裏垢女子インタビュー「Tinderでのセックス体験談」を日夜ツイート、「いいね!」で心が満たされるワケ

 昨今、SNSで話題になることが増えた「裏垢女子」をご存じだろうか。普段使用しているアカウント以外を総じて「裏垢」と言うこともあるが、最近では、性的な事柄をつづったり、裸の写真などをアップするアカウントを「裏垢」、またそれを運営している女性を「裏垢女子」と呼ぶそうだ。

 今年、青山のアパレルショップ店長がSNSで裏垢を作り、胸元の際どい写真を投稿したところ、現実世界では得られない称賛を浴びたことで裏垢にハマッていく様子を描いた映画『裏アカ』も製作されるなど、いまや裏垢女子は、一部のSNS界隈では知られた存在になりつつある。

 しかしその半面、「裏垢女子」という言葉を知ってはいても、彼女たちの実情について「詳しくはわからない」という人も多いはず。そこで今回サイゾーウーマンでは、現役の「裏垢女子」サオリさん(仮名)に取材を行い、その実態を解説いただいた。

裏垢女子は「エロい自撮り」をアップするだけじゃない!?

 サオリさんは、現在29歳の会社員。3年前に結婚し、都内近郊で夫と2人暮らしをしている。裏垢女子デビューは今年に入ってから、「コロナ禍の影響で仕事が暇になり、マッチングアプリのTinderを始めて男性と会うようになったんですが、その備忘録にしようと裏垢を開設しました」という。裏垢では、男性との密会の様子やセックス内容、またその感想などを文章でつづっているそうだ。

「『裏垢女子』と一口に言っても、その投稿内容は多岐にわたります。皆さん、エロい自撮り……例えばおっぱいとかお尻、性器ギリギリの写真や、セックス写真をアップしているアカウントを裏垢女子と思っているかもしれませんが、私のように『セックスの体験談』をメインで投稿しているアカウントも裏垢女子。ほかにも、クスッと笑える“エロネタ”をツイートするアカウント、セックステクニックをレクチャーするアカウント、オフパコ(※)募集アカウントなんかも、そうです。もちろん、これらの要素を全て兼ね備えたアカウントもあります。フォロワー数が数万人という人気アカウントもあって、“性に特化したインフルエンサー”みたいだなぁと思っています」
※ネットを介して知り合った人とセックスをすること

 また、裏垢女子より数は少ないものの、裏垢男子も存在するという。女性に好まれそうなプレイ内容をツイートしている裏垢男子は、裏垢女子に特に人気があるといい「キャーキャー言われて、王子様気分を味わっているみたい」とサオリさん。そのほかに、エロ写真や動画を、DMを介して販売していると思しき裏垢女子もいるそうで、「もしかしたら業者なのかもしれませんが」とサオリさんは付け加えた。

 性的なことを日夜ツイートしている裏垢女子だけに、「性欲が強くて、エロいことが大好き」なのかと思いきや、サオリさんは「むしろ自分に自信がないタイプが多いのでは」と指摘する。その背景には、彼女たちが裏垢を作る理由が見え隠れする。

「そもそも、なぜ裏垢を作るのかと言われれば、承認欲求を満たすためだと思います。裏垢女子には、彼氏に振られたり、セフレ沼にハマッて(セフレに本気で恋をして)しまったり、異性関係で傷ついた経験を持つ子が結構いるんです。そうやって自信を失った人が、エッチな投稿をして『いいね!』をもらうことで、自尊心を満たそうとしているような気がします」

 サオリさんも、そんなタイプの裏垢女子だという。

「私は昔から女としての自分にまったく自信がない。そのコンプレックスを克服したくて、暇ができたのをきっかけにTinderを始め、いろんな男性とセックスするようになったんですが、ある程度、承認欲求は満たされるものの、それを体験談として投稿し『いいね!』をもらうと、さらに満たされる。『私はこんなにもいろんな男と、いろんなセックスをしてるんだぞ!』と自慢したら、『いいね!』と言ってもらえるわけですから。それに、『いいね!』によって、『既婚者なのに多数の男性と肉体関係を持つこと』への罪悪感がなくなる面もあります」

 投稿内容はさまざまな裏垢女子の中でも、「エロい自撮りをアップする人は、特に承認欲求が強いのではないか」とサオリさん。なんでも、エロい自撮りは、瞬く間に大量の「いいね!」がつくというのだ。裏垢女子の年齢層は幅広いものの、写真をアップするのは、未成年と人妻が多い印象だといい、「彼女たちはもしかしたら、クラスメイトから容姿をバカにされたり、夫とのセックスレスに悩んだりしているのかもしれませんね。だから『男の人に欲情されたい』という願望が爆発するのかな」と考察する。ちなみサオリさんは、写真を投稿したことはないというが、裏垢男子にDMで送ったことはあるそうだ。

「ただ面白いのが、裏垢女子の自撮りには、男性からだけでなく、同じ裏垢女子からも『いいね!』がつくんです。エロい自撮りは男性からですが、顔の一部を出している自撮りは裏垢女子から『いいね!』がつく。男性に欲情されるだけでなく、女性に『可愛い』『美人』と認めてもらいたいという気持ちがあって、それを裏垢女子同士で満たし合っているような感じかもしれません」

 裏垢女子同士の交流でいうと、オフ会を行うケースもあるとのこと。

「オフ会をしているのは、女子大生が多いイメージ。男女関係に関する共通の悩みを語り合ったりしているそうですよ。意外にも同性同士のつながりが強いのも、裏垢女子の特徴。私も、若い裏垢女子が、異性関係の病みツイートをしていると、『ああ、私も昔そうだったなぁ』と胸がキュンとなり、思わず『いいね!』してしまいます」

 サオリさんが語る「時に自らの承認欲求を満たし、時に誰かの承認欲求を満たしている」裏垢女子たちの一面は、SNS界でキワモノ扱いされている彼女たちのイメージを覆すものかもしれない。しかし、この界隈ではトラブルも発生しており、例えばある裏垢女子が、別の裏垢女子にDMで顔写真を送ったところ、Twitter上で晒されるという騒動もあったという。

 後編では、裏垢女子のトラブル事例や危険性について、ITジャーナリスト・高橋暁子さんに詳しく話をお聞きする。

『あいのり』桃、年下夫との“ラブラブ投稿”でネット大荒れ……大人になっても「自慢やノロケがやめられない人」の心理

 かつてフジテレビの恋愛バラエティ番組『あいのり』に出演していたブロガーの桃が、今年6月、自身のインスタグラムで、6歳年下の一般男性と結婚したことを報告。入籍を記念して、東京駅前で撮影したというウエディングフォトも公開し、数多くの「いいね!」を集めていたようだ。

 その一方で、桃のこうした一連の結婚報告を「ノロケてる」と受け取り、辟易としているネットユーザーも少なからずいる様子。というのも桃は、結婚前から当時彼氏だった夫との日常をブログにつづっているのだが、それらの一部が「夫自慢」「彼氏自慢」とネット上でみられるケースもあり、「鼻につく」と言われてきたのだ。

 例えば、6月8日付の「辛すぎて泣いた」というエントリーでは、不眠の悩みを告白。ベッドに入ってから2時間たっても眠ることができず、泣き出してしまったものの、同居している彼氏(現在の夫)に頭をマッサージしてもらったことで無事眠れたとつづったが、一部ネット上では「結局、自慢したいだけでしょ」「みっともない」「かまってちゃん」などと痛烈な批判が飛び交っていた。

 10代〜20代前半の世代が、SNSなどでパートナーの自慢やノロケを投稿する人は珍しくない一方、30代以降になると、あまり見られなくなるのは確かだろう。桃は現在35歳だけに、「いい年した大人が」と思われてしまい、それがバッシングのタネになっているとも考えられるが、以前サイゾーウーマンでは、「SNSでノロケる大人の心理」と「それに“いいね”できない大人の心理」を解き明かすため、人気心理カウンセラーの根本裕幸先生にインタビューを行っていた。

 今後も、桃は夫にまつわる投稿を続けていくと思われる中、「桃の夫トークにモヤモヤする」という人に向け、同記事を再掲する。
(編集部)

(初出:2017年12月23日)
「彼氏氏においしいご飯を作るぞ」SNSでノロケる大人と、“いいね”できない大人の心理

 SNSで恋人や配偶者の自慢、惚気(ノロケ)を投稿する人にモヤモヤしたことはないだろうか。10代の間で、動画共有サイト「ミックスチャンネル」にキス動画を投稿することや、ひとつのTwitterアカウントを恋人同士で共有し、交際の様子をツイートする、「カップル共同アカウント」がはやっているが、たいていの場合はそうしたノロケは大人になれば収まる、一時の「風邪」のようなものだ。しかし、いい年をした大人になっても、自慢やノロケをやめない人たちがいる。

 なぜ、彼、彼女たちは臆面もなく、プライベートをさらけ出すのだろうか。3カ月予約が取れない人気心理カウンセラーで、『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』(あさ出版)の著者、根本裕幸先生に話を聞いた。

根本裕幸(ねもと ひろゆき)
1972年9月6日生まれ。静岡県浜松市出身。97年より神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事。2000年、プロカウンセラーとしてデビュー。以来、延べ1万5,000本以上のカウンセリングをこなす。近著に『人間関係がスーッと楽になる心の地雷を踏まないコツ・踏んでしまったときのコツ』(日本実業出版社)『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』他、多数。『頑張らなくても愛されて幸せな女性になる方法』(初版、リベラル社)は韓国語版が発売されている。

◎大人になっても恋愛濃度が薄まらないワケ
「今日は彼氏氏と一緒にお買い物デート。重たい荷物を持ってくれる彼氏氏は、やっぱり頼りになる。家に帰ったら、美味しいご飯をいっぱい作ってあげるぞ」

 こんなツイートにモヤモヤしたことはないだろうか。「モテない女に彼氏ができて舞い上がっているだけ」と思う人がいたとしたら、それは大きな間違いだ。なぜなら、モテる人や既婚者の中にも、こうしたノロケをする人がいるからである。いい年をした大人が恋人や配偶者の自慢をしていることに対して、違和感を抱いている人もきっと多いはずだ。

 根本先生によると、思春期の若者が恋愛至上主義的な価値観を持ち、SNSで恋人を自慢するのは、ある意味当たり前の行為だという。大人になると、仕事や将来、親の介護、趣味など、さまざまな事柄に興味・関心が分散される。しかし、思春期から20歳くらいまでは興味の幅が限定的で、その分、恋愛に大きな比重がかかってしまう。

 「思春期の恋愛の濃度は、大人の3倍だと思っていいでしょう」と根本先生は話す。さらに、「承認欲求」の問題も大きく関係しているそうだ。

「思春期前の子どもは、親に承認してもらえさえすれば心が満たされるのですが、思春期以降は目の前の世界が広がるにつれて、承認欲求の対象が広がっていきます。周りの人に認めてもらいたい、自慢したいという欲求が出てくるのです。それが、SNSにキス動画やノロケを投稿し、幸せをアピールしてしまう一因だと考えられます」

 しかし、大人になっても恋愛濃度が薄まらず、承認欲求がダダ漏れな人たちがいる。

「現在、社会は閉塞感で満ちています。将来に明るい希望が持てず、仕事も充実していない。そうした理由から、本来ならばほかに気が向いて薄まるはずの恋愛濃度が大人になっても薄まらず、比重を大きく置いてしまう人がいるのです。さらに、自己肯定感が育たず、思春期のような承認欲求を抱き続けている大人も増えています」

