「30年間、電車で痴漢を繰り返してきた」――性犯罪“加害者”が語る「逮捕されてもやめられない」理由

  刑務所で刑期を終えたあとは、二度と罪を犯さない。これはすべての犯罪加害者に求められることだが、近年は性犯罪加害者に対して、特にその声が高まっている。性犯罪の再犯率は高く、なかでも痴漢のそれはほかに比べて際立っている。逮捕されても、罰金刑になっても、服役してもやめられない。そして、新たな被害者を生み続けている。

 再犯防止のための策がないわけではない。刑務所内では、受刑者を対象に「性犯罪再犯防止指導(通称:R3)」が、保護観察所では、裁判で執行猶予判決が出た者と仮出所してきた者を対象に「性犯罪者処遇プログラム」が用意されている。いずれも医療と特殊教育を合わせた“治療教育”による再犯防止が目的。これらは、一定の効果が報告される一方、刑期の短い痴漢は受講対象から外されるなど、すべての性犯罪者が指導やプログラムの対象ではないという問題点も、各方面から指摘されている。また、指導を受ける時期や、期間の短さといった問題からも、明確な効果は疑問視されている。

 「再犯率が高い」ということは、「刑務所で罰を受けるだけでは性犯罪をやめられない」ということに等しい。一体なぜ、逮捕されても、服役しても、性犯罪を「やめられない」のか? 痴漢行為をはたらき、民間の医療機関が行う「独自の再犯防止プログラム」 で治療を受けた男性と、性犯罪加害者の再犯防止に民間の医療機関で取り組む専門家にそれぞれ話を聞き、“加害者”側から「再犯をやめること」について考えてみたい。 

 第1回は、18歳から痴漢行為に手を染め、その後、約30年間にわたって再犯を繰り返しながら、国内の民間治療機関に通っていた50代男性・Oさんに、自身の経験を語ってもらった。

痴漢は「ストレス解消の手段」だった

 「最後のほうは、逮捕されたくて痴漢をやっていた」と、Oさんは言う。18歳から電車内で痴漢行為をするようになり、何度か罰金刑を受けてきた。それでも痴漢をやめられず、41歳のときついに起訴され、執行猶予判決が出る。それと同時に治療機関へ通うも、Oさんの生活は変わらなかった。執行猶予中にまた逮捕され、5カ月の実刑判決を受ける。にもかかわらず、43歳のときに再犯してしまい、今度は11カ月間服役した。

 二度目の服役を終えてから10年以上、何度も繰り返してきた痴漢行為は止まっている。Oさんはなぜ、痴漢をやめ続けられているのだろうか? 彼の軌跡から再犯防止のためのヒントを探っていくが、その前にまず、Oさんが長年の痴漢行為に何を求めていたのかを聞いた。

 Oさんは、痴漢を始めてから、大学生、社会人になるにつれ、行為の頻度や接触の度合いがエスカレートしていったという。

「今ふり返ると、私が痴漢行為を繰り返していたときは、自分自身の人間関係の影響を大きく受けていたと感じます。私が育ったのは、父も母もボランティアなどの社会活動に熱心な、地域に根ざした家庭でした。私は、子どものころから表で“いい人”のように振る舞いながら、裏では痴漢を働いていたのです。小学5年生のころ、妹に性虐待をし、高校生になって痴漢に手を染めます。成人してからは、会社で嫌なことがあったり、女性とうまくいかなかったり、人間関係でつまずくと『じゃあ痴漢しよう』と、ストレス解消の手段になりました。地域のボランティアでも、会社でもそこそこうまくやってはいたのですが、裏でそんなことをしていたら、当然、本当の信頼関係を人と築くことはできません。自分で自分を孤独な状態に追い込んでいるようなところがありました」

 痴漢は性暴力のひとつであり、“性欲”によって犯行に及ぶと思われがちだが、Oさんの場合、そう単純な話ではないようだ。

「痴漢と性欲がまったく関係ないとは言い切れません。私も痴漢しながら勃起し、射精していた時期はありますが、それは『触っているうちに気持ちよくなった結果』であって、最初からそれが目的ではなかったです。性欲以上に、まず『女性の体に触りたい』という欲求がありました。自分がそれを実現するための手段が痴漢だった、ということです。女性の柔らかさや体温の温かさがすごく魅力的で、触っているとホッとするというか……。『人と一緒にいるんだ』という感じがして、自分が救われているような感覚がありました」

 痴漢と性欲が必ずしも結びつかないというのは、Oさんが「誰を選んでいたか」という話からもわかる。

「痴漢をする対象は、誰でもいいわけではないのですが、“そこにいたから”触っていたという感じです。容姿や服装が自分の好みかどうかはあまり関係なく、『触ることができる距離まで近づけるか』『人目につかないような位置にいるか』ということをチェックし、車両から車両へと移動しながら、痴漢する相手を探していました。いざ触ろうとなって、女性の服装が派手だと感じたら、その時点で痴漢をやめることもありました。派手な服を着る女性は、気が強そうに見えていたんですよね」

 被害に遭うほうは、心身に大きく深い傷を負う。Oさんに、その意識はあったのだろうか?

「今なら、痴漢に遭った女性は、怖くて身動きすらできなかったのだと理解できます。しかし当時は、女性が顔をしかめても『そんなに嫌がってはいないんじゃないか』という認識だったし、何も反応がなければ『自分を受け入れてくれている』とすら思っていました。明らかに抵抗されるとか、逃げられるとかしてようやく、『これ以上触らないようにしよう』と思うのです。ただ、触った瞬間に『訴えられるんじゃないか』という“恐怖心”も、確かにありました」

 生活の中心に、痴漢行為があった。Oさんは仕事帰り、痴漢のチャンスをうかがいながら、始発駅から終着駅まで何往復もすることまであったという。それだけOさんにとって痴漢は、「求めてやまない」行為だった。しかし、それがれっきとした犯罪行為であることは、本人もわかっていた。

「いつか刑務所に入ることになるんじゃないか、という思いはありましたね。でも行為中は、そんなことをまったく考えないんです。相手のことだけじゃなく、自分がどうなるのかすら考えていない状態。まるで別人になっているかのようでした。一度、痴漢をしている時に、私の行為を目撃していた男性が手を振り払ったことがあるのですが、その人の顔を見たら、近所に住む顔見知りの男性でした。普通ならそこで痴漢をやめると思うんですが、私は彼に見せつけるようにして、また女性への加害行為を再開していたのです。『俺はもう、あんたが知ってる俺じゃないんだ』と言いたかったのかどうかわかりませんが、行為中はそのぐらい、わけがわからなくなっている。でも、終わるとすぐに罪悪感に襲われるんです。夜寝るときに『いつか捕まるかも』と不安に駆られていました」

 痴漢を続けながら、痴漢をやめたいとも思う。「逮捕されたい」とまで願う。相反する思いに振り回される中、Oさんの心に安定をもたらしたのが、最初の服役だった。

「自分の意識が痴漢にとらわれずに済む環境にいる、というのは本当に楽でした。意識したところで、そこには女性がいません。欲求から解放されるので、『自分はもう痴漢をしなくていい』という心境になるのです。懲役刑は犯罪者への罰なのに、私にとっては社会で暮らしているよりずっと平穏なのだから、おかしいですよね。でも、最初の服役を終えて社会に戻ったときは、『二度と刑務所には行きたくない、だから痴漢は金輪際しない』と思うんです。なのに、一歩家の外に出たら、痴漢行為に意識がとらわれる。電車を見たり改札の前を通ったりするだけでドキドキするようになり、痴漢のことしか考えられなくなりました」

 ほどなくしてOさんは痴漢を再開し、43歳で再び逮捕される。その時はどうやって捕まったのか記憶にないほど、混乱した状態だったという。二度目の出所後も同じく、「もう戻りたくない」と思ったOさん。そこから10年、加害行為をしていない。一体何が彼を変えたのか――第2回につづく。
(三浦ゆえ)

東京ディズニーランド&シー再開2カ月、人気Dオタブロガーに聞く「今こその楽しみ方」と「問題点」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2月29日から約4カ月の休園を経て、7月に営業を再開した東京ディズニーランド&シー。再開当初、両施設を運営するオリエンタルランドは、あらかじめオンライン予約・購入サイトで日付指定券を購入した人のみパークの入園を可能とし、一方で、1年間に何度でも入園することができる「年間パスポート」は使用できないとしたことも影響し、チケット入手は激戦を極めたという。

 なお、年パス所持者に対しては、2月の休園時に有効期限延長や返金対応を行うことをアナウンスしていたものの、詳細が明かされないまま入園チケットの販売が開始されたため、ネット上では不満の声が続出していた。

 それから2カ月がたった今、入園システムが変更され、パーク内の様子も変わってきているというが、ディズニーファンはそれをどう見ているのか。年間パスポートで東京ディズニーリゾート(以下、TDR?)に足繁く通い、細かなディズニー?雑学などを紹介するブログ「◎◎◎◎」を15年間執筆し続けている人気ブロガー・みっこさんに話を伺った。

(※パークの状況は、8月末のものです)

「年間パスポート」所持者への対応をめぐり、ディズニーファンが対立

――年間パスポート所持者へのオリエンタルランドの対応には、ネット上で賛否がありましたが、みっこさんはどのようにお考えでしょうか?

みっこさん(以下、みっこ) 現在両パークでは、新型コロナの感染防止対策としてショーやパレードを中止しており、運行を休止しているアトラクションや休業しているショップ、レストランもあります。肯定的に捉えるとすれば、有効期限延長や返金対応は、「通常通りの営業とは言い難い状況下で年パスの有効期間を消化させてしまっては申し訳ない」というオリエンタルランド側の気持ちの表れとも言えるでしょう。

 ただ、休園していた4カ月もの間、詳しい説明が一切なかったため「ないがしろにされている」と感じる人は多かったと思います。ランドとシーの両方に入園できる共通パスの所持者は、10万円近くを前払いして、いつでも入園できる権利を得ているにもかかわらず、営業再開後は、新たにチケットを購入しなければ入園ができないわけですから。しかも、そんな中で一度売り切れたチケットが追加販売されることもあり、「入れる枠がまだあるのなら、年パス所持者も入れてくれればいいのに」などと、私の周りのDオタ(ディズニーオタクの略)からも否定的な声が上がっていました。中には消費者生活センターに相談した人もいるようです。

――有効期限の延長や返金の方法については、いまだ発表がないため、不安に感じている方も多いでしょうね。

みっこ 年パス所持者がそういった不安や不満を抱え、嘆いていることに対して、年パスを持っていない人たちから「なぜ、年パス所持者は『自分たちを優遇しろ』と要求するのか」と反発の声が上がり、ネット上でファン同士が対立するようになりました。年パス所持者はそれが億劫になってしまい、不遇を主張することをやめる人が多かった印象です。

 そんな年パス所持者の思いがようやく届いたのか、オリエンタルランドは8月から、年パス所持者限定の入園枠を設け、抽選を実施するようになりました。1カ月に一度、各日午後2時から入園できるチケットを最大5日分まで申し込みできるというもので、当選した場合は無料で入園可能となります。とはいえ、それまでパークに足繁く通っていた人からすると物足りませんが……。

――営業再開にあたり、両パークでは人数制限や入園時の検温、マスク着用の義務化、ソーシャルディスタンスの確保といった新型コロナ対策を行っており、休園前とはまったく雰囲気が変わっていることと思います。久々にパークを訪れた際、どのように感じましたか?

