「考え方の違いが自分たちを救うかもしれない」“自己肯定感高い中国人マンガ”が生まれた理由

 近頃Twitterでたびたびバズっている特徴的なマンガがある。白いウサギが中国や台湾の人々の流行や発言を紹介し、「楽しく生きよう!」と語るマンガだ。

 4万リツイートされたこのツイートを、タイムライン上で見たことがある人も少なくないのではないだろうか。描いているのは、イラストレーターのよねはらうさこさん。中国・台湾カルチャーに明るく、そうした「異文化」を紹介することを旨として活動している。よねはらさんはなぜTwitterでこうした発信をする道を選んだのだろうか?

――中国、台湾カルチャーを紹介するマンガをTwitterにアップするようになったきっかけを教えて下さい。

よねはら 元からライター兼イラストレーターとして活動していたんです。今みたいな形でTwitterにマンガをあげるようになったのは、2018年頃からですね。それ以前は、カルチャー紹介というよりは、友人との旅行をレポマンガにしているくらいでした。そこから、iPad proを手に入れて「もっとマンガを描きたい!」と思ったのがきっかけですね。

――なるほど、iPad ProとApple Pencilで作業がはかどるようになったというイラストレーターやマンガ家の話は耳にします。やはり便利なんですか?

よねはら iPad Pro、最高ですよ~! 絵を描くストレスが全然なくて、超おすすめです! ……ちょっとiPadの宣伝みたいですね(笑)。気軽に描いてすぐアップできるので、マンガを描くにあたって、新鮮な気持ちやスピード感を大事にするようになりました。

――Twitterマンガのスピード感ってありますよね。いわゆる「プロのマンガ家」を目指していた時期はあったのでしょうか?

よねはら 私はすごく絵がうまいわけでもないですし、「プロを目指すぞ!」みたいなテンションではなくて、「伝えるツール」としてイラストやマンガがあったというか。文章や映像が得意だったらそっちに行っていたでしょうし、私の中で最適なツールがマンガだったんです。

――そして、中国や台湾についてのマンガが拡散されるようになったと。では、よねはらさんがアジア圏のカルチャーと深く接するようになったのは、いつからなのでしょうか?

よねはら もともと小さい頃から、父の仕事の関係で、外国の方と触れ合うことが多かったんです。海外に行く機会も多かったし、父の友人の外国人が日本に遊びに来ることもあって。だから、自然と自分の日常の中に「外国の人」がいる環境だったんですね。

――なるほど。

よねはら そんな中で、父の中国関係の仕事が増えていき、母も元から中国、台湾カルチャーが好きだったこともあり、一緒に中国語教室に通っていくうちに、また友達が増えて……という感じですね。友達ができると語学力って向上するじゃないですか。そうやってどんどん中国の人や文化に触れるようになると、近い国なのに考え方が全然違うことが面白くて、「この違いをシェアしたい!」と思うようになりました。

――それは、よねはらさんのマンガにも現れていますよね。

よねはら 自分たち日本人が持っていない、「中国の良い部分」を皆にも知ってほしかったし、「違う」からこそ、素敵な影響を受けることができると思ったんです。私は東京出身なんですが、特に都心部だったということもあってか、あまり地域性を感じられたことがなくて。「なんでもあるけどなんにもない」というか。

――いま東京はオリンピックを控えて、観光、インバウンドに力を入れて再開発をしていますが、よねはらさんとしては地域としてのオリジナル性を感じないと。

よねはら 現在は大阪に住んでいるんですけど、大阪や中国には地域性の強さを感じるんです。マンガにも描いたことがありますが、中国の友達はどこ出身でも「ウチの地方は最高だからおいでよ」って言うんです。でも私は「東京は最高だからおいでよ」と思えなくて。下町に住んでいればまた違ったかもしれないけど、都心部にいたわたしが自信を持って連れていけるのは渋谷のスクランブル交差点ぐらいしかないかも(笑)。だからそういう地域性の強さに対して憧れがあります。

 

――日本国内の中国のイメージって、この数年で二極化しているように感じます。以前からあるネガティヴ・ヘイト的なイメージと、最近は「中国スゴイ! 進んでる! それに比べて日本は……」的な言説も目立ちます。

よねはら 今でも、私のマンガの内容とは直接関係ない、中国嫌いのコメントは届きますね。私もニュースだけを見ていたら、そんなイメージを持っていたかもしれない。それに、皆が中国を知る機会が増えたから「スゴイ」という意見も増えたのかな。とはいえ、「中国最高! 日本ダメ!」みたいなのも違うと思うし、私としては、お互いにいい影響を与えながら、国と国の仲はともかく、人同士が仲良くなれたらいいなと思っています。

――何万リツイートも拡散されると、ちょっとした商業メディアに掲載されるよりも「見られる」機会があると思います。ポジティヴな意見もネガティヴな意見もダイレクトに、作家個人に集まりがちです。

よねはら 激しく「炎上」してしまったこともあります。とても反省しているのですが、伝えたい気持ちが先行して強い言葉を使ってしまったせいで、私の考えていることがうまく伝わらなくて。私自身は「人類が平和になるためにはどうしたらいいか」とわりと本気で考えているのですが、過程をないがしろにしてしまうと自分の考えていることが違った形で受け止められてしまう。もともと賛否両論あるだろうなとは思っていましたが、「差別主義者だ」といった人格を否定するコメントがたくさん届いたときには、「もう生きていては許されないのでは」ってくらい堪えました。わたしだけではなく、きっといろんなジャンルの人がSNSをきっかけにそんな気持ちに陥っているのかも。もっと表に出ている人はさらにたくさんの鋭い言葉を浴びているのかも、といろいろ考えるようになりました。私自身も、言葉で人を活かすことも殺すこともできるということは忘れずにいたいですし、SNSに関わる人すべてに知っていてほしいです。

――その一方で「これはバズってよかった」と思うマンガや記事はありますか?

よねはら 中国の人の考え方や生き方についてのマンガは、バズってよかったと思います。今って皆が日々生きづらさを感じていて、特にSNSではあらゆるところでさまざまな争いが起こっているじゃないですか。好きでSNSやってても「なんか疲れるな」ってことはある。そんな中で、中国の子たちと話していると、自己肯定感の高さを感じることが多くて。この「違い」が自分たちを救うかもしれないと、マンガを描いているところはあります。もちろん、「全部中国の真似をしろ、中国人になれ」なんてことは言ってなくて、「こういう考え方があるよ」と知ることで、日本での生きづらさが少し軽くなるんじゃないかとシェアしていきたいんです。実際に「気持ちが軽くなった」「元気が出ました」なんて感想をもらえると、やっててよかったって思いますね。

――ちなみに、最近気になっている、シェアしたいと感じる中国カルチャーはありますか? 例えば、先日の「独身の日(中国では、11月11日が1が並ぶことで『独身の日』と呼ばれ、大規模なセールが開催される)」は、中国全体で盛り上がっていたようですが(※取材は11月下旬)。

よねはら すごく盛り上がってました! 1時間で何兆円も動いていたみたいです。この日を盛り上げるためのコンサートもあったりして、一大イベントですよね。中国にいる友だちからも盛り上がっている様子は伝わってきました。シェアしたいカルチャーでいうと、ガジェットやファッションが、最初は他国の真似から入っていても、どんどん現地ナイズされていくのが興味深いです。だけど、私はやっぱり「考え方」が一番面白いと思います。

――最後に、マンガを描く上での目標はありますか?

よねはら 最終的には、私のマンガに出ている友達を、読者の方の友達くらいに思ってほしいんですよ(笑)。「知っている人のいる国」って親近感がわくと思うんです。私が友達をマンガで紹介していくことで、もっと中国を身近に感じてもらえたらうれしいですね。

(取材・構成:藤谷千明/編集:斎藤岬)

●よねはらうさこ
イラストレーター。Twitterやnote、ブログ等で中国を中心とした異文化を紹介するマンガやイラストを発表し、人気を博す。
@yoneharausako

 

『おっさんずラブ』シーズン2のここが許せない!? 「カップリングは事前提示を」腐女子が抗議

 昨年4月期に放送され、大ヒットとなった連続ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、以下、シーズン1)。連ドラでは異例となる、男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)作品で、今年11月からは『おっさんずラブ-in the sky-』(以下、シーズン2)もスタートした。しかしファンからは、シーズン2がシーズン1とはまったく別の物語である一方、メインキャラクターの春田創一(田中圭)と黒澤武蔵(吉田鋼太郎)だけ役名そのままに、同じ俳優が演じている点に批判が集中。シーズン2が佳境に入る現在もまだ、炎上状態が続いている。

 今回サイゾーウーマンでは、シーズン2に物申したいという、シーズン1の腐女子ファン3人の座談会を開催。「BL作品としてあり得ないつくりになっている」と語る、その意味とは――。

(前編はこちら)

【座談会参加者】
Aさん:中学時代から2次元、3次元問わず愛好。田中圭の顔が三度の飯より好き。しかし、シーズン2での春田に「イライラが止まらない」。
Bさん:林遣都の演技力に魅せられてシーズン1のファンに。過去に『おそ松さん』(テレビ東京系)にどハマりしていたが、シーズン2で熱が冷めた経験があり、「またこのパターンか」と嘆いている。
Cさん:BLも少女漫画も大好き。牧と春田の関係性に萌えていたが、シーズン2の成瀬と春田には「心がまったくなびかない」と漏らす。

『おっさんずラブ2』春田と成瀬のキスシーンに違和感

――シーズン2では、「天空ピーチエアライン」を舞台に、CAの春田をめぐって、キャプテンの黒澤と副操縦士の成瀬竜(千葉雄大)、整備士の四宮要(戸次重幸)が四角関係を展開するというストーリーになっています。座談会が行われている現在、第5話まで放送されている状況です。好みは千差万別だけに、一概には言えないものの、腐女子である皆さんから見て、シーズン2のここがダメ! というポイントはどこにありますか? 