◎承認欲求の泥沼にはまる“恋愛モンスター”

 恋愛濃度が3倍のまま薄まらない、“恋愛モンスター”が跋扈(ばっこ)する背景には、社会の閉塞感や自己肯定感の問題がある。きちんと段階を踏んで大人になった人たちにとっては、恋愛モンスターの言動が痛々しいものに感じられることだろう。

 根本先生の言う自己肯定感とは、「ありのままの自分を、ありのままに認める」こと。人がどう思うかといった「他人軸」で考えるのではなく、「自分軸」で考えるようになれる状態を指す。つまり、たとえ他者から承認されたとしても、それだけでは自己肯定感は育たない。そもそも、その発想自体が「他人軸」の考え方だからだ。

 だからこそ、承認欲求を求める人間の業には、歯止めが利かない恐ろしさがある。

「インターネットの普及により、常に衆目にさらされるようになった現在において、他人の目に敏感になる人は増えています。ずっと承認を集めることに執着して、『いいね!』を集めようとしたりとか、自分と恋人が見栄え良く写っている写真を投稿し続けたりといった、承認欲求の泥沼にはまり込む人が増えているように見受けられます」

 「みっともない」という価値観の変化
 しかし、それだけではなく、日本で「個人化」が進んだことも一因だと根本先生は指摘する。欧米では、人前でキスやハグすることが日本ほど違和感なく受け入れられる風潮があるが、日本でもそうした価値観が徐々に浸透してきているというのだ。

「欧米のSNSでは、臆面なくノロケやリア充アピールをする人が多いと聞きます。『自分が幸せなのを発信して何が悪いの?』という考え方です。日本では、恋人のことや家庭のことを、外で話すのは恥ずかしいこと、みっともないことという暗黙の了解がありました。かつては、外で夫婦が手をつないで歩くこともタブーだった時代もあります。しかし、若い人たちの間でそうした価値観に変化の兆しが見えているのです」

 「個人化」の流れが強まるのだとしたら、恋人自慢やノロケがこれからさらに増えていくのだろうか。彼、彼女たちに違和感を抱く人にとってはうっとうしい限りである。

 モヤモヤする人は、本当はノロケを投稿したい?
 では、どのようにすれば、恋人自慢やノロケを受け入れられる、もしくはスルーできるようになるのか。

 根本先生によると、「本当はやりたいけど、我慢していること」を他人にされたときに、人はモヤモヤ、イライラする習性があるのだという。そういう人は、まずは「本当は自分もやりたいんだ」と自覚することが大切になる。

 さらに、価値観が多様化し、それが可視化されるようになったことも押さえておかなければならない。価値観が多様化しているということは、自分の価値観と合わないものと出会う可能性が高まるということだ。しかも、SNSが普及して以降は、それがすぐに目に入ってしまう。これを解決するためには、自分の価値観を広げるしかない。

「どこかで、『みんな同じでなければいけない』という価値観が日本人の中にはあります。しかし、今それが立ち行かなくなってきている。ただし、価値観を広げることは、自分が他人と一緒の価値観を持たなければならないということではありません。自分と他人とは違うんだ、ということを受け入れることが必要だと思います」

 要は、“人は人”、“自分は自分”ということなのだろう。根本先生の言う「自分軸」で生きられるようになることが、SNS時代には、なおさら求められてくるのだろう。

 恋愛モンスターが暴れるSNSに嫌気がさしている人も多いが、彼、彼女たちの心理を知ることで、少しは受け入れる気持ちになれるかもしれない。さもなくば、そっとフォローを外すことをお勧めする。

宮崎智之(みやざき・ともゆき)
1982年3月生まれ、東京都出身。地域紙記者、編集プロダクションなどを経て、フリーライターに。カルチャーや男女問題などについてのコラムを執筆している。幻冬舎plus+から電子書籍『あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 完全版』が発売中。Twitter:@miyazakid

『愛の不時着』をもし北朝鮮の人が見たら“大激怒”!? 中隊員が「韓国の自動販売機に驚愕シーン」があり得ないワケ

 韓国の財閥令嬢で敏腕経営者でもあるユン・セリ(ソン・イェジン)と、北朝鮮のエリート将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)の恋愛劇を描いた韓流ドラマ『愛の不時着』。Netflixで配信され、世界的なヒットになっている中、サイゾーウーマンでは、北朝鮮文化に造詣の深い北朝鮮音楽研究家・李銀河(り・うな)氏にインタビューを行い、前編では“北朝鮮ウォッチャー”視点での名場面を解説してもらった。

 後編では、「北朝鮮の人たちは、こっそり韓ドラを楽しんでいる」と語る李氏に、「実際に北朝鮮の人たちの目に『愛の不時着』はどう映るのか?」というテーマでお話を聞くことに。3月には、北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」に、「虚偽と捏造に満ちた虚しく不順極まりない反共和国(北朝鮮)映画とテレビドラマを賛美・流布させる南朝鮮(韓国)当局に驚愕している」という旨の文章が掲載され、これは『愛の不時着』を指しているのではないかという報道もあったが、果たして李氏の見解は?

(前編はこちら)

北朝鮮が激怒しそうな「市場」のシーン

――韓国が自国を舞台にしたラブストーリーを作ったということで、関心を抱く北朝鮮の人がかなりいると思うのですが、いかがでしょう。

李銀河氏(以下、李) 『愛の不時着』に限ったことではありませんが、前編でも少し触れた通り、北朝鮮の映画は思想を宣伝するためのもの。「人民は朝鮮労働党に忠実でなければいけない」「自分の任務を全うするためには、命さえ捨てなければいけない」など、教訓じみた堅い内容ばかりで、正直、退屈なんです。なので北朝鮮の人たちにとって、韓ドラ全般、刺激的で面白く映ると思います。

――「北朝鮮のドラマや映画にはキスシーンが基本的にない」とのことだったので、ラブストーリーは特にそう感じるかもしれません。

 昔、キスシーンがあった映画も存在したようなのですが、「傘で隠す」ことで、唇が触れ合っている様子は映さないなどの演出が施されていたと聞きます。ちなみに北朝鮮の恋愛はオープンなものではなく、かつ男性は女性に「処女であること」を強く求める傾向があります。その半面、女性が商売を始めようとする際など、融通を利かせるために、男性側から“枕”を求められるということも結構あるようで、女性は受け入れざるを得ない……といった話を聞いたことがあります。北朝鮮はジェンダー格差が凄まじいんですね。

――韓国の恋愛ドラマを通して見るジェンダー観も、北朝鮮の人には興味深いかもしれませんね。ほかにも、北朝鮮の人たちが注目しそうなシーンはありましたか?

 激怒しそうだなぁというシーンが結構ありましたね。まず、北朝鮮の政府関係者が怒るだろうと思ったのは、市場で韓国から取り寄せた化粧品などがこっそり売られているシーン。北朝鮮では禁制品の韓国製のものがドラマや音楽コンテンツ同様に既に出回っているそうですが、実際に流通しているように描かれるのは許し難いでしょう。また、ジョンヒョクたちを捕まえる韓国の国情院の職員たちが優しいのも、人民たちに「脱北しても向こうに行っても処罰されないんだ!」と思わせる可能性があるだけに、激怒ポイントなのでは。北朝鮮当局にとって、韓国への親しみを抱かせ脱北をそそのかすような『愛の不時着』は、確実に取り締まり対象になる作品だと思いますよ。

―― 一般の人たちが怒りそうなシーンはありますか?

 中隊員が韓国を訪れた際、クム・ウンドン(タン・ジュンサン)が自動販売機に驚き、「中に人が入っている」と勘違いするシーンがありましたが、さすがにそれは……。北朝鮮の人たちをものすごく田舎者扱いしていると感じ、ここは怒るだろうなぁと思いましたね。また中隊員が、韓国の洋服店でダメージジーンズに驚くシーンも気になりました。北朝鮮ではあまりはかないでしょうが、外国人観光客がはいているのを見たことくらいはあるだろうと(笑)。それから、中隊員は、韓国にあるカップラーメンの種類の豊富さにも感心していたものの、最近では北朝鮮でも、韓国の商品に寄せたパッケージの辛ラーメンが人気で、とうもろこしやじゃがいも、そば粉など、さまざまな麺を使ったインスタント麺も増えているので、「ちょっとやりすぎな描写だなぁ」と思いました。

――北朝鮮の人にとっては、「反北ドラマ」と映るかもしれませんが、『愛の不時着』をきっかけに、北朝鮮にいいイメージを抱くようになった海外の視聴者も多いかもしれません。現に「北朝鮮旅行に行ってみたい」という人もいます。

 北朝鮮への“観光”に関しては、ガイド役と運転手が常に一緒なので、必ずしも「行きたいところに行ける」わけではありませんが、平壌以外にも、ジョンヒョクが住む舎宅村に近い開城や、板門店、また経済特区である羅先などに足を伸ばすことができます。指導者をバカにするような言動を取ったり、監視役となるガイドの言い付けを破り、夜にホテルから抜け出したり、軍事施設や建設現場などを無断で撮影しなければ、安全に行って帰って来られます。北朝鮮は外貨を稼ぐための観光事業を重要視していますから。

 でもやっぱりドラマはドラマ。『愛の不時着』をきっかけに「北朝鮮は怖い国じゃない」とするのは、間違いだと思います。実際に私が留学や観光で知り合った北朝鮮の人々は、人情味にあふれ、温かい人たちでした。北朝鮮には北朝鮮なりのロジックがありますし、政治と一般の人々を切り離して考えることも重要です。しかし、いまだ核を放棄していないですし、自国民や日本人拉致被害者への人権侵害を数多く行っているのは事実。そのことは忘れないで、『愛の不時着』を見ていただきたいなと思います。

李銀河(り・うな)
北朝鮮音楽研究家。平壌にある金元均名称音楽大学・専門部を通信受講生として修了。民間企業に勤務する傍ら、北朝鮮に関するイベントに出演、音楽や文化を通じて北朝鮮の政治情勢や人々の暮らしを紹介している。いまの関心事は北朝鮮のエネルギー問題。趣味はサイクリングと旅行と中国茶。

『愛の不時着』北朝鮮ウォッチャーの心に響いた5大シーン! リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)のキスシーンを“北から目線”で考察

 Netflixで全世界に配信され、大ヒットとなった韓国ドラマ『愛の不時着』。韓国の財閥令嬢で敏腕経営者でもあるユン・セリ(ソン・イェジン)が、パラグライダーで飛行中に嵐に巻き込まれ、北緯38度線を越え北朝鮮に“不時着”。そこで出逢った北朝鮮のエリート将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)は、軍紀を破って、自身の中隊の隊員らとセリを匿い、彼女の帰国の手助けをすることに。そんな中、セリとジョンヒョクは恋に落ちていく――というラブストーリーだ。

 同作は、2人の恋の行方はもちろんのこと、ほかにも見どころが盛りだくさんで、中でも、劇中で描かれる北朝鮮の人たちの生活や文化に興味を抱く視聴者が多い様子。例えば、中隊のメンバーがセリに振る舞う北朝鮮の名物料理「ハマグリのガソリン焼き」には、「一度食べてみたい」といった感想が散見され、またジョンヒョクが住む開城近辺の朝鮮人民軍の舎宅村の奥様たちが、缶ビールと干し鱈で乾杯するシーンには「女子会は万国共通」といった共感も飛び交った。ほかにも、市場、美容院、飲食店、ホテルなどのシーンも注目を浴び、北朝鮮の暮らしに思いをはせる視聴者が続出したのだ。