みっこ 4カ月の休園期間中に、内部塗装の塗り替えや工事が行われていたので、ランドもシーも「園内が綺麗になっていた」というのが率直な感想ですね。また、新型コロナ対策についても、運営側は想像以上にしっかり行っていました。ショップなども出入口を限定した状態で、必ずキャストがそばに立っており、入店時は手を消毒しなければ中に入れないようになっています。アトラクションも、ソーシャルディスタンスを保つために待機列が長くなっていて、メインのアトラクションに乗る前に用意されている前室での「プレショー」も省かれている状態です。

 例えば、ランドにある「ホーンテッドマンション」では、バギーに乗る前に通される「天井が伸びる部屋」が解放され、通路になっている状態で、密にならないよう対策が取られていました。本来であれば、プレショーもアトラクションの楽しみの一つなので、パーク側としては従来通りにしたいところなのでしょうが……。

 なお、休園期間中にパークを離れたスタッフも多いと聞きました。新人キャストが増え、教育期間を十分に取れていなかったのか、キャストの質が以前と比べると落ちたような印象も一部ではあるといわれています。

 また、それよりも問題なのは、パークが再開して2カ月が経過。運営側はしっかりしているのですが、来園者の予防意識が低下している部分もあり、顎マスクの人や写真撮影時にマスクを外し、そのまま着けなかったり、大声で騒ぐ人、適正距離を保たずに列を詰めてくる人も増えてきた印象です。ここはパークではなくゲスト側の責任。今後もしっかりしていきたいところですよね。

レストランやショップの営業状況にご注意!

――通常よりも人が少ないからこそ、ネット上では「アトラクションの待ち時間が全然なくて快適」「人少ないから乗り放題」といった声も見受けられますが、現在のパークのメリットとデメリットについてはどのようにお考えですか?

みっこ まずメリットは、やはりたくさんアトラクションに乗ることができたり、普段は人が多くてじっくり見て回れなかったエリアをゆっくり散策し、建物のディテールを楽しむことができる点でしょう。

 ただ、現在はかなり人を入れるようになってきていて、営業を再開して間もなくの頃よりも、明らかに人が増えています。アトラクションやレストランの待機列などでは、必ずソーシャルディスタンスが守られていますが、列に並んでいる人と人との間を通行する人がいたりして、キャストの目が行き届かないところは、新型コロナ流行前と何ら変わりない状態なのです。

 一方デメリットとしては、現在コロナ対策でショーやパレード、グリーティングイベントを中止していること。ショーやキャラクター目当ての人は物足りなさを感じてしまうと思います。

――しかも、営業しているショップやレストランが限られているんですよね。

みっこ 大きなレストランは営業していますが、「この席はご利用いただけません」という注意書きが貼られ、席数が半分ほどに減らされています。パークの営業自体も午後8時まで(※9月からは午後9時に変更)に短縮されていて、レストランでは早いところだと午後5時くらいに閉まってしまう店もあるのです。また、ランドでは「ティポトルタ」、シーでは「うきわまん」や「ギョウザドッグ」など、食べ歩きフードを販売しているワゴンもほとんど稼働していないため、これまでと同じ感覚で過ごしていると、夕飯を食べ損ねてしまうなんて場合もありそうです。

 それと、ネット上ではあまり話題に上っていませんでしたが、パーク再開後は賞味期限の関係からか、お菓子がアメなどの日持ちするものしかなくて、商品棚がガラガラでした。そのため、普段お菓子を売っているお店でも、キャラクターグッズを販売していたのです。最近は少しずつ戻ってはきていますが、季節ものの限定商品は売られていない状態なので、お土産を買う際に寂しさを感じるかもしれません。

――では、そんな現在の両パークについて、入園者が少ない今だからこその楽しみ方があれば教えてください。

みっこ 現在、オンラインサイトでは午前8時の営業開始時間(※9月からは午前9時に変更)から遊べる「1デーパスポート」と、午前11時、午後2時から遊べる「入園時間指定パスポート」の3種類のチケットが販売されているのですが、1デーパスポートの購入をオススメしたいです。というのも、営業再開後は以前に比べ、朝の時間帯に人が少なく、どこもガラガラ状態なので、アトラクションを存分に楽しめるかと思います。でも、午後2時からの時間指定パスポートで入園すると、休日は特に、通常時とあまり変わらない混み具合になってきています。

 なお、シーの人気アトラクション「ソアリン:ファンタスティック・フライト」に関しては、朝イチで入ったとしても、待ち時間が100分を超える場合があります。また、今は運行を休止しているアトラクションや閉鎖中のエリアも多いので、公式サイトで事前に確認しておくことが必要かと思います。

――そのほか、入園時に気を付けておくべきことはありますか?

みっこ チケット購入サイトでは、スマホで購入し、画面に表示されたチケットをエントランスにかざすだけで入園できるデジタルチケットか、スマホやパソコンで購入したチケットを自分でプリントアウトする、もしくは自宅まで配送してもらうという紙チケットのいずれかを選ぶことができます。ただ、現在主流となっているデジタルチケットは、クレジットカードでしか購入ができないため、再開直後のパークは大人、特にDオタの人が多かったように思います。

 夏休み期間に入ると、学生や家族連れも増えました。特に若い世代には羽目を外しがちで、マスクを顎まで下げていたり、写真撮影のためにマスクを外して、そのまま付けない人が多く、ソーシャルディスタンスが守られていないシーンも多々見受けられましたね。キャストも注意喚起を行っていますが、ソーシャルディスタンスを保つがゆえに、通常よりも待機列が長くなり、その分、目の行き届かない場所も増え、“注意しきれていない”というのが正直なところ。ゲスト一人ひとりがしっかりとした意識を持ち、新型コロナ対策を万全した上でパークを楽しみたいですね。

美容系YouTuber・門りょうがプチ炎上! インフルエンサー化する元キャバ嬢たちが生きた“夜の世界”を探る

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マイメロ香水(意味はのちほどサブにて)

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 大阪・北新地で絶大な人気を誇り、高級シャンパン「アルマンド」を日本一売り上げたことから「アルマンド姉さん」とも呼ばれていた伝説的キャパ嬢・門りょう。2017年に引退してからは、キャバクラを展開する「A factory」取締役副社長に就任し、最近では美容系YouTuberとして、若い女性を中心に支持を集めている。

 そんな門が9月2日、インスタグラムに、「大反響お礼でMACからプレゼント届いた」として、コスメブランド「M・A・C」から届いたという、手書きのお礼状とコスメを紹介。なんでも、門がYouTubeチャンネルで紹介したデパートコスメは、売り切れになることがよくあり、今回のようにブランド側からお礼が送られてくることも珍しくないそうだ。

 しかし、門が続けて「売り切れになったにも関わらずお礼がまだのブランドのひとは、これをお手本にし、新作やプレゼントを送ってくること」「お手紙も添えること(手書きだと尚良し)」「冗談ですすみません。ちょけです」「2割本気です」とコメントしたことに、反感を抱いたネットユーザーは少なくなかった様子。「お礼を要求するって何様なの?」「上から目線で図々しすぎる」「厚かましい」といった苦言が飛び交うことになり、一方で、門のファンから「関西ノリの冗談」「昔からこうゆうキャラだから」「『冗談です』って書いてるのに」といった反論が寄せられるなど、ちょっとした炎上状態となったのだ。

 そもそも大成功を収めたキャバ嬢は、世間から「高飛車」「傲慢」「横柄」などのイメージを持たれがちなのかもしれない。それゆえに、門の冗談が“通じなかった”という面もあるのだろう。サイゾーウーマンでは、これまで“キャバ嬢の実像”に迫る記事を何度も配信してきた。

 門をはじめ、エンリケ(小川えり)、桜井野の花など、元/現役問わずキャバ嬢たちがインフルエンサー化し、今回のような炎上騒動も珍しくなくなった現在。あらためて、キャバ嬢としての輝かしい時代を生きた女性の“その後”に関する記事を再掲する。


(初出:2016年12月20日)

「キャバ嬢としての全盛期が忘れられない」夜の世界から足抜けできなかった女たちの今

 夜の商売で働く女性たち。彼女たちはそれぞれに事情を抱え、本当はやめたいのにやめられずにいる……などというのは昔の話。ヘルスなどの射精産業には暗い裏事情を持つ女性たちもいるというが、キャバクラ嬢たちの中には、至ってカジュアルに夜の世界で働いている女性たちも多い。

キャバクラを辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子

「こないだ昔なじみの黒服がぼやいていましたよ。指名もついて、さあこれから稼いでくれるぞ! って期待していた子が、『彼氏ができたから辞める』ってLINEで送ってきたってね(笑)。それからひと月もたたないうちに別の店で働いているってうわさを聞いて、その店に行ったという客に聞いたら『彼氏と別れたから復帰した』って笑って話していたそうです。店は売れっ子のキャストがひとり抜けたら、けっこうダメージを受けるんですけどね」

 そう話すのは、かつてキャバクラを経営し、今でも店にドレスやスーツを販売する外商として夜の世界に関わるM氏。長年この世界で生きているM氏を慕うキャバクラ関係者は多く、そんな愚痴を聞くのも仕事のうちだ。

「キャバ嬢が店を辞める理由としてよく聞くのは、彼氏がらみですね。彼女が客とはいえ他の男とLINEやメールのやり取りをし、仲良く話をしているのに焼きもちを焼いてしまうんだとか。目端の利く子の中には、キャバ嬢として働いている間に人脈をつくったり、いろんな知識を身につけたりして、店を辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子もいます。どんな会社かって? よく聞くのはペット関連です。ペットを飼っているキャバ嬢は多いから、その延長でビジネスを始めるみたいです」

 M氏によれば、キャバで働くのは20代。できれば20代半ばまでで足を洗いたいと思っているキャバ嬢が多いという。キャバを抜けた後の身の振り方は結婚、企業の一般職への就職などさまざまだが、中には夜の世界にどっぷりつかり、抜け出せなくなる子も多い。

「見た目が若ければ年齢をごまかして働くこともできるし、ただ若いだけの子より、アラサーくらいの落ち着きのある子の方がいいっていう客もいますからね。30代、40代になっても熟女キャバクラがあるから、働く場所には困らない。太っている子を雇うポチャ専の店もありますしね。夜の商売の門戸は広くなっているから、働き口に困らないという『いい面』がある反面、抜け出せなくなるという『悪い面』もあるんです。選ぶのは本人の自由だから、私がとやかく言うことじゃありませんが、歩けなくなるくらい酒を飲んで、泣きながら愚痴を言っている子を見ると、『ああ、辞めた方が体にもいいのにな』と思います。気楽に働いているように見えても、指名や売り上げなど、彼女たちもいろんなプレッシャーと戦い続けていますから」

 そういうキャバ嬢たちを見ていると、M氏は若かりし頃の顧客だった、キャバレー嬢たちを思い出すという。バブル真っ只中で羽振りの良かった頃、景気よく金を使ってくれた彼女たちも、バブル崩壊による景気の低迷、それに伴い夜の世界も大箱のキャバレー全盛からキャバクラがメインとなっていく中で、ひとり、またひとりと夜の世界から足を洗っていったというが……。

「たまに商売で顔を出す店にね、バブルの頃からの顔なじみがいるんです。キャバレー、キャバクラ、スナックと流れて、今はまたキャバレーに戻ったそうです。あのドラマ、『キャバすか学園』(日本テレビ系)でしたっけ? 全国のキャバクラを渡り歩いているっていう子(小嶋陽菜演じる「こじはる」)が出てきましたが、あの子みたいに、いろんな土地の店を渡り歩いているベテラン嬢は意外といるんですよ」

 しかし、かつてのキャバレー全盛時代のような収入は望むべくもなく、時給は1,000円ちょっとと、アルバイトや一般職のパートの時給とそれほど変わらない。なぜ、収入の高さというメリットがないのに、夜の世界にこだわるのだろうか?

