なぜファッション業界は「セクハラが多い」のか? ストライプ社トップの騒動は「珍しくない」

 去る3月初旬、「朝日新聞」と「週刊新潮」(新潮社)の報道によって、女性向けファッションブランド「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)」などを展開する株式会社ストライプインターナショナル(以下、ストライプ社)の代表取締役社長(当時)・石川康晴氏のセクハラ問題が浮上した。

 報道によると、石川氏は複数の女性社員やスタッフにセクハラ行為を行っており、一昨年12月に臨時査問会が開かれたという。この査問会では、「宿泊研修時、石川氏がLINEで社員に『内緒だよ』とメッセージを送り、部屋に来るように誘った」という事例や、「地方視察の際、店舗スタッフを朝ホテルに呼び出し、同意がないままわいせつ行為に及んだ」という事例など、4件が報告されたとのこと。しかし、石川氏への処分は特になく、厳重注意にとどまったそうだ。石川氏は報道後、公式サイトで、「査問会では、セクハラの事実は認められなかった」とするコメントを発表したが、翌日には自ら一連の報道を理由に代表取締役社長を辞任するに至った。

 ここ数年、「♯MeToo運動」が世界的な広がりを見せ、セクハラへの問題意識が高まる中で勃発した、有名アパレル企業トップのセクハラ問題は、世間に大きな衝撃を与えた。そんな中、国家公務員からファッション誌編集者、そしてファッション関係の法律問題を扱う弁護士に転身という異色のキャリアを持つ海老澤美幸氏が、自身のTwitterで「残念ながら、ファッション業界はセクハラやパワハラがまだまだ多い。 男性経営陣と多数の女性従業員というアパレルならではの構図の中、こうした古臭い男性が立場を利用するケースは珍しくないです」とツイート。アパレル企業ならではの「構図」に、その原因があるのでないかとの見解を示したのだ。

 シャネルやディオール、ステラマッカートニーといった世界的なブランドが、「性差別撤廃」を前面に押し出す取り組みを盛んに行っているだけに、ファッション業界は特にセクハラ問題に厳しいといったイメージも強まっているが、今回、海老澤氏に業界の実態について話しをお聞きするとともに、セクハラ撲滅のためにすべきアクションとは何かを語っていただいた。

 海老澤氏は、石川氏のセクハラ報道を受け、率直にどのように感じたのだろうか。「石川氏個人のことを存じ上げているわけではなく、また今回の一件についても、報道されている以上のことはわからないのですが」と断った上で、次のように述べる。

「ファッション業界は体質が古く、こうしたセクハラ問題はさして珍しくはないのではないかと思いました。おそらく世に出ていないだけで、こうしたケースは多く、今回の報道も『出るべくして出た』という印象です」

 これまで海老澤氏が見聞きしたファッション業界のセクハラ事例でいうと、男性の上司から執拗にご飯に誘われるなど、プライベートでの交流を求められるケースはよくあるといい、一方で「パワハラも多く、上司から怒鳴られるといったことも。こうしたセクハラやパワハラを会社に訴えても、うやむやにされて配置転換などの対応を取ってもらえず、被害者が会社を辞めざるを得なくなったというケースもよく耳にします」という。

「報道された内容が全て事実かどうかはわかりませんが、石川氏本人が『セクシュアル・ハラスメントと誤解を受ける行為や従業員との距離のとり方等について、厳重注意を受けました』という文書を公表しています。女性社員やスタッフに対して、LINEで誘いのメッセージを頻繁かつ執拗に送っていたというのが事実であった場合、さすがに『処分なし』というのは軽すぎるでしょう。これはファッション業界に限ったことではありませんが、日本はセクハラに関する認識が非常に甘いと感じましたね」

 今回の報道を通じて「誘っただけではセクハラにならない」と認識している人は少なくないのでは……と危機感を覚えたという海老澤氏。そもそもセクハラとは、労働者が不快に感じる性的な言動が行われ、それに応じない場合に不利益を受けること(対価型)、労働者の業務に悪影響が出ること(環境型)とされている。ケースバイケースではあるものの、例えば今回のように社長と部下という関係性を背景に誘う場合、誘われた側の女性は「断ると社内での地位が危うくなるかもしれない」など不利益を受けることを恐れ、心理的負担を感じるだろう。この場合、企業はその女性が快適に仕事ができる職場をつくるという「男女雇用機会均等法」上の義務に反することになる。

 また、もし誘われた女性側が精神的に不安定となり、実際に精神科や心療内科に通わなければいけなくなるなどの不利益を被ったり、休業や退職を余儀なくされた場合は、民法により、女性はセクハラを行った人物と会社に対し、不法行為責任を問える可能性があるという。加えて、もし体を触られた、同意のない性行為を強要されたといったことがあった場合は、刑法上の問題になる可能性もある。このようにセクハラは、法的責任を問われる重大な問題なのだ。

 海老澤氏は、ファッション業界でセクハラが多い背景に、業界の体質が関係しているとしていたが、その詳細はどういったことなのだろうか。

「アパレル企業は、トップの経営陣が男性で、その下にいる社員や販売員が若い女性、かつ男女比においては、女性の比率が圧倒的に高いという構図が特徴的です。ファッション業界は、年2回ないし年4回のシーズンによって動いており、それに合わせて集中的に働くので、ハードワークになりやすい。また、人手不足の上、セールなどのイベントや研修・打ち合わせなども多く、常に過重労働です。そうした環境の中、女性が結婚、妊娠、出産をきっかけに仕事から離れてしまうケースも多く、そうすると男性が上に行き、その下に若い女性がつくという構図になりやすいんです。そのような状況で、ごく一部の経営陣の男性が、『女性を好きにできる』などと勘違いして、セクハラ行為に走りやすいのではないかと感じています」

 確かにストライプ社も男女比が「9割女性」ではあるが、一方で管理職も5割は女性であり、その実績から、石川氏は政府の「男女共同参画会議」の議員を務めていた(報道後に辞任)。

「女性の数が多いので、他業界と比べると管理職の女性比率が高いと思われるかもしれません。しかし、たとえ全体の9割が女性でも、管理職も9割が女性というわけではないんです。やはりファッション業界は、『女性が上に行きにくい』面があるように思います」

 さらに、ファッション業界では「一見『経営』の権限を持っているような肩書を与えられても、実質はそうではないケースも多い」と海老澤氏。

「『店長』や『◯◯責任者』という肩書を持っていたとしても、権限が弱く、一従業員とさして変わらないといったことは珍しくありません。というのも、労働基準法上、企業は従業員に対し、例えば残業代の支払いなどに関し、大きな義務が課されるのですが、その規制を緩和するために、肩書だけ経営陣にしてしまい、しかしその働き方は、一従業員とほぼ同じといったことが割とよくあるのです」

 そう考えると、いくら経営陣に女性が多いというアパレル企業でも、実質的には「トップは男性で、その下にたくさんの女性がいる」という構図の企業も少なくないと考えられるだろう。

 では、ファッション業界のセクハラ問題解決のためには、どのような取り組みを行うべきなのか。業界の働き方を改革し、「構図」そのものを是正していくことが考えられるが、現実問題として、海老澤氏は「まずは啓蒙しかないと思っています」という。

「現在、アパレル企業のトップにいる人たちは、業界全体の業績が上り調子だった華やかな時代を経験している世代というイメージがあります。セクハラの意識に関しては世代ではなく、個々人によるところが大きいとは思いつつも、現在のトップ陣が、真剣に『セクハラ撤廃』に取り組んでいるかと言われると、少し疑問を覚えるところはあります」