 そんな『愛の不時着』での北朝鮮シーンについて、「韓国で制作されているため、実際とは異なる描写もありましたが、全体的には、かなり詳しく調査されていると思った」と語るのは、北朝鮮文化に造詣の深い北朝鮮音楽研究家・李銀河(り・うな)氏。彼女も同作にハマッたといい、“北朝鮮ウォッチャー視点”からも心に響いたシーンが多数あったとのこと。そこで今回、李氏に、「私がグッときた5つのポイント」を語っていただいた。

その1:リ・ジョンヒョクとユン・セリの“韓ドラ”キスシーン

ジョンヒョクが、セリを国際水域の大型船に乗せ、韓国に脱出させようとしたところ、北朝鮮の沿岸警備隊の巡視船に見つかってしまう。ジョンヒョクは、“韓流ドラマファン”の中隊員キム・ジュモク(ユ・スビン)に聞いた「韓ドラでは、男女がキスをすることで危機を脱する」という話を思い出し、セリに「驚かずに、僕だけを見て」と告げ、口づけをする

李銀河氏(以下、李) ジュモクが韓ドラの解説をして、それがストーリーの流れを作っていく展開は随所にありましたが、とても工夫されていると思いました。北朝鮮のドラマや映画は、そもそも“思想を広めるため”のもので、またおおっぴらにフリーな恋愛をすることがあまり勧められていないため、キスシーンが基本的にないんですよね。そういった背景を踏まえると、ジョンヒョクが韓ドラにならってセリにキスをしたシーンは、韓国と北朝鮮の文化がうまく対比されているように感じました。ちなみに、北朝鮮では韓国のドラマを見ることが禁止されているのですが、皆さんこっそり見て楽しんでいるようです。しかし、韓ドラを北朝鮮で販売する密売人は、見つかった場合厳しく罰せられ、ヘタすると命が危ない……ということも。

その2:列車で平壌に向かうリ・ジョンヒョク、北朝鮮ファッションが似合いすぎ!

セリの韓国帰国作戦の一環として、パスポート用の写真撮影をすべく、列車で平壌へ向かったジョンヒョクとセリ。車内ではアコーディオンを演奏しながら歌う列車販売員が登場し、乗客たちを盛り上げる。

 私が、最も「ジョンヒョクカッコいい!」と思ったのは、列車のシーンでした。というのも、彼はこのとき、朝鮮人民軍の軍人コートを着ているのですが、本当によく似合っていて(笑)。北朝鮮のファッションって、老若男女問わず、基本的に肩パットがすごいんですよ。スーツのジャケットや人民服でも、とにかく肩が強調されています。ジョンヒョクを演じるヒョンビンは、もともと肩幅が“太平洋のように広い”と言われ、かつスタイルもいいので、なおさら北朝鮮ファッションが似合っていると思いました。

 列車シーンでは、ほかにもグッときたポイントが。列車販売員たちが歌を歌っているのですが、北朝鮮の人たちって、よく職場(工場や建設現場、農場など)で、歌を歌うことにより互いを励まし合い、交流を深めながら、国家と党の思想を宣伝する文化があるんです。労働者たちを応援するために、芸術宣伝隊という歌を歌う人が来ることもあります。また、街のレストランでもウェイトレスさんが歌や楽器を演奏してショーを見せてくれることも多いです。なので、あの列車のシーンは、とてもリアリティがあると感じました。歌も実際の北朝鮮映画『我ら列車販売員』の劇中挿入歌なんです。

ジョンヒョクが暮らす舎宅村では、大佐の妻であるマ・ヨンエ(キム・ジョンナン)を中心に奥様たちが結託。一緒にキムチを漬けたり、洗濯をしたり、ヨンエの誕生日を祝ったり、はたまたセリのために飲み会を開催することも。

 舎宅村の奥様たちのシーンは、どれも大好き。飲み会のシーンも良かったですが、夫である大佐が逮捕され、ヨンエが孤立してしまったとき、奥様たちが自分たちの危険を顧みず、薪や食べ物を運んで支えるというシーンはその友情に感動しましたね。北朝鮮の人々の暮らしぶりは、海外からはわからないだけに、「ドラマで描かれたような人間臭い交流をしているのか?」と思った人もいるかもしれませんが、そこはほかの国と変わらないと思います。脱北者の方の手記を読むと「最初は冷たかったお隣さんに贈り物をしたところ、めちゃくちゃ優しくなった」なんて、非常に人間臭いエピソードもつづられているので(笑)。

 あと、北朝鮮の田舎では、ドラマで描かれたように「みんなでキムチを漬ける」ことはあるそう。朝鮮中央テレビのニュースでは、たまに「今年もキムチ漬けが始まりました」と伝えられています。あのシーンで、少尉の妻である人民班長のナ・ウォルスク(キム・ソニョン)と、少佐の妻である美容師のヤン・オクグム(チャ・チョンファ)がセリの元を訪ね、みんなでキムチを漬けることを「キムチ戦闘」と言っていましたが、北朝鮮では「田植え戦闘」とか「稲刈り戦闘」とか、何にでも「戦闘」とつけるので、実際に言っていると思いますよ。北朝鮮は食糧難の問題があるため、食物を作るのも命がけの「戦闘」なんですね。

その4:ソ・ダンがク・スンジュンに恋をしたのは「北朝鮮が男尊女卑の国」だから?

ジョンヒョクの婚約者ソ・ダン(ソ・ジヘ)は、留学先のロシアから北朝鮮に帰国。平壌でデパートを経営する母コ・ミョンウン(チャン・ヘジン)とともに、結婚話を進めるが、ジョンヒョクとセリの仲に嫉妬心をたぎらせる。そんな中、セリの元婚約者である詐欺師ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)と親密な関係になっていく。

 ダンはプライドが高くて、でも純粋で一途な面が魅力ですよね。お母さんもそうですが、“強い女性”という印象で、実際の北朝鮮女性も“強い”んですよ。ただその半面、北朝鮮は、日本以上に男尊女卑の思想が強い国なので、夫婦間においても、やはり旦那さんのほうが偉ぶっていて、最終的に奥さんは旦那さんの意向に従う傾向にあります。そんな中、女性を丁重に扱う英国紳士風の振る舞いをするスンジュンに出逢い、ダンがクラッといってしまったのはよく理解できます。男性が女性にひざまずくなんてことは、北朝鮮ではあり得ないですから。

 また、ダンについては、登場シーンの華やかなファッションにも注目が集まっていました。しかし、北朝鮮の女性はあそこまで派手な服は、持ってはいるかもしれませんが、表立っては着ないかなという印象。後半でダンは、コンサバな白のスーツを着ていましたが、あれは北朝鮮のファッションっぽいと思いましたね。

韓国に帰国したセリが、自身の天敵である少佐チョ・チョルガン(オ・マンソク)に狙われていることを知ったジョンヒョクは、韓国に密入国。そんなジョンヒョクを連れ戻すため、彼の信頼する中隊員たちと“耳野郎”こと監視盗聴室の軍人チョン・マンボク(キム・ヨンミン)は、韓国へ渡る。

 奥様たちの友情と同じく、中隊員たちの仲間意識にグッときました。初めて訪れた韓国で、ジョンヒョクを探す中、曹長のピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)が兄貴ぶり、末っ子の初級兵士クム・ウンドン(タン・ジュンサン)に優しく接するシーンが特に良かったです。無事にジョンヒョクとセリに会えたとき、あの意地っ張りなピョ・チスが安堵したような表情を見せ、セリとハグするシーンも忘れられません。

 実際問題、北朝鮮の人が韓国に渡るというのは、大きな危険を伴います。中隊員たちは軍の任務として韓国へ行っているので、北朝鮮側から処分を受けることはないかもしれませんが、韓国側からは完全にスパイとみなされます。1960年代には、北朝鮮が韓国の人を拉致する事件もあったので、韓国側はものすごく警戒しているんですね。またドラマ終盤で、中隊員たちは大韓民国国家情報院に捕まりますが、この前身組織である韓国中央情報部(KCIA)は、拷問などかなり悪どいことをやっていました。そうした国家事情を考えると、中隊員たちは韓国で、極度の緊張状態の中、互いを支え合っていたのだと思うんです。ちなみに、ドラマでは国情院の職員たちが皆さんとても優しいんですが、「あのKCIAの後継組織の職員があんなに優しいかな?」「韓国を良く見せるための演出では!?」と疑問を抱きました。

 38度線を越えることについては、もう一点。セリは、パラグライダーで嵐に巻き込まれ、うっかり38度線を越えてしまいますが、あれはその場で射殺されても誰も文句は言えない状況なんです。過去に韓国の人が、38度線に近い海岸で海水浴をしていた際、つい38度線付近の立ち入り禁止区域に入ってしまい、警告を受けてもそのまま泳ぎ続けた結果、北朝鮮側に射殺された事件が起こり、南北関係がこじれてしまったことがあります。そう考えると、セリはまさに“不時着”したのだなと感じますね。見つけたのがジョンヒョクで良かったですよ、本当に!

――後編では、李氏に「もし北朝鮮の人が『愛の不時着』を見たら……」をテーマにお話をお聞きする。

(後編につづく)

李銀河(り・うな)
北朝鮮音楽研究家。平壌にある金元均名称音楽大学・専門部を通信受講生として修了。民間企業に勤務する傍ら、北朝鮮に関するイベ ントに出演、音楽や文化を通じて北朝鮮の政治情勢や人々の暮らしを紹介している。いまの関心事は北朝鮮のエネルギー問題。趣味はサイクリングと旅行と中国茶。

『愛の不時着』北朝鮮ウォッチャーの心に響いた5大シーン! リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)のキスシーンを“北から目線”で考察

 Netflixで全世界に配信され、大ヒットとなった韓国ドラマ『愛の不時着』。韓国の財閥令嬢で敏腕経営者でもあるユン・セリ(ソン・イェジン)が、パラグライダーで飛行中に嵐に巻き込まれ、北緯38度線を越え北朝鮮に“不時着”。そこで出逢った北朝鮮のエリート将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)は、軍紀を破って、自身の中隊の隊員らとセリを匿い、彼女の帰国の手助けをすることに。そんな中、セリとジョンヒョクは恋に落ちていく――というラブストーリーだ。

 同作は、2人の恋の行方はもちろんのこと、ほかにも見どころが盛りだくさんで、中でも、劇中で描かれる北朝鮮の人たちの生活や文化に興味を抱く視聴者が多い様子。例えば、中隊のメンバーがセリに振る舞う北朝鮮の名物料理「ハマグリのガソリン焼き」には、「一度食べてみたい」といった感想が散見され、またジョンヒョクが住む開城近辺の朝鮮人民軍の舎宅村の奥様たちが、缶ビールと干し鱈で乾杯するシーンには「女子会は万国共通」といった共感も飛び交った。ほかにも、市場、美容院、飲食店、ホテルなどのシーンも注目を浴び、北朝鮮の暮らしに思いをはせる視聴者が続出したのだ。

