“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、田代まさしに去勢を提案!?

 マーシーこと田代まさし容疑者(63)が、覚せい剤所持の疑いで5度目(薬物では4度目)の逮捕。なぜ何度捕まってもシャブをやめられないのか? 薬物への依存を根本から断ち切るためにはどうしたらよいのか?――極道時代、多くのポン中を目の当たりにしてきた“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が、大手メディアが触れることのできない「依存の本質」と「依存脱却の最終手段」を明かした!

***

――マーシー5度目の逮捕の報道を受け、まず何を思ったでしょうか?

瓜田純士(以下、瓜田) ダルクは無駄だと思いました。マーシーは、薬物依存症患者のリハビリ施設であるダルクのスタッフとして働いていたそうですが、彼みたいな自分に甘い奴が、一番やっちゃいけないのは、「傷の舐め合い」なんですよ。

 ダルクでは、似た者同士が集まって、朝から晩まで自分の体験談とかを語り合っているわけですから、そんなところにいたら薬物への執着がさらに増して、またやりたくなるだけじゃないですか。

――では、薬物依存症患者は、どうすればよいと思いますか?

瓜田 画期的な解決策がひとつあるんですが、それを言うのは後回しにして、まずは常識的な答えから言いましょうか。いま、世論はだいたい二分されています。半数以上の人が「反省が足りないから、また刑務所にブチ込めばいい」と思っていて、残りの人が「病気だから治療をしたほうがいい」と思っている。

 僕がこのどちらを支持するかといえば、後者ですね。刑務所に入ったところで、薬物依存は治らないからです。刑務所って、時間が止まるだけなんですよ。だからポン中に関しては、国営の治療施設を充実させて、ちゃんとプログラムを組んで、治療してあげるのがいいんじゃないかと思います。税金はかかりますけど、多くの人が廃人になるのを見過ごすよりはマシじゃないでしょうか。

 マーシーは、このままだと間違いなく廃人になりますよ。このあと懲役を務めたところで、出てきたらまた同じ過ちを犯すだろうし、60代、70代をそれで潰すと思うんですよ。で、支援者も続々と去り、孤立無援のまま死んでいくしかない。

――「自業自得」との声も聞かれそうです。

瓜田 僕も昔はそう思っていましたが、親しかった先輩がポン中になっておかしくなっちゃってからは、考え方が変わったんですよ。見捨てるのはかわいそうだと。僕がヤクザをしていた頃は、周囲はポン中だらけでした。彼らは何度も刑務所に入って、出てくるたびに親分に叱られて、涙を流して反省をする。けど、また同じ過ちを繰り返すんですよ。

――瓜田さんも2003年に覚せい剤取締法違反(所持及び使用)で逮捕されていますよね。なのになぜ、その後、更生して社会復帰することができたのでしょう?

瓜田 僕は「商品」をちょっと味見した程度で、体質的に合わなかったから、ハマらなかったんですよ。また、僕の場合、出所後にダルクではなく精神科病院に入ったのがよかったのかもしれない。そこには薬物依存以外の、いろんな症状の患者さんたちがいたから、「傷の舐め合い」をできる環境ではなかったんですよ。だから、クスリへの興味も自然と薄れていった。

 ところで、世の中の多くのポン中は、なぜ覚せい剤をやめられないと思いますか?

――目がさえてバリバリ働けるからでしょうか?

瓜田 違うんですよ。彼らの大半は、「シャブセックス」がやめられないだけなんですよ。幸か不幸か、僕はそれを体感する前にやめましたが、信じられない快楽らしいんですよ。「まるで全身の毛穴から精液が出てくるようだ」と聞いたことがあります。

 しかもこの快感は、相手がいなくても成立するんです。「シャブオナニー」ってやつですね。マーシーはかつて、盗撮で書類送検されたり、のぞきで逮捕されたりもしていますが、あれはきっと、シャブオナニーのためのオカズを探し歩いていたんだと思います。

――シャブセックスは聞いたことがありますが、シャブオナニーは初耳です。

瓜田 パートナーと楽しむのはアマチュアで、上級者ほど1人でできるシャブオナニーを好むそうです。僕がヤクザだった頃、ビデオボックスに8時間ぐらいこもって出てこない同業者もいました。1人のほうがオルガズムを得るためのシチュエーションにあれこれこだわることができて、気持ちいいんだとか。

 その強烈な快感を思い出すと、捕まったあともまたしたくなって、シャブに手を出してしまう。その繰り返しなんだと思います。

――そういう人を止めるには、どうすればよいのでしょう?

瓜田 不能にさせるしかないですね。

――えっ!?

瓜田 去勢するか、性欲を抑制する薬を投与するしかない(真顔で断言)。初犯でそれは酷だけど、たとえば「3回目以降はそうする」という法律を作っちゃえばいいんですよ。「性欲減退法」という法律をね。ムラムラしなくなれば、シャブもいらなくなる。これは薬物犯罪のみならず、性犯罪に適用してもいいですね。

 女性の場合は、穴派とクリ派がいるので難しいところですが、そのどちらかを取っちゃう か、あるいは性欲抑制剤を投与する。

――残酷ですね。そんな法案が通ったら、世界中の人権団体が黙っていませんよ。

瓜田 廃人になるのを見殺しにするよりは、いくらか優しいと思いますよ。だって、チ●コやマ●コがなくなったって、社会復帰や社会貢献はできますから。更生後に子どもを育てたくなったら、養子をもらえばいいだけのことです。

――うーん……。

瓜田 そうやって躊躇する人が多いから、いつまでたってもポン中がいなくならないんですよ。非現実的な話と思うかもしれないけど、原理原則さえわかってしまえば、対策も立てやすいってもんです。有識者会議で「覚せい剤をやめられないのはセックスとオナニーが原因だ」ということを議論し、国が性欲減退法を制定すれば、シャブに手を出す人は激減すると思いますよ。

 そもそもヒロポン(覚せい剤)は、戦前戦中に、「ものを食べなくても働き続けることができる人間を育成しよう」という日本政府の国策に基づいて普及させたものだという説もある。最初に国が広めたんだから、最後のケツも国が拭け、って話ですよ。

(取材・文=岡林敬太)

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

グルタチオン配合の「白玉点滴」「美白サプリ」はニセ医学? 医師に聞く「証拠はほぼない」恐るべき実態

 近頃、美白効果が得られるとされる成分「グルタチオン」配合のサプリメントや点滴が、美容意識の高い女性の間でブームになっているのをご存じだろうか。人気有名人がオススメしていることもあってか、経口用サプリ「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」が飛ぶように売れ、また美容クリニックではグルタチオン配合の「白玉点滴」が人気を博しているという。ネット上には、実際に「肌が白くなった」「シミ対策に最適」といった声が飛び交っているが、一方で、その効果や安全性に疑問を抱く人も少なくない様子。そこで今回、『「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)の著者であり、世にはびこる「医学のデマ情報」に鋭い目を向けている内科医・名取宏氏に取材を行い、グルタチオンの効果や安全性について、話をお聞きした。

1万円もザラの「白玉点滴」――グルタチオン1アンプルは数十円!?

――まず、グルタチオンとはどのようなものでしょうか。

名取宏氏(以下、名取) グルタチオンは「グルタミン酸」「システイン」「グリシン」という3つのアミノ酸によって形成される低分子量のペプチドです。体内にも存在し、抗酸化作用を有するものなので、“理論上”、体に良い可能性は十分あると言えるでしょう。

 また、グルタチオンは、そもそも美容目的で用いられるものではなく、「日本薬局方」(医薬品の規格基準書)に収載されている公的な医薬品で、薬物中毒、慢性肝疾患における肝機能の改善、急性湿疹などに効能または効果があるとされています。

――薬物中毒に慢性肝疾患……「美白」とはまったく異なる病気に用いられる医薬品なのですね。

名取 ただグルタチオンは、一言で言うと「昔の薬」で、現在ではあまり使われない医薬品と言えます。慢性肝疾患は私の専門分野ですが、グルタチオンを実地臨床で使ったことはありませんし、使っているほかの肝臓内科医も知りませんね。また、肝疾患以外のほかの疾患にも、ほとんど使われていないのではないかと思います。グルタチオンの添付文書に掲載されている文献の多くが、和文の、しかも1970年前後のきわめて古いもので、現在の基準ではとうてい保険適用されるレベルの医薬品ではありません。EBM(エビデンスに基づいた医療)という考え方が浸透するずっと以前に保険適用されてしまった医薬品と言えるでしょう。

――「昔の薬」が、いま美容界でブームになっているのも、なかなか不思議な話ですね。グルタチオン配合の「白玉点滴」のように、自費診療のクリニックが、公的な医薬品を保険適用外使用するというのは、珍しくないのでしょうか。

名取 そうですね。国内で承認された医薬品は、薬局を通して容易にかつ安価で購入することができるのですが、それを「こうした効果・効能もありますよ」というふうに付加価値をつけて宣伝し、高額な自費診療で提供することは珍しくないでしょう。注射用グルタチオンも、薬価は実は1アンプル数十円程度なのですが、美容クリニックの「白玉点滴」は、何アンプル使用しているか不明ではあるものの、1万円以上することもザラだと言います。

 また、がんに効果があるとされる「高濃度ビタミンC点滴療法」も同様です。ビタミンCのアンプル自体は医薬品で安く手に入るのですが、それを自費診療として高い値段をつけて提供している。「高濃度ビタミンC点滴療法」自体、あまり根拠のないものなんですけどね。

――経口サプリの「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」が、現在、売れているようなのですが、実際に美白効果は望めるのでしょうか。

名取 私も調べてみて驚いたのですが、経口のグルタチオンについては美白効果があったとする臨床研究が少ないながらあります。ただし、研究の質はあまり高くなく、本当に効果があるかどうかは確定的ではありません。また、どれぐらいの量をどれぐらいの期間摂取すればいいのかも一定の見解はありません。うがった見方をすると、サプリを売りたいメーカー側が、小規模な臨床研究を行い、たまたま良い結果が出たものだけを発表した可能性も否定できません。そもそも「美白」というのは、主観的に判断されがちという点も踏まえ、経口のグルタチオンは、美白に「効かないとは言えないが、効くとも言えない」程度のものなのではないでしょうか。

――安全性の面ではいかがでしょうか。

名取 経口のグルタチオン摂取は、かなり安全だと思われます。ただ、医薬品のグルタチオン錠ではなく、グルタチオンを含むサプリメントの類いだと、安全性が保証されているとは限りません。

――ちなみに「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、「栄養素破壊から保護するために不可欠なリン脂質によって作られたリポソームを使用している」点をアピールしています。つまり「グルタチオンが体内に長く残る」ことで、ほかの経口サプリと差別化を図っているようです。

名取 「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、医薬品ではなくサプリなので、ちゃんとした論文がない、もしくはあっても提示されていないと思うのですが、本当にリン脂質によって栄養素破壊から保護されるというデータはあるのか、もし保護されたとして美白効果が上がるというデータはあるのか、疑問を抱かざるを得ません。そもそも美白効果自体があるかどうか、わからないですしね。

 もう一つ、グルタチオンが「体内に長く残る」というのは、直感的に「怖い」と思いました。それだけ副作用のリスクが上がるからです。一般的なグルタチオン錠には、これまで大きな副作用はなかったものの、リン脂質という“余計なもの”をくっつけたせいで、副作用が出る可能性もあります。副作用のリスクについては、果たしてちゃんと調べているのでしょうか。もし調べているのであれば、それを提示すべきだと思います。