 海老澤氏は、セクハラに対する認識が低い人には、単純に「セクハラはいけません」と言うだけでは響かないと考えているそうだ。

「『セクハラは会社を潰すことになる』という啓蒙の仕方をしなければ伝わらないのではないかとも思っています。ファッションはイメージが命。特にアパレル不況と言われる昨今では、若い世代が、商品の価格やクオリティ以上に『サスティナビリティ』(環境への配慮がなされ、公平な雇用形態、安全な職場環境によって作られたものか)に目を向けるようにもなっています。そんな中、特に女性向けブランドを持つ企業でセクハラ問題が勃発すると、いくら女性に優しいというイメージを打ち出していても、『実際は女性の人権を蹂躙していた』として、ブランド価値を毀損してしまい、経営にも大打撃を与えることになる。セクハラ行為を行うアパレル企業のトップ陣は、果たしてそこまで考えていたか……もっとライトに『可愛いから誘った』『恋愛感覚だった』くらいの意識なのではないでしょうか」

 ストライプ社の展開する「アース ミュージック&エコロジー」は、「あした、なに着て生きていく?」という、女性がファッションを通して自らの生き方を選択することを後押しするキャッチコピーが話題を集めたほか、環境問題に配慮しているというイメージも強く、「ある意味イメージ戦略に成功してきたアパレル企業と言える」と海老澤氏。それをトップ自らがふいにしてしまったのは、懸命に働いている社員やスタッフたちにとってもショックが大きいのではないだろうか。

 一方で、海老澤氏いわく「もちろん、『♯MeToo運動』の流れから、女性社員の比率が多いという環境を踏まえ、セクハラやマタニティ・ハラスメントを撲滅し、また仕事と子育てを両立できるような働きやすい職場環境を整える改革を行うアパレル企業も出てきています」とのこと。ストライプ社のセクハラ問題を教訓に、業界内の悪しき慣習が是正されていく流れになることを祈りたい。
(解説 海老澤美幸弁護士/取材・文 サイゾーウーマン編集部)

海老澤美幸(えびさわ・みゆき)
1998年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。同年、自治省(現総務省)に入省。99年、株式会社宝島社に転職し、雑誌「SPRiNG」編集部所属。その後、英・ロンドンでスタイリストアシスタントとしての経験を積み、帰国後、フリーランスのファッションエディターとして活動。12年に一橋大学法科大学院に入学し、17年弁護士登録(第二東京弁護士会)。18年には、ファッション関係者のための法律相談窓口「fashionlaw.tokyo」を開設。現在は三村小松 法律事務所に所属し、ファッションローを中心に扱っている。
「fashionlaw.tokyo」

スマホ決済の不正利用、アカウント乗っ取り……情報セキュリティのプロが語る、個人情流出の“怖い話”

 スマホ社会となった今、個人情報の流出により、インターネットサービスやアプリケーションでの「不正アクセス」や「アカウントの乗っ取り」といった被害は後を絶たず、サイバーセキュリティの重要性が高まっている。

 前編では、映画『スマホを落としただけなのに』のストーリーをもとに、個人情報を守るための対策法を、情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組む、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター企画部の加賀谷伸一郎氏に解説いただいた。後編では引き続き加賀谷氏に、IPAの相談窓口に多く寄せられている相談事例と被害に遭わないための防止策について話を聞いた。

 

スマホ決済の不正利用、発端は“フィッシング詐欺”

――クレジットカードや電子マネーをスマホに登録して支払いを行う「スマホ決済」の普及も進んでいますが、便利な半面、危険だと感じている人も多いと思います。セキュリティ対策で心掛けるべきことは何ですか?

加賀谷伸一郎(以下、加賀谷) 昨年7月にセブン-イレブンのスマホ決済サービス「7Pay(セブンペイ)」で、第三者の不正アクセスによる不正利用被害が相次いだことを受け、経済産業省が、セブンペイを含む決済事業者に対し、不正利用防止のための各種ガイドラインの徹底と、セキュリティレベルの向上を求めました。その結果、現在では、安全なシステム環境が整ってきています。

 しかしその一方で、不正の手口も日々進化しているのが現実。セキュリティが強固になる裏で、人間心理の弱点を突く詐欺的な手法が増えているんです。被害に遭わないために一番大切なのは、“最新の不正利用の手口を知っておくこと”。ニュースを見聞きし、騙しのテクニックを知ることが、被害防止対策につながります。

――不正利用の手口にはどういったものがありますか?

加賀谷 例えば、「PayPay」などのQRコード決済アプリを普通に使用している中では、第三者による不正利用はまず起こりません。なぜかというと、不正利用は「フィッシング詐欺」が関係しているケースがほとんどだからです。これは、通信事業者や決済事業者を装って、対象者にメールやSMS(ショートメッセージ)を送り、そこに記載された偽のURLにアクセスさせ、ユーザID、パスワードなどのアカウント情報を入力させ、ログイン情報や個人情報を盗むという詐欺です。

 不正を働く者は、「キャリア決済が不正利用された可能性がある」など、イレギュラーなことが発生したことを装い、フィッシングサイトへのアクセスを誘導してきます。スマホ決済を利用する際は、正しいログイン手順を頭に入れ、いつもと違う手順を要求された場合や、不審なメッセージが届いたときはむやみにアクセスせず、アプリのサポートセンターに問い合わせるという心構えが、騙されないための重要なポイントかと思います。スマホ決済による不正利用の被害が多発していることから、近頃はアプリ公式サイトに「フィッシング詐欺にご注意ください」といった警告文が掲載されていることも多いので、そちらもチェックするようにしてください。

 

宅配便業者を装ったSMSに注意!

――そのほか、近年相談が多く寄せられている手口はどういったものが多いでしょうか?

加賀谷 最近では、「お客様宛にお荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました」などと、宅配便業者を装ったSMSが届いたという相談も多く寄せられています。これは、先ほども例に挙げたようにフィッシングサイトに誘導したり、偽のアプリをインストールさせることでスマホ内のデータを盗むという手口です。

 パソコンの場合は単体でインターネットに接続することはできませんが、スマホは単体で通信ができ、通話機能もあるため、パソコンよりも利用率が高いんです。実際、「パソコンは使えないけど、スマホは使えます」という人も多いですよね。そのぶん、スマホ利用者はパソコン利用者よりもターゲットにされやすくなっています。

――近頃は、新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークを導入している企業も増えてきました。飲食店や公共施設でパソコンを広げている人も多く見受けられますが、社外で仕事をする際に気をつけなければならないことは何でしょうか?

加賀谷 企業側がどういうポリシーのもとでネットワーク環境やパソコン環境を整えて仕事をさせているかが前提にありますが、インターネットの通信内容はどこで見られているかわかりませんから、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)通信という、暗号化された安全な通信路を使用することが、セキュリティ対策の基本です。

 しかし、ネットワークやパソコン環境を整えること以前に気を付けなければならないのが、衆人環視の中で仕事をする際の“情報漏洩のリスク”です。フリーWi-Fiが使えるカフェや新幹線の車内などでも、パソコンを広げて仕事をしている人をよく見かけますが、「ショルダーハッキング(=覗き見)」のリスクを意識していない人があまりに多いと感じます。画面を第三者に見られてしまうことは、一番脆弱な状態です。特にMacBookの場合、スクリーンが大きく鮮明ですし、スマホのカメラの性能も上がってきていますから、画面を隠し撮りされたら、情報漏洩につながってしまう。そういう危機感を持った上で行動していただきたいですね。

――あらためて、インターネット上で情報流出の被害に遭わないために気をつけるべきポイントを教えてください。

加賀谷 インターネット接続ができる端末を使用する上でのセキュリティ対策として、私たちが提唱しているのが、以下の5カ条です(https://www.ipa.go.jp/security/measures/start.html)。

(1)端末やアプリは、常に最新の状態にアップデートしておくこと
(2)ウイルス対策をしっかり行うこと
(3)パスワードはできるだけ長く、複雑に。同じパスワードを使い回さないこと
(4)端末はもちろん、SNSやアプリは初期設定のままの状態で使用しないこと
(5)被害事例や最新の手口を知っておくこと

 なお、IPA公式サイトはもちろん、情報セキュリティ安心相談窓口公式Twitterでは、窓口に寄せられる相談をもとに、コンピュータウイルスや不正アクセス等の手口や対策に関する情報を発信しています。ぜひチェックしてみてください。

(解説=独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・加賀谷伸一郎氏/取材・文=サイゾーウーマン編集部)

