。お義母さんにしてみれば、自分の赤ちゃんを取られることだから憎いでしょう。

音咲 別れてから10年たって、今は心の整理がだんだんついてきたんですけど、3年ほど前まではフラッシュバックする憎悪でパニックになるたび、50代の精神科医のボーイフレンドに向かって、ひどい暴言を吐いていました。精神科医だからどうにかしてくれるんじゃないかとすがる気持ちもあって。絶対、そんなことないんですけどね。それであるときにふと「自分もお義母さんと同じことしてる」と思ったんです。過去にNが「君って僕のお母さんに似てるんだよね」とニコニコして言っていたのを思い出しました。

田房 その言葉、めちゃくちゃ怖いね。

音咲 Nに言われて一番ショックだったのは、「ドイツで3カ月芸術の勉強したい」と言ったら、すごく怖い顔して「君は僕の奥さんになる人なのに!?」と言ったことですね。普段は「勉強したい」という私が好きだと言っていたんですよ。きれい事ばかり言ってるわりには、やっぱり縛り付けるんだと思った。彼の後ろにはお義母さんがいるんです。「そんなことしたら、うちの母がなんて言うかわからない」「そんなお金があることが母に知れたら、どう思われるか」と。私が稼いだ金で行くのに。

田房 たった3カ月でしょう? 30年行ってくるわけじゃないし。しかもまだ結婚していないカップルだし。

音咲 もともと寛容に繕ってたのかもしれないですね。結局、Nは私にも好かれたいし、お義母さんにも好かれたかった。その狭間で揺れていたのかもしれない。Nの口からどうしてこんなことになったのか直接聞きたかったけど、調停にも親子3人で来たんです。調停って、本人ひとりしか入れないにもかかわらずですよ。それでも「中に入れろ!」と調停員とモメていました。私は弁護士を立てたんですが、弁護士との話し合いにも3人で来たそうです。弁護士さんに「彼はなんて言ってました?」と聞いたら、「一言もしゃべらなかったですね。お義母さんがしゃべって終わり」と。「今後一切かかわらない」という合意書にはNの名前が書いてあったんですが、それはお義母さんが「こう書いて」と指示していたそうです。

田房 “ささやき女将”みたい。すごいね(笑)。

音咲 そう、全部お義母さんのいいなり。ただ、慰謝料の振り込みの名義人はNでした。

<後編に続く・6月26日公開予定>


音咲椿さんの作品『婚約破棄で訴えてやる!』は、電子書籍にてご覧いただけます。
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精神科医が語る「引きこもり」に見られる6つの精神状態と、「犯罪者予備軍」の論調が危険なワケ

 「引きこもりは犯罪者予備軍」――ここ最近、メディアではそんな論調のニュースが目立っている。5月28日、神奈川県・川崎の登戸駅付近の路上で、スクールバスを待っていた私立カリタス小学校の児童や保護者らが、51歳の男に相次いで刺され、19人が死傷するという痛ましい事件が起こった。加害者である岩崎隆一容疑者は自ら首を切って自殺し、現在警察が、動機の解明を進めている。

 そんな中、メディアでは、岩崎容疑者が長年、引きこもり状態にあったことに着目。幼い時に両親が離婚、伯父夫婦と同居するようになり、事件当時も80代の伯父夫婦と3人で暮らしていたが、「コミュニケーションはまったくない」状態だったと、こぞって報じた。

 こうした中、6月1日には、元農林水産省事務次官・熊沢英昭容疑者が、引きこもり状態にあった44歳の息子を殺害するという事件も発生。家庭内で暴力を振るっていた息子が、「小学校の運動会がうるさい」と言い出したことで口論になり、殺害に及んだとみられ、熊沢容疑者は、「川崎市登戸の事件が頭に浮かび、同じようにならないように考えた」といった趣旨の供述もしているそうだ。

 熊沢容疑者の事件は、「引きこもりは犯罪者予備軍」というニュース報道が少なからず影響したという見方もあり、世間ではメディアに対して「引きこもりの当事者や家族を追い詰めないで」といった批判の声が飛び交うことに。しかし一方で、「引きこもり状態の人が凶悪事件を起こしたということに違いはない」といった指摘も出ている状況だが、これまで多くの引きこもりの当事者やその家族と接してきた精神科医は、「引きこもりは犯罪者予備軍」という意見をどう見るのか。『怖い凡人』(ワニブックス)や『一億総他責社会』(イースト・プレス)などの著者である精神科医・片田珠美氏に話を聞いた。

「最初に言っておきたいのは、テレビや週刊誌が『引きこもりは犯罪者予備軍』といった論調で報道するのは、よくないということです。引きこもり状態の方を余計追い詰めてしまうと思います」