―― 一方で、「白玉点滴」に関してはいかがでしょうか。

名取 注射によるグルタチオンの美白効果についての証拠はほとんどありません。逆に、効果の乏しさと危険性について、複数の専門家から注意喚起がなされています。臨床医の間でトップレベルに評価されているイギリスの医学雑誌「BMJ」で、ある皮膚科医が「非倫理的(Unethical)」と強く批判していたことも。色素異常症などの病理研究に携わる中、効果のほどがわからない美白目的でのグルタチオン注射の治療を行うのは「危ない」と感じ、警鐘を鳴らしたかったのではないかとも考えられます。また、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)も、消費者に対して「潜在的に重大な安全上のリスク(a potentially significant safety risk)」をもたらすとしています。このようにFDAが承認していない製剤が使われているため、米国では「危険性が高い」と考えられているようですね。

――海外で「危険」とされているのに、日本でブームとなっているとは、驚きを隠せません。

名取 ただ、日本では医薬品として承認されている製剤であれば、危険性は低いでしょう。一方で、製剤そのもののリスクとは別に、注射針を刺すこと自体に一定のリスクはありますし、薬液を点滴に混ぜたり、点滴ボトルに通気針を刺したりする一連の行為で、注射液が汚染されるリスクもあります。効果が同じであれば注射・点滴ではなく経口投与するのが医学上の常識です。

――美容クリニックでは、「経口より点滴の方が効果的」と説明されるケースも多いようですが。

名取 美容点滴に限らずですが、確かに「点滴の方が効きそうな気がする」という患者さんはたまにいらっしゃいます。日本では過去に、開業医がサービスの一環として、患者さんに点滴をよく打っていたことがあったそうなのですが、現在では「よろしくない」と認識されているのです。そんな中、美容クリニックでは堂々と行われていると聞くと、「文化が違う」と驚く部分はありますね。

 しかし、美容目的のグルタチオン投与では、効果が同じどころか、むしろ注射製剤の方がエビデンスに乏しい。そうなると、経口製剤ではなく、わざわざ点滴投与する意味がわかりません。「『点滴の方が効果的』と考える患者さんが多そうだから」「点滴の方が高い値段をつけられるから」といった、美容クリニック側のよこしまな動機が働いているとしか思えません。

――美容サプリや美容点滴などを試す際、どのような点に気をつけるべきだと思いますか。

名取 正直に言いまして、私にはわかりません。病気に対する治療であれば、保険適用になっているものを選べば、ほぼ間違いないのですが、美容に関しては、保険適用のようなわかりやすい基準がありません。強いて言えば、「あまりにも高価なものは避ける」「信じすぎない。期待しすぎない」「有名人がオススメしていることは、何ら根拠にならない」などを、肝に銘じることだと思います。

 今回、特に「白玉点滴」を調べてみて思ったのは、美容医療の分野には、信頼できない情報がはびこっているということ。まさに「魑魅魍魎」という感じですね。大きなお金が動く割に、一般的な医学分野のように専門家のチェックが入りにくいから、このような状況が生まれているのではないでしょうか。もちろん、美容クリニックが全て悪だというわけではなく、よろしくないことをやっているクリニックが、「白玉点滴」などの根拠に乏しい美容医療に手を出すイメージです。そういったクリニックは、美容以外にも、自費診療で「高濃度ビタミンC点滴療法」や「血液クレンジング」を提供しているように思います。

――今回の「グルタチオン」に限らず、「ニセ医学」が横行し、しかも流行してしまう背景についてどう思われますか。

名取 残念なことですが、標準的な医療が必ずしも満足のいく結果を出せていないことがその一因でしょう。標準的な医療が、がんでもアトピー性皮膚炎でも副作用なく、全部治せることができれば、「ニセ医学」がはやる余地はありません。ただ、医学は日々進歩しています。100%治すことはできなくても、少しでも治る確率の高い治療を提供することはできます。

 誇大な宣伝や嘘も、「ニセ医学」がはやる理由の一つです。標準的な医療を提供する医師は、治療の限界や副作用について、正確な情報を提供しなければなりません。治らないときは「治りません」と説明します。その際、医師は患者さんを不安にさせないよう、伝え方などに工夫を凝らすものですが、中には、患者さんに不信感を抱かせてしまうケースもあるように思います。そんなとき、しばしば治療の効果を誇大に宣伝したり、副作用がないと嘘をついたりする「ニセ医学」を求めてしまう患者さんが一定数出てくるのではないでしょうか。

――なかなか一般人が、エビデンスに基づく正しい情報を得るのは難しい面もあるように感じます。

名取 実際に、クリニックで横行する未承認の“インチキ”幹細胞療法に対し、日本再生医療学会が声明を出して、法律がつくられた例もあります。このように、医学会などの専門家集団が、もっと注意喚起をしていくべきなのかもしれませんね。

名取宏(なとり・ひろむ)
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は市中病院に勤務。Twitterやブログで情報を発信している。著書に『「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)がある。
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グルタチオン配合の「白玉点滴」「美白サプリ」はニセ医学? 医師に聞く「証拠はほぼない」恐るべき実態

 近頃、美白効果が得られるとされる成分「グルタチオン」配合のサプリメントや点滴が、美容意識の高い女性の間でブームになっているのをご存じだろうか。人気有名人がオススメしていることもあってか、経口用サプリ「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」が飛ぶように売れ、また美容クリニックではグルタチオン配合の「白玉点滴」が人気を博しているという。ネット上には、実際に「肌が白くなった」「シミ対策に最適」といった声が飛び交っているが、一方で、その効果や安全性に疑問を抱く人も少なくない様子。そこで今回、『「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)の著者であり、世にはびこる「医学のデマ情報」に鋭い目を向けている内科医・名取宏氏に取材を行い、グルタチオンの効果や安全性について、話をお聞きした。

1万円もザラの「白玉点滴」――グルタチオン1アンプルは数十円!?

――まず、グルタチオンとはどのようなものでしょうか。

名取宏氏(以下、名取) グルタチオンは「グルタミン酸」「システイン」「グリシン」という3つのアミノ酸によって形成される低分子量のペプチドです。体内にも存在し、抗酸化作用を有するものなので、“理論上”、体に良い可能性は十分あると言えるでしょう。

 また、グルタチオンは、そもそも美容目的で用いられるものではなく、「日本薬局方」(医薬品の規格基準書)に収載されている公的な医薬品で、薬物中毒、慢性肝疾患における肝機能の改善、急性湿疹などに効能または効果があるとされています。

――薬物中毒に慢性肝疾患……「美白」とはまったく異なる病気に用いられる医薬品なのですね。

名取 ただグルタチオンは、一言で言うと「昔の薬」で、現在ではあまり使われない医薬品と言えます。慢性肝疾患は私の専門分野ですが、グルタチオンを実地臨床で使ったことはありませんし、使っているほかの肝臓内科医も知りませんね。また、肝疾患以外のほかの疾患にも、ほとんど使われていないのではないかと思います。グルタチオンの添付文書に掲載されている文献の多くが、和文の、しかも1970年前後のきわめて古いもので、現在の基準ではとうてい保険適用されるレベルの医薬品ではありません。EBM(エビデンスに基づいた医療)という考え方が浸透するずっと以前に保険適用されてしまった医薬品と言えるでしょう。

――「昔の薬」が、いま美容界でブームになっているのも、なかなか不思議な話ですね。グルタチオン配合の「白玉点滴」のように、自費診療のクリニックが、公的な医薬品を保険適用外使用するというのは、珍しくないのでしょうか。

名取 そうですね。国内で承認された医薬品は、薬局を通して容易にかつ安価で購入することができるのですが、それを「こうした効果・効能もありますよ」というふうに付加価値をつけて宣伝し、高額な自費診療で提供することは珍しくないでしょう。注射用グルタチオンも、薬価は実は1アンプル数十円程度なのですが、美容クリニックの「白玉点滴」は、何アンプル使用しているか不明ではあるものの、1万円以上することもザラだと言います。

 また、がんに効果があるとされる「高濃度ビタミンC点滴療法」も同様です。ビタミンCのアンプル自体は医薬品で安く手に入るのですが、それを自費診療として高い値段をつけて提供している。「高濃度ビタミンC点滴療法」自体、あまり根拠のないものなんですけどね。

――経口サプリの「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」が、現在、売れているようなのですが、実際に美白効果は望めるのでしょうか。

名取 私も調べてみて驚いたのですが、経口のグルタチオンについては美白効果があったとする臨床研究が少ないながらあります。ただし、研究の質はあまり高くなく、本当に効果があるかどうかは確定的ではありません。また、どれぐらいの量をどれぐらいの期間摂取すればいいのかも一定の見解はありません。うがった見方をすると、サプリを売りたいメーカー側が、小規模な臨床研究を行い、たまたま良い結果が出たものだけを発表した可能性も否定できません。そもそも「美白」というのは、主観的に判断されがちという点も踏まえ、経口のグルタチオンは、美白に「効かないとは言えないが、効くとも言えない」程度のものなのではないでしょうか。

――安全性の面ではいかがでしょうか。

名取 経口のグルタチオン摂取は、かなり安全だと思われます。ただ、医薬品のグルタチオン錠ではなく、グルタチオンを含むサプリメントの類いだと、安全性が保証されているとは限りません。

――ちなみに「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、「栄養素破壊から保護するために不可欠なリン脂質によって作られたリポソームを使用している」点をアピールしています。つまり「グルタチオンが体内に長く残る」ことで、ほかの経口サプリと差別化を図っているようです。

名取 「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、医薬品ではなくサプリなので、ちゃんとした論文がない、もしくはあっても提示されていないと思うのですが、本当にリン脂質によって栄養素破壊から保護されるというデータはあるのか、もし保護されたとして美白効果が上がるというデータはあるのか、疑問を抱かざるを得ません。そもそも美白効果自体があるかどうか、わからないですしね。

 もう一つ、グルタチオンが「体内に長く残る」というのは、直感的に「怖い」と思いました。それだけ副作用のリスクが上がるからです。一般的なグルタチオン錠には、これまで大きな副作用はなかったものの、リン脂質という“余計なもの”をくっつけたせいで、副作用が出る可能性もあります。副作用のリスクについては、果たしてちゃんと調べているのでしょうか。もし調べているのであれば、それを提示すべきだと思います。

―― 一方で、「白玉点滴」に関してはいかがでしょうか。

名取 注射によるグルタチオンの美白効果についての証拠はほとんどありません。逆に、効果の乏しさと危険性について、複数の専門家から注意喚起がなされています。臨床医の間でトップレベルに評価されているイギリスの医学雑誌「BMJ」で、ある皮膚科医が「非倫理的(Unethical)」と強く批判していたことも。色素異常症などの病理研究に携わる中、効果のほどがわからない美白目的でのグルタチオン注射の治療を行うのは「危ない」と感じ、警鐘を鳴らしたかったのではないかとも考えられます。また、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)も、消費者に対して「潜在的に重大な安全上のリスク(a potentially significant safety risk)」をもたらすとしています。このようにFDAが承認していない製剤が使われているため、米国では「危険性が高い」と考えられているようですね。