 そんな『愛の不時着』での北朝鮮シーンについて、「韓国で制作されているため、実際とは異なる描写もありましたが、全体的には、かなり詳しく調査されていると思った」と語るのは、北朝鮮文化に造詣の深い北朝鮮音楽研究家・李銀河(り・うな)氏。彼女も同作にハマッたといい、“北朝鮮ウォッチャー視点”からも心に響いたシーンが多数あったとのこと。そこで今回、李氏に、「私がグッときた5つのポイント」を語っていただいた。

その1:リ・ジョンヒョクとユン・セリの“韓ドラ”キスシーン

ジョンヒョクが、セリを国際水域の大型船に乗せ、韓国に脱出させようとしたところ、北朝鮮の沿岸警備隊の巡視船に見つかってしまう。ジョンヒョクは、“韓流ドラマファン”の中隊員キム・ジュモク(ユ・スビン)に聞いた「韓ドラでは、男女がキスをすることで危機を脱する」という話を思い出し、セリに「驚かずに、僕だけを見て」と告げ、口づけをする

李銀河氏(以下、李) ジュモクが韓ドラの解説をして、それがストーリーの流れを作っていく展開は随所にありましたが、とても工夫されていると思いました。北朝鮮のドラマや映画は、そもそも“思想を広めるため”のもので、またおおっぴらにフリーな恋愛をすることがあまり勧められていないため、キスシーンが基本的にないんですよね。そういった背景を踏まえると、ジョンヒョクが韓ドラにならってセリにキスをしたシーンは、韓国と北朝鮮の文化がうまく対比されているように感じました。ちなみに、北朝鮮では韓国のドラマを見ることが禁止されているのですが、皆さんこっそり見て楽しんでいるようです。しかし、韓ドラを北朝鮮で販売する密売人は、見つかった場合厳しく罰せられ、ヘタすると命が危ない……ということも。

その2:列車で平壌に向かうリ・ジョンヒョク、北朝鮮ファッションが似合いすぎ!

セリの韓国帰国作戦の一環として、パスポート用の写真撮影をすべく、列車で平壌へ向かったジョンヒョクとセリ。車内ではアコーディオンを演奏しながら歌う列車販売員が登場し、乗客たちを盛り上げる。

 私が、最も「ジョンヒョクカッコいい!」と思ったのは、列車のシーンでした。というのも、彼はこのとき、朝鮮人民軍の軍人コートを着ているのですが、本当によく似合っていて(笑)。北朝鮮のファッションって、老若男女問わず、基本的に肩パットがすごいんですよ。スーツのジャケットや人民服でも、とにかく肩が強調されています。ジョンヒョクを演じるヒョンビンは、もともと肩幅が“太平洋のように広い”と言われ、かつスタイルもいいので、なおさら北朝鮮ファッションが似合っていると思いました。

 列車シーンでは、ほかにもグッときたポイントが。列車販売員たちが歌を歌っているのですが、北朝鮮の人たちって、よく職場(工場や建設現場、農場など)で、歌を歌うことにより互いを励まし合い、交流を深めながら、国家と党の思想を宣伝する文化があるんです。労働者たちを応援するために、芸術宣伝隊という歌を歌う人が来ることもあります。また、街のレストランでもウェイトレスさんが歌や楽器を演奏してショーを見せてくれることも多いです。なので、あの列車のシーンは、とてもリアリティがあると感じました。歌も実際の北朝鮮映画『我ら列車販売員』の劇中挿入歌なんです。

ジョンヒョクが暮らす舎宅村では、大佐の妻であるマ・ヨンエ(キム・ジョンナン)を中心に奥様たちが結託。一緒にキムチを漬けたり、洗濯をしたり、ヨンエの誕生日を祝ったり、はたまたセリのために飲み会を開催することも。

 舎宅村の奥様たちのシーンは、どれも大好き。飲み会のシーンも良かったですが、夫である大佐が逮捕され、ヨンエが孤立してしまったとき、奥様たちが自分たちの危険を顧みず、薪や食べ物を運んで支えるというシーンはその友情に感動しましたね。北朝鮮の人々の暮らしぶりは、海外からはわからないだけに、「ドラマで描かれたような人間臭い交流をしているのか?」と思った人もいるかもしれませんが、そこはほかの国と変わらないと思います。脱北者の方の手記を読むと「最初は冷たかったお隣さんに贈り物をしたところ、めちゃくちゃ優しくなった」なんて、非常に人間臭いエピソードもつづられているので(笑)。

 あと、北朝鮮の田舎では、ドラマで描かれたように「みんなでキムチを漬ける」ことはあるそう。朝鮮中央テレビのニュースでは、たまに「今年もキムチ漬けが始まりました」と伝えられています。あのシーンで、少尉の妻である人民班長のナ・ウォルスク(キム・ソニョン)と、少佐の妻である美容師のヤン・オクグム(チャ・チョンファ)がセリの元を訪ね、みんなでキムチを漬けることを「キムチ戦闘」と言っていましたが、北朝鮮では「田植え戦闘」とか「稲刈り戦闘」とか、何にでも「戦闘」とつけるので、実際に言っていると思いますよ。北朝鮮は食糧難の問題があるため、食物を作るのも命がけの「戦闘」なんですね。

その4:ソ・ダンがク・スンジュンに恋をしたのは「北朝鮮が男尊女卑の国」だから?

ジョンヒョクの婚約者ソ・ダン(ソ・ジヘ)は、留学先のロシアから北朝鮮に帰国。平壌でデパートを経営する母コ・ミョンウン(チャン・ヘジン)とともに、結婚話を進めるが、ジョンヒョクとセリの仲に嫉妬心をたぎらせる。そんな中、セリの元婚約者である詐欺師ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)と親密な関係になっていく。

 ダンはプライドが高くて、でも純粋で一途な面が魅力ですよね。お母さんもそうですが、“強い女性”という印象で、実際の北朝鮮女性も“強い”んですよ。ただその半面、北朝鮮は、日本以上に男尊女卑の思想が強い国なので、夫婦間においても、やはり旦那さんのほうが偉ぶっていて、最終的に奥さんは旦那さんの意向に従う傾向にあります。そんな中、女性を丁重に扱う英国紳士風の振る舞いをするスンジュンに出逢い、ダンがクラッといってしまったのはよく理解できます。男性が女性にひざまずくなんてことは、北朝鮮ではあり得ないですから。

 また、ダンについては、登場シーンの華やかなファッションにも注目が集まっていました。しかし、北朝鮮の女性はあそこまで派手な服は、持ってはいるかもしれませんが、表立っては着ないかなという印象。後半でダンは、コンサバな白のスーツを着ていましたが、あれは北朝鮮のファッションっぽいと思いましたね。

韓国に帰国したセリが、自身の天敵である少佐チョ・チョルガン(オ・マンソク)に狙われていることを知ったジョンヒョクは、韓国に密入国。そんなジョンヒョクを連れ戻すため、彼の信頼する中隊員たちと“耳野郎”こと監視盗聴室の軍人チョン・マンボク(キム・ヨンミン)は、韓国へ渡る。

 奥様たちの友情と同じく、中隊員たちの仲間意識にグッときました。初めて訪れた韓国で、ジョンヒョクを探す中、曹長のピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)が兄貴ぶり、末っ子の初級兵士クム・ウンドン(タン・ジュンサン)に優しく接するシーンが特に良かったです。無事にジョンヒョクとセリに会えたとき、あの意地っ張りなピョ・チスが安堵したような表情を見せ、セリとハグするシーンも忘れられません。

 実際問題、北朝鮮の人が韓国に渡るというのは、大きな危険を伴います。中隊員たちは軍の任務として韓国へ行っているので、北朝鮮側から処分を受けることはないかもしれませんが、韓国側からは完全にスパイとみなされます。1960年代には、北朝鮮が韓国の人を拉致する事件もあったので、韓国側はものすごく警戒しているんですね。またドラマ終盤で、中隊員たちは大韓民国国家情報院に捕まりますが、この前身組織である韓国中央情報部(KCIA)は、拷問などかなり悪どいことをやっていました。そうした国家事情を考えると、中隊員たちは韓国で、極度の緊張状態の中、互いを支え合っていたのだと思うんです。ちなみに、ドラマでは国情院の職員たちが皆さんとても優しいんですが、「あのKCIAの後継組織の職員があんなに優しいかな?」「韓国を良く見せるための演出では!?」と疑問を抱きました。

 38度線を越えることについては、もう一点。セリは、パラグライダーで嵐に巻き込まれ、うっかり38度線を越えてしまいますが、あれはその場で射殺されても誰も文句は言えない状況なんです。過去に韓国の人が、38度線に近い海岸で海水浴をしていた際、つい38度線付近の立ち入り禁止区域に入ってしまい、警告を受けてもそのまま泳ぎ続けた結果、北朝鮮側に射殺された事件が起こり、南北関係がこじれてしまったことがあります。そう考えると、セリはまさに“不時着”したのだなと感じますね。見つけたのがジョンヒョクで良かったですよ、本当に!

――後編では、李氏に「もし北朝鮮の人が『愛の不時着』を見たら……」をテーマにお話をお聞きする。

(後編につづく)

李銀河(り・うな)
北朝鮮音楽研究家。平壌にある金元均名称音楽大学・専門部を通信受講生として修了。民間企業に勤務する傍ら、北朝鮮に関するイベ ントに出演、音楽や文化を通じて北朝鮮の政治情勢や人々の暮らしを紹介している。いまの関心事は北朝鮮のエネルギー問題。趣味はサイクリングと旅行と中国茶。

木下優樹菜、不倫疑惑で「ヤンキーは一途説」をぶち壊し!? 伝説のレディース総長が語る「ヤンチャ少女のセックス観」

 昨年、都内タピオカドリンクてんのオーナー夫妻とトラブルを起こし、芸能活動を休止していた木下優樹菜が、7月1日に活動再開を宣言するも、わずか5日後の同6日に、と突然、引退を発表した。この背景には、木下の不倫問題があったとする疑惑が浮上。そのお相手については「大手事務所に所属する男性グループの30代メンバー」などと報じられており、現在ネット上では、候補者の名前が飛び交っている状況だ。さらには、「不倫相手は一人ではない」とするウワサもささやかれており、木下への批判も日に日に強まっている。

 一方、ネット上では、木下が「夫に一途」ではなかった点に驚く声も少なくない。というのも、「ヤンキー」「ギャル」と呼ばれる女性は、見た目の派手さとは裏腹に、恋愛に対しては至極真面目で、一度好きになった相手には一途だとする説が存在するからだ。

 実際に、昨今テレビに引っ張りだこのギャルタレント・みちょぱは、プレゼンバラエティ『俺の持論』(テレビ朝日系)で、相手を一途に思い、浮気は絶対にせず、尽くすタイプだと解説していたこともある。しかし、これまで「ヤンキー」「ギャル」と言われてきた木下が、もし本当に複数人と不倫関係にあったとすれば、この説も怪しいものだろう。

 そんな、「ヤンキー」「ギャル」の恋愛観について、サイゾーウーマンは過去に取材を行っている。90年代レディース文化のアイコンだった紫優嬢四代目総長・中村すえこ氏に、ヤンチャ少女の恋愛観・セックス観の変遷を語ってもらった。すえこ氏が「昔は、たくさんの男の人とセックスしていることが周りにバレると、自分が『下』に見られてしまう恐れがありました」と語るワケとは。この機会に、ぜひご一読いただきたい。
(編集部)


(初出:2014年5月11日)

90年代伝説のレディース総長が読み解く、『ヤカラブ』の現代ヤンキー少女の恋とセックス

 「男一瞬、ダチ一生」でおなじみ、悪羅悪羅系ギャル誌「SOUL SISTER」(ミリオン出版)。昨年惜しまれつつ休刊となった同誌で、人気を博していた読者モデルたちの恋愛体験談が小説としてまとまり、この度『ヤカラブ』として発売された。「彼氏と入れたイレズミ」「14歳の不倫」「クラブでの男狩り」「暴走族との恋」など、“現代のヤンキー少女”のリアルな恋愛は、大反響を呼んでいるという。そこで今回、90年代レディース文化のアイコンだった紫優嬢四代目総長・中村すえこ氏を迎え、現代のヤンチャ少女たちの恋愛観、セックス観が当時からどのように変化していったのかを語ってもらった。

――率直に、『ヤカラブ』に描かれている、“現代のヤンキー少女”たちをどう思いましたか?