 第一声、そうきっぱり断言した片田氏は、続けて、「これまでの私の臨床経験に基づいて、引きこもりの方の精神状態について話したいと思います」と言い、“6つの特徴”を挙げてくれた。

「1つ目が、『強い怒りと恨み』、場合によっては『復讐願望』も抱いているという点です。みんながみんなそうではありませんが、“いじめ”が引きこもりのきっかけになったケースは多く、いじめの加害者等に怒りと恨みを抱いていることは珍しくありません。例えば、熊沢容疑者の息子さんも、名門の駒場東邦中学校2年生のときにいじめに遭っていたと報じられています。その際、転校するなどの選択肢もあったと思うのですが、父親である熊沢容疑者はキャリア官僚ですから、息子にも同レベルの学歴と職業を親が望み、転校を許さなかったのかもしれません。実際に、家庭内暴力もあったそうですし、いじめの加害者だけでなく、親に対しても強い怒りと恨み、復讐願望を抱いていたのではないかと考えられます」

 熊沢容疑者の息子は、Twitterで「愚母はエルガイムMK-II(編註:プラモデル)を壊した大罪人だ」「私が勉強を頑張ったのは愚母に玩具を壊されたくなかったからだ」「中2の時、初めて愚母を殴り倒した時の快感は今でも覚えている」などとツイートしており、これらからは、母親に対する憎悪がありありと見て取れる。

「10代の頃にいじめに遭ったとしても、年を重ねると新たな人間関係ができ、日々の生活や仕事などで忙しくなって、過去のことにかまけていられなくなるものですが、引きこもり状態だと『あの時あんなことをされた』といったことを思い出し、怒りや恨み、そして復讐願望が募っていくことはあるでしょう。退職がきっかけとなって引きこもりになるケースも同様で、『過酷な仕事を与えられた』『パワハラに遭った』などと、怒りや恨み、復讐願望を抱いていることがあります」

 2つ目は「自尊心が傷つき、絶望感を持っている」という特徴で、「敗北感を抱え、それを逆転したいと思っている人もいます」とのこと。3つ目は「対人関係への恐怖」で、これは先に示したように、いじめやパワハラによる影響もあると考えられるという。4つ目は「欲求不満」。家にずっといて将来への希望を持てないせいで、不満やストレスがたまった状態にあり、「家族に暴力を振るうことにもつながる」そうだ。

 5つ目は「将来への不安」で、これは「長期化すればするほど強くなっていく」そうだ。事実「特定非営利活動法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が発表した「2016年度ひきこもりに関する全国実態アンケート調査の報告」では、「家族調査、本人調査ともに、40歳以上の場合は40歳未満の場合よりも、現在および5年後に対する家族の不安が高いことが示されました。また、現在に対する不安よりも5年後に対する不安の方が高いことが示されました」と示されている。

「6つ目は『孤立』。当事者はもちろん、その親も孤立感を強く感じるようになります。子どもが引きこもり状態になることを、『恥』と感じ、近所づきあいや親せきづきあいを断ってしまい、親まで引きこもりがちになってしまうケースもあります」

 片田氏が挙げた「引きこもり当事者の精神状態」の特徴は、犯罪につながることもあり得ると感じさせるものだ。ともすると「引きこもりは犯罪者予備軍」の説は正しいことになる気もするが……。

「確かに先ほど挙げた、強い怒りと恨み、復讐願望、また敗北感からの一発逆転を望むといった、引きこもり当事者にみられる精神状態の特徴が、凶悪事件につながる可能性はあるでしょう。しかし、そういった精神状況だとしても、実際には犯罪に走らない人の方が大多数です。そもそも、引きこもり状態ではない人でも、強い怒りや復讐願望などを抱いている場合もあります。大事件を起こすかどうかは、最後の引き金となる『きっかけ』の有無によって決まることが多い。例えば、川崎殺傷事件の場合では、伯父夫妻の手紙が、一つのきっかけになったのではないかと私は考えています」

 伯父夫妻は、岩崎容疑者の将来を心配し、川崎市精神保健福祉センターに複数回相談の電話をかけており、今年1月には、市の提案を受けて、部屋の前に手紙を置いたという。その中にあった「引きこもり」という言葉に、岩崎容疑者は「自分のことは、自分でちゃんとやっている。食事や洗濯を自分でやっているのに、引きこもりとはなんだ」と激高したと報じられている。

「岩崎容疑者は、伯父夫婦と食事や入浴の時間をずらすことで、ほとんど接触せず、絶妙な距離感を保って生活していたそうです。そして自分が引きこもりであることを否認していた。しかし、あの手紙で、自分が引きこもり状態とみなされているという現実に直面し、『これまでのような生活ができなくなる』と、岩崎容疑者は思ったのではないでしょうか。それが犯行の引き金となった可能性も考えられます」