――海外で「危険」とされているのに、日本でブームとなっているとは、驚きを隠せません。

名取 ただ、日本では医薬品として承認されている製剤であれば、危険性は低いでしょう。一方で、製剤そのもののリスクとは別に、注射針を刺すこと自体に一定のリスクはありますし、薬液を点滴に混ぜたり、点滴ボトルに通気針を刺したりする一連の行為で、注射液が汚染されるリスクもあります。効果が同じであれば注射・点滴ではなく経口投与するのが医学上の常識です。

――美容クリニックでは、「経口より点滴の方が効果的」と説明されるケースも多いようですが。

名取 美容点滴に限らずですが、確かに「点滴の方が効きそうな気がする」という患者さんはたまにいらっしゃいます。日本では過去に、開業医がサービスの一環として、患者さんに点滴をよく打っていたことがあったそうなのですが、現在では「よろしくない」と認識されているのです。そんな中、美容クリニックでは堂々と行われていると聞くと、「文化が違う」と驚く部分はありますね。

 しかし、美容目的のグルタチオン投与では、効果が同じどころか、むしろ注射製剤の方がエビデンスに乏しい。そうなると、経口製剤ではなく、わざわざ点滴投与する意味がわかりません。「『点滴の方が効果的』と考える患者さんが多そうだから」「点滴の方が高い値段をつけられるから」といった、美容クリニック側のよこしまな動機が働いているとしか思えません。

――美容サプリや美容点滴などを試す際、どのような点に気をつけるべきだと思いますか。

名取 正直に言いまして、私にはわかりません。病気に対する治療であれば、保険適用になっているものを選べば、ほぼ間違いないのですが、美容に関しては、保険適用のようなわかりやすい基準がありません。強いて言えば、「あまりにも高価なものは避ける」「信じすぎない。期待しすぎない」「有名人がオススメしていることは、何ら根拠にならない」などを、肝に銘じることだと思います。

 今回、特に「白玉点滴」を調べてみて思ったのは、美容医療の分野には、信頼できない情報がはびこっているということ。まさに「魑魅魍魎」という感じですね。大きなお金が動く割に、一般的な医学分野のように専門家のチェックが入りにくいから、このような状況が生まれているのではないでしょうか。もちろん、美容クリニックが全て悪だというわけではなく、よろしくないことをやっているクリニックが、「白玉点滴」などの根拠に乏しい美容医療に手を出すイメージです。そういったクリニックは、美容以外にも、自費診療で「高濃度ビタミンC点滴療法」や「血液クレンジング」を提供しているように思います。

――今回の「グルタチオン」に限らず、「ニセ医学」が横行し、しかも流行してしまう背景についてどう思われますか。

名取 残念なことですが、標準的な医療が必ずしも満足のいく結果を出せていないことがその一因でしょう。標準的な医療が、がんでもアトピー性皮膚炎でも副作用なく、全部治せることができれば、「ニセ医学」がはやる余地はありません。ただ、医学は日々進歩しています。100%治すことはできなくても、少しでも治る確率の高い治療を提供することはできます。

 誇大な宣伝や嘘も、「ニセ医学」がはやる理由の一つです。標準的な医療を提供する医師は、治療の限界や副作用について、正確な情報を提供しなければなりません。治らないときは「治りません」と説明します。その際、医師は患者さんを不安にさせないよう、伝え方などに工夫を凝らすものですが、中には、患者さんに不信感を抱かせてしまうケースもあるように思います。そんなとき、しばしば治療の効果を誇大に宣伝したり、副作用がないと嘘をついたりする「ニセ医学」を求めてしまう患者さんが一定数出てくるのではないでしょうか。

――なかなか一般人が、エビデンスに基づく正しい情報を得るのは難しい面もあるように感じます。

名取 実際に、クリニックで横行する未承認の“インチキ”幹細胞療法に対し、日本再生医療学会が声明を出して、法律がつくられた例もあります。このように、医学会などの専門家集団が、もっと注意喚起をしていくべきなのかもしれませんね。

名取宏(なとり・ひろむ)
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は市中病院に勤務。Twitterやブログで情報を発信している。著書に『「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)がある。
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ジャニーズファンの“都市伝説”、業界関係者がジャッジ! 「重版すればまた表紙」「クレームはスポンサーへ」は本当?

 「初めて担当が雑誌の表紙を飾った」「担当が新しいCMに出演した」「担当が人気のテレビ番組に出演した」……そんな時、ファンは書店で同じ雑誌を大量に購入したり、CM企業やテレビ局にお礼の手紙を送ったりすることがある。このような行動はファンの“自己満足”であるとともに、「担当の新しい仕事につながる」と、“都市伝説”のように信じられている節がある。しかし、実際のところはどうなのだろうか。出版社・CM企業・テレビ局を直撃し、そのホンネを聞いた。

今、一番売れるのは「King&Prince」

 近年、ジャニーズアイドルが表紙を飾った女性誌や一般誌が軒並み“重版”している。10月23日に発売された、King&Prince表紙の「CanCam」(小学館)が当日に重版決定しただけでなく、嵐、Sexy Zone・中島健人&菊地風磨、SixTONES、Snow Manも、“緊急重版”がネット上で話題に。SNS上では、「重版すればまた表紙にしてもらえる」「需要ないと表紙にしてもらえない」という理由から、「雑誌を大量に購入した」というファンの声も聞こえるが、そもそも、表紙を飾る人物というのは、どのようにして決まっているのだろうか。

 出版社Aの週刊誌担当者に問い合わせると、「その時のタイミングです。映画やドラマ出演のタイミングで起用することもありますし、こちらがお願いして“運良く”という場合もあります」とのことで、明確な基準はないという。しかし、表紙になる条件としては、「その時“輝いている方”にお願いしています」といい、やはり人気や話題性は重要視されているよう。表紙になる人物はいつ決まるのか、という質問に対しては、「3カ月前から、1〜2週間前の人もいます」との回答があった。週刊誌という特性上、瞬間的にでも話題になれば、表紙を飾る可能性がアップするのかもしれない。

 とはいえ、やはり出版社も“ビジネス”である以上、「売れる雑誌」を作らねばならない。出版社Bの週刊誌担当者は、「損益分岐点を大きく超えた時に、次回も表紙に使おうか検討する」とシビアな基準を明かした。

「今だったら、King&Princeが一番売れますね。デビューを控えたSixTONESとSnow Manも今後、同じくらい売れそうだと期待されています。この2組については、ファンの方が非常に熱心だと感じていて、どちらかのグループが重版したら『こっちも重版させないと!』と頑張ってくださるので、相乗効果で売り上げが伸びています」(同)

 それでは、まだ人気の出ていない担当を表紙にしてもらうには、どうしたらいいのか。出版社Cの月刊誌担当者は「芸能事務所の都合もあると思うので、なんともいえない」と前置きしつつ、「ほとんどの雑誌には、読者の方からご意見をお寄せいただけるメールアドレスや、ハガキの案内があります。そこに直接『この人に出てほしい!』と書いていただくのがよいのではないでしょうか。私たちの編集部では、ご意見にはすべて目を通しています」と語ってくれた。

 一方で、前出・出版社Bの担当者いわく、「今はSNSの影響力が最も強い」とのこと。「どこの業界も、Twitterの“トレンドランキング”に注目していますよ。応援しているタレントさんをバズらせると、何か新しい展開が生まれやすくなるのでは」。出版社は単純な売り上げだけでなく、ファンの“熱量”や、タレントの“話題性”にも注目しているようだ。

 週・月単位で表紙が替わる雑誌に対し、CMは長期にわたって放映される場合が多く、ファンにとっては「うれしい仕事」の一つだろう。担当がCMに起用された際、商品を大量購入して「CMの放映期間を長くしよう」というファンの動きもあるが、実際に効果はあるのだろうか? 

 CM企業Aは、「放映期間は最初から決まっているので、売れ行きに応じて延びたり、逆に短くなったり、ということはないです」とキッパリ。一方で、CM企業Bは「放映期間は、販売数に応じて延長を検討しています」と答えており、企業によって対応は異なる模様。

 しかしCMの場合、「起用したタレントのおかげで売り上げが伸びた」のか、「商品の評価が高くて売り上げが伸びた」のか、判断が難しくないだろうか。この疑問をCM企業Bにぶつけたところ、「CMの効果というのは、商品の売り上げだけでなく、Twitterでの反響、YouTubeでのCM動画再生回数など、総合的に見て判断しています」と回答があった。さらに、「実際に商品をご購入いただきまして、『すごくよかったよ!』という声を発信していただければ……」との本音も。CM効果でファンが商品を購入するだけでなく、“宣伝”してくれるところまで期待して、起用するタレントを決めているのかもしれない。

 また、CM企業Cの担当者は、「『○○さんを起用していただいてありがとうございます』など、ファンの方からさまざまな声をいただいております」とした上で、「『お客様相談室』にいただいたメールやお電話の内容は、社長以下すべての社員が見られるようになっておりますので、反響はしっかり伝わっています」と教えてくれた。ファンからの感謝メッセージが、社員のモチベーションアップにつながる場合もあるようだ。

 最後に、毎日さまざまなタレントが出演する、テレビ番組の事情を聞いた。雑誌やCMに比べ、放送時間帯によっては“無名タレント”でもキャスティングされやすいように見えるが、出演者はどのように決めているのだろうか?

「ゴールデンタイムに近い番組だと、より多くの視聴者が『見たい』と思う人を出さないとダメ。視聴率に影響するので、必然的にすでに名前がある人気者を出すことになります。深夜番組だと、これから人気になりそうなタレントも出せますが、やはりある程度の実績がないと……。例えば、『武道館コンサートで客席を満杯にした』『ネットで話題になっている』『有名人が褒めている』とか、飛び抜けた特徴を持ってないと厳しいですね」(音楽番組関係者)

 ファンの間では、「テレビ局の人はSNSを見ないから、メールや電話で直接意見を送った方がいい」といったウワサもあるが、前出の音楽番組関係者は「それはないです」と否定。「一般の人がいきなりテレビ局に電話をしてきても、“1億分の1”の意見なので。それに比べて、ネットは何万人、何百万人の意見だから、そっちの方を見てますよ」といい、直接的なアプローチよりも、不特定多数の間接的な意見を参考にしていると答えた。

 また、テレビ局だけでなく、“番組スポンサー”に声を届けるファンも少なくないが、音楽番組関係者は「基本的に効果はないと思います」という。それはなぜか。

「テレビ番組とスポンサーって、視聴者が考えているより切り離されています。テレビは“公共放送”ですし、スポンサーのために番組をつくっているわけではない。番組を“買ってもらっている”ということなので、そこまで密接な関係はないです」(同)

 ある程度の実績がないとテレビ出演は難しく、スポンサーに働きかけても意味がない……となると、人気も実績もないタレントを応援しているファンは、“テレビ出演の夢”を諦めるしかないのだろうか。

「テレビは圧倒的なマスと向き合っている分、良くも悪くも“後追い文化”の側面があると思います。なので、まずは応援しているタレントを有名にして、ファンを増やし、“現象”をつくることが大事。現象というのは、『ミュージックビデオが感動を呼んで、じわじわ再生数が増えていく』『中高生の間で“局地的に”話題になる』とか、そういうことでいいんです。人気や知名度だけでなく、突き抜けた何かがあれば、そのうち引っかかるかも」(同)