「ちょっと前に、あるAV女優のドキュメントを見たんですが、売れっ子のときはトップアイドル並みの待遇を受けていたけど、人気が落ちてからは、複数の女優が出演する、ひと山いくらみたいな扱いの作品しかオファーが来ないんだそうです。それなのに辞めない理由を聞かれると、『また昔みたいになりたい』と答えていました。上ったはしごの先から降りられなくなったというのかな? ちやほやされて、はしごを上ったけど、人気がなくなったからとはしごを外されたら、落ちるしかないですよね? そうなったらほとんどの人はあきらめるけど、自分にとっての“一番いいとき”を忘れられず、支える足場がないのに、そこにしがみついてしまう人間もいます。夜の世界から抜けられなくなった女性たちは、『自分にはこの仕事しかできない』と口を揃えて言うのですが、良き時代をいまだに忘れられずにいるのかもしれません」

 自分が一番輝いていた瞬間。「本人にとっての武勇伝」をいい年になっても自慢げに話す男が多いように、それを忘れられないのは女も同じなのかもしれない。夜の世界にこだわるのは本人の自由だ。しかし、M氏はベテラン嬢たちのどこか疲れた背中を見ると、なんともやるせない気持ちになるという。

美容系YouTuber・門りょうがプチ炎上! インフルエンサー化する元キャバ嬢たちが生きた“夜の世界”を探る

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 大阪・北新地で絶大な人気を誇り、高級シャンパン「アルマンド」を日本一売り上げたことから「アルマンド姉さん」とも呼ばれていた伝説的キャパ嬢・門りょう。2017年に引退してからは、キャバクラを展開する「A factory」取締役副社長に就任し、最近では美容系YouTuberとして、若い女性を中心に支持を集めている。

 そんな門が9月2日、インスタグラムに、「大反響お礼でMACからプレゼント届いた」として、コスメブランド「M・A・C」から届いたという、手書きのお礼状とコスメを紹介。なんでも、門がYouTubeチャンネルで紹介したデパートコスメは、売り切れになることがよくあり、今回のようにブランド側からお礼が送られてくることも珍しくないそうだ。

 しかし、門が続けて「売り切れになったにも関わらずお礼がまだのブランドのひとは、これをお手本にし、新作やプレゼントを送ってくること」「お手紙も添えること(手書きだと尚良し)」「冗談ですすみません。ちょけです」「2割本気です」とコメントしたことに、反感を抱いたネットユーザーは少なくなかった様子。「お礼を要求するって何様なの?」「上から目線で図々しすぎる」「厚かましい」といった苦言が飛び交うことになり、一方で、門のファンから「関西ノリの冗談」「昔からこうゆうキャラだから」「『冗談です』って書いてるのに」といった反論が寄せられるなど、ちょっとした炎上状態となったのだ。

 そもそも大成功を収めたキャバ嬢は、世間から「高飛車」「傲慢」「横柄」などのイメージを持たれがちなのかもしれない。それゆえに、門の冗談が“通じなかった”という面もあるのだろう。サイゾーウーマンでは、これまで“キャバ嬢の実像”に迫る記事を何度も配信してきた。

 門をはじめ、エンリケ(小川えり)、桜井野の花など、元/現役問わずキャバ嬢たちがインフルエンサー化し、今回のような炎上騒動も珍しくなくなった現在。あらためて、キャバ嬢としての輝かしい時代を生きた女性の“その後”に関する記事を再掲する。


(初出:2016年12月20日)

「キャバ嬢としての全盛期が忘れられない」夜の世界から足抜けできなかった女たちの今

 夜の商売で働く女性たち。彼女たちはそれぞれに事情を抱え、本当はやめたいのにやめられずにいる……などというのは昔の話。ヘルスなどの射精産業には暗い裏事情を持つ女性たちもいるというが、キャバクラ嬢たちの中には、至ってカジュアルに夜の世界で働いている女性たちも多い。

キャバクラを辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子

「こないだ昔なじみの黒服がぼやいていましたよ。指名もついて、さあこれから稼いでくれるぞ! って期待していた子が、『彼氏ができたから辞める』ってLINEで送ってきたってね(笑)。それからひと月もたたないうちに別の店で働いているってうわさを聞いて、その店に行ったという客に聞いたら『彼氏と別れたから復帰した』って笑って話していたそうです。店は売れっ子のキャストがひとり抜けたら、けっこうダメージを受けるんですけどね」

 そう話すのは、かつてキャバクラを経営し、今でも店にドレスやスーツを販売する外商として夜の世界に関わるM氏。長年この世界で生きているM氏を慕うキャバクラ関係者は多く、そんな愚痴を聞くのも仕事のうちだ。

「キャバ嬢が店を辞める理由としてよく聞くのは、彼氏がらみですね。彼女が客とはいえ他の男とLINEやメールのやり取りをし、仲良く話をしているのに焼きもちを焼いてしまうんだとか。目端の利く子の中には、キャバ嬢として働いている間に人脈をつくったり、いろんな知識を身につけたりして、店を辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子もいます。どんな会社かって? よく聞くのはペット関連です。ペットを飼っているキャバ嬢は多いから、その延長でビジネスを始めるみたいです」

 M氏によれば、キャバで働くのは20代。できれば20代半ばまでで足を洗いたいと思っているキャバ嬢が多いという。キャバを抜けた後の身の振り方は結婚、企業の一般職への就職などさまざまだが、中には夜の世界にどっぷりつかり、抜け出せなくなる子も多い。

「見た目が若ければ年齢をごまかして働くこともできるし、ただ若いだけの子より、アラサーくらいの落ち着きのある子の方がいいっていう客もいますからね。30代、40代になっても熟女キャバクラがあるから、働く場所には困らない。太っている子を雇うポチャ専の店もありますしね。夜の商売の門戸は広くなっているから、働き口に困らないという『いい面』がある反面、抜け出せなくなるという『悪い面』もあるんです。選ぶのは本人の自由だから、私がとやかく言うことじゃありませんが、歩けなくなるくらい酒を飲んで、泣きながら愚痴を言っている子を見ると、『ああ、辞めた方が体にもいいのにな』と思います。気楽に働いているように見えても、指名や売り上げなど、彼女たちもいろんなプレッシャーと戦い続けていますから」

 そういうキャバ嬢たちを見ていると、M氏は若かりし頃の顧客だった、キャバレー嬢たちを思い出すという。バブル真っ只中で羽振りの良かった頃、景気よく金を使ってくれた彼女たちも、バブル崩壊による景気の低迷、それに伴い夜の世界も大箱のキャバレー全盛からキャバクラがメインとなっていく中で、ひとり、またひとりと夜の世界から足を洗っていったというが……。

「たまに商売で顔を出す店にね、バブルの頃からの顔なじみがいるんです。キャバレー、キャバクラ、スナックと流れて、今はまたキャバレーに戻ったそうです。あのドラマ、『キャバすか学園』(日本テレビ系)でしたっけ? 全国のキャバクラを渡り歩いているっていう子(小嶋陽菜演じる「こじはる」)が出てきましたが、あの子みたいに、いろんな土地の店を渡り歩いているベテラン嬢は意外といるんですよ」

 しかし、かつてのキャバレー全盛時代のような収入は望むべくもなく、時給は1,000円ちょっとと、アルバイトや一般職のパートの時給とそれほど変わらない。なぜ、収入の高さというメリットがないのに、夜の世界にこだわるのだろうか?

「ちょっと前に、あるAV女優のドキュメントを見たんですが、売れっ子のときはトップアイドル並みの待遇を受けていたけど、人気が落ちてからは、複数の女優が出演する、ひと山いくらみたいな扱いの作品しかオファーが来ないんだそうです。それなのに辞めない理由を聞かれると、『また昔みたいになりたい』と答えていました。上ったはしごの先から降りられなくなったというのかな? ちやほやされて、はしごを上ったけど、人気がなくなったからとはしごを外されたら、落ちるしかないですよね? そうなったらほとんどの人はあきらめるけど、自分にとっての“一番いいとき”を忘れられず、支える足場がないのに、そこにしがみついてしまう人間もいます。夜の世界から抜けられなくなった女性たちは、『自分にはこの仕事しかできない』と口を揃えて言うのですが、良き時代をいまだに忘れられずにいるのかもしれません」

 自分が一番輝いていた瞬間。「本人にとっての武勇伝」をいい年になっても自慢げに話す男が多いように、それを忘れられないのは女も同じなのかもしれない。夜の世界にこだわるのは本人の自由だ。しかし、M氏はベテラン嬢たちのどこか疲れた背中を見ると、なんともやるせない気持ちになるという。

TikTok「ビルボードチャートの歴史を塗り替え」BLM運動「白人セレブや企業のスタンダード刷新」エンタメから米国の“変化”を見る! 【辰巳JUNK×渡辺志保:後編】

 NBAのスーパースター選手だったコービー・ブライアントが、13歳の次女と搭乗していたヘリコプターが墜落し、即死。その夜、開催されたグラミー賞授賞式はコービー追悼式のようになるという悲劇的なスタートを切った2020年。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やBLMのうねりで、価値観も大きく変わった。

 そこで、昨年末に引き続き、ブラックミュージックやヒップホップに詳しいライターの渡辺志保さんと、ゴシップとカルチャーの両視点からショービズ界に斬り込むライター辰巳JUNKさんに、20年前半(1月~6月末)に起こったトピックを振り返りつつ、アメリカの“変化”について語ってもらった。

(前編はこちら:アメリカ「価値観の変化」を読む! オスカー「多様性」スーパーボウル「ジェイ・Zで人種問題回避」

TikTok発の楽曲が、ビルボードの歴史を塗り替えた!?