加賀谷伸一郎 独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・エキスパート(サイバーセキュリティ担当)。情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組んでいる。

■独立行政法人 情報処理推進機構公式サイト:https://www.ipa.go.jp/
■IPA情報セキュリティ安心相談窓口公式Twitter:@IPA_anshin

スマホ決済の不正利用、アカウント乗っ取り……情報セキュリティのプロが語る、個人情流出の“怖い話”

 スマホ社会となった今、個人情報の流出により、インターネットサービスやアプリケーションでの「不正アクセス」や「アカウントの乗っ取り」といった被害は後を絶たず、サイバーセキュリティの重要性が高まっている。

 前編では、映画『スマホを落としただけなのに』のストーリーをもとに、個人情報を守るための対策法を、情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組む、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター企画部の加賀谷伸一郎氏に解説いただいた。後編では引き続き加賀谷氏に、IPAの相談窓口に多く寄せられている相談事例と被害に遭わないための防止策について話を聞いた。

 

スマホ決済の不正利用、発端は“フィッシング詐欺”

――クレジットカードや電子マネーをスマホに登録して支払いを行う「スマホ決済」の普及も進んでいますが、便利な半面、危険だと感じている人も多いと思います。セキュリティ対策で心掛けるべきことは何ですか?

加賀谷伸一郎(以下、加賀谷) 昨年7月にセブン-イレブンのスマホ決済サービス「7Pay(セブンペイ)」で、第三者の不正アクセスによる不正利用被害が相次いだことを受け、経済産業省が、セブンペイを含む決済事業者に対し、不正利用防止のための各種ガイドラインの徹底と、セキュリティレベルの向上を求めました。その結果、現在では、安全なシステム環境が整ってきています。

 しかしその一方で、不正の手口も日々進化しているのが現実。セキュリティが強固になる裏で、人間心理の弱点を突く詐欺的な手法が増えているんです。被害に遭わないために一番大切なのは、“最新の不正利用の手口を知っておくこと”。ニュースを見聞きし、騙しのテクニックを知ることが、被害防止対策につながります。

――不正利用の手口にはどういったものがありますか?

加賀谷 例えば、「PayPay」などのQRコード決済アプリを普通に使用している中では、第三者による不正利用はまず起こりません。なぜかというと、不正利用は「フィッシング詐欺」が関係しているケースがほとんどだからです。これは、通信事業者や決済事業者を装って、対象者にメールやSMS(ショートメッセージ)を送り、そこに記載された偽のURLにアクセスさせ、ユーザID、パスワードなどのアカウント情報を入力させ、ログイン情報や個人情報を盗むという詐欺です。

 不正を働く者は、「キャリア決済が不正利用された可能性がある」など、イレギュラーなことが発生したことを装い、フィッシングサイトへのアクセスを誘導してきます。スマホ決済を利用する際は、正しいログイン手順を頭に入れ、いつもと違う手順を要求された場合や、不審なメッセージが届いたときはむやみにアクセスせず、アプリのサポートセンターに問い合わせるという心構えが、騙されないための重要なポイントかと思います。スマホ決済による不正利用の被害が多発していることから、近頃はアプリ公式サイトに「フィッシング詐欺にご注意ください」といった警告文が掲載されていることも多いので、そちらもチェックするようにしてください。

 

宅配便業者を装ったSMSに注意!

――そのほか、近年相談が多く寄せられている手口はどういったものが多いでしょうか?

加賀谷 最近では、「お客様宛にお荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました」などと、宅配便業者を装ったSMSが届いたという相談も多く寄せられています。これは、先ほども例に挙げたようにフィッシングサイトに誘導したり、偽のアプリをインストールさせることでスマホ内のデータを盗むという手口です。

 パソコンの場合は単体でインターネットに接続することはできませんが、スマホは単体で通信ができ、通話機能もあるため、パソコンよりも利用率が高いんです。実際、「パソコンは使えないけど、スマホは使えます」という人も多いですよね。そのぶん、スマホ利用者はパソコン利用者よりもターゲットにされやすくなっています。

――近頃は、新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークを導入している企業も増えてきました。飲食店や公共施設でパソコンを広げている人も多く見受けられますが、社外で仕事をする際に気をつけなければならないことは何でしょうか?

加賀谷 企業側がどういうポリシーのもとでネットワーク環境やパソコン環境を整えて仕事をさせているかが前提にありますが、インターネットの通信内容はどこで見られているかわかりませんから、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)通信という、暗号化された安全な通信路を使用することが、セキュリティ対策の基本です。

 しかし、ネットワークやパソコン環境を整えること以前に気を付けなければならないのが、衆人環視の中で仕事をする際の“情報漏洩のリスク”です。フリーWi-Fiが使えるカフェや新幹線の車内などでも、パソコンを広げて仕事をしている人をよく見かけますが、「ショルダーハッキング(=覗き見)」のリスクを意識していない人があまりに多いと感じます。画面を第三者に見られてしまうことは、一番脆弱な状態です。特にMacBookの場合、スクリーンが大きく鮮明ですし、スマホのカメラの性能も上がってきていますから、画面を隠し撮りされたら、情報漏洩につながってしまう。そういう危機感を持った上で行動していただきたいですね。

――あらためて、インターネット上で情報流出の被害に遭わないために気をつけるべきポイントを教えてください。

加賀谷 インターネット接続ができる端末を使用する上でのセキュリティ対策として、私たちが提唱しているのが、以下の5カ条です(https://www.ipa.go.jp/security/measures/start.html)。

(1)端末やアプリは、常に最新の状態にアップデートしておくこと
(2)ウイルス対策をしっかり行うこと
(3)パスワードはできるだけ長く、複雑に。同じパスワードを使い回さないこと
(4)端末はもちろん、SNSやアプリは初期設定のままの状態で使用しないこと
(5)被害事例や最新の手口を知っておくこと

 なお、IPA公式サイトはもちろん、情報セキュリティ安心相談窓口公式Twitterでは、窓口に寄せられる相談をもとに、コンピュータウイルスや不正アクセス等の手口や対策に関する情報を発信しています。ぜひチェックしてみてください。

(解説=独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・加賀谷伸一郎氏/取材・文=サイゾーウーマン編集部)

加賀谷伸一郎 独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・エキスパート(サイバーセキュリティ担当)。情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組んでいる。

■独立行政法人 情報処理推進機構公式サイト:https://www.ipa.go.jp/
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映画『スマホを落としただけなのに』を、セキュリティのプロが語る!「Wi-Fiは鍵がかかっていれば安全」は間違い?

 2018年に公開された映画『スマホを落としただけなのに』の続編となる『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』が、2月22日から公開されている。志賀晃氏の同名小説(宝島社)を原作とした同シリーズは、タイトルにある通り、スマホを落としてしまったことで個人情報が流出し、思わぬ事件に巻き込まれてしまうという恐怖を描いた、現代社会ならではのミステリーサスペンスだ。

 興行収入19.6億円(興行通信社調べ、以下同)の大ヒットを記録した前作同様、今作も映画観客動員ランキングで初登場2位にランクインし、興行収入15億円以上が見込める好スタートを切った。ネット上では「描写がリアル」「ある意味、ホラー映画」と大きな反響を呼んでいるが、その一方、一部では、登場人物たちのセキュリティ対策が「甘すぎる」と疑問視する声も少なくない。

 では実際に、第三者からの不正アクセスを防ぎ、個人情報を守るためにはどのような対策を行えばよいのか。映画のストーリーをもとに、情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組む、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター企画部の加賀谷伸一郎氏に話を聞いた。

スマホのパスワードは長く、複雑に

――映画1作目では、落としたスマホのパスワードが“彼女の誕生日”という推測されやすいものだったことから、スマホを拾った犯人に簡単にパスワードを破られてしまいました。こうした事態を防ぐ方法を教えてください。