 各業界から話を聞いてみると、どこもネットやSNSの動きを注視している様子がうかがえた。出演番組の感想を一言つぶやくだけで、タレントの未来が変わるかもしれない。ジャニーズに限らず、誰かを応援している“ファン”にとって、夢のある話ではないだろうか。
(朝日和香)

『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(後編)――日本の「移民」問題

 日本で外国人労働者の受け入れが拡大する中、技能実習生の処遇をめぐる問題が浮き彫りになっている。『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社)の著者・巣内尚子さんに、外国人技能実習生の実情と、我々に何ができるかを聞いた。

(前編「『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(前編)――奴隷生む闇の“産業”」はこちら)

知らない間に福島で除染作業をさせられ……

――外国人技能実習生や労働者をめぐる問題は、低賃金と長時間労働のほかにもあるようです。

巣内尚子さん(以下、巣内) たくさんあります。問題が絶えないのは、根本には、「日本では移民は受け入れない」という考えがあるからではないでしょうか。

 実際に、「3年後には帰るお前に教えることなどない」と怒鳴られ、何も教えてもらえなかった実習生がいます。実際に、聞き取りでは、来日前の職業が技能実習の職種と異なる例、帰国後の職業が技能実習の職種と異なる例が大半でした。今回の入管法では、外国人労働者の受け入れ拡大が図られていますが、実習生については「長居をせずに単純労働だけをして、技能実習の期間が終われば早く帰国してほしい」ということです。

 一方で、技能実習生は決められた職種でしか働けないはずなのに、事前の説明のないまま、福島で除染作業をさせられていた例もあります。この技能実習生はもともと建設の職種で来日していました。自身の仕事が除染作業だとわかり、健康面の不安を抱き、ベトナムの送り出し機関、日本の監理団体などに説明を求めたのですが、誰にも取り合ってもらえませんでした。

 この技能実習生の賃金は、基本給が13万円ほどで、そこから寮費の1万5000円と税金・社会保険料などを引くと、手取りは8~9万円だけでした。この金額から、生活費として3万円を使うと、残りはわずか5万円。それが除染労働で得た対価というわけです。このようなことが行われたということの背景には、技能実習生はあくまで「入れ替え可能な労働者」であり、いつか帰国する存在として企業がとらえているからではないでしょうか。

――技能実習生の中には、雇用先から性暴力の被害に遭う人もいると報じられいます。

巣内 性暴力については被害者が泣き寝入りしていることもあると思うので、それらを含めればもっと多いのではないかと思います。佐賀県で技能実習生を支援されている越田舞子さん(「国際コミュニケーションネットワークかけはし」代表)から聞いた事例では、性暴力被害に遭った女性技能実習生がいたものの、受け入れ企業に帰国させられることを恐れ、警察に行けなかったということがありました。

 性暴力の被害者が泣き寝入りをすることについて、私は、前述したように技能実習生が交渉力の弱い労働者であり、声を上げにくい状況にあることに加え、ベトナムの社会的状況も影響しているのではないかと考えています。

 ベトナムでは、性暴力やセクハラなどの被害者が声を上げることは難しい状況にあります。被害者の側に問題があると見られてしまうことがあるためです。日本でも以前は「セクハラ」という概念は一般的ではなく、フェミニストや研究者が尽力したことで、この言葉が定着した経緯がありますが、ベトナムでは今も十分に浸透していませんので、技能実習生の中にも、その概念をきちんと理解していない人もいるでしょう。聞き取り対象者の中には、「職場で性的嫌がらせを受けたことがありますか」という質問に対し、最初は「ない」と答えた人が、具体的なセクハラの事例を挙げたところ、「会社の人から体を触られて嫌な思いをした。ほかの技能実習生も被害に遭った。でも、何も言わなかった」と説明してくれました。

 こうした事例からは、技能実習生に対し、事前にセクハラを含む職場でのハラスメントについての理解を促すとともに、相談しやすい環境を整備することが求められているといえます。

――だから「失踪」する実習生も多いのですね。2018年には前年から1963人増の9052人が失踪し、政府も問題視しています。

巣内 私は、実習先企業などから実習生が逃げることを「失踪」と呼ぶことには違和感があります。むしろ生命の危険を感じたり、やむにやまれず追い詰められて「逃げた」「避難した」のではないかと考えています。詳しくは本書に書きましたが、私が聞き取りをした実習生たちは、劣悪な労働環境や暴言、暴力、低賃金といった搾取などを受け、悩みぬいた末に、「逃げる」ことを決意していました。

――借金を背負っているのに逃げるのは、よほどのことでしょうね。

巣内 はい。繰り返しになりますが、技能実習生は制度的に在留資格、住まい、仕事が一体化している状況の中、日本で就労・生活していますから、会社から逃げてしまうと、在留資格、住まい、仕事を一度に失うリスクがあります。さらにご指摘のように、借金もあります。それでもわざわざ逃げるということは、その決断に至るまでに、よほどのことがあったのだと考えています。

 ある建設の技能実習生は、日ごろから暴言、暴力を受けていた上、ある日、上司から叱責され、雨の中で立たされたショックで、会社を出ました。この技能実習生は継続する暴言、暴力ですでに疲れ果てていたところ、さらに雨の中で立たされて、耐えられなくなってしまい、あてもなく、会社を出たと話していました。

 朝3時までの長時間労働、残業代未払い、暴言、不衛生な寮での共同生活、外出の制限などの状況を受け、悩み抜いた末に、会社を出た技能実習生もいます。この技能実習生は、休みは月に3日程度、朝8時から翌朝3時までの就労が継続し、体調不良もありましたから、緊急避難といえる状況ですよね。

 技能実習生は来日までに、ベトナム側で数カ月間の来日前研修を受け、さらに正規の手続きを経て来日します。そのために高額の渡航前費用を支払っています。これだけの手間と時間とお金をかけて来日した技能実習生の中に、逃げたくて逃げる人がどれだけいるのでしょうか? 聞き取りをすると、逃げた経験を持つ人はみな、「本当は逃げたくなかった」と答えています。

――そうして逃げた実習生は、国にどう扱われるのですか?

巣内 日本政府は逃げた技能実習生を「失踪者」と呼び、さらにその人たちが就労すれば「不法就労」と位置づけ、取り締まり対象にします。逃げた技能実習生は、拘束、強制送還の対象になりますから、犯罪者のように扱われるわけです。ですが、その人たちが逃げるという決断をした事情を丁寧に見なければいけません。同時に、逃げるという重い選択をさせた技能実習制度の在り方を見なければいけません。

――そんな日本に来たいと思う人はいませんね。英金融大手HSBCホールディングスが毎年行う各国の駐在員の「働きたい国ランキング」では、日本は調査可能な33カ国(地域含む)のうち32位とワースト2位になったことが報じられています。賃金と労働時間、子育てのしやすさが最下位と、今の日本の問題がそのまま指摘される形となりました。このままでは、日本に誰も来なくなってしまいます。

巣内 たしかに今のままでは、日本で働くこと、暮らすことをネガティブにとらえる人は増えるのではないでしょうか。ベトナムは「フェイスブック大国」でもあり、日本の技能実習生や留学生が抱える課題はSNSを通じてベトナム側にも知らされつつあると思います。またベトナム人の移住労働先には台湾や韓国もあるわけですから、そちらのほうがいいとなれば、日本に来る理由がなくなるのではないかと思います。

――日本は、どうすればいいのでしょうか?

巣内 問題が多い技能実習制度を廃止し、仲介組織を排除することが必要だと思います。その上で、外国人をきちんとした労働者として受け入れ、転職の自由を認めることをはじめ、労働者としての権利保護を進めるとともに、定着に向けた仕組みを整備する必要があります。

 特に、受け入れに当たり、労働者の相談窓口の整備を進めるなど、支援体制を強化する必要があります。7月後半から2カ月ほど台湾で移住労働者の調査をしたのですが、台湾には移住労働者が無料で相談できる公的なホットライン「1955」があります。このホットラインは1年中、24時間運営されており、日中就労している移住労働者も夜間や休日に相談できます。タイ語、インドネシア語、ベトナム語、英語、中国語などの多言語対応ですので、移住労働者は母語での相談が可能です。台湾の移住労働者受け入れにも課題が多く、搾取や虐待の被害に遭う人が後を絶ちませんが、それでも公的相談窓口があることで、相談はしやすくなっています。ホットラインは一例にすぎませんが、公的部門が責任をもって移住労働者の支援体制を整えることが急務です。

 もう一つ私たちができることは、社会との連帯です。例えば、労働者が一人で戦うのは容易ではありませんので、外国人労働者が組織化して戦えるような状況が生まれることが期待されます。例えば日本では、移住労働者の権利のための行動 「マーチ・イン・マーチ March in March」が毎年実施されています。こうした運動は外国人だけではなく、日本人労働者にも必要ですよね。連帯できるところで、つながりを持ち、協力しながら国籍に関係なく、労働者全体の処遇改善を求めて動くことができるのではと思います。

 もし労働運動に参加するのはハードルが高いというのであれば、私たちが日常生活の中で可能なことは、まず外国人労働者の実情を知るということだと思います。技能実習生は日本社会とのつながりが希薄な人もおり、なかなかその実情が知られていないところがまだあると思います。外国人労働者の実情を知ることで、それが投票行動に影響するなどして状況が変わっていくこともあるのではないでしょうか。

 そして、身近な外国人の方と日常生活の中で交流を持つことも大事だと思います。例えば、コンビニエンスストアや飲食店などで働く外国人の方を見かけたとき、あるいは工場などに自転車で通勤する技能実習生を見かけた時には、挨拶をし合ったり、言葉を交わすなどしたりしてみてはいかがでしょうか。そうした小さな交流の中で、もしかしたら、外国出身の方を取り巻く状況や課題が見えてくるかもしれません。

巣内尚子(すない・なおこ)
1981年生まれ。フリージャーナリスト。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。現在はカナダ・ケベック州のラバル大学博士課程に在籍、2015年3月から16年2月まではベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在するなど、国内外で記者、研究者として活動。研究分野は国際社会学と移住現象のジェンダー分析。

「女に生まれたこと」への絶望と諦め……世界中の女性が感じる痛みを描いた映画『少女は夜明けに夢をみる』

「私はどうでもいい存在?」「私はそんなにみじめな人間なの?」

 薬物依存や貧困、虐待などといった問題を抱える親に対し、目いっぱいに涙をためながら必死に愛を求める少女――。これは、イランの少女更生施設での一場面だ。そして今この瞬間、日本のどこかで起こっているであろう光景であり、悲しいことに、恐らく世界中のどこででも起こり得る光景だ。

 11月2日公開の映画『少女は夜明けに夢をみる』は、強盗や殺人、売春などの罪で更生施設に収容された少女たちの内面に迫ったドキュメンタリーだ。監督は、イランを代表するドキュメンタリー作家のメヘルダード・オスコウイ氏。少女たちと会話を重ね、時にはカメラを据えて、時には少女同士のやりとりの中から、彼女たちの刺さるような言葉を引き出した。彼は、更生施設に収容された少年たちにカメラを向けた『IT’S ALWAYS LATE FOR FREEDOM』(2007)や『THE LAST DAYS OF WINTER』(11)で、イランの子どもたちを取り巻く厳しい社会状況に焦点を当てた。

