新型コロナウイルス、症状や予防法を医師が解説! もっと「リアルな問題」も浮き彫りに?

 2019年12月ごろから、中国・武漢市で「新型コロナウイルス」による肺炎患者が続出している。中国国内だけでなく、タイや韓国でも感染者が見つかる中、今年1月16日には、日本で初めて新型コロナウイルスの感染患者が報告された。厚生労働省の発表によると、患者は神奈川県に住む30代男性で、1月6日に中国・武漢市から帰国。同日に医療機関を受診したところ、新型コロナウイルスの感染が発覚したようだ。10日に入院し、15日には症状が軽快し、退院したとも報告されている。

 複数の報道によると、1月23日現在、中国で新型コロナウイルスに感染した571名のうち、17名が死亡。日ごとに感染・死亡者数が増えている状態だ。厚労省は公式サイトにて、「家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない」と説明しつつ、感染拡大の可能性については明言していない。「咳エチケットや手洗い等、通常の感染対策を行うことが重要」と呼びかけるにとどまっているが、中国では1月下旬から旧正月(春節)が始まるとあって、ネット上では「かなりの観光客が日本に来るだろうし、感染しそうで心配」「春節で一気にウイルスが広まるのでは?」「本当に手洗いだけで予防できるのか疑問」など、不安の声が続出している。

 ネット上で不安視される「感染拡大」は、現実のものとなってしまうのだろうか? 沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長の高山義浩氏に解説いただいた。

「新型コロナウイルス」症状や予防法は?

――「新型コロナウイルス」に感染すると、どのような症状が出るのでしょうか?

高山義浩氏(以下、高山) 詳細はまだ伝わってきていません。主たる症状は発熱であり、呼吸困難を訴える患者もいるようです。胸部レントゲンでは肺炎所見があるようですが、そもそも軽症の人は受診していないでしょうから、どれくらいの人が肺炎になって重症化しているのか、まだ明らかではありません。

――「ヒトからヒトに感染する」といった報道もありますが、それは本当でしょうか?

高山 ヒトからヒトへの感染が起きていることは、間違いありません。ただし、現時点の情報では、それが家庭内など濃厚接触に限定されるのか、あるいはレストランや電車などで一時的に空間を共有した程度でも感染しうるのか、まだ明らかではありません。また今後、ウイルスが変異して感染力を増す可能性もあるので、注意が必要です。

――「新型コロナウイルス」の感染を防ぐために、私たちが今できることはなんですか?

高山 患者を診療する可能性のある医療従事者でない限り、現時点で特別な対策を取る必要はありません。あえて挙げるとすれば、咳エチケットや手洗いなど、日頃の感染対策をしっかりすることでしょう。実のところ、今回の新型コロナウイルスよりも、一般の人たちにとっては、インフルエンザのほうがリアルな問題です。発熱や咳などの症状がある人は、仕事を休み、周囲にうつさないように注意してください。こうした心がけが、ひいては新しい感染症に対する防御を高めていくものなのです。

嵐・北京公演は「後悔しない選択を」

 エンターテインメントの分野でも「新型コロナウイルス」の影響が懸念されている。今春、嵐が北京でのコンサートを予定しているものの、北京市では5名の新型コロナウイルス感染者が報告されている(1月22日現在)。これを受け、ファンの間では「北京公演は中止、もしくは延期にしたほうがいい」「コンサートのために大勢のファンが中国に行って、そのまま日本に帰ってくると思うとゾッとする」といった意見が飛び交っているほか、「もし嵐のメンバーやファンが新型コロナウイルスに感染した場合、ジャニーズ事務所は責任取れるの?」とも指摘されている。

 ジャニーズ事務所やファンは、現時点でなんらかの対策を取るべきなのだろうか? 日本医師会認定産業医/内科医・星野優氏にお話を聞いた。

――嵐の北京コンサートは、開催時期の延期や公演の中止等、対応が必要だと思われますか?

星野優氏(以下、星野) 感染が非常に拡大した場合は、そういった対応になる可能性もあると思います。そもそも、感染が拡大した際は、日本国内でも「新型コロナウイルス」がすでに伝播している可能性も考えられます。ただし、現在のところ、ウイルスの詳細も不明瞭であり、むやみやたらに恐怖やパニックに陥ることは避けるべきです。詳しい情報が届くまでは、冷静に対処することが大切だと思います。

――このままコンサートが予定通りに開催された場合、現地へ行く人は「新型コロナウイルス」に対してどのような対策を取るべきでしょうか?

星野 国立感染症研究所は、感染が疑われた場合の対応として、「医療用マスクの着用」「綿密な手洗い、うがいなどの感染症に対する標準予防策の実施」「接触、飛沫予防策を行う」などの対応を勧めています。しかし、繰り返しになりますが、現状はいわゆる「新型コロナウイルス」に対しての情報が乏しく、正確な対応は困難です。

 感染を特に心配される方は、コンサートが開催されたとしても、参加を見送ったほうがいいかもしれません。結果として大きな問題にならないかもしれませんが、逆に被害が出る可能性も考えられます。感染状況が今後どうなるかは正直わかりませんが、「自分の身は自分で守る」しかないため、後悔しない選択をおすすめします。

5G、人体への影響は4Gより「少なくなる」? NTTドコモ・専門家が「安心」と説明する理由

 いよいよ今年の春から、次世代移動通信システム「5G」のサービスがスタートする。大手携帯キャリアがCM等でこぞって宣伝を行うだけでなく、「5G」をいち早く体験できるイベントも各地で開催されており、市場は盛り上がる一方だ。

 「4G」よりも通信速度が100倍も速く、大容量のデータ通信が可能になるため、VRや3D映像がより身近になるという「5G」。例えば、自宅でスポーツ観戦をする際にVRデバイスを装着すると、リアルタイムで会場にいるかのような、臨場感のある映像を見ることもできるとか。エンターテインメントの分野だけでなく、遠隔操作で手術を行ったり、車の自動運転が可能になったりと、「4G」では成しえなかったテクノロジーの進化が、現実のものになると期待されている。

 その半面、「5G」の普及により懸念されているのが、電波が人体に与える影響だ。ベルギーの首都ブリュッセルでは、健康被害の危険性を鑑みて、19年4月に「5G」の導入を禁止。これに伴い、ヨーロッパ各国でも「5G」による健康被害の議論が活発に行われているという。また、すでに商用サービスが開始されたアメリカでも、人体への影響を考え、一部地域で「5G」の導入が一時中止されている。

 そんな状況の中、日本で「5G」のサービスが始まることに、不安を抱くネットユーザーの声は少なくない。果たして日本では、「5G」の健康被害について十分な検討がされたのだろうか? NTTドコモに問い合わせたところ、次のような返答があった。

「5Gは、これまで携帯電話システムで使用されてきた周波数より10倍程度高いですが、総務省が定めた『電波防護指針』を満足することが重要だと考えています。 2018年9月に改定された『電波防護指針』および2019年5月に改正された関係法令等を順守することで、引き続き、安心して携帯電話を使用できると考えています」(NTTドコモ担当者)

 要するに、「5G」は政府が定めた「電波防護指針」の範囲内で運用されるため、健康被害については「安心」という判断をしているよう。しかし、そもそも「電波防護指針」とは何か? なぜ、この指針を守ってさえいれば「安心」といえるのか? そんな疑問について、「5G」に詳しい国際技術ジャーナリストの津田建二氏に話を聞いた。

「5Gは人体に悪影響」という根拠は“今のところ”ない

――総務省が定める「電波防護指針」とは、一体なんですか?

津田建二氏(以下、津田) 電波の出力を規制する、安全性の基準です。この基準がないと、強い電波を用いて「人がやけどを負うほどの電磁波」を悪用することができてしまう。そういったことが起きないよう、規制は必要です。この基準は長年の研究や実験に基づいて定められており、世界各国に日本と同様の決まりがあります。

 また、国のセキュリティを守るために、電波は「電波法」で規制されています。これは、テレビやラジオの放送局を第三者、例えば犯罪者やテロリストなどに乗っ取られないようにするための法律でもあります。

――今、世界で「5G」の健康被害が叫ばれていますが、日本でも議論の必要があると思われますか?

津田 まず結論から言うと、「5G」による健康被害はないと思います。一般論ですが、周波数は高くなればなるほど、人間への影響は少なくなります。「4G」は1GHz未満の周波数が使われていますが、「5G」は3.5~4.5GHzと周波数が高くなりますから、人体への影響はむしろ減ると考えられるわけです。

 それに、電波というのはもともと、人体に入らないものです。米国のスタンフォード大学に取材した際、ペースメーカーを人の体に埋め込んだまま、無線で充電する方法を研究されている先生がいました。この先生が困っていたのは、人の体に影響が出ないレベルの電波だと、1~2ミリほどしか電波が体の中に入っていかないということ。何が言いたいかというと、通常だと電波は人の体に入っていかないのです。電波というのは皮膚や皮下脂肪に吸収されてしまうため、例えば「体の中に電波が入って、内臓の機能を脅かす」なんてことは、あり得ないでしょうね。

――とはいえ、実際に「5G」のサービスが始まった諸外国では、健康被害が出たという話もあるようです。

津田 基地局の周辺は電波が強いので、その近くに住んでいたりすれば、健康被害が出るのかもしれません。しかし、現段階では「5Gだから悪い」という因果関係がはっきりしているわけではなく、人体に影響を及ぼすという根拠はありません。「体調不良の原因は、食あたりなのでは?」と言われるレベルで、研究が進んでいないのが現状なのです。

 電波が人体へどんな影響を与えるかというのは、なかなかすぐに結果が出ません。電波を浴び続けて10年、20年、30年と問題がなくても、40年目で突然被害が出るかもしれないし、50年間何も起こらない可能性もある。今は「絶対大丈夫」とも「危険」とも言えないわけです。ブリュッセルで「5G」の導入が禁止されたのは、しっかりした検証ができておらず、不確かな状況なので「ペンディングしましょう」ということ。今のところ日本では、NTTドコモが言うように「電波防護指針」の中で運用してさえいれば、健康被害は心配いらないでしょう。

津田建二(つだ・けんじ)
国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル株式会社(現・株式会社日経BP)、リード・ビジネス・インフォメーション株式会社、技術ジャーナリストを30数年経験。その間、「Nikkei Electronics Asia」「Microprocessor Report」など英文誌にも執筆。「Semiconductor International日本版」「Design News Japan」などを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。著書に『知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな』(日刊工業新聞社)『メガトレンド 半導体 2014-2023』(日経BP社)など。

「嵐のために」は危険! 二宮和也の結婚から不仲説……心理学博士が「グループ分裂危機」説に助言

 嵐の「不仲説」報道が鳴りやまない。二宮和也が昨年11月、ジャニーズ事務所の意向に背き、2020年末の活動休止を待たずして、元フリーアナウンサー・伊藤綾子と結婚したことに端を発し、メンバー間に深い溝ができていると週刊誌が報じているのだ。発表時、メンバーの櫻井翔と相葉雅紀は祝福コメントを出したものの、大野智と松本潤は一切触れなかったことも、不仲説に拍車をかけているとみられる。