 「引きこもりは犯罪者予備軍」という偏見に満ちた視線自体が、当事者を追い詰め、「犯行の引き金」になり得る可能性もあると片田氏。当事者だけでなく「社会のためにも、メディアはこうした表現は避けるべきです」。

 片田氏は、引きこもりの当事者に「自立しなさい」「仕事をしなさい」と言うことも、「彼らを追い詰めてしまう可能性がある」と指摘する。

「精神科医としての長年の臨床経験から言って、10年以上引きこもり状態にある40~50代の方が再び就労するのは、極めて難しいと感じるところはあります。もちろん、みんながみんなそうではなく、就労を目指して頑張っている人もいれば、実際に就労できた人もいるでしょう。私もそうなってほしいとは思うのですが、現実問題としてはかなり厳しい。何としても自立や就労を目指そうとすると、本人に大きなプレッシャーがかかる恐れがあります。ですから、引きこもり状態を続けながら、経済的な問題をどうするのかを考えていく方が現実的ではないでしょうか」

 また、追い詰められるのは当事者だけではない、その家族も同様だ。熊沢容疑者が息子を殺害した事件は、まさにその象徴のように見える。

「家族を追い詰めること自体も問題ですが、そもそも熊沢容疑者は、子どもを自分の所有物と考える『私物的我が子観』の持ち主だったのではないでしょうか。だからこそ、『自分の子どもなんだから、自分で始末すべき』と考え、犯行に及んでしまったわけです。こうした『私物的我が子観』の親を追い詰めると、我が子を道連れにした無理心中を誘発しかねません。また、もしかしたら熊沢容疑者のご家庭では、『いい学校を出て、いい会社に入ること』を良しとする勝ち組教育を行っていたのかもしれません。勝ち組教育が行き過ぎると、一度つまずくと立ち直れなくなり、子どもも親も追い詰められてしまいます」

 引きこもりの当事者も、その家族も、決して追い詰めてはいけない――片田氏は繰り返しその重要性を口にしていた。内閣府が今年3月に発表した調査結果によれば、40~64歳までの中高年の引きこもり数は61万3000人にのぼるという。二度と悲劇が繰り返されないように、社会全体で引きこもりをめぐる構造的問題に関心を向け、理解する必要があるのではないだろうか。

Twitterで話題の元ウリセンボーイ・カマたくさんが、ゲイや風俗嬢の悩み相談をぶった斬り!

 Twitterで人気を博す、元ウリセンボーイで現在歌舞伎町のバーの店長を務めるカマたくさん。生い立ちやゲイというアイデンティティ、今後のことなど、『男娼』(光文社)著者・中塩智恵子さんが聞きました。

前編はこちら

■生い立ち

中塩智恵子さん(以下、中塩) 家族構成は、ご両親と……。

カマたくさん(以下、カマたく) あと姉がいます。父親はすごい酒乱で、ギャンブルもDVもする人でした。暴力は日常的にありました。でも、どっちかというと私たちよりは母親に対してでしたね。ほぼ毎日、怒鳴るとかは当たり前で、殴るのも普通でしたね。

中塩 子どもながらに、どう思って見ていました?

カマたく 「クソだなぁ」って思っていましたね。嫌いでしたし、別に憎んではないですけど、どうでもいいって感じです。

中塩 たまにその暴力の矛先が、子どもにも向くんですよね?

カマたく たまにありましたね。袋に詰められて、生ゴミと一緒に捨てられたりしてました。それで近所の人に助けてもらったり。お酒を飲むとそうなるんです。お酒飲まないと別にそこまではしないですけど、毎日飲むんで、飲んだらもう大変。どうしようもないですよ。多分アル中。仕事はしていたんですけど。

■ 「ゲイですけど、だから何?」理解してもらおうとまでは思わない

中塩 カマたくさんは男性が好きなことに、いつ頃から気づいていたのでしょう?

カマたく 小学校くらいから、なんとなく。おすぎとピーコあたりは、テレビに出てたじゃないですか。だから「こういう人種もいるんだな、じゃあ俺はこれだ」という感じで、疑問に思ったことはないです。「私は人とちょっと違うんだ」くらいです。だから、ゲイであることを隠したことがないです。中学の頃、学級会みたいな場で同級生に言いました。

中塩 どのように言ったんですか?

カマたく その頃は女の子も好きだったので、「両方好きでーす」と。

中塩 周りは、どんな反応でしたか?