 『少女は~』は実に7年もの年月をかけて撮影許可を得た作品であり、「過酷」という言葉では片づけられないほどの環境を生き抜いてきた少女たちの話は、監督自身「撮影しているのが非常につらかった」と振り返るほど。宗教的な背景は違えど、彼女たちの置かれた状況は、日本の少女たちにも通じるものがある。大人として、また、子どもが生きるには過酷すぎる社会を担う人間として、私たちにできることはなにか。来日したオスコウイ氏に話を聞いた。

 撮影許可に7年も費やした理由を聞くと、「毎日粘りに行っていたわけじゃないのです。ただ、数カ月に1回は政府機関に行かないと忘れられてしまうので」と笑った。なぜこの施設にこだわったのか。「少女更生施設にはカメラが入ったことがなかったですし、彼女らの生活、彼女らの気持ちを誰も伝えたことがなかった。7年でも10年でも20年でも、とにかくその扉を開けたいと思っていました。彼女らが語ったストーリーを外に見せたかったんです」。

 以前カメラを向けた少年たちと、今回の少女たちにはどんな違いがあるのか。「顕著なのは、釈放後ですね。少年たちは社会に戻ると、刑務所にいたという事実を有利に使う傾向があります。『オレはこんなに強いんだぞ』と、男らしさを誇示するために。女性は逆に収容されていた過去に蓋をしないといけない。それがバレると、いろんな方面から批判を受け、暗い将来が彼女らを待っています」。

 暗いのは未来だけでなく、彼女たちが歩んできたこれまでの短い人生もそうだ。例えば、「名なし」と自称する少女は、12歳のときに叔父から性的虐待を受け、強盗や売春、薬物使用にも手を染めた。更生施設からの釈放には家族の引き取りが必須だが、彼女が愛する祖母は「迎えに来て」とせがむ名なしに返事をせず、あいまいな態度を見せる。ソマイエという少女は、薬物に溺れる父が母をイスで殴る姿を見て、母・姉とともに父を殺害した。イスラム教が色濃く反映されている父権社会のイランでは、父親殺しは最も重い罪。この施設には17歳以下の少女たちが収容されているのだが、ソマイエはその若さで死刑が宣告されている。

 抱えきれないほどの痛みを持っている少女たち。薬物がらみの犯罪が目立つのは、近隣国カザフスタンが世界有数の麻薬産出国で、国際売買ルートとしてイランを通過するため。近年イランでは薬物常用者が急増しており、ソマイエは「娘に売春させたお金で、クスリを買うような男が私たちの父親なの」と伏し目がちに話す。

 薬物以上に少女たちの人生に影を落としているのが、性的虐待など肉親からの性暴力だ。ハーテレという少女は、姉とともに叔父から性的虐待を受けてきた。母親に相談しても「ウソつき」とぶたれ、家出。浮浪罪で施設に収容された。監督に「夢は?」と問われると、「死ぬこと」と答える。家族に裏切られ、孤立し、年齢と父権社会というイランの現状のせいで自立もままならない。八方塞がりの中で、彼女たちは絶望を深めるばかりだ。それを裏付けるかのように、彼女たちの体には自傷の痕が見られ、ノートには首つりをしている自分のイラストが描かれている。

 その絶望は徐々に、「女に生まれたこと」への否定を生み出す。母の愛情を兄に独占されているマスーメは、もし自身が女の子を産んだらと問われると「殺す」と間髪入れずに答え、男の子なら「母の宝だわ」と笑顔を見せる。逆に、性的虐待を受けたハーテレは「男の子を産んだら名前は?」と聞かれると、「殺すわ」と冷笑を浮かべる。どちらも、根底にあるのは「女という性に生まれたこと」への恨みだろう。

 そんな少女たちの心からの叫びを受け止めているのは、インタビュイーと監督のやり取りを隣で聞いている少女だ。彼女たちの表情、涙、そしてインタビュイーの背に回された小さな手が、どれだけ苦しい人生を歩んできたかを物語っている。監督は彼女たちの関係について、「彼女らは大体同じ悲しみ、同じ痛みを持っている。お互いを慰め、癒やしているのです。少女たちの家庭は、家族の絆が強くないと生活がままならない層です。そんな中で、彼女らは家族から離れて施設に入っている。そのためそばにいる友達を家族の代わりにするのです。だからこそ、彼女らは施設での生活に耐えられる」と説明する。

 これまで「見えざる人(インビジブル・ピープル)」と呼ばれていた彼女たちの痛みを、作品を通して世界に訴えた監督。父権社会のイランでは女性の地位はまだまだ低く、社会構造の変化は簡単ではない。その中で、彼女たちを救うための手段を聞くと、作品そのものだという答えが返ってきた。

「更生施設にいる少年たちを題材とした『IT’S ALWAYS LATE~』『THE LAST DAYS~』では支援者と一緒になって動き、15歳未満は更生施設ではなく保護センターのようなところに収容されるというような運用になりました。またイラン南部のケシュム島では、女性たちは宗教的背景から非常に強い抑圧を受け、眉と鼻を圧迫するような伝統的なブルカ(マスク)を着けていたのですが、彼女たちの心の声を拾った『THE OTHER SIDE OF BURKA』(04)というドキュメンタリー映画を作った後では、島の若い女性は『ブルカをしなくても生きられるんだ』と気づき、着けなくなりました。彼女たちは勉強を始めたり、大学に行ったりしている。映像の影響は強く、人生を変えた人はたくさんいます。今回の映画も、リサーチしている段階では、施設に40人の少女がいたのですけれども、実際に撮影に行くと20人になっていました。映画を撮り終えると7人になり、今は4人。制度を少しずつ変え、施設は最も重い犯罪を起こした子しか入らなくなりました」

 制度は変わっても、社会構造や社会を貫く価値観を変えるのはそう簡単ではない。劇中、彼女たちは施設を訪れたイスラム法学者に畳みかけるように質問する。「なぜ男と女の命の重みは違うのですか?」「父親は子を殺しても責められません。褒められたりする。でも子が父親を殺すと処刑されるのはなぜ?」「(父母の結婚前に自分が生まれたことを周囲に責められる)生まれたのは私のせいですか?」。この問いに答えられる大人ははたしているだろうか。いつの時代の社会のゆがみやひずみの犠牲になるのは、立場の弱い女性や子どもだ。彼女たちを少しでも救うために、私たちはなにをすべきなのか。

「私はそういった声を上げる一人ひとりの協力者に大きな希望を持っていますが、同時に私たちができることの範囲について疑問も持っています。最終的には、為政者が国民を自分の家族と思わないと、この問題は解決しないからです。国を一人の人間と考えたときに、為政者は脳で、一つひとつの家族は細胞です。脳が自分の利益ばかり求め、全体を見なくなると、他の細胞はがんになったり腐ってしまったりする。最初に腐り始めるのは、ダイレクトに社会と向き合っている親。そうすると、親は自分のことしか考えられずに、子どものことが見えなくなるのです。今回のような作品は世界中で作られているのでしょうが、私は問題を提示するだけでなく、こういった少年少女たちが生まれないような社会を目指しています。でも残念ながら、今の世界はどんどん人間らしさが失われています。人間らしい生活、価値観を取り戻さないと家族はバラバラになっていく。子どもたちをどう育てていくのか、どういった法律を作ればいいのか。要するに子どもたち一人ひとりをちゃんと見ていかないと、子どもたちにいい道を切り開いてあげることができない」

 映画では、かろうじて一人の少女が笑顔を取り戻した顛末が描かれているが、大半の少女は絶望に打ちひしがれ、半ば人生をあきらめたように施設を出ていく。この作品にはカタルシスはない。正解も、救いもない。むしろ、多くの女性が持っている「女というだけで痛めつけられた過去」が彼女たちに共鳴するかのようにぶり返す。それでも“インビジブル・ピープル”とされてきた彼女たちが、顔と名前と声を持って伝える事実に耳を傾けるべきだ。まだあどけなさが残る彼女たちが、眠れぬ夜を過ごした明け方に、「社会には勝てない」「どこかのドブでのたれ死ぬだけよ」と泣いているのだから。そして子どもたちが未来に思いを馳せられるような社会にするために、考え続けなければいけない。少女たちのような環境に置かれた人に出会ったときに、悲しみで震える背に手を回すために。

(文・インタビュー=小島かほり)

『少女は夜明けに夢をみる』

11月2日(土)より、東京・岩波ホールほか全国順次公開

『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(前編)――奴隷生む闇の“産業”

 4月1日の出入国管理法改定から半年。日本では外国人労働者の受け入れが拡大しているが、国内では依然として技能実習生をはじめとする外国人労働者の処遇をめぐる問題が深刻だ。今年6月、ドキュメンタリー番組『ノーナレ』(NHK)がベトナム人技能実習生の労働条件や居住環境を映し出し、その凄惨な実態が明らかになると大きな反響を呼んだ。そうした企業での酷使や暴力などの実態は、多くのメディアが報じているが、巣内尚子さんの著書『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社)は、受け入れ国である日本だけではなく、送り出し国のベトナムの現状についても取材し、問題点をえぐり出している。外国人技能実習生問題の背景に広がる、深い闇の構造ついて聞いた。

ベトナム政府は労働者の送り出しを「労働力輸出」政策として推奨

――本書は、「反貧困ネットワーク」(代表世話人・宇都宮健児弁護士)が決定する「貧困ジャーナリズム賞2019」を受賞されました。おめでとうございます。

巣内尚子さん(以下、巣内) ありがとうございます。とても光栄なことです。私は国際社会学と移住現象のジェンダー分析を専攻しており、以前からアジアや日本国内で、海外就労経験のあるベトナム人や、外国人労働者の支援者に聞き取りをしてきました。私には人を支援する力はありません。いつも誰かの話を聞きに行き、その人たちの声を伝えることだけしかできなかったのですが、今回の賞は日本で働く外国の方とその支援者の皆さんに贈られたと思っています。この場をお借りして、本書の取材にご協力いただいたベトナム人技能実習生の皆さん、カンボジアと中国の技能実習生、フィリピンの労働者の皆さん、外国人を支援されている皆さんに感謝を申し上げます。

――今回の受賞は、技能実習制度が日本だけでなくベトナムにおいても「もうかるビジネス」として機能していること、それによって搾取による貧困や暴力など、重大な人権侵害が繰り返されていることが明らかにされた点が評価されたそうですね。

巣内 はい。現在、日本の外国人技能実習生の半数近くがベトナム国籍ですが、ベトナム人技能実習生は、来日するためにベトナム側の送り出し機関に高額の渡航前費用を支払っています。この渡航前費用のために、技能実習生が莫大な借金を背負っていることが問題だと思います。

 日本の技能実習制度では、技能実習生の送り出しを担う国の組織を「送り出し機関」と呼びます。ベトナムの送り出し機関は同国政府から事業免許を付与された機関なのですが、現地では「仲介会社」「労働力輸出会社」と呼ばれています。またベトナム政府は、日本や台湾、韓国など海外への労働者の送り出しを「労働力輸出」政策として位置付け、推奨しています。「労働力輸出」という言葉はぎょっとされる方もいるかもしれませんが、ベトナムでは政府はこの言葉を普通に使っており、外貨獲得、貧困削減、失業対策のための施策として位置付けています。この政策の下、送り出し機関は営利目的のビジネスを展開しているわけです。

 ベトナムからは技能実習生としてだけではなく、留学生として来日する人も少なくありません。ジャーナリストの出井康博さんが、仲介会社に多額の費用を払い、借金をした上で来日する留学生の問題を指摘されています。私も、やはり多額の渡航前費用を借金により工面して来日してきたベトナム人留学生に聞き取りをしました。留学というルートでの送り出しもまた、仲介会社にとってはビジネスの対象なのです。

――渡航前費用はいくらぐらいするのですか?