 一部嵐ファンは、二宮の結婚に衝撃を受けるとともに、「仲が良い」「結束力が強い」として有名だった嵐の不仲説に困惑を隠せない状況。二宮が14年4月、『しゃべくり007』(日本テレビ系)で、レギュラー陣からの「もめた時期とかはなかった?」という質問に、「ないですね」「おそらくですけど、極端な話すると、1回ケンカしたらもうそれで終わりですね」と発言していたことも掘り返されるなど、嵐の行く末に不安を募らせているようだ。

 もし、不仲説が真実だったとしたら――再び「仲の良い嵐」「結束の固い嵐」に戻るためにはどうすべきなのか。今回、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織(すずきじょうじ)氏に、心理学の観点から見解をお聞きした。

ケンカをしたことがない嵐、そこにもし我慢があったなら

 開口一番、「分裂しかかったグループでも、どんなにこじれた人間関係でも、修復はできるものです」と、ファンの不安を吹き飛ばすように、きっぱり断言した鈴木氏。その大前提の上で、まず二宮の結婚によって、メンバーの仲違いが起こったとしたら、そこで考えられる背景について推察してくれた。

「よく『ケンカするほど仲が良い』と言われます。確かに、根拠を示しながら本音を明かし、見解のやりとりをすることは、相手との関係を強固にするものですが、“人格否定”につながるような発言は逆効果。二宮さんで言うと、例えば『なぜ相手があの女性なのか?』『なぜ事務所の意向に沿わず、このタイミングで結婚するんだ?』などは、二宮さんの人格を傷つける発言となります。もしそういった発言がメンバーからあったとすれば、それは関係悪化の要因になるでしょう」

 人格否定につながらないようにするには、「『君の気持ちもわかる』という理解を示し、また『君は、うわさに惑わされず、相手のいいところを見つけられる人』といった人格をプラスに捉える発言をした上で、『でももう少し周りのことを考えてもいいのではないかな』という言い方をすべき」という。

「自分の行動や考えを周囲に否定され、イライラしている相手には、まず何より“気持ちを落ち着かせること”が大切。人というのは、感情的な怒りに対しては、感情的な怒りを向けるものですから、理性をもって相手を落ち着かせるのです。『待て待て待て』『今は怒っちゃいけないぞ』と自分に言い聞かせながら、理性を保つ。そうやって話をしていくと、相手に『わかり合おう』という気持ちが芽生えます」

 理性を持って、本音を話し合う――嵐はそれができていたからこそ、「一度ももめたことがない」という関係を続けてこられた可能性もある。しかし、そこにもしメンバーの「我慢」があった場合は、注意が必要だと鈴木氏は指摘する。

「理性によって、本来の自分ではないパーソナリティーを求められ、その役割を担い続けてきたということがあると、『もう自分はグループの犠牲になりたくない』という感情が爆発し、グループを壊すような心理に傾いてしまうケースも考えられます。ただ、その時もまた、別のメンバーが、『君が犠牲を強いられてきたことはわかっているし、感謝もしている』と理解を示して相手の気持ちを落ち着かせながら、『ではどうしていくべきなのか』を話し合うことが必要なのです」

 嵐の関係性を強固にするには、加えて「同一の目標に向かって、同じ体験をして、達成感を味わうこと」も秘訣だという。今の嵐にとっては、12月末の活休が“ゴール”となるだろうが、その際、「嵐のために」という考え方はグループ崩壊を招く一歩となってしまうようだ。

「人は自分中心で物事を考えるものであり、『グループのために』と考えると、そこに自己犠牲が生まれてしまうのです。だからこそ同じ目標を持つメンバーに対して、何か意見するときも、『グループのため』ではなく『君のため』という言い方をすべき。『嵐のためにコンサートを成功させたい』ではなく、『君のためにコンサートを成功させたい』という言い方をするのです」

 また報道では、特に二宮と松本の対立が激化しており、嵐活休後の復活を視野に入れる相葉が、その溝を埋めるようとしているなどとも伝えられている。対立関係の者同士を仲裁する場合も、「君のため」という姿勢で話をすべきだというが、ここでも相手に耳を傾けさせるポイントがあるという。

「例えば、相葉さんが二宮さんに『松潤はニノについてこう思ってる』、相葉さんが松本さんに『ニノは松潤についてこう思ってる』などと伝えるのはNG。これは二宮さん、松本さん双方に、不信感を抱かせてしまう可能性があるからです。相葉さんがすべきなのは、『自分はニノ(松潤)についてこう思っている』と、自らを“主”として気持ちを述べること。その上で、『松潤(ニノ)も自分と同じ気持ちだと思う』と付け加えることです。そうすると、二宮さんも松本さんも、相葉さんの話に耳を貸そうとする心理が働くようになるでしょう」

 一方で、嵐を取り巻く不穏な空気を払拭したいと願うファンが、できることはないのだろうか。松本が先日、ジャニーズ事務所の公式携帯サイト・Johnny’s web内のブログ「Enjoy」にて、SNSでファンのコメントを見ているという旨をつづっていたが、「ファンが何を発信すべきか」に関し、鈴木氏は次のように助言する。

「二宮さんの交際・結婚に対しては、多くのファンが否定的だったそうですが、人は責められれば責められるほど、心を閉ざし、反発するもの。それだけに、彼は『自分には自分の人生があるのだから、余計なことは言わないでほしい』といった気持ちになっていると考えられます。それが巡り巡ってメンバー間の不和につながってしまったのであれば、ファンはSNS上でメンバーを責めたり、困惑しているという気持ちを発信するのではなく、『コンサートを楽しみにしている』など、応援と期待の言葉を素直に伝える方がいいでしょう」

 鈴木氏は、メンバーを叱咤激励したいというファンの気持ちもわかるとしつつも、ただそれは「適切ではない」という。「言っている本人は叱咤激励のつもりでも、相手を傷つけてしまう」――嵐の活躍を今後も期待しているというファンは、そのことを頭の片隅に置いておくのもいいかもしれない。

「拭き取りメイク落とし」は“たわし”で肌を擦っているも同然! 上原恵理先生がズバリ斬る

 雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
 
自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第1回目は「育乳」、第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」についてうかがったが、第3回目となる今回は、忙しい女性の味方「拭き取りメイク落とし」について。一体、こちらのスキンケアに落とし穴はあるのか!?

拭き取りメイク落としは非常時以外使っちゃダメ!

――「拭き取りメイク落とし」は、忙しい女性にとって、手軽で人気のクレンジング方法ですよね。

上原恵理先生(以下、上原) 「拭き取り式メイク落とし」は、シートで擦ることになるので、肌に負担となります。肌への刺激はシミやたるみの原因になりますから、ひとつもいいことナシ。シートの繊維が肌への刺激になって、たわしやヘチマで擦っているようなものです。拭き取り式メイク落としは、水を使用できない時や、災害時など緊急時用ぐらいに考えてください。ちなみに、一番のおすすめのクレンジング方法は、泡タイプの商品。肌に乗せて、こすらずに済むという優れものです。肌への“刺激”や“摩擦”に気を使うなら、「拭き取り」なんてもってのほかですね。

 また、美肌を第一に考えるなら、一切“日光に当たらず”、“触れず”、“動かさない”。これで、生まれたての赤ちゃんの肌を保てますが、それは不可能なので、日焼け止めを塗り、肌を擦らないようにスキンケアやメイクをするしかないんです。食事や会話など、日常生活で顔面を動かすのは仕方がないけれど、マッサージなどダメージを蓄積させないようにすることが、美肌を維持する基本。

――メイク落としの成分に含まれる「界面活性剤」も気になるところです。こちらも肌への負担につながるのでしょうか。

上原 界面活性剤は水分と油分を混ざりやすくし、メイクの汚れを浮かせて落とす役割を担っているので一概に悪いとは言えません。詳しく説明すると、界面活性剤には水になじみやすい親水基と、油になじみやすい疎水基という部分があり、その疎水基が油分(皮脂やメイク)と結合して汚れが落ちるのです。ただ、必要以上に皮脂を落としすぎてしまう可能性もあるので、しっかりと保湿するなどケアを行ってください。

――スクラブタイプの角質を落とす洗顔料なども、多く販売されていますが。

上原 そういう商品も、顔に使うのはオススメしない。そもそも、肌は一定のサイクルで生まれ変わるもの。これをターンオーバーというのですが、通常の洗顔だけで、古い角質は自然にはがれ落ちていきます。反対に必要な角質まで落とすと、乾燥を招くことも。ただ、ニキビができやすい人や、肌がゴワゴワしている人は、“過角化”といって、角質が厚くなりすぎていることがあるので、その場合は、美容皮膚科・皮膚科などでピーリングなどを行い、角質のバランスを整えて、ほどよい薄さにしてあげることが必要です。

――一般的にコットンを使って化粧水を塗ること勧められています。こちらも肌への刺激になるのでしょうか。

上原 “擦らず”に、滑らす感じやプレスするのであれば、いいと思います。ただ、パッティングも刺激になるので、あくまでも優しく抑えるように。私は「コットンに化粧水を吸い取られるのは、もったいない!」って思ってしまうので、使いませんけど(笑)。

――肌をこすると、色素沈着のリスクが高いとよく聞きます。そんなことで色素沈着が起こるのでしょうか? また消すことはどれぐらい難しいのでしょうか。

上原 バリバリ起こります! 年単位、そして美容医療は自費なので万単位と、高額になったり大変です。

――とにかく“擦らない”ことが重要なんですね。化粧水の塗り方によって、効果が変わることはありますか?