中村すえこ氏(以下、中村) 私たちの時代とは、20年くらいの差があると思うのですが、「男の名前を体に彫る」とかは、同じようにやってたことだなぁと思いました。それから、まだシンナー吸ってるんだって、びっくりしましたね(笑)。てっきり今のヤンキー少女は、もっと違うことをしてると思っていたので。シンナーとかタバコとか根性焼きとかをする前に、すぐクスリにいっちゃうようなイメージもありましたね。どっちがよくて、どっちが悪くてという話ではないですけどね。

 あと、彼女たちは浮気したりなど、男性関係が結構激しいんだけど、実は誰か1人の男の人を一途に思っているというのは共感できました。ただ昔は、たくさんの男の人とセックスしていることが周りにバレると、自分が「下」に見られてしまう恐れがありましたね。この本の中ではそういう価値観はないですよね。小説の元になった女の子には、百人斬りを公言している子もいるし。当時は、遊んでいたとしても、決してそういうことは公言しなかったので。

――それは、ヤリマン扱いされるから?

中村 変な話、私たちの周りには、3日ごとに彼氏を替えても、ちゃんと「付き合ってからセックス」しているならいいという価値観があったんです。付き合ってもいないのにセックスをしている子は「ヤリマン」っていう。そのけじめがきちんとつけられていないと、バカにされちゃうんですよ。私たちはとにかく「硬派でいることがカッコイイ」とされてましたから。愛する男も1人っていうのがカッコイイ。

――すえこさんの自伝『紫の青春』(ミリオン出版)を読むと、確かにレディースはルールや規則が厳しいですよね。

中村 そうですね。目標というか、自分が今進んでいる道というものが明確にあったので。例えば、レディースとして全国制覇するといった、笑っちゃうような目標ですけど。だけど今の子たちの方が、いろいろなことに迷って、悩みながら進んでいるように感じる。目標とか目的が見えない。

 一方で、たくさんの選択肢があって、すごく自由でうらやましいとも思う。私は好きで紫優嬢をやっていたけど、地元でもし目立つことをしたいのならば「レディースに入らないとできなかった」っていうのもあったから。今は自由ですよね。男関係も口に出して言えるし。私なんて、今でも過去は隠したいですよ(笑)。

――『ヤカラブ』の男性像についてはどうですか?

中村 ここに出てくる男は「勝手な男」だと思う! でも、女の子は相手に一途で、その付き合いがいい終わり方をしなくても、男のことを悪く言わないですよね。いい思い出として終わらせているなと感じました。私も一途ではあったけど、そんな男だったら、別れた後に追い込みかけてたかも(笑)。

いわゆるヤンキーの子たちが、相手に一途になってしまうのは、早い年齢で恋をするからでしょうね。自分が何者かもわからない状態で。自分のこともどうにかできない幼い自分が、相手をどうにかなんて絶対できないんだけど、とにかくどうにかしたいんです。もうそれだけですね。

――すえこさんも「13歳で同棲した」と書かれていましたが、『ヤカラブ』の子たちも、かなり早い段階で同棲しています。

中村 この本には「居場所がなかった」「彼と過ごす時間が全て」と書いてありますけど、すごくよくわかります。私も家に両親がいなくて1人の時間が多かったし、そういう寂しい時間を一緒に過ごせて、しかもそれが好きな相手だったら、彼が全てになっちゃうなって。私は今、非行に走ってしまった子どもたちと関わっているんですけど、やっぱり大人からの絶対的な愛が足りない。そういうのもあって、男に対しての愛情の表し方がわからないんですよ。

――今も昔も不良少女たちは、なぜ不良や暴走族といった「強い男」「危険な男」に惹かれるのでしょうか?

中村 本能だと思います。より多く狩りができそうな男を求めるというね。ヤンキー少女は、今も昔も、基本あまり考えてないで本能で動いているから。

 それから、ヤンキーには尽くす女が多いんですよ。「私がどうにかしてあげなきゃいけない」という「ナイチンゲール症候群」の女だからこそ、そういう男に惹かれてしまうのかも。『ヤカラブ』にもいましたよね。DVの男に苦しめられながらも「この人は、私がいないとダメなんだ」って思い込んでいる子が。母性本能が強いのかもしれませんね。

――なぜ、母性本能が強くなるんでしょうか?

中村 親や周りの人から愛されてこなかった子が「自分はこうされたかった」というのを、男にしてしまうというのはあると思います。別にその男が「助けてくれ」って言ってるわけじゃないのに、先回りして助けようとしちゃう。結局それで、男をダメにしちゃうんですけどね。

――すえこさんは紫優嬢に入ってから、男性に対する意識の変化はありましたか?

中村 今思えば、当時は「男に負けたくない」という気持ちが強かったかもしれません。なかなか女だけで走るのが難しかった時代だから、結局男を頼らないといけないんだけど、でも全部おんぶに抱っこじゃなくて、自分たちができることはしたかったし、男性のチームからも認めてほしかった。男とただ一緒にいるだけより、紫優嬢の活動の方がアドレナリンが出ていたのは確かです。『ヤカラブ』の子たちは、ヤンキー少女だけど「男に負けたくない」という感情はないですよね。彼女たちは、そういう「女は男より弱い存在」「だから男に認められたい」という価値観からも、もう自由なんじゃないですか。もしくは人にあんまり干渉しないのか。

 ただ……当時も、暴走族の男の先輩で、レディースの子を彼女にしてる人はいなかったですね。嫌だったみたいですよ、自分の女がグレてるっていうのが(笑)。先生に目をつけられてる女の子くらいが、ちょうどよかったみたい。

――『ヤカラブ』に出てくるのは、アイドル事務所に入っているとか、109のショップ店員とか、比較的モテる・容姿に自信がある目立つタイプの女の子ですよね。レディースの中でも「モテてる女がエライ」という風潮はありましたか?

中村 私たちはとにかく仲間意識が強くて、同時に、はじかれるのがイヤだったので、「誰か1人が目立ったりモテたりしたら、周りはいい気がしないだろう」という意識が強かったですね。女同士の中で「モテる・モテない」があると気まずいでしょう。まぁでも、きっと心の中ではあったと思いますよ。「この女には負けてねぇだろ」とかは。それより、私たちの時代と決定的に違うなと驚いたのは、10代の女の子が「セックスが気持ちいい」と言っていることですよ。


――すえこさん自身は、そう感じたことはなかった?

中村 よく当時の友達とも話をするんですが、私たちの時代って「男がイクためのセックス」ばっかりで、多分、自分にとって気持ちのいいセックスはできてなかったんだなぁと思います。セックスに関しては「自分より、男」だったのかもしれない。

 もちろんそこには、「男がそういうセックスしかしてこなかった」というのと、私もそれしか知らなかったというのもあると思います。相手が好きだから、相手がセックスして満足するのであれば、たとえ自分が満足できなくても、それはそれでうれしかったんです。でもやっぱり、『ヤカラブ』の子のように、セックスを「気持ちいいもの」として楽しむという感覚はありませんでした。

――『ヤカラブ』の少女たちには、誰よりも早く処女を捨てること、たくさんの男性とセックスをすること、そしてセックスを楽しむことに価値があるのかもしれませんね。

中村 確かに初めてセックスした後は、私も「これで自分も大人になったのか」とは思いました。だけど、ほかの子より「前に出る」って感覚ではなかったですね。セックスすることで周りと同じラインに立った感じ。

――すえこさんにとって「一歩進んでいること」とは何だったのでしょうか?

中村 『ヤカラブ』の子たちは、みんな彼のバイクの後ろに乗るんですよね。だけど私は後ろじゃなくて自分で運転したかったんですよ。やっぱり自分で運転するのと、後ろに乗るのとでは見える景色は違うから。多分それが、私の「誰よりも先に一歩進みたい」っていうやつだったのかも。『ヤカラブ』の彼女たちが誰よりも先に進むために、セックスをしたり、可愛くオシャレであろうとするように。私にとっては、それが最高にオシャレなことだったんですよ。そういう意味では、「誰よりも先に一歩進みたい」というのは、今も昔も、ヤンキー少女の変わらないところかもしれませんね。
(取材・文/西澤千央)

中村すえこ(なかむら・すえこ)
1975年埼玉県生まれ。13歳でレディース紫優嬢に入り、15歳で四代目総長に。テレビや雑誌に取り上げられ、ヤンキーのカリスマとして圧倒的な人気を誇る。現在は、少年院などを慰問しながら、非行少年少女たちの更生に力を入れている。四児の母。著書に『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(ミリオン出版)がある。

『ヤカラブ』 鈴木有李著
「SOUL SISTER」(ミリオン出版)連載当時から、大反響を巻き起こしていた“現代ヤンキー少女”の恋愛ストーリーをまとめた1冊。「彼氏と入れたイレズミ」「14歳の不倫」「クラブでの男狩り」「暴走族との恋」といった、彼女たちのリアルな物語には、全国の女子高生を中心に感動の声が多く寄せられている。

木下優樹菜、不倫疑惑で「ヤンキーは一途説」をぶち壊し!? 伝説のレディース総長が語る「ヤンチャ少女のセックス観」

 昨年、都内タピオカドリンクてんのオーナー夫妻とトラブルを起こし、芸能活動を休止していた木下優樹菜が、7月1日に活動再開を宣言するも、わずか5日後の同6日に、と突然、引退を発表した。この背景には、木下の不倫問題があったとする疑惑が浮上。そのお相手については「大手事務所に所属する男性グループの30代メンバー」などと報じられており、現在ネット上では、候補者の名前が飛び交っている状況だ。さらには、「不倫相手は一人ではない」とするウワサもささやかれており、木下への批判も日に日に強まっている。

 一方、ネット上では、木下が「夫に一途」ではなかった点に驚く声も少なくない。というのも、「ヤンキー」「ギャル」と呼ばれる女性は、見た目の派手さとは裏腹に、恋愛に対しては至極真面目で、一度好きになった相手には一途だとする説が存在するからだ。

 実際に、昨今テレビに引っ張りだこのギャルタレント・みちょぱは、プレゼンバラエティ『俺の持論』(テレビ朝日系)で、相手を一途に思い、浮気は絶対にせず、尽くすタイプだと解説していたこともある。しかし、これまで「ヤンキー」「ギャル」と言われてきた木下が、もし本当に複数人と不倫関係にあったとすれば、この説も怪しいものだろう。

 そんな、「ヤンキー」「ギャル」の恋愛観について、サイゾーウーマンは過去に取材を行っている。90年代レディース文化のアイコンだった紫優嬢四代目総長・中村すえこ氏に、ヤンチャ少女の恋愛観・セックス観の変遷を語ってもらった。すえこ氏が「昔は、たくさんの男の人とセックスしていることが周りにバレると、自分が『下』に見られてしまう恐れがありました」と語るワケとは。この機会に、ぜひご一読いただきたい。
(編集部)


(初出:2014年5月11日)

90年代伝説のレディース総長が読み解く、『ヤカラブ』の現代ヤンキー少女の恋とセックス

 「男一瞬、ダチ一生」でおなじみ、悪羅悪羅系ギャル誌「SOUL SISTER」(ミリオン出版)。昨年惜しまれつつ休刊となった同誌で、人気を博していた読者モデルたちの恋愛体験談が小説としてまとまり、この度『ヤカラブ』として発売された。「彼氏と入れたイレズミ」「14歳の不倫」「クラブでの男狩り」「暴走族との恋」など、“現代のヤンキー少女”のリアルな恋愛は、大反響を呼んでいるという。そこで今回、90年代レディース文化のアイコンだった紫優嬢四代目総長・中村すえこ氏を迎え、現代のヤンチャ少女たちの恋愛観、セックス観が当時からどのように変化していったのかを語ってもらった。

――率直に、『ヤカラブ』に描かれている、“現代のヤンキー少女”たちをどう思いましたか?