巣内 技能実習生が送り出し機関に支払う渡航前費用はその内容が明確ではなく、ブラックボックス化しています。中には、日本の監理団体や受け入れ企業への接待費用やキックバックなどが、この手数料に上乗せされるケースもあるといわれています。ジャーナリストの安田浩一さんが2007年に発表された『外国人研修生殺人事件』(七つ森書館)では、中国の方たちが送り出し機関に高額の渡航前費用を支払い、来日していることが指摘されました。私がベトナム人技能実習生への聞き取りをする中で、中国からの送り出しと同様の渡航前費用の問題があることがわかり、国を超えて問題が繰り返されていることに驚いたんです。

 そして、技能実習生の賃金はそう高くない上、賃金から社会保険料、税金、寮費などが引かれると、手取りは10万円に届かないこともあります。聞き取りした技能実習生の中で賞与をもらっている人はいませんでしたので、年間の手取りは100万円を切ることもあります。少ない手取りから渡航前費用の借金を返すわけです。技能実習生をめぐっては、労働問題が指摘されてきたわけですが、賃金の低さと渡航前費用の借金に起因する貧困状態もまた問題なのです。

――詳しくは本書に書かれていますが、外国人技能実習生の問題は、日本だけの問題ではないということですね。

巣内 はい。日本の受け入れ企業における労働問題が指摘されてきたのですが、実際には送り出し国の問題も複雑に絡み合っています。

 技能実習制度では大半の企業が、「団体監理型」という仕組みで技能実習生を受け入れています。ベトナム側では技能実習の希望者が送り出し機関を利用し、日本の受け入れ企業は、監理団体という仲介組織を必ず利用することになっています。つまり直接雇用ではなく、労働者と雇用者の間に必ず仲介組織が入るのです。その際、技能実習生は送り出し機関に手数料を支払い、受け入れ企業は監理団体に監理費や紹介料などを支払います。

 私の聞き取りの対象となったベトナム人技能実習生59人(2005〜17年に来日)の渡航前費用は平均約94万4300円です。渡航前費用のために、ほとんどが借金をしており、借金の平均は約76万8300円でした。技能実習生は、この借金を日本で働いて得た収入から返します。ですが、技能実習生の賃金は各地の最低賃金水準に張り付いていると指摘されることもあるほど、高くはありませんから、借金返済には1~2年かかることもあります。これだけの借金を背負って行う行為を「移住労働」と言っていいのか、あるいは「債務労働」「人身取引」と言うべきなのか、丁寧に議論する必要があると思います。

――実習生の借金先は、どういったところですか?

巣内 聞き取りで興味深いと思ったのは、銀行からお金を借りた人が多かったことです。これはベトナム政府が政策的に移住労働の希望者を対象に、渡航前費用支払いのための融資をしていることが背景にあると考えられます。技能実習生の多くは農村出身者ですから、家族が土地使用権を担保に銀行から融資を受け、渡航前費用を支払うわけです。そして、技能実習生は来日後の給与から、この借金を返済するという流れなのです。この流れをみると、技能実習制度と、ベトナム政府の政策とが、結果的に借金漬けの労働者を生み出しているといえると思います。

 また日本側を見ていくと、受け入れ企業側も技能実習生を採用するため、さまざまな費用を支払っていることが見えてきます。受け入れ企業は監理団体に毎月監理費を支払っているうえ、中には紹介料を支払うケースもあります。紹介料は技能実習生1人当たり30万~50万円になるケースもあると聞きます。

 さらに技能実習生は在留資格上、最初の1年目が「1号」、2〜3年目が「2号」、4〜5年目が「3号」というのですが、1号から2号に移行するとき、2号から3号に移行するときに、それぞれ試験を受けることが求められます。この試験の受験料の中には割高なものがあり、受け入れ企業にとって負担になっているケースもあります。技能実習生は30万人を超えており、みな試験を受けるわけですから、受験料の総額は相当な金額になるのではないでしょうか。

 つまり今、ベトナムと日本の間で、技能実習生や留学生の送り出し/受け入れ事業においてさまざまな利害関係者が存在し、一つの産業が構築され、この産業がベトナム―日本間の人の移動を促進し、あるいは行き先・就労先を条件づけているのです。これを移民研究では、“移住産業”といいます。

――これまで日本政府は、実態としては労働者であるにもかかわらず、「技能」を「実習」する「実習生」だというタテマエを採ってきました。しかし、受け入れ企業は、技能実習生を労働者として扱っています。搾取はここから生まれているようです。

巣内 はい。技能実習生をめぐる問題では「悪い受け入れ企業」の問題が取り沙汰されるのですが、むしろ見るべきは、技能実習制度そのものが、“交渉力の弱い労働者”を作り出していることです。

 技能実習制度をめぐる課題は、いくつかあります。第一に、前述したように、仲介組織が技能実習生と受け入れ企業の間に入ることで生じる手数料を企業が負担しなければいけないこと。

 もう一つが、技能実習生の諸権利の制限です。技能実習生制度の下では、技能実習生は来日後、原則として受け入れ企業を変更できません。転職の自由がないのです。さらに技能実習生は家族を帯同することができず、単身で来日することになります。また住まいは受け入れ企業の用意する寮になります。こうした制度的な要因から、技能実習生は在留資格、住まい、仕事が一体化しており、がんじがらめの状態。特に受け入れ企業の変更が原則としてできないことから、受け入れ企業との間で非対称な権力関係のもとに置かれてしまいます。

 受け入れ企業に問題がある場合、支援者の手を借りるなどして、受け入れ企業の変更を申し出て、変更が認められることもありますが、そのためには、まず外部に相談し、支援を仰がなければなりません。しかし、技能実習生は借金漬けの状態で来日していますから、借金返済をせねばなりませんし、家族への仕送りの責任もあります。そのような状態において、外部に相談することで受け入れ企業が怒り、帰国させられてしまうのではないかと技能実習生は恐れ、なかなか相談できないのです。

――ブラック企業の労働環境よりひどいかもしれませんね。

巣内 技能実習生をめぐる問題をブラック企業問題に矮小化すべきではありません。個別の企業の課題はもちろん対処しなければいけないのですが、なぜ何度も技能実習生への搾取が繰り返されるのかを考える必要があります。外国人労働者支援の草分けとして知られる「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平さんは、技能実習制度は「人のよい中小企業経営者を変えてしまう制度」だと指摘しています。

 技能実習制度という制度そのものが、交渉力の弱い労働者を生み出しており、ゆえに受け入れ企業における課題が繰り返されているのではないでしょうか。もし技能実習生が自由に転職できるようになれば、企業は現状のやり方では技能実習生を引き留められなくなり、処遇改善を迫られるのではないかと思います。

 さらに技能実習生というと、長時間労働や賃金未払いなど労働問題が話題になりますが、生活面の貧弱さも問題です。せっかく借金までして日本に来ても、自由に部屋も借りられず、受け入れ先が用意した不衛生な寮で集団生活をさせられる例もあります。しかし、声を上げて処遇改善を求めることは、なかなかできないのです。
(後編へつづく)

『奴隷労働』著者・巣内尚子氏に聞く、ベトナム技能実習生の現実(前編)――奴隷生む闇の“産業”

 4月1日の出入国管理法改定から半年。日本では外国人労働者の受け入れが拡大しているが、国内では依然として技能実習生をはじめとする外国人労働者の処遇をめぐる問題が深刻だ。今年6月、ドキュメンタリー番組『ノーナレ』(NHK)がベトナム人技能実習生の労働条件や居住環境を映し出し、その凄惨な実態が明らかになると大きな反響を呼んだ。そうした企業での酷使や暴力などの実態は、多くのメディアが報じているが、巣内尚子さんの著書『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社)は、受け入れ国である日本だけではなく、送り出し国のベトナムの現状についても取材し、問題点をえぐり出している。外国人技能実習生問題の背景に広がる、深い闇の構造ついて聞いた。

ベトナム政府は労働者の送り出しを「労働力輸出」政策として推奨

――本書は、「反貧困ネットワーク」(代表世話人・宇都宮健児弁護士)が決定する「貧困ジャーナリズム賞2019」を受賞されました。おめでとうございます。

巣内尚子さん(以下、巣内) ありがとうございます。とても光栄なことです。私は国際社会学と移住現象のジェンダー分析を専攻しており、以前からアジアや日本国内で、海外就労経験のあるベトナム人や、外国人労働者の支援者に聞き取りをしてきました。私には人を支援する力はありません。いつも誰かの話を聞きに行き、その人たちの声を伝えることだけしかできなかったのですが、今回の賞は日本で働く外国の方とその支援者の皆さんに贈られたと思っています。この場をお借りして、本書の取材にご協力いただいたベトナム人技能実習生の皆さん、カンボジアと中国の技能実習生、フィリピンの労働者の皆さん、外国人を支援されている皆さんに感謝を申し上げます。

――今回の受賞は、技能実習制度が日本だけでなくベトナムにおいても「もうかるビジネス」として機能していること、それによって搾取による貧困や暴力など、重大な人権侵害が繰り返されていることが明らかにされた点が評価されたそうですね。

巣内 はい。現在、日本の外国人技能実習生の半数近くがベトナム国籍ですが、ベトナム人技能実習生は、来日するためにベトナム側の送り出し機関に高額の渡航前費用を支払っています。この渡航前費用のために、技能実習生が莫大な借金を背負っていることが問題だと思います。

 日本の技能実習制度では、技能実習生の送り出しを担う国の組織を「送り出し機関」と呼びます。ベトナムの送り出し機関は同国政府から事業免許を付与された機関なのですが、現地では「仲介会社」「労働力輸出会社」と呼ばれています。またベトナム政府は、日本や台湾、韓国など海外への労働者の送り出しを「労働力輸出」政策として位置付け、推奨しています。「労働力輸出」という言葉はぎょっとされる方もいるかもしれませんが、ベトナムでは政府はこの言葉を普通に使っており、外貨獲得、貧困削減、失業対策のための施策として位置付けています。この政策の下、送り出し機関は営利目的のビジネスを展開しているわけです。

 ベトナムからは技能実習生としてだけではなく、留学生として来日する人も少なくありません。ジャーナリストの出井康博さんが、仲介会社に多額の費用を払い、借金をした上で来日する留学生の問題を指摘されています。私も、やはり多額の渡航前費用を借金により工面して来日してきたベトナム人留学生に聞き取りをしました。留学というルートでの送り出しもまた、仲介会社にとってはビジネスの対象なのです。

――渡航前費用はいくらぐらいするのですか?