カマたく 「ええええ〜!」という感じでした。たぶん差別とか偏見という心が生まれる前に、私が言っちゃったので、ゲイだという感覚よりも、「こいつはそういうやつ」という感じだったと思います。それによって、イジメもなかったわけではないですけど、別にそんなにひどいイジメはなかったですね。

中塩 今の10代に話を聞いてみると、自分が性的マイノリティだと気づくと、早いうちにカミングアウトする人が結構いますよね。それが可能な環境が出来上がりつつあるのだなと、聞いていて実感します。ところで、カマたくさんの動画は、「おカマでーす」という出だしで必ず始まりますよね。あれは何か意図があるのでしょうか? おカマは差別語だと反応する方も多いですが。

カマたく なんかそのほうが伝わりやすくないですか? 「おカマでーす」の時点で、わかりやすいじゃないですか。細かく分けたらゲイとかバイとか、いろいろあるんですけど、面倒くせぇから、おカマでよくないですか? なんとなく伝わるでしょう。女装さんだと見た目でわかるじゃないですか。こういう嗜好の方なんだなと。でも、私はしゃべらなかったらわかんないので、言ったほうが嘘つかなくていいし、楽なんですよ。そんなに別に深く考えてないです。差別語だとか。

中塩 自分のセクシュアリティに悩んでいる子には、どういうアドバイスをしますか?

カマたく もう開き直ったほうがいいです。人生開き直って、「ゲイですけど、だから何?」ぐらいのスタンスで生きたほうがいいと思う。同性愛だからといって迫害するのはよくないですよ。暴力とか、パワハラとか、会社クビにされちゃうとかは確かに問題ですけど。要は好き嫌いでしょ? 「ゲイだから嫌い」「あ、そっか〜、そうだよね」で終わりなんですよ。生理的にどうしても好きになれない人っているじゃないですか。それと同じなので、それは別にしょうがなくないですか? 理解してもらおうとまでは思わないので。

中塩 理解は得ようとしていないけど、案外身近に同性愛者やトランスジェンダーは存在しているということを知ってもらって、もし嫌いならば放っておいてくれ、みたいな感じ?

カマたく アドバイスもクソもないというか、「あなたはあなたでしょ」って思うし。「心を強く持て」とか「自信を持ってとか、そういう概念がいらないです。あんたはあんたでしょ、以上。自信があるとかないとか、概念があるから落ち込むんですよ。

 あんたはあんたで生きりゃいいでしょ。嫌われたからなんなの? 何やってもどうせ嫌われんだから。すごい好感度の高い人、渡辺直美のことだって嫌いな人も多分いるんですよ。どう頑張っても皆に好かれることなんて無理。そんなの気にしてたら面倒くさい。友達なんて1人か2人いればよくないですか? それ以上何を求めるのかわからないです。私は私で生きます、以上。本当、そう思います。

中塩 言いきるカッコよさは頼もしいですよね。お店でお客さんから、恋の悩みとかを相談されるんじゃないですか?

カマたく されますね。泣いて帰る子もたまにいますよ。「なに泣いてんの? 帰れば?」って言って帰らせるんですよ。「邪魔なんだよね、席埋めないで」とか言って。めっちゃそういうこと言います。

中塩 本当ですか? でも、言われたほうは、それで「ありがとうございます」とか言っちゃう?

カマたく そういう人が多いですね。ズバズバ言いすぎて、逆に笑えるんですよ。「時間の無駄だね、そんなの」「なにしてんの、バカじゃん」って言われるのが好きで来る。逆に怒られたいみたいな子が多いです。たぶん言ってくれる人がいないんでしょうね。私、その場しのぎの優しさって嫌いなんですよ。「そんなことないよ」「大丈夫だよ」とか言えないんですよ。きっと今、あんまり怒られない人のほうが多いと思うんですよね。

中塩 そういうご時世、カマたくさんのようにズバッとバシッと言ってもらったら……。

カマたく 「気持ちいい」って言われます。うちの店に来る子は、嘘っぽいこと言われるよりは、ズバッと本当のこと言ってくれたほうが気楽という子のほうが多いです。

中塩 いろいろ辛酸を舐めてきたから、たぶん説得力もあるんでしょうね。

カマたく そうですね。やっぱり歌舞伎町は風俗嬢さんが多いので、お客さんも風俗嬢さんが多い。「向いてないから辞めれば? 昼職行ったほうがいいよ」とか、めっちゃ言うんです。

中塩 例えばどういう相談で、そういう答えになるんですか?