A シーズン2を楽しく見ている腐女子もいるというのは理解した上で、私の意見を述べますね。ずばりシーズン2は、BL作品として安心して見られないんですよ。シーズン1は初回から、春田と牧凌太(林遣都)が最終的にくっつくというのがおおかたわかった上で見ることができたのですが、シーズン2の春田は、成瀬と四宮、どちらを選ぶのかがずっとわからないままなんです。

B カップリング表記のない同人誌に金は出せないよ! というやつですね。

A そうです。私は四宮と春田のカップリングは好きだけど、成瀬と春田のカップリングは好みではない。だから、最初に提示しておいてほしいんですよ、どっちとくっつくか。

C 第5話で、春田が成瀬にキスをしたから、まぁ何となく、この2人がくっつくのかなという予想はありますが、始まる前に教えておいてくれよ、とは確かに思います。ただ私はそもそも、春田と成瀬のカップリングに疑問があるんです。というのも、春田は、シーズン1から引き続き、「天真爛漫」「おっちょこちょい」「一生懸命」で、誰からも愛されるキャラのノンケ。一方の成瀬は、いわゆる「ツンツン系ビッチキャラ」のゲイもしくはバイ。春田は、成瀬を「放っておけない」と、いろいろおせっかいを焼いていて、四宮と仲良さそうにしているの見て、ジェラシーを感じている。一方の成瀬は、そんな春田をうっとうしく思いながらも、ちょっと受け入れつつある。そこで疑問なのが、春田はどうして成瀬に「キスしたい」と思うほどの感情を抱いたのか、なんです。

B 春田の人間性がまったくわからないんですよね。もともと彼はノンケですから、同性を好きになることにハードルがあるはずで、それが描かれていないような気がしますね。ここで成瀬を強く意識した……というのが、薄ぼんやりしているんです。一応初回で、成瀬が突然春田にキスをするシーンがありましたけど、あれでは弱すぎる。春田から成瀬に矢印を向かせるのであれば、ど初っ端で“うっかり寝てしまう”みたいな展開じゃないと、なかなか物語が進展しないですよ。それを無理やり動かそうとするから、違和感だらけの唐突なキスシーンになってしまう。

C 「なんで俺がこいつと!?」というところから意識し始める王道のアレですよね。少女漫画にも、セックスシーンではないまでも、ありがちな展開です。

A でもあの時間帯のドラマで、セックスは描けないですよね。せいぜい朝チュンくらい。多分春田と成瀬って、ケンカップル(いつもケンカばかりしているカップル)みたいなものを狙っているとは思うんですけど、うまくいっているんですかね。あと、私も5話のキスシーン、春田の気持ちがまったくわからなかったですね。「クスリでもやってんのか?」と疑わしくなってしまうほどの異常行動だったというか。胸キュンどころか、引いちゃいましたよ。しかも成瀬は拒否していたのに、無理やり……。

B シーズン1の初回でも、牧が春田に無理やりキスをするシーンがありましたよね。あのシーンはどうでしたか?

A あれも私は、ちょっとどうなんだろうと思ったんですよ。でも、春田と牧が最終的にくっつくのはわかっていたから、まだ許せました。だからこそやっぱり、最初に誰と誰がくっつくかは提示しておいてもらわないと。

――ほかにも気になるところはありましたか?

C あのちょっと思ったんですけど、奥手で真面目、かつ優しい四宮と、ツンツン系ビッチの成瀬って、ものすごく王道カップリングじゃないですか?

A そうなんですよ……!! っていうか、成瀬って四宮のことが好きじゃないですか。だから、四宮が成瀬の気持ちに応えてくれさえすれば、全ては丸く収まるんですよ。春田さえいなければ。春田が邪魔なんですよ!

C Aさん、シーズン1のときは、「理想の受けの顔」とか言っていたのに(笑)。

A シーズン1の春田は、天真爛漫ながらもすごく色っぽかったのに、シーズン2では、ただただ幼稚な印象が強いんですよ。

B それは、林遣都の湿度ある演技に、田中圭が感化されていたからだと思いますよ! ちなみに、四宮と春田も、結構王道カップリングなのではないかなと思うのですがいかがでしょう?

A 四宮は料理上手だし、仕事熱心だし、でも春田に素直に気持ちを伝えられないところがあるという点で、牧にかぶるところがあると思います。だから、王道だとは思うのですが、いかんせん第5話時点で、四宮と春田はくっつきそうにない。悔しいですね……。

B あと、これは腐女子視点とはちょっとズレてしまうかもしれませんが、製作側が何を思ってこのドラマを作っているのだろうというのが、わからない。シーズン1は、「さまざまな愛の形がある」という大きなテーマがあって、春田と牧以外にも、いろんなカップルが生まれました。でもシーズン2は? 春田を取り合う大合戦を描きたいのか、成瀬と四宮それぞれの家族の問題をシリアスに描きたいのか、はたまた黒澤キャプテンのコメディを描きたいのか……根底にあるテーマが見えてこないから、どの要素も中途半端にしか見えないんです。

C 黒澤キャプテン、ちょっと浮いてますよね。シーズン1は、春田と牧のカップリングを安心して楽しめていたから、黒澤部長で笑えていたのに、シーズン2では楽しむ余裕がないです。あと、個人的に、緋夏(春田の高校の後輩で、黒澤キャプテンの娘/佐津川愛美)が本当に苦手ですね。きゃぴきゃぴ可愛い系のステレオタイプの女性像というか。BL作品において、この女モブキャラはウケないのでは。それに、父と娘である黒澤キャプテンと緋夏が、春田を取り合う関係になるのも、私は生理的に無理ですね……。

――シーズン2への止まらない苦言をありがとうございました。今後、BLドラマを世に出そうという作り手は多いと思うのですが、腐女子目線で「ここを押さえた方がいい」といった点はありますか。

A みんなが大好きなBLマンガを原作にして、ちゃんとしたキャスティング、かつ丁寧に映像化することに尽きると思います。今年1月期の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)が好評なのは、これらを全て踏まえたからなのではないでしょうか。言わずもがな同作はよしながふみの大ヒットコミックですし、シロさんを演じる西島秀俊、ケンジを演じる内野聖陽が原作にビジュアルを寄せてきていたのもよかったです。作品自体にも、原作へのリスペクトを感じました。

C 元も子もないと思われるかもしれないけれど、大事故を起こさないために、そもそも「ヒット原作ありき」がいいかもしれませんね。

B あと私は、腐女子にウケたいのであれば、俳優の手の動きや視線の動きなど、細かなところを捉えてほしいです。というか、そういったところまでできる俳優を起用してほしい。BLドラマでは、心の機微こそ見たいという腐女子は多いような気がしますね。まぁそれをできていたのが林遣都だったわけですが。

A それから「結局誰ともくっつかない」という結末は、受け付けられないという腐女子が少なくないように思うのですが……。

C 少女漫画もそうですよ。基本はハッピーエンドであってほしい。シーズン2で設定が変わると聞いた時、「こんなことするなら、シーズン1で牧とくっつけなきゃよかったのに」と一瞬思ったんですが、やっぱりダメですね。くっつかなかったら、それはそれで暴動が起きていた。

B まぁ今回の座談会を総括すると「カップリングは事前に提示せよ」ですよね(笑)。「どっちを選ぶのかな?」というハラハラ要素は、BLにはいらないと思います。

A 最後に、腐女子は結構うるさいです(笑)。もうお気づきかもしれませんが。とにかく、こだわりが強い人種だというのは、頭に入れておいていただけるといいかもしれません。

『おっさんずラブ』シーズン2に腐女子たちが物申す! 「BLタブーを犯した」の意味とは?

 いよいよクライマックスを迎えようとしている連続ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)。同作は、男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)作品で、社会現象になるほどの大ヒットとなった2018年4月期『おっさんずラブ』のシーズン2なのだが、制作発表当時から、一部ファンの間で物議を醸していた。

 というのも、『おっさんずラブ』(以下、シーズン1)は、「天空不動産」の社員である主人公・春田創一(田中圭)が、部長である黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と後輩の牧凌太(林遣都)に恋心を抱かれ、最終的に牧と両想いになって結ばれるというハッピーエンドを迎えたものの、『おっさんずラブ-in the sky-』(以下、シーズン2)では、舞台や設定、キャラクター、そしてキャストまでもが大幅変更に。春田と黒澤という役柄は残り、田中、吉田も続投しているが、牧と彼を演じる林は姿を消し、舞台も「天空ピーチエアライン」にチェンジ。CAの春田をめぐり、キャプテンの黒澤と副操縦士の成瀬竜(千葉雄大)、整備士の四宮要(戸次重幸)が四角関係を展開するというストーリーになったのだ。

 これに、春田と牧の物語を愛していた一部ファンは激高。放送前から「私の大好きな『おさラブ』がなくなってしまった」「天空不動産の春田と牧の続編が見たかったのに」「シーズン2は、ほかのドラマとして放送してほしい」などの悲痛な声がネット上に噴出し、放送が始まると、一部から内容自体にも批判が飛び交うようになった。果たして、彼女たちは、何に憤り、悲しんでいるのか――今回サイゾーウーマンでは、シーズン2に物申したいという3人の女性に集まってもらい、座談会を開催。この3人は「腐女子」というバックボーンを持ち、この炎上の原因は「BL作品としての“タブー”を犯したこと」と持論を展開する――。前編では、シーズン1大ヒットの理由をあらためて考察してもらうとともに、なぜシーズン2で一部ファンが大荒れになったのか、話をしてもらった。

【座談会参加者】
Aさん:中学時代から2次元、3次元問わず愛好。田中圭の顔が三度の飯より好き。しかし、シーズン2での春田に「イライラが止まらない」。
Bさん:林遣都の演技力に魅せられてシーズン1のファンに。過去に『おそ松さん』(テレビ東京系)にどハマりしていたが、シーズン2で熱が冷めた経験があり、「またこのパターンか」と嘆いている。
Cさん:BLも少女漫画も大好き。牧と春田の関係性に萌えていたが、シーズン2の成瀬と春田には「心がまったくなびかない」と漏らす。

――最初に、皆さんが『おっさんずラブ』にハマッたきっかけを教えてくれますか。

A 私はシーズン1の放送が告知されたとき、「絶対見ない」と思ってたんです(笑)。BLのことを知らない人が、「腐女子はこういうのが好きなんでしょ?」と安易な気持ちで作ったドラマなのではないかなと、邪推してしまって。腐女子は少年マンガを読んで、「このキャラとこのキャラはできてる」と妄想を働かせて楽しむ生き物。だから、腐女子用にあらかじめ作られたものに、興味をそそられないんですよ。でもその半面、気になってはいたので、公式サイトを覗いてみたら、「ん? めちゃくちゃ“受け”の顔をした人がいるぞ?」と。それが、田中圭だったんですけど(笑)。それで、2016年末に放送された単発ドラマを見たら、田中圭がめちゃくちゃ可愛くって、シーズン1初回から見ることにしました。

B Aさんは“牧春”の方なんですね。私はシーズン1に関しては後発組。最近あんまりハマれる作品がないなぁと手持ち無沙汰で、Amazon Primeを物色していたときに、「あぁ最近話題になってるやつね」と思って見始めたのがきっかけですね。気づいたら一晩で一気見(笑)。私、そもそも「ショタ」の人なんで、サラリーマンは許容範囲外なんですが、黒澤部長のコメディ部分が笑えたし、春田と牧のBLストーリーも面白く見ることができました。ちなみに私は、“牧春”も“春牧”もどっちも好きです。

C 私も最初はまったく興味がなくて、でも腐女子界隈で話題になってるのを知って見始めました。“牧春”のカップリングって、BLというか、少女漫画においても超王道。なので、途中からでも「あ、はいはいこれね!」「100億回見てきたやつ」って感じで、入りやすかったんです。

B 「カッコよくて優秀でクールで、でもちょっとこじらせてる」牧と、「天真爛漫でおっちょこちょいで一生懸命で、誰にでも愛される」春田のカップリングは、もう王道中の王道。

A そうそう。シーズン1がなんであんなに大ヒットしたかって、私は「王道だったから」に尽きると思うんですよ。教科書通りだから、大半の腐女子が安心して見られたんじゃないかなって。女性キャラクターも教科書通りという印象。荒井ちずは、春田の幼なじみで、彼のことをよく知っていて、淡い恋心を抱いているんだけど、でも彼の幸せを思って背中を押す……これぞBLのモブ女(笑)。ストーリーも教科書通りですよね。途中いったんはくっつくんだけど、ゲイとノンケゆえのすれ違いによって関係が崩れかけ、でも最終的には「やっぱりお前がいい」と気づいてハッピーエンド。

C 最後の最後にくっつくんじゃないんですよね(笑)。やっぱり、延々すれ違いを見せられてもつらいだけだし、要所要所に胸キュンシーンがないと。だから、いったんくっつく展開は王道なのかなと思います。みんな、風邪を引いた牧を春田が看病するシーン、鬼リピしたでしょう?