巣内 技能実習生が送り出し機関に支払う渡航前費用はその内容が明確ではなく、ブラックボックス化しています。中には、日本の監理団体や受け入れ企業への接待費用やキックバックなどが、この手数料に上乗せされるケースもあるといわれています。ジャーナリストの安田浩一さんが2007年に発表された『外国人研修生殺人事件』(七つ森書館)では、中国の方たちが送り出し機関に高額の渡航前費用を支払い、来日していることが指摘されました。私がベトナム人技能実習生への聞き取りをする中で、中国からの送り出しと同様の渡航前費用の問題があることがわかり、国を超えて問題が繰り返されていることに驚いたんです。

 そして、技能実習生の賃金はそう高くない上、賃金から社会保険料、税金、寮費などが引かれると、手取りは10万円に届かないこともあります。聞き取りした技能実習生の中で賞与をもらっている人はいませんでしたので、年間の手取りは100万円を切ることもあります。少ない手取りから渡航前費用の借金を返すわけです。技能実習生をめぐっては、労働問題が指摘されてきたわけですが、賃金の低さと渡航前費用の借金に起因する貧困状態もまた問題なのです。

――詳しくは本書に書かれていますが、外国人技能実習生の問題は、日本だけの問題ではないということですね。

巣内 はい。日本の受け入れ企業における労働問題が指摘されてきたのですが、実際には送り出し国の問題も複雑に絡み合っています。

 技能実習制度では大半の企業が、「団体監理型」という仕組みで技能実習生を受け入れています。ベトナム側では技能実習の希望者が送り出し機関を利用し、日本の受け入れ企業は、監理団体という仲介組織を必ず利用することになっています。つまり直接雇用ではなく、労働者と雇用者の間に必ず仲介組織が入るのです。その際、技能実習生は送り出し機関に手数料を支払い、受け入れ企業は監理団体に監理費や紹介料などを支払います。

 私の聞き取りの対象となったベトナム人技能実習生59人(2005〜17年に来日)の渡航前費用は平均約94万4300円です。渡航前費用のために、ほとんどが借金をしており、借金の平均は約76万8300円でした。技能実習生は、この借金を日本で働いて得た収入から返します。ですが、技能実習生の賃金は各地の最低賃金水準に張り付いていると指摘されることもあるほど、高くはありませんから、借金返済には1~2年かかることもあります。これだけの借金を背負って行う行為を「移住労働」と言っていいのか、あるいは「債務労働」「人身取引」と言うべきなのか、丁寧に議論する必要があると思います。

――実習生の借金先は、どういったところですか?

巣内 聞き取りで興味深いと思ったのは、銀行からお金を借りた人が多かったことです。これはベトナム政府が政策的に移住労働の希望者を対象に、渡航前費用支払いのための融資をしていることが背景にあると考えられます。技能実習生の多くは農村出身者ですから、家族が土地使用権を担保に銀行から融資を受け、渡航前費用を支払うわけです。そして、技能実習生は来日後の給与から、この借金を返済するという流れなのです。この流れをみると、技能実習制度と、ベトナム政府の政策とが、結果的に借金漬けの労働者を生み出しているといえると思います。

 また日本側を見ていくと、受け入れ企業側も技能実習生を採用するため、さまざまな費用を支払っていることが見えてきます。受け入れ企業は監理団体に毎月監理費を支払っているうえ、中には紹介料を支払うケースもあります。紹介料は技能実習生1人当たり30万~50万円になるケースもあると聞きます。

 さらに技能実習生は在留資格上、最初の1年目が「1号」、2〜3年目が「2号」、4〜5年目が「3号」というのですが、1号から2号に移行するとき、2号から3号に移行するときに、それぞれ試験を受けることが求められます。この試験の受験料の中には割高なものがあり、受け入れ企業にとって負担になっているケースもあります。技能実習生は30万人を超えており、みな試験を受けるわけですから、受験料の総額は相当な金額になるのではないでしょうか。

 つまり今、ベトナムと日本の間で、技能実習生や留学生の送り出し/受け入れ事業においてさまざまな利害関係者が存在し、一つの産業が構築され、この産業がベトナム―日本間の人の移動を促進し、あるいは行き先・就労先を条件づけているのです。これを移民研究では、“移住産業”といいます。

――これまで日本政府は、実態としては労働者であるにもかかわらず、「技能」を「実習」する「実習生」だというタテマエを採ってきました。しかし、受け入れ企業は、技能実習生を労働者として扱っています。搾取はここから生まれているようです。

巣内 はい。技能実習生をめぐる問題では「悪い受け入れ企業」の問題が取り沙汰されるのですが、むしろ見るべきは、技能実習制度そのものが、“交渉力の弱い労働者”を作り出していることです。

 技能実習制度をめぐる課題は、いくつかあります。第一に、前述したように、仲介組織が技能実習生と受け入れ企業の間に入ることで生じる手数料を企業が負担しなければいけないこと。

 もう一つが、技能実習生の諸権利の制限です。技能実習生制度の下では、技能実習生は来日後、原則として受け入れ企業を変更できません。転職の自由がないのです。さらに技能実習生は家族を帯同することができず、単身で来日することになります。また住まいは受け入れ企業の用意する寮になります。こうした制度的な要因から、技能実習生は在留資格、住まい、仕事が一体化しており、がんじがらめの状態。特に受け入れ企業の変更が原則としてできないことから、受け入れ企業との間で非対称な権力関係のもとに置かれてしまいます。

 受け入れ企業に問題がある場合、支援者の手を借りるなどして、受け入れ企業の変更を申し出て、変更が認められることもありますが、そのためには、まず外部に相談し、支援を仰がなければなりません。しかし、技能実習生は借金漬けの状態で来日していますから、借金返済をせねばなりませんし、家族への仕送りの責任もあります。そのような状態において、外部に相談することで受け入れ企業が怒り、帰国させられてしまうのではないかと技能実習生は恐れ、なかなか相談できないのです。

――ブラック企業の労働環境よりひどいかもしれませんね。

巣内 技能実習生をめぐる問題をブラック企業問題に矮小化すべきではありません。個別の企業の課題はもちろん対処しなければいけないのですが、なぜ何度も技能実習生への搾取が繰り返されるのかを考える必要があります。外国人労働者支援の草分けとして知られる「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平さんは、技能実習制度は「人のよい中小企業経営者を変えてしまう制度」だと指摘しています。

 技能実習制度という制度そのものが、交渉力の弱い労働者を生み出しており、ゆえに受け入れ企業における課題が繰り返されているのではないでしょうか。もし技能実習生が自由に転職できるようになれば、企業は現状のやり方では技能実習生を引き留められなくなり、処遇改善を迫られるのではないかと思います。

 さらに技能実習生というと、長時間労働や賃金未払いなど労働問題が話題になりますが、生活面の貧弱さも問題です。せっかく借金までして日本に来ても、自由に部屋も借りられず、受け入れ先が用意した不衛生な寮で集団生活をさせられる例もあります。しかし、声を上げて処遇改善を求めることは、なかなかできないのです。
(後編へつづく)

『バチェラー・ジャパンシーズン3』友永真也氏が語る、衝撃の結末までの“葛藤”と女性の“本性”(※ネタバレ)

 CMやSNS等でも話題沸騰中のAmazon Prime Video独占配信中の、リアル婚活サバイバル番組の『バチェラー・ジャパン』シーズン3。1人の完璧な独身男性(バチェラー)を20人の美女が奪い合い、最後に残った1人が勝利(というかバチェラー)を勝ち取るという、凄まじい婚活サバイバルが繰り広げられる『バチェラー』シリーズですが、3代目のバチェラーとなった友永真也氏は、結婚へ強い意気込みを持って参加していました。

 そして20人いた女性たちをふるいにかけ、第11話で、ついに水田あゆみさんを選んだバチェラー。ですが、まさかの話はここで終わらず、“バチェラー史上初”のドタバタ展開に……! ネット上は阿鼻叫喚の様相を呈している中、渦中のバチェラー・友永氏にインタビューした記事を全3回で掲載します。

友永真也氏(3代目バチェラー)が「女性の本性を暴くため」とった行動

 紺のスーツにブルーのシャツを合わせ、颯爽と現れた友永氏。中高をフランスで過ごし、貿易会社を経営する実業家で、番組解説の指原莉乃も「これまでで一番“港区男子”色が強い!」(彼は神戸在住ですが)と認めるだけあって、正に“さわやか”そのもの! 映像を通じても、そのさわやかさ、イケメンさは十分に感じられましたが、実物はやっぱり圧倒的です。

 結婚相手を本気で探しにきたと語る友永氏ですが、参加女性と一緒に過ごす時間は、想像以上に少ない(基本は別行動で、女性と過ごすのは収録時のデートやカクテルパーティ等のみ)ようですし、そんな中で、お相手を見つけるのは困難だったのでは?

「そうですね。本当に短い時間ではあったので、相手の本性を探る方法をたくさん考えましたね。本性を暴くためにできることは全てしました(笑)」

 本性ですか(笑)。どんなことをしたのですか?

「どこまで話していいのかな(笑)。本当にいろいろ考えて、たくさん質問をしました。でも結果、全然足りてなかったです。もっと問い質せばよかった(笑)。番組を通じて、女性の本音を知るのは本当に難しいということを学びましたね」

 結果、“モンスター揃い”と巷でいわれている、参加女性の本性を暴くことはできなかったようですが、誰がモンスターだったのか? 本音を隠しているのは誰なのか? 

友永真也氏(3代目バチェラー)、“乳首責め”“バツイチ告白”を受けた本音は?

 シーズン3となった今回の『バチェラー』は、参加女性たちが「モンスター揃い」といわれています。それだけに、バチェラー・友永氏への“アピール”もシリーズ史上最も激しい様子。一方で、バチェラーから仕掛けるスキンシップも激しいような……? 積極的なのは、中高を“ジュテーム”的な愛の国・フランスで過ごしたことが影響してるんでしょうか?

「いえ、そこに関してはわざとやっています。時間がないなかで、結婚相手を見つけようと思っているので、一気に距離感を縮めないと、という焦りもありまして」

 すぐに腰に手を回したり、全体的に女性との距離が近いのはそのためだったんですね。ハグなんて全員としているんじゃないですか!?

「そうですね。ハグは多いですね。ハグは全員としますね。ハグはだって、誰でもするものではないんですか?」

 ……数えるくらいしかないですね。

「そうですか。僕にとってハグは日常なので、全然ハグは(相手に対する気持ちの表れとして)判断材料にならないです(笑)」

スキンシップは女性たちも負けてはいません。しかし、積極的にアピールをした女性たちに限って、すでにお別れしてしまっているのも事実。一体、何がいけなかったのでしょうか? 

高田汐美さん(しおみん)――自己紹介よりも前にキス

 

 最初に強烈な印象を残したのは、シオミン(高田汐美さん)でした。自己紹介よりも前にキスをしてきましたよね。ビックリしませんでしたか?

「そうですね、印象は強かったですね。でも、いやらしい感じには全然思わなかったです。キスとかされてもサッパリしているように感じましたね」

 確かに、グループデートでも単独行動と取って、サッパリしてました。

「ああいう自由な感じの子、僕のプライベートでもよくいるタイプなんですよ。だから本当に一緒にいて楽しいし、仲良い友達にはなれると思います。番組を見ている、僕の友人たちからも一番人気なんですよ」

 お別れの時はカッコいい引き際でしたね。

「そうそう。最初があんな感じだったので、最後はキレてタックルとかしてくるかと思ったら、みんなに応援の言葉を残して、潔くキレイに去って行った。カッコええなと思いましたね」

 5話ではシオミンから“惚れ薬”のプレゼントもありましたが。

「あの惚れ薬、僕が毎日飲んでるサプリとまったく同じだったんです(笑)。そういう意味でも感覚が一緒なので、友達として仲良くなれるっていう運命は感じましたね!」

 初対面のキスアピールはマイナスではなかったものの、“結婚相手ではなく友達”となってしまい、お別れとなったシオミンでした。

友永真也氏(3代目バチェラー)、「彼女とお別れした理由」激白! あの発言の真意

 『バチェラー』シリーズのファンとしては、最終話を迎えるまでの間、「あんなにお気に入りに見えたのに、なぜ!?」と納得のいかないお別れ劇もありましたよね? 