上原 油分が多いものは、手のひらの熱で少し温めて塗ってみてください。バターは硬いままより溶かした方が馴染みますよね。それと同じで、溶かすことで均等に肌に塗ることができます。――基礎化粧品の使用方法で、肌は良くも悪くもなるんですね。ドラッグストアやデパート、皮膚科などさまざまな場所で、数多くの基礎化粧品が販売されていますが、違いがわかりません。

上原 まず、商品に記載されている分類表記を確認してください。一般的なスキンケア用品は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」により、「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」のどれかに分類されています。有効成分や効果・効能の強さが異なり、「化粧品」は効果効能が一番弱く、簡単に言えば乾燥を防げる程度。そこにちょっぴり有効成分が入ったものが「医薬部外品」です。最も効果の高い「医薬品」は医療機関でしか手に入りません。市販の商品で、効果がほしいのであれば、「医薬部外品」と表記されているものをオススメします。

 あとは、パッケージに書かれているヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタなど“肌に良さそうな成分”に騙されないこと。次回詳しくお話しますが、ヒアルロン酸などの分子量は大きいから、肌の奥深くまで浸透することはない。保湿効果はあるものの、ハリツヤが生まれることはありません。

 スキンケアはとにかく優しく、擦らずに医学的根拠が証明された化粧品を塗ること! マッサージ器具でコロコロしたりしちゃダメ! 擦るのはかかとだけにしてください(笑)。

上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。

表参道スキンクリニック表参道院
Twitter:@dr_uehara
Instagram:スキンケア・痩身専門 @eri.uehara
Instagram:外科専門 @aesthetic_surgeon_dr.uehara

なぜ人は「エセ科学」にハマるのか? マイナスイオンへの“無批判”が孕む危険[朱野帰子インタビュー]

 小説『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』(文藝春秋、『賢者の石、売ります』から改題)について、ネット上で興奮の声が次々と上がっている。「エセ科学ネタがたっぷり詰め込まれてて、面白かった」「パワーストーン、自然分娩・母乳育児周辺、がん代替医療と全部盛り。物語の構成がすごい」など、エセ科学やトンデモ科学に引っかかりを覚えたことのある人々から、絶賛を浴びているのだ。

 科学ファンの賢児は、仕事でエセ科学の美容家電を扱うことになり、家でもパワーストーンや代替医療に傾倒する母や姉に囲まれる。それらを正論で否定し続ける賢児は、職場や家族から疎まれていくが、次第に賢児の「科学」を信じる心にも変化が訪れる――。そんな物語を執筆したのは、ドラマ化されて話題になった『わたし、定時で帰ります。』(新潮社)などの作品で知られる朱野帰子氏。なぜ、人はエセ科学にハマってしまうのか? エセ科学の「生温かさ」とは? 朱野氏に話を聞いた。

――『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』。理系の研究者方面からの反響も大きいようですね。科学界をテーマにした小説とあって、理系と文系を股にかけたような作品です。

朱野帰子氏(以下、朱野) 私自身は超文系なので、股にはかけてないです(笑)。でも小さい頃から、うっすら“科学好き”ではありました。『NHKスペシャルシリーズ 人体』を録画して見たり。中学の理科の先生がすごく面白い方だったので、理系に進みたいと思ったこともあったんですが、数学の成績は下から数えた方が早いという感じで。ちょうど『動物のお医者さん』(白泉社)もはやっていて、微生物を培養する人になりたいと思ったんですけどね。職業としてやっていけるだけの得意分野ではないな、と思ったので、書く方に行ったんです。

 2000年代の後半、私が20代最後の頃に小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星のサンプル採取に成功したり、中川翔子さんが「しんかい6500」で深海に潜ったりして、科学ブームが起きました。一般人も科学に親しみを持てるニュースも増えて、そのあたりから私の科学を好きな気持ちも再燃しました。

――今回、エセ科学をテーマにしたきっかけは?

朱野 「エセ科学の話を書きませんか」というお話をいただきまして。科学に詳しい人がエセ科学をばったばったと斬っていくような話を想定されてるんだろうな、と思ったんですけど、自分は理系ではないし、会社員時代にはエセ科学商品に関わったことがありますし。

 出版社だって、怪しい健康記事や、エセではないにしても気休めにしかならない健康本を出していますよね。血液型占いも広義な意味でのエセ科学。エセ科学商品を売ることに加担せずに生きていけるのは科学者くらいじゃないでしょうか。だから白が黒を一方的にやっつける物語ではなくてその境界に生きている人たちを書きたかった。エセ科学にハマってしまう人たちと生きていかなければならなかったり、科学者自身もエセ科学に騙されることがあったりという、あるがままの世界を。

――科学者や科学ファンが騙されたケースとして、本書にSTAP細胞の一件が出てきます。

朱野 一般の人にとっては、STAP細胞に強い興味も持たないまま「科学者も騙されるんだな」という印象とともにあの騒動は終わったんだと思います。でも、科学ファンの私はかなりのショックを受けました。莫大な税金を使って研究している研究者たちから「論文不正なんていっぱいある」「なんであの事件だけマスコミは取りあげるんだ」という発言が出たり、「いちいち関わっていたら研究する時間がなくなっちゃうよ」という意見が出たりするのを見てしまったから。

 理化学研究所は科学界最高峰の機関です。にもかかわらず、不祥事へのリスクマネジメント体制が全くできていなかったことにも驚きました。研究者の性別を前面に押し出すこと自体、一般企業に勤める人たちの目には、危なっかしく映ったことと思います。あの事件によって日本における「科学者の権威」は失墜したように思います。それが、今のエセ科学ブームにつながっているとは単純には言えませんが。

――マーケティング会社では、美容系商材を扱っていた経歴があるそうですが、美容商材を売る上で、女性の心をつかむような戦略はありましたか?

朱野 あります。美容雑誌などで目にするのは“恐怖マーケティング”です。「私の後ろ姿が母に似てきた」ってキャッチフレーズで脅しておいて「加齢のせいだ」と原因を示し、「こういうことをすれば防げる」と救いの手を差し出す。「※個人の感想です」を加えることもある。エセ科学をつくるのは簡単です。でも、それって自己啓発系の記事でもよくやる手法だし、小説でもできてしまう。作り手がどこまでやるかの倫理的な問題もある。

 私が担当していたのは大企業の商品でした。法の監視下にあるので、「ない効果」を「ある」とは言えない。だから厳密にエセ科学商品と言えるかというと、違うかもしれない。でも中小企業は大企業の商品をまねる戦略に出ます。彼らは違法な表現も厭わない。「これを飲めば痩せる」とか。嘘だとわかっていて買う消費者もいるでしょう。

――騙されてるかもしれないけど、もしかしたら効くかもといった期待や興奮にお金を出す側面があるのかもしれません。

朱野 パワーストーンだって心の底から「絶対に幸せになれる」と思って買う人は少数だと思います。神社のお守りと一緒で気休めだとわかっているけど、エンタメとして消費をしたい人もいる。そうやって売る側と買う側のリテラシーがマッチしていれば害はないと思うんです。ただ、売る側も買う側も効果を信じ込んでしまっているパターンもある。

 マイナスイオンという物質についても、存在するかどうかをそこまで真剣に考えている人ってほとんどいないと思います。ドライヤーとしての性能を総合した結果、髪がきれいになればよいと思っている消費者がほとんどではないでしょうか。ただ、そういうものを無批判に受け入れていった先に、家族の病気や出産などで直面した「不安」に漬け込んで、お金を払わせたり、治療を遅らせたりするような商品と出会ってしまうことはあると思うんです。

――エセ科学を使った商法は、どれだけ批判されてもなくなりませんよね。

朱野 私は科学を信じる側の人間なので認めたくないですが、エセ科学的なものが心身の痛みを和らげてくれることもありますよね。病気になったときに「生存確率は50%です」と言われて、それを受け入れられる人がどれだけいるか。「このパワーストーンを持っていれば大丈夫」と言われた方が救われることもある。エセ科学は必ずしも害悪ではない。エセ科学が全くない世界は、それはそれで息苦しいし、救いがないですよね。

――本書では母乳信仰、自然分娩信仰というテーマにも触れています。それについて「生温かい科学」と書いていますね。

朱野 エセ科学側の人たちって現実を受け入れられない気持ちに寄り添ってくれたり、希望を持たせてくれたりする。だから優しい世界に一見見えるんです。それに対して科学はすごく「冷たい」。出産に不安を抱えて、我が子だけは助かってほしいと願う親に、「この確率で流産します」と宣告するのが科学です。

――女性の方がエセ科学に興味を持ちやすいんでしょうか?

朱野 女性は美容好きが多いので、早めにエセ科学に触れるかもしれません。妊娠出産に対する関心が高いこともあるでしょう。子どもに予防接種する・しない、などの決断を迫られるのも大体の場合、母親です。科学とエセ科学の境界に向き合わされる場面が多いんだと思います。男性は60代くらいまで老いを感じない人がいると聞いたことがありますが、老いを感じてから先は、女性よりもハマる人が多い印象があります。

――エセ科学にお金を出す人を、賢児は「未開人」と言っています。「それはデタラメだ」と言っても通じない。

朱野 エセ科学そのものを叩いても意味がないと思っています。なぜその人がエセ科学を信じるに至ったかという“ストーリー”に向き合わなければ、根本的解決はできないと思います。一人ひとり違うから大変ですけど。手っ取り早く論破したくなりますが、やればやるほど向こうを向かれてしまう。寄り添ってくれる人の方がいいに決まってます。

 この小説を書き始めた頃に、エセ科学を論破する本を何冊か読みました。中には「理系の頭のいい男性が文系の無知な女性を救う」という構図をとっているものがあって、嫌な気持ちになったこともあります。なぜかというと私も同じ構図で家族に説教することがあるから。私は女性ですが、「賢い私が教える」モードになることはあります。水素水がスーパーマーケットで出されていたりするのを見ても、「この未開人どもが」とスイッチがつい入ってしまう。

――論理的に諭すほど、エセ科学にハマっている人はそっちに向かってしまう。難しいですね。

朱野 うちの祖母は生前「いいことをしていればガンにならない」と言っていたそうです。「なんて非科学的なんだ、悪いことをしたからガンになるわけじゃない」と言いたくなりますが、祖母は戦争中、目の前で夫と幼い子を亡くしています。壮絶な体験を経て、大事な人が再び死ぬのではないかという恐怖から逃れるために「いいことをしていれば……」と言っていたのかもしれない。それに対して「非科学的だ」という言葉はあまりにも冷たい。

科学を尊敬しているからエセ科学にハマる

――エセか否か見極められないのは、学校教育との関係もありそうです。学校で、賢児の姉が光合成について質問すると、「説明してもお前になんかわからない。それよりスカートが短すぎる」と取り合ってもらえない描写がリアルでした。

朱野 勉強嫌いな子だって、どんなに学力が低い子だって、理科のすばらしさを知る権利ってあると思うんです。「なんで光合成ってあるんだろう」「葉緑体って何?」「それは生き物なのか? 細胞なのか? 無機物なのか? 何なんだろう?」という好奇心を持ったとしても「そんなのはいいから、覚えなさい」って言われるのが学校教育ですよね。でも多くの人の心の底には科学への憧れや興味が残っているはずなんです。だから科学的な文句に惹かれてしまう。科学に興味がない人はエセ科学にも興味を持ちません。

――朱野さんは、この商品や情報は怪しいと思ったとき、どのようにジャッジしていますか。

朱野 私の場合は、Twitterでフォローしている人がエセ科学と戦っていたり、科学機関に属していたりするケースが多いです。こういうエセ科学がはやっている、という情報が頻繁に回ってきます。科学が好きな人たちの近くにいるっていうのは、対策のひとつとしてあると思います。それから、自分と正反対の意見にも頑張って耳を傾けること。
また、大好きな科学者の研究発表であったとしても、疑ってみること。国民はスポンサーですから、「これお金いくらかかったんだ?」「不正はしていないかな?」とチェックする権利もあると思います。エセ科学との戦いは冷たくて厳しいんです。

朱野帰子(あけの・かえるこ)
1979年、東京生まれ。マーケティング会社に7年勤務した後、09年に『マタタビ潔子の猫魂』(KADOKAWA)でデビュー。ドラマ化された『海に降る』(幻冬舎)『わたし、定時に帰ります。』(新潮社)ほか、『くらやみガールズトーク』(KADOKAWA)など多数。

山口組、住吉会も「タピオカドリンク」参入! ブームをシノギにするヤクザの“次なる資金源”は?