――今年前半は、なんといってもコロナ禍でエンタメの在り方、意味が問われました。世界中で自粛生活を求められる中、米ネットフリックスが新規有料会員を1,000万人も増やすなど、“巣ごもり系エンタメ”の強さが見られましたが、音楽業界に目を向けてみると「TikTok」人気が目を見張りますね。

渡辺志保氏 (以下、渡辺) アメリカでは今、TikTokでの楽曲の人気が、そのまま音楽チャートに直結しています。その象徴が、昨年のリル・ナズ・Xの「Old Town Road」(※3)で、歴史を変えるほどの大ヒットとなったんです。音楽ストリーミングサービス「Spotify」ではバイラル・チャートという、SNSの人気を反映したチャートがあるんですが、上位楽曲はほぼ必ずTikTokの流れでチャートインしてくる。驚くほど多種多様で、グローバルのチャートにも、日本語の曲や、インドやドイツのアーティストなども入ってる。もはや、言葉や国境の壁がないんです。

 アーティストもプロモーションの場をインスタグラムとTikTokや、よりヒップホップ色の強い「Triller」というアプリに移しているように思います。そこで「#~challenge」といったタグを使って、いかに自分の曲を使ったブームを仕掛けられるかが勝負になっている。ドレイクも自粛生活期間中に、「Toosie Slide」という曲をリリースしたのですが、「右足を上げて、左足をスライドさせる」など歌詞が振り付けの説明になっていて、MVも自宅でマスクと手袋を着用して踊っているというもの。TikTokではやらせようという意図が明確でした。トランプ大統領が、中国発のアプリで安全性に問題があるとしてTikTokの使用を禁止しようとしていますが、本当に禁止されたら音楽チャートやマーケティングなども大きく変わってくるはず。

※3 TikTokで同曲に合わせてジュースを飲む「♯YeeYeeJuice」チャレンジや、カウボーイの格好やポーズを真似る「#Yeehawchallange」が大流行。その後、マイリー・サイラスの父で、カントリーミュージシャンのビリー・レイ・サイラスが参加したリミックス版がリリースされ、幅広い世代に支持されるように。米国ビルボード・ホット100で19週連続ナンバー1という、同チャート史上最長のヒット曲となった。

――TikTokで人気となる曲の特徴は?

渡辺 インパクトのあるイントロが重要なのかなと思います。最初の4~5小節のインパクトですね。そして、ポーズのとりやすい音があること。かつ曲の長さは短めで、ダンスや動作をはめやすい構造の曲が求められていると思います。「Old Town Road」も1分53秒とめちゃくちゃ短い曲で、その短さにも驚いてしまいました。

辰巳JUNK氏 (以下、辰巳) ポップジャンルでいうと、よく言われるのはハッピーな曲ですかね。ポップ系チャートヒットもそれに合わせるように、明るくアップテンポになっています。シーン全体のはやりでもあるのでしょうけど、ドレイクの「Toosie Slide」やレディー・ガガ、デュア・リパの新アルバムなど、スターの新作がどんどん明るくなっているとBBCが報告している。アップビートの曲も増えていて、あくまでUKチャートですが、トップ20楽曲のアップテンポ具合は、ここ10年で最高を記録しました。

渡辺 アメリカでのTikTokヒット曲は踊ってナンボですから、そうなると自然にアップリフティングなビートが支持されるんでしょうね。

――明るい曲調といえば、5月29日にリリースされたレディー・ガガの新作アルバム『クロマティカ』も、ポップになったという評判が聞こえていますが、このアルバムの意図・意味をどう見ていますか?

辰巳 全体的にハッピーなアップビート。サウンドはポップだけど、歌詞の内容は非常にパーソナルなもので、性暴力の被害やメンタルの問題について書かれています。ポップな曲を展開していたキャリア初期に暴行やハラスメントを受けた彼女は、ここ数年、ダンスサウンドから離れて内面を掘り下げるようなオーセンシティな世界観になっていた。だけど、「暗い記憶とないまぜとなったポップミュージックを自分の手に取り戻す」というのが、今作の裏テーマのようです。

 「ポップを取り戻す」という意志を強く感じさせられる曲が「フリー・ウーマン」。ロックバンド「クイーン」の曲を芸名の由来にするガガは、フレディ・マーキュリーのように雄大なロックオペラみたいな歌い方をする。それを生かして、サビ(コーラス)で盛り上がりを見せる曲なんですよ。最初は歌詞も暗いのに、徐々に盛り上がっていく。そのあたりはシンガーソングライターとしてのうまさを感じます。歌詞を見ても、“例え自信がなくても、私は価値ある存在”といった自己肯定を得る内容で、ガガによると「性暴力の犠牲者」といったラベルからの解放を示す歌だそうです。最後は“ここは私のダンスフロア”だと宣言する、自分のポップサウンドを肯定するような詞になっています。

 奇抜で派手な衣装に関しても、スタイリストによると、キャリア初期は自分を守るために顔や体を隠していたけど、今回は顔も肌も見せ、ちゃんと前を見ている。前のアルバム『ジョアン』や主演映画『アリー/スター誕生』のような内省的オーガニック路線を経由したからこその境地だと思います。

――もうひとつ、コロナ禍の音楽業界で大きな話題となったのが、マルチプレイゲーム「フォートナイト」内で開催された、人気ラッパー、トラヴィス・スコットのバーチャルコンサート『Astronomical』(※4)ですね。

※4 ゲーム内に用意されたコンサートステージが、空から現れたゴジラのような巨大トラヴィスにより踏み潰され、楽曲ごとにフィールドが変化。アバターとして参加した1,200万人以上のユーザーは、火の雨、水中世界、宇宙空間を飛ぶというバーチャル体験を味わうことができた。このビッグイベントはすべてリモートワークにより作成された。

渡辺 今回のパンデミックで、バーチャルと音楽の融合が盛んに行われ、「まだこんな世界が残されていたんだ」というポジティブな発見もありました。その極め付きが、トラヴィスの「フォートナイト」ライブです。これまでのライブ配信、例えばアメリカの最大野外フェス「コーチェラ」などは、ユーザーが生配信中の映像を見てアーティストのパフォーマンスを楽しむだけでしたが、トラヴィスの「フォートナイト」ライブはプレイヤーがゲームの中に入って一緒になって楽しめるという点で、新しい価値観を与えました。

辰巳 「フォートナイト」でもこれまで“野外フェスを模した”有名アーティストによるバーチャルコンサートはありましたが、今回のトラヴィスは、初めから非現実なものを目指してました。最終的に観客はアバターで宇宙に連れて行かれ、光速で飛ぶという演出です。現実のまねではなく、バーチャルでしかできないことをやった。アバター参加ゆえにユーザー側も「参加した」感を味わえるので、まさに斬新なことを楽しめるイベントだったと思います。

渡辺 ネットフリックスもパンデミック後の早いタイミングで、「ネットフリックスパーティ」というGoogle Chromeの拡張機能をリリースしました。ブラウザ上でみんなが一緒の作品を見て、チャットができるという機能なのですけど。4月前半に世界規模で、みんなでビヨンセのドキュメンタリー作品『Homecoming』を見よう、という仮想パーティが行われた。このように、仮想の世界で一緒に何かをするのが、今年からはやり始めましたよね。トラヴィスのライブのように、さらに素晴らしい技術が重なって、今まで見たことない/感じたことない世界がエンタメ界にやってくるのかなと。

辰巳 『フォートナイト』の運営も、ゲーム以上の新境地プラットフォームを目指しているようです。まず人気がすさまじくて、昨年、世界的人気を誇るDJ、マシュメロが仮想ライブを開催したんですが、同時期に行われた「スーパーボウル」のハーフタイムショーでパフーマンスを行ったマルーン5より、ビルボードチャートへの影響があったともいわれている。『フォートナイト』内ではディズニーやDC、ナイキといった有名ブランドとのコラボが豊富だったり、人気映画の予告編上映イベントも行われるなど、いまやエンタメ界のパワーハウスになっています。

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――全米では新型コロナウイルスによって都市がロックダウンされ、雇用や経済などの格差がこれまで以上に可視化されました。さらには5月末に、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警察官による過剰暴力で亡くなり、BLM運動がさらに高まりました。恵まれた環境にいるセレブが、一般市民にどれだけ寄り添えるかが問われていますね。

辰巳 コロナ禍において、世界中の人々を勇気づけるために、ガル・ガドット(映画『ワンダーウーマン』の主演女優)が、セレブ24人を集めてジョン・レノンの「イマジン」を合唱する動画をインスタグラムに投稿しました。昔だったら褒められていたかもしれませんが、「リッチなセレブたちに『パンデミックでも一緒』と言われても」という感じで大炎上しました。

渡辺 「そんな広い家に住んでいる人に、“家の中で自粛して”と言われても」と叩かれていましたね。逆にジェイ・Zやビヨンセ、リアーナはすぐに医療従事者やエッセンシャルワーカーの人たちに巨額の寄付をした。そういうアクションのほうが高く評価されましたよね。

辰巳 BLM関連では、白人セレブたちが「白人に責任がある」と声を上げた、人種差別撲滅運動「#ITakeResponsibility」キャンペーン動画にも、ソーシャルメディアは「そんなことしなくていいから」としらけムードだった。

渡辺 今回のBLMは、これまで以上に白人至上主義や白人特権を問題視しているわけで、そこを逆なでするような行為は、これまでのように「いいこと」とは受け止められなくなっている、という現実があるのかもしれません。

――それは黒人差別への意識が変わってきたことに加え、格差が簡単には解消されない社会になったことが関係しているのでしょうか?

渡辺 “アメリカの社会構造の中に、常に人種問題が組み込まれている”ことがより問題視されているのではないでしょうか。BLMというスローガン自体は、2012年に起きたトレイボン・マーティンの事件(※5)がきっかけで生まれた言葉ですが、白人に対する黒人たちの抗議や暴動はずっと前から、それこそ奴隷制の時代からありました。今回のBLM運動の高まりは、たまりにたまったフラストレーション、黒人たちの「オレたち、私たちはこんなに(抗議活動を)やってきたのに、まだここから議論せねばならないのか」といった、ある種の絶望感のようなものを感じます。マジョリティ側である白人たちも、自分たちの立場、自分たちの行為を見つめ直すフェーズに入っている。だからこそ、白人セレブリティが「どういう発言をするか」「どういうアクションをとるか」が、良くも悪くも注目されているのだと思います。

※5 フロリダ州のサンフォードで、17歳の高校生だったトレイボンさんが、地元の自警ボランティアでヒスパニック系のジョージ・ジマーマンに射殺された事件。ジョージが一方的にトレイボンさんを“不審者”と見なしてつきまとい、口論となった末に銃殺。裁判では、同州の「正当防衛法」に基づき、無罪となった。

辰巳 上層部が白人ばかりの大企業は、黒人の従業員に出世のチャンスを与えずに劣悪な環境で働かせていること、BLM支持を表明しても具体的には何もしてなかったことなど、いろいろな批判を浴びています。BLMの活動家たちが影響力のある人たちに問題を取り上げてほしいと呼びかけていた10年代前半と異なり、今は大企業や有名人のBLM支持が「普通のこと」になりました。だからこそ今回、白人セレブや大企業は、ただ賛同を示すだけでは評価されない状況に置かれたのかもしれない。

渡辺 より具体的な変化を求めるというか、寄付金の額や、企業従業員の人種的比率など、変化やサポートにおける意志をきちんと数値で表明する流れにはなっているのかもしれません。

――同時に、白人セレブの過去の黒人差別言動を問題視し、彼らのキャリアを潰すまで炎上させる「キャンセル・カルチャー」も指摘されていますが、それについてはどう思いますか?