加賀谷伸一郎(以下、加賀谷) 画面ロックのパスワードをできるだけ長く、複雑にすることが大切です。まずiPhoneの場合、15年9月にリリースされたソフトウェア・iOS 9から、初期設定で数字6桁のパスコードを使用することができます。従来の4桁から6桁に桁数が増えたことで、数字の組み合わせも1万通りから100万通りに増え、セキュリティ強度も高くなりました。そして、パスコードを10回連続して間違えるとデータを消去(初期化)するという機能もあるので、「設定」の「Face IDとパスコード」にある「データを消去」を有効にしてください。6桁なら、10回のうちにロックが外れる確率はかなり低いでしょう。

 しかし、古い端末を使用していたり、ソフトウェアのアップデートを行っていなかったり……あと、「覚えやすく管理がしやすいから」と設定し直し、4桁のパスコードを使用し続けている人も意外と多いんです。iPhoneの数字入力画面はガラケーのボタンと同じ配列の「テンキー」となっていて、4桁の短いパスコードだと、指の動きからも数字が推測されやすくなってしまうので、やはりなるべく6桁のパスコードを設定することをおすすめします。

 なお、数字のほかに、英数字のパスワードを設定する方法もあり、こちらは100桁以上の英数字が設定可能なんですが、入力が面倒なので、使う人はあまりいないと思いますが(笑)。

――Androidを使用している場合はどのように設定すればよいでしょうか?

加賀谷 Androidの場合、機種によっても異なりますが、4桁の数字を用いた「PINコード」、9つの点を指でなぞる「パターンロック」、4桁以上の英数字と記号を組み合わせる「パスワード」と、画面ロックの方法は複数あります。一定回数間違っても数秒~数十秒待てば再度トライできてしまいます。そのため、第三者に推測されず、かつ自分が解除しやすい程度に長いパスワードを設定することが大切です。

 なお、最近はiPhoneとAndroidに共通して、指紋認証や顔認証などの生体認証機能が搭載された端末が増えてきています。セキュリティ強度も高いため、できるだけこれらを活用するようにしてください。そもそも被害に遭わないためには、パスワードの設定以前に、“端末はできるだけ肌身離さず持っておく”ということも重要です。

――現在公開中の2作目では、カフェでスマホを無料Wi-Fi(公衆無線LAN)に接続したことから、個人情報が漏れてしまいます。Wi-Fiの使用だけで、簡単に情報を抜き取られてしまうものなのでしょうか?

加賀谷 情報を抜き取ることが難しいか、易しいかでいうと、難しいです。ただ、有線LANの場合は、端末をケーブルでLANに接続することでインターネットに接続されますが、無線LANの場合はケーブルを使用しない電波によるデータ通信になりますから、技術がある人であれば、電波を拾うことで通信内容を覗くことができてしまうんです。

 Wi-Fiのような無線LANのアクセスポイントには、「SSID」という識別子が付けられています。SSIDは同じ空間に複数のアクセスポイントがあった時に、接続先を見つけやすくするための目印としてつけられた「名前」のようなもの。インターネットに接続する場合は、そのSSIDから1つを選び、許可された人のみ使えるようにあらかじめ設定されているWi-Fiパスワードによって接続するのですが、セキュリティ強度の低いネットワークだと、通信内容が筒抜けになってしまう可能性があります。

 もっと危険性が高いのは、無料で開放されているWi-Fiに多い、パスワードが設定されていないケース。第三者にどんなページを閲覧していたか知られたり、サイトで入力した個人情報が流出してしまうなどの危険性がさらに高まると考えられるでしょう。

――では、セキュリティ強度の高いWi-Fiを見分ける方法はあるのでしょうか?

加賀谷 Wi-Fiを安全に使おうとすると、さまざまな知識が必要になってきます。スマホの画面に表示されるSSIDだけでは、そのネットワークのセキュリティ強度まではわからず、一般の方がどれが安全でどれが危険かを見分けることは非常に困難です。

 また、パスワードは親機側に設定されているため、自分で親機を管理していなければ、複雑なものに変更したくても変更できない。ですから、無料・有料にかかわらず、Wi-Fiを使用する際は、“情報を読み取られている可能性がある”ということを常に頭に入れておく必要があります。

――「パスワードが設定されているから安全」というわけではないのですね。

加賀谷 これは少々怖い話かもしれませんが、例えば第三者がある無料Wi-Fiとまったく同じSSIDとパスワードを設定し、本物よりも電波を強くした不正なアクセスポイントを設置したとします。すると、端末は電波の強いほうに接続してしまいますよね。そうなると、いくらセキュリティ強度が高いネットワークでも意味を成しません。通信内容が全て読み取られたり、不正なウェブサイトに誘導されたりします。ですから、「パスワードが設定されているから安全」と言い切ることはできないんです。

 近頃は、公共施設や飲食店、宿泊施設など、無料でWi-Fiを使用できる環境も整ってきました。しかし、セキュリティ強度を高めると、使用できない古い端末も出てくるため、セキュリティ強度の低いネットワークを用いることがほとんど。そのため、きちんと情報流出のリスクを理解した上で設置している場所には、「自己責任でご利用ください」といった表示がされています。そのほうが、設置者としては善良かと思いますね。

(解説=独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・加賀谷伸一郎氏/取材・文=サイゾーウーマン編集部)

■加賀谷伸一郎 独立行政法人情報処理推進機構・セキュリティセンター企画部・エキスパート(サイバーセキュリティ担当)。情報セキュリティ対策の強化や優れたIT人材の育成に取り組んでいる。

■独立行政法人 情報処理推進機構公式サイト:https://www.ipa.go.jp/
■IPA情報セキュリティ安心相談窓口公式Twitter:@IPA_anshin

相次ぐ「イベント中止」でファンから悲痛な声――精神科医が“無気力”な毎日にアドバイス

 新型コロナウイルスの影響により、アーティストのコンサートやイベント、舞台公演等が続々と中止・延期になっている。これに関わる出演者やスタッフが大きな打撃を受けるだけでなく、ネット上には「コンサートがモチベーションなのに、中止になったら生きてる意味ないよ……」「週末に舞台があると思うと、キツい仕事も頑張れる。でもコロナのせいで中止になって、もうどうしたらいいかわからない」など、ファンの悲痛な叫びが続出している。

 楽しみにしていたイベントが突然中止になり、まるで“抜け殻”のような無気力状態に陥ってしまったファンは今、どのように毎日を過ごしていけばよいのだろうか? 精神科医の木村好珠氏にアドバイスをいただいた。

――新型コロナウイルスの影響で、「中止」になったイベントも多数あります。代えが利かないものを失った喪失感は、どのようにすれば乗り越えられますか?

木村好珠氏(以下、木村) 喪失感から抜け出すことは、その対象が自分の中で占める割合が大きければ大きいほど困難になってきます。どうしても行きたかったコンサート、観劇したかった舞台を忘れようと思っても、すぐに忘れられるものではありませんよね。ですので、無理に「忘れなきゃいけない」「気持ちを切り替えるべき」とは思わないでください。その対象や自分の感情としっかり向き合うのも、喪失感から抜け出すひとつの方法です。また、自分の中でその存在がどれだけ大きかったのかも、はっきりとわかるでしょう。そこまで大切なものに出会えたことを、ポジティブに捉えてみてください。

 喪失感を覚えるほどのものに出会うことは、決して容易ではありません。その対象が今までの自分にどれだけ楽しさや喜びを与えてくれたか再認識して、「夢中になれるものと出会えてよかった!」と考えることも大事です。友人や家族、同じ趣味の仲間と、そうした気持ちを分かち合うのもいいでしょう。その際、ネガティブな発言をする人と一緒にいると“負の感情”が伝染しやすいので、自分の周りにいる、笑顔でポジティブな人と話してみてください。

 その中で、何かやろうという気持ちが起これば、もともとの趣味以外にも挑戦してみましょう。今まで触れてこなかったジャンルの音楽を聞いたり、話題の映画を見ているうちに、新しい出会いがあるかもしれません。

 また、心が沈んでいるときは、生活リズムも狂いがちです。適切な食事と睡眠ができなくなると、メンタルに大きな影響を及ぼします。普段から生活リズムが狂いがちな人は、今が見直すきっかけだと思って、これまで以上に生活リズムを意識してみてください。

――イベントがなくなって「無気力状態」に陥るほど趣味に没頭すると、メンタルにどのような影響を与えるのでしょうか?