 2018~19年にかけて大流行した「タピオカドリンク」が、暴力団の新たな資金源になっている!? そんな衝撃的な事実を明らかにした『教養としてのヤクザ』(19年10月発売/小学館新書/溝口敦、鈴木智彦共著)。著者の1人である暴力団事情に詳しいフリーライターの鈴木智彦は、タピオカドリンク店が暴力団のフロント企業になっていると指摘し、そのカラクリを紹介している。ヤクザが流行をメシの種にしているという事実は世間にはあまり知られていないが、一体なぜ暴力団はタピオカドリンクに目を付けたのか。ほかにも、私たちの身近なところに資金源はあるのだろうか。

タピオカ記事が大反響、呉の組員から電話が……

――『教養としてのヤクザ』上梓の前、2019年6月にニュースサイト「NEWSポストセブン」に、鈴木氏による「タピオカがヤクザの資金源に 『こんなに楽な商売はない』」という記事が掲載されました。この記事には、暴力団幹部は中国や業務用スーパーから激安のタピオカを仕入れ、スーパーの安い茶葉を使用してミルクティーを作り、原価1割ほどで1杯約500円を販売。1店舗で月に80~100万円ほどの利益をあげていると書かれており、同記事はネット上で大反響を呼びました。

鈴木智彦(以下、鈴木) そもそもこの「ヤクザとタピオカ」の企画は、平成生まれの若い担当編集者が、毎週行われているプラン会議で、裏取りをしないまま苦し紛れに出したものだったんですよ。「ヤクザとタピオカ」という意外性と、語感で思いついたのだと思います。俺は最初「暴力団がタピオカドリンク店をやっているなんて、そんなことあるわけない」と断った。もともとシノギの取材にはあまり興味がなくて、専門としているのは殺しだから。だけど、その編集者が独自に調査して山口組系のタピオカドリンク店を見つけてきたんです。そうなったら、こっちも燃えるじゃないですか(笑)。調べてみたら、都内に住吉会系の店もあることがわかった。だから、着眼点自体は編集者のものなんです。

 それで、まずこの記事が「週刊ポスト」(小学館)に掲載され、その後、ネットでも配信されたのですが、「すごいPVになっている」と編集部が騒ぎ出した。ネットの影響力はすごいですね。20年ほど前に取材した呉(広島県)の若い衆から「記事を見た」と連絡が来たし、昔から露店でタピオカドリンクを出していたテキ屋からも「こういうことを書くと商売が面倒くさくなるから、これ以上書かないで」なんて連絡も来たので、びっくりしたね。これが「バズる」ということかと。

――『教養としてのヤクザ』によるとカカオも資金源になっているそうですね。

鈴木 暴力団は、いろんなところに投資をしているんですよ。仮に投資先が事業に失敗しても、「返せ」と脅せるから、さまざまなところに投資できる。タピオカはそのうちの一つにすぎません。タピオカは暴力団の参入にぴったりだった。作るのにスキルがいらない、従業員はアルバイトでいい、店は狭くていい……その上、タピオカは激安。タピオカよりミルクティーの方が高くつくので、タピオカを無料で増量して、ミルクティーを減らすと、「お客さんは喜び、店は儲かる」と言っていましたよ。

 カカオはバレンタインデーの1カ月くらい前に急に値段が上がる。賞味期限切れのカカオを安く買い集めて、シンガポールの倉庫に置いておき、バレンタイン前に「新しいカカオ」として輸入販売して儲けるというのが3年ほど前にはやったんです。目のつけどころがすごい。

――ほかにも、ヤクザが流行をメシの種にしている例はありますか。

鈴木 以前、京都でバターを大量に使った高級なデニッシュパンがブームになりましたが、これは工藤会が出資していましたね。銀行だと融資までに1~2カ月かかるところ、暴力団は即日お金を持ってきて1週間後には契約できる。はやりものにすぐに投資して、ブームが収束する前に大金を回収して手を引く。ヤクザっていうのは腰が軽くて、飲食店への出資は昔から多いですよ。

 ほかにも、15年ほど前、エステや民間療法がはやったとき、ヤクザも投資をしていましたね。友人のライターが怪しい医者を追いかけていたら、俺の知り合いのヤクザが経営している病院の医者だったということがあった。今はやりのジムに参入している暴力団も多いんですよ。

――どういうふうに商売のタネを見つけてくるのですか。

鈴木 暴力団の親分に「俺たちのシノギの場に連れて行ってやる」と言われ、会食に連れて行かれたことがあります。そこには商売をしようとしている人、一方で、夜の仕事なんかで大儲けした人がいて、つまりヤクザは、お金を借りたい人とスポンサーを結びつけるというコーディネーターのような役割を担っていました。ヤクザ本人が投資したい商売があれば、参入したりもしていましたね。暴力団は1億円でも2億円でもすぐにお金を融通できるので、短期でお金がほしい人は頼ると思います。

 俺たちは世間から「ヤクザの味方」と言われないように、意識して暴力団を悪く書くけれど、実際には、付き合った仲間を食いものにするようなヤクザはいない。ごくたまにどうしようもない奴もいるけど、それは特殊な例で、どこの業界でもあることなのではないでしょうか。

――投資した中には失敗した事業もあるのでしょうか。

鈴木 それはあると思いますよ。だいぶ昔、ドトールが店舗数を増やし始めたときに、ヤクザ もコーヒーショップをたくさん出店したけど、失敗して潰れていました。太陽光発電システム に設置すると電気代が全部無料になるという機械に、何千万円も出資して失敗したという話も聞きましたね。あと、FXのバイナリーオプション・ハイローという、為替の動きを上がったか、下がったかの2択だけで予測する投資があるのですが、その結果を予想するパソコンソフトというのがあって、50万円だか100万円だかするものだそうです。しかし、その投資もあまりうまくいっていないという話ですよ。ヤクザは山っ気があるから、丁半博打と同じようなもので、儲かるときもあれば大損するときもあったりします。

――暴力団が時代を読むのに優れているわけではなく、いろいろなことに手を出して、たまたまタピオカドリンクのように大当たりするものもあるということですね。

鈴木 タピオカは大当たりには入らないと思います。単価が安いから。そんな微々たる儲けじゃダメだよね。ただいくつか店舗を持ったら、それなりの儲けにはなるかもしれません。

――今後、資金源になりそうなものはありますか。

鈴木 はやりものにはなんでも手を出しますよ。特にタピオカドリンク店同様、「作るのにスキルがいらない」「従業員はアルバイトでいい」「店は狭くていい」というポイントを押さえたはやりものが出たら、参入するでしょうね。ブームが終わりつつあるタピオカドリンクからは、もう手を引くと思いますよ。

――暴力団のシノギというと、売春や土地転がしで莫大な金を稼いでいるイメージが強いです。しかし、暴排条例(暴力団排除条例)で昔のように派手にお金を動かせなくなったので、タピオカドリンクで地道に稼いでいるということはありますか。

鈴木 それはないですね。先ほども言ったように、タピオカドリンク店は数ある投資の一つ。自分たちで営業しているわけではなく、あくまで出資しているだけなんです。土地は儲かるけど、土地転がしにはスキルがいるので、専門の暴力団しかできない。はした金を持って新規参入してきた暴力団には儲けられないんですよ。

――暴力団は、いわゆるチケット転売で儲けている印象もあります。いわゆる「ダフ屋」ですね。しかし最近、デジタルチケットが普及し始めて転売が難しくなり、稼げなくなっているのではないかなと思うのですが。

鈴木 ダフ屋は、ダブ屋を専門とする姉ヶ崎一家が一手にさばいています。姉ヶ崎一家は指定暴力団ではないので、規制は緩いから、ダフ屋は続くだろうね。ただ、やはりデジタルチケットが普及すると厳しい。以前と比べて数は減ってきていると思います。

――みかじめ料を資金源にしているというのもよく聞きます。例えば、スナック経営者にみかじめ料を要求して、お金をむしり取っていくようなイメージがあるのですが。

鈴木 それは漫画の世界の話。暴力団に聞くと、今はみかじめ料はほとんどないと言います。実際の犯罪検挙数では多いかもしれないけれど、特に都会ではもう取れないですね。みかじめ料を取る基準は、女を使っている商売かどうか。デリバリーヘルスなど、女を使った商売には暴力団がやって来ます。でも、2005年の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)改正により、違反の罰則が強化され、開業する際は公安委員会に営業届を出し、届出確認書を店に備えなければいけないなど、厳しくなった。すなわち、きちんと営業している店は警察が付いているので、暴力団はみかじめ料が取れなくなったわけです。

 ヤクザがみかじめ料を取るとしたら、本番をウリにしているデリバリーヘルスなど、非合法の商売。暴力団が来ても警察に駆け込めないから、そこにつけ込んで取る。オレオレ詐欺なんかも、暴力団が直接やっているわけではなく、「やっている連中は警察に駆け込めない」というところにつけ込んで、上前を取っているんですよ。

――想像上のヤクザのシノギと、実際のシノギは事情が異なるなと思いました。

鈴木 古典的なシノギは売春、賭博、覚醒剤といった非合法なことだけど、本当は暴力団も合法の仕事をしたいと思っています。捕まるリスクがないから。だけど暴排条例で、彼らは銀行口座を持てないし、カタギと付き合ったらカタギが罰せられる。表立って合法な事業ができないんです。だから非合法の仕事か、タピオカドリンク店への投資など、隠れて合法なことをやるしかない。暴力団がタピオカドリンク店を経営して何も悪いことはないはずなんですけどね。誰かを脅しているわけじゃないし。でも警察は「暴力団の資金源になる」といって潰しに来る。正直、おかしな話ですよ。ただ、ヤクザはよくこうやって言っています。「朝、満員電車に乗ることもなく、昼に起きて、喫茶店でゆっくり飯を食べて、夕方から飲んで稼いでるのだから、カタギからやり玉に挙げられるのは仕方がない」ってね。

――最近のヤクザは以前より丸くなったと思わされる一方、現在も暴力団の抗争のニュースを目にします。

鈴木 抗争は世間に対するアピール、いわば彼らのステージなんですよ。抗争で強かった組に、人とカネが集まる。逆に負けっぱなしだと集まらない。暴力団に近づくカタギの奴らは、「暴力団は怖い、でも僕らにはやさしい」という“ギャップ萌え”をするものですから、暴力団は派手な抗争をして殺し合い、強いところを見せないとならないわけです。しかし、だんだんそれもなくなってきましたね。漫画やヤクザ映画と違って、殺しのカードはそんなに切れない。殺したあとが大変だから。山口組もドンパチやってるけど、やり足りなくて、いままで築いてきた山口組の強いイメージの貯金が減ってきているように思います。