辰巳 そうした炎上やバックラッシュ事象は一つ一つ異なるため、現段階では一概に言えず難しいです。たとえば、6月には大御所白人コメディアンのジミー・キンメルの過去のブラックフェイス(黒人のマネをするために、顔を黒く塗る行為)が騒動になりましたが、このケースの場合、一時的な仕事のキャンセルはあったとしても、問題視される言動が新たに浮上しない限り、キャリアや看板番組がダメになるような長期的打撃にはならないと思います。

渡辺 過去を遡って、何をどこまで批判するのか線引きするのは、本当に難しいですよね。ただ、昔はOKだったものが今ではNGとされていることを踏まえて、自分から真摯に謝罪する姿勢が求められている。前述した「アーバン」の問題もそうですが、企業もひっくるめて、今の時代に合ったスタンダードへとどんどん刷新していく姿勢になっていくのかなと感じます。

辰巳 『風と共に去りぬ』など(※6)、BLMプロテスター側から問題視されたコンテンツを削除や謝罪、修正するといった企業群の素早い対応については、ビジネスとしても、今の時点で軌道修正したほうがよいという判断があるのだと思います。アメリカの多くの主要エンターテインメント企業がターゲットにしたい「都市部の若年層」はマイノリティ人種の比率が増えているし、今回のBLM運動の参加者には若い白人や富裕層も多いとされるので。

※6 白人が黒人奴隷を所有していた南北戦争前、そして戦争後が舞台となっている作品で、登場する黒人奴隷たちが「白人の主人に尽くすことに幸せと喜びを感じているように描かれている」として、上映当時も黒人層から批判を浴びていた。今回のBLM運動や黒人脚本家からの指摘を受け、米動画ストリーミングサービス「HBO MAX」は同作の配信を一時停止。2週間後、映画の冒頭に同作に対する批判と歴史的背景を説明する2つの動画を追加し、配信を再開した。

渡辺 ビジネス的といえば、BLM下において、ヒット曲がラップ一色になったことも興味深かったです。先ほど辰巳さんが解説されたように、レディー・ガガが力強いアルバムを出す一方で、BLMをテーマにした楽曲を発表した若手ラッパーたちも存在感を示しました。

 リル・ベイビーやダ・ベイビーといった、普段は社会的・政治的な内容のラップから距離を置いていた気鋭のアーティストらもコンシャスなラップを発表していたし、かねてから人種における不平等さを糾弾していたミーク・ミルら中堅ラッパーも、力強い楽曲をリリースしています。ヒップホップやラップの強さは、社会問題が噴出した時に、すぐにそれを作品にするところ。すぐにアクションをとって自分の意見を表明する、そういったジャンル/カルチャーの強さを見せられたような気がします。

 個人的に、20年の音楽シーンは、昨年からの流れを受けて、もっと明るいポップなヒット曲が主流になるのかと思っていました。でも、新型コロナのパンデミックやBLMで、そうではなくなった。ヒットする音楽は時流を映すものなのだと、つくづく感じました。

辰巳 バーチャルで今年6月に開催された、「BETアワード」(黒人や他のマイノリティ人種に贈られる文化賞の授賞式)も素晴らしかったですね。パフォーマンスするアーティスト全員に出したい声明があったそうで、だからこそ緊急事態下のバーチャル開催なのに、これだけ充実したアワードになったのだと思います。

渡辺 「BET」は「Black Entertainment Television」の頭文字で、黒人のためのエンターテインメント・ケーブルTV 局が主催するアワードなんです。今年は、オープニングからプロテストソングとして歴史に残るパブリック・エナミーの「Fight the Power」のリメイク版映像が流れ、その後に、人権活動家である大ベテラン、ハリー・ベラフォンテのスピーチ映像やジェームス・ブラウンの「Say It Loud, I’m Black & I’m Proud」を流し、プリンスが20年に同アワードで披露したスピーチの映像も流れた。ブラックミュージックのヒーローたちがどんどん現れてくる演出で、非常に力強さを感じました。最後はアリシア・キーズが警察による暴行などで命を落とした犠牲者をたたえる新曲「Perfect Way to Die」のMVで幕を閉じた。

 今年のBETアワードは、今回のBLMのムーブメントにおける意思表明として、BETの底力を見せつけられたような気がします。今後、アカデミー賞やグラミー賞、MTVのVMA(ビデオ・ミュージック・アワード)において、この社会問題をどのようにアワードに組み込んでいくのか、そういった部分にも注目したいなと思いますね。

オスカー「『パラサイト』快挙」スーパーボウル「ジェイ・Zで人種問題回避」エンタメで見る米国の変化【辰巳JUNK×渡辺志保対談】

 NBAのスーパースター選手だったコービー・ブライアントが、13歳の次女と搭乗していたヘリコプターが墜落し、即死。その夜、開催されたグラミー賞授賞式はコービー追悼式のようになるという悲劇的なスタートを切った2020年。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やBLMのうねりで、価値観も大きく変わった。

 そこで、昨年末に引き続き、ブラックミュージックやヒップホップに詳しいライターの渡辺志保さんと、ゴシップとカルチャーの両視点からショービズ界に斬り込むライター辰巳JUNKさんに、20年前半(1月~6月末)に起こったトピックを振り返りつつ、アメリカの“変化”について語ってもらった。

オスカー『パラサイト』快挙の意味

――毎年、年が明けてすぐに開催されるアワードシーズンを迎えるハリウッド。今年のアカデミー賞(オスカー)は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞・監督賞・脚本賞などを勝ち取り、「歴史的快挙」とまで言われました。お2人は、これをどうご覧になりましたか? 

辰巳JUNKさん (以下、辰巳)オスカー会員が事前にメディアのインタビューで、『パラサイト』について「普通におもしろい」「多くの会員から愛されている」と評価していたし、順当という感じがしますね。外国語映画では、去年、メキシコを舞台に中流家庭のハウスキーパーを描いた『ROMA/ローマ』(アルフォンソ・キュアロン監督、アメリカ・メキシコ合作)が作品賞の有力候補として注目を集めていましたが、アーティスティックな作風だったこともあり、オスカー会員から「秀でているのはわかるが(内容理解が)難しかった」的なことを言われていて。その点、『パラサイト』は、経済格差というグローバルな社会問題を扱いつつ、ストレートにおもしろいと思えるわかりやすさが強みになったのでは。

渡辺志保さん (以下、渡辺)『パラサイト』は監督賞・作品賞など多部門にわたって受賞し、大快挙でしたね。これは私にとっては驚きでした。オスカーは有色人種や外国語の作品に対して、積極的に複数のトロフィーを授ける印象はあまりありませんでした。辰巳さんがおっしゃる通り、昨年は『ROMA/ローマ』が作品賞を逃してしまったし。オスカー側が、多様性というか、マイノリティへの視点を持っていたんだと感じました。

辰巳 あと、アメリカではポン・ジュノ監督の人気がすごかった。

渡辺 「VOGUE」「ヴァニティ・フェア」など米エンタメメディアの取材を前もって受けていましたが、そこでのすさまじいキャラ立ちを感じました。

辰巳 セレブたちにも人気でしたよね。「アカデミー賞はローカルな賞」とさらっと発言して、それが喜ばれたり。それと『パラサイト』は、“インターネット発のアカデミー賞作品”といわれているんですよ。もともと作品自体、細かな伏線に加えて韓国のローカルネタが多い。仕掛けが多いミステリーとしてネット上で考察合戦が盛り上がるバイラルコンテンツになっていました。

渡辺 SNSで種明かしをするという流れですね。

辰巳 同作のアメリカでの配給会社が、ネットマーケティングに力を入れていたらしいです。これまでだと、アカデミー狙いの映画は街中に看板を出して宣伝することにお金をかけていたけど、『パラサイト』はネットの力でオスカーにたどり着くことができた新しいパターン。

渡辺 今年のオスカーって、『ワンス・アポンア・タイム・イン・ハリウッド』『ジョーカー』など、「いかにもオスカー」な作品が並びましたよね。並み居る競合を抑えて、ポン・ジュノにここまでスポットライトを当てたのが、繰り返しますけど、米エンタメシーンでこれまであったかなといった驚きがあります。それを受けて、今後の動きが気になるところ。今年は外国語映画にスポットライトを当てたから、来年からは通常のオスカーに戻るのか。それとも、あくまでアメリカ中心主義的なオスカーではなく、もっと世界に開かれたオスカーとして発展していくのか。

辰巳 実は今年のオスカーは、マイノリティ人種や女性のノミネートが少ないことで反発が強かった。グレタ・ガーウィグ(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の女性監督)や『ハスラーズ』の主演女優ジェニファー・ロペス(J.Lo)も絶対にノミネートされると言われていたのに、落とされました。まぁ、J.Loは2月に開催された「スーパーボウル」のハーフタイムショーを大成功させて評判を上げましたが。

――ポン・ジュノ監督が受賞後のインタビューで、非英語圏映画における「字幕の壁」が崩れてきたといった旨を話していましたが、動画・音楽ストリーミングサービスの普及により外国コンテンツに触れる機会が増えたことが、今回の『パラサイト』躍進の一因なのでしょうか?

渡辺 昨年、アメリカの音楽業界の方とお話をする機会があったのですが、まさにその通りで、アメリカのユーザー/リスナーの外国語コンテンツを受け入れる人たちの割合が、今まで以上に多いそう。そのきっかけとなったのが、スペイン語圏であるラテン系コンテンツの爆発的ヒットだったそうですが、それがBTSなどのブレ―クにもつながっているということなのでしょう。

――BTSは音楽だけでなく、彼らの存在自体がアメリカでも大きな影響力を持っていますよね。

渡辺 DJのスティーヴ・アオキさんにインタビューした時にうかがったのですが、日系アメリカ人としてロサンゼルスで生まれ育ってきた彼が感じたのは、白人には白人のヒーローがたくさんいるけど、「アジア人のステレオタイプやロールモデルといえばジャッキー・チェン」で、そこからずっと抜け出せなかったということ。なので、BTSのブレイクは、アジア系アメリカンの子どもたちのロールモデルとして大きな役割を果たしている、とおっしゃっていました。今、BTSから影響を受けている子が大人になったら、また違う価値観が生まれそうな感じはしますね。

――先ほど話に出ましたが、近年はコリン・キャパニック(※1)に端を発した人種問題で揺れていたNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)が、「スーパーボウル」ハーフタイムショーにJ.Loとシャキーラというラテンルーツを持つ女性アーティストを起用しました。これはどう見ましたか?