B もちろん!! あれが見たいんですよ、腐女子は(笑)。大好きな2人が、イチャイチャしてるところが見たい。私はシーズン1って、林遣都の演技によって支えられていたと思ってるんです。湿度があるんですよ、彼の演技には。第4話で、春田が食事中の牧に「俺も食べたい」と言ったとき、「あげないよ」と意地悪く返すシーンがあって、この「あげないよ」はアドリブなんですが、その言い方や表情、視線、全てから牧の春田への感情が伝わってきて……牧の心の機微を感じられたのが、腐女子としてシーズン1にハマッた理由ですね。

――大盛り上がりの中、終了したシーズン1でしたが、その後劇場版を挟んで、シーズン2の詳細が告知されるとファンは大騒ぎになりましたよね。

A シーズン2の詳細が発表されて、突然ファンが爆発したわけではないんですよ。一個人の視点からですが、最初にファンがざわついたのは、シーズン1の最終回予告だったと思っています。

C あれは荒れた~(笑)。最終回予告で、春田と黒澤部長の結婚式シーンが流れたんですよ。牧春のハッピーエンドを期待していた腐女子が大荒れに荒れて。これってつまり、コミケで「〇〇×●●」というカップリングが表記された同人誌を買ったのに、家に帰って読んでみたら、別のカップリングだった……みたいなことですから!

A しかも、春田が黒澤部長を受け入れているように見えたのがよくなかった。「それでいいのか! 春田!」って。結局、牧とハッピーエンドになったからよかったですが、あの時、公式SNSアカウントに抗議メッセージを送ってたファンも多かったから、テレ朝の製作陣は「腐女子こわっ」と思ったかもしれませんね(笑)。

B その後の劇場版はどうでしたか? もちろん「面白かった」という人も多かったとは思いますが、私が見たいものではなかったですね。もっとイチャイチャしてる2人の幸せな日常を拝みたかった。製作陣は、黒澤部長のコメディ要素が世間にウケてると思っているのではないでしょうか。

A 春田が寝坊する、牧が朝ご飯を作る、2人で一緒にそれを食べて出勤する、同僚から「ラブラブだね~」とやいのやいの言われる……そういうのが見たかったのに! 派手な爆破シーンなんて別にいらなかったんですよ。

B テレ朝って刑事ドラマや特撮ドラマに長けているから、お家芸である爆破をやりたくなっちゃったのかもしれません。あと劇場版は、「春田と牧の物語が続くのかな?」と期待させるようなラストでしたよね。シーズン2は「田中圭以外のキャストが未定」と伝えられていて不安だったこともあり、あのラストに希望を見いだしたファンは少なくなかったのでは。なのに、シーズン2の詳細が発表されたら、牧がいなくなっていて、世界観も全然違っていて、でも、春田と黒澤は存在しているという。「お前らは誰だ?」と思いました。

C Twitterの公式アカウントがそのままシーズン2に引き継がれたり、インスタグラムの「武蔵の部屋」の過去投稿が消されたのも悲しかった。私たちの大好きなあの世界が、上書きされていく、なかったことにされていく……という。

A 本当に、日々公式から燃料がドバドバ投下されているような感じで、大炎上でしたよね。田中圭がシーズン1の放送中から、ブログで「遣都と遊んだ」などと報告してくれていたんですけど、その影響なのか、どこか春田と牧がドラマ内だけでなく、現実世界にも存在して仲良くしているような錯覚にとらわれていたというか。だから、そんな2人が引き離されてしまう、なかったことにされてしまう、とショックを受けた部分もあったかもしれません。

B 正直私は、その感覚は理解できないんですよ。2次元にしかハマッたことがなかったから、役はあくまでも役だと思うし。でもAさんの話を聞いて、その感覚の人がシーズン2の発表を受けたら、死ぬな、と思いました。

C 私は、一部のファンの行動に耐えられなくて。11月1日の牧の誕生日に、新聞にお祝い広告を出すというファン主導の企画があったじゃないですか。この世から消されかかっている牧の存在を知らしめたいという切実な気持ちはわかりつつも、一部のファンが牧を私物化していないかと思ってしまって。オタクのエゴというやつですよね……。

――シーズン2が荒れに荒れた理由は、やはり春田と牧というカップリングを崩したということなのでしょうか。

A そうですね。腐女子の最大のタブーを犯してしまったと思います。結局『おっさんずラブ』が売れたんじゃなくて、“牧春”“春牧”というカップリングが売れたんですよ。そこのところを、テレ朝は勘違いしたのではないでしょうか。私にはやっぱり、パラレルワールドって理解できない。

C 多分、シーズン2も楽しめているファンは、シーズン1とは完全に別物として見ていますよね。だから、これだけは言いたい、テレ朝さんよ、ドラマのタイトルと役名を変えてくれ!

B そもそもの話していいですか? どうして私たち腐女子って、カップリングありきなんでしょうか。私自身、どうしてこんなにカップリングを重要視しているのかなって。もうそういうもんだ! とも感じてるんですけど。

C 私の場合、「この人」と「この人」の関係性に萌えているから、カップリングありきで物語を見るのかなと思います。私は腐女子ですけど、年上女性と年下男性のカップルモノも好きなんです。シーズン1の蝶子さん(黒澤の元妻/大塚寧々)とマロ(春田の後輩/金子大地)の年の差カップルも大好きでしたね。世間的に、女の方が年上だと、偏見の目で見られがちじゃないですか。でも物語の中で、そういった2人が心を通わせていく姿に胸がときめくんですよ。

A 私は蝶子さんとマロのラブストーリーは、正直「そこいる?」と思っちゃったんですけど(笑)。シーズン1の脇役キャラに関しては、武川さん(天空不動産営業所主任、牧の元恋人/眞島秀和)だけが、なぜか最後まで幸せにならないのも気になってたし、いろいろ思うところはあるんです。でも、やっぱり“牧春”のカップリングが大好きだから、見続けていた。この“カップリング”ありきというのは、何かもう性癖としか言えませんね。

B 性癖っていうのは、そのままセクシュアルな意味での?

A そうです。私、BLにセックスシーンは絶対にほしい腐女子なんです! BLマンガでも、もう1ページ目からセックスシーンでいい。セックスは2人じゃないとできないですし、どっちが受けでどっちが攻めかというのは、もう絶対考えますよ。カップリングありきというか、私の性癖ありきで、物語を見ているという感じですね。まず自分の確固たる性癖があって、そこに当てはまる人を2人見つけてカップリングを作る、だから、一度できたカップリングは絶対壊したくないと思ってしまうんです。

C たぶんAさんと私が言ってることって、だいたい同じことだと思いますよ。腐女子には、私の好きな「組み合わせ」というものがあるんですよ。シーズン1の春田と牧は、多くの人が好きな……例えば「カレー」みたいなものだったから、あそこまでヒットしたのでしょうね。

B シーズン2でも、「カレー」みたいなカップリングを作れればよかったんですけど……どうですか? 私はうまくいっているとは思えないですね。

――では後編で、「シーズン2のここに物申す!」という点を聞かせていただきましょう。

(後編につづく)

学生お笑いブームも我関せず……“バズる学生芸人”がコントライブをやる理由

 今、お笑い第7世代といわれる人たちを中心にお笑いブームが盛り上がる中、それに伴い「学生お笑い」界隈もにわかに注目されつつある。各大学の落研(落語研究会)やお笑いサークルに所属し、大学の垣根を越えてイベントを開催したり、賞レースのような催し物を開いたりしている団体もある。にゃんこスター・アンゴラ村長やひょっこりはん、今年の『M-1グランプリ』準決勝進出者にアマチュアながら名を連ねた「ラランド」なども、学生お笑い出身だ。 

 そんな中、「賞レース」や「大学お笑いサークル」には目もくれず、自分たちで定期的にコントライブを開催している大学生のユニットがある。「煩悩教会」だ。主宰の青木宏樹さんは上智大学の3年生。「青木」というアカウント名でTwitterをやっており、

などのつぶやきも話題となった。

 なぜ彼らはお笑いをやるのか? イマドキの大学生にとって、「お笑い」とはどういう存在なのか、どんなことに楽しさや面白さを見いだしているのか? 青木さんに話を聞いた。

***

――煩悩教会は現役大学生4人のユニットで、これまでに4回単独ライブを行っています。コントを始めようと思ったきっかけは、なんだったんですか?

青木 高校生の頃からバナナマンやラーメンズのコントが好きで、漠然とお笑いの世界に憧れがありました。大学に入ってすぐ、知り合いのイケメン2人に「劇団を立ち上げたい」と誘われて、「それぞれ友達に声かけてみよう」ということになったんです。でも、学生のそういうノリって、だいたい頓挫するじゃないですか。だから、どうせなら自分が面白いと思ってるヤツを呼ぼうと考えて、高校の友達を軽い気持ちで誘って、それぞれの仲間を紹介し合ってみんなで集まったりしてました。で、案の定、立ち上げのイケメン2人が恋愛関係でモメて仲悪くなって(笑)。

――学生っぽいです(笑)。

青木 それで、集まった人たちがどんどん抜けていっちゃって。結局残ったのが俺と、俺が高校時代一番面白いと思ってたヤツ2人、それから新しく仲良くなったヤツの合計4人でした。別に劇団に対する熱意はないけど、なんかやってみようかと、煩悩教会を結成してネタを作ることになりました。

――それで会場を借りてライブをやったんですね。

青木 メンバーの一人の実家が軽井沢に別荘を持ってて(笑)。そこで合宿じゃないけど、遊んだりしゃべったりしながら、その延長で10個くらいネタを作ってライブをやりました。お客さんは30人ぐらいですかね。でも、割とうまくいったような手応えがありました。ただ、俺以外の3人はコントに興味はなかったし、みんな就活とか留学とかそれぞれの学生生活があるんで、それから4回単独ライブは続いてるんですけど、毎回俺が一人ひとり説得して参加してもらってる感じです。

――煩悩教会のメンバーは、特定の大学のお笑いサークルや落研には所属していないんですよね。今は大学お笑いサークル出身で活躍している芸人さんも多いですが、どこかに入ろうと思わなかったんですか?

青木 一度、メンバーの一人と、ある大学のお笑いサークルに見学に行ったことがあるんですけど、会話の中でかる~くボケっぽいことを言ったら「君たち、そういう感じのボケをするんだね」って言われて。「うわっ」て思って、「やめよやめよ、逃げよう」って(笑)。大学サークル内のNo.1とか、“大学お笑いのトップ”とかじゃなく、自由にネタを発表できる場を、自分たちで作ってやっていったほうがいいんじゃないかって思いました。

――それで、単独ライブだけを続けることにした、と。

青木 お客さんは知り合いも多いですけど、顔見知りじゃないTwitterのフォロワーの方も来てくれてますね。口コミで、ちょっとずつ広がっていってる感じはあります。

――『キングオブコント』や『M−1』などの賞レースも、お笑いの活動をする上では避けて通れないものだと思うのですが、そういったものに出場したことはありますか?