―― 一般的には、自分たちの身近なところに暴力団が絡んでいると想像できません。「タピオカドリンク店がヤクザの資金源になっている」という記事が反響を呼んだのも、「まさかそんなことが」と驚いた人が多かったからではないでしょうか。

鈴木 結構身近にいるんだけど、みなさんが気づかないだけ。とあるホテルのラウンジに行ったら、若い衆がたくさんいたことがあったんですが、誰も気づかない。街でヤクザの集団が歩いてきても、誰も気づかない(笑)。最近は、柄シャツの襟をジャケットの表に出しているような漫画みたいなヤクザはいないんですが、佇まいが明らかに一般人と違います。ファッション関係者に言わせると、装飾品から着こなしから全て一般人とは違うそうですよ。

 俺は、暴力団は差別と似ていると思う。差別は表出すると批判されるが消えることはない。暴力団も、叩かれて表から見えないかもしれないが、消えてはいませんから。

――ちなみに、芸能人とのつながりも深いと言われますね。

鈴木 もともと興行が暴力団のシノギ。昔は暴力団が芸能プロを経営していましたからね。その名残で、今でもつながりは深いんです。暴排条例の前は、芸能人とヤクザが一緒に食事することも当たり前のようにありましたよ。Vシネマも、「自分たちの組の歴史を作品にしている」と言って、該当する組が出資を行っていましたしね。あと、売れなくなって辞めたタレント……例えばジャニーズ事務所の元アイドルなんかも、暴力団やその周辺がお金をくれるから寄ってくる。それにヤクザは一緒に遊ぶには最高に面白い。組織人なので、空気を読んで場を盛り上げてくれるんです。

 一方で、暴力団側も芸能人を広告塔や箔付けに使おうとします。「芸能人と食事した」と言うと、それだけで寄って来るカタギも増えるから。ヤクザと芸能人は持ちつ持たれつの関係なんです。ただ、芸能人は今、ヤクザと写真を撮られることに非常に敏感になっている。流出して「反社会的勢力と交流がある」と報じられたらアウトなのでね。

――時代によって変わりつつあるヤクザの現状を知れましたが、今後、ヤクザはどうなっていくのでしょうか。

鈴木 ヤクザの強さは親分・子分の濃密な絆。昔は、一家は家族、若い衆は子分、すなわち子どものような存在だった。しかし、それが今では薄れてきたように思います。山口組の組員は1万数千人いて、いわば会社の上司と部下と同じようなもので、つながりが弱くなっている。暴力団というのは、昭和から平成にかけて巨大化していきましたが、このスタイルでは今の厳しい取り締まりの荒波に耐えられないのではないでしょうか。組織を縮小して親分の目が届く40~50人の組織に戻っていかざるを得ないと感じていますね。

鈴木智彦(すずき・ともひこ)
1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌「実話時代」(三和出版)編集部に入社し、「実話時代BULL」編集長を務めた後、フリーライターに。暴力団に関する潜入ルポで広く知られる。著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』(ともに文藝春秋)『サカナとヤクザ』(小学館)などがある。

【著書紹介】
教養としてのヤクザ』(小学館新書/溝口敦、鈴木智彦共著)
日本の二大“ヤクザライター”である溝口敦と鈴木智彦が集結。「ヤクザとメディア」「ヤクザと食品」「ヤクザと五輪」「ヤクザと選挙」「ヤクザと教育」「ヤクザと法律」といったテーマで、ヤクザの知られざる実態を暴いていく。“反社会学”の入門書的一冊。

家庭内に押し込まれる子育て・介護、DV、虐待問題――安倍政権と保守派の「24条改憲」の狙いは何か?

 「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」の中止・再開騒動や補助金の不交付をめぐる騒動、徴用工訴訟に端を発した日韓対立など、安倍晋三首相や政権中枢、それを支える日本最大の保守団体「日本会議」の歴史修正主義が日本社会を文化的・経済的に混乱させている。安倍首相は、国会議員としてのキャリア初期から「慰安婦」問題を否定し、歴史修正主義の動きに関わり、各方面に圧力をかけてきた。その姿勢から見えてくるのは、強烈なセクシズムの姿だ。

 だが、第二次安倍政権以降、「女性活躍」政策を打ち出しているために、その反動性が見えづらくなっている。しかし、今後国会で争点になるであろう、憲法、教育、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の“改悪”を通して、女性や子ども、マイノリティの権利は脅かされ、「多様性ある社会」も後退の危機に瀕することが予想される。そこで今回の特集では、安倍政権や日本会議の狙いと危険性を、項目ごとに検証する。

【第1回】女性やマイノリティの権利、女性運動はなぜ“後退”したのか――バックラッシュ~現代に続く安倍政権の狙いを読む

 第2回は、安倍政権の悲願ともいわれている憲法改正に注目したい。1月6日、自民党は憲法改正を推進するためのポスターを初めて発表した。そこには「憲法改正の主役は、あなたです。」をキャッチコピーが躍っているが、世論として改憲が盛り上がっていない現状を考えると、主役として事を進めたいのは安倍政権側だと言わざるを得ないだろう。改憲というと、長らくメディアでは自衛隊明記を含めた9条改正などが取り沙汰されてきたが、自民党や日本会議(前身団体も含む)などの保守派が60年以上、虎視眈々と狙ってきたのは、24条である。その具体例として示されたのが、2012年の自民党の日本国憲法改正草案(以下、改正草案)だ。

 「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という一項(家族条項)が新設されている。現行24条が「家庭生活における個人の尊厳と両性の平等」を掲げているのに対し、「家族の助け合い」と“改正”することはすなわち、個人よりも家族を重視するという表れである。改憲保守派の狙いはなにか、またその問題点はどこにあるのか。「24条変えさせないキャンペーン」の呼びかけ人であり、室蘭工業大学大学院准教授(憲法学、家族法専攻)の清末愛砂氏に話を聞いた。

――まず、「改憲」は一般的なものではなく、どういった影響が起きるのかわからない人も多いので、ご説明いただけますでしょうか。

清末愛砂氏(以下、清末) その答えは、改憲の要件と同じ意味ですので、そちらからお話しします。私はよく改憲は最終手段というのですが、国民の人権を保障できないような事態が生じ、今ある法律を改正したり、憲法を積極的に解釈したりしても具体的な施策が難しい状況、なおかつ国民の中から強く要請されるときに、改憲への動きが始まります。「国民の要請が強くある」というのが、非常に重要です。普通の法律は、国会で審議して採択されれば法改正や立法ができますよね。だけど憲法は、両議院で総議員の3分の2以上の賛成を得て、さらに国民投票をしないといけない。このように日本国憲法の場合、改正のハードルは高く、つまり頻繁な改正は当初から予定してないということです。

――憲法が変わることによって、それに沿うように法律も改正されていくということですよね?

清末 憲法に基づいて動く国ですから、当然法律がそれに付随して変わることもあるでしょう。

――裁判所の判断も、当然新しい憲法に基づく判断となりますね?

清末 裁判官がどこまで憲法を意識しているのかわかりませんが、当然憲法に沿った判断じゃないとまずい。だけど実際に日本の裁判所が現実として、今それをしているかと問われると、私は裁判官による政権への忖度も大きいと思っています。ただ、本来そうでなければならないし、実際にそうしている裁判官もいます。

政治利用される、同性婚の法制化

――改憲の影響を確認した上で、女性やマイノリティ、そして多様性ある社会にとっての脅威となる、保守派の24条改憲の動きについておうかがいします。9月の第4次安倍第2次改造内閣発足の際には、安倍首相が改憲への決意を新たにしましたが、24条は18年に自民党憲法改正推進本部がまとめた改憲4項目(自衛隊明記、緊急事態条項、参院選合区解消、教育の充実化)には入ってはいません。それでも憲法学者、ジェンダー学者の多くが危機感を抱いている理由を教えてください。

清末 今は4項目には入っていないのですが、最近富山市で行われた講演会でも、自民党の下村博文氏が「同性婚の法制化のための憲法改正」と24条に関わることを言っていましたし、自民党も「必ずしも4項目にこだわらない」と言い始めています(※1)。そうなると24条が狙われる可能性が非常に高い。とりわけ「同性婚の法制化」の名のもとで、24条1項の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」を、「両者の~」に変えようと言っているわけですから。今の情勢でなぜ再び24条改正論が出てきたかというと、同性婚法制化のための改憲だったら、野党でも賛同する政党があるから。自民党は7月の参議院選では改憲決議に必要な総議員の3分の2には届かなかったけれど、数席足りないだけです。その数席を改憲側に持ってくればいいわけだから、野党のうち改憲に賛成しそうな党が求めているところで妥協することがひとつの戦略として考えられるということでしょう。だけど、そもそも「国民が改憲を強く求めているか」というと、声すら出ていないと思うんですよ。例えば、「緊急事態条項」と聞いてその内容がわかる人はそれほど多くないですよね?

――「聞いたことがある」という程度の人が多いような気がします。

清末 言葉すら知らない人も多いと感じますし、知らない以上は、声が出るはずはないんですよ。いわゆる立法事実といわれるものがない。それ自体に問題があるんですが、同性婚の法制化と言えば納得する人も出てくるでしょう。ただ24条を改正したからといって、自民党が同性婚の法制化を認めるとは思えない。憲法を変えても、それだけで同性婚が法制化されたということにはならず、実務を動かすためには関連する法律の改正が必要になります。しかし、自民党は党内でも同性婚反対の声がそれなりに強いので、そこはやらないと思う。今は、改憲を進めるために、その正当化の理由として同性婚の法制化を利用してるだけで、実際には法制化を進める気はないだろうとは、弁護士や憲法研究者と話していますね。ちなみに、同性婚法制化のために24条を変える必要はありません。

――そうなんですか?

清末 「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」は、「合意のみ」が重要なのです。そもそも制定の趣旨として(結婚に戸主の許可が必要だった戦前の家制度を否定し)、単に異性婚の成立要件を「合意のみ」と書いているにすぎない。当時は同性婚の議論がなかったから、当然禁止する意図はないのです。24条2項に、家族に関連する立法については、「個人の尊厳と両性の本質的平等」に基づくと書かれています。同性婚が認められていないこと自体、それを望む人々の「尊厳」を奪っています。「個人の尊厳」に着目したら、24条2項のもとで同性婚の立法化が可能です。なので、24条の改正は、同性婚の法制化には関係ありません。

※1 9月21日に富山市で行った講演で、改憲項目について、24条の「両性の合意」を「両者の合意」に書き換える案などを示した。その後、党内からの反発を受け、「野党が望むテーマがあれば議論を検討する」と発言を後退させている

――ではなぜ保守派は、事あるごとに24条を狙っているのでしょうか?