中村すえこ氏(以下、中村) 私たちの時代とは、20年くらいの差があると思うのですが、「男の名前を体に彫る」とかは、同じようにやってたことだなぁと思いました。それから、まだシンナー吸ってるんだって、びっくりしましたね(笑)。てっきり今のヤンキー少女は、もっと違うことをしてると思っていたので。シンナーとかタバコとか根性焼きとかをする前に、すぐクスリにいっちゃうようなイメージもありましたね。どっちがよくて、どっちが悪くてという話ではないですけどね。

 あと、彼女たちは浮気したりなど、男性関係が結構激しいんだけど、実は誰か1人の男の人を一途に思っているというのは共感できました。ただ昔は、たくさんの男の人とセックスしていることが周りにバレると、自分が「下」に見られてしまう恐れがありましたね。この本の中ではそういう価値観はないですよね。小説の元になった女の子には、百人斬りを公言している子もいるし。当時は、遊んでいたとしても、決してそういうことは公言しなかったので。

――それは、ヤリマン扱いされるから?

中村 変な話、私たちの周りには、3日ごとに彼氏を替えても、ちゃんと「付き合ってからセックス」しているならいいという価値観があったんです。付き合ってもいないのにセックスをしている子は「ヤリマン」っていう。そのけじめがきちんとつけられていないと、バカにされちゃうんですよ。私たちはとにかく「硬派でいることがカッコイイ」とされてましたから。愛する男も1人っていうのがカッコイイ。

――すえこさんの自伝『紫の青春』(ミリオン出版)を読むと、確かにレディースはルールや規則が厳しいですよね。

中村 そうですね。目標というか、自分が今進んでいる道というものが明確にあったので。例えば、レディースとして全国制覇するといった、笑っちゃうような目標ですけど。だけど今の子たちの方が、いろいろなことに迷って、悩みながら進んでいるように感じる。目標とか目的が見えない。

 一方で、たくさんの選択肢があって、すごく自由でうらやましいとも思う。私は好きで紫優嬢をやっていたけど、地元でもし目立つことをしたいのならば「レディースに入らないとできなかった」っていうのもあったから。今は自由ですよね。男関係も口に出して言えるし。私なんて、今でも過去は隠したいですよ(笑)。

――『ヤカラブ』の男性像についてはどうですか?

中村 ここに出てくる男は「勝手な男」だと思う! でも、女の子は相手に一途で、その付き合いがいい終わり方をしなくても、男のことを悪く言わないですよね。いい思い出として終わらせているなと感じました。私も一途ではあったけど、そんな男だったら、別れた後に追い込みかけてたかも(笑)。

いわゆるヤンキーの子たちが、相手に一途になってしまうのは、早い年齢で恋をするからでしょうね。自分が何者かもわからない状態で。自分のこともどうにかできない幼い自分が、相手をどうにかなんて絶対できないんだけど、とにかくどうにかしたいんです。もうそれだけですね。

――すえこさんも「13歳で同棲した」と書かれていましたが、『ヤカラブ』の子たちも、かなり早い段階で同棲しています。

中村 この本には「居場所がなかった」「彼と過ごす時間が全て」と書いてありますけど、すごくよくわかります。私も家に両親がいなくて1人の時間が多かったし、そういう寂しい時間を一緒に過ごせて、しかもそれが好きな相手だったら、彼が全てになっちゃうなって。私は今、非行に走ってしまった子どもたちと関わっているんですけど、やっぱり大人からの絶対的な愛が足りない。そういうのもあって、男に対しての愛情の表し方がわからないんですよ。

――今も昔も不良少女たちは、なぜ不良や暴走族といった「強い男」「危険な男」に惹かれるのでしょうか?

中村 本能だと思います。より多く狩りができそうな男を求めるというね。ヤンキー少女は、今も昔も、基本あまり考えてないで本能で動いているから。

 それから、ヤンキーには尽くす女が多いんですよ。「私がどうにかしてあげなきゃいけない」という「ナイチンゲール症候群」の女だからこそ、そういう男に惹かれてしまうのかも。『ヤカラブ』にもいましたよね。DVの男に苦しめられながらも「この人は、私がいないとダメなんだ」って思い込んでいる子が。母性本能が強いのかもしれませんね。

――なぜ、母性本能が強くなるんでしょうか?

中村 親や周りの人から愛されてこなかった子が「自分はこうされたかった」というのを、男にしてしまうというのはあると思います。別にその男が「助けてくれ」って言ってるわけじゃないのに、先回りして助けようとしちゃう。結局それで、男をダメにしちゃうんですけどね。

――すえこさんは紫優嬢に入ってから、男性に対する意識の変化はありましたか?

中村 今思えば、当時は「男に負けたくない」という気持ちが強かったかもしれません。なかなか女だけで走るのが難しかった時代だから、結局男を頼らないといけないんだけど、でも全部おんぶに抱っこじゃなくて、自分たちができることはしたかったし、男性のチームからも認めてほしかった。男とただ一緒にいるだけより、紫優嬢の活動の方がアドレナリンが出ていたのは確かです。『ヤカラブ』の子たちは、ヤンキー少女だけど「男に負けたくない」という感情はないですよね。彼女たちは、そういう「女は男より弱い存在」「だから男に認められたい」という価値観からも、もう自由なんじゃないですか。もしくは人にあんまり干渉しないのか。

 ただ……当時も、暴走族の男の先輩で、レディースの子を彼女にしてる人はいなかったですね。嫌だったみたいですよ、自分の女がグレてるっていうのが(笑)。先生に目をつけられてる女の子くらいが、ちょうどよかったみたい。

――『ヤカラブ』に出てくるのは、アイドル事務所に入っているとか、109のショップ店員とか、比較的モテる・容姿に自信がある目立つタイプの女の子ですよね。レディースの中でも「モテてる女がエライ」という風潮はありましたか?

中村 私たちはとにかく仲間意識が強くて、同時に、はじかれるのがイヤだったので、「誰か1人が目立ったりモテたりしたら、周りはいい気がしないだろう」という意識が強かったですね。女同士の中で「モテる・モテない」があると気まずいでしょう。まぁでも、きっと心の中ではあったと思いますよ。「この女には負けてねぇだろ」とかは。それより、私たちの時代と決定的に違うなと驚いたのは、10代の女の子が「セックスが気持ちいい」と言っていることですよ。


――すえこさん自身は、そう感じたことはなかった?

中村 よく当時の友達とも話をするんですが、私たちの時代って「男がイクためのセックス」ばっかりで、多分、自分にとって気持ちのいいセックスはできてなかったんだなぁと思います。セックスに関しては「自分より、男」だったのかもしれない。

 もちろんそこには、「男がそういうセックスしかしてこなかった」というのと、私もそれしか知らなかったというのもあると思います。相手が好きだから、相手がセックスして満足するのであれば、たとえ自分が満足できなくても、それはそれでうれしかったんです。でもやっぱり、『ヤカラブ』の子のように、セックスを「気持ちいいもの」として楽しむという感覚はありませんでした。

――『ヤカラブ』の少女たちには、誰よりも早く処女を捨てること、たくさんの男性とセックスをすること、そしてセックスを楽しむことに価値があるのかもしれませんね。

中村 確かに初めてセックスした後は、私も「これで自分も大人になったのか」とは思いました。だけど、ほかの子より「前に出る」って感覚ではなかったですね。セックスすることで周りと同じラインに立った感じ。

――すえこさんにとって「一歩進んでいること」とは何だったのでしょうか?

中村 『ヤカラブ』の子たちは、みんな彼のバイクの後ろに乗るんですよね。だけど私は後ろじゃなくて自分で運転したかったんですよ。やっぱり自分で運転するのと、後ろに乗るのとでは見える景色は違うから。多分それが、私の「誰よりも先に一歩進みたい」っていうやつだったのかも。『ヤカラブ』の彼女たちが誰よりも先に進むために、セックスをしたり、可愛くオシャレであろうとするように。私にとっては、それが最高にオシャレなことだったんですよ。そういう意味では、「誰よりも先に一歩進みたい」というのは、今も昔も、ヤンキー少女の変わらないところかもしれませんね。
(取材・文/西澤千央)

中村すえこ(なかむら・すえこ)
1975年埼玉県生まれ。13歳でレディース紫優嬢に入り、15歳で四代目総長に。テレビや雑誌に取り上げられ、ヤンキーのカリスマとして圧倒的な人気を誇る。現在は、少年院などを慰問しながら、非行少年少女たちの更生に力を入れている。四児の母。著書に『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(ミリオン出版)がある。

『ヤカラブ』 鈴木有李著
「SOUL SISTER」(ミリオン出版)連載当時から、大反響を巻き起こしていた“現代ヤンキー少女”の恋愛ストーリーをまとめた1冊。「彼氏と入れたイレズミ」「14歳の不倫」「クラブでの男狩り」「暴走族との恋」といった、彼女たちのリアルな物語には、全国の女子高生を中心に感動の声が多く寄せられている。

坂上忍はなぜ「高圧的で暴言を吐く」のか? 『バイキング』3時間拡大に反対続出……嫌われる「怒りっぽいオジサン」の正体

 坂上忍がMCを務める昼の情報番組『バイキング』(フジテレビ系)が10月より、現在の2時間枠から3時間枠に拡大されることなったという。しかし、ネット上には歓迎ムードはほとんどなく、「フジテレビの判断はあり得ない」「本当は打ち切ってほしいくらいなのに」などと反対の声が噴出している。

 なぜ『バイキング』はこれほどまで、忌み嫌われてしまったのだろう。ネット上の声を見ていくと、MC・坂上の不人気ぶりがその原因と考えられる。「高圧的な態度で、共演者を萎縮させている」「すぐ感情的になる」「言葉がキツすぎて不快。もはや暴言」「他人の意見に聞く耳を貸さず、自分の意見を押し付けようとする」などなど、坂上の言動には苦言がわんさか出てくるような状態なのだ。