※1 サンフランシスコ・フォーティナイナーズの元クォーター・バック。2016年にミネソタ州で、警察官に自動車のテールランプがついていないと止められた黒人男性フィランド・キャスティルが、射殺させる事件が発生。コリンは、この人種差別事件に抗議するため、試合前の国歌斉唱時に膝をつくという行動を始めた。これを問題視したNFLは18年5月、「国歌斉唱時には起立すること」を義務化。コリンは17年シーズン以降、NFLから事実上追放され、その後、和解が成立するも、現在までどのチームとも契約に至っていない。

辰巳 ちょっと話は飛躍するのですが、5月末から活性化したブラック・ライブズ・マター(警察などによる黒人への残虐行為に反対する人種差別抗議運動、以下BLM)を受けて、NFL幹部が「人種差別にまつわる選手の訴えを聞いてこなかった」と謝罪したことに驚きました。

渡辺 それはNFLの改革にジェイ・Zを招いたこと(※2)も大きかったのでしょうか?

※2 コリン・キャパニックの抗議が発端となり、NFLは社会正義を目的とするキャンペーン「インスパイア・チェンジ」を始め、これを強化するため、19年8月に、ジェイ・Zが創設したエンターテインメント企業「Roc Nation」とパートナーシップを結んだ。この契約によりジェイは「スーパーボウル」ハーフタイムショーのエンターテインメント、社会正義を監督する役割を担うことになった。

辰巳 ジェイ・Zをパートナーとして受け入れることは、NFLの姿勢を示すターニングポイントだったと思います。今回の「スーパーボウル」ハーフタイムショーは、黒人に関する人種問題を想起させないラテン系女性スターをフックアップし、成功したといった感じでしょうか。ラテン系市民が多いマイアミが開催地でしたしね。

――もし来年無事に「スーパーボウル」が開催されるとしたら、BLMなどを受けて、どんな方向性になるとお考えですか?

渡辺 融和な方向、“みんなでがんばろう”といった流れですかね。かつ、黒人アーティトが先頭に立つ存在として登場するようなステージになるのでは。

――ハーフタイムショーは時流を反映しますからね。

渡辺 ビヨンセとブルーノ・マーズ、コールドプレイがパフォーマンスした16年は、ビヨンセの「Formation」という曲がブラック・パワーを強調するようなパフォーマンスで「政治的すぎる」として叩かれました。だから18年は、ジャスティン・ティンバーレイクを起用して、“ザ・エンターテインメント”を持ってきた。これまでのNFLなら来年は無難なステージになりそうですが、人種差別を認めて謝罪したり、黒人カルチャーに影響力を持つジェイ・Zが関わったりしていますから、政治色が強いステージとなるのか。どちらかだと思います。

辰巳 10年代前半の「スーパーボウル」のハーフタイムショーといえば、世界平和や米軍への感謝みたいな、あまり意見が分かれないというか、議論が起こりにくいテーマや演出が多かった。そんななか、渡辺さんがおっしゃる通り、16年のビヨンセは「政治的すぎる」と議論を呼びました。1960〜70年代に警察と対立した黒人解放運動組織ブラックパンサー党を模した衣装をまといながらBLM要素のある楽曲「Formation」をパフォームしたことから、称賛を浴びる一方「アンチ警察」だとして反発も呼び、警察官や保安官がデモ行進を行うまでの騒動に発展したんです。

 こうした流れもあって、翌17年のレディー・ガガは、トランプ政権に物申すんじゃないかというプレッシャーと期待をかけられましたが、直接的にアンチ・トランプ的なパフォーマンスはしないまま、反トランプ派のアンセムとされる「This Land is Your Land」を歌うなど、密かにメッセージを込めて。これがウケたんですよね。J.Loが今回パフォーマンス中、少女たちがケージに入れられている演出を行って暗にトランプ政権の移民政策を批判したのも、ガガと同じ(直接的ではないプロテスト表現の)流れだったと思います。

 スーパーボウルのハーフタイムショーは、日本でいうなら“紅白の大トリ”が紅白全編を一人でやるような、それくらい栄誉と注目度がある国民的なお祭りですから、パフォーマンスの仕方が問われますよね。

渡辺 アワードそのものが大きな受け皿となっているオスカーやグラミーとは違いますからね。ハーフタイムショーだと、何を発言しても叩かれる、何を表現しても叩かれるという怖さはあります。

――そのグラミーですが、今年はノミネート/受賞作もさることながら、グラミー賞そのものが大きな話題となりました。その経緯を知らない人もいるので、お2人から説明していただけますか?

渡辺 グラミー賞を主催する団体「ザ・レコーディング・アカデミー」のトップに長年鎮座してきたポートナウ会長が、「女性アーティストの受賞が少ない」という非難に対して、「女性アーティストはもっと努力しなければならない」と女性蔑視の失言をして大炎上したんです。

辰巳 それで辞任に追い込まれた。次にデボラ・デューガンという白人女性が新会長に就任したんですけど、わずか5カ月ぐらいで辞めてしまった。

渡辺 授賞式の1週間前に辞めさせられたんですよね。

辰巳 そのデボラが、米雇用機会均等委員会に告発文を送って。

渡辺 それも授賞式の前日くらいでしたね。

辰巳 その内容が、「グラミーはボーイズクラブで、人種差別と性差別がまかり通っている」「私はハラスメントをされた」「元会長はアーティストから性暴行を告発されていた」など。また、グラミー賞の一般部門の選考システムは、全会員から投票を募って上位候補をリストアップし、選考委員会が8つほどノミニーを選ぶという流れになっているんです。このノミネーション会議で、高順位だったアリアナ・グランデやエド・シーランが落とされるなど不正が横行していると、デボラは明かしています。

 デボラは40ページにわたる告発文を提出したんですけど、グラミー側はそれを否定。デボラこそ不正行為をしようとしてほかの女性幹部から告発されていたと主張して、完全に泥沼となりました。

渡辺 これらがリアルタイムで報道されている中、前夜祭でアイコニック・アワード(功労賞)を受賞したP・ディディ(ショーン・コムズ)が、「ブラックミュージックはグラミーから尊敬されたことがない」と発言。授賞式の幕が上がるまで、グラミーはずっとバッシングされてましたね。なおかつ直前にコービー・ブライアントが亡くなり、最悪な雰囲気のまま始まったという感じでした。

 アリシア・キーズが2年連続司会を務め、最多受賞のビリー・アイリッシュはグラミー史上最年少ということで、「女性が活躍したグラミー賞」にしたかったんでしょうが、2人に対するプレッシャーが重すぎて、不健康さを感じましたね。「我々は古いシステムを拒絶します」など、グラミーへの皮肉かな? とも受け取ることができるアリシアのモノローグは最高でしたけど。

辰巳 式自体は、コービーへの追悼が印象に残るものになりましたね。

渡辺 数時間前に彼の乗ったヘリコプターが墜落して死亡したという報道があったばかりなのに、オープニングではアリシア・キーズがボーイズIIメンと共に、彼らの代表曲でもある「It’s So Hard to Say Goodbye to Yesterday」を急きょ追悼のパフォーマンスとしてアカペラで歌ったんです。ボーイズIIメンはもともとタイラー・ザ・クリエイターのステージに参加する予定で会場にいたのですが、アリシアと10分間だけ楽屋でリハーサルをし、追悼パフォーマンスに挑んだそう。衣装が私服のような感じで、臨場感もすごかったですね。オープニング・パフォーマンスしたリゾもコービーへの追悼シャウトをしていましたし、その後に続いたリル・ナズ・Xやニプシー・ハッスルのトリビュート・ステージでも、コービーへのメッセージが見受けられました。

――グラミーといえば6月に、これまでR&Bやヒップホップといったブラック・ミュージックを包括する「アーバン」というジャンル名を廃止することを発表しました。「アーバン」という名称は時代遅れ、といった批判は数年前からありましたが、わかりやすく説明してもらえますか?

辰巳 もともと、今年のグラミー賞で最優秀ラップ・アルバム部門を受賞した(ラッパーの)タイラー・ザ・クリエイターが、「黒人アーティストは、ポップジャンルに入れてもらえない。人種や肌の色ゆえに、アーバンという言葉に押し込まれている」といったニュアンスの批判をしていたんです。それにビリー・アイリッシュも「私は白人のティーンエイジャーの女性だからポップに入れられている。私が白人じゃなかったら、ラップジャンルに入れられてると思う。(黒人の)リゾは私よりポップなのに、R&B(および「最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞」)に入れられている」と賛同した。そういった流れを受けて、人種指定ニュアンスがまとわりつくアーバンというジャンルカテゴリをやめようと。

渡辺 BLMの問題が浮き彫りになった時に、グラミー側は「アーバンという名称を変更します」と発表しました。でも、BLM以前からそういった動きはあったと明かしているので、少なからず1月末のグラミーのタイミングでなされたタイラーの発言はインパクトがあったのではと思います。

 もともと「アーバン・ミュージック」は70年代にニューヨークの黒人ラジオDJが作ったカテゴリーでもあるんですよ。当時、ラジオ局がスポンサーを集めなければならかったのですが、スポンサーの多くは白人企業。その人たちにソウルやディスコなどのブラック・ミュージックと言ってもなかなかお金を出してもらえないので、スノッブな白人にもウケるようなカテゴリーとして「アーバン」を作り、お金を出してもらったという経緯があるそうなんです。米ユニバーサル・ミュージックなども、アーバンという部署名をなくすと言っています。音楽業界を覆すような大きな改革にはならなくても、ある程度の改革にはなると思いますし、これまでの価値観を刷新するという意味では、いいタイミングなのかな? と感じました。

――後編は9月5日公開

山下智久、Snow Man・岩本照、NEWS・小山慶一郎……心理学博士に聞く、ジャニーズの活動自粛は「スキャンダル抑止に効果ナシ」なのか?

 8月7日、ニュースサイト「文春オンライン」に、成人であると偽っていた現役女子高生モデル2人との飲酒同席が報じられた山下智久とKAT-TUN・亀梨和也。また山下は、女子高生モデルのうち一人を、飲み会の後、高級ホテルにお持ち帰りした疑惑も伝えられ、ジャニーズファンの間に衝撃が走った。これを受け、ジャニーズ事務所は同17日、山下に一定期間の活動自粛、亀梨に厳重注意処分を下すことを発表した。

 昨今、ジャニーズでは、未成年者との飲酒同席により、タレントが処分を受けるケースが続いている。2018年6月には、NEWS・小山慶一郎と加藤シゲアキが同様の問題を起こして、それぞれ活動自粛と厳重注意処分に。また、今年3月には、Snow Man・岩本照も、3年前の出来事ながら、活動自粛処分を科された。

 ジャニーズファンの中には、こうした前例がありながらも、身分のわからない女性と酒席を共にした山下と亀梨には「脇が甘すぎる」「危機感ゼロ」との批判が飛び交うことに。特に山下は、“お持ち帰り”疑惑もあることから、さらに厳しい目が向けられることとなった。確かに、同じ事務所の仲間たちが、“痛い目”に遭った姿を間近で見ているにもかかわらず、なぜ慎重にならないのかというのは、疑問を抱いてしまうところ。ネット上には、ジャニーズ事務所の科す処分は、「スキャンダル抑止策になっていない」と指摘するファンの意見も散見されるが、今回、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織(すずき・じょうじ)氏に、見解をお聞きした。

山下智久と亀梨和也は「自分だけは許される」と自己を特別視していた!?