清末 改憲の動きは、1951年のサンフランシスコ講話条約以降に、保守派が始めます。改憲といえば9条(戦争の放棄)に注目が集まりますが、保守改憲派にとって9条以上に嫌なのは、象徴天皇制と、家制度を解体・否定した24条です。「両性の本質的平等」や「個人の尊厳」を、家族の調和を乱す元凶と見なしているのです。「個人の尊厳と言うから利己主義になる」というのが彼らの主張です。

 そこに「家族は、互いに助け合わなければならない」という文言が入る具体案が12年の改正草案ですけど、05年の自民党の改憲の論点整理でも24条を「家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべき」と言っていました。そこから、24条見直し論が12年に実際の条文案として出てきたという流れですね。その中に、「家族の助け合い」というおかしなものが入ってくる。

――自民党の改正草案をベースに、24条改憲の問題点を教えてください。

清末 そもそも「家族の助け合い」というのはモラルでしょう? 憲法は権利を保障するものですから、モラルや道徳が入ってはダメ。立憲主義的に考えても、あり得ないんです。それに「家族の助け合い」とは、要は子育てや介護の負担を全面的に家族に負わせる根拠になるものです。少子高齢化で家族にどんどん介護が押し付けられ、払った税金が社会保障として戻ってこなくなるわけです。また、憲法に自衛隊が明記され、実際に安保法制のもとで戦場に送られるときに、「家族の助け合い」なんか求められたら……戦場に行く兵士を支えろということですよ。まさに大日本帝国の様相です。

――女性学ではよく「家制度が戦前の天皇主権国家を支えた」と指摘されますが、一般の人にはわかりにくい概念なのでご説明いただけますか?

清末 大日本帝国は家族のような国家で、元首である天皇が国家の父であり唯一の主権者、臣民と呼ばれる国民がその子どもという概念です。家の中には男性優位の家制度として同じような縦社会があり、戸主は家の構成員に対して扶養義務がある一方、その構成員に対する婚姻等の同意権等を含めた権限を持っていた。つまり戸主が家を統制する仕組みを導入することで、帝国の土台がつくられたのです。家制度の廃止=家の中のヒエラルキーをなくすという意味ですから、天皇主権国家のヒエラルキーを崩したことと非常によく似ています。それを可能にしたのが、家制度の解体(24条)と、教育制度の自由主義化をもたらした旧教育基本法です。愛国教育は家制度以上に臣民を作ることに大きな役割を果たしました。だから、第一次安倍内閣は、06年に教育基本法を“改悪”して、愛国心を育むことを教育の目標のひとつに入れたわけです。「教育」に手を打ったから、あとは24条改憲で、家制度に通じるような家族に関する“モラル”を浸透させたいのです。その発想のもとで、夫婦別姓については「家族を崩壊させるもの」として一貫して反対しています。

――「家族は大切で、助け合うべき」との言説は一般的に反論しづらい面がありますが、危険な条文ですよね。

清末 同性婚法制化のために、「両性」を「両者」にするだけならすぐには何も変わらないかもしれませんが、24条1項を一度でも触って改憲の“走り”をつけたら、次から次へ変わる可能性がある。その時に2012年の改正草案に近づいていくのでしょう。家族条項の影響は大きいですから、安倍政権のもとでの改憲は危険なのです。

――改正草案でいう2項では「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」の「のみ」が消え、3項では、現行憲法の「配偶者の選択」「住居の選定」が消え、「扶養」「後見」「親族」が加わっています。具体例としては、結婚/離婚について個人の自由が制限され、他者の介入を許す可能性が高いということですよね?

清末 明らかにそうです。さらに「住居の選定」が消えていることから、DV被害者が離婚しにくくなったり、逃げにくくなったりすることも考えられます。

――「扶養」という面から考えると、例えば、性的虐待を受けて育った女性の将来父親が、経済的に破綻した場合、女性側に「家族の助け合い」による扶養義務が生じることも考えられますか?

清末 そうですね。ちなみにシンガポールには両親扶養法という法律があります。老親が子からの扶養を求めて、両親扶養裁判所に申し立てができる。ただし条件があります。親がきちんと子どもを養育し、虐待していないなどです。子を虐待した親については、申し立てが却下されたり、扶養料が減額されたりするのです。親としての責任を果たしていない以上、その子が扶養する必要はないということなのです。だから、改正草案のように、家族に関する問題への指針を一律にされると、問題が多いと思います。

――保守派による家庭教育支援法制定(※2)への動きも活発です。国や自治体も、「早寝早起き朝ごはん国民運動」などの施策を行っています。そういった家庭像の押し付けは、現行24条の「個人の尊厳」に抵触する可能性が非常に高いと思いますが……。

清末 そうですね、あれは愛国心の醸成だと思います。「家庭教育」という言葉自体、学校だけでは愛国教育はできないから、家庭で学校の延長線上として教育するという発想で、大日本帝国時代に作られた造語なんですよね。その言葉を使って、いま文科省は施策を行っている。家庭教育支援と聞くと、貧困家庭や大変な問題を抱えている家庭の支援になる、児童虐待の早期発見ができると思う人もいるわけですけど、それは家庭教育支援法を作らなくても、現行の法律を使えばいいのです。むしろ家庭教育と称して、公権力にとって都合がいい一定の家族像を押し付けるために家庭に介入することが可能になる。それは非常に危険です。戦前の皇民化教育につながってきます。

 そうした介入は、思想・良心の自由を脅かす可能性があります。どういう形態の家族を持ちたいか、両親が別居・離婚した後の子の意思についても、母親と一緒にいたいとか、父親といたいとか。あるいは家族そのものを持ちたくないとか。人によっていろいろな考え方がありますよ。そういうのは個人の価値観。なので、一定の家族像を国が示すのは、多様性の後退ともいえるのではないでしょうか。

※2 子に「生活のための必要な習慣」「自立心の育成」「心身の調和」を身につけさせることを国民への責務とし、そのために行政が親への教育を支援することなどを目的としている。問題を抱える家庭を支援する面もあるが、家庭や内面への介入が問題視されている。家庭教育支援法については次回取り上げる

【テラスハウスファン座談会】愛華はなぜ「女性視聴者」を戦慄させる? テラハ前半戦のメンバーを考察

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティー番組『テラスハウス」(Netflix先行配信)。2019年5月からスタートした東京編「TERRACE HOUSE TOKYO2019-2020」は、東京オリンピックまで続くと宣言されており、この年末で折り返し地点に到達したものとみられる。

 今回、サイゾーウーマンではテラハが好きすぎて語りたいことが溜まっているウォッチャー3人に集まってもらい、座談会を開催。前編では、マルチクリエーターの翔平とイラストレーターの香織が「テラハの空気をよどませた」という意見が飛び出したが、後編ではほかの気になるメンバーについても話を展開してもらった。(座談会は12月中旬収録)

(前編はこちら)

【座談会参加者】
Aさん:テレビ制作会社勤務。映像作品として興味を持ち、テラハを見始める。とにかく香織に対して並々ならぬ思いがある。
Bさん:編集者。軽井沢編(17~18年)後半のドロドロした展開にハマり、過去のシーズンも一気見。東京編でのお気に入りメンバーは翔平。ジャニオタでもある。
Cさん:ライター。朝井リョウの小説『それでは二人組を作ってください』(新潮社『何様』に収録)でテラハの魅力に気付く。副音声が大好物。イチオシメンバーは軽井沢編の聡太先生。

テラハの愛華、「飲みましょうよ~」発言は怖かった

――ここ最近は、現役大学生・愛華がテラハを盛り上げていますね。バスケットボール選手・凌に寿司をおごらせた「ザギンでシースー」事件や、凌をめぐるライバルであるプロレスラー・花へのマウンティングなどで炎上しています。

 愛華は関わり合いたくない女子そのもの。イメージで言うと、スクールカーストの上から二番目のグループにいる中心人物っぽい。流行を必死に取り入れること、周囲の女子への絶妙なマウンティングを駆使することで、その地位を死守していて、中身は特にない子というか。敵に回すと一番面倒くさいタイプです。

 愛華は、球場のビールの売り子をしてたんですよね。売り上げも上位だったと本人がインスタグラムで書いてました。売り子って、顔採用なのかなと思うほど、可愛い子が多い。売り子からスカウトされてデビューしたグラドル・おのののかのタレントイメージも相まってか、愛華はいわゆる“異性にモテる”ということを、ものすごく意識して生きてきてる子なのかなと。めちゃくちゃ偏見だから、申し訳ないんですけれど……でも、実際にテラハでもそういう姿が見えてきています。

 体をくねらせて、翔平を「飲みましょうよ~」と誘うシーンもすごかった! スタジオの男性陣には絶賛されていたけど、あの仕草を21歳でできるっていうのは鳥肌。テラハのレジェンドと言われるモデルの島袋聖南さんだったら、これをやってもギャグっぽく見えて笑えるけど、この人がやると怖い。

 あの見た目や雰囲気の子がいかにもやりそうなことを、そのままやってるのが怖いんじゃないかな。もっとずばり言うと、見た目も中身も「女に嫌われる女」のステレオタイプなんですよ。生身の人間がこんなにもステレオタイプなことある!? っていう怖さがある。ギャップがゼロすぎるんです。そうやって制作側に編集されてるのかもしれないけど。

 そうそう。「ザギンでシースー」とか、いかにも言いそう。将来は客室乗務員になりたいっていうのもギャップがゼロ!

 凌の試合を応援しに行ったとき、愛華は凌の顔がプリントされた“凌Tシャツ”を買って、「これ毎日着るんだ」ってアピールしてましたよね。それをダシに「ザギンでシースー」をおねだりして、本当に1万2,000円の寿司をおごってもらっていました。調べたら凌Tシャツは4,000円。愛華効果か、現在はどのサイズも在庫切れしていました。

 愛華、花ちゃんのことをちょっと下に見てる感じもするんですよね。愛華のおかげで、花ちゃんの女子人気が高い気すらします。花ちゃんは、女を出すことができないタイプ。それに普段は素直でいい子だけど、プロレスではヒール役というギャップ萌えもある。女を出すのが得意でギャップゼロの愛華と対立しているのが、わかりやすいし面白いです。

――その愛華と花に好意を寄せられている凌についてはどうですか。

 海外で生活していた経験もあるし、チームでもキャプテンなので、人をあからさまにバカにしたりはしないですよね。ただ、一人になりたい時にも「こっち来いよ!」と声をかけてきそうで、私は苦手ですけど。

 最初はやたらと「英語できるぜ」アピールをしていたり、水回りの汚さを指摘したりしていて、面倒くさい人なのかなと疑いましたが、今は普通の常識人なんだなと思ってます。

 基本いい人ですよね。ただ、愛華に財布にされてる感じが、見ていて痛々しい……。あの寿司屋、気になってサイトを見たんですけど、内装がギラギラしていて、若いホステスを同伴で連れて行く用の店という感じなんですよ。セックスする前に行く寿司屋という印象もありましたね。なんか、エロい感じで。

 凌本人は、愛華も花も好みではないとチームメイトにハッキリ言ってました。愛華に行かなかったのはエライぞ! と思いましたね。

――ほかにも気になるメンバーはいましたか?