木村 日常生活において「没頭できる趣味がある」ということは、メンタルにはとてもいいことです。私は普段の診察でも、適切な食事、睡眠、運動といった習慣のほかに、趣味を持つことを促します。むしろ、趣味がない人はうまくリフレッシュすることが苦手な場合が多いため、精神衛生上は無趣味のほうがよくないといえます。イベントが突如中止になり、無気力になってしまうということは、「そこまで没頭できる趣味が自分にはあったんだ」とプラスに捉えましょう。

 ただし普段の生活で、その趣味だけに時間を割くのではなく、友人と話したり、ほかのことにも興味を持っておくことは重要です。その趣味“だけ”の生活を送っていると、今回のような事態によってできた心の穴を埋めるすべが見つからず、無気力状態に陥りやすくなります。とはいえ、ほかに趣味が見つからない人もいるでしょう。その場合は、趣味について友人・知人と話して心情を共有すれば、無気力になりにくいです。

――「何もしたくない」ほど落ち込んだときは、無理やりにでも活動して、気分転換したほうがよいですか?

木村 無気力状態のときに無理をして何かをしようとすることは、得策とはいえません。たとえ行動したとしても、「自分はどうして楽しめないんだろう……」と考えてしまい、逆効果になることがあります。また、無気力状態のときは、普段より疲労を感じやすくなっているので、まずは十分な休養を取ることが大事。「何かしてみよう」と自ら気持ちが動くまでは、“充電期間”と捉えて、ゆっくり休んでみてください。

■木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、産業医、健康スポーツ医。慶應義塾大学病院研修修了後、都内クリニック、静岡赤十字病院で勤務。現在は東北の病院にて常勤医、静岡県内の病院、 東京・金王坂クリニックにて非常勤医。メンタルやストレスに関しての治療を得意分野とし、疲労、更年期の悩みなどに対して、精神薬だけでなく漢方を取り入れて治療を行っている。また、アスリートへのメンタルサポートにも注力し、東京パラリンピック ブラインドサッカー日本代表のメンタルアドバイザーとしても活動中。

新型コロナで開催揺れる東京五輪、パラ・メンタルコーチが「選手の心身」に及ぼす影響を解説

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催をめぐり世論が荒れている。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、開催すべきか、延期すべきか、それとも中止か――。延期や中止となれば「史上最大のスポーツニュース」「前例のない出来事」と報じる海外メディアや、「景気回復が遠のく」「甚大な損失」と伝える経済メディアもあるが、最も深刻な状態に置かれているのは出場する選手ではないだろうか。

 先行き不透明な現状が選手に及ぼす影響について、外科・内科に加えメンタルケアも行うスポーツ健康医で、パラリンピック「ブラインドサッカー」日本代表のメンタルコーチを務める医師・木村好珠氏に話を聞いた。

――開催が確定されていない状況は、五輪選手のメンタルにどのような影響が考えられますか?

木村好珠氏(以下、木村) 現時点ですでに五輪選手及びスタッフたちに影響は出ているはずです。「不安」というのは、将来のこと、そして抽象的なことに生じやすいといわれていますので、選手が今立っているのは、まさに「不安」が生まれやすい状況です。先のことを考えなければいけないのに、何もかもがどうなるかわからない。数カ月後という近い将来でさえ明確に具体的に描けないのですから。

 また今は五輪の選手選考の時期であり、まだ出場が決まっていない選手はさらに不安に拍車をかけることになります。言葉にして不安を表に出していなくとも、少なからず不安は感じているでしょう。それがパフォーマンスに影響が出る可能性も否定できません。

――新型コロナに感染するリスクがあるとして、諸外国からも日本開催に対する懸念が伝えられています。「アスリートファースト」という目線で見たとき、今回の五輪はどうあるべきと考えますか?

木村 これに関しては、かなり難しいですね。「アスリート第一」とは、心身ともに健やかに安心して、かつフェアーに競技が行われる状況だと思います。コロナが終息しない中で、心身共に安心して競技を行えるでしょうか? そう思うと、厳しい決断をしなければならないかもしれません。

 五輪は各国の人が集まる一大イベントです。人が密集することで、どれだけの影響があるのかは、まだ明確にわからないことも多いです。というのは、感染者発見からの日数も短く、感染ルートが不明な症例も多い。そして、検査の有無にもばらつきがあり、正確な分析がしにくい状態にある。オリンピックは世界中の人が集まるため、もしその場の1人がウイルスを持っていたら、それだけで、いろんな国に拡散する可能性があります。もし、今このタイミングでオリンピックが行われるとしたら「日本に行きたくない」という海外選手も出てくることでしょう。

――各国の人間が衣食住を行う選手村が、ウイルスの温床になる可能性は容易に想像できます。

木村 ただ、選手はこの4年に一度の五輪の時期にピークを合わせて調整してきてるでしょうし、もし延期となれば選手の再選考を考える可能性も出てきます。ですので、ここについては、身体的な危険度と選手たちのこの4年に懸けてきた思い、その両方をしっかり吟味した上での結論であることが必要です。

 会場の準備や各選手のさまざまな手続きを踏まえると、IOC(国際オリンピック委員会)は、5月下旬までに開催を決めるとのことでした。前回のSARS(重症急性呼吸器症候群)は、約8,500人の方が罹患し、終息宣言までに約8カ月かかっています。今回の新型コロナウイルスはまだ3カ月で、8カ月後はオリンピック開催期間の真っ只中。そう考えると、非常に悩ましいところです。

――開催可否の判断にあたり、パラリンピックの関係者として木村さん個人が伝えたいことはありますか?

木村 この4年間、選手及びスタッフがどんな思いで練習してきたのか、その「気持ち」についても十分考慮していただきたいです。健康第一はもちろんのこと。それには一刻も早い終息が、鍵となってきます。とにかく、感染予防の手洗いうがいの徹底、症状がある場合は速やかに医療機関に連絡すること、そして、政府も嘘偽りない発表をした上で、感染予防を徹底していただきたい。1日も早い終息を願うばかりです。

木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、産業医、健康スポーツ医。慶應義塾大学病院研修修了後、都内クリニック、静岡赤十字病院で勤務。現在は東北の病院にて常勤医、静岡県内の病院、 東京・金王坂クリニックにて非常勤医。アスリートへのメンタルサポートにも注力し、東京パラリンピック ブラインドサッカー日本代表のメンタルコーチを務める。

反ワクチン、脱ステロイド――「自然派ママ」はなぜ生まれる? 小児科医が「孤育て」という背景を語る

 昨今SNSを騒がせている自然派育児の炎上。今回、「パパ小児科医(ぱぱしょー)」の名前で、育児情報サイト「ぱぱしょー.com」を運営し、Twitterやインスタグラムでも情報発信を行っている三重県伊賀市小田町「ゆめこどもクリニック伊賀」院長で小児科医の加納友環先生にインタビューを行い、前編では、自然派育児にまつわる炎上をどのように見ているのかをお聞きした。後編では、なぜ根拠のない情報を信じて拡散してしまう自然派ママが生まれてしまうのか、その背景について考察してもらった。

(前編はこちら)

母親が「反ワクチン」「脱ステロイド」に走るワケ

 小児科分野においては、感染症予防のワクチン、主にアトピー性皮膚炎に用いられるステロイドをめぐって「不安感」を覚える母親は多いようだ。

「ワクチンに関しては、『同時接種』に不安を抱かれる方は多いですね。約10年前にヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンが承認されたのですが、これらを含むワクチンの同時接種後の死亡事例が報道され、不安が広がったこともありました。その後の調査で、同時接種と1本ずつでの接種で、副反応リスクに違いはあまりないことがわかり、現在では同時接種が推奨されるようになっています」