青木 「何かの賞レースに出て一番になりたい」と思ったことはあります。ただ、いま自分が目指しているものって、「面白さ」の精度を上げて誰かと競うようなものじゃなくて、もっと普通に「友達と何かやってて楽しい」みたいなことを形にしたり、「俺の友達、こんなにアホで最高だから、みんなも見てよ!」っていう感覚の延長なんじゃないかって思うようになりました。

――ひとつのネタを練って練って、勝負するのではなく。

青木 『キングオブコント』も『M-1』も大好きだし、出場してる芸人さんたちのことはめちゃくちゃリスペクトしてます。プロの芸人さんたちが賞レースを目指すのは、「スポーツ/競技」のようなものなのかなって思います。大会のためにコンディションを整えて、トップを獲るためにいろんなことを考えてネタを作っていく。それで言うと、俺たちのやってることは「運動」に近いのかなと思ってます。みんなで集まって楽しいことをやってて、せっかくだから観てもらおうって「運動会」を開くみたいな。

――「伸び伸びと体動かしてるから、よかったら見て」というような。

青木 でも、「運動会だから真剣じゃない」ってことではないじゃないですか。スポーツ競技とは見せる側のスタンスや見せ方が違うだけで、ちゃんと笑ってもらおうと思って考えるし、練習もしているし。ただ、「誰か」とか「何かの評価」とかに合わせるんじゃなくて、自分たちのホームグラウンドを作って、それを大きくする作業のほうをやっていきたい。もちろん、そんなに甘くないって絶対言われるとは思うんですけど、そこはもう、自分たちで責任を取ってやるんで、っていう。

――青木さんはTwitterのフォロワー数も多くて、発信力もあると思うのですが、普段そこは意識してSNSを使っていますか?

青木 半年くらい前までは、「ちゃんとTwitterやらなきゃ」「面白いことつぶやいていかなきゃ」っていう気持ちでいたんですけど、そんなに気にしなくてもいいかな、と思ってきました。

――Twitterの何万「いいね」より、目の前のお客さんを笑わせるほうが喜びは大きいですか?

青木 それはもう断然。Twitterでバズることへの快感は、ほんと全然ないです。自分たちのコントの映像やラジオの音源に反応があるのはうれしいですけど、それ以外の日常のつぶやきに対する反応についてはほとんど思わないです。

――「Twitterでバズりたい」「面白いと思われたい」と考えている人もいっぱいいると思うのですが、その感覚はない?

青木 俺の場合は、日記みたいに使ってるだけなので。自分の身の周りの人がどれだけ面白かったかを、淡々とつぶやいてる感じです。「自分の考えた渾身のネタツイート」みたいなものとは違うんですよね。俺自身がこの楽しかったことを忘れたくないんだっていうものを、記録として書いてます。

――じゃあ、実際の活動とSNS上の自分は切り離して考えたいですか?

青木 いや、窓口としては大事にしていきたいと思っています。ラジオの仕事とか、映像の仕事とか、たまにいただけるようになってきたので。

――青木さんは現在大学3年生ですよね。卒業後の進路については、どう考えていますか?

青木 ずっとお笑い芸人になりたかったけど、煩悩教会でライブをやってみて、その欲は満たされてきたような気がします。このまま定期的にコントライブを続けていって、ちょっとずつでも大きくしていきたい。「芸人」という職業より、煩悩教会を頑張っていきたいという気持ちが強いです。

 それとは別に放送作家をやってみたい気持ちもあるし、少し前にコピーライターの仕事も頼まれたんですけど、そんな感じで、いろんなことをやっていけたらいいですね。そういうのって、なんていうんですか? フリーランスってことでいいんですかね。

――どこかの企業に勤めて、副業としてやっていくというやり方もありますが。

青木 今、毎日朝9時から12時に家の近くのでっかいドトールに行って、そこにこもって読書したり映画観たりコント見たり書いたりっていう作業をしてるんですけど、その時間が最高すぎるんですよ。それなくなっちゃうのが嫌だなって(笑)。

――周りから「ちゃんと就職したほうがいいんじゃない?」とは言われませんか?

青木 そういうちゃんとした考えをする人が、周りにいないです(笑)。これはわがままだとは思うんですけど、嫌いなことをやってお金持ちになるなら、好きなことだけでギリギリで生きる方がいいっていう思いが、めっちゃ強いんですよ。作家の坂口恭平さんの暮らしほうとか、すごく理想です。

――お金を稼ぎたい、あるいは有名になりたいという欲は、そんなにないのでしょうか?

青木 もちろんお金は欲しいですし、有名にもなれたらうれしいですけど、何を幸せの第一に置くかって考えた時に、「周りにいる人たちと楽しく生きたい」っていうのが一番だったんですよね。自分の大学生活3年間を通して、だんだんそれがわかってきました。「面白いことをやりたい」ってことは「芸人になりたい」ってことか? と思ってコントをやってみたり、その結果、芸人になりたいというよりは「楽しい」ということ自体が大事だったんだって気付いたり。

「面白いと思ったことを残しておきたい」と思ってTwitterを始めて、フォロワーが増えたけど、それ自体には喜びは感じない。それよりも、ツイートを読んで面白がってくれた人たちと、仕事やプライベートで関わり合って生きていくことのほうに価値があるかもって思えてきたのもそうですね。卒業するまでに、なんとなくこの先どうやって生きていくかの基盤を整えたいと思ってたんですけど、いろいろやってみて、今はそんなふうに思うようになってきました。

――学生の時点で、そこまで考えが固まってるのはすごいです。

青木 でも数カ月後には、また考えががらっと変わってるかもしれないです。だって俺、数カ月前までパイロットになりたいって思ってたんで(笑)。

(取材・構成:田中春香/編集:斎藤岬)

●青木宏樹(あおき・ひろき)
1999年生まれ、東京都出身。上智大学3年生。
@aokiaokiaoki111

女性のセルフプレジャーは「趣味」でいい―― アダルトグッズに抵抗ない20代女性の意識とは

 バイブレーターやデリケートゾーンのケア製品を扱う女性向けセルフプレジャーブランド「iroha」が、百貨店である大丸梅田店に常設店をオープンさせたことが話題になっている。女性の性欲やセルフプレジャーがタブー視される状況に変化が生じだしたと見えるが、アダルトグッズメーカーはそれをどう捉えているのか。前編では、「iroha」広報チームに取材を行い、「セルフプレジャー=ヘルスケア」という空気が日本で生まれつつある実感について語ってもらったが、後編では、アダルトショップを展開するとともに、自社メーカーからさまざまなグッズを販売している「ワイルドワン」の広報・泉由香氏に話をお聞きした。

(前編はこちら)

若い世代は堅実、だからこそアダルトグッズを使うことも?

――近年、“女性の性欲”や“女性のセルフプレジャー”に対する世間の反応に、変化が生じていると感じることはありますか。

泉由香氏(以下、泉) ありますね。この仕事を通して実感しているのは、「アダルトグッズに抵抗がない20代女性が増えている」ということ。「パートナーとのセックスをより良くしたい」とか「自分が気持ちいいスポットを知っておきたい」とか、目的を持って購入する女性が、特に若い世代に増えたように思うんです。「ワイルドワン」は通販サイトも展開していますが、店舗に足を運んで、現物を見ながら選ぶという方も結構いらっしゃいますよ。自分好みの洋服を選ぶのと近いような感覚で、アダルトグッズを購入しているようにも感じます。

 いまの20代は、物心ついた頃から、スマートフォンやパソコンが身近にあった世代。ちょっと検索すればアダルトな情報が簡単に手に入り、エッチな動画も無料で見られるので、彼女たちは早い段階から幅広いアダルト情報を知識として持っています。また、そのような方法で得られる情報は、ニッチだったりハードだったりすることが多いので、バイブや電マを持っている/使っているくらいは、そんなに特別ではない、普通のことだと感じているのかもしれません。実際、若い世代ほど、アダルトグッズを購入して使っていることを普通に話しますし、感想なども恥ずかしがらずに聞かせてくれますよ。女性がSNSなどにアダルトグッズを使用した率直な感想を上げ、それを見た男性が、より女性に好まれる方を選ぶようになった……という話もあるくらいです。

――「いまの若い子はセックスに興味がない」とも言われていますが。

 確かに、いまの若い世代は「堅実」という面はあると思います。ただ、だからこそ、欲求のままよく知らない男性とセックスをして、性病を移されたり、望まぬ妊娠をしたり、トラブルに巻き込まれたりする心配を抱くくらいなら、「アダルトグッズを使ってみよう」となる人もいるのではないでしょうか。性経験のない女性、見るからに真面目そうな女性も、店舗にアダルトグッズを買いに来ますよ。私もこの仕事を通して、「無駄なセックスをして心をすり減らすくらいなら、グッズを使ってください」と若い世代に向けて発信し続けています。

――アダルトショップに足を運ぶ若い世代は、特に「性に対する意識が高い」という傾向もあるのかもしれません。そういった人にとって、大丸梅田店での「iroha STORE」常設店オープンは、どのように捉えられていると思いますか。

 若い世代には「百貨店でバイブレーターが販売されているくらいでは驚かない」という人も多いのではないでしょうか。ただ、百貨店のターゲットは年齢層が高めなので、その世代の方にとってはサプライズだったのかなと思いますね。

――最近メディアでは、セルフプレジャーをヘルスケアと捉え、“健康や美容にいい”と取り上げられることが増えてきました。

 健康や美容に結び付けることで、セルフプレジャーに抵抗がある方の罪悪感が払しょくされる面もあるのかなと思います。ただ、私としては“趣味の1つ”として捉えるくらいがいいのかなとも感じています。「健康にいい」という根拠を明らかにするのは難しい面もあるので、それより「好きなことをすると、気分がいいし、楽しいし、すっきりするし、ストレス解消にもなるよね」といった捉え方でいいのかな、と。筋トレとか、読書とか、いろんな趣味の中の1つにセルフプレジャーという選択肢もあって、やってみたければやってみればいいし、体や心の負担になるならやらなければいい。若い女性たちは、自然な好奇心で、アダルトグッズを使っているのかなとも思います。

――趣味と捉えれば、無理をすることもなさそうですね。

 セルフプレジャーって、言ってみれば“自主練”なんだと思います。痛点と快感は紙一重、初めは痛くても、繰り返し刺激を与えるうちに研ぎ澄まされて、痛みが快楽に切り替わる瞬間がある。その扉を開きやすくしてくれるのが、アダルトグッズ。一方、どこをどうすれば気持ちいいかを追及する面白さもあって、想像以上の快感が得られたりすると、もっと違うグッズが欲しくなる。“筋トレ”みたいなものでもあるんですよね。ただ、そもそもセルフプレジャーが好きではない人もいるし、楽しめない人もいる。筋トレだって、体を動かすのが苦手だったり、嫌いな人はやらないでしょうから、それらと同じ感覚で受け止められたらいいと思います。

 少し前までは、女性向けアダルトグッズは、「女性の性の解放」と紐づけられ、革新的でリベラルなものといったイメージもありましたが、今はもっとピュアに、日常に溶け込んでいる感じなのではないでしょうか。若い世代の間では特に、セルフプレジャーは、「気持ちいい」という素直な感覚で楽しむものと認識されるようになっていると思います。