カマたく だいたいホストに狂ってたり、誰かに依存していたりするんですけど、相手にお金を使ってるのに病むんですよ。「金使って病むって、なんのために働いてるの? 今すぐ辞めちまえ」って言ってスマホを取り上げて、相手のLINEとかもブロックするんです。「もうこいつ消せばいいじゃん」と、その場でブロックします。連絡先もトーク履歴も全部消してます。

中塩 「キャー、消さないで!」とか言われないですか? それはちょっと恨まれそう(笑)。

カマたく 泣く子とかはいますよ。「バカじゃないの? 泣くぐらいなら最初からやるんじゃねぇよ」とか言っちゃう。でも、そういう子は2〜3カ月後に「あぁ〜、よかった。やめて」って言うんですよ、絶対。

中塩 そうなんですね。

カマたく それで、昼職になったり、彼氏できてたり、幸せになってて、「バイバイ〜よかったね〜」で終わりです。お店には来なくなっちゃいますけど、別にそれでいいです。彼女の人生なので、来たければ来りゃいいし、来たくなければ来なきゃいい。満足してるから来なくなるんですよ。満足してないから、飲み屋に発散しに来る。それでいいんじゃない? 忘れた頃にまた来れば。

中塩 風俗嬢は、いろいろ思い悩んでいる時にカマたくさんのところに行くのがいいですね。

カマたく 私、思ったことしか言わないんですよね。ここでぐちぐち言ってても、何も変わらない。結局決めるのは自分なので、私が何か言ったところで、何もやらないやつはやらない。「やらないんだったら時間の無駄だから、ほかの話して」って言います。時間がもったいない。

 考えてるだけでは、時間の無駄なんですよ。あと、目に見えない不安も本当に無駄。明日のことって、明日にならなきゃわからないじゃないですか? 変な話、明日死ぬかもしれないし。例えば、もうテスト終わってんのに、結果が出るまで1週間くらい不安で過ごすくらいだったら、もう終わっちゃってんだから結果は変わらないし、別にもう何も考えないで、楽しく過ごせばよくない? 「その後、結果が出てから考えよう」と、私だったらなります。起こってもいないことをウダウダ悩むのは無駄だと思いますね。

中塩 今後こうしたいとか、目標とか夢はありますか?

カマたく う〜ん。わかんないですけど、お店をやろうかなとは思ってます。飲み屋ですね、たぶん。

中塩 今勤めてらっしゃるような感じの?

カマたく そうですね。今のブームみたいなのも、1年もつかなって思ってるんですよ。Twitterも、いつかは廃れるので。今は結構調子いいですけど、最初のバズった瞬間から1カ月くらいだろう、あとはもう終わるんだろうとしか思ってなかったので、いまだに「明日終わるかな」と思ってます。明日かもしれないし、明後日かもしれないし、今日で終わりだったのかもしれないし、明日から急にお客さんが来なくなることもあり得ますね。

中塩 歯に衣着せぬ感じと視点の鋭さと表現の面白さもあって、テレビやラジオからお仕事が来そうですよね。

カマたく コンプラ的に無理だと思います(笑)。たぶん放送禁止用語ばっかり言って、ピー音で何を言っているかわからなくなる可能性が高いと思います(笑)。

カマたく
歌舞伎町のバーCRAZEの店長。
Twitter

中塩智恵子(なかしお ちえこ)
ライター。宮城県石巻市出身。アダルト系出版社を経てフリーランスのライターに。主に女性週刊誌で執筆。現在、新宿二丁目在住。著書に『風俗嬢という生き方』(『男娼』(ともに光文社)がある。
7月20日(土)に『男娼』トークイベント開催。詳細はHPにて

Twitterで話題の元ウリセンボーイ・カマたくさんが、「売春を始めたきっかけ」を明かした理由

 Twitterで話題の、元ウリセンボーイで現在歌舞伎町のバーの店長を務めるカマたくさん。テンポよく作られた動画やツイートが人気を博し、フォロワーは39万人(6月21日現在)を突破。Twitterではたびたび「16年売春していた」と話し、実際の体験をネタにもしていますが、そんな「カマたく」が誕生した背景とは? 出張ホストやウリセンボーイを取材したルポ『男娼』(光文社)の著者・中塩智恵子さんが迫ります。

■最初の動画で「16年間、体を売っていた」と告白

中塩智恵子さん(以下、中塩) Twitterに上げた「オカマでーす」で登場する動画が大きくバズっていましたよね。初めて動画を上げたのはいつ頃なのでしょう? 動画を上げることにしたきっかけも教えてもらえますか?

カマたくさん(以下、カマたく) 去年の9月から動画を上げ始めました。30万人くらいフォロワーのいるヴァネッサという女の子と仲が良くて、彼女に勧められたんです。「やったら、たぶんいけるよ」って言われてやってみたら、一発目でバズりました。

中塩 それをきっかけに、一気にフォロワーが増えた印象です。

カマたく 寝て起きたら3万人くらい増えてて、もう止まらずに10万人まで増えました。それからユーチューバーなどに注目され始めて仲良くなって、動画を出すとまたバズるの繰り返しです。お店にもお客さんがいっぱい来るようになって、ますますフォロワーが増えていきましたね。

中塩 最初に上げた動画は「16年間、体を売っていた」と告白したものですよね?

カマたく そうです。それが最初です。

中塩 あれを見た時、リズム感がとてもいいし、パンする(カメラを左右に振る)タイミングとかが絶妙で、おもしろい! と思って拝見していました。動画はすべてカマたくさんがお一人で作られているんですか?