 その他、ワクチンの副反応には、「注射した部位が赤く腫れる」「発熱」などがあるが、「それをネットで調べると、不安を煽るような怖い情報がたくさん出てきて、『ワクチンは良くない』『わが子に打たせてはいけない』という考えが強化されてしまう方はいらっしゃると思います」。

 また、ステロイドに関しては、「90年代前半に『ニュースステーション』(テレビ朝日系)で、『ステロイドは体に悪い』といった企画が放送され、一気に不安が広がり、それが今も根強く残っている印象。『ステロイドを塗ると体に毒素が溜まる』など、不安を煽る過激な表現も目にしますし、とても問題だと思っています」と加納先生。

「ステロイドを使わない『脱ステロイド』の考えは、サプリやスキンケア用品の販売など、悪意のあるなしにかかわらず、ビジネス利用されている現状も。実際に診療現場で、『脱ステロイド』を謳う、内容のよくわからない高額な塗り薬を使用しているという患者さんにお会いしたことがあります」

 なお、脱ステロイド療法として、かつて注目を浴びた「超酸性水療法(雑菌による炎症を抑える目的で、全身に酸性の水を吹きかける)」は、「民間療法の一つであり、標準治療ではない」という。

「昔は、標準治療をしていてもアトピーがなかなか治らないケースがあり、『ステロイドが悪い』『ステロイドのせいでさらに悪化した』と思い込む方が多かったのかもしれません。しかし今では、標準治療でよくなるケースが多いということがわかっています」

 そもそも自然派ママが生まれる背景には、「防腐剤や添加物など、人工的なものに対する小さな不安感」が挙げられるようだ。逆に「ナチュラル志向のライフスタイル」は、体に優しいイメージがあり、安心感が得られるため、「それが『自然は善』『人工物は悪』という構図を生み出すのではないでしょうか」とのこと。

 こうした一般的な構図が、特に育児中の母親の間でより強化されていくのは、核家族化、地域との関わりが希薄になっているという社会環境の中で、「孤育て」に陥っている人が多いからではないかという。

「ほかの人の意見を聞く機会がないため、考えが一方向にいきやすいのです。多くの人と接していれば、例えば『子どもには無添加のものを食べさせている』という意見、一方で『添加物は気にしない』という意見など、いろいろな考えに触れることができるので、極端すぎる育児に走ることはないと思うのですが、『孤育て』でネット情報ばかりを見ていると、『添加物がいかに恐ろしいか』という過激な記事ばかりが目につき、それを信じ切ってしまうということはあるように思います」

 また、医療は日々更新されていくため、「育児の世代間ギャップ」が生じ、上の世代が下の世代にアドバイスをしにくいという現状も。これが「孤育て」につながる面もあるという。

「予防接種の種類にしても、昔とは違いますからね。『今の時代はこうだから』と言われると、上の世代の方も、なかなか助言することは難しいのかなと感じます」

 一方で、そうした「孤育て」中に、同じく育児中のママ友から「自然派育児」を勧められると、信用してしまうというケースもあるようだ。自然派を信じている人は、「悪意なく」人に勧めるため、「それを聞いた人も情報を信用してしまう。そんな傾向があるように思う」という。

「医者のアドバイスより、ママ友の言葉を信じてしまうのです。なぜなら、医者よりママ友とのほうが『信頼関係』があるから。もちろん、長年通っているかかりつけ医で、すでに信頼関係が構築されている医者の言葉であれば、『信じる』というお母さんは多いでしょうが、医療機関で嫌な思いをした……例えば『医者に冷たい態度を取られた』『病状が良くならなかった』といった経験があった場合、医者よりママ友の言葉を信じてしまうのだと思います」

 そのため加納先生は診療において、何よりもまず、母親から「信頼を得ること」が大事だと語る。特に小児科においては、「お母さんが処方した薬を家で使ってくれるか、お子さんの症状の変化に気づいて受診してくれるかがとても重要で、いわばお母さんも『医療チーム』の一員。そのため信頼関係が大事」だそうだ。

「病院において、子どものお母さんに対し、『考えが間違っている』という態度で接すると、その後受診してくれなくなります。なので、『この先生は子どものことをしっかり考えてくれている』と思ってもらうことが大切なのです。例えば『ステロイドは使いたくない』というお母さんがいたら、『じゃあ保湿剤であれば塗れますか?』と代案を勧めたり、『ステロイドのどういった点が不安ですか?』と質問したりして、こちらの言葉を受け入れてもらえるようにします」

 加納先生は「自然派ママも医療従事者も『子どものために』という気持ちは同じです」と語る。自然派を信じ切っている母親に、考えをあらためてもらうのはなかなか難しいだろうが、もし身近に、偏った育児に“走りかけている”母親がいたら、その根底には「子どものため」という思いがあるのだと理解した上で、「こういう考えもあるよ」と声をかけてみるといいのかもしれない。
(解説=「ゆめこどもクリニック伊賀」院長 加納友環先生/取材・文=サイゾーウーマン編集部)

加納友環(かのう・ともわ)
三重県伊賀市小田町「ゆめこどもクリニック伊賀」院長。2児の父親である小児科医ということから「パパ小児科医(ぱぱしょー)」の名で、育児情報サイト「ぱぱしょー.com」を運営。Twitterやインスタグラムでも情報発信を行っている。
「ぱぱしょー.com」
インスタグラム(@papa_syo
Twitter(@papa_syo222

「不快な思いをさせてすみません」への違和感――指原・喜多村“テンプレ謝罪”を心理学でひもとく

 昨今、スキャンダルや炎上を起こした芸能人・有名人が「みなさまに不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした」などと謝罪する光景をよく目にする。最近では、女優・鈴木杏樹との不倫が報じられた俳優・喜多村緑郎が「私のプライベートなことで普段、応援してくれているみなさま、舞台を見てくださっているみなさまに不快な思い、そして心配をお掛けしたことを心より申し訳なく思っております。本当にすみませんでした」と、謝罪していた。

 また、女性アイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」のプロデューサーを務める指原莉乃は2月25日、「メンバーのオフィシャルではない画像に関して、ファンの皆様を不安な気持ち、不快な気持ちにさせてしまい申し訳ございません」と、自身のTwitterで謝罪。≠MEメンバーの谷崎早耶と、一般男性のツーショット動画が流出してファンの間で問題視され、この投稿をしたのだ。

 2つはまったく異なる案件だが、同じように誰かを「不快な思い」にしたことに対し「申し訳ない」と謝罪している。しかし、ここで問題となった「不倫」や「流出」が「不快」に感じるかどうかは、人によって大きな差がないだろうか? そもそも、人はどんな時「不快な思い」になるのだろうか? いつの間にか“謝罪のテンプレ”と化した「不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」の一言について、精神科医の木村好珠氏に、心理学の視点からひもといてもらった。

「不快な思い」には大きな個人差がある

――何かに「不快」だと感じた時、人間にはどのような変化が起こりますか?

木村好珠氏(以下、木村) 「快」「不快」は人間が行動する上で、最も基本的な動機付けになる感情です。「不快な思い」の中には「恐怖」や「不安」が込められており、これを感じると「現状になんらかの対処が必要」だと、本能、喜怒哀楽、情緒などをつかさどる“大脳辺縁系”に知らされます。一種の防衛本能ともいえ、「不快な思い」は生きていく上で非常に大切な役割を担っている感情です。例えば、自分にとって面白くないことに対して、人間は「不快」だと感じますが、「そこから遠ざかろう」「不快な状態を解消するような刺激を得よう」と考えるのは、防衛本能が働いているからなんです。

――「不快な思い」を抱くのに、個人差はありますか?