 しかし、坂上のような「オジサン」は、決して稀な存在ではないのではないか。職場や親戚、近隣住人など、身の回りにも「怒りっぽいオジサン」がいるという人は少なくないはず。実はサイゾーウーマンでは以前、そんな「オジサン」の謎を、ホルモンという観点から考えるべき、『男性機能の「真実」』(ブックマン社)の著者である泌尿器科・永井敦医師にインタビューを行っていた。永井医師が指摘する「男性更年期」とは何か……坂上はじめ、周りの「怒りっぽいオジサン」に、「なぜ冷静になれないの?」と疑問を抱いている人に、ぜひ一読してもらいたい。
(編集部)


(初出:2017年8月29日)

梅沢富美男や坂上忍が怒る理由ーー泌尿器科医が語る「オジサン」とホルモンの関係

 女性が男性を罵倒する――自身の秘書(現在は退職)を罵りまくるパワハラ音声で一躍“時の人”となった衆議院議員の豊田真由子氏だが、このニュースがこれだけ注目されたのは、豊田氏が女性だからではないだろうか? これが男性、特に年配の男性であれば、ひどいと思いこそすれ、「意外」と感じる人は少ないだろう。

 メディアでは、「怒れるオジサン」が目立っている。ここでいうオジサンとは単に年齢を重ねた男性ではなく、なぜかいつも不機嫌で、狭量かつ尊大、人の意見に耳を貸さず、総じて怒りっぽい男性を指す。

 かつては中尾彬がその代表格だったが、いまなら梅沢富美男といったところか。今年7月に『あさイチ』(NHK)に出演した際は、「怒る役割を求められているから、そう演じている」といった内容の発言があったが、演技だったとしても、いつも何かしら怒っているオジサン像に、私たちは特に違和感を抱かない。そこにセクハラ、パワハラ、ヘイト、セカンドレイプ的な発言があっても、どこかで「まあ、オジサンだから」と思ってしまうこともある。司会を務める『バイキング』(フジテレビ系)での暴言がたびたび取り上げられる坂上忍も現在50歳、十分オジサンだろう。

 芸能界だけでなく、政治家、SNS、ニュースサイトのコメント欄、そして職場や家族など身近なところ……オジサンは至るところに出没するが、年を取ったら人間が円くなるというのは、ウソなのだろうか……?

■“オジサン”化の原因は、男性ホルモンの減少!?

「もちろん年を取るごとに度量が大きく、穏やかになる男性も多いのですが、確かにだんだん気難しくなる男性も少なくないですね。これは泌尿器科的観点から男性ホルモンであるテストステロンに注目してみると、ある程度の答えが出ます」

 そう話してくれたのは、泌尿器科の永井敦医師。6月に『男性機能の「真実」』(ブックマン社)を上梓した、男性機能と男性ホルモンのエキスパートだ。

「『男性更年期』という言葉を聞いたことがありますか? 私たちは“加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群”といいますが、早い人で40代、平均50歳前後から徐々に男性ホルモンの一種、テストステロンが減少するために起きるものです。筋力低下、骨粗しょう症、認知機能低下、メタボリック症候群、そして性機能障害など健康状態を悪化させるだけでなく、元気がなくなる、仕事への意欲が低下する、涙もろくなる、どん底にいる感じがする……などといった影響が出ます。人によっては、イライラして当たり散らしたり、些細なことにすぐ腹を立てたり、逆に神経質になって、いつもソワソワしてしまったり、といった症状が出ることもあります。日本人男性の600万人が、このLOH症候群に悩んでいるともいわれています」

 永井医師は、前近代の中国で後宮に仕えていた宦官(かんがん)を例に挙げる。彼らは宮廷の女性らと常に接するため、間違いが起きないよう、あらかじめ精巣を摘出されていた。

「そうするとテストステロンが分泌されないので性欲は感じないし、見た目も多少女性っぽくなるのですが、出世欲や権力欲がどんどん加速して、最後にはその影響で王朝が滅ぶに至ったこともあるそうです。テストステロン値は一般的に闘争心や野心との関連が深いといわれますが、これがないことで、かえって逆に権力にしがみつくようになり、相手を蹴落とし、傲慢になる者もいたのかもしれません」

 女性の更年期では、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するのと比べて、男性のテストステロン減少のスピードは緩やか。本人も更年期のせいだとは気づかないままいつも怒っているとなると、しんどいのではないか。もちろん、それによってとばっちりを受ける周囲にとっても困りものだが……。

「実は私自身は、LOH症候群で気難しくなるタイプの男性に、あんまりお目にかかったことがないんですよ。このタイプは家庭で妻から無視されがちなので、その症状に自分も周囲も気づかずじまいで、なかなか泌尿器科医で診てもらうことにならないようです」

 生きづらくなっている男性ほど治療につながらないとは皮肉な話だが、実際に泌尿器科では、LOH症候群の男性にどんな治療を行うのだろう?

「主に、男性ホルモン補充療法ですね。活力を補給する手段として、私たちは非常に重視しています。それから、勃起障害の治療薬を使うことも……」

 勃起障害の薬と、オジサンの怒りっぽさに関係が!?

「ええ、ありますよ。LOH症候群の症状として性機能障害が出ることがありますが、治療や生活習慣の改善によって、勃起・射精が復活すれば、それだけで男性としての自信が回復します。その自信が脳を活性化させ、テストステロンを増やすホルモンを放出させ、結果的にテストステロン値が高まるという、いい循環を生みます」

■挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事

 では、そうしたオジサンと女性との関係はどうだろう? 永井医師は、著書の中で「カップルで長生きしよう」と提唱し、そのためには熟年になってもセックスを楽しむことが大事として、「セックスを楽しむ10カ条」を挙げている。

・言葉を大切にする
・ゼリーを使う
・アダルトグッズを使う
・五感を駆使する
・時にはホテルを使う
・ED治療薬を使う
・下半身にいいサプリを飲む
・週2を維持する
・挿入にこだわらない
・手や口すべてを使って愛撫する

 男女ともに、若いころと違って体が思うようにいかない部分は、薬やサプリ、アダルトグッズやゼリーをうまく取り入れれば補える。男性機能の回復も大事だがそれでも勃たなくなる日はいつかくる、女性も次第に「物理的に受け入れにくく」なる。そのためにも「挿入にこだわらない」「手や口すべてを使って愛撫する」セックスを楽しめるようになっておきたい。

「性機能に卒業はありませんし、これを高めることはアンチエイジングにもつながります。でも一方で、挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事にしていかなければならないのが熟年期です。寝室を別にするのは危険。セックスしなくてもいいから、お互いの肌に触れてほしいですね。朝起きたときお尻をなでたり、台所ですれ違うとき胸にタッチしたり……と日常の中でこまめに触れ合うカップルは、すてきなシニアライフを過ごせるでしょう」

 触れ合いも語り合いも、男性のテストステロンが下がるに任せ、怒りっぽく狭量になってはかなわないだろう。それ以前に、ひとつ屋根の下で暮らすのも苦痛になるかもしれない。日本人の健康寿命は伸びている。長いシニアライフをパートナーと、ときにセックスもしながら過ごすためには、パートナーにLOH症候群の兆候が見られたら、女性の側からも治療を勧めてほしい。

「まずは病院に来ていただき、焦らず、怒らず、落ち込まずに治療を続ければ、穏やかで朗らかなシニアライフを夫婦ふたりで送れますよ」

 そう語る永井医師自身が、理想的なシニアライフを体現しているような男性だ。もちろん気難しいオジサンが多い裏には、ジェンダーギャップなど社会的要因もあるだろう。しかし医学的に解決できる問題も多いのであれば、まずはLOH症候群であることを認識し、治療につなげていくほうがオジサンにとっても、その周囲にとっても幸せなのである。
(三浦ゆえ)

本田翼、YouTubeチャンネル登録者数206万人突破! 成功の秘訣は「独りよがりにならない」「でも楽しむ」のバランス感覚

「物事が“ヘタ”なとき、そこにはパターンや規則があるのではないか? そのパターンを知ればウマくなる手助けになるのではないか?」

 この仮説のもと、当連載「ヘタの研究」ではさまざまな物事の「ウマい、ヘタとは何なのか?」をその道の専門家に伺っている。

 今回のテーマは「YouTube」。皆に見られる動画は、ほかと比べて何が違うのか? 前編から『フツーの人がYouTube登録者数1万人を突破する秘訣 ~ビジネスYouTuberの始め方~』(ぱる出版)著者、いとうめぐみ氏に伺っている。後編では、急増中の芸能人YouTuberの明暗を分けるポイントなどについて聞いた。

■ヘタの研究、バックナンバーはこちら

無風状態の中、1年あきらめずに動画を出し続けられるか?

――現在はYouTuberを目指す人に指導することも多いいとうさんですが、YouTuberになろうと思った人が挫折するポイントはどういったところですか?

いとうめぐみ氏(以下、いとう) “挫折”には3つのパターンがあると思います。まず、「動画に映った自分の姿に耐えられなくて挫折する」ですね。私自身もそうでしたが、普段見ることはない動いている自分の姿を見るのは、すごく違和感があるんですよ。また動画を撮影する際は、誰もいないところでカメラに向かって話すので、自分の普通のしゃべりができなくて嫌になってしまうんです。

――写真ならキメ顔、キメポーズを駆使して瞬間的に写ることもできますけど、動画は連続で映り続けますもんね。

いとう 2つ目は「いろいろこだわってしまって挫折する」パターンです。理想の撮影環境で撮影できない、一眼レフカメラで撮影したいけどお金がなくて買えない……と動画を撮ること自体に挫折してしまうというもので、特にいろいろな動画を熱心に見ている方や理想が高い方が陥りがちです。

――視聴者としての目が肥えてしまって、配信者としての自分のクオリティが許せなくなってしまうのでしょうね。

いとう 最後は、「登録者数などの目的が達成できなくて挫折する」というパターン。人によってYouTubeの運営目的は異なります。「登録者数を伸ばしたい」という人、ビジネス系の方なら「仕事に対しての問い合わせが欲しい」などですね。それぞれの目的が達成できないと「意味がないんじゃないか」と思ってやめてしまいがちです。

――こんなに時間をかけてまでやってるのに、「この程度の反響か」と心が折れてしまうと。

いとう でも、登録者数が伸びないからといって挫折してしまうのは、すごくもったいないことです。動画の更新頻度にもよりますが、週1回の更新であれば、大体1年ぐらいはくすぶっている時期、と思ってもらったほうがいいですね。ただ1年たっても登録者数が増えない、問い合わせに結びつかない、という場合は、チャンネルのコンセプトそのものを見直すことをお勧めします。

――これからYouTubeを始めようと思う人に「したほうがいいこと」と「やめておいたほうがいいこと」を挙げるとしたら何ですか?