 女優の春花かなぁ。翔平の「一本に絞らずに、いろいろやっていきたい」という仕事観に、「あれもやりたい、これもやりたいって言ってると、芯がない人なんだって思われちゃいそう」と真っ向から反論していた姿が印象深かったですね。でも春花がメンバーの中で一番、仕事してる感じがしなかった(笑)。どうやって食べていってるんだろう? と不思議に思うくらい。それなのに翔平に正論で説教するのが、ちょっとなぁって思っていました。

 春花は、基本ポケモンしてるだけでしたよね。あとは、春花が「お友達」と呼ぶオッサンたちと一緒に、ゴルフ、車のレース、沖縄旅行に行くとか。

 なんというか、言ってることとやってることに差がありすぎるんですよね。そんな春花に恋をしたのが、イタリア人漫画家のペッペ。イケメンで、「週刊スピリッツ」(小学館)で連載を持ち、おバカなアルバイト・流佳をいつもかばって。非の打ちどころがないいい男なのに、選ぶのは春花なんだ……という衝撃がありました。結局振られましたけど。

 春花を選ぶってダサいなと思って、私のペッペへの思いは早急に冷めました。

 ペッペには、そこはかとないダサさがある。私はそこがいいなって思ってました。そこで春花みたいな女優を手にしてしまったら、彼のアイデンティティが崩れちゃうから、ペッペは振られてよかった!

――おバカさが話題になった流佳についてはどうでしょう。

 最初は笑って見てましたけど、だんだん、テレビでイジってはいけないレベルのおバカさなのかなと思い始めて、どう見たらいいかわからなくなりました……。

B 「スパイダーマンになりたい」と言い出したときは、私も絶句しました(笑)。その後、マーベルファンが集まるバーでバイトし始めるという展開も謎すぎた。

C でも卒業する時、頑張って苦手な英語で一生懸命スピーチしたじゃないですか。以前失敗したパスタも作っていましたし。まんまと号泣しましたね。『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)を見てる気分で。

 流佳は途中から恋愛もしないし、全然出てこない回もあったりと、どんどん存在感なくなった。明るい子だったのに、どんどん暗くなっていったのも気になりました。その原因って、私は香織にあると思っています。一時期、流佳は香織にモーションをかけていたけど、香織が「私とアナタでは住む世界が違う」という空気を全身から出していて……流佳はそれを感じ取った気がするんです。

 香織は流佳に誘われた時、「私とアナタで何を話すの?」みたいな理由で断ってましたもんね。

 香織がいなかったら、流佳ももっとのびのび恋愛できていたかも。

――前半でカップルになったのは、結局バンドマン・ケニーとフィットネストレーナーの莉咲子だけでした。

 ケニーと莉咲子は、これから付き合うかも……? というところで、2人そろって卒業しましたね。ホントお似合いな2人だと思いました。

 私はケニーの書く歌詞が、とにかくダサいと思っていて。莉咲子を招待したライブで歌ってた「Sex On Fire」も、意味がわからなくて寒気がしました。でも莉咲子は感動していたので、2人は合ってるんだろうなと。

 ケニーも莉咲子も、オシャレな職業なのにヤンキーっぽいんですよ。2人は、郊外のドンキでスウェットを着て買い物してそう。お似合いです。

――では最後に、テラハ後半戦に期待することをお願いします。

 やっぱり恋愛はしてほしい! 凌は愛華と花に興味はないって言ってたけど、凌をめぐる2人のバトルが見たいです。

 私は「ご近所の悪いうわさ」(宙出版)みたいなドロドロの世界観を笑って楽しむタイプなので、愛華にもっと暴走してほしいですね。彼女に、軽井沢編の悪役レジェンド・優衣ちゃんの素質があるのかどうか。愛華と花の関係性が、どうにか面白く発展してほしいです。

 確かに、軽井沢編にあった下世話さが今はないかな。

 某ネット掲示板では、東京編に優衣ちゃんが参戦するんじゃないかっていうウワサがささやかれてるんですよ。優衣ちゃんが入ったら、また下世話になりそう。でも私は初期テラハの青春っぽさも好きなので、もっと若者たちのキラキラした姿が見たい! 今の東京編では、みんな将来について悩んでるけど、特に前進しないまま卒業してます。流佳が一番成長したように見えたくらい。もっと夢を追う姿を見せてくれ! と思います。

 オシャレなメンバーが気取った恋愛を展開するリアリティーショーと思われがちなテラハだけど、がむしゃらに恋したり、夢を追う中で、メンバーの化けの皮が剥がれていくのが面白いんですよ。「どうぞ本当の私を見てください」と、本性をさらけ出したメンバーの方が、記憶に残るし、テラハを卒業したあとも、何かと話題になる気がします。そういうメンバーが現れてほしいですね。

【テラスハウスファン座談会】翔平&香織は、テラハの空気をよどませた? 東京編前半戦をプレイバック

 見ず知らずの男女6人が、シェアハウスで共同生活する様子を記録したリアリティー番組『テラスハウス」(Netflix先行配信)。2019年5月からスタートした東京編「TERRACE HOUSE TOKYO2019-2020」は、東京オリンピックまで続くと宣言されており、この年末で折り返し地点に到達したものとみられる。

 今回、サイゾーウーマンではテラハが好きすぎて語りたいことが溜まっているウォッチャー3人に集まってもらい、座談会を開催。かつてないおバカ具合で注目を集めたアルバイトの流佳や、“ザ・オシャレ人間”という風情のイラストレーター・香織、自称マルチクリエーター・翔平など、数々の愛すべきメンバーが登場した前半戦を振り返ってもらった。(座談会は12月中旬収録)

【座談会参加者】
Aさん:テレビ制作会社勤務。映像作品として興味を持ち、テラハを見始める。とにかく香織に対して並々ならぬ思いがある。
Bさん:編集者。軽井沢編(17~18年)後半のドロドロした展開にハマり、過去のシーズンも一気見。東京編でのお気に入りメンバーは翔平。ジャニオタでもある。
Cさん:ライター。朝井リョウの小説『それでは二人組を作ってください』(新潮社『何様』に収録)でテラハの魅力に気付く。副音声が大好物。イチオシメンバーは軽井沢編の聡太先生。

最初はテラハをバカにしてたのに……

――まずは皆さんがテラハにハマったきっかけから教えてください。

 我が家は、私も夫も映像関係の仕事をしているので、家で映画からドラマ、ドキュメンタリーなど、さまざまな作品をよく見ています。テラハも、最初は夫が「どこにカメラを置いて撮ってるんだ?」という興味で見始め、よく家で流していたんです。そんな中、テラハが映画化(2015年2月公開の映画『テラスハウス クロージング・ドア』)されることになったんですが、夫が「これは新しいぞ!」「リアリティー番組が映画化ってどういうことだ!」とまた騒ぎ始めて、そこから私もガッツリ見るようになりました。映画館に行く前に過去作を一気に見て、映画も見て、結果的に「面白いぞ!」と。

 私は軽井沢編からハマって、そこから過去のシーズンも並行して見始めました。メンバーの“人間関係”をウォッチするのがとにかく面白い。あと、テラハのレジェンド・島袋聖南がとにかく好きで、彼女のおかげでここまでハマったとも言えます。軽井沢編でも、聖南が現れた瞬間に「キター!」と大興奮。あの圧倒的な大御所感、テラハにおける唯一無二のセンターですよ! 案の定、軽井沢編も盛り上げてくれて、しかも整形までバラされるという(笑)。聖南はサイコーです!

 私は朝井リョウのテラハを題材にした短編『それでは二人組を作ってください』を読んで、興味を持ちました。読んだのが初代テラハ全盛期の頃で、私は当時、「テラハって“オシャレ人間のオシャレ生活”に憧れる若者が見る番組でしょ?」とバカにしてたんです。この短編の主人公の女子大生も、まさにその“憧れる若者”タイプなんですが、最後にどんでん返しがあって……。世間が実はどういうふうにテラハを楽しんでいるかに気づかされるんです。実はみんな、ちょっとバカにしつつ、ツッコミながら見てるっていう。「そういう見方がOKなら面白いかも」と思って見てみたら、見事にハマりました。

 私も最初は、テラハを敬遠してましたね。私はいまアラサーで、中高生時代に『あいのり』(フジテレビ系)が全盛期だったんですが、若者が恋愛にうつつを抜かしているのを見て「バカらしい」と思ってしまったんです。だから、テラハもつまらないだろうなって思い込んでた。「どうせヤラセでしょ?」っていうのもありましたし。でも、今となっては「面白けりゃ、ヤラセでもいいじゃん!」という境地です。恋愛うんぬんというより、人間ドラマ。『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)を見ているのと同じ感覚ですよ。「知りもせずにテラハを叩くのは人生損してるぞ」と言いたい。

 私も最初は、若者のオシャレな生活が鼻についちゃって見てられなかったですね。『あいのり』は誰もがゼロスタートの旅が基盤だから、泥臭さもあったけど、テラハの世界は斜めに見ないと入り込めない感覚がありました。

 スタジオの山ちゃん(山里亮太)やYOUがツッコむ副音声が、私のような斜めに見る派には必須ですね。

――その“オシャレ感”ですが、今回の東京編でも感じますか?

 そうですね、メンバーに、オシャレなサブカル感が強まってきている気がします。

 特にスタートメンバーは、それが極まった気がしました。

 香織がイラストレーター、翔平が文筆業や映像作りも行う俳優、ケニーが絵も描くバンドマンで、スタートメンバーの半分が文化系でしたね。後から入るペッペは「週刊スピリッツ」(小学館)の漫画家で、浅野いにお、西炯子という人気漫画家までテラハに出演してました。最新のメンバーには、リリー・フランキーの付き人もいます。

 年齢層も上がってきた印象です。もともとは10代後半~20代前半がメインでしたが、軽井沢編くらいから三十路超えがメンバーに入ってくるようになって、今回もケニーが31歳。アラサーにも視聴者層を広げたかったのかな。

 テラハを「私たちには関係ない世界」と鼻で笑ってた層を「一網打尽にしたる!」みたいな意気込みは感じました。

 特に、翔平と香織によって、「マガジンハウス」感が出てましたよね。

 香織なんて東京都港区出身ですよ! 港区出身なんて、嵐の櫻井翔以外聞いたことがなかったのに……! しかも経歴もすごい。成城学園初等学校・中等学校を出て、高校はカナダへ留学、その後、慶應義塾大学に入学して、フランス・パリ第1大学に交換留学……卒業後は外資系企業で働いていたと。それからイラストレーター一本に転身したんですよね。

 翔平はそれこそ、マガハが出してる「GINZA」のウェブ版でコラムを書いてますよね。同業者として文章は……無駄に長いというのが第一印象です。

 音楽もマガハ層に合わせてきたように思いました。

 そうそう、今回は七尾旅人の「サーカスナイト」を使ってたんですよ。「サーカスナイト」がかかった瞬間、あぁ七尾旅人を好む層まで殺しに来てるな! って思いました。

 「サーカスナイト」をドヤ顔で弾き語りするケニーはダサかったですけどね。ケニー自身の作る歌詞には、七尾旅人感が皆無で、どちらかと言うと、ファンキーモンキーベイビーズとか湘南乃風っぽいので。本当はこういう歌詞が書きたいのかな……。

――香織と翔平の2人は、制作側から新しい風を吹かせることを期待されていたのでしょうか。この2人、テラハファン的にはどうでしたか?