 ジャニーズファンが最も不可解に感じているのは、これまで未成年飲酒問題で処分を受けたタレントがいるにもかかわらず、なぜ山下と亀梨は危機感を持たなかったのか? という点ではないだろうか。これに鈴木氏は「危機感はあるけれど、『この子たちと一緒に飲みたい、遊びたい』という“欲望”が上回ったのでしょう。“欲望”は、理性に勝るものなんです」と指摘する。

「人間というのは“欲望”を抱くと自己本位になり、事実を都合よく解釈してしまう傾向にあります。例えば、もしかすると、相手は未成年かもしれない――という疑いが頭をよぎったとしても、『きっとそんなことはない、大丈夫だ』と過信し、『もし何かあっても、事務所やマネジャーが擁護してくれる』『やってはいけないことをやってしまっても、自分だけは許される』と自己を特別視してしまうのです。仮に、相手の嘘を完全に見抜いていたとしても、自分の欲望を満たしたいがため、意図的に嘘に乗る……ということも考えられます」

 ここで言う“自己の特別視”は、「ジャニーズのトップアイドルだから」という面もあるかもしれないが、「欲望を抱いた人は、誰もがそうなる」という。

「欲には満足があるけれど、欲望には満足がない。欲は生きるための食欲や睡眠欲、欲望は“よりよく”生きるためのもの……例えば、カネに対する欲や、異性に対する欲を指します。後者は満足するということがなく、延々と続く。人間は、欲望に弱いものなんです」

 そんな一筋縄ではいかない“欲望”が、前述のようなスキャンダルの原因となっているなら、ジャニーズ事務所がこれまでタレントに科してきた処分は、抑止策として効果があったのだろうか?

「タレントの方たちは、スキャンダルが自身にとって“よくないこと”だとわかっています。その前提があるので、ほかのタレントのスキャンダルやその後の処分を知るのは、確かに微弱な抑止力の一つになるのですが、どこかで『あいつはバカだなぁ』『もっとうまくやればいいのに』『あいつと俺は違う』など、自分のこととして実感できないんです。逆に言うと、自分のこととして実感できるかが重要。ましてや、同じような『スキャンダル→処分』といった流れが続いてしまうと、マンネリ化して抑止力は弱まります」

 実際に自ら“スキャンダル”と“処分”を経験した小山や加藤、岩本は、同じ過ちを繰り返さない可能性が高いといえるが、「ただ、自分が想定した罰より与えられた罰が軽かった場合……例えば、活動自粛期間が3カ月続くと想定していたのに、実際には1カ月だったりすると、その経験は抑止力にならず、再びスキャンダルを起こしてしまう可能性が捨てきれません」という。

 また山下は今年、Huluオリジナル海外ドラマ『THE HEAD』のメインキャストの一人として出演し、エンディングテーマに自身の新曲「Nights Cold」が起用されるなど、大躍進の年になると言われていた。にもかかわらず、脇の甘すぎる“遊び”に興じてしまったのを見るに、「仕事への責任感」はないのかと疑問に思うが、「たとえ大きな仕事を任されていても、欲望を抱くと、根拠のない『自分は大丈夫』『一回はいいだろう』という自分都合の考え方をしてしまう。事務所がもし、『彼には責任ある仕事を任せているから、変なことは起こさないはず』などと思っていたら、それはかなり“甘い”考え」だそうだ。

 では、心理学の観点から考える、ジャニーズが実施すべき“スキャンダル抑止策”とはなんなのだろうか?

「まず『ルールや罰則の明文化』が挙げられます。『未成年との飲酒同席が週刊誌に報じられた場合は、タレント側に高額な違約金が発生する』といった制度の厳格化、もっと具体的に『プライベートの飲み会の前には、必ずマネジャーに連絡する。もし連絡をしなかった場合は、◯◯という厳重なペナルティが科せられる』というのもありでしょう。『スキャンダルを起こすな』などと、曖昧なことを何度言っても無駄で、タレントは自分に都合よく解釈するだけ。ルールや罰則に“具体性”がなければ、タレントは気をつけません」

 また、過去に週刊誌に掲載されたスキャンダル写真や謝罪会見の写真を、タレントの目に入るところに掲示するというのも一つの手とのこと。最も強い抑止力は、「『恐怖』を抱かせることなんです。そのために、視覚的に『恐怖』をあおる写真の掲示がいいのではないかと思います」という。

 一方で、「こうした“ムチ”だけではなく、“アメ”を与えることもスキャンダルの抑止になる」と、鈴木氏。

「事務所がタレントに対し、『スキャンダルを起こさなければ、◯◯という仕事を与える』といった条件を提示するのも、スキャンダルの抑止策になります。ノースキャンダルのタレントに、どんどん仕事を与えて活躍する姿を、ほかのタレントに見せるのもいいと思いますよ。ただ、そういった事例が増えると新たな問題が生じます。活躍する彼らを憎む一方、自身の活躍を諦め、プライベートで欲望に駆られ問題を起こすタレントが出てきてしまう。だから、アメとムチ、どちらも大切なんです」

 相次ぐスキャンダルにより、心を痛め続けているジャニーズファンのためにも、事務所がスキャンダル抑止に積極的に取り組んでくれることを祈りたい。

堀北真希の妹・NANAMI、「ブスだったわー」と言われた過去告白――姉妹間の“容姿コンプレックス”はなぜ強烈?

 ここ最近、「堀北真希の妹」としてメディア露出を増やしているモデルのNANAMIが、8月25日放送の『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に出演した。「最近むかついたこと」というトークテーマで、女性出演者から「ブスと言われた」という話題が飛び出すと、NANAMIは小学生時代のある思い出を語りだした。

 なんでも、NANAMIの地元は小さな街だったため、自分が「堀北真希の妹」であることが住民に知れ渡っていたといい、駅のホームなどを歩いていると、「同い年ぐらいの子がタタターと来て、私の顔を覗いて、『ブスだったわー』って。そういうことは結構しょっちゅう……」とのこと。ネット上では「どこがブスなの? めちゃくちゃ美人だよ!」「そんなのただの妬み。気にする必要ない」などとエールが飛び交っていたが、一方で「姉が堀北真希だと、容姿にコンプレックスを抱いちゃうかなぁ」と、心配する声も散見された。

 実際に、NANAMIは「週刊新潮」(新潮社)のインタビューで、「姉妹の仲はよかったですけど、私はコンプレックスを持っていたんです」と告白。見ず知らずの人に、姉と容姿を比べられ、勝手に「判定」されることで、さらにそのコンプレックスが強まった可能性もあるだろう。

 芸能界では、かつて有村藍里が、妹の有村架純に対する強烈な容姿コンプレックスを明かして、話題になったことがある。「どうにか妹に顔を寄せようとメイクを工夫している」などと語る姿に、同じく容姿に自信が持てない女性から共感の声が寄せられたが、その後、藍里は、美容整形に踏み切り、輪郭形成の骨切り手術をしたことを公表。現在では、コンプレックスも幾分か解消され、メイクやファッションを楽しむことができているようだ。

 サイゾーウーマンでは、そんな藍里が抱く劣等感をめぐり、「姉妹間の容姿コンプレックスはなぜ生まれるのか」を、精神科医である銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)先生にインタビューしていた。今後も、人気女性タレントの姉や妹がデビューした際、話題になりそうなこのテーマを、いま一度考えるべく、記事を再掲したいと思う。
(編集部)


(初出:2018年6月27日)

有村藍里が、妹・架純に劣等感抱くワケ――精神科医が語る、姉妹間の“容姿コンプレックス”

 姉や妹に対して、容姿に差があると感じ、コンプレックスを抱いたことはないだろうか。それは、しばしば芸能界でも見て取れる時がある。女優・有村架純の姉である、タレント・有村藍里は、テレビで妹に対する強烈な容姿コンプレックスを明かして一躍話題となった。

 藍里は、架純について、「(鼻の下に縦線を描くというメークをすると)ちょっと妹に似てるって言われる。遺伝子的にも、妹が私の中ではかわいいの最上級。一番なれそうな位置なので、描いたら似るなら描こうかな」「妹と比べると声くらいしか似ている部分がない」「妹は可愛い」などと発言。こうした藍里の言動に対し、姉妹のいる女性からは「気持ちが痛いほどわかる」「同じ親から生まれたのに……って悩んだことある」といった共感の声が多く上がっている。

 そもそも、“姉妹間の容姿コンプレックス”はなぜ生まれるのか? また、悩んでいる女性に救いはないのか? 今回、精神科専門医である銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)先生に話を伺った。

コンプレックス=生存競争?

――有村藍里さんが「妹の方が可愛い」といった気持ちを吐露したように、姉や妹に対して容姿コンプレックスを抱く女性の心理的状況をどのように感じますか?

茅野分氏(以下、茅野) まず、広く兄弟姉妹間でのコンプレックスとは、一言で言うと、「同胞葛藤(どうほうかっとう)」なのではないでしょうか。「同胞葛藤」とは、親の愛情を求めて、兄弟姉妹間に生じる心理的な葛藤のこと。姉として、妹を可愛いと思う半面、容姿や親の愛情の違いなどで劣等感を抱いたり、妬んだりしてしまいます。

――「同胞葛藤」はどのように生まれるものなのでしょうか?

茅野 今でこそ少子高齢化といわれていますが、昔は兄弟姉妹が5~6人いるのが当たり前でしたから、その中で“どうすれば親の愛情を受けられるか”“どれだけの食事を得られるか”“どれだけ教育的な支援を得られるか”などという、いわゆる生存競争がありました。昭和の高度経済成長期、1940年代後半から50年代前半くらいまでの人にとって、「同胞葛藤」というのは、兄弟姉妹間での生き残りをかけた中で生まれるものだったわけです。

――現代ではどうでしょうか?

茅野 現在は出生率が1.5を切っていますから、ほとんどが1人っ子の家庭ということになります。ですから、必然的に「同胞葛藤」は減っています。これから10~20年後の家庭ではさらに「同胞葛藤」は減っていくでしょう。兄弟姉妹間におけるコンプレックス問題は最後の時代にきているのではないかと思います。

――藍里さんと架純さんは、現代を生きる2人姉妹なのですが、にもかかわらず容姿コンプレックスを抱いてしまうというのは、どういった背景があるのでしょうか?

茅野 お二人に当てはまるかは断言できませんが、“幼少期から親御さんのかける愛情の度合いが異なっていた”というケースは多いですね。娘さんが2人いたら、親御さんは、たとえどちらかが可愛かろうが、優秀であろうが、同等に扱うべきなのに、そうではなかったのかもしれません。もちろん、親御さんの教育的な配慮がなされていたのにもかかわらず、小学校、中学校とあがっていくうちに、親戚や友達などとの関わりも増え、そういう近い人たちに姉妹間で比べられたり、心無いことを言われてしまうと、やがてそれがコンプレックスになることもあります。

――友達より姉妹に対してコンプレックスを抱きやすいのでしょうか?