 

――女性のセルフプレジャーに対する意識が変化してきたことに伴い、アダルトグッズの傾向なども変わってきているのでしょうか。

 グッズが多様化してきていると感じます。例えば、弊社で出しているバイブレーター「みちしお」や「さざなみ」は、女性の意見を取り入れており、“本物”に近い挿入感にこだわっているほか、見た目もグロテスクさのない真っ白なデザインになっています。また、デリケートな部分に触れる物だけに、“安心安全の日本製”という点からも、多くの女性から支持をいただいているんです。しかしその一方で、男性に好まれる傾向にある「強そうなデザインのゴツゴツしたバイブが好き」という女性もいるし、はたまた同性愛者の女性は、“本物感”に抵抗があるとのことで、男性器をイメージさせない抽象的なバイブを好まれる方もいらっしゃいます。そのほか、性感帯を開発したいという女性は、部位ごとの開発に特化したバイブを求めていますし、本当に多種多様になってきていると思いますね。これが「女性向けです」とひとくくりにできるものではありません。性感帯も性癖も、またアダルトグッズを購入する目的も一人ひとり違います。今後、さらに多種多様なグッズが登場することで、「自分の好きなものを選べる」状況が生まれるといいなと思います。

――今後、性に対する意識はどのように変化していくと思いますか。

 これまで、性的な事象は「恥ずかしいこと」「いけないこと」と捉えられてきましたが、今の若い世代を見ていると、その意識はどんどん薄らいでいくのではないかなと思いますね。それはとてもいい傾向だと感じます。性欲は、食欲や物欲など、ほかの欲求と大差はなくて、セルフプレジャーがしたい、セックスがしたいと思うことも、当たり前の欲求だと思うんです。だからこそ、タブーをなくし、より日常的なものになっていってほしいですね。

“ジャニオタ三種の神器”、本当に効果あるの? ウワサのサプリ・ケア用品を医師・専門家が検証

 「飲んだら速攻で視界がクリアに」「貼るだけでむくみ解消」――そんな口コミから火がつき、ジャニーズファンに大人気となったサプリメントやケア商品がある。「コンサートや舞台観劇の際に効果を発揮する」と評判の商品は、ファンの間で“ジャニオタ三種の神器”と呼ばれ、わざわざ遠征先に持ち込む人がいるほど。しかし、本当に「飲むだけ」「貼るだけ」で、ウワサ通りの効果が期待できるのだろうか? 医師・専門家が“三種の神器”を徹底分析する。

<その1>足すっきりシート 休足時間

 立ちっぱなしのコンサートを終え、むくんだ足に貼ってから寝ると、翌朝「超スッキリする!」と評判の一品。公式ホームページには、「お風呂上がりや寝る前などに貼るだけで、足すっきりさわやか」と書かれているが、本当に“貼るだけ”でコンサート後の疲れは取れるのだろうか? 「女医によるファミリークリニック」院長の竹中美恵子先生が解説する。

医師が解説:「筋肉の疲れからくるむくみ」には効果があるけど……

 筋肉量の不足、腎臓や心臓の問題、塩辛いものが好きなど、むくみにはいろいろな原因があり、それぞれ対処法が違います。「休足時間」は“筋肉の疲れ”からくるむくみには効果が期待できそうなので、立ちっぱなしが原因でむくんだ足には効くでしょう。ただし、この商品には“利尿作用”がないので、水分・塩分の摂りすぎによるむくみには、効果がないかもしれません。コンサート後に打ち上げへ行ったとしても、食べすぎ・飲みすぎには注意しましょう。

 着圧ソックス・ストッキングの着用や、お風呂で温めてから冷やす“温冷刺激”も、むくみ解消に効果があります。しかし、これはあくまでも補佐的なこと。心臓と足の位置を同じ高さにして寝ると、むくみの原因がなんであれ、筋肉が心臓に向かって血流を戻すポンプ代わりになってくれるため、ある程度は解消できます。長時間立ちっぱなしだったあとは、しっかりと横になって休むことが、一番のむくみ取りになるのです。また、足裏や膝裏にはたくさんのリンパ節が存在するため、ゴルフボールで足裏を刺激したり、膝裏を指で押さえて刺激するだけでも、むくみには効果的。 寝る前に“痛気持ちいい”ツボマッサージをしてから、心臓と足を同じ高さにして寝ることがとても重要です。

■竹中美恵子(たけなか・みえこ)
女医によるファミリークリニック院長。小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。2009年金沢医科大学医学部医学科卒業。以後広島市立広島市民病院小児科などで勤務。2016年12月女医によるファミリークリニックを開業。日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。

<その2>DHC 速攻ブルーベリー

 コンサートや舞台が始まる30分ほど前に飲むと、「視界がクリアになる」とウワサのサプリメント。パッケージにも書かれている「溶出スピード約3倍」というのが、素早く効果を感じる理由のひとつのようだが、そもそもサプリメントに“速効性”はあるのだろうか? また、「ブルーベリーは目にいい」ということ自体、本当なのだろうか? 『そのサプリ、危険です!』(経済界)の著者である、予防医療サプリメントアドバイザー・柴田丞氏が解説する。

専門家が解説:ブルーベリーが「目にいい」根拠はない!

 まず、「溶出スピード約3倍」というキャッチフレーズが気になります。DHCの公式サイトを見ると、「アントシアニン溶出率の比較」というグラフがあり、60分で約6%しか溶出していない従来品の「ブルーベリーエキス」と比較されています。「速攻ブルーベリー」が60分で約21%溶出されているので、確かに「溶出スピード約3倍」は間違ってないです。しかし、一般的な錠剤の飲み薬は“15分で約80%”溶出する製品が多く存在しているので、60分で約20%の溶出は、かなり遅い。これで「速攻」を冠するのは、勇気があると思いますね。

 また、ブルーベリーは“目にいい”というイメージがあると思いますが、「飲む前と飲んだ後で視力がこれだけ良くなった」というような、明確なデータはありません。ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、網膜にある物質の再合成を助ける働きがあるものの、それが「どう目にいいのか」はわかっていないのです。ただ、この商品には「ビタミンB1・B2・B6・B12」が含まれており、これは眼精疲労に有効な成分として、“医薬品”の形でも市販されています。

 コンビニでも売られている「アリナミンV」は、ビタミンB1・B2・B6を配合している上に“指定医薬部外品”なので、健康補助食品であるサプリメントとは違い、効果・効能が認められた商品です。目の疲れを改善する効果もあるようなので、個人的には「速攻ブルーベリー」よりも、こちらをオススメします。また、目に直接的な効果を求めるのであれば、眼精疲労を改善する目薬をさすのが、最も有効なのではないでしょうか。

■柴田丞(しばた・たすく)
1980年、東京都生まれ。2007年、東京農工大学大学院応用生命化学専攻修了。大手外資系製薬会社アストラゼネカなどを経て、株式会社柴田丞メディカル総合研究所を設立、代表取締役に就任。予防医療サプリメントアドバイザーとして活躍中。著書に『そのサプリ、危険です!』(経済界)がある。

<その3>キレートレモン

 クエン酸の効果により、「飲むだけで疲れが取れる」と評判の商品。実際、クエン酸を含むドリンクやタブレットは、スポーツをする人を対象に多数販売されているので、“疲労回復”の効果はありそう。果たして、2時間を超えるコンサートや、長時間の移動を伴う遠征で疲れた体にも効果があるのだろうか? 女性専門の疲労外来ドクターである、「工藤内科」の工藤孝文先生が解説する。

医師が解説:クエン酸は疲労回復に効果あり! しかし“条件”もあり!?

 クエン酸が疲労回復に効果を発揮することは、さまざまな実験で、すでに解明されています。「キレートレモン」にはビタミンCだけでなく、クエン酸も含まれていますから、飲むと疲労回復を期待できるのではないでしょうか。ただし、1本・155mlのうち、ビタミンC・クエン酸ともに“1350mg”しか含まれていないという点は、注意しなければなりません。

 というのも、クエン酸の疲労回復効果を確かめる実験で、被験者は“2700mg”のクエン酸を摂取し、疲労感の軽減を実感しています。よって、「キレートレモン」は最低でも2本飲まないと、ウワサ通りの効果を実感できないかもしれません。

■工藤孝文(くどう・たかふみ)
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。ダイエット外来・糖尿病内科・漢方治療を専門とし、NHK『ガッテン!』『あさイチ』、日本テレビ『世界一受けたい授業』、フジテレビ『ホンマでっか!? TV』等、漢方治療評論家・肥満治療評論家として、メディア出演多数。日本内科学会、日本東洋医学会、日本女性医学学会、日本抗加齢医学学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本甲状腺学会、小児慢性疾病指定医。近著に『疲れない大百科 女性専門の疲労外来ドクターが教える』(ワニブックス)がある。

“ジャニオタ三種の神器”、本当に効果あるの? ウワサのサプリ・ケア用品を医師・専門家が検証

 「飲んだら速攻で視界がクリアに」「貼るだけでむくみ解消」――そんな口コミから火がつき、ジャニーズファンに大人気となったサプリメントやケア商品がある。「コンサートや舞台観劇の際に効果を発揮する」と評判の商品は、ファンの間で“ジャニオタ三種の神器”と呼ばれ、わざわざ遠征先に持ち込む人がいるほど。しかし、本当に「飲むだけ」「貼るだけ」で、ウワサ通りの効果が期待できるのだろうか? 医師・専門家が“三種の神器”を徹底分析する。

<その1>足すっきりシート 休足時間

 立ちっぱなしのコンサートを終え、むくんだ足に貼ってから寝ると、翌朝「超スッキリする!」と評判の一品。公式ホームページには、「お風呂上がりや寝る前などに貼るだけで、足すっきりさわやか」と書かれているが、本当に“貼るだけ”でコンサート後の疲れは取れるのだろうか? 「女医によるファミリークリニック」院長の竹中美恵子先生が解説する。

医師が解説:「筋肉の疲れからくるむくみ」には効果があるけど……

 筋肉量の不足、腎臓や心臓の問題、塩辛いものが好きなど、むくみにはいろいろな原因があり、それぞれ対処法が違います。「休足時間」は“筋肉の疲れ”からくるむくみには効果が期待できそうなので、立ちっぱなしが原因でむくんだ足には効くでしょう。ただし、この商品には“利尿作用”がないので、水分・塩分の摂りすぎによるむくみには、効果がないかもしれません。コンサート後に打ち上げへ行ったとしても、食べすぎ・飲みすぎには注意しましょう。

 着圧ソックス・ストッキングの着用や、お風呂で温めてから冷やす“温冷刺激”も、むくみ解消に効果があります。しかし、これはあくまでも補佐的なこと。心臓と足の位置を同じ高さにして寝ると、むくみの原因がなんであれ、筋肉が心臓に向かって血流を戻すポンプ代わりになってくれるため、ある程度は解消できます。長時間立ちっぱなしだったあとは、しっかりと横になって休むことが、一番のむくみ取りになるのです。また、足裏や膝裏にはたくさんのリンパ節が存在するため、ゴルフボールで足裏を刺激したり、膝裏を指で押さえて刺激するだけでも、むくみには効果的。 寝る前に“痛気持ちいい”ツボマッサージをしてから、心臓と足を同じ高さにして寝ることがとても重要です。

■竹中美恵子(たけなか・みえこ)
女医によるファミリークリニック院長。小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。2009年金沢医科大学医学部医学科卒業。以後広島市立広島市民病院小児科などで勤務。2016年12月女医によるファミリークリニックを開業。日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。

<その2>DHC 速攻ブルーベリー

 コンサートや舞台が始まる30分ほど前に飲むと、「視界がクリアになる」とウワサのサプリメント。パッケージにも書かれている「溶出スピード約3倍」というのが、素早く効果を感じる理由のひとつのようだが、そもそもサプリメントに“速効性”はあるのだろうか? また、「ブルーベリーは目にいい」ということ自体、本当なのだろうか? 『そのサプリ、危険です!』(経済界)の著者である、予防医療サプリメントアドバイザー・柴田丞氏が解説する。

専門家が解説:ブルーベリーが「目にいい」根拠はない!