 香織には言いたいことが山ほどあるんですよ! 香織からは、パクリ騒動で炎上した“モデルで銭湯絵師見習い”の勝海麻衣と同じ匂いがするんです。美大で絵の勉強をしていたわけではないけど、ちょっと絵が描けて、しかもお嬢様でかわいい。それで周りに褒められて、気をよくしちゃったのかなと。ハワイ編のローレンの絵はベタ褒めしてたスタジオメンバーも、香織の絵はたいして褒めてないんですよ。「その絵でプロなの?」って私は正直、思っちゃった。

 香織が「一枚絵で売れるアーティストになりたい」って言ったときは、私も「え? その画風しかないのに一枚絵?」と思いました。

 たぶん今までは家柄、学歴、容姿という背景ありきで褒められてきたから、香織には謎の自信が溢れていたんでしょうね。でも、絵の実力自体は「そうでもない」っていうことに、本人がどんどん気づいていくシーンが結構ありましたよね。それで、そろそろ化けの皮が剥がれるぞというタイミングで、香織は「ロンドンに行く」って卒業しちゃったんです。ズルい子ですよ……!

 そう、ダサさがバレる前に逃げたように見えた! 私は、香織と翔平のせいでテラハの空気がよどんでいたと思うんですよ。新しい風を吹かせるために入れられた2人なのに……。

 そのよどんだ空気って、2人の態度から漏れていた「テラハってダセェ」という冷めた気持ちによるものだと思うんです。卒業する時も、翔平は「ワイワイされるのが苦手」とか言って、夜逃げみたいにして出て行きましたし、香織もサラっと出て行きました。

 今、女子大生の愛華vsプロレスラーの花が、バスケットボール選手・凌をめぐってマウンティング合戦を繰り広げていますが、前半はこうしたバトルがほとんどなかった。それも香織がいたからですよね。高学歴で港区出身のお嬢様である香織にマウンティングしてもね……。だからある意味、香織は空気だった。香織が出た後の女子部屋は楽しそうに見えて、やっぱりみんな、香織にバカにされないよう気を使ってたのかなって思いました。

 翔平に関していうと、私はすごく好きなんです。なぜなら、嵐の二宮和也に似ているような気がするから……(笑)。私、唇をとんがらせて、世の中をちょっと斜に見てる感じの男子が好きなんですよねぇ。翔平の卒業インタビューを見ると、彼はたぶん、一緒に住んでいたメンバーをバカにしているわけではないんですが、テラハの構造そのものをバカにしてるんです。スタジオや視聴者にいろいろツッコまれる作りやシーンの切り取られ方に、堂々と文句を言ってる。「え! そんなのわかっててテラハに入ったんだよね!?」っていうダサさはあるんですけど、そこが青くてかわいい~って思っちゃう。彼がテラハの空気をよどませたなとは思ってますが、個人的には翔平が大好きです。
 
――後編では、ほかの気になるメンバーについても聞いていきましょう。

(後編につづく)

【ユーチューバー炎上まとめ2019】レペゼン地球&ZOZO前社長・前澤友作氏に唐澤貴洋弁護士が忠告!? 「再生数主義の時代は終わり」

 2019年も、YouTuberの“炎上ニュース”が絶えなかった。ネット上で批判されたとしても、「再生数が伸びればいい」とあえて“炎上”を狙うYouTuberも少なくないが、ネット上で誹謗中傷を受け続ける“炎上弁護士”こと唐澤貴洋氏は、彼らに何を思うのだろうか。前編に続き、YouTuberが燃える理由を聞く。さらに後編では、自身のYouTubeチャンネルへの自虐も……?

レペゼン地球、“パワハラ・セクハラプロモーション”が大炎上|7月

 YouTuberのジャスミンゆまが自身のTwitterにて、レペゼン地球・DJ社長からパワハラ・セクハラを受けたと告発。ネット上で物議を醸し、その後、DJ社長が謝罪動画を投稿した。しかし、この一連の動きはすべて新曲「パワハラザホルモン」のプロモーションであったことが発覚。「本当に被害を受けている人が告発できなくなる」「パワハラやセクハラを“ネタ”として扱うなんて最低」など、ネット上は大炎上となった。

 また「パワハラザホルモン」のミュージックビデオにマキシマムザホルモンが出演していたこともわかり、彼らに対しても批判が続出。公式Twitterにて謝罪文を公開したが、ファンからも「ずっと応援してたのに、目が覚めた」「ホルモンも落ちるとこまで落ちたな」と、失望のリプライが飛んでいる。レペゼン地球はこの騒動前、西武ドームでワンマンコンサートを行うと発表していたが、急遽中止に。『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)にDJ社長が出演予定だったが、これも弁護士・山口真由氏のゲスト放送回に“差し替え”となっている。

――この件は、リアルタイムでご存じでしたか?

唐澤 はい。あの内容は、“超えちゃいけないライン”を超えて人の関心を得ようとした結果、西武ドームでのコンサートまで中止になりましたよね。炎上商法をしようとして、その塩梅を間違えてしまった、要するに倫理観の欠如が問題になった気がします。

 「#MeToo」運動が起こるなど、女性をはじめ誰もが過ごしやすい社会になるべきだという思いが世界で強まる中、レペゼン地球さんのやってることは、時代遅れな感じがしますよね。ネットを主戦場とする彼らが、こういった文脈を知らないはずはないと思うんですけど。

――結局この炎上商法により、稼ぐどころかコンサート会場やテレビ局から損害賠償を請求され、大損する可能性もありました。実際、今回の件でレペゼン地球が損害賠償を支払ったのかは不明ですが、炎上商法って、本当に儲かるのでしょうか?

唐澤 炎上商法には、「いい炎上」と「悪い炎上」があります。やっぱり、見ている人が傷つく炎上はよくないですよ。社会的に“許せないライン”を超えたら、それは商売になりません。トップYouTuberはもう、テレビと同じような基準で動画を作っているような人もいます。企業CMに出てる人なんかもいますし、「YouTubeだから何をやってもいい」「炎上しても再生数が伸びるならそれでいい」という時代は、終わったのではないでしょうか。

 ZOZO創業者で現在はスタートトゥデイ社長の前澤友作氏が、突如自身のYouTubeチャンネルを開設。女優の剛力彩芽と破局、ヤフーがZOZOを買収と切ない話題とタイミングが重なったこともあり、投稿された動画にも注目が集まった。

 初投稿の動画は「1000億円を記帳する」という内容で、本当に前澤氏が車に乗って銀行へ行き、通帳を見て笑顔を浮かべるだけという、シンプルなものだった。その後も「3.8億円の車を買う」「プライベートジェットを売る」といった“お金”にまつわる動画が投稿されており、「本物のお金持ちはすごい!」と感嘆の声がある一方、「お金の話ばっかりで下品」「本当の金持ちはこんなことしない」と批判的な意見も絶えない。

――前澤さんのこと、どう思われますか?

唐澤 ちょうど昨日、3.8億円の車を買う動画を見ましたよ。前澤さん本人としては、何が起こっても楽しく生きている感じがしますよね。動画を見ても、「嫌な人だな」って感情が湧くような感じじゃないです。話しぶりなど、紳士的な、面白い人だと感じますし。批判的な声もあるようですが、動画を見ていない人が言ってるんじゃないでしょうか? 「1000億円記帳した」「3.8億円の車を買った」といった記号だけが一人歩きしている印象です。お金の話は炎上しやすい話題ですが、前澤さんは“あえてやっている”のではないかなと感じますね。だって前澤さん、お金の話題で炎上することは、昔からたびたびありましたよね?

――2019年1月に前澤さんが自身のTwitterで行った、「100万円×100人、総額1億円お年玉企画」がその最たる例ですね。前澤さんのアカウントをフォローして、指定の投稿をRTするだけで100万円が当たる抽選に応募できるとあって、およそ470万件もRTされました。

唐澤 そのときも賛否両論でしたが、炎上することをわかってやっていると思います。

――ちなみに、この“バラマキ行為”は、法律的に問題はありませんか?

唐澤 法律上は問題ないです。贈与税がかかるのも、110万円からなので。前澤さんは11月下旬に動画投稿を始めたばかりで、すでにチャンネル登録者数は20万人以上。短期間でこの数は、本当にすごいことですよ。僕の場合、この強大な影響力を今後どう利用するのか? というところに興味がありますね。世の中のためになることをされるのかな?

――唐澤弁護士はすでに、世の中のためになる動画をアップされているじゃないですか。

唐澤 見る人に少しでも役に立つYouTubeチャンネルをやりたいと思って、実際に動画を投稿しています。

 でも、まったく人気が出ません。再生回数、全然伸びないんですよ。「問題が起きたときに検索して、僕の動画に行き着いてくれたらいいな」とか、「気軽に弁護士に相談するきっかけになってくれたらいいな」と思っている程度なんでいいですが。長くどこかで見てもらえたらいいな、とは思ってます。

――正直、あんまり面白くないですもんね……。

唐澤 いいですね、そのコメント記事に入れてほしいです(笑)。

――ブロガーのはあちゅうさんが、先日「Abema Prime」(AbemaTV)に出演して、自身のアンチと電話で“対話”したことが話題になりました。唐澤弁護士もこれにならって、アンチと口論する動画などアップしたら、再生数が伸びそうです。

唐澤 僕は「良いヤツ VS 悪いヤツ」といった“二項対立”は嫌なんですよね。「私が被害者で、この人たちは悪いヤツなんですよ!」といった構図で悪口を言ったり、敵を仕立てて動画を作るのは簡単です。でも、僕はあんまり好きじゃないですね。それよりも、アンチだって我々と同じ人間なのに、なぜ度を超えた悪口が言えるのかを、一緒に考えるほうがいいです。ネット上って、レッテルを貼って“相手をこうだと決めつける人”があまりにも多いですよね。普通に対話すればいいのになあ、と思います。僕は本当に、争いごとが嫌いなんですよ。

――「炎上弁護士」が言うと、言葉の重みが違いますね。

唐澤 そういえばこの記事って、年始に出るんですか? ……炎上したら嫌だなあ(真顔)。僕だって、落ち着いて新年を迎えたいので。

――だったら、こういった取材は受けない方が……。

唐澤 うん? 何か言いましたか? それでは読者のみなさま、良い1年をお迎えください!