いとう 「したほうがいいこと」は、とりあえず動画を上げてみることですね。いろいろ準備を整えてから始めたいという気持ちもあると思いますが、とりあえず何を話すか決めて、お手持ちのスマホで撮影してアップしてみるなど、簡単なところから気軽に始めることをお勧めします。

 繰り返しになりますが、「やめておいたほうがいいこと」は、完璧を求めることです。気持ちは非常によくわかるのですが、全て完璧に準備を整えてから動画を作ろうとすると、いろいろしんどくなります。特に、初心者の方であればあるほど、道具を全て揃えてから始めようとしてしまいがちです。それは機材だけでなく、トークや編集といったスキルにおいても同じで、納得いくレベルに達してから世に出そうとしてしまう。ただ、そんなことをしていたら忙しい日々に流され、一生YouTuberは始められません。完璧主義は捨てて、方向性を決めてある程度撮影の基本が押さえられたら、まずは気軽に始めてみることをお勧めします。

――最近は芸能人もYouTubeを始める人が増えてきましたよね。成功している人もいれば芳しくないように見える人もいますが……?

いとう これを言ったら元も子もないですが、「その芸能人の方のもともとの人気度」は、まずありますよね。でも、その方が「YouTube視聴者に好まれるような素質や行動をしているかどうか」というのも、人気につながる大事な点だと思います。

 例えば、今や登録者数206万人を超えた本田翼さん(2020年6月現在)は、もともとインドア派でゲーム好きを公言していました。そういった理由からも、ネットユーザーの間ではYouTubeを始める前から人気がある方でした。

――「俺ら/私らネット民」にこの人は近いものがあるぞ、と。

いとう さらに本田さん自身がYouTubeを楽しんでいて、それを視聴者が好ましく思っているという背景があると思います。実際動画を見ていただくとわかりますが、有名人だからといっておごることなく、動画の内容が工夫されていたり、編集がユニークで飽きを感じさせなかったりと、とても面白いです。

――画面のキャプションなどを見ても、YouTubeを「わかってる」感じが伝わる、ツボを心得えた作りですよね。

いとう はい。「私は芸能人だからみんな見てくれるでしょ」というスタンスじゃないんですよね。YouTubeだからこその動画を発信し、YouTube視聴者側に寄り添うような姿勢が、ファンだけではなく、本田さんのことをよくは知らない人の心もくすぐったのだと思います。

「独りよがりにならない」「でも楽しむ」のバランスを取る

――使っている文字や画面の構成やノリなど、「いかにもYouTubeっぽい」動画とは、つまり「私はYouTubeの文化を大事にしてます」というサインでもあるんですね。動画は何分くらいのものがいいのでしょうか?

いとう 適切な動画の長さというのは、狙っているターゲットや運営目的によっても異なりますが、初心者の方は、基本的に“10分以内”をお勧めします。最初のうちは、視聴者との信頼関係がまったく築き上げられていないので、途中で離脱されてしまう可能性が高いからです。

 すでにほかのSNS等でファンがいるという方は、尺の長い動画でも問題ありませんが、これからという方はなるべく端的に、相手が欲しているであろう情報を10分、できたら5分程度で配信されることをお勧めします。

――さまざまな動画がアップされてる中、「かわいい動物の動画を出しておけばOK」というような正解が見えなくなっていると思います。“見られる動画作り”に必要なことは何でしょうか。

いとう 「自己満足な配信をしない」「自分が楽しむこと」の2点です。一見、相反するようなのですが、どちらもとても重要な考え方だと思います。

 まず「自己満足な配信をしない」ですが、人気がある動画は視聴者の欲求を必ず満たしています。「知りたい」だけでなく「楽しみたい」「願いをかなえたい」「癒やされたい」なども欲求です。それらをかなえられる動画は、おのずと人気が出てきます。そして、配信者自身が楽しむこともやはり大切です。楽しむことを忘れていると視聴者はそれを感じ取ってしまうんですよね。

――絶妙なタイミングでカットが切り替わったり、効果音が入る動画を見ると、配信者が面白がって作っているんだろうなと伝わってきますよね。そういう動画は見ていて楽しいです。

いとう はい、楽しさは伝染します。慣れないうちは難しいと思いますが、配信者は「動画で楽しいと思えるポイント」を見つけるようにするといいですよ。それは撮影だったり、編集だったり、人によって違うかもしれませんが、そういった大人になるとなおざりになりがちな「楽しむ」姿勢は、見られる動画を作る上では大切なことだと思います。

(取材・文=石徹白未亜)

■いとうめぐみ
高校卒業後、19歳から独学で携帯アフィリエイトを始め、その収入で生計を立てる。その後オイシックス株式会社(現:オイシックス・ラ・大地株式会社)でサイト運営・企画・特集ページなどを担当。YouTubeチャンネル「ピラティスちゃんねる」を配信し、登録者数2万人に。そのノウハウを伝えるべくYouTubeセミナーを開催。現在はブログやYouTubeを中心に、基本を大切にした相手に伝わる情報発信方法を教えている。

HIKAKINはなぜレジェンドなのか? YouTube動画の「ウマい」「ヘタ」の違いをプロに聞く!

「物事が“ヘタ”なとき、そこにはパターンや規則があるのではないか? そのパターンを知ればウマくなる手助けになるのではないか?」

 この仮説のもと、当連載「ヘタの研究」ではさまざまな物事の「ウマい、ヘタとは何なのか?」をその道の専門家に伺っている。

 今回のテーマは「YouTube」。「〇〇してみた」などの企画を軸に展開するYouTuberのほか、ブログのように普段の日常の様子を動画で発信するVloger(ブイロガー)な00ど、今や動画を見るだけでなく配信する人も増えてきている。その中には、YouTubeが定める一定の条件をクリアし、収益化を達成する動画もある一方で、再生回数が非常に寂しい動画も散見される。多くに見てもらえる動画とそうでない動画は何が違うのか?『フツーの人がYouTube登録者数1万人を突破する秘訣 ~ビジネスYouTuberの始め方~』(ぱる出版)著者、いとうめぐみ氏に聞いた。

■ヘタの研究、バックナンバーはこちらから

YouTuber界のレジェンドは何が違うのか?

――ウマいYouTuberとヘタなYouTuberの違いはなんでしょうか?

いとうめぐみ氏(以下、いとう) ウマいYouTuberは、無意識であっても意識的であっても相手(見る側)が求めていることを発信している人で、ヘタなYouTuberはただ自分のやりたいようにやっているだけな人、という違いがあると思いますね。人気ある人というのは相手が欲しい情報をきちんと提示しています。

――好き勝手遊んでいるだけに見える動画もあったりしますが……?

いとう そういった方も、自分がという前に、視聴者が潜在的に「やってみたい」と思っていることをきちんとかなえているんです。例えば、自分では出せないような金額で高価な物を買ったりだとか。そう思うと、ウマいYouTuberは「視聴者を喜ばせることが上手」とも言えます。

 一方、ヘタなYouTuberは相手に対する配慮が十分ではないんです。どうでもいい編集をしていたり、どうでもいい話をして視聴者を退屈にさせてしまったり。

 もちろん特殊な職業をされている方や、すでに人気のある芸能人の方であれば、自分の好きなようにやっていてもアクセスが集まるケースもありますが、ただ単に「自分の好きなようにやる」だけでは、多くの人に支持されることは難しいかなと思います。

――いとうさんから見てウマいな、と思うYouTuberは誰ですか?

いとう 断然、HIKAKINさんです。相手が飽きないように身振り手振りを交えながら話を展開しますし、編集も面白い。なのに凄い謙虚。そして視聴者との関係性をすごく大事にしているのが、人気の秘訣だと思います。

 HIKAKINさんのウマさの一例として、彼は「待てる」んです。見ている人に問いかけたあと、間を置くことができる。視聴者はHIKAKINさんの問いかけに対し、画面の向こうで答える時間を持てるため、まるで会話しているような感覚を味わうことができ、彼を身近に感じられます。これは視聴者を大切にしているからこそできる行動です。簡単そうに見えて難しく、たいていの方が一人で撮影していると、早口で、たたみかけるようにしゃべってしまうんです。

――私も動画の仕事をした際に、「待つ」難しさを痛感しました。撮影中に、カメラに向かって待っているのがどうも気恥ずかしくて、ついしゃべってしまうんですよ。でもそれは配信している側の都合であり、視聴者側に立った態度ではありませんね。

――面白いYouTuberはたくさんいますが、「チャンネル登録」してもらえる人と、そうでない人がいます。収益化を目指す配信者にしてみれば、「チャンネル登録」は重要なポイントになりますが、登録されるかどうかの違いはどこにあると思いますか?(※収益化において、チャンネル登録者数1,000人以上、年間総再生時間4,000時間以上が条件)

いとう チャンネルの軸があるかどうか、今後も見たいと思えるかどうかです。チャンネル自体に軸、つまりチャンネルのコンセプトや方向性が見えないと登録者数は伸びません。勘違いされがちですが、再生数が伸びる動画があるからといって、チャンネル登録者数が伸びるわけではないんです。

――考えてみれば、私自身登録しているのも「フィットネス」「メイク」「ペット動画」と全員チャンネル名だけでどんなコンテンツを提供しているチャンネルなのか伝わるものばかりです。

いとう そうなんです。もし、すごく良い動画で今後も見たいと視聴者に思わせても、ほかの動画に統一性がなければ、チャンネル登録されずに終わります。なので、再生数が伸びるような「バズる」動画を作ることも大事なんですが、チャンネルの方向性をはっきりさせたり、その方向性を示すためにも、自分はこんなことを配信している人ですよ、というコンセプトを示した動画はいくつか用意しておく必要があります。

――コメント欄に寄せられた視聴者からのメッセージに返信をする人や、コメントに答える「質問コーナー」の動画を投稿する人もよく目にしますが、人気を得るためには必要なことなのでしょうか?

いとう YouTubeのアルゴリズムの話で言うと、コメントは多ければ多いほど再生数が増える傾向があるので、コメントを促進するためにも返信することをお勧めします。ただこれはYouTubeをどのような目的で運営しているかによります。再生数や登録者数を増やしたいと思っている場合は、よりコメントを増やすために、届いたコメントには返信したほうがいいですが、YouTubeを既存のお客さんに見てもらうために運営しているのであれば、どちらでも構いません。

 ただ、YouTube動画というのは相手がいるからこそ成り立っているものです。コメントには返信したほうがいいことは知っておいてほしいですね。YouTubeをやる以上、誰しもが見てもらうために動画を投稿していると思うので、「自分は配信する側」とおごらず、視聴者に対して敬意を見せてほしいですね。

――テレビと比べて配信者と視聴者の距離が近いこと、双方向感が出せることがYouTubeらしさですから、それを生かしたほうがいいと。

いとう もし登録者数が増えてきたり、忙しかったりしてコメントに返信しきれない場合はやむを得ませんが、何かしらリアクションを示したいのであれば、コメント欄に寄せられたメッセージにハートボタンを押すことをお勧めします。見ている人にとって配信者の方に反応してもらえるというのは、それだけでうれしいことです。逆に明らかに変なコメントが来たら断りも入れずに削除、もしくは無視で問題ありません。

* *

 後編も引き続き、いとう氏に最近急増している芸能人YouTuberの成功例など、人気を得る動画配信のポイントについて聞いていく。

(取材・文=石徹白未亜)

■いとうめぐみ
高校卒業後、19歳から独学で携帯アフィリエイトを始め、その収入で生計を立てる。その後オイシックス株式会社(現:オイシックス・ラ・大地株式会社)でサイト運営・企画・特集ページなどを担当。YouTubeチャンネル「ピラティスちゃんねる」を配信し、登録者数2万人に。そのノウハウを伝えるべくYouTubeセミナーを開催。現在はブログやYouTubeを中心に、基本を大切にした相手に伝わる情報発信方法を教えている。