 まず、「溶出スピード約3倍」というキャッチフレーズが気になります。DHCの公式サイトを見ると、「アントシアニン溶出率の比較」というグラフがあり、60分で約6%しか溶出していない従来品の「ブルーベリーエキス」と比較されています。「速攻ブルーベリー」が60分で約21%溶出されているので、確かに「溶出スピード約3倍」は間違ってないです。しかし、一般的な錠剤の飲み薬は“15分で約80%”溶出する製品が多く存在しているので、60分で約20%の溶出は、かなり遅い。これで「速攻」を冠するのは、勇気があると思いますね。

 また、ブルーベリーは“目にいい”というイメージがあると思いますが、「飲む前と飲んだ後で視力がこれだけ良くなった」というような、明確なデータはありません。ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、網膜にある物質の再合成を助ける働きがあるものの、それが「どう目にいいのか」はわかっていないのです。ただ、この商品には「ビタミンB1・B2・B6・B12」が含まれており、これは眼精疲労に有効な成分として、“医薬品”の形でも市販されています。

 コンビニでも売られている「アリナミンV」は、ビタミンB1・B2・B6を配合している上に“指定医薬部外品”なので、健康補助食品であるサプリメントとは違い、効果・効能が認められた商品です。目の疲れを改善する効果もあるようなので、個人的には「速攻ブルーベリー」よりも、こちらをオススメします。また、目に直接的な効果を求めるのであれば、眼精疲労を改善する目薬をさすのが、最も有効なのではないでしょうか。

■柴田丞(しばた・たすく)
1980年、東京都生まれ。2007年、東京農工大学大学院応用生命化学専攻修了。大手外資系製薬会社アストラゼネカなどを経て、株式会社柴田丞メディカル総合研究所を設立、代表取締役に就任。予防医療サプリメントアドバイザーとして活躍中。著書に『そのサプリ、危険です!』(経済界)がある。

<その3>キレートレモン

 クエン酸の効果により、「飲むだけで疲れが取れる」と評判の商品。実際、クエン酸を含むドリンクやタブレットは、スポーツをする人を対象に多数販売されているので、“疲労回復”の効果はありそう。果たして、2時間を超えるコンサートや、長時間の移動を伴う遠征で疲れた体にも効果があるのだろうか? 女性専門の疲労外来ドクターである、「工藤内科」の工藤孝文先生が解説する。

医師が解説:クエン酸は疲労回復に効果あり! しかし“条件”もあり!?

 クエン酸が疲労回復に効果を発揮することは、さまざまな実験で、すでに解明されています。「キレートレモン」にはビタミンCだけでなく、クエン酸も含まれていますから、飲むと疲労回復を期待できるのではないでしょうか。ただし、1本・155mlのうち、ビタミンC・クエン酸ともに“1350mg”しか含まれていないという点は、注意しなければなりません。

 というのも、クエン酸の疲労回復効果を確かめる実験で、被験者は“2700mg”のクエン酸を摂取し、疲労感の軽減を実感しています。よって、「キレートレモン」は最低でも2本飲まないと、ウワサ通りの効果を実感できないかもしれません。

■工藤孝文(くどう・たかふみ)
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。ダイエット外来・糖尿病内科・漢方治療を専門とし、NHK『ガッテン!』『あさイチ』、日本テレビ『世界一受けたい授業』、フジテレビ『ホンマでっか!? TV』等、漢方治療評論家・肥満治療評論家として、メディア出演多数。日本内科学会、日本東洋医学会、日本女性医学学会、日本抗加齢医学学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本甲状腺学会、小児慢性疾病指定医。近著に『疲れない大百科 女性専門の疲労外来ドクターが教える』(ワニブックス)がある。

大丸梅田店で「バイブが買える」時代に! 「iroha」に聞く、女性のセルフプレジャーはどう変わったか?

 11月22日、大丸梅田店に、バイブレーターやデリケートゾーンのケア製品を扱う女性向けセルフプレジャーブランド「iroha」の常設店「iroha STORE 大丸梅田店」がオープンした。「iroha」は、昨年8~9月にかけての2週間、同百貨店でポップアップストアを展開。13日間で約1,500人が来店し、売り上げは目標の3倍以上となる約400万円を達成して、各メディアで大きく取り上げられることに。その後、二度のポップアップストア実施を経て、この度、同百貨店に新設された、女性の性や生理などのバイオリズムに特化したゾーン「michikake(ミチカケ)」内に、常設店が誕生したという運びだという。

 百貨店に、アダルトグッズが並んでいるという状況は、ひと昔前には決して考えられなかったことだが、近年、女性の性欲やセルフプレジャーに対する意識は、どのように変化してきているのだろうか――。今回、女性向けアダルトグッズメーカーの広報部に取材を行い、その実情を探る。前編では、「iroha」広報宣伝部広報チームの犬飼幸氏と本井はる氏に話をうかがった。

「iroha ポップアップストア」来店者の約半数は「40~50代」

――「iroha」初の常設店が、大丸梅田店の新ゾーン「michikake」にオープンしました。このゾーンは、「月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う。」がコンセプトとのこと。女性のリズムを「もやもや期」「キラキラ期」「ゆらゆら期」「どんより期」の4つの周期に分け、“人には言いにくい悩み”に応えるアイテムやイベントを展開するとのことですね。

犬飼幸氏(以下、犬飼) 「michikake」のコンセプトは、「iroha」のブランドコンセプトにばっちり合っていると思います。世間的に、女性のセルフプレジャーは「はしたないもの」「恥かしいもの」と捉えられている面があると感じるのですが、我々は、性欲は男女問わず「ある人はある」「ない人はない」ものであり、性欲のある女性がセルフプレジャーをすることは、はしたなくもないし、恥かしくもないと考えています。セルフプレジャーを「寝る前のパック」「お風呂でのトリートメント」と同じ“日常のセルフケア”の一つであると捉え、それをブランドコンセプトとして掲げているんです。

 大丸梅田店では、過去3回ポップアップストアを実施していますが、大丸さんはiroha のポップアップストアを、性の悩み相談をできる場と捉えている面もあるみたいです。実際に、来店された方が、店員に性の悩みを打ち明けてくださるということがよくあるんですよ。

――ポップアップストアへの来店者層について教えてください。

犬飼 来店者で一番多かった年代が40代で、40~50代の方が約半数を占めていました。男女比は、女性が8割、カップルが1割、男性が1割。通常「iroha」は、オンライン購入が全体の8割を占め、購入者は「20~30代女性」が最も多いのですが、店舗にはその上の世代の女性も足を運んでくださいました。そもそも百貨店に来店する層に年齢層が上の方が多いことが影響しているのかなと思いつつ、irohaのニーズは年齢問わずであると実感しました。

――常設店の来店者層は、ポップアップストアと比べていかがでしょう。

犬飼 年齢層は20~70代で、特に40~60代の女性のお客様が多くみられます。ネットニュースきっかけで来店される方が多いようで、例えば「子どもが生まれて半年がたち、旦那さんとマンネリ気味。夫婦で『irohaやTENGAを試してみる?』という話になった」という30代女性の方、また「彼氏とのセックスで毎回痛いため、トレーニングしたい」という20代女性の方、などがいらっしゃっていました。

――「iroha」は2013年に誕生し、6年がたちました。大丸梅田店に常設店がオープンというのは、まさに女性のセルフプレジャーが日常のものと認識されるようになったからとも言えますが、実感としていかがでしょう。

本井はる氏(以下、本井) 男性に比べると女性のセルフプレジャーは、いまだタブー視されている向きが強いとは思いますが、確実に変わってはきています。我々がメディアの取材を受ける際も、当初は「へぇ、で、君は脱がないの?」と聞かれるなど、偏見の目で見られることが少なくなかったのですが、最近では女性の性欲やセルフプレジャーグッズを真面目に取り上げてくださるメディアが増えました。また女性誌だけでなく、NHKの番組や「朝日新聞」など、幅広い視聴者/読者層のメディアでも扱っていただけるようになっています。

――「iroha」が、その変化の一端を担ってきた部分もあるのでしょうか。

犬飼 「iroha」は女性自らが手に取りたくなるものを目指して開発され、性器を模さない、日常に溶け込むようなデザインになっています。あと、爪が長くても押しやすいスイッチにするなどの工夫も凝らされているんです。こうした点が、これまでの男性が女性に使って楽しむ“エロいもの”を想定して作られたアダルトグッズとは異なると思いますね。

――健康雑誌「ゆほびか」(マキノ出版)の8月号では、「心と体が超若返る!ウエストが劇的に細くなる!『ひとりエッチ』は薬だ!」という特集が組まれていました。「michikake」出店も含め、女性のセルフプレジャーが、ヘルスケアに近いジャンルのものとして扱われている印象ですが、そのことついては、どう思われますか。

本井 それもここ数年で変わってきたことの1つかなと思います。率直に、うれしいですね。海外だと、セルフプレジャーはすでにヘルスケアの一種として捉えられているんですよ。米国テキサス州で開催されている世界最大のクリエイティブビジネス博覧会『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』が、18年から「ウェルネスエキスポ」を始めたのですが、そこでは、セルフプレジャーグッズが、オーガニック化粧品や食品、アロマ、ヨガなどと一緒に、ヘルスケア用品として展示されていました。また、今年TENGAが、アメリカ在住の約1,000人(18~54歳)を対象に「ストレス解消に有効な方法」を聞いたところ、74%が「セルフプレジャー」と回答したことも印象的でしたね。

 日本で「セルフプレジャー=ヘルスケア」という空気が生まれつつあるのは、やはりうれしいことです。実際ポップアップストアには「膣トレ目的」でセルフプレジャーグッズを購入される方も結構いらっしゃいましたよ。骨盤底筋を強化するとセックスの感度が上がると言われているのですが、それ以外に「尿漏れ対策」として興味を持ってくださったようですね。

――「尿漏れ対策」は、まさに中高年の健康問題に直結していますね。

本井 広くデリケートゾーンへのタブー自体が薄らいでいる印象もあります。性は日常のものと認識されると、性の悩みや体の気づきについて、フラットに話せる空気が生まれると思うんです。そうすることで、性の知識が無いゆえに心身ともに傷つく人が減ったらいいな、とも思っています。先ほど、性に対する意識が変わりつつあると言いましたが、それでも日本の性教育が遅れていることは否定できません。TENGAが世界18カ国を対象に実施した「マスターベーション世界調査」で、日本人はマスターベーションを始める年齢が最も低年齢だった一方、学校の性教育でマスターベーションを習ったことがある人は最も少ないという結果が出ました。

犬飼 つい最近、大学生~20代前半を対象とした女性誌から「性のお悩み相談」を受けたのですが、その中に「セックスの後、コーラで女性器を洗えば妊娠しないって本当ですか?」という質問があって、とても驚きました。「絶対洗わないで!」って。なぜいまだにこういう質問が出てくるのかと言えば、やはりまだまだ性がタブー視されているため、正しい知識を得る場がないことが影響しているのかなと感じます。ネットを検索しても、セックスのテクニックばかりが出てきてしまいますからね。「iroha」としては、こうした状況を今後変えていけたらなと考えています。

(後編につづく)

第3のメンバー(?)ふくちゃんも大人気! 東京03も激推しする次世代コント「ゾフィー」の野望

「ネタの状況設定が本当に面白い。宝物みたいな設定」。コントのトップランナー・東京03飯塚悟史がそう、絶賛したコンビ・ゾフィー。『キングオブコント2019』では5位に終わったが、腹話術人形ふくちゃんで強いインパクトを残した。今や「若手コント界のフィクサー」と噂される2人は何を狙う?