木村 「不快」に感じるかどうかは、かなり大きな個人差があります。もともとの性格もありますし、これまで生きてきた環境により、同じ事柄でも「不快に感じる人」「感じない人」がいます。また、同じ人でも状況によって「不快に感じる時」「感じない時」があります。

 さらに、「不快」だと感じる時間にも個人差が生じます。不快な思いを抱かせる人や物が近くにあれば、当然持続時間は長いです。しかし、芸能人・有名人といった「もともと自分の身近ではないもの」に対しては、「不快な思い」を抱く時間が短い人のほうが多いでしょう。大衆に向けた謝罪という意味では、感じ方が人それぞれである以上、「不快な思いをさせたこと」に謝っても、許しにはつながらないかもしれませんね。

――ちなみに、どういった人が「不快な思い」を感じやすいのでしょうか?

木村 「不快な思い」を感じやすい人の特徴としては、真面目すぎる、きちょうめん、頑固、プライドが高い、自己肯定感が低い人。一方で、「不快な思い」を感じにくい人は、主体的に動くことができる、外交的で楽観的、自己肯定感が高いことが挙げられます。

――「不快な思い」に対して謝罪した時、相手は許してくれるものなのでしょうか?

木村 これは、謝罪の仕方によると思います。相手が許してくれるかどうかは、当事者の“言葉”だけでは決まらないからです。心理学的に、こうした謝罪で大切だとされるポイントは、相手が何に対して不快に感じたのかを明確にすること。「本当はこうしてほしかった」という相手の願望を見つけ、それに対する自分の意思を伝えることが望ましく、その上で、代替案や解決策を具体的に伝えることが大事です。また、本心というのは“表情”によく表れます。本当に謝りたいのか、話す言葉の中にウソはないのか、自分の言葉で謝罪しているのか……謝罪された相手は、表情からも判断しているのです。

 謝罪する時、これらを意識せずに「不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」と謝っても、個人的には「世間は許してくれないだろうな」と感じてしまいますね。

■木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、産業医、健康スポーツ医。慶應義塾大学病院研修修了後、都内クリニック、静岡赤十字病院で勤務。現在は東北の病院にて常勤医、静岡県内の病院、 東京・金王坂クリニックにて非常勤医。メンタルやストレスに関しての治療を得意分野とし、疲労、更年期の悩みなどに対して、精神薬だけでなく漢方を取り入れて治療を行っている。また、アスリートへのメンタルサポートにも注力し、東京パラリンピック ブラインドサッカー日本代表のメンタルアドバイザーとしても活動中。

TOKIO・松岡昌宏を魅了する「ガラケー」知られざる実力! 専門店に聞いた「iPhone11レベル」の魅力

 ジャニーズ事務所では数少ないガラケーユーザーとして知られるTOKIO・松岡昌宏。自身のラジオ番組『TOKIO WALKER』(NACK5)では、ガラケーの話題が定期的に持ち上がり、スマホ優勢の情勢を嘆いているのだ。先日の放送では、ドコモが展開している「iモード検索」サービスが今年3月24日に終了するとの報を受けた松岡が、「もう俺は何にも検索できない」と愕然。「何も見れない」と大混乱に陥っていた。

 実は、携帯各社は近年中にガラケーのサービス終了を迎える。松岡はドコモユーザーと思われるが、同社は2026年3月31日で終了予定。ガラケーを愛する松岡には、あまりにも悲惨な現実が待ち受けているのだ。しかし、なぜそもそも松岡はガラケーをそこまで愛するのか? なぜスマホへの切り替えを全力で拒むのか? ひょっとしたら、26年以降もガラケーを使い続ける裏技もあるのではないか? そんな疑問を胸に、ガラケー専門店「携帯市場」神田本店へ走った。

――近ごろ、ガラケーの売れ行きはいかがですか?

携帯市場 この数カ月でスマホの波が急に襲ってきていて、いまはうちの店でもガラケー在庫数が少ないんですよ。ちょっと前までは店内全ての品ぞろえがガラケーだったんですが、駆け込みでガラケー終了までのストック用に何台か買っていく人が最近は増えたもので、今はこれくらいですね。

――ガラケーの買い占めが起こるほど、ガラケー終了の一報は衝撃的だったんですね。スマホユーザーからするとガラケーの良さが見えにくので、その魅力が気になるんですが……。 

携帯市場 僕が使っているのはドコモのF01(12年製造)なんですが、見てください。指紋認証があるんです。実は、スマホの前からガラケーには指紋認証が搭載されていたんですね。カメラは1300万画素で、画素数だけでいえば最新のiPhone11レベル。Bluetooth、wi-fi、お財布携帯機能もあります。テレビだって見れますよ。こんなに多機能なのに、充電の持ちも良い。あとなにより丈夫。06年や08年の機種をいまだに使ってる人がいるくらい、ガラケーは丈夫なんです。あ、スマホは感情的になったときに、投げつけられないですよね? ガラケーは思い切り投げつけても壊れない。粗暴な扱いに絶え得るんです。

――たしかに、昔はカーっとなったときにガラケーを床にぶつけたりしてました。ちなみに、このご時世にスマホからガラケーに切り替える人はいますか?

携帯市場 高校生の女の子がSNS離れをしたくて、ガラケーにダウングレードしにきたことがあります。受験生だからネットを断捨離したいと。ガラケーの特徴はSNSができないことですよね。ガラケーユーザーがスマホにしない理由は「SNSが嫌」というのが大きいんです。電話とショートメールができればいいと。

――あ、松岡もまさに同じことを言っています。こちらの発言を見てください。
・「(LINEグループについて)そういうのに入りたくないから、俺、(スマホを)持ってないっていうのがあんだもん」
・「(LINEは)誰が読んだ、誰が読んでないとかってなるんでしょ? めんどくせ~!」
・「携帯電話って、電話の機能だからさ。携帯できる、もうそれだけでいいって言ってんのにさ。あんなゴチャゴチャして余計なもん、いらねーんだもん」
・「本当、余計なのいらないからさ、電話とショートメールだけできるスマホ作って!」

携帯市場 共感しかありませんね(笑)。うちを訪れるお客さまも、同じことを話されますよ。そういえば、さだまさしさんも松岡さんと同じようなことを言ってましたね。「ガラパゴス携帯電話の歌」という曲なんですが……ほら、「どなたかガラケーの新品を作ってくれませんか」「画質は悪いが写真も撮れる メールだってできる」。

 芸能人の方々こそ、本当はガラケーがいいんですよ。セキュリティ面で考えると、LINEよりショートメールのほうが安全だし、インスタグラムやTwitterができないから裏垢も作れません。プライバシーの漏出に気を使うならガラケーですね。テレビで見かける政治家の携帯も、みなさんガラケーです。

――なるほど。しかし、ガラケーで利用できるサービスは少なくなっていませんか? 松岡はジャニーズ事務所の公式携帯サイトがガラケーで読めなくなって「自分の(ブログの)原稿チェックとかできない」と怒ってました。

携帯市場 LINEやTwitterは昔、ガラケーでも使えたのですが次々終了していってます。でも見てください。ゲームなら初期からいくつか搭載されてるんですよ。ぷよぷよ、パズル、オセロ、ZOO KEEPER……。日英翻訳というアプリもありますね。ちょっと試しにやってみますか? ……アプリエラーですね。まあ、こういう感じで、日々一刻とガラケーのサービスは消えていっています。

――26年3月31日のXデー以降も、なんとか松岡がガラケーを使えるような裏技を探しているんですが……。

携帯市場 ガラケーは、対象となる通信「3G」が26年4月以降使えないですが、4Gの通信が利用できる環境は残ります。そこで、「ガラケーに瓜二つ」で「4G」が使えるものは、「ガラホ」と言われる端末になってしまいます。そうなると、今までガラケーを使っていた人が、見た目をそのままにするとなると一番は「ガラホ」しかないかもしれません。ガラホを買って、安いSIMカードに切り替えしてお使いになると経済的です。

 また、すでに使用感のある中古のガラホを購入すれば、一世代超えて5G時代でも“ガラケーを使いこなしている感”が演出できます。丈夫とかバッテリーの持ちが良い、というのは担保できませんが……。