 今回はお別れとなってしまった女性たちへの本心を、バチェラー・友永氏に根掘り葉掘りと聞いてみました。

 第1話では5人、2~4話は2~3人、5話以降は1人と各回で女性が脱落していきますが、バチェラーと過ごす時間が長くなるほど、ローズセレモニーでのお別れの儀式は毎回ヘビーになっていきます。涙を流して別れを惜しむ彼女たちを見ていると、「一体なにがダメだったの?」と思ってしまうことも。

バチェラー3・6話 濱崎麻莉亜さん

 6話でお別れした濱﨑麻莉亜さんのことを、すごく気に入っているように見えたので、驚きました。水族館デートでは、かなり感情が入っているように見えましたが……。

「多分、映像だと僕の感情以上に気持ちが入っているように見えるかもしれませんね」

 ビズ(フランス式のキスをする挨拶)をたくさんしていたので、そのせいもあります。

「あれはフランスでは普通のこと。友達の彼女にもするし、何なら男性にする場合もあります。握手と同じような感覚なので、キスとは違いますね。彼女とは10歳の年齢差があって、ライフステージも違うし、なんとなく彼女の前ではカッコつけないといけない気になって、本当の自分を出せないんです」

若い女性を好む男性が多いなか、年齢差が重荷になる人もいるんですね。たしかに、年は近い方が楽な面があることは否めません。

バチェラー3・7話 中川友里さん

 異例の『ローズセレモニー』前のお別れとなってしまった中川さんですが、7話でお別れをすることはすでに決まっていたのでしょうか?

「はい、彼女から話をされる前からお別れすることは決めていました。話をした時、彼女は“どっち”を選ぶのか本気で求めていたので、期待を持たせるのも申し訳ないし、彼女の出した答えがふさわしいと思いました」

 金髪でDJをしている中川さんについて、『バチェラー』シーズン1に出ていたギャルの“ゆきぽよ”にたとえていましたよね。女性陣の中では、見た目が派手なので、7話まで彼女が残っていたことを意外に思った方も多いと思います。

「彼女は良い意味でも悪い意味でも、裏表がなくてめちゃくちゃ素直で、そんなところに惹かれていました」

 でも、最終的には気持ちに答えられないと思ってしまった?

「彼女は精神的に弱い部分があるように思い、そこは気になっていましたが、一方でそこが魅力でもありました。ほかの方と比較して、相対的に考えたとき、彼女ではなかったということだったかもしれないですね」

 7話では、当初の20人から4人にまで絞られ、もう誰が落されても致し方ない状況になっています。

バチェラー3・8話 田尻夏樹さん

 田尻さんが実はバツイチで子持ちだったことは、特に気にしないとのことでしたが、やはり息子さんと直接お会いしたことで気持ちに変化が生まれたのでしょうか?

武蔵小杉「停電パニック」より怖い!? 台風、地震……タワマンのさらなる災害リスクとは?

 台風19号の大雨の影響により、神奈川県・武蔵小杉の47階建てタワーマンションの地下にある配電盤が浸水し、24階まで停電が発生。また、水を上層階までくみ上げ、各世帯に供給するという仕組みも、停電によって不具合が生じ、「全戸断水」という事態にも陥ったのだ。エアコンやテレビが使えないのはもちろん、エレベーターも動かず、トイレも流せない状況に、住民がパニックになっていると、連日テレビや新聞で取り上げられていた。

 「災害に強い」と言われていたタワマン神話は一気に崩壊したように見えるが、今回露見した以外にも、タワマンは、さまざまな恐ろしいリスクをはらんでいるようだ。今回、『限界のタワーマンション』(集英社新書)の著者・住宅ジャーナリストの榊淳司氏に話を聞いた。

「タワマンは災害に強い」イメージはなぜ生まれた?

 今回、武蔵小杉のタワマンの停電は、なぜ起こったのだろうか。榊氏は「私はまったく予期し得なかったのですが」と前置きした上で、次のように解説してくれた。

「下水の処理能力に増して雨が降り、多摩川から逆流した水がタワマンの地下に入って、そこにあった電気室がダメになり、停電したわけです。なぜ水が地下に入り込んでしまったかというと、地下駐車場のシャッターが開いていた可能性も否定できません。武蔵小杉のタワマン11棟のうち、停電したのは2棟で、ほかの棟はシャッターを締め、土嚢で浸水を防ぐなどの対策を取っていたという話も聞きました」

 タワマンは災害に強いというイメージもあったが、それは偽りだったのだろうか。

「たまに『災害でタワマンが折れることはないか』といった声を耳にしますが、よほどの手抜き工事がなされていればわからないものの、1981年以降の新耐震基準に沿って建設されたマンションであれば、理論上『折れる』なんてことはありませんし、実際にそのようなことは起こっていませんよね。そもそもなぜ『災害に強い』というイメージが生まれたかといえば、東日本大震災直後、デベロッパーが、『タワマンは災害に強い』ということを大々的にアピールするようになったことが影響しているのでは。当時、私は不動産広告業界で働いていたのですが、新しい物件が出るたびに、広告の3割程度のスペースを割いて『こんな備えをしている』などと宣伝することはよくありましたね。しかし、今回、災害に対するハード面以外での脆弱性が露見してしまったかもしれません」

 タワマンの一番の魅力は、やはり「高層ゆえに素晴らしい景観と共に生活できる」という点だろう。しかし、榊氏は「『高い』というポジションにおけるリスクはある」と指摘する。 

「2016年、カナダ・トロント市のヨーク地区救急サービスの隊員たちが、一刻を争う『心肺停止』を起こしたマンション住民の階数別の“生存率”を調査した際、25階以上は0%だったといいます。高いというのは、つまりそれだけ移動距離があり、移動時間もかかる。移動手段はエレベーターしかなく、それは電力によって支えられている……そう考えると、『景色が良いから』だけでタワマンを選ぶのは、リスキーだと感じます」

 確かに今回、停電によってエレベーターが使えなくなり、一部報道では「40階近くまで階段を上り下りする住民もいる」と伝えられ、ネット上を驚かせていた。

「東日本大震災のとき、東京電力福島第一原発事故などの影響で、計画停電が実施されましたが、せいぜい3時間程度だったので、それくらいなら部屋の中でじっとしていれば問題ありませんでした。しかし、いざ災害で停電になったら、3~4日間、電気が使えない生活を強いられることもありますし、9月に台風15号が直撃した千葉では、一部地域で、実に1カ月も停電が続きました。このような状況に陥った場合、とてもじゃないけれどタワマンには住めないと思いますよ」

 また、タワマンは「戸数が多い」という点も、災害時のリスクになり得るという。

「例えば地震が発生し、停電が起こってエレベーターが停止した場合、避難経路は非常階段しかありません。そこに一斉に住民が集まったら大渋滞になりますし、さらに『我先に』と慌てる人が続出すると、将棋倒しになる危険性もあるのです」

 さらに、武蔵小杉の一件では、「トイレが使えない」という点も大きな話題となった。榊氏いわく「停電により、下水処理にも不具合が生じ、『トイレを流すな』という命令が出ている……ということでは」と述べる。

「トイレが使えないなんて、現代の人にとってはあり得ない事態でしょう。簡易式トイレが配布されたものの、用を足した後、『手が洗えない』という問題も出てきますし、そのストレスも大きいはず。総じて、タワマンの災害時における脆弱性は、『電気に頼り切っている』という点なのではないでしょうか」

 なお、タワマン住民が災害時、地域の避難所に身を寄せようとすると、敬遠されてしまうケースもあると付け加える榊氏。というのも、タワマンの建築ラッシュとなっている中央区・勝どきは、人口が激増しているにもかかわらず、避難所数が少ないそう。榊氏が、区役所にその点について「どうお考えですか?」と質問したところ、「マンションにお住まいの方は、基本的にマンション内で自活をしていただくことを考えています」といった回答を得たという。

「避難所というのは、基本的に自分の住まいにいると命に危険が及ぶという人が避難する場所なのです。そう考えると、確かにタワマンにいても命に別状はありません。けれども、生活面に重大な不具合が生じる可能性があるということなのです。実際に武蔵小杉のタワマンの住民は、大きな荷物を持って、別の場所に避難している方も多いと聞きます」

 「災害大国」と言われる日本では、今後も大きな地震や台風がやって来ると予測できるが、今後、タワマンの住民や管理組合はどのような対策を取るべきなのだろうか。

「まず、住民は、『避難所には行けない』という前提のもと、原始的な災害対策をすべきでしょう。飲み水や食料、カセット式ガスコンロとボンベ、電池式ラジオ、水を運ぶ容器などを用意しておく。またトイレをどうするか考えておくことも重要です。今回は、管理会社から簡易トイレが支給されたそうですが、大災害が起こった場合、そのような対応を一つひとつのマンションに行うことは不可能ですから」

 一方、管理組合は、「武蔵小杉の教訓として、台風時、『出入口はしっかり閉める』『シャッターの強度を上げる』というのは徹底すべき」と榊氏。

「また、タワマンには、自家発電装置が必ずあるものの、古いマンションは24時間、東日本大震災以降のマンションでも72時間しかもたないのです。そのため、急進的な管理組合は、自家発電に加え、空いている地下駐車場のスペースに、常に電気自動車を3台ほど停めており、停電が起こった際は、それを連結してエレベーターを動かすという体制をつくっています」

 さらに、いざという時のために、医療従事者の住民を名簿化している管理組合もあるとのこと。

「あと管理組合ができる災害対策で考えられるのは、1階に広い共有スペースがあるタワマンの場合、そこを臨時避難所にするというもの。高齢者や体の不自由な人、またケガをしている人など、高層階での生活に支障を来す人を優先的に入れるようにするなど、マニュアルを作成しておくこともできるのではないでしょうか。医療チームが来ても、治療を受けたい住民が30階に住んでいる場合、『エレベーターが動かないから階段を使って上ってもらう』というのは、現実的に考えられないですが、1階の共有スペースにいたらスムーズに診てもらえるはずです。災害時、管理会社は頼れないという意識で対策を練るべきでしょう」

 今回、台風19号によって、災害時の弱さが明るみとなってしまったタワマン。榊氏いわく「これまで日本にはタワマン信仰がありましたが、今回の件でイメージダウンしたのは確か。『100点』が『70点』くらいに下がったイメージです。ただ、それも一時的なもので、2~3年タワマンに懐疑的になる事件が起こらなければ、イメージも回復するはず」とのこと。

 悲惨な災害が起こらないことを祈りつつ、今後タワマン住民や管理組合がどのような対策を練っていくのか、注目していきたい。

榊淳司(さかき・あつし)
不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰。主に首都圏のマンション市場に関するさまざまな分析や情報を発信している。『限界のタワーマンション』(集英社新書)『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)など著書多数。
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