カマたく 全部一人で自主制作みたいな感じです。ネタ出しと撮影と編集と出演と。動画を撮って、文字を入れて、つなげていく作業を繰り返してiPhoneだけで作っています。勘というか、「どのアプリ使ってる?」ってヴァネッサに聞いて、いろいろ適当にやってみただけです。

中塩 去年一時期、動画更新やTwitterを中断されていた時期がありませんでしたか?

カマたく 仕事が忙しすぎて、ストレス性肝炎で入院していました。私のお客さんが一日に4〜5組来て終わり、みたいな適当なお店だったんですけど、動画がバズった次の日から急に40組くらいになっちゃって。従業員がオーナーと私の2人だけだったので、無理じゃない? となったんです。もともとそんなに大きくないお店なんですけど、急にもう入れない店みたいになっちゃって。

中塩 入れない店に……。すごい反響ですね。

カマたく 入れないうえに3時間待ちとかになって。今でも、それがずっと続いてる感じです。適当に週6働いてたら、とんでもねぇことになっちゃって……。私、アレルギーなんで、お酒は一滴も飲めないんですよ。シラフで、ずっと営業してます。

中塩 2月6日の動画は、売春を始めた経緯を漫画にしたものでしたけど、衝撃的な内容でした。酒乱で家庭内暴力(DV)のひどいお父さんが、売春を始めるきっかけになったと。どこまでが事実なのだろうと思いながら見ました。

カマたく オール本当の話です。あまりにも、なぜウリセンを始めたのかを聞かれるから、面倒臭いな、言ったほうが楽かなと思って。

中塩 ウリセンボーイを取材してきた中でも、カマたくさんの話は特に衝撃的でした。16年間、体を売っていたということは、逆算したら、13〜14歳からじゃないですか。

カマたく そうですね。中1からなんで。

中塩 中学から援交を始めて、お小遣いや生活費を稼いできたという人は少なくないんですけれど、父親が息子に男性客をあてがってビジネスにしてしまったというのは初めて聞くパターンでした。

カマたく そうですねぇ。きっかけは父親でしたけど、その後、継続してやる必要はなかったんですよね。でも、私は開き直っちゃったんです。普通だと父親にそんなことをされて傷つくはずなんですけど、「こういう稼ぎ方があるんだ。便利ね」という、あっけらかんとした感じでした。父親はもう死んでますし、なぜああいうことをしたのか、意図を聞いたことがないのでわからないですけど。

中塩 最初にお父さんに連れられて男の人のところへ行ったのは、13歳の時なんですよね?

カマたく そうです。「友達の家に行くから」みたいに言われました。急にそう言われたから、「なんで?」とは思いました。

中塩 いきなり男の人と2人きりにさせられたんですか?

カマたく はい。それで父親は「パチンコ行ってくる」とか言って出たんですよね。あんまり覚えてないですけど。

中塩 そこから怒涛の展開になって、びっくりですよね。いきなり男性とセックスすることになるなんて。お父さんには、その後、何か言わなかったんですか? 「ひどいよ」とか「ありえない」とか。

カマたく あんまり……。父親にお金さえ渡せば、そんなに暴力も振るわなくなったし、おとなしくなったんですよね。本当に暴力が減ったんで、これでいいじゃんみたいな感じだったんですよ。別に、そんなにしんどくないし。

中塩 お父さんがきっかけで男性への売春を始めたわけですが、その後、どこかのお店に所属してウリセンボーイを始めたのでしょうか?

カマたく 「スタービーチ」っていう出会い系サイトの先駆けみたいなのがあったんですけど、それを駆使して、自分で相手を探しました。年齢が13歳だとお店には所属できないので。それにその当時、売り専って、そんなになかったですし。父親がきっかけではありましたけど、それからは自分でお客さんを取るように。なんか自分でやれるなと思って。

中塩 13歳だと、出会い系プロフィールでは年齢を詐称していた?

カマたく 17歳って書いてたと思います。でも、実際会ったら言ってました。実際の年齢を。

中塩 13歳って言われたほうは、たぶんびっくりしますよね?

カマたく でも16〜7歳いける人って、大体、中学生もいけるんですよ。若いほうが好きな性的嗜好の方が多いので。

中塩 一回の相場は、いくらだったのでしょう?

カマたく 制服で行ったら一律5万円。ジャージが好きな人だったらジャージで行く。学校の帰りに、その人の自宅などへ行って稼いで帰ることもありました。

中塩 ジャージコースをつくったんですね。結構稼げましたか?

カマたく 稼げましたね。最高が、月180万円です。14歳の時ですね。

中塩 ええええ!? 14歳で?