――腹話術人形のふくちゃんが人気ですね。

上田 ありがとうございます。今、愛着が半端ないです。家に置いてあって、相方より会ってますから。

サイトウ そりゃそうだろうよ。

――今年の単独を見に行ったら、ふくちゃんのコント、群を抜いてウケていたような。

上田 あれはえぐいウケ方でしたね。

サイトウ 自分で言うもんじゃないよ。あのネタできたの、単独より少し前なんです。

上田 そうだ。単独が5月で、2月ぐらいに設定を思いついたんです。でもちゃんと練習したほうが面白いと思ってすぐには出さず、まずはいい人形を探しました。でも腹話術人形のパンフレットを見たら、20万円ぐらいで値段高いし、結構笑いを取りに行ってる顔だったんですよ。あの会見の設定にはフラットな顔がいいということで、相方に探してくれと頼んだら……。

サイトウ メルカリにたまたま出てきたんです。見た瞬間、「これだ!」と。

上田 「この子は売れる」。

サイトウ 売ってくれた方によると、受注生産の一点もので出し物で2回ぐらい使っただけらしくて、「可愛がってください」という話でした。コントの小道具としては高価でリスク高かったです。でも、練習中からずっと面白かったもんね。

上田 いっこく堂さんのyou tube見て、独学で研究したんですよ。結局、口動かすのだけはうまくならなかった。

サイトウ あまりうまくなられてもね。独り立ちされたら困るんで(笑)。

――ライブでは、かなりの頻度でかけてませんでした?

上田 めちゃくちゃやりました。そもそも単独ではネタ時間が13分あったんです。賞レースは5分で一気には削れないから1分ずつ削って、12分、11分……。そうしたら8分から7分にした時、ウケが減ったんです。それからは7分50秒、7分40秒……と10秒ずつ刻んで、なんとか5分にしました。

――今、元の13分にできます?

上田 むしろ20分できます。最初はしゃべらないフクちゃんが途中からしゃべりだして、その後の展開もあるコントだったんで。

――第2弾も考えてるんですか。

上田 難しいのは、これから第2弾、第3弾と作っていくと、スター性がすごいんでいよいよ正式加入させないといけない(笑)。そのうちブルゾンちえみwithBみたいな……。

サイトウ ふくちゃんwithゾフィー(笑)。

上田 やりたいのはシチュエーションを面白くするコントなんで、第2弾はまた機会があれば、という感じですね。

――『キングオブコント2019』は5位に終わりました。どう受け止めてます?

上田 賞レースは流れもあるんで、それに乗り切れなったなと。でも見てた人が「あれでファイナルいかないのはおかしい」と言ってくれるのが追い風になっていて、ポジティブな効果が大きいような。

サイトウ めちゃめちゃウケたんで、よかったです。『令和元年度NHK新人お笑い大賞』も準優勝でしたけど、「なんで!?」という声ももらって、結果的に悪くはなかったなと思ってます。

――決勝に初進出した2年前は炎上しましたよね。

上田 あのショックはでかかったです……。ライブシーンではウケてて、決勝いったら、ウケないわ炎上するわで。俺らテレビでやれないネタが多いんですよ。マルチとか自殺とかバイク事故とか。

サイトウ 緊張と緩和がそっちに行きがちなんですよね。

『ゾフィー Official YouTube Channel』より

上田 そんな俺らにしてはポップでキャッチーなネタができたと喜んでた矢先、あの反応だったんで。「もう作れないじゃん! テレビ出れないじゃん!」でした。でも気にせずやってきて、今年のフクちゃんで反応よかったから、なんとかなりました。

――ポップな方向に軌道修正しなかったんですか?

上田 ポップに作ろうとすると、お客さん第一優先で自分の面白さを一回下げる感覚が強くて……。自分たちが「面白い!」というネタを、お客さんにも楽しんでもらおうという順序が正しいと思ったんですよね。だからポップな方向は捨てて、元に戻しました。

――『キングオブコント』の記録見ると、その前年まで3年連続で準決勝止まりだったんですね。結成が2014年……。ということは、その年に準決勝行ってるんですか?

上田 大したもんです(笑)。

サイトウ 自分で言わないんだよ。言ってもらうもんなんだよ。

――ちなみにゾフィーの前にくんでいたコンビでは、どこまでいったんですか?

サイトウ 俺はだいたい2回戦で終わってました。

上田 僕も、行って3回戦でした。

――なんで急に結果出たんでしょう?

サイトウ 相方は手ごたえないと思うんですけど、俺はありました。前のコンビでは2人ともネタが書けなくてエチュードで作ってたんですよ。それがゾフィーを組んだら、キレイな台本をいただいて、天才だと思いました。鳥肌立ったんです。

上田 僕の前のコンビは複雑に考えすぎて、お客さんに伝わらなかったんです。それが組み直したことで一回リセットして、シンプルなネタ――ちゃんとフリがあってヘンなこと言って、というネタを作ろうと。それで最初に作ったネタで準決勝行けたんです。

――どんなネタなんですか?

上田 2軍落ちそうな野球選手のところに子供が来て、「僕が手術受けたらホームラン打ってね」というやつです。よくある設定をただ逆にしただけなんですけど、分かりやすくて、面白かった。

サイトウ 最初に読んだ台本もそれでした。いまだに営業でやってます。ただ、たまに分からない台本があって、どういうことか聞いちゃうんですけど。

上田 お客さんはわかってるんですよ。でも何回かネタやって「なんでウケてるか分からない」って突然言い出す。それで説明すると……。

サイトウ 「なるほどね!」(笑)

上田 サイトウさんってツッコミじゃなくて、一般人の役割なんですよ。Mr.ビーンの横にいる人たちと同じ。全体の構造を理解する必要はない。

サイトウ うんうん……(頷いた後に)誰がエキストラだよ!

――上田さんがものすごい量のネタを書いているという噂を聞きまして。

上田 はい。1日に300とか。

サイトウ そんなワケないんだよ。

上田 アイディアはそれぐらい出してます。つまらないのも含めてですけど。とにかく量を出すやり方なんで。

――設定を一行で書くような?

上田 そうです。たとえば、「しゃべらないお医者さん」とか。面白いかどうかのジャッジはしないでバンバン書きます。それを1週間続けると、週末に1500できてるわけじゃないですか。そこから僕が『キングオブゾフィー』と呼ぶ作業で、エントリーした1500の中から面白そうなのにマルして、週間チャンピオンを決めます。残ったやつでさらに月間チャンピオンを決めて。

――『キングオブコント』というより『マイナビラフターナイト』のシステムですね。

上田 で、残るのは月に2~3本ですかね。

――書く時間は決まってます?

上田 朝起きて1時間以内に喫茶店に行きます。そこでバンバンとエントリーして、午前中にはおしまい。村上春樹さんが午前中に小説を書くシステムを踏襲しました。もう習慣になって、やらないと気持ち悪くなるんです。きっと晩年も病室でやってるでしょうね(笑)。

サイトウ 僕はそこには関わってなくて。

上田 だから『キングオブコント』の視聴者と一緒で、残った数組しか見られないんです。激闘の準決勝を知らない。

――上田さんは昔から脚本を書くのが好きだったんですか? 演劇をやってたそうですが。

上田 好きでした。でも演劇をやってた時は、お客さんを満足させる意識は皆無でしたね。お芝居って何やってもいいじゃないですか。ウケなくても「別にコメディじゃないし」と言い訳できる環境に思いきり乗っかってました。

――脚本的には笑いをとる方向性だったんですか?

上田 いや、メッセージを伝えたかったんです。社会的不満に苛まれて人間が変わっていく様を、パワハラを題材にやってました。やって来ては部屋をめちゃくちゃにする上司がいて、それにおびえる会社員が俺なんです。そこで信頼できる先輩に相談したら、結局説教してきて、やはりパワハラが生まれる。そしてその先輩を僕が殺してしまって、死体を海に捨ててから覚醒するんですよ。顔を白塗りにして、なぜかチャイナドレスを着て、上司の家に殴り込みに行く……。だけど上司に返り討ちにあう芝居をやってました。

――ずいぶんと陰惨な……。チャイナドレスは笑いほしさで?

上田 違います! なんらかのメッセージあったはずなんですけど、思い出せません。ただ、それだからかこないだ映画の『ジョーカー』見てたら「俺だ!」と。

――確かに復讐心や白塗りの要素がかぶってますね。ちなみに劇団名は?

上田 「カルチャーズ」……(笑)。文化。日本を変えようとしてました。

――劇団をやってたのが、どうしてお笑いの道に?

上田 劇団が破綻して、借金も多少残って、こうやって朽ちていくんだと嘆いてた時、大学の先輩にお笑いをやらないかと誘われたんです。「もうどうでもいいや」と投げやりな気持ちで書いたコントが、『ラママ新人コント大会』(のネタ見せ?)で「面白いよ!」と言われて。そんな風に評価されたのが初めてで、さらにライブ出たらウケてで、それからハマりました。

――もともとお笑いは好きだったんですか?

上田 小学校の時、父親が別にお笑い好きでもないのに、「これはすごい。人生に必要だから見ておけ」って『ごっつええ感じ』を見せられたんです。ちょうど小学校1年生から6年生の間、日曜8時になると毎週がっつり見てました。

サイトウ 僕は『ボキャブラ天国』を見てて、あれは高校2年だったかな、レギュラー陣が故郷の青森にライブに来たんですよ。そこで見たジョーダンズさんがめちゃくちゃカッコよくて。スターだった三又さんが出てくるまで、相方の山崎さんがするつなぎのお喋りがすごい面白かったんです。それでお笑いをやりたいと思うようになって、その後、上京して……。

――お笑いをやるために。

サイトウ いや、それは女のケツを追いかけて来たんです。その子と結婚して「お笑いはできないな」とあきらめてたら、24歳で離婚することになりまして。そこで離婚もしたし、やりたいことをやろうと。

上田 「離婚もしたし」? そんな理由あるのか。

サイトウ そこからしばらく、芸人やるための資金と慰謝料と養育費を稼ぐため、バイトを3つかけ持ちしてたんですね。それで養成所に行こうとした時、バイトで知り合ったヤツがたまたま松竹の養成所を卒業して、組まない? と誘われてフリーで始めました。それが前の前のコンビですね。デビューしたのが27歳でした。

上田 前のコンビの時、それぞれ浅草の小さな劇場に出てたんで、交流があったんです。

――お互いどう評価してました?