茅野 ケースバイケースでしょうが、より身近にいる姉妹の方が大きいのかもしれませんね。もちろん、個人差はありますから一概にとは言えませんが、特に、歳が近いとどうしても比べられてしまう、その分、コンプレックスを抱きやすくなるという背景はあると思います。

――一方で“容姿”コンプレックスとは何かについても、詳しくお聞きしたいのですが。

茅野 若い女性にとって、“美しさ”は絶対的な価値観と考えられがちで、美しくなるために多くの時間と労力、お金を費やす方がいます。決して醜くないのにもかかわらず、人と比べ自分がブスだと思い込んでしまう……それが容姿コンプレックスです。ひどくなると「醜形恐怖」と言われ、自分の容姿容貌が醜いのではないかと恐れ続ける心の病気につながるケースもあります。

――病的なまでに容姿コンプレックスを感じてしまう精神状態=「醜形恐怖」ということでしょうか?

茅野 彼女たちに共通する精神状態として、“ボディイメージの障害”があります。彼女たちは、“否定的な自己像”を抱いており、常に「自分はブスなのではないか」「太っているのではないか」「周りから受け入れられないのではないか」などと恐れ、悩んでいます。そして、周囲の視線を過剰に気にして“対人恐怖”となってしまい、自分の顔・形を変えることに執心するようになります。

――例えば、整形を繰り返してしまうとか。

茅野 はい。しかし、整形手術を契機に生まれ変わったように人生が明るくなる方もいらっしゃるようです。私の大学時代からの友人に、湘南美容外科の相川佳之先生がいますが、彼いわく「心療内科医や精神科医と同じように、僕らは美容整形外科手術を通して患者さんの『心』も治療している」とのことで、整形によって気持ちが満たされ、容姿コンプレックスが改善されるなら、それも1つの手だと思います。

―― 一方で、他者から見て明らかに不自然なほど整形を繰り返し、にもかかわらず「もっと手術をしてほしい」と執着してしまう人もいますよね。

茅野 キレイになっているのにもかかわらず、自分を客観視できなくなってしまうということですね。「自分はブスなのではないか」という思い込みから逃れられなくなってしまう。醜形恐怖とは、さまざまな要因が重なってなることもあるので一概には言えませんが、幼少期からの両親との愛情関係が影響するとも言われています。

(後編につづく)

堀北真希の妹・NANAMI、「ブスだったわー」と言われた過去告白――姉妹間の“容姿コンプレックス”はなぜ強烈?

 ここ最近、「堀北真希の妹」としてメディア露出を増やしているモデルのNANAMIが、8月25日放送の『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に出演した。「最近むかついたこと」というトークテーマで、女性出演者から「ブスと言われた」という話題が飛び出すと、NANAMIは小学生時代のある思い出を語りだした。

 なんでも、NANAMIの地元は小さな街だったため、自分が「堀北真希の妹」であることが住民に知れ渡っていたといい、駅のホームなどを歩いていると、「同い年ぐらいの子がタタターと来て、私の顔を覗いて、『ブスだったわー』って。そういうことは結構しょっちゅう……」とのこと。ネット上では「どこがブスなの? めちゃくちゃ美人だよ!」「そんなのただの妬み。気にする必要ない」などとエールが飛び交っていたが、一方で「姉が堀北真希だと、容姿にコンプレックスを抱いちゃうかなぁ」と、心配する声も散見された。

 実際に、NANAMIは「週刊新潮」(新潮社)のインタビューで、「姉妹の仲はよかったですけど、私はコンプレックスを持っていたんです」と告白。見ず知らずの人に、姉と容姿を比べられ、勝手に「判定」されることで、さらにそのコンプレックスが強まった可能性もあるだろう。

 芸能界では、かつて有村藍里が、妹の有村架純に対する強烈な容姿コンプレックスを明かして、話題になったことがある。「どうにか妹に顔を寄せようとメイクを工夫している」などと語る姿に、同じく容姿に自信が持てない女性から共感の声が寄せられたが、その後、藍里は、美容整形に踏み切り、輪郭形成の骨切り手術をしたことを公表。現在では、コンプレックスも幾分か解消され、メイクやファッションを楽しむことができているようだ。

 サイゾーウーマンでは、そんな藍里が抱く劣等感をめぐり、「姉妹間の容姿コンプレックスはなぜ生まれるのか」を、精神科医である銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)先生にインタビューしていた。今後も、人気女性タレントの姉や妹がデビューした際、話題になりそうなこのテーマを、いま一度考えるべく、記事を再掲したいと思う。
(編集部)


(初出:2018年6月27日)

有村藍里が、妹・架純に劣等感抱くワケ――精神科医が語る、姉妹間の“容姿コンプレックス”

 姉や妹に対して、容姿に差があると感じ、コンプレックスを抱いたことはないだろうか。それは、しばしば芸能界でも見て取れる時がある。女優・有村架純の姉である、タレント・有村藍里は、テレビで妹に対する強烈な容姿コンプレックスを明かして一躍話題となった。

 藍里は、架純について、「(鼻の下に縦線を描くというメークをすると)ちょっと妹に似てるって言われる。遺伝子的にも、妹が私の中ではかわいいの最上級。一番なれそうな位置なので、描いたら似るなら描こうかな」「妹と比べると声くらいしか似ている部分がない」「妹は可愛い」などと発言。こうした藍里の言動に対し、姉妹のいる女性からは「気持ちが痛いほどわかる」「同じ親から生まれたのに……って悩んだことある」といった共感の声が多く上がっている。

 そもそも、“姉妹間の容姿コンプレックス”はなぜ生まれるのか? また、悩んでいる女性に救いはないのか? 今回、精神科専門医である銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)先生に話を伺った。

コンプレックス=生存競争?

――有村藍里さんが「妹の方が可愛い」といった気持ちを吐露したように、姉や妹に対して容姿コンプレックスを抱く女性の心理的状況をどのように感じますか?

茅野分氏(以下、茅野) まず、広く兄弟姉妹間でのコンプレックスとは、一言で言うと、「同胞葛藤(どうほうかっとう)」なのではないでしょうか。「同胞葛藤」とは、親の愛情を求めて、兄弟姉妹間に生じる心理的な葛藤のこと。姉として、妹を可愛いと思う半面、容姿や親の愛情の違いなどで劣等感を抱いたり、妬んだりしてしまいます。

――「同胞葛藤」はどのように生まれるものなのでしょうか?

茅野 今でこそ少子高齢化といわれていますが、昔は兄弟姉妹が5~6人いるのが当たり前でしたから、その中で“どうすれば親の愛情を受けられるか”“どれだけの食事を得られるか”“どれだけ教育的な支援を得られるか”などという、いわゆる生存競争がありました。昭和の高度経済成長期、1940年代後半から50年代前半くらいまでの人にとって、「同胞葛藤」というのは、兄弟姉妹間での生き残りをかけた中で生まれるものだったわけです。

――現代ではどうでしょうか?

茅野 現在は出生率が1.5を切っていますから、ほとんどが1人っ子の家庭ということになります。ですから、必然的に「同胞葛藤」は減っています。これから10~20年後の家庭ではさらに「同胞葛藤」は減っていくでしょう。兄弟姉妹間におけるコンプレックス問題は最後の時代にきているのではないかと思います。

――藍里さんと架純さんは、現代を生きる2人姉妹なのですが、にもかかわらず容姿コンプレックスを抱いてしまうというのは、どういった背景があるのでしょうか?

茅野 お二人に当てはまるかは断言できませんが、“幼少期から親御さんのかける愛情の度合いが異なっていた”というケースは多いですね。娘さんが2人いたら、親御さんは、たとえどちらかが可愛かろうが、優秀であろうが、同等に扱うべきなのに、そうではなかったのかもしれません。もちろん、親御さんの教育的な配慮がなされていたのにもかかわらず、小学校、中学校とあがっていくうちに、親戚や友達などとの関わりも増え、そういう近い人たちに姉妹間で比べられたり、心無いことを言われてしまうと、やがてそれがコンプレックスになることもあります。

――友達より姉妹に対してコンプレックスを抱きやすいのでしょうか?

茅野 ケースバイケースでしょうが、より身近にいる姉妹の方が大きいのかもしれませんね。もちろん、個人差はありますから一概にとは言えませんが、特に、歳が近いとどうしても比べられてしまう、その分、コンプレックスを抱きやすくなるという背景はあると思います。

――一方で“容姿”コンプレックスとは何かについても、詳しくお聞きしたいのですが。

茅野 若い女性にとって、“美しさ”は絶対的な価値観と考えられがちで、美しくなるために多くの時間と労力、お金を費やす方がいます。決して醜くないのにもかかわらず、人と比べ自分がブスだと思い込んでしまう……それが容姿コンプレックスです。ひどくなると「醜形恐怖」と言われ、自分の容姿容貌が醜いのではないかと恐れ続ける心の病気につながるケースもあります。

――病的なまでに容姿コンプレックスを感じてしまう精神状態=「醜形恐怖」ということでしょうか?

茅野 彼女たちに共通する精神状態として、“ボディイメージの障害”があります。彼女たちは、“否定的な自己像”を抱いており、常に「自分はブスなのではないか」「太っているのではないか」「周りから受け入れられないのではないか」などと恐れ、悩んでいます。そして、周囲の視線を過剰に気にして“対人恐怖”となってしまい、自分の顔・形を変えることに執心するようになります。

――例えば、整形を繰り返してしまうとか。

茅野 はい。しかし、整形手術を契機に生まれ変わったように人生が明るくなる方もいらっしゃるようです。私の大学時代からの友人に、湘南美容外科の相川佳之先生がいますが、彼いわく「心療内科医や精神科医と同じように、僕らは美容整形外科手術を通して患者さんの『心』も治療している」とのことで、整形によって気持ちが満たされ、容姿コンプレックスが改善されるなら、それも1つの手だと思います。

―― 一方で、他者から見て明らかに不自然なほど整形を繰り返し、にもかかわらず「もっと手術をしてほしい」と執着してしまう人もいますよね。

茅野 キレイになっているのにもかかわらず、自分を客観視できなくなってしまうということですね。「自分はブスなのではないか」という思い込みから逃れられなくなってしまう。醜形恐怖とは、さまざまな要因が重なってなることもあるので一概には言えませんが、幼少期からの両親との愛情関係が影響するとも言われています。

(後編につづく)

【特別描き下ろし漫画】統合失調症にかかりました~0-100思考が頑張りすぎないお話・後編~

 サイゾーウーマンにて連載していた、自身の統合失調症の発症から社会復帰までを描いた闘病エッセイマンガ『統合失調症にかかりました』(著:さいこ)。今回、書籍化を記念し特別描き下ろし編をお送りいたします。

0-100思考が頑張りすぎないお話・後編

前編は【こちら

 

★『統合失調症にかかりました』書籍化著者インタビューは【こちら
★『統合失調症にかかりました~にゃんside~』まとめはこちらから★
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