カマたく そうなんですよ。ほんとすごいなって思いました。ちゃんと計算してないんで、たぶん180万くらいだったと思います。

中塩 10代の時にそれだけ稼いでいたら、金銭感覚が狂いませんでしたか?

カマたく 狂わなかったですね。全部自分のものではなかったので。父親の借金を返すためじゃなかったら、たぶん狂っていましたけど。ただ母親は、ちょっと不審がってました。何か買うと「これはいつ買ったの?」って。うすうす何かおかしいと感じていたとは思いますけど、うまくはぐらかして。そこまで突っ込んで聞いてこなかったんですよ。

中塩 当時、一番高いもので何を買いましたか?

カマたく 今もそうなんですけど、物欲がないし、趣味もないから、お金を使わないんですよね。お金絡みで苦労してきたので、無駄にお金を使おうと思わないんです。お酒も飲まないし。

中塩 ちなみに、お父さんの借金の総額はどれくらいだったのでしょうか?

カマたく たぶん1000万円くらいだったと思います、ざっくりですけど。母親は私が「20歳になったら離婚する。とりあえずそれまでは、なんとか耐えようね」と、ずっと言ってたんですよ。でも、19歳の夏くらいに父親ががんになったので、しょうがねぇから最後まで面倒見るかとなったんです。

中塩 お父さんが亡くなった時は、どういう気持ちになりました?

カマたく 私は焼き鳥屋でバイトをしていて、店を片付けてからじゃないと駆けつけられなくて、死に目には間に合いませんでした。その時は悲しいというか、「あぁ、死んだんだな……」みたいな感じでしたけど、葬式の時は不思議と泣けましたね。父親としてはなんとも思ってないけど、やっぱり家族だったんだなっていうのはありました。

中塩 今は、お父さんに対してどういう感情を持っていますか?

カマたく 何もないです。無です。もう死んじゃったし、家族の中でも別に話題にも上がらないくらいです。年に一回、命日あたりでちょっと話をするくらいです。

中塩 お墓参りに行ったりとかは?

カマたく 私は行かないです。母と姉は行っているみたいですけど、私は行かないです。基本。

(後編へつづく)

カマたく
歌舞伎町のバーCRAZEの店長。
Twitter

中塩智恵子(なかしお ちえこ)
ライター。宮城県石巻市出身。アダルト系出版社を経てフリーランスのライターに。主に女性週刊誌で執筆。現在、新宿二丁目在住。著書に『風俗嬢という生き方』『男娼』(ともに光文社)がある。
7月20日(土)に『男娼』トークイベント開催。詳細はHPにて 

モラハラ夫だった僕がそれに気づくまで――解決に向けた手掛かり(後編)

 農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者が44歳の長男を殺害した事件では、息子による家族への暴力が背景にあったと報道されている。悲惨なDV、虐待のニュースは後を絶たない。また、配偶者からのモラハラで苦しんでいる家庭は多いはずだ。しかし、その時「加害者側」は何を考えているのだろうか? モラハラ夫として妻に去られた経験から回復し、現在は日本家族再生センターでカウンセラーとして被害者、加害者双方の支援活動を行っており『DVはなおる 続』(ジャパンマシニスト社・味沢道明著)の共著者でもある中村カズノリ氏に話を聞く。最終回の今回も前回に続き「解決に向けた手掛かり」について伺う。 

*これまでのインタビューはこちらから(1) (2) (3)

 

 

SNSは「おしゃべり」として有効?

――第3回で「自己肯定、自己受容を養い、頭の中の地雷原を減らすためにはおしゃべり、雑談が有効」と伺いました。ですが、そもそもおしゃべりできる相手がいないのだ、という人は多いですよね。そのような場合、SNSは有効でしょうか?

中村カズノリ氏(以下、中村) DV、虐待、モラハラの加害者がSNSをやる場合はメリットとデメリットがありますね。

 まずデメリットからですが、SNSに書く以上反発のリプライが届く可能性は当然あります。加害側が書くならなおさらですよね。僕自身もよくそういったリプライをもらいます。僕自身はそれでいい、と思ったうえで発信していますが、もちろんこれは全ての加害当事者にお勧めするものではありません。

――誹謗中傷などが寄せられ、かえって精神が荒廃してしまうこともあるでしょうね。

中村 はい。ですので無理は禁物です。

 一方でメリットとしては、書くことでガス抜きできるという点ですね。あとは、自分の体験を話せば同じような体験をした人とつながることもできます。

 ポイントとしては「発信ができるウェブサービス」も今はさまざまなものがありますよね。自分に合った、快適な雰囲気のところで始めることが大切です。

――非公開のグループだったり、コメントを受け取らない仕組みにできたりなど「世界中の人と無条件でつながる」という環境にせず、自分に無理のない範囲にすることが大切なんですね。

中村 ただ重ねてですが、対面で行われ、ファシリテーター(進行役)がおり、「相手の意見を批判していけない」などのルールの下で行われるグループカウンセリングとネットは大きく条件が異なります。苦しい人は無理にやらないでほしいです。

――ネットって、どう見ても心が血まみれになってるのに「効いてないぜ?」とポーズを取る強がりな人もよく見ますね。

 

役に立たねば、の意識がおしゃべりを難しくする

――心に効く「おしゃべり」ですが、中村さんはもともとおしゃべり好きだったんですか?