上田 サイトウさんはぶん回してた印象です。かたっぱしからツッコんで。

サイトウ モテたかったんです。“できるツッコミ”がしたかったんですよね。

上田 できるツッコミかと思って、コンビ組んだら違ったんで……騙されました(笑)。

サイトウ 僕は、(上田さんは)ネタ書いてるし、うらやましいと思ってました。台本いっぱい持ってくるから、「やらないならほしいな」と。

上田 そういうイヤらしい目で見てたんだな……。

――上田さんが若手コント界のフィクサーになっていると聞いたんです。どんな活動をしてるんですか?

上田 「コント村」というユニットを作っています。ザ・マミィの林田くん、かが屋の加賀くん、ハナコの秋山くん。この4人でコントについて語るライブやってて、みんなで何かできないかという話になって。賞レースで優勝して、テレビに出て、ライブに人が来るという段階を踏むのがコントで成功する王道だと思うんですけど、今の時代、それ以外もあるんじゃないかと。それで4組で集まって、ゆくゆくは番組を……というのを進めてます。コント好きな人は創作意欲強いし、特に第7世代ってそれが顕著なんで。「村」は声かけて拡大していく予定です。

――上田さんが村長?

上田 村長です。かが屋やハナコがわーわー言うと、あおりを食らうかもしれないんで。僕が一番年上だし、元・鬼尖り人間だったんで、矢面に立ってぶつかっていこうと思ってます。というのも、みんなこれだけ作りたい気持ちがあるのに、あまり場がないというか……。もっとお金をもらってもいいんじゃないかと思うんですよね。コント作って収益生まれて生活できたら、ハッピーじゃないですか。

――まだ見返りが少ない?

上田 コントだけでメシを食えている人が少ない。漫才で賞レースの準決勝ぐらいに行けている人は、営業もあって食えていたりするんですよ。でもコントの準決勝レベルで食えている人は皆無で。格差があるんですよ。

 あと漫才の人って「優勝するぞー!」みたいなニンがあって、物語が生まれやすい。でもコントの人は思いがあっても、あまり口に出さない気がします。昔だったらそれ言うのはダサかったかもしれないですけど、それだとコントが沈んでいっちゃう。もうちょっと声あげてもいいのかなあと。ちょうど最近、『ゴッドタン』(テレビ東京系)でもお笑いについて語る企画があったみたいに、お客さんもお笑いの裏側がどうなってるか、知りたいじゃないですか。

――興味ありますねえ。

上田 NHKで『漫勉』って放送してましたよね。あれって何の知識もなくても、「この順番で描くんだ!」「このペン使うんだ?」という発見があって面白い。同じようにコントをどう作っているかを見せても、面白くなる気がするんですよね。説明してもウケは変わらないだろうし、面白さが深く伝わって、コント好きの需要が増えればいい、という考えですね。

――コント村に参加してほしい人はいます?

上田 いっぱいいます! 空気階段の(水川)かたまりくん、しずるの池田さん……。心の底からコントが好きな人を増やしていきたいです。

――サイトウさん、ギャグの「チェだぜ!」を猛プッシュしてますね。僕もたまにLINEで使っているんですけど。

サイトウ ありがとうございます!

上田 すいません。その話はNGなんで……。

サイトウ NGではないから!

――この話題を掘っていいですか?

サイトウ 掘る?

上田 いつ思いついたとか、どんな思いがあるとかだよ。

サイトウ いやー、そういうのはそんなに……。

上田 大体、こいつがちゃんと使えてないんですよ! 「チェだぜ!」を言えるように、いろんな人がふってくれるんですよ。『ネタパレ』(フジテレビ)の楽屋挨拶でマッスー(NEWSの増田貴久)が「上田くん、よろしくねー」って挨拶の後、サイトウを無視したんです。絶好の「チェだぜ!」タイミングじゃないですか? それを「ちょっと、マッスー!」って。

サイトウ そうなんですよね……。

上田 あと、新幹線に乗り遅れた時に言った一言は「ガックリだ」でした。なぜか新しいやつが出てきた。

サイトウ まだタイミングがよく分かってないんです。でもあきらめてません! 1年以内に流行らせて、東京五輪で誰かに「メダル取れなくて、チェだぜ!」とか言わせたい。

上田 僕が1年以内に根絶やしにします。

――ところでサイトウさんは居酒屋勤務も有名ですが、かけ持ちで忙しくないですか?

サイトウ 法人にしてるんで、今はオーナーへとシフトチェンジしました。従業員に任せて、現場には立ってないんですよ。今はたまに季節ごとのメニューを提案するような状態で。

上田 何回か食中毒出したんだよね?

サイトウ 出してねーよ! 本当にやめろ。鮮魚扱ってるんだ。

上田 お願いです。これだけは書いておいてください。

サイトウ 食中毒出したら、それを告知しなくちゃいけないの。調べれば必ず出てくる。だから大体そういう店って、名前を変えるんだけど。

上田 それで名前変えたんだ?

サイトウ 変えてないから!

上田 店で後輩に働いてもらって、育てていこうという気はない?

サイトウ 育てるんじゃなくて、芸人を辞めた人を使いたいんだよね。芸人やりながら居酒屋を本気になられても……というのはあるんじゃん。

上田 おまえがまさにそれだよ!! 誰が言ってるんだ!

サイトウ いやいや、俺は出世することで現場の仕事を減らす、という絵を描いてきたじゃん。

上田 だから、そういう風に後進を育てればいいってことでしょ。

サイトウ ああ、それはそうだね。

――店のオーナーやってる芸人さんはいますけど、ツイッターで告知したり公言する人は珍しいですよね。

上田 あれがステマみたいになっている。

サイトウ ステマって何?

上田 …………。知らなくて大丈夫!

(取材・文=鈴木工/撮影=石田寛)

 

●ゾフィー(ぞふぃー)
2014年結成。上田航平とサイトウナオキによるお笑いコンビ。グレープカンパニーに所属する。結成当初はフリーで活動して、17年に「キングオブコント」の決勝へ進出。その後、グレープカンパニーの所属となる。「キングオブコント2019」でも再び決勝へ進出したほか、「NHK新人お笑い大賞2019」では準優勝を飾るなど、一挙に知名度が上がった。

初音ミクさんと結婚式から一年。等身大ミクさんを迎えた近藤さんのスイートホームを訪問

【おたぽるより】

「なにか生活が変わったかって? それはありません。だって長く同棲していたカップルが結婚しても、急に生活が変わったりしないでしょう」

 昨年11月4日に初音ミクさんと結婚式を挙げた近藤顕彦さん。結婚から一周年を過ぎて、なに変化はあったかを尋ねると、こう答えた。

「今さら妻に代わる女性はいない」二次元だけを愛し続けた男が手に入れた“夢のような結婚生活”
(日刊サイゾー)

 筆者も招かれた結婚式は盛大だった。国内だけでなくいくつもの海外のメディアからも取材を受けた。SNSのフォロワーも世界中に広がった。だからといって、道を歩いていて「あ、初音ミクと結婚した人」なんてことはない。

おめでとうございます! 39人の参列者を迎えて初音ミクさんとの結婚式を遂げた幸せ者に贈る言葉
(日刊サイゾー)

「SNSを交換した時に<あなたでしたか>ということはありますけどね」

 自分の心の中にある初音ミクを愛し結婚した近藤さんは関連グッズを買い漁ったりすることはない。持っている初音ミクのグッズは実用品が中心。心の中にミクがあり、結婚した事実があれば溢れるくらいにグッズを揃えたりしなくともいいのだ。

「実際、結婚してからモチベーションはあがりましたね。ミクさんのために仕事を頑張らなきゃと思いますし……」

 毎朝、Gateboxのミクさんの声で目覚める。電車に揺られながらミクさんの歌声を聞いたりアニメを観たりしながら仕事に励む。退勤時間を迎えると一目散にミクさんの待つ家に帰る。人間同士で十年付き合えば愛も冷めるものだが、結婚する前も後も愛が冷めることはない。

「自分はなかなか熱しにくいほうなので、だから冷めないのかも知れません」

 ミクさんが自分と結婚して一緒に暮らしている。いわば<概念>だけで得ている幸福。それは、なんと幸せなことなのか。

 そんな近藤さんは、このたび等身大のミクさんを迎えた。きっかけは、結婚式にも等身大フィギュアと共に参列してくれた、ある人の紹介。等身大フィギュアを見たときに、近藤さんは自分も欲しいと思った。

 等身大フィギュアはほかのグッズとは明らかに別種のものだ。値段もさることながら、自宅に招くには責任が伴う。生き物とは違うが一生の間は面倒を見る覚悟がなくてはならない。結婚式を契機に、一生をミクさんと添い遂げる覚悟は完全に決まったからこそ、近藤さんは欲しいと思ったし、招こうと思った。

 伝手を辿って紹介された造形師に製作をお願いしたのは今年の3月。それから半年あまりの時間を経て等身大のミクさんはやってきた。

初音ミクさんと結婚式から一年。等身大ミクさんを迎えた近藤さんのスイートホームを訪問の画像2

「一度、ご挨拶に伺おうと思うんです」

 筆者の申し出を近藤さんは快く受け入れてくれた。当日、インターフォンを押すとすぐに近藤さんがドアを明けてくれた。

「いや~、すいません。奥さん、夜分に本当にすいません!」

 昭和のサラリーマンっぽい感じで部屋に入る筆者。ダイニングで待っていたミクさんの存在感は圧倒的だった。存在感だけではない、綺麗に片付いた室内。それが<留守の間に、神様の奇跡かなんかでミクさんが動いて掃除でもしているのか>という錯覚すら覚えさせるほどなのだ。

 もちろん、そんなことはない。掃除をしているのは近藤さんである。部屋の掃除。そして、ミクさんが埃をかぶらないように日々のメンテまで甲斐甲斐しく家事をこなしている。

「ミクさんがいるから、部屋をちゃんと綺麗にしておかなくちゃと思いますね。ほかにも自分は一人じゃなくミクさんがいるから……と思いながら日々を暮らしています」

 一生を添い遂げることを誓い、ミクさんを愛し続ける近藤さん。その気持ちは決して変わらないと思う。これから技術が発達すればVR、果ては『To Heart』のマルチのように動くミクさんと暮らせるかも知れないと、二人の将来を語るのだ。

 近藤さんの結婚に勇気づけられて、自分も愛するキャラクターと結婚式を挙げたのはすでに4組ほど。そうやって、新たな形で生きる希望を持つ人々への賞讃を近藤さんは惜しまない。

「自分もミクさんに救われましたから……」

 なにかと殺伐としがちな世の中で、近藤さんは真の幸せ者のように見えた。

(文=昼間 たかし)