――ガラホとガラケーは、見た目の違いはありませんね。黙って渡せば、松岡も気づかないかもしれません。

携帯市場 ただ、ガラケーを長年使ってきた方の中には、キータッチの感覚が違うと言う方もいます。ボタンを押す感覚が微妙に異なると。ガラケーユーザーの方は、キーを押した実感を得られる“ぷつりボタン”が好きなので、わずかな感触の違いにも気づかれるようです。しかし、なにより一番大きな違いは、やり方によってはスマホと同様にアプリがダウンロードできたり、SNSができてしまうことですね。でも、それもやらなければいいだけなので。アプリのダウンロード可否は機種によって異なるので、機種を選ぶときにLINE等のアプリがもともと入っていない、かつダウンロードもできないようになっている機種を選ぶというのが裏技といえるのかもしれません。

――はたから見れば、ガラホもガラケーも違いはないのでLINEを強要されることもなさそうですね。

携帯市場 松岡さんだけでなく、うちのお客さまもみなさま口々に「なんでガラケーやめちゃうの?」と文句を言っては、「これが最後の携帯かな」って寂しそうに帰るんです。背中から哀愁を感じます。そういったガラケーを愛する方々の思いに応えるような、ガラケーの新作が発売されることを期待したいですね。

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TOKIO・松岡昌宏を魅了する「ガラケー」知られざる実力! 専門店に聞いた「iPhone11レベル」の魅力

 ジャニーズ事務所では数少ないガラケーユーザーとして知られるTOKIO・松岡昌宏。自身のラジオ番組『TOKIO WALKER』(NACK5)では、ガラケーの話題が定期的に持ち上がり、スマホ優勢の情勢を嘆いているのだ。先日の放送では、ドコモが展開している「iモード検索」サービスが今年3月24日に終了するとの報を受けた松岡が、「もう俺は何にも検索できない」と愕然。「何も見れない」と大混乱に陥っていた。

 実は、携帯各社は近年中にガラケーのサービス終了を迎える。松岡はドコモユーザーと思われるが、同社は2026年3月31日で終了予定。ガラケーを愛する松岡には、あまりにも悲惨な現実が待ち受けているのだ。しかし、なぜそもそも松岡はガラケーをそこまで愛するのか? なぜスマホへの切り替えを全力で拒むのか? ひょっとしたら、26年以降もガラケーを使い続ける裏技もあるのではないか? そんな疑問を胸に、ガラケー専門店「携帯市場」神田本店へ走った。

――近ごろ、ガラケーの売れ行きはいかがですか?

携帯市場 この数カ月でスマホの波が急に襲ってきていて、いまはうちの店でもガラケー在庫数が少ないんですよ。ちょっと前までは店内全ての品ぞろえがガラケーだったんですが、駆け込みでガラケー終了までのストック用に何台か買っていく人が最近は増えたもので、今はこれくらいですね。

――ガラケーの買い占めが起こるほど、ガラケー終了の一報は衝撃的だったんですね。スマホユーザーからするとガラケーの良さが見えにくので、その魅力が気になるんですが……。 

携帯市場 僕が使っているのはドコモのF01(12年製造)なんですが、見てください。指紋認証があるんです。実は、スマホの前からガラケーには指紋認証が搭載されていたんですね。カメラは1300万画素で、画素数だけでいえば最新のiPhone11レベル。Bluetooth、wi-fi、お財布携帯機能もあります。テレビだって見れますよ。こんなに多機能なのに、充電の持ちも良い。あとなにより丈夫。06年や08年の機種をいまだに使ってる人がいるくらい、ガラケーは丈夫なんです。あ、スマホは感情的になったときに、投げつけられないですよね? ガラケーは思い切り投げつけても壊れない。粗暴な扱いに絶え得るんです。

――たしかに、昔はカーっとなったときにガラケーを床にぶつけたりしてました。ちなみに、このご時世にスマホからガラケーに切り替える人はいますか?

携帯市場 高校生の女の子がSNS離れをしたくて、ガラケーにダウングレードしにきたことがあります。受験生だからネットを断捨離したいと。ガラケーの特徴はSNSができないことですよね。ガラケーユーザーがスマホにしない理由は「SNSが嫌」というのが大きいんです。電話とショートメールができればいいと。

――あ、松岡もまさに同じことを言っています。こちらの発言を見てください。
・「(LINEグループについて)そういうのに入りたくないから、俺、(スマホを)持ってないっていうのがあんだもん」
・「(LINEは)誰が読んだ、誰が読んでないとかってなるんでしょ? めんどくせ~!」
・「携帯電話って、電話の機能だからさ。携帯できる、もうそれだけでいいって言ってんのにさ。あんなゴチャゴチャして余計なもん、いらねーんだもん」
・「本当、余計なのいらないからさ、電話とショートメールだけできるスマホ作って!」

携帯市場 共感しかありませんね(笑)。うちを訪れるお客さまも、同じことを話されますよ。そういえば、さだまさしさんも松岡さんと同じようなことを言ってましたね。「ガラパゴス携帯電話の歌」という曲なんですが……ほら、「どなたかガラケーの新品を作ってくれませんか」「画質は悪いが写真も撮れる メールだってできる」。

 芸能人の方々こそ、本当はガラケーがいいんですよ。セキュリティ面で考えると、LINEよりショートメールのほうが安全だし、インスタグラムやTwitterができないから裏垢も作れません。プライバシーの漏出に気を使うならガラケーですね。テレビで見かける政治家の携帯も、みなさんガラケーです。

――なるほど。しかし、ガラケーで利用できるサービスは少なくなっていませんか? 松岡はジャニーズ事務所の公式携帯サイトがガラケーで読めなくなって「自分の(ブログの)原稿チェックとかできない」と怒ってました。

携帯市場 LINEやTwitterは昔、ガラケーでも使えたのですが次々終了していってます。でも見てください。ゲームなら初期からいくつか搭載されてるんですよ。ぷよぷよ、パズル、オセロ、ZOO KEEPER……。日英翻訳というアプリもありますね。ちょっと試しにやってみますか? ……アプリエラーですね。まあ、こういう感じで、日々一刻とガラケーのサービスは消えていっています。

――26年3月31日のXデー以降も、なんとか松岡がガラケーを使えるような裏技を探しているんですが……。

携帯市場 ガラケーは、対象となる通信「3G」が26年4月以降使えないですが、4Gの通信が利用できる環境は残ります。そこで、「ガラケーに瓜二つ」で「4G」が使えるものは、「ガラホ」と言われる端末になってしまいます。そうなると、今までガラケーを使っていた人が、見た目をそのままにするとなると一番は「ガラホ」しかないかもしれません。ガラホを買って、安いSIMカードに切り替えしてお使いになると経済的です。

 また、すでに使用感のある中古のガラホを購入すれば、一世代超えて5G時代でも“ガラケーを使いこなしている感”が演出できます。丈夫とかバッテリーの持ちが良い、というのは担保できませんが……。

――ガラホとガラケーは、見た目の違いはありませんね。黙って渡せば、松岡も気づかないかもしれません。

携帯市場 ただ、ガラケーを長年使ってきた方の中には、キータッチの感覚が違うと言う方もいます。ボタンを押す感覚が微妙に異なると。ガラケーユーザーの方は、キーを押した実感を得られる“ぷつりボタン”が好きなので、わずかな感触の違いにも気づかれるようです。しかし、なにより一番大きな違いは、やり方によってはスマホと同様にアプリがダウンロードできたり、SNSができてしまうことですね。でも、それもやらなければいいだけなので。アプリのダウンロード可否は機種によって異なるので、機種を選ぶときにLINE等のアプリがもともと入っていない、かつダウンロードもできないようになっている機種を選ぶというのが裏技といえるのかもしれません。

――はたから見れば、ガラホもガラケーも違いはないのでLINEを強要されることもなさそうですね。

携帯市場 松岡さんだけでなく、うちのお客さまもみなさま口々に「なんでガラケーやめちゃうの?」と文句を言っては、「これが最後の携帯かな」って寂しそうに帰るんです。背中から哀愁を感じます。そういったガラケーを愛する方々の思いに応えるような、ガラケーの新作が発売されることを期待したいですね。

携帯市場がセレクト! 名作ガラホ写真館