中村 いえ全く。グループカウンセリングがきっかけでおしゃべり好きになりました。 最初はうまく喋らないと、気の利いたことを言わないと、と思っていたんですが、別にうまくしゃべらなくてもいい場所なんだということが分かってからは力が抜けて、だんだん慣れていきましたね。今の妻ともよくおしゃべりをしていますよ。

――目的のない雑談やおしゃべりは、男性ほど難しいかもしれないですね。

中村 これはちょっと偏見が入った見方かもしれませんが、男性には“役に立つことしか喋っちゃいけない”というような感覚が少なからずありますよね。無駄話はよくないと。そうなると口数は少なくなるわけで。

―― あと一部男性にありがちなのが、何ら解決策を求めていない相手に対し、どや顔で求めてない、役に立たない御託を授ける傾向もありますね。

中村 ですので女性の方がおしゃべりが上手な分、ガス抜きが男性より上手に出来るのかなとは思います。

 ただこれもあくまで「傾向」であり、しゃべってもしゃべっても受け入れられている感覚がしなくて、自己肯定感が育たず、それで結局相手の DV なども受け入れてしまう女性もいたりします。さまざまな要因が絡んでいるため「こうだからこう」と言いきれない複雑さがありますね。

――こういったことは比較的字数制限の緩やかなネット記事向けの話題ですね。また、テレビも分かりやすさを求めてシナリオありきで進む傾向はあるので「この傾向はあるけれど、絶対ではない」という複雑さは嫌われる傾向がありますね。

――4回にわたってお話を伺ってきましたが、DV、虐待、モラハラ加害者がイライラするメカニズムは、「そんなことをしないと思っている人」にも心当たりのあるものでしたね。単に程度の問題なんだと。

中村 はい。条件がそろうと誰でも「そちら側」に回ってしまう可能性があるんです。

 例えば金銭面や健康面に不安があると、心の余裕は一気になくなってしまいますよね。さらに学校や職場など、日ごろの大部分の時間を過ごす場所で疎外されでもしたら、どんどんまともな判断ができなくなっていきます。

――今満たされている人も、いつそうなるかは本当にわからないですよね。

中村 そうなんです。でも「誰だって危うい」と知っているだけでも違うと思います。自分だけは大丈夫と思っている人ほど危ないです。

――「自分だけは大丈夫」の根拠で、自分の育った家庭にモラハラなんてなかった、と思ってる人も多そうですが、気づいていないだけでしっかりモラハラだったケースもあるでしょうしね。

中村 そうです。それに、もし育った家庭が本当にいい家庭だったとしても、それ以外で足をすくわれるケースだって出てきます。新卒で入った企業がブラック企業で文化に染まってしまったとか、悪い友達と付き合いだしてから人が変わってしまったケースなどもありますよね。

――怪しげなネットワークビジネス、自己啓発、スピリチュアル系にハマったりとか、大人になってもいろいろ誘惑はありますよね。

 現在は支援側にかかわっている中村さんですが、支援の現場で感じることはありますか?

中村 カウンセリングは個々人の状況に寄り添うため、人が必要です。日本家族再生センターでも、今ものすごく人材不足ですね。

 ぜひ行政でも取り組んで欲しいところではあるんですが、一方で私自身、行政の現場で支援されている方の日々の奮闘を知っています。 行政の場合、マニュアルやルールとの兼ね合いがあります。人に合わせた支援が必要なのは分かっているが、それに合わせられないという歯がゆさの中、なんとかしたいと仕事をしている方はたくさんいます。行政はお役所仕事の悪いやつ、という言われ方は違うと伝えたいですね。

――最後に、DV、虐待、モラハラにおいて、問題が深刻化しないうちに加害側が気づくことが大切だと思うのですが、一方で加害側にしてみると、配偶者が逃げるほど事態が深刻にならないと気づけないというジレンマがありますよね。これに対して何かいいアイディアなどはあったりしますか。

中村 やはり日ごろから気楽に人と繋がれることが大切ですね。 家族とのことでちょっとモヤモヤがあったとしても、相談するなんてカッコ悪いという雰囲気はありますよね。特に男性はそうだと思います。

 時間のかかることではありますが、そういうことは全然かっこ悪いことじゃない、という価値観を醸成させていくことが必要だと思います。

